翻訳 井上雅夫 1999.07.17; 27   ↑UP 

 原典: SAS Institute, Inc v. S&H Computer System, Inc., 225 USPQ 916 (M.D.Tenn. 1985)

SAS統計分析ソフト事件

M. D. Tennessee地方裁判所

〔原告〕 SAS Institute, Inc.
〔被告〕 S&H Computer Systems, Inc.

事件番号82-3669及び82-3670
1985.3.6

  目   次
メモランダム
事実認定
法的結論
 I.SAS 79.5の著作権の有効性
 II.Instituteの契約の請求
 III.Instituteの著作権侵害の請求
 IV.S&Hの請求
 V.弁護士料
 VI.救済
 VII.結論
命令
(訳注)

SAS Institute, Inc.のS&H Computer Systems, Inc.に対する著作侵害、契約違反、詐欺、営業秘密不正使用、及び不正競争事件。S&H Computer Systems, Inc.の確認の訴え、及び契約違反、並びに営業妨害反訴事件。
222 USPQ 715も参照。

原告代理人 James V. Doremus, Nashville, Tenn.
被告代理人 Jay S. Bowen, Nashville, Tenn., and J. Thomas Franklin, Boston, Mass.

Wiseman地裁首席裁判官


メモランダム

 本民事訴訟は両当事者が請求した本訴・反訴の併合事件である。SAS Institute, Inc. [Institute]は、S&H Computer Systems, Inc. [S&H]に対する本訴事件において、登録商標「SAS」によって知られ広く販売されたInstituteが著作権を有するシステムから複製及び翻案された統計分析コンピュータソフトウエア・システムをS&Hが作成したことに関連して、著作侵害、契約違反、詐欺、営業秘密不正使用、及び不正競争に基づく救済を求めている。S&Hは反訴事件において、著作権及び契約違反に関する確認を求め、本紛争を解決する努力の中で両当事者によって締結された別の契約の違反、及びS&Hとサードパーティ間の契約への妨害の権利回復を、Instituteに対して求めている。本裁判所の裁判管轄権は著作権及び不正競争請求に関する種々の公民権、連邦問題、及び28 U.S.C. §1338に基づいている。また、州法に関する請求は継続中の裁判管轄権に基づいている。本裁判所の裁判管轄権について争いはない。

 本件は1983年9月12日〜20日に、Instituteを原告として陪審員なしのトライアルが行われた。本メモランダムは本裁判所の事実認定及び法的結論を明らかにする。事実認定が法的結論を意味する範囲で、そのように考えられるべきであり、また、その逆も同様である。

 著作権及び契約の両方についてInstituteに有利な認定をし、求められる救済を認容したことにより、本裁判所は営業秘密、商標法、詐欺及び継続中の州法上の請求を却下する。

 本裁判所は両当事者から事実認定及び法的結論の案を求め、提出されたそれらの多くを本裁判所の事実認定及び法的結論としてそのまま採用した。

 本裁判所の要請により、両当事者は本件において本裁判所を助ける専門家の任命に合意し、Rule 706, Fed. R. Evid.の証拠開示要件を特別に放棄した。本裁判所はその合意に基づき任命された専門家、Dr. Robert I. Winner, Ph.D.の貴重な助力に感謝する。


事 実 認 定

 1.原告SAS Institute, Inc.はNorth Carolina州の法人であり、登録商標「SAS」のもとに統計分析を行うコンピュータプログラミング・システムを販売している。SASは、現在、IBMコンピュータ、及び他のいくつかの会社によって提供されているIBMコンパチィブルコンピュータに関してだけ事業を行っている。

 2.InstituteはDigital Equipment Corporation [DEC]によって製造されたVAXコンピュータ上で動作するSASのバージョンをテストしている。InstituteはSASのユーザーの要望に答えてSASのVAXバージョンを開発することを決定した。毎年、Instituteは「ソフトウエア投票用紙<software ballots>」をユーザーに配り、SASに対する提案を求めた。SASの非IBMバージョンの要望が2年連続でユーザーの強い要望となった後、Instituteは1981年に、あるプロジェクトを開始した。SASのVAXバージョンはいわゆる「ベータテスト」が200以上配布された。ベータテストは実際の製品の出荷前のオペレーショナルなテストの最終フェーズである。

