翻訳 井上雅夫 1998.05.03; 2000.02.15   ↑UP 

合衆国法律集 第17編

著作権

  第1章 著作権の内容と範囲

第101条 定義

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 「コンピュータ・プログラム」[訳1]は、一つの結果をもたらすために、コンピュータにおいて直接的又は間接的に[訳2]使用される文又は命令[訳3]< statements or instructions>を組み合わせたものである[訳4]

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(訳2)「直接的」はオブジェクトコード、「間接的」はソースコードを意味していると考えられる。日本の著作権法はこの点は曖昧であるが、日本でも同様に考えるべきだろう。 

(訳3)「英和コンピュータ用語大辞典」(コンピュータ用語辞典編集委員会、日外アソシエーツ1989.11.1発行)によれば、「statement:文、命令文、「文」を大きく分けると宣言文(specification statement)と実行文(execution statement)の2種類となる。一連の動作の中の一段階又は一組の宣言を表す言語構成要素。」、「instruction:命令、CPUの処理動作を規定するものを「命令」という。コンピュータを動かすための「ことば」の最小単位。一つの命令は、命令コード(instruction code)とアドレス部(オペランド)とで構成されることが多い。」と記載されている。また、英語を翻訳した日本語で書かれたC言語の本には「文」と記載されており、アセンブラの本には「命令」と記載されているから、文(statement)は高水準言語のソースコードの最小単位、一方、命令(instruction)はオブジェクトコードあるいはアセンブラのソースコードの最小単位を意味しているのではないだろうか。なお、日本の著作権法では「指令」だが、同様に解釈すべきだろう。 

(訳4)101条は様々な著作物を定義した極めて長い条文であり、プログラムはその最後に規定されている。101条の真ん中あたりには、「絵画、図表、彫刻の著作物は、機械的又は実用的な面が関係していない形状の限りにおいて、美術工芸品を含む。実用品のデザインは、そのデザインが、その物品の実用面と区別して見分けることができ、かつ独立して存在することができる絵画、図表、彫刻の特徴を有する場合に限り、かつ、その範囲の限りにおいて、絵画、図表、彫刻の著作物とみなす。」という規定がある。もし、「実用面が関係していない限りにおいて著作物とみなす。」という規定がプログラムにも当てはまると考えてしまうと、ゲームソフトは著作権で保護されるが、実用ソフトは著作権で保護されないという誤解が生じる。しかし、この規定はあくまで美術工芸品及び実用品のデザインについてのものであり、条文上、プログラムの著作物とは無関係である。この点については、102条の(訳6)で再度述べる。

  
 (a) 著作権の保護は、この法律にしたがい、現在知られ又は後に開発される任意の有形の表現媒体<any tangible medium of expression>に固定されたオリジナルな[訳5]著作物<original works of authorship>に与えられる。表現媒体から著作物は直接的に、又は機械若しくは装置の助けにより、知覚され、複製され又は別の方法で伝達されることができる[訳6]。著作物は次の種類を含む。
(1)文字の著作物[訳7][訳8]<literary works>
(2)音楽の著作物、それに伴う歌詞を含む
(3)演劇の著作物、それに伴う音楽を含む
(4)パントマイム及び舞踏の著作物
(5)絵画、図表、及び彫刻の著作物
(6)映画及びその他のオーディオビジュアルの著作物
(7)録音、及び
(8)建築の著作物
 (b) オリジナルな著作物の著作権の保護は、その著作物の中で、記載され、説明され、図解され、又は具体化された形式に関わらず、アイディア、手順<procedure>、プロセス、システム、操作方法、概念<concept>、原理、発見には、決して及ばない[訳9][訳10]
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(訳5)米国著作権法の「original」は「独創的」と翻訳される場合があるが、日本語の「独創的」は「極めて高い創作性」を意味しているから、不適当な訳である。米国著作権法の「original」の要件は、作品が(他人の作品からのコピーではなく)著者により独自に創作されたことと、少なくとも最小限度の創作性(creativity)を有していることである。 
(訳6)102条(a)項柱書きは著作権一般に関するものであり、日本の著作権法には直接対応する条文はないが、「著作物は表現媒体上に表現されたものである」であるという著作権の本質の一つを示すものである。たとえば、小説の場合は、本が表現媒体であり、その上に表現された情報が小説の著作物である。プログラムの場合は、CD−ROM、フロッピーディスク、ハードディスク等が表現媒体であり、その上に記録された情報がプログラムの著作物である。小説でもプログラムでも表現媒体と著作物は明瞭に区別できるが、101条の(訳4)に示した美術工芸品等の場合は何が表現媒体であり、何がその上に表現された情報であるのかの区別が必要となる。たとえば、芸術的な造形を施された花瓶の場合は、実用的な価値を持つ花瓶が表現媒体であり、その上に表現された造形が情報であり著作物である。美術工芸品等の場合は、実用的な面を除外することによって、表現媒体を取り除き、その上に表現された情報つまり著作物を取り出しているのである。したがって、表現媒体とその上に表現された情報が明確に区別できるプログラムに「実用的なものは保護しない」という美術工芸品等の規定を適用するのは不適当であり、ゲームソフトも実用ソフトも共に著作権で保護されるのである。

