翻訳 井上雅夫  1999.11.05;11.06 プログラム関連米国判決集← ↑UP 

米国連邦民事訴訟規則

規則第23条 集団訴訟<Class Actions>

(a)集団訴訟の必要条件

 ある集団の一人又はそれ以上のメンバーは、(1)全メンバーが加わることが実行不可能であるほどその集団が多数であり、(2)その集団に共通に法律又は事実の問題が存在し、(3)代表当事者の請求又は抗弁がその集団の請求又は抗弁を代表し、かつ(4)代表当事者がその集団の利益を公正かつ適切に保護する時のみ、全員のための代表当事者として訴え又は訴えられることができる[訳1]
  
(b)維持可能な集団訴訟

 訴訟は第(a)項の必要条件が満たされるのに加えて、以下の(1)、(2)又は(3)の時に、集団訴訟として維持することができる[訳2]

(1)その集団の個々のメンバーによる又はメンバーに対する個別の訴訟の遂行が、
(A)その集団の反対当事者の行為に矛盾する基準を作り出す、その集団の個々のメンバーについて矛盾又は変化する判決のリスク[訳3]、又は
(B)実際問題として、その判決の当事者でない他のメンバーの利益に決定的である、又は彼らの利益を保護する彼らの能力を実質的に害する若しくは妨げる、その集団の個々のメンバーについての判決のリスク[訳4]
を作り出すであろう;又は
(2)その集団の反対当事者が、それによって全体としてのその集団についての適切な終局差止救済又は対応する確認救済をするその集団に一般的に適用できる理由で、行動した又は行動することを拒否した[訳5];又は

(3)裁判所が、その集団のメンバーに共通の法律又は事実問題が個々のメンバーだけに影響する問題より優位であり、かつ、集団訴訟が争いの公正かつ効率的な裁判のために他の利用可能な方法に勝っていると認定する[訳6]。その認定には次の問題が含まれる:(A)個別の訴訟の遂行又は防御を個々に管理することによるその集団のメンバーの利益;(B)その集団のメンバーにより又はメンバーに対して既に始められた争いに関連した訴訟の広がり及び本質[訳7];(C)訴訟を特定の法廷に集中することが望ましいこと又は望ましくないこと;(D)集団訴訟の管理の困難性。
(c)集団訴訟が維持されるべきかどうかの命令による決定;通知;判決;部分的に集団訴訟として行われる訴訟 
(1)集団訴訟として提訴された訴訟の開始後、可能な限り早く、裁判所はそれが集団訴訟として維持されるべきものかどうかを命令によって決定するものとする。この項に基づく命令は条件付きであることができ、本案訴訟の判決前に変更又は修正することができる[訳8]

(2)第(b)(3)項に基づき維持された集団訴訟においては、裁判所はその集団のメンバーに、合理的な努力により特定することが可能な全てのメンバーに対する個々の通知を含む、事情により可能な最善の通知を差し向けるものとする[訳9]。その通知は、(A)もし、そのメンバーが指定された日までに除外するよう要求するならば、裁判所はそのメンバーをその集団から除外すること;(B)有利であろうとなかろうと、判決には除外を要求しなかった全てのメンバーが含まれること[訳10]、及び(C)除外を要求しなかったメンバーは、もしそのメンバーが望めば、弁護士を通して出廷することができること、を各メンバーに助言するものとする。

(3)第(b)(1)項又は第(b)(2)項に基づく集団訴訟として維持された訴訟の判決には、その集団に有利であろうとなかろうと、その集団のメンバーであると裁判所が認定した者が含まれかつ記述されるものとする。第(b)(3)項に基づく集団訴訟として維持された訴訟の判決には、その集団に有利であろうとなかろうと、第(c)(2)項で規定された通知がなされ、除外を要求せず、裁判所がその集団のメンバーと認定した者が含まれかつ特定若しくは記述されるものとする。

(4)適切であれば、(A)特定の問題に関して、集団訴訟として提訴又は維持されることができる、又は(B)集団がサブ集団に分割されることができ、各サブ集団が集団として扱うことができる、そしてその時は、本規則の条項はそれに応じて解釈され、適用されるものとする。