 3.SASは数年以上にわたってそれぞれ特有な番号で特定される一連のより進んだエディション又は「リリース」を販売していた。本件訴訟は主にSASリリース79.5に関連している。1981年5月にリリースされたSAS 79.5は初期のSASリリース、特に1976年7月にリリースされたSAS 76.2からの広範な開発過程の結果である。

 4.SAS 79.5に至る開発過程にはほぼ5年間を必要とし、18人年以上の労働を必要とした。甲38号証。この過程で新しいプロシージャとSASの既存のプロシージャに対する大きな進歩の両方が付け加えられた。Instituteの専門家証人の一人であるDavid Peterson博士はSAS 79.5に含まれるコンピュータコードの行の内の約67%は「新規」である、つまり、SAS 79.2から持ち越していないと証言した。S&Hのただ一人の専門家証人、Alan Mertenは、彼が推測する新規なソースコードの行数(70%)は多くとも数%しか相違せず、Peterson博士のこの点の証言の大意に合意した。

 5.コンピュータプログラムのソードコードはプログラムによって実行されるさまざまな仕事を達成するためのコンピュータに対する一連の命令であり、適切に訓練された人間にとって容易に理解可能なプログラミング言語で表現されている。ソースコードは二つの機能を果たす。第一には、テキストと類似のものとして取り扱うことができ、プリントアウトすることができ、読み、学習でき、文書がワープロにロードされるのとほとんど同様な方法でコンピュータのメモリにロードされる。第二に、ソースコードはプログラムを実行させるために使用される。これを行うために、ソースコードは「コンパイル」される。これは「コンパイラ」と呼ばれるプログラムの制御に基づいてコンピュータによって実行される自動プロセスを含んでおり、ソースコードは「オブジェクトコード」に翻訳されるが、それを人間が理解するには極めて困難である。プログラムのオブジェクトコード・バージョンはコンピュータのメモリにロードされ、コンピュータにプログラムの機能を遂行させる。

 6.S&Hは新規なソースコードは些細な又は機能的に重要でない変更であると主張するが、Instituteの会長のJames Goodnight博士はSASのソースコードは重要な機能的な目的以外は変更されていないと証言した。Goodnight博士及びPeterson博士は共に、コンピュータプログラムにおける全ての機能的変更又は増強は新規なソースコードの追加又は挿入によってなされると証言した。新規なプロシージャ及び既にあるプロシージャ内のまとまった新規なソースコードを含む実質的な新規部分がSAS 79.5で追加されたというInstituteの証拠は、反証を挙げられておらず、本裁判所によって容認される。

 7.本裁判所は、SAS 79.5が数多くの実質的な追加、増強、改訂、及びSAS 79.2に含まれない他の新規なものを含んでいるものと認め、SAS 79.5が全体として1976年改正著作権法に基づく「オリジナルな著作物」としての資格を有するものと認める。

 8.合衆国国会図書館の著作権局はSASリリース79.5に適用されInstituteが著作権者である著作権登録No. TXU 96-620を交付し、1982年6月23日に効力が発生した。甲2号証。この著作権登録は取り消されておらず、変更されてもいない。

 9.InstituteはSASのコピーを販売してはいない。むしろ、顧客がライセンス契約の条件に従いSASを使用するライセンスを得るという各顧客との個々の契約によってSASを市場に出している。本件はInstituteとTennessee州NashvilleにあるTennessee州の法人S&Hとのライセンス契約に主に関係している。

 10.S&HによるSASの契約に先立つ出来事がNashvilleのVanderbilt大学の学部及び職員の小さなグループによって起こされていた。Charles Federspiel生物統計学教授は1981年の早い時期にSASによって提供されるような複雑な統計計算能力を必要とする研究に従事していた。極めて簡単な調査の後に、FederspielはSASはIBM又はIBM互換コンピュータでのみ利用できることを知った。Vanderbilt大学はそのようなコンピュータを保有していなかった。Federspielの研究室はDEC VAXコンピュータを保有していたが、SASは実行できなかった。

