翻訳 井上雅夫 1998.10.18; 31   ↑UP 

ドイツ著作権及び著作隣接権法

第1章 著作権


第2節 著作物

第2条 保護される著作物

(1)文芸、学問及び美術の保護される著作物には、特に次のものが属する:

1.文字の著作物、演説及びコンピュータプログラムのような言語の著作物;

2.音楽の著作物;

3.舞踊芸術の著作物を含む無言劇の著作物;

4.建築芸術及び応用芸術の著作物及びそれらの著作物の下図を含む造形芸術の著作物;

5.写真の著作物と同様に創作される著作物を含む写真の著作物;

6.映画の著作物と同様に創作される著作物を含む映画の著作物;

7.図面、設計図、地図、見取り図、図表及び立体的な描写のような学術的又は技術的性格の描写。

(2)この法律の意味における著作物は単に自らの知的な作品であるにすぎない<nur personliche geistige Schopfungen>。
 

第8節 コンピュータプログラム特別規定

第69a条 保護の対象

(1)この法律の意味におけるコンピュータプログラムは企画資料[訳1]を含むあらゆる形態のプログラムである。

(2)与えられる保護はコンピュータプログラムのすべての表現形式<Ausdrucksformen>に適用される。コンピュータプログラムの要素の基礎をなすアイディア及び原理は、インターフェースの基礎をなすアイディア及び原理を含め、保護されない。

(3)コンピュータプログラムは、著作者自身の知的な創作の成果<das Ergebnis der eigenen geistigen Schopfung>であるという意味において、それが個性的な著作物<individuelle Werke>であるとき、保護される。その保護能力の決定のために、その他の基準、特に質的又は審美的な<qualitative oder asthetische>基準[訳2]が適用されることはない。

(4)コンピュータプログラムに対して、この節の中で特段の定めがない限り、言語の著作物のための一般的な規定の適用がなされる。[訳2]

 

第69b条 勤労及び勤務に関係する著作者[訳3]

(1)コンピュータプログラムが職務の遂行により又は雇用者の指示に従い勤労者によって作成されたときは、特段の取り決めがない限り、雇用者はそのコンピュータプログラムに対するすべての財産的権限の行使を占有する権利を有する。

(2)第1項は勤務に関係する場合に準用する。

 

第69c条 許諾を必要とする行為

 権利者は次の行為を行い又は許諾することに排他的な権利を有する:

1.コンピュータプログラムの、全部又は一部の、あらゆる手段及びあらゆる形態における永続的又は一時的な複製。コンピュータプログラムのロード、表示、実行、伝送又は記憶が複製を必要とする限り、それらの行為は権利者の許諾を必要とする;[訳4]

2.コンピュータプログラムの翻訳、翻案、アレンジ及びその他の改作、並びに得られた成果物の複製。[訳5] そのプログラムを翻案した者の権利には影響を及ぼさない。

3.コンピュータプログラムのオリジナル又は複製物の、貸与を含む、あらゆる形態の頒布。コンピュータプログラムの複製物が、ヨーロッパ共同体域内又はヨーロッパ経済圏の他の条約加盟国内の権利者の許諾により、譲渡の方法で流通に供されたときは、貸与権を例外として、その複製物に関して頒布権は消尽する。

 

第69d条 許諾を必要とする行為の例外

(1)特別な契約の規定がない限り、第69c条第1号及び第2号に掲げる行為は、それがプログラム複製物の使用の権利を有する者にとって、欠陥の訂正を含め、そのコンピュータプログラムの本来の用途での<bestimmungsgemase>使用に不可欠であるとき、権利者の許諾を必要としない。[訳6]

(2)プログラムの使用の権利を有する者によるバックアップコピーの作成は、将来の使用の保証のために不可欠であるとき、契約上禁止することができない。[訳7]

(3)プログラムの複製物の使用の権利者は、その者が権限を有するプログラムのロード、表示、実行、伝送又は記憶の行為によって行われるときは、プログラムの要素の基礎をなすアイディア及び原理を見つけ出す<ermitteln>ために、権利者の許諾なしに、プログラムの機能を観察し、調査し又はテストすることができる。[訳8]

 

第69e条 リバースエンジニアリング[訳9]

(1)独立して作成されたコンピュータプログラムと他のプログラムとの互換性を得るために不可欠な情報<die erforderlichen Informationen zur Herstellung der Interoperabilitat>を手に入れるために<zu erhalten>、第69c条第1項及び第2項の意味におけるコードの複製又はコードの表現形式<Codeform>の翻案が絶対に必要なときは、次の条件が満たされる限り、権利者の許諾は必要ではない。[訳10]

