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H11. 9.20 東京地裁 H11(ヨ)22125 パーソナルコンピュータ不正競争仮処分

平成一一年(ヨ)第二二一二五号不正競争仮処分事件
決    定
債権者        アップルコンピュータ株式会社
右代表者代表取締役  原田永幸
債権者        アップルコンピュータ・インク
右代表者      フレッド・D・アンダーソン
債務者       株式会社ソーテツク
右代表者代表取締役  大邊創一

 当裁判所は、債権者らの申立てを相当と認め、次のとおり決定する。
主    文
 債権者らが共同して債務者のために、本決定送達後七日以内に金一億円の担保を立てることを条件として、
 債務者は、別紙債務者商品目録記載の物件を製造し、譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、又は輸入してはならない。
理由の要旨
一 事案の概要
 債権者らは、別紙債権者ら商品目録記載のパーソナルコンピュータ(以下「債権者商品」という。)を製造販売している。
 債務者は、別紙債務者商品目録記載のパーソナルコンピュータ(以下「債務者商品」という。)を製造販売している。
 本件は、債権者らが、債権者商品の形態(色彩、素材を含む。以下同様とする。)が債権者らの商品表示として需要者の間に広く認識されているものであり、債務者商品の形態はこれと類似し、債権者商品との混同のおそれがある旨主張して、債務者に対し、不正競争防止法三条一項、二条一項一号に基づき、債務者商品の製造、販売等の差止めを求める申立てをした事案である。
二 債権者らの主張
 別紙「申立ての理由書」のとおりである。
三 当裁判所の判断
 当裁判所は、疎明資料に基づき「申立ての理由書」記載の事実を認めることができ、その申立ては理由があるものと解する。敷衍すると以下のとおりである。
1 周知商品表示性について
 商品の形態は、必ずしも商品の出所を表示することを目的として選択されるものではないが、商品の形態が他の商品と識別し得る独特の特徴を有し、かつ、商品の形態が、長期間継続的かつ独占的に使用されるか、又は、短期間であっても商品形態について強力な宣伝等が伴って使用されたような場合には、商品の形態が商品表示として需要者の間で広く認識されることがあり得る。
 疎明資料によれば、債権者商品の形態の特徴として、「申立ての理由書」第三、一「iMacの形態の特徴」1のとおりの事実が一応認められる。主要な点のみ掲記すると、@全体に曲線を多く用いた丸みを帯びた形態が選択されていること、A外装に、半透明の白色と半透明の青色のツートンカラーのプラスティック素材が使用されていること、B上面及び側面が穏やかな三角形状で、背面に向けて絞られた形態、上面及び側面の半透明青色の部分が連続的な意匠が選択されていること、C上面に半透明白色の持ち手があることを挙げることができる。以上の点を総合すると、債権者商品は、パーソナルコンピュータとしては、従前、類似の形態を有する商品がなく、形態上、極めて独創性の高い商品ということができる。
 そして、債権者商品について、その形態に重点を置いた強力な宣伝がされたこと、債権者商品は、その形態の独自性に高い評価が集まり、マスコミにも注目され、販売実績も上がり、いわゆるヒット商品になっていることが一応認められる。
 以上によれば、債権者商品の形態は、債権者らの商品表示として需要者の間に広く認識されている(周知商品表示性を獲得している)ものというべきである。
 この点につき、債務者は、@パーソナルコンピュータのような機能的商品では、機能上必然的な形態が多い、A債権者商品のブルーベリーの色は、平成一一年一月になって五色の新製品が同時に発売されたうちの一色に過ぎない、などとして、周知商品表示性を争う。しかし、@については、債権者商品の前記のような独創的な形態は機能上必然的な形態とは到底いうことができない。Aについては、疎明資料によれば、iMacは、ボンダイブルーと呼ぶ初期型モデルが平成一〇年八月に発売され、その後平成一一年一月に債権者商品を含む五色の現行型が発売されたが、初期型モデルも現行型モデルも極めて独創性のある形態を有することに変わりがなく、そして、初期型モデルの発売の際はもちろん、現行型の発売に際しても、強力な宣伝がされ、マスコミの注目を集め、販売実績も上がったことが一応認められるから、前記の結論を左右しない。
2 類似性について