 11.FederspielはVanderbilt大学がIBM又はIBM互換コンピュータを購入するコスト又は可能性を調査せず、他のコンピュータ施設からSASを使用する可能性も調査しなかった。実際、SASは商業的なコンピュータ・タイムシェアリング会社、他の大学のコンピュータ・センターの両方から広く利用可能である。乙11号証p. 4。FederspielはSASを使用するための他の方法を調査する一切の努力をしなかった。

 12.Federspielは、SASを得たいという彼の希望を同僚のWilliam Vaughn及びWayne Ray、それとVanderbilt大学コンピュータセンターのパートタイム職員のPhillip Sherrodとも検討した。そのときFederspielが気がついていたようにSherrodはS&Hによっても雇用されており、そのすぐ後に、SherrodはS&Hのフルタイムの仕事のために大学を去った。

 13.このグループはS&H社長のHarry Sandersと共にSASに匹敵する能力を有する統計分析パッケージを開発販売することが望ましいかどうかを検討した。SherrodとRayは彼らがPASQUELと名付けた「技術水準<state of the art>」の設計に向けた準備的な段階を行った。彼らの考えではPASQUELはオリジナルな製品で、現存する統計パッケージに基礎を置くあるいは類似するものではなかった。しかしながら、SASをモデルとして作成されるパッケージと比較して、そのようなパッケージの販売が困難であると判断し、PASQUELへの努力は1981年の夏に放棄された。

 14.すぐ後に、VAXコンピュータで作動するSASの改造版<conversion>を開発するという決定がなされた。新しい製品は「ポータブル」、つまり、SASが設計されたIBMの装置以外の様々なコンピュータに移され、実行され得るものである。彼らはInstituteがSASの非IBMバージョンの開発には興味がないと考えていたため(InstituteはまだSASの来るべきVAXバージョンについてアナウンスしていなかった)、彼らの改造版がひとたび完成すればInstituteは喜んでそれに応じ、合同の販売、ユーザー教育、及びサポートに加わるであろうと彼らは期待した。

 15.Federspiel、Vaughn及びRayはそれぞれSAS改造プロジェクトに参加したことによる金銭的な利益を望んでいた。しかしながら、Vanderbilt大学によってフルタイムに雇用されおり、S&Hの従業員になることはできなかった。それゆえ、彼らは「Portable Statistical Analysis Systems, Ltd.」(時々「PSAS, Ltd.」として言及される)という名称のTennessee州の有限パートナーシップを組織した。甲3号証。Federspiel、Vaughn及びRayはそのパートナーシップの有限パートナーであり、S&Hはジェネラル・パートナーであった。

 16.そのパートナーシップはS&Hと開発契約を締結した。甲4号証。その契約に基づき、S&Hは「『SAS』(統計分析システム<Statistical Analysis Sytem>)として知られる既存の統計システムに類似した統合統計分析を提供する一組のコンピュータプログラム」を開発し、それに続いて、パートナーシップはS&Hの融資を受けて開発コストの114%より少し高い金額でその製品の全ての権利を購入するつもりであった。結果は、ポータブルSAS改造版の販売が先行し、S&Hが開発コストプラス利益を取り戻し、それをとおしてFederspiel, Vaughn及びRayが利益を得るのはまだであった。

 17.PASQUELプロジェクトの放棄の決定の直後に、S&HはSASを使用するライセンスを得ることを決定した。S&Hのライセンスを得る最初の目的は他の方法では使用できない詳細な技術的な情報を得るためであり、その情報はVAXコンピュータ上で走るSASの改造版の作成のために使用できるものではなかった。

 18.S&Hの当時のノートには、「改造自由コンパチブル」と記載されており、プロジェクトのためにSASソースコードを得たことがほのめかされている。甲19号証。また、そのノートは、S&HがSASの全てのソースコードをInstituteから求め、加えて技術的援助及び販売及び出版の援助をも求める計画であったことを示している。そのノートによれば、S&Hは「VAXバージョンの排他的権利」および「他のコンピュータへの改造版コードの使用のロイヤリティ」を求めるつもりだった。彼らの望みは一度もInstituteの伝えられることはなかった。