1.その行為が、ライセンシーもしくはプログラムの複製物の使用の権利を有するその他の者よって、又はそれについて権限を有する者の名のもとに、なされる;

2.互換性を得るために不可欠な情報が、第1項の者にとって、未だたやすく利用可能になされていない;

3.その行為はオリジナル・プログラムにおける互換性を得るために不可欠な部分に限定される。

(2)第(1)項の行為によって得られた情報は次のことはできない。
1.独立して創作されたプログラムの互換性を得るため以外の目的のために使用すること、

2.第三者に渡すこと、ただし、独立して創作されたプログラムの互換性のために不可欠であるときは除く、

3.本質的に類似した表現形式のプログラムの開発、作成又は販売のため、又は著作権を侵害する何らかの他の行為のために、使用すること。[訳11][訳15][訳16]

(3)第(1)項及び第(2)項は、その適用が〔権利者による〕その著作物の正常な活用を侵害することなく、権利者の正当な利益を不当に犯さないように解釈すべきである。

 

第69f条 権利侵害

(1)権利者は、違法に作成され、配布され、又は違法な頒布を目的としたすべての複製物を廃棄させることを、その所有者又は占有者に対して、求めることができる。第98条第(2)項及び第(3)項は準用する。

(2)第(1)項は、技術的なプログラム保護メカニズムを違法に解除又は回避することが、ただ一つの用途である手段に準用する。

 

第69g条 その他の法規定の適用、契約法

(1)この節の規定は、他の法規定、特に発明、半導体〔集積回路〕製品の配置、商標の保護、及び、営業及び企業秘密に関する規定を含む不正競争に対する保護に関する法規定のコンピュータプログラムへの適用、並びに、債務契約に影響を及ぼさない。[訳12]

(2)第69d条第(2)項及び第(3)項並びに第69e条に違反する契約の規定は無効とする。[訳13]

 

第5章 適用範囲。経過及び最終規定


第2節 経過規定

第137d条 コンピュータプログラム

(1)第1章第8節の規定は1993年6月24日以前に創作されたコンピュータプログラムにも適用される。[訳14] ただし、排他的な貸与権(第69c条第3号)は1993年1月1日以前に第三者が貸借の目的で入手したプログラムの複製物には対象としない。

(2)第69g条第(2)項は1993年6月24日以前に締結された契約にも適用する。

 


(訳1)日本やアメリカの著作権法では「プログラムの著作物」はプログラム言語で記述されたプログラムそのものを言うが、ドイツでは企画資料<Entwurfsmaterial、ECディレクティブ英語版Article 1.1(ECLAB)ではpreparatory design material>を含んでおり、相違している。しかし、「企画資料」といっても、第69a条第(2)項にアイディアは含まない旨規定されているように、著作権法がアイディアを保護するはずはないのであり、企画を文書の形にしたものが著作物として保護されるということである。そのような文書は日本では言語の著作物として、アメリカでは文字の著作物として保護されている。

(訳2)第69a〜g条のコンピュータプログラム特別規定は基本的にはECディレクティブ(ECLAB)に基づいて立法されたものであるが、第69a条第(3)項の「特に質的又は審美的な基準」及び第(4)項の全文「コンピュータプログラムに対して、この節の中で特段の定めがない限り、言語の著作物のための一般的な規定の適用がなされる。」に関連した記載はECディレクティブArticle 1.3英語版及びArtikel 1(3)ドイツ語版(ECLAB)には存在しない。これはドイツ最高裁が1985年に「どこに配列と組み合わせの特徴的なものが見られるのか明らかでない。個々の要素の配列と組み合わせが現金取引プログラムの通常の経過によって予定されておらず、単なる技術的−機械的結合以上のものである点についての確認を欠いている。何によって争いの対象である現金取引プログラムが既存の現金取引プログラムに対して際立っているのか同様に依然として不明である。当法廷は相応の確認なしでは明白に平均以上の創作的給付が存在するかどうかについて調査することができない」(久々湊伸一訳「コンピュータプログラムに関するドイツBGHの判決」工業所有権法研究Vol.36−4,No.107,P.17〜25)として、侵害を認めた控訴裁判所の判決を差し戻したことがあるので、このドイツ最高裁判例を明確に否定するために、特にこのような規定を加えたものと考えられる。なお、現在の日本の主流の判例学説は1985年のドイツ最高裁判決に近いものであり、1993年に改正されたドイツ著作権法とは異なった考え方をとっている。この点については次回に検討する予定である。