 疎明資料によれば、債権者商品と債務者商品の形態の類似性については、「申立ての理由書」第三、四「e―Oneの形態とiMacの形態の類似性及び混同のおそれ」1、2記載のとおりの事実が一応認められる。主要な点のみ掲記すると、債権者商品及び債務者商品とも、@一体型のコンピュータにおいて、全体に曲線を多く用いた丸みを帯びたデザインであり、外装に、半透明の白色と半透明の青色のツートンカラーのプラスティック素材が使用されている。A正面視方向の形状は、角がやや丸みを帯びた四角形であり、中央の表示画面を囲む支持部分の左右及び下部が半透明の白色である。表示画面の下方のコンパクトディスク・ドライブのトレイ前面が半透明の白色で、トレイ出し入れ用ボタンが半透明の青色である。下部の両端に内蔵されたスピーカーが半透明の青色である。B上面視方向の形状は、ほぼ台形に近い緩やかな三角形である。上面の前側は、正面の表示画面支持部分上部から連続するカバーに覆われ、半月形を示している。半月形の中央部には、債権者商品、債務者商品のそれぞれの標章が付されている(なお、債務者商品の標章は地の青色と同一色が選択され目立たない。)。半月形カバー以外の後ろ半分が、側面と連続的に半透明の青色のカバーに覆われており、内部の熱を外部に放出するための穴が、横向きの曲線状の数本の帯に沿って並んでいる。上部に、本体を持ち運びするための半透明白色の持ち手が取り付けられている。C側面視方向の形状は、上辺が後方に緩やかに下がった台形に近い三角形である。ほぼ三分の二は、半透明の青色であり、その他の部分は、半透明の白色である。カバーを透して見える内部には基板が立てられた形で配置されている。D背面視方向の形状は、正面の四辺から背面に向けてそれぞれ緩やかな曲面を描いて絞られている。多くが半透明の青色で覆われ、一部半透明の白色がある。それぞれ側面と連続性を有している。Eキーボードは、本体と同じ半透明の白色と半透明の青色のツートンカラーである。キーは、半透明の黒色である。マウスも、本体と同じ半透明の白色と半透明の青色のツートンカラーである。キーボード及びマウスを本体に接続するためのケーブルは、銀色の芯線を透明な皮膜で包んだものである。F電源ケーブルは、鮮やかな複数色の芯線を透明な皮膜で包んだものである。
 以上のとおり、債務者商品と債権者商品は、いずれも、青色と白色のツートンカラーの半透明の外装部材で覆われた全体的に丸味を帯びた一体型のパーソナルコンピュータであり、曲線を多用したデザイン構成、色彩の選択、素材の選択において共通するのみならず、細部の形状においても多くの共通点を有することに照らすならば、少なくとも類似の外観を備えたものと解すべきであって、両者は類似しているというべきである。
 この点につき、債務者は相違点を挙げて類似性を争うが、債権者商品の形態と債務者商品の形態の相違点を十分考慮しても、前記結論を左右しない。
3 混同のおそれについて
 前記2のとおり、債務者商品の形態が債権者商品の形態と類似していることに照らせば、需要者が、両者を誤認混同したり、少なくとも債務者商品を製造販売する債務者が債権者らと何らかの資本関係、提携関係等を有するのではないかと誤認混同するおそれがあると認められる。
 この点につき、債務者は、@両商品には、ロゴ、マークが付されていること、Aパーソナルコンピュータという商品の特性、販売方法等を挙げて、混同のおそれを争うが、前記の類似性を考慮すれば、何ら前記結論を左右しない。
四 結論
1 審理に関して付言する。
 当裁判所は、争いに係る事実及び法律関係に関して、債務者からの意見を聴くために、審尋期日を指定した。債務者は、右期日に答弁書、準備書面及び疎明資料を提出しなかった。また、当裁判所は、口頭による意見を求めたが、債務者は、債務者商品を製造、販売することができる正当性に関する理由を説明しなかった。そこで、当裁判所は、審尋期日を打ち切った(審尋のための続行期日を指定しなかった。)。
 ただし、当裁判所は、債務者に対して、防御を尽くすため、期限を付して、主張、立証資料の提出の機会を与えた。これに応じて、債務者から別紙二「答弁書」が提出されたが、右答弁書を検討しても、なお、前記の認定、判断を左右するには至らない。
 一般に、企業が、他人の権利を侵害する可能性のある商品を製造、販売するに当たっては、自己の行為の正当性について、あらかじめ、法的な観点からの検討を行い、仮に法的紛争に至ったときには、正当性を示す根拠ないし資料を、すみやかに提示することができるよう準備をすべきであるといえる。しかるに、本件においては、前記のとおり、審尋期日において、債務者から、そのような事実上及び法律上の説明は一切されなかった。そこで、当裁判所は、迅速な救済を図る民事保全の趣旨に照らして、前記のような審理をした。
2 債権者は、本件申立書において「債務者商品について、執行官保管を命ずる。」裁判を申し立てている。
 右の点に関しては、現時点での判断を留保する。今後、執行官保管を命ずる必要性があるか否かの点につき、数か月間の実情を踏まえて審理した上、遅くとも平成一一年一二月一五日までに、決定する所存である。
3 以上のとおり、債権者らの申立ては理由があるので主文のとおり決定する。

  平成一一年九月二〇日
東京地方裁判所民事第二九部
    裁 判 長 裁 判 官     飯 村 敏 明
          裁 判 官     沖 中 康 人
          裁 判 官     石 村  智