 19.SASのライセンス前であっても、S&Hは計画された統計パッケージに関してVAXの製造業者のDECと予備的な接触を持った。最初、S&HはDECの従業員のStephen Nagyと1981年の春に接触した。

 20.Nagy氏は、S&HがSASのライセンスを受けた後の1981年9月あるいは10月に再び接触したと証言した。そのとき、S&HはSASの「改造版」としてその製品を説明し、その製品を1982年の春に市場にリリースすると説明した。NagyはS&H製品の合法性に関して懸念を表明し、S&Hはその製品が適法なものであるとの法的アドバイスを受けていると答えた。S&Hはそのような法的アドバイスの出所又は内容を決して明らかにはしなかった。

 21.1982年1月、NagyはS&Hに、DECは法的状況が明らかになるまで、S&H製品に関していかなる取り決めも考慮しないことを告げた。S&Hと、Nagy又はDECの間のその後の接触はなかった。

 22.S&Hは、Sherrod氏とRay氏及びそれ以外の証人によって、ライセンスを受けたときの意図は単にSASをそのライセンスに従って実行し、テストデータで統計分析を行い、SASによって得られた結果をS&H製品によって得られた結果とを比較することにあったという証言をトライアルにおいて行った。しかしながら、以下で検討する争いのない証拠は、SASを受領するやいなや、S&Hがトライアルでの証言とは矛盾する方法でそれを使用したことを証明している。これらの事実及び証人の証言席での様子にも照らして、本裁判所はSASのライセンスの目的に関するS&Hの証言を信用しない。本裁判所はS&HのSASのライセンスの目的は、以下に検討する方法でS&H製品の作成に使用するために、SASのソースコードを得ることであったと結論する。

 23.SASのライセンスを得るために、S&HはInstituteと接触した。ライセンスを得る目的は明らかにされなかった。この事実は重要であり、S&Hがその真の目的を明らかにすれば、InstituteはS&HにSASをライセンスしなかったであろう。

 24.Instituteとのその最初のやりとりにおいて、S&Hはライセンシーに与えられるSASの内容にSASのソースコードが含まれているかどうかに関して特に尋ねている。

 25.1981年8月、両当事者はライセンス契約を締結し、それに基づきS&HはSASを使用する権利を得たが、NashvilleにあるTennessee州立大学に設置された特定のIBMコンピュータにおいてのみで使用する権利であった。甲1号証。S&Hは4,500ドルのライセンス料を支払った。ライセンス契約はSASを更に配布すること、SASをタイムシェアリングで使用すること、バックアップ目的以外のSASのコピーを作成することをS&Hに禁じている。ライセンス契約はS&HがS&H自体の使用のためにSASを修正することを認め、アップデートの一部としてSASを使うことを認めているが、そのようなアップデートの再頒布は認めていない。ライセンス契約は契約書に挙げられたこれらの権利のみをS&Hに許可している。

 26.S&Hがライセンス契約を締結したとき、S&Hは(その後、行ったように)その契約書の条件とは正反対の方法でSASを使用するつもりであった。その意図はInstituteには明らかにされず、もし、明らかにされたとしたら、InstituteはSASをS&Hにライセンスすることはなかったであろう。

 27.S&Hはライセンス契約が締結された直後、SASの配布パッケージを受け取った。これにはSASの完全なオブジェクトコード、及びSASの様々な統計分析を行う部分のソースコードも、スーパーバイザと統計プロシージャ間の「リンケージ」を構成する部分のソースコードも含む磁気テープが含まれていた。SASは統計分析、リンケージ及びスーパーバイザを構成する三つの部分に分けられていた。統計分析及びスーパーバイザで全体のほとんどの部分を占め、ほとんど同サイズであった。SASの配布パッケージにはスーパーバイザ部分のソースコードは含まれていなかった。S&Hはテープを受け取るとすぐに、ライセンス契約で許可されているように、そのテープのバックアップコピーを作成した。