(訳3)Arbeit(「勤労」と翻訳した)は肉体的な労働であり、Dienst(「勤務」と翻訳した)は頭脳的な労働である。ECディレクティブ英語版Article 2.3(ECLAB)では「duties(職務)」であり、区別はない。

(訳4)日本の著作権法第21条の複製権に対応するが、日本では一時的複製は著作権法上の複製とはみなされていないから、日本ではコンピュータプログラムのロード、表示、実行、伝送又は記憶において生じる一時的記憶には複製権は働かない。たぶん、そのために日本では公衆通信可能化権というような支分権を創設する必要があったのではないかと推測する。これに対して、ドイツでは、コンピュータプログラムを使用すれば必然的に行われる、ロード、表示、実行、伝送又は記憶における一時的記憶も複製権で保護されている。しかし、第69d条及び第69e条で、許諾がなくでも行える場合が規定されており、ドイツ著作権法では、原則としてすべての複製、翻案を保護した上で、例外として許諾を必要としない場合が規定されているのである。

(訳5)日本の著作権法の第27条の翻訳権、翻案権等に対応する。

(訳6)第69c条第1号により、一時的な複製を伴うコンピュータプログラムのロード、表示、実行、伝送又は記憶は権利者の許諾が必要であるが、第69d条第(1)項の規定により、そのコンピュータプログラムの本来の用途での使用に不可欠であるときは、ロード、表示、実行、伝送又は記憶を、権利者の許諾なしに、行うことができる。これはワープロソフトであればワープロとして、OSであればOSとして普通に使用することには権利者の許諾が必要がないということで、当然のことである。しかし、契約で禁止することが可能であるから、たとえば、1台のサーバに1つのプログラムをセットアップして、それを複数のクライアントで使用することを契約で禁止するようなことは可能である。したがって、ドイツでは日本の公衆通信可能化権のようなものは特に必要はないと考えられる。また、第69c条第2号により翻案等には権利者の許諾が必要であるが、そのコンピュータプログラムの本来の用途での使用に不可欠であるときは、バグの修正等の翻案も許諾なしに行ってもよいことになる。これは日本の著作権法の第47条の2第1項の規定に対応している。

(訳7)第(2)項はバックアップコピーを行うことを規定した条文であり、これも日本の著作権法第47条の2第1項に対応する。ドイツでは、バグ修正等は第(1)項で規定されており、権利者が契約で禁止することができるが、バックアップコピーについては契約でも禁止することはできない。これに対して、日本では同じ条文の第47条の2第1項でバックアップコピーとバグ修正等が許容されていると考えられるが、これらを権利者が契約で禁止できるかどうかは不明である。

(訳8)プログラムのアイディアや原理は著作権法では保護されないが、たとえば、あるワープソフトで使用されているアイディアや原理を調べるために、プログラムのロード、表示、実行、伝送又は記憶を行うことは、本来の用途での使用に不可欠ではないから、第(1)項では許されていない。しかし、この第(3)号の規定により、たとえば、正規にそのワープロソフトを購入した者は、プログラムのロード、表示、実行、伝送又は記憶によって、つまり、ワープロソフトの通常の使い方によって、プログラムの機能を観察し、調査し又はテストして、そのプログラムの要素の基礎をなすアイディア及び原理を見つけ出し、そのアイディア及び原理に基づいて、オリジナルな表現のワープロソフトを開発することは許されている。ただし、これはあくまで「プログラムの機能の観察、調査、テスト」に限られているのであり、たとえば、逆アセンブルリストを画面に表示させたりプリントアウトさせて、逆アセンブルリストの観察、調査、テストをしてアイディア及び原理を見つけ出すことは許容されていないことに注意すべきである。また、この規定はあくまでプログラムの著作権についての規定であり、たとえばゲームプログラムの場合は、表示される絵や音やストーリーが著作物として保護されているから、ゲームプログラムの通常の使い方によって、ゲームの絵、音、ストーリー等を見つけ出し、それに基づいてオリジナルなコード表現のゲームプログラムを作成した場合は、プログラムコードをアクセスしてはいないから、プログラムの著作権侵害に問われることはないが、ゲームとして同一あるいは翻案の範囲内であれば、日本では映画の著作権の侵害、アメリカではオーディオビジュアルの著作権の侵害となる。