(訳7)「literary works」は「文芸の著作物」と訳される場合が多いが、この訳では芸術的なものだけに限られる印象を受けるから不適当である。「literary works」は文字、数字、記号等からなる著作物であり、プログラムの著作物は、判例上、文字の著作物に含まれる。小説は通常の言語による文字の著作物であり、プログラムはプログラム言語による文字の著作物であり、変わるところはない。ただし、小説は情報を伝える相手が人間であるのに対して、プログラムの場合は情報を伝える相手がコンピュータである点が相違している。 

(訳8)102条(a)項(1)〜(8)に対応するのは、日本の著作権法の第10条1項1号〜9号であるが、日本では「1号 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」とは別に、「9号 プログラムの著作物」が規定されている。 

(訳9)102条(b)項は、著作権が保護するのは表現であり、アイディアではないという著作権の本質の一つを明らかにした条文である。最近のアメリカの裁判所はプログラムの著作権侵害事件において、102条(b)に基づいて発展したアイディア・表現二分法により、非侵害と判断する場合が多い。しかし、 いずれのケースも、ソースコード、オブジェクトコードが類似していないことに注意すべきである。プログラムは何らかの機能を有しているのであり、ソースコードあるいはオブジェクトコードの表現の複製、翻案を行えば、それに伴って、その機能もコピーされる。この場合、プログラムの機能はアイディアだからアイディアのコピーであり著作権侵害ではないといえるだろうか。もちろん著作権侵害である。102条(b)はアイディアだけを利用するのは著作権侵害ではないという意味であり、アイディアが含まれていればその表現をコピーしてよいと規定しているわけではない。ソースコード、オブジェクトコードの表現が類似していなければ、つまり、オリジナルな表現でプログラムを作成すれば、同一の機能のプログラムを作成しても著作権侵害が問題になることはないが、ソースコード、オブジェクトコードにアクセスし、かつ、その表現が類似していれば、プログラムの著作権侵害である。プログラムではわかりにくいかもしれないが、小説を例にとると、他人の小説から読者を感動させる表現手法を学び自分の小説に生かすのは著作権侵害ではない。これに対して、他人の小説の表現の複製、翻案を行えば、それに伴って、複製あるいは翻案された小説もオリジナルな小説が読者に与える感動と同じ感動を読者に与えることができるが、これは著作権侵害である。

(訳10)日本の著作権法には、102条(b)に直接対応する条文はないが、日本の著作権法第10条第3項にはプログラムの著作物について「著作権の保護はプログラム言語、規約及び解法には及ばない」と規定されている。

