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「何でよけちー!」
「何ででもです!絶対ダメです!」
聞こえてきた大きな声に、どうしたんですか、あれ?と眺めていたスーさんに声をかける。

「…写真、撮りたいって言っどる」
「ああ、サラがアリシアのですか?」
でもそれは、結構よくあることな気がするんだけれど。
なにをあんなに嫌がってるんだろう、シーくん…
アリシアが生まれてからというもの、シーくんはアリシアを守るのは自分の役目だ!と信じている。
だから、ああやってほかの子と言い合いになっちゃうのも珍しいことじゃないんだけど…

「せっかく先にシーくんに許可取りに来たのにー!」
「だめったらだめですー!」
あそこまでムキになってるのは珍しいなあ。何かあったのかな?
首を傾げると、とんとん、と肩を叩かれた。何ですか?とスーさんを見ると、指をさす。その先を見ると…カレンダー?
「撮影、この日らしい」

指すのは印の入っている日。…ああ、なるほど。

「何でダメなのよー!」
「その日はダメなんですー!」
そういえば、この日デートだってアリシア嬉しそうだったっけ。
妹のことを心から思っているのだなあと優しい気分になった。


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「フィンは、めんごい。」
ぼそり、と呟くと、同じテーブルにいたフランスとイギリスが固まったのが見えたが、特に気にならなかった。
「す、スウェーデン…?おい」

「フィンだけでね。アリシアも、めんごい。」
かわいい。二人とも誰よりかわいい。きらきら輝いている。スーさん、パパ。そう呼ぶ声だって、まるで綺麗な楽器の音色のようで。

それに、とても優しい。フィンはずっと俺のこと気にかけてくれているし。表情がわかりづらいとはよく言われるけれど、スーさんとずっと一緒にいれば簡単にわかりますよ、と笑うくらい、フィンは、俺の表情を読むのが得意だ。具合が悪いときだってすぐばれてしまう。
アリシアもそうだ。少し困ったりしていると、彼女はすぐに、手を繋いでくれる。それだけで胸がほっとする俺の気持ちなんてお見通しなんだろう。

二人の欠点といえば、少々どじなところだろうか。大きな籠を持ったままこけてしまうフィン。少しかがめば見つかる本をずっと探すアリシア。けれど、そんなところも、いや、そんなところがあるからこそ、愛おしい。

つまり、何が言いたいかというと。
フィンとアリシアは世界一可愛いということだ。



唐突にしゃべりだし、終わると同時にふらふらとフィンランドの方へと歩きだし、あれ、スーさんどうし、ってきゃー!何してるんですか!と向こうのテーブルで大騒ぎを巻き起こし始めたスウェーデンに、同じテーブルにいたイギリスとフランスは、ぽかんと見送るしかできなかった。

「…えっと、酔ってた、んだ、よな…?」
「…たぶん…」


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