(訳9)ドイツ語では「Dekompilierung」であり、ECディレクティブ英語版Article 6(ECLAB)では「Decompilation」であるから、「逆コンパイル」と翻訳することも可能である。たとえば、C言語等でソースコードを作成し、それをコンパイルしてオブジェクトコードを得るが、逆にオブジェクトコードからC言語等に復元することを「逆コンパイル」と言う。しかし、第69e条は、このような意味の「逆コンパイル」のみを規定してるのではないので、「リバースエンジニアリング」と意訳した。なお、オブジェクトコードをデバッガや逆アセンブラを使用して逆アセンブルすることは可能であるが、オブジェクトコードからC言語等へ逆コンパイルする逆コンパイラは存在しないと考えられる。ただし、Javaのバイトコードは逆コンパイル可能であり、また、IBM AS/400用のCOBOL、RPG等には逆コンパイラがあるようであるが、この点については(訳15)(訳16)で述べる。

(訳10)著作物はコピーすればいくらでも複製物を作成できるので、著作者の財産的権利を保護するために、複製権等が著作者に与えられている。コンピュータプログラムについても第69a条第(3)項、第(4)項に規定されているように、基本的には言語の著作物と同様に保護されている。しかし、プログラムの場合は、マーケットを支配しているプログラムと互換性がなければ、動作しないとか、ほとんど売れないから、支配的なシェアを持っているメーカーが独占的利益を享受し得る状況が生じやすい。しかし、著作者にマーケットを独占させることは著作権法の目的ではないから、第69e条で、互換性を得るために不可欠な情報を手に入れるために、一定の条件のもとに、他のプログラムのコードの永続的又は一時的な複製、翻案を認めているのである。ここで注意しなければならないのは、この規定は他のプログラムの互換性に関連する部分のコードをそのまま又は書き換えて、自分の独立して作成されたプログラムに書き加えることを許容しているのではないことである。「他のプログラムとの互換性を得るために不可欠な情報を手に入れるために」という規定からわかるように、手に入れるのは「情報」つまり第69a条第(2)項に規定された「インターフェースの基礎をなすアイディア及び原理を含めたコンピュータプログラムの要素の基礎をなすアイディア及び原理」である。しかし、このような情報を手に入れるためには、他のプログラムを逆アセンブルしたり、ダンプリストをプリントアウトしたり、デバッカで1ステップずつ実行させ、レジスタ、スタック、データセグメント等の変化を観察、調査、テストしたりする必要があり、これらは第69c条第1号(永続的又は一時的複製権)、第2号(翻案権)により許諾がなければ行うことができない。そこで、この第69e条で、互換性を得るために不可欠な情報を手に入れるためなら、許諾なしに、逆アセンブル等を行うことができると規定しているのである。

(訳11)第69e条はあくまで互換性を得るために不可欠な情報を手に入れるために逆アセンブル等を許容しているのであり、類似した機能のプログラムの開発を行うために、他のプログラムを逆アセンブル等して、そのアイディアや原理を手に入れることは許容していない。他のプログラムと類似した機能を持つプログラムを作成するためには、第69d条第(3)項に規定された方法で、つまり、他のプログラムを通常の使い方で使用して、プログラムの機能の観察、調査、テストを行いアイディアや原理を手に入れることができる。多くの場合はこの方法で十分であると考えられ、しかも、逆アセンブル等を行うよりも遙かに簡単に同様な機能のプログラムを開発できると考えられる。しかし、この方法ではアイディアや原理を手に入れられない場合もあり、そのような場合には、逆アセンブル等を行い解析すれば、そのアイディアや原理を手に入れることができるかもしれない。しかし、ドイツ著作権法はこのようなリバースエンジニアリングは許容してはいないのである。一般に、プログラムはコンピュータに読ませるための「文章」であり、人間に読ませるために書かれるものではないから、ソースコードでさえ人間には読み難く、それを読んでそのアイディアあるいは原理を理解するのは易しいことではない。そこで、プログラマはプログラム中にコメントを書き入れ、また、関数名や変数名にその内容がわかるような名前をつけ、自分自身及び後にデバッグ、バージョンアップをする人が理解しやすいようにしておくのである。ところが、オブジェクトコードを逆アセンブルしてできた逆アセンブルリストは、読むためにはハードウエアの知識が必須であるばかりでなく、コメントは復元されておらず、また、関数名、変数名等も復元しないのが普通である。さらに、ソースコードがC言語等の高水準言語で記述されている場合は、逆アセンブルリストはソースコードとは似ても似つかぬものであり(なお、ソースがアセンブラ言語で記述された場合はソースと類似している)、C言語等でソースが記述されたプログラムの逆アセンブルリストを解析するということは、ソースを書いたプログラマが自分では書いたことも見たこともないものを読み、そのアイディアと原理を手に入れるということである。したがって、逆アセンブル等による解析によって、表現から完全に分離されたアイディアと原理だけを手に入れるのは実際にはかなり難しいのではないかと考えられる。そのため、結局はコードの表現の複製、翻案となりやすいと考えられるから、ドイツ著作権法が互換性に不可欠な情報を手に入れるためだけに限定してリバースエンジニアリングを許容したのは、私としては、妥当であると考えている。