(d)訴訟指揮命令

 本規則が適用される訴訟の指揮において、裁判所は以下の適切な命令をなすことができる:(1)手続きの進行の決定又は証拠若しくは主張の提出における過度の繰り返し若しくは複雑化を防止する処置の指令;(2)その集団のメンバーの保護のため又はその訴訟の公正な運営のために、その訴訟のあらゆる段階における一部若しくは全てのメンバーに、又は判決の提案された範囲における一部若しくは全てのメンバーに、又は、代表が公正かつ適切であるとメンバーが考えるかどうかを表すための、請求若しくは抗弁を仲介若しくは提出するための、又はその訴訟に加入するための機会における一部若しくは全てのメンバーに、裁判所が差し向けることができるような方法で、通知がなされるように要求すること;(3)代表当事者又は仲介者に対して条件を課すこと;(4)欠席者の代表権に関する申立をそれに従って削除するために訴答を修正し、それに従ってその訴訟が進行するように要求すること;(5)同様な手続的な問題を処理すること。命令は規則第16条に基づく命令と組み合わせることができ、望ましいように変更又は修正することができる。

(e)解散又は和解

 集団訴訟は裁判所の同意なしに解散又は和解することはできず、提案された解散又は和解の通知は裁判所が指示する方法でその集団の全てのメンバーになされるものとする。

(f)控訴

 控訴裁判所はその自由裁量で、本規則に基づく集団訴訟の認可を許可又は拒絶した地裁の命令に対する控訴を、その命令の登録後10日以内に申請されるとき、許すことができる[訳11]。地裁の裁判官又は控訴裁判所が延期を命令しない限り、控訴は地裁における手続を延期させない。
 


訳注
  
(訳1)集団は原告であっても被告であってもよいが、以下の訳注では、集団を原告、集団に訴えられる企業を被告として記載する。東芝パソコン訴訟(ZDNet)では、被告が東芝、集団が東芝のノートパソコンの全ユーザーの集団、実際に訴えた二人の原告が代表原告(代表当事者)となるはずである。ただし、東芝パソコン訴訟では、裁判所が集団訴訟と決定する前に和解している。
 
(訳2)集団訴訟として維持されるためには、第(a)項を満足すると共に、この第(b)項を満足しなければならない。第(a)項は集団側つまり訴える側だけの要件であるが、第(b)項は訴えられる企業側の要件も規定されている。第(b)項は(1)(A)、(1)(B)、(2)又は(3)のどれかを満足すればよい。
  
(訳3)第(1)(A)号では、個別の訴訟がその集団の反対当事者つまり訴えられた企業の行為に矛盾する基準を作り出すリスクがあることが集団訴訟の要件と規定されている。もし、差止を請求する訴えであれば、ある原告の裁判では被告企業に対する差止が認容され、他の原告の裁判では差止が棄却されれば、被告企業の行為に矛盾した基準が作り出されるから、この要件を満たす可能性が高い。しかし、損害賠償請求の場合は、個々のユーザーによって、被害があるかどうか及び被害の程度は、それぞれ異なるから、この要件を満たす可能性は低いのではないだろうか。東芝パソコン訴訟では、実損が出ていなくても理論的な可能性があるだけで敗訴した判例があるとのことであるが、この理論的な可能性も、FD(フロッピーディスク)に貴重なデータを保管しバックアップを一切していないユーザーと、FDをほとんど使用しないユーザーでは、それぞれ事情が異なるから、この要件を満たさないと主張できたはずである。

(訳4)第(1)(B)項では、その判決の当事者でない他のメンバーの利益に決定的である、又は彼らの利益を保護する彼らの能力を実質的に害する若しくは妨げることが要件となっているが、これに対しても上記(訳3)と同様な主張ができたはずである。

(訳5)この号は差止請求に関するものであるから、東芝パソコン訴訟のように損害賠償の訴えの場合は無関係である。

(訳6)東芝パソコン訴訟では、(訳3)で記載したと同様な理由で、「その集団のメンバーに共通の法律又は事実問題が個々のメンバーだけに影響する問題より優位である」とはいえず、したがって、「集団訴訟が争いの公正かつ効率的な裁判のために他の利用可能な方法に勝っている」とはいえないと主張できたはずである。
  
