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日本の著作権法における送信可能化権について

1998.08.08 井 上 雅 夫
 
  日本の著作権法(平成9年改正法)は、23条1項で「著作者は、その著作物について、公衆送信動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む)を行う権利を専有する」と規定しており、プログラム及びインターネットにとって極めて重要な法律です。
 23条の「公衆送信」は2条1項7号の2で定義され、「自動公衆送信」は9号の4で「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの・・・をいう。」と定義され、「送信可能化」は9号の5で「・・・・自動公衆送信しうるようにすることをいう。・・・」と定義されています。この結果、インターネットサーバーに文章、写真、イラスト、音楽、プログラム等の著作物をアップロードして、インターネット上で利用可能にすることが著作権法で正式に保護されることになりました。したがって、他人の著作物をインターネットで公開するときには、送信可能化権についての許諾、つまり、インターネットで公開してもよいという許可が必要です。
 7号の2の「公衆送信」の定義は極めて複雑ですが、省略して書くと、「公衆によって直接受信されることを目的として・・の送信(・・・同一の構内・・にあるものによる送信(プログラムの著作物の送信を除く。)を除く。)を行うことをいう。」となります。
 かっこの外側がインターネット等について送信可能化権を保護する規定です。
 そして、1重かっこ内に同一構内について規定されています。
 さらに、重かっこの内側ではプログラムについて規定されていますが、2重に「除く」ですから、除かれないことになり、保護されます。つまり、同一構内のクライアント/サーバー・システムにおいて、サーバーに1つのプログラムを保存し、クライアントがそれを一時的に引き出して使用する場合は、サーバーにコピーした1つのプログラムの複製権の許諾だけでなく、プログラムの著作権者から送信可能化権の許諾を受けることが必要となります。ただし、クライアントが数台しかない場合は2条5号の「公衆」の定義に合うかどうか疑問です。また、サーバーから、一時的ではなく、恒久的にダウンロードして使用する場合は、クライアント側での複製権の問題も生じます。
 一方、1重かっこ内では同一構内の場合は「除く」ですから、同一構内のイントラネット・システムで、サーバーにプログラムではない著作物、例えば1つの電子百科辞典を保存し、多数のクライアントで使用する場合は、7号の2上は、サーバーにコピーした1つの電子百科辞典についての複製権の許諾を受けるだけでよいことになると思います。(各クライアントの画面に表示された電子百科辞典の各ページが著作権法上の複製であるとすれば、各クライアント上で複製権侵害が生じることになるでしょうが、日本では一時的に画面に表示することは複製権の侵害とはみなされていないと思います。)
 日本では、1985年にプログラムの著作権が規定されましたが、その後は、プログラムの著作物に「高度な創作性」を要求する判例・学説が主流となり、プログラムの著作権は差別された状態にありました。ところが、平成9年法によって、条文上、通常の著作物の方が逆差別されることになったのです。プログラムの著作物は、独禁法上の問題が生じ易いことを除けば、通常の著作物とそれほど異なるものではないので、いずれ、通常の著作物についても、同一構内での送信可能化権が、「プログラム並に」、保護されるようになると思います。

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