  
第106条 著作物における排他的権利

 107条ないし120条を条件として、本法に基づく著作権者は次に挙げることを行使および許諾する排他的な権利を有する。

(1)著作物を複製物として又はフォノレコード<phonorecords>として複製すること
(2)著作物に基づいて二次的著作物を作ること
(3)著作物の複製物若しくはフォノレコードを、販売若しくはその他の所有権の移転によって公衆に頒布すること、又は、レンタル、リース、貸すこと
(4)文字、音楽、演劇及び舞踏の著作物、パントマイム、並びに映画<motion pictures>及びその他のオーディオビジュアルの著作物の場合、著作物を公に演じること
(5)文字、音楽、演劇及び舞踏の著作物、パントマイム、並びに、映画又はその他のオーディオビジュアルの著作物の個々の画像を含む絵画、図表又は彫刻の著作物において、公に著作物を展示すること
(6)録音物<sound recordings>の場合、デジタルオーディオ送信手段によって<by means of a digital audio transmission>、公に著作物を演奏すること[訳11]

(訳11)具体的にはCDやデジタルオーディオテープ等の音源を使ってデジタル放送することを意味していると考えられる。1998年7月27日の日経によると、レコード大手約10社は、通信衛星(CS)デジタルラジオ放送がレコード制作者の複製権を侵害しているとして、サービスの差止と損害賠償請求を求める訴えを起こすとのことである。すでにアメリカでは、この106条(6)項でデジタル音源のデジタル放送について規定されており、114条(d)項(CRIC)には106条(6)の制限について規定されている。

第107条 排他的権利の制限:フェアユース

 106条及び106A条の規定にかかわらず、著作物のフェアユース<fair use>は著作権の侵害ではない。フェアユースは、批評、論評、ニュース報道、教育(教室で使用すれるための多数のコピーを含む)、学問、研究を目的とした、複製物又はフォノレコードの再生による使用を含む。特定のケースにおいてなされた著作物の使用がフェアユースであるかどうかを決定するときに、考慮されるべき要素は以下のものを含むものとする −

(1)その使用が商業的なものか、非営利の教育目的かどうかを含む、その使用の目的及び性質;
(2)その著作物の性質;
(3)その著作物全体に関して使用された部分の量及び実質性;及び
(4)その著作物の潜在的マーケット又は価値に対するその使用の影響。
著作物が公表されていない事実自体は、認定が上記の要素の全てを考慮してなされる限り、フェアユースの認定を妨げないものとする。

第109条 排他的権利の制限:複製物又はフォノレコードの移転の効力

(a) 106条(3)号の規定にかかわらず、本法に基づいて適法に作成された複製物若しくはフォノレコード<a particular copy or phonorecord>の所有者、又はそのような所有者によって委任された者は、著作権者の許可なしに、その複製物又はフォノレコードを販売又は他の方法による所有の処分をする権利が与えられる。・・・・・・
  
(b)

(1)
(A) (a)項の規定にかかわらず、録音物<sound recording>の著作権者又はコンピュータ・プログラム(プログラムを記録したテープ、ディスク又は他の媒体を含む)の著作権者の許可がなければ、及びその中に記録された音楽の作品の録音物の場合は、フォノレコードの所有者及びコンピュータ・プログラム(プログラムを記録したテープ、ディスク又は他の媒体を含む)の複製物を所有する者は、直接的又は間接的な商業的な利益のために、レンタル、リース若しくは貸すこと、又はレンタル、リース若しくは貸すことに似た他の行為又は実践によって、そのフォノレコード又はコンピュータ・プログラム(プログラムを記録したテープ、ディスク又は他の媒体を含む)の所有の処分又は処分の委任をすることができない。直前の文は、非営利の図書館又は非営利の教育施設によって非営利の目的で、フォノレコードのレンタル、リース若しくは貸すことには適用されない。非営利の教育施設によって適法に作成されたコンピュータ・プログラムの複製物の所有の他の非営利教育施設への、又は学部、職員及び学生への移転は、この項〔(b)項〕に基づく直接的又は間接的な商業目的のためのレンタル、リース若しくは貸すことを構成しない。