 28.その後、S&HはVanderbilt大学にそのテープを移動させ、そこで、その内容をFederspielの研究室に設置されたVAXコンピュータにロードした。SASはVAX上では実行できないので、SASのソースコードを含むテープの部分だけがロードされた。しかし、VAXコンピュータはIBMコンピュータで使用されるコード体系(「EBCDIC」)とは異なったコード体系(「ASCII」)によってテキストを保存する。ゆえに、SASのソースコードをVAXにロードするために、S&HはIBMのコード体系からVAXのコード体系へ変換する必要があることに気がついた。この操作の結果はVAXコード体系を使用して、VAXコンピュータに付属したディスク記憶装置の中にSASのソースコードの正確なコピーを作成することであった。このコピーはIBMコンピュータ上のバックアップ目的を意図したものではなく、その目的のための使用でもない、それゆえ、ライセンス契約によって認められたものではない。

 29.SASはVAXコンピュータ上で実行できないことから、SASのソースコードのVAXへのロードはS&Hが証言したようにSASのテストランを実行するための目的ではなかった。S&Hが認めたこの行為は、S&HがVAXコンピュータ上で走るSASの改造版の作成に関してSASのソースコードを調査する目的でSASのライセンスを受けたという本裁判所の結論を支持している。

 30.一度、SASのソースコードがVAXコンピュータにロードされると、そのソースコードは改造プロジェクトで働く全てのS&Hの従業員及びコンサルタントが調査し、研究することができた。S&Hのプログラマの要求に応じて、SASのソースコードはプリントアウトが利用可能であり、これらのプログラマ自身によって無制限にプリントアウトすることができた。加えて、Vanderbilt大学のVAXに接続されS&Hのオフィスに設置されたビデオスクリーンをとおして、S&HのプログラマはSASのソースコードのあらゆる必要な部分をスクリーンに呼び出すことができた。S&HのプログラマはそれぞれVAXに保存されたSASのソースコードの(スーパーバイザを除く)部分にアクセスした。

 31.SASのソースコードの保存に加えて、VAXは「テキストエディタ」を使用してソースコードを編集することができた。この機能は、全てのS&Hのプログラマが無制限で利用でき、SASのソースコードをワープロと同様に扱うことを可能とする。特定の行又は一群の行を編集のために選び、一行のコード又はブロックのコードを再整理し又は移動させ、また、コードの一行又はブロックのコードに変更を加えることもできる。これらのテキスト編集機能はSAS改造版の開発のためにS&Hも使用することも可能であった。

 32.Vanderbilt大学のVAXのS&Hによる使用はアカウント名「SAS」でS&Hに請求された。このアカウント名は請求の目的のためにS&HがVanderbilt大学に与えた。

 33.本裁判所は、SASのソースコードはS&H製品の作成においてS&Hによって広範囲かつ組織的に使用されたものと認定する。この認定の明確な根拠は以下に詳述する。

 34.Instituteの専門家証人の一人であるPeterson博士は初期のS&H製品のソースコードはSASのソースコードと実質的に類似しているというのが専門家としての意見であると証言した。本裁判所は彼の証言が信用できるものと認め、それを受け入れる。

 35.Peterson博士の意見は、S&H製品がSASから直接コピーした証拠を示す彼が特定した44ほどの具体的な事例<some 44 specific instances>によって部分的に支持されている。これらの例は甲27号証に要約されている。

 36.S&Hの専門家証人のMerten博士は、Peterson博士が発見した44の例のうちの(彼がS&H製品の「誤解」とみなす)多分3つを除いて、Peterson博士の事実に関する所見に反対していない。Merten博士は40を超える例はコピーの証拠ではないという結論を描いたが、この結論はほとんど又は全く重みがない。Merten博士はこの問題について議論したS&Hのプログラマの信用性についての彼の評価、及び彼らの述べたことを信じる彼の判断を基礎としていると証言した。逆に、本裁判所はS&Hのプログラマによる証言は信用できないと認定する。加えて、Merten博士が信用したS&Hのプログラマの一人のトライアルの証言はS&Hによって提出されなかった。このプログラマFrank KyleはPeterson博士がその中にコピーの明白な証拠を発見した「TTEST」プロシージャの作者である。甲26,27号証、例42−44。本裁判所は、彼の証言がS&Hに有利ではなかっただろうし、S&Hの立場を更に弱め、Merten博士の結論を更に弱めただろうと推測する。更に、少なくともPeterson博士によって提出された18の例については、Merten博士自身がSASのソースコード又はドキュメンテーションと「類似」していると述べている。甲29号証。