(訳12)第69d条第(3)項、第69e条の方法で他のプログラムのアイディアや原理を手に入れて自分のプログラムの開発に利用することができるが、その場合でも、他の知的所有権、例えば特許権、商標権等を侵害したり、不競法に違反したりしてはならないのは当然である。

(訳13) バックアップコピー、通常の使い方によるプログラムの機能の観察、調査、テスト、又は、互換性に不可欠な情報を得るためのリバースエンジニアリングを禁止する契約は無効となる。たとえば、マイクロソフト社の使用許諾契約書には、「お客様は、本ソフトウエア製品をリバースエンジニアリング、逆コンパイル、逆アセンブルすることはできません。」と記載されているが、ドイツでは、互換性に不可欠な情報を得るための場合に関しては、この契約条項は無効である。

(訳14)コンピュータプログラム特別規定は、この1993年の改正が行われる前に創作されたプログラムにも適用される。(訳2)で述べたように、ドイツ最高裁は1985年に「当法廷は相応の確認なしでは明白に平均以上の創作的給付が存在するかどうかについて調査することができない」として、侵害を認めた控訴裁判所の判決を差し戻しており、これはプログラムが著作権で保護されるためには平均以上の創作性が必要であることを判示したものである。しかし、この事件のプログラムについても、第137d条により、この改正法が適用されるから、第69a条第(3)号及び第(4)号の規定により、プログラムが著作権で保護されるために必要とされる創作性に、質的又は審美的な基準が適用されることはない。したがって、1993年以降に、この事件が係属していれば、あるいは再審請求されていれば、ドイツ最高裁を含めたドイツの裁判所は、この事件の「現金取引プログラム」は著作権で保護される著作物であるという前提で審理したものと考えられる。

(訳15)Javaの場合は、これまでの高水準言語とは異なり、バイトコードからソースコードをほぼ復元できる逆コンパイラが入手可能である(Digital Cat'sDigital Cat's)。リンク先の記事に記載されているように、曖昧化等によって、復元されたソースを読みにくくすることはできるようではあるが、これまでに比べれば、リバースエンジニアリングを行いやすい状況が生じつつある。これまでは、逆アセンブルはできるが、逆コンパイルはできず、他のプログラムを解析してアイディアや原理を入手することは困難であったから、法律がリバースエンジニアリングについて規定する必要性はそれほど高くはなかったのであるが、Javaが普及し、リバースエンジニアリングが比較的容易にできるようになるとすると、法律がリバースエンジニアリングに対してどのように対処するのかは重要な問題となってくる。この点に関しては、私としては、少なくとも現時点では、ドイツ著作権法のように互換性に関する情報を得るときにだけリバースエンジニアリングが許容されるということでよいと思っている。一方、日本において問題なのは、端的に言えば日本ではデッドコピーについてはプログラムの著作権は保護されているが、翻案については実質的に保護しない判例学説が有力であることである。Javaの普及につれて、Javaのバイトコードを逆コンパイルしてソースを復元し、それを書き換えて、再コンパイルして、自分のオリジナルなプログラムであると称して、販売するケースが増える可能性がある。このとき、現在の日本の判例学説が適切に対応できるとは思えない。Javaの普及と共に、日本においても、プログラムの著作権がドイツやアメリカ等と同様に正しく理解されることが必要となりつつあるのである。

(訳16)一般にはオブジェクトコードから高水準言語のソースに復元する逆コンパイラは市販されていないと考えられるが、IBM AS/400用のCOBOL、RPG等の言語については三和コムテックから逆コンパイラが販売されている。しかし、この場合は、自社内利用のみの限定ライセンスであり、CPUにユニークなシステム連続番号上の使用に固定され、かつ、逆コンパイルする権限が必要であるから、この逆コンパイラの使用は、権限のある者による逆コンパイルであり、仮に、ドイツ著作権法が日本に適用されたとしても、問題は生じないと考えられる。
 
 


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