(B) この項〔(b)項〕は次のものには適用しない。

(i) 機械又は製品に記憶されたコンピュータ・プログラム及び通常の操作中又はその機械並びに製品の使用中に複製されることがないコンピュータ・プログラム;又は

(ii)ビデオゲームをするために設計された及び他の目的のために設計されたかもしれない制限された目的のコンピュータに記憶され、又は共に使用されるコンピュータ・プログラム。

(C) この項は本法9章〔半導体チップ製品の保護〕の規定に影響を及ぼさない。
(2)
(A) 非営利の図書館によって貸し出されたコンピュータ・プログラムの各複製物が著作権登録官<the Register of Copyrights>(USCO)が規則によって定めた要件に従った著作権の警告をプログラムを含むパッケージに添付している場合は、非営利の図書館による非営利の目的のコンピュータ・プログラムを貸し出すことに、この項〔(b)項〕は適用されない。

(B) 1990年のコンピュータ・ソフトウエア・レンタル改正の施行の日の後3年よりも遅くなく、かつ著作権登録官が適切であるとみなすとき以降、著作権登録官は、著作権者及び図書館員の代表の諮問の後、この号〔(2)号〕が、非営利の図書館にその機能を果たす能力を与えながら、著作権制度の完全性の維持の意図された目的を達成したかどうかを述べる報告書を議会に提出する。その報告書は著作権登録官がこの項〔(b)項〕の目的を達成するために必要だと考える情報又は勧告を議会に助言する。

(3) この項〔(b)項〕は独禁法の規定に影響を及ぼさない。直前の文において、「独禁法」はClayton法の最初の条におけるその用語が与える意味を持ち、不公正競争に関連した範囲で連邦取引委員会法の5条を含む。

(4) (1)号に違反して、フォノレコード又はコンピュータ・プログラムの複製物(プログラムを記録したテープ、ディスク又は他の媒体を含む)を配布する者は本法501条に基づく著作権侵害者であり、502、503、504,505及び509条に規定された救済が課せられる。そのような違反は506条に基づく刑事的犯罪ではなく、18U.S.C.の2319条に規定された刑事罰をその者に科す根拠にはならない。

(c) 106条(5)号の規定にかかわらず、本法に基づいて適法に作成された複製物の所有者、又はその所有者によって委任された者は、著作権者の許可なしに、直接的又は一度に一つのイメージより多くない映写によってのどちからで、その複製物が位置する場所にいる視聴者に、その複製物を公に表示する権利が与えられる。

(d) (a)及び(c)項によって規定された特権<privileges>は、著作権者による許可なしには、その所有権を取得するすることなく、レンタル、リース、ローン、又は他の方法によって、著作権者から複製物又はフォノレコードの所有を得た者には及ばない。

(e) 106条(4)号及び106条(5)号の規定にかかわらず、コイン式機器において使用されることを意図された電子オーディオビジュアルゲームの場合において、本法に基づいて適法に作成されたゲームの複製物の所有者は、そのゲームの著作権者の許可なしに、コイン式機器でそのゲームを公に実行又は表示する権利が与えられる。ただし、電子オーディオビジュアルゲームの著作権者が著作物の著作権者でない場合は、この項〔(e)項〕は電子オーディオビジュアル・ゲームの中に表現された著作物には適用されない。


 106条の規定にかかわらず、コンピュータプログラムの複製物の所有者が、次の条件でそのコンピュータプログラムのもう一つの複製物又は翻案物を作成することを行うこと、又は委任することは、侵害ではない。
(1)その一つの新しい複製物又は翻案物が、一つの装置に関連したコンピュータプログラムの利用において、欠くことのできない処置として作成され、かつ、その他の方法では使用されないこと

(2)その一つの新しい複製物又は翻案物は保管用のみを目的とし、かつ、コンピュータプログラムの継続的所有が合法性を終了した場合はすべての保管用複製物は破壊されること。この条文に従って作成された厳密な意味の複製物は、そのプログラムのすべての権利のリース、販売、又はその他の移転の一部としてのみ、リース、販売、又はその他の移転をすることができる。そのように作成された翻案物は、著作権者の許諾に基づいてのみ移転することができる。


(訳12)117条は、日本の著作権法47条の2に対応している。

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