 37.Instituteの他の専門家証人William Kennedy教授はS&Hのソースコードのキーとなる部分、「GLM」プロシージャと、これに対応するSASのソースコードの間の実質的な類似性を証言した[訳1]。Merten博士はこの点に関して意見を提出しなかった。S&Hによって提出されたただ一つの反証はS&HのGLMプロシージャの作者であるWayne Rayの証言であった。この証言は信用できない。

 38.S&Hはトライアルにおいて、Peterson博士によって提出された44のコピーの例は、S&H製品の〔侵害と〕主張された186,000行の全行数の中にあっては、些細なものであると主張した<the 44 examples of copying presented by Dr. Peterson were trivial, in the context of the claimed 186,000 total lines of source code in S&H's product>[訳2]

 39.この紛争を解決するための初期の努力の一部として、S&Hは1982年7月12日に、Instituteの社長でありSASの主要な作者の一人であるGoodnight博士を含むInstituteの二人の従業員が、S&Hのソースコードのプリントアウトを調査するのを認めた。Goodnight博士はトライアルで、その調査の間、SASからの文字どおりの、ほぼ文字どおりの及び組織的なコピー<literal, near literal and organizational copying>の膨大な事例が目についたと証言した。その後、InstituteはS&Hにこれらの発見を伝えた。乙13号証。本裁判所はGoodnight博士の証言は信用できるものと認め、それを受け入れる。

 40.次の数日以内に、S&Hはこれらのプリントアウトを破棄した。

 41.1982年7月2日に調査されたS&Hのソースコードはその日に存在したように再び作成することはできなかったことをInstituteは立証し、反証されなかった。S&Hのコードの残った断片に基づいて仕事をすることを強いられたPeterson博士はGoodnightの証言の全部ではないがいくつかを確認した。本裁判所は、S&H製品の1982年7月12日バージョンの完全なプリントアウトが利用できれば、それらがGoodnight博士の証言を支持するであろうと結論する。

 42.本裁判所の結論は秘密性命令<confidentiality order >が発せられる前のS&Hの行為によって更に強化される。Peterson博士は1982年7月の検査の時点のS&H製品に存在したコピーの例がその時とWinner博士への報告の開始の間に変更された膨大な事例を証言した。各事例の効果はS&Hのソースコードが一見したところではSASにより似ていないように見えるようにするためであり、その変更にいかなる機能上の理由もPeterson博士、Merten博士、又はS&Hによって示されてはいない。

 43.一つのそのような例は特に印象的である。1981年12月のS&H製品は、出力ラベルの最初にSAS自体が表示するのと同じタイトル及び同じスタイルを使用して「統計分析システム」と印字するようにプログラムされていた。その後、S&Hが製品の名称を変更しこのタイトルは変更された。甲26号証、例40。

 44.もう一つの印象的な例は、S&H製品の初期のバージョンにおいて、ソースコードの少なくとも145の別々の行に「SAS」の名称が使用されていることである。Peterson博士は、完全な消去又は用語「SAS」の異なった用語への変更によってそのようなものをシステマティックに変更をするためにVAXテキストエディタがいくつかの目的で使用されたことを論証し、本裁判所は真実であると受け入れる。甲26号証。例27。そのような変更を行うことは簡単であり、テキストエディタを使用することによって、数秒でできることである。変更の結果、多くの事例において、S&Hのソースコードの中に非文法的又は一貫しない記述が残った。一つの事例では、その結果はSASの引用文<a reference>を変更したが、SASのドキュメンテーションの引用文をそのまま残すことになった。したがって、本裁判所はこれらの変更はS&H製品を改良するいかなる努力も表しておらず、むしろ、コピーの証拠をマスクし偽装する努力を表していると結論する。