(訳7)裁判所が検討すべき問題の一つとして、「その集団のメンバーにより既に始められた争いに関連した訴訟の広がり及び本質」が規定されている。東芝パソコン訴訟の場合は、単に二人の原告が主張しているだけであり、東芝のノートパソコンのFDコントローラに問題があることがインターネット上あるいはその他において大きく問題にされてるわけではない。また、実際の被害は一件もないということであり、もし、問題があったとしても、バックアップを取っておくのはパソコンユーザーの常識であり、仮に、データが破壊されたとしても、人が死ぬような本質的に重大な問題は引き起こすはずがない。したがって、この点を主張すれば裁判所は集団訴訟として維持できないと判断した可能性が高い。東芝は弱気になった背景として「相手側弁護士がたばこ会社を相手とした集団訴訟で巨額な和解金を勝ち取った辣腕弁護士だった」(11/5日経社説)ことを挙げている。たばこの場合は、喫煙者及びその近くにいる非喫煙者が肺癌その他の病気にかかる確率が高いことが20〜30年前から言われ続けてきており、問題の広がりが大きく、また、肺癌にかかれば死亡する可能性も高いのであるから、本質的な問題である。したがって、たばこ訴訟は集団訴訟として維持されるべき要件を満たしているが、このたばこの問題とノートパソコンの問題は全く事情が異なるので、相手がたばこ訴訟で活躍した辣腕弁護士であるからといって、それほど恐れる必要はなかったのである。

(訳8)東芝は、「訴訟を起こした地域の陪審員が『アンチ大企業』の評決を頻発していた」(11/5日経社説)と述べているが、集団訴訟とするかどうかは裁判所つまり裁判官が決めるのであるから、最初から陪審員を怖がることはなかったのである。そして、Intuitに対する2000年問題集団訴訟で「実質的な被害なし」でIntuitが勝訴した事例もあり(日経BP)、この事例はカリフォルニア州の州裁判所の事例でありテキサス州の連邦裁判所に拘束力は働かないが、この事例を裁判所に提出すれば、裁判所も理性的な判断をしたと考えられる。なお、この日経BPの記事はgooでサーチすることによって、簡単に発見することができた。残念ながらこの事例の判決はインターネット上では入手できないが、カリフォルニア州の弁護士に依頼すれば、入手できると考えられる。

(訳9)「裁判所はその集団のメンバーに、合理的な努力により特定することが可能な全てのメンバーに対する個々の通知を含む、事情により可能な最善の通知を差し向けるものとする」という規定は、必ずしも、全てのメンバーに対する個々の通知が義務づけられているのではないと考えられるが、例示されている以上、企業側がユーザーの情報を持っている場合は、全ユーザーに通知せざるをえないのではないかと考えられる。そして、実際には、裁判所、原告には全ユーザーに通知する能力がないから、企業側が代行しなければならなくなると考えられる。膨大なユーザー数の場合、その通知の費用を原告側が持てるはずはないから、結局は、企業側が負担させられるのではないだろうか。したがって、この規定は企業側にとって、負担のかかる規定であり、問題のある規定である。

(訳10)「もし、そのメンバーが指定された日までに除外するよう要求するならば、裁判所はそのメンバーをその集団から除外する」という規定も問題のある規定である。このような通知を受け取れば、積極的に訴訟に加わるつもりがない者でも、原告に加入する可能性が高く、必要以上に原告を増やし、被告企業側に負担がかかると考えられる。

(訳11)集団訴訟として維持するかどうかの決定を含む地裁の命令は、控訴裁判所で再審理される。もちろん、これも陪審員は関係せず、3名の巡回裁判官の多数決で決められる。東芝は陪審裁判を恐れて、地裁が集団訴訟とするかどうかの判断の前に高額和解をしてしまったが、地裁の1名の裁判官、控訴裁判所の3名の裁判官を信頼してもよかったのではないだろうか。なお、私はアメリカの知的所有権訴訟についてはある程度の知識を有しているが、集団訴訟については素人です。他のページに書いたことと同様に、このページに書いた翻訳及び訳注について、一切の責任を負いません。
 
 



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