 45.SASのソースコードの使用及びコピーの更なる証拠は、S&Hによって作成され、S&H製品の作成に使用するコーディングの基準を明らかにするためと称してS&Hのプログラマに配布された文書の中に見いすことができる甲5号証。S&HによってVAXコンピュータのために作成されたこの文書は「SASSTANDARDSTXT; 11-SAS」と見出しがつけられており、大文字で書かれたタイトルは「ポータブルSASインプリメンテーションのためのコーディング基準」である。その文書はS&Hのプログラマに「ドライバ・ルーチン」の名称を同等のSASの名称と「できる限り近く」選ぶことを命じた。これらの名称はソースコードの内部のものであり、ユーザーには見ることはできない。S&Hのプログラマは「各プロシージャのインプリメンテーションと対応するSASのインプリメンテーションの間の相違」を記述することを要求された。そのような情報はSASのソースコードの詳しい調査によってのみ知ることできた。S&HのプログラマはSASから一つの特定のルーティンを使用しないように特に命じられた;「SASプログラムガイドの中で文書化されているVARYサブルーチンは使用すべきではない・・・。」この文書は更に、INDAS(S&H製品)のモジュール構造は独立して開発せず、SASのそれを複製すること<to duplicate>を特に意図するように教えている。

 46.更にまたS&H製品に設計文書が欠如していることが本裁判所の結論を支持している。上述のように、S&Hの職員は最初はPASQUELとして知られるオリジナルな統計パッケージを考えており、そのシステムのための予備的な設計文書を実際に作成した。そのプロジェクトは放棄された。これに続くS&H製品のために作成された類似の設計文書は存在しない。S&Hはその製品のためにいかなる時においても設計文書を作成しなかったことをトライアルにおける証拠が証明し、本裁判所は認定する。それどころか、本裁判所はS&Hはその製品のための設計文書としてSASを大量にかつ詳細に採用した。

 47.「DOCOUT」(乙45号証)として知られる文書が製品の設計文書であるというトライアルでS&Hが唱えた主張は信用できず、本裁判所によって受け入れられない。この文書は実際はS&H製品からコードの機能を記述する「コメント」と考えられるソースコードを抜粋したものである。DOCOUT文書はこれらのコメントが作成される前には作成することができなかった。これらのコメントはSASと類似した複数のプログラム及び複数のサブプログラムの一つの構造の中に体系づけられる<organized into a structure of programs and sub-programs>。それゆえ、本裁判所はINDASの設計の大部分はDOCOUTの作成前及び作成中にSASのソースコードから不正使用したものであると認定する。

 48.本裁判所は、DOCOUT文書は全部ではないとしても大部分「インターフェース・ルーチン」を扱っていることを特に言及する。これらは製品の「スーパーバイザ」部分と「プロシージャ」部分の相互関係を扱うS&H製品の部分である。Merten博士はSASに含まれる70のインターフェース・ルーチンの69はS&H製品の中に含まれていると証言した。したがって、本裁判所はS&H製品のインターフェース・ルーチンはSASに基礎を置き、SASから得たと明確に認定する。

 49.S&Hに提供されたSASの配布テープはSASのスーパーバイザのソースコードを含んでいなかったが、本裁判所はS&Hがスーパーバイザを独立した設計の努力により作成したと認定することはできない。前記のように、スーパーバイザのためにS&Hによって作成された設計文書は存在しない。加えて、S&Hのスーパーバイザは前述のようにS&HがアクセスしSASの著作権で保護されたインターフェース・ルーチンから得たインターフェース・ルーチンを含んでいる。

 50.追加して述べるS&H製品に関するコピーの証拠は「文書化されていないオプション」の存在に関連する。これらはSASユーザー言語の要素であり、SASプログラムに統計分析の特定のセットを実行させるためにユーザーが使用するコマンドとインストラクションのセットである。SASユーザー言語のあるオプション及び他の特徴はいかなるSASの出版に中にも記載されておらず、文書化されていないから、まさにこれらの存在はSASのソースコードの詳細な調査によってのみ知ることができる。

 51.一つの例がこの点の重要性を描くのに助けになるだろう。SAS 79.5の開発中に、コンピュータがある計算を実行するのに必要とされる時間について懸念があった。これを評価するために、Goodnight博士はSASのソースコードの中にユーザーがオプション、特定の統計分析を実行する彼のコマンドの中の「OBSTIME」、を含めることができるようにした。テストの後、そのオプションは一つの見逃された参照文を除いて削除された。このオプションの存在はInstituteの外部に公表されることはなく、SASユーザーマニュアル又は他の文書の中に現れることはない。「OBSTIME」の使用が残した機能しない痕跡だけがリリースされたSAS 79.5のコードに現れており、この訴訟の前は、Goodnight博士は完全にその存在を忘れていた。

 52.Peterson博士がS&Hのソースコードを調査したとき、SASに残る痕跡に相当する完全に機能のない「OBSTIME」を発見した[訳3]。甲26,27号証、例8。唯一の説得力のある説明はS&HがSAS 79.5のソースコードからこの機能のない特徴をコピーしたことである。第二のそのような例はPeterson博士によって彼の例38として提出された。

 53.S&Hはトライアルにおいて、S&Hがこの目的のために特に作成したコンピュータプログラムを使用して、そのようなSASのソースコードに含まれている文書化されていないオプション又は他の特徴を明確に探し求めたことを認めた。S&Hが突き止めた文書化されていないオプション又は特徴はその後注意深く正確にS&Hのソースコードの中に再現された<reproduced>。

 54.その行為はSASとの「アップワード互換性」を得るために必要であるという主張がトライアルにおいてS&Hによって唱えられた。特に、Merten博士は互換ソフトウエアの作成はコンピュータソフトウエア産業において通常の慣行であると証言した。これによって、Merten博士は既存のプログラムと同様な全部の仕事を実行するオリジナルなコンピュータプログラムの創作の意味を表したのである。しかしながら、Merten博士は、この慣行がこの事例においてS&Hによってなされたように所有され著作権で保護されたものの悪用をとおしてそのようなソフトウエアを作成することに及んでいることを示唆しなかった。

 55.S&HによるSASのものの使用及びコピーの更に追加的な証拠はS&Hによって使用された組織的なパターン<organizational patterns>の中に見つけられる。このプロジェクトの最初は、全てのS&HのプログラマはSASのソースコード及び他のものの全てにアクセスした。Sherrod氏とRay博士は後にこれを変更し、その結果、個々のプログラマが特定の狭い仕事に割り当てられ、その仕事に関連する情報だけを与えられた。

 56.例えば、Beth Barnwellはあるプログラムモジュール<a program module>によって実行される仕事に特有な記述<a specific statement>を与えられ、そのモジュールがS&H製品の残りのものとインターフェースする方法に関する情報<information>を与えられたと証言した。彼女はそのもののソースに関した情報は与えられなかった。

 57.その情報を彼女に与えたのはSherrod氏とRay博士であり、情報は実際にはSASから引き出されコピーされたものである。Sherrod及びRayは実際にBarnwellのモジュールをS&H製品の残りのものとリンクするルーチンのソースコードを書いた。これと逆の彼らの主張については、既に本裁判所が信頼できず、信用できないと認定した。S&Hホイールのハブに彼ら自身を置くことによって、そして注意深くコントロールされた情報をスポークにいるプログラマに与えることによって、Sherrod及びRayはまさしくその関係する人々から彼らの仕事がSASから引き出されたということを隠したのである。したがって、他のS&Hのプログラマの証言は、彼らの知識の限りでは多分真実であるとしても、結局は説得力がない。

 58.更に本裁判所は、S&HがSASのソースコード及び他の著作権で保護されたSASのものからコピーした範囲で、そのようなコピーは表現のコピーであり、単なるアイディアのコピーではない<to the extent that S&H copied from the SAS source code and other copyrighted SAS materials, such copying was of expression, and not merely of ideas>と認定する。

 59.SASの主要な作者の一人であるGoodnight博士の証言は、Institute及びS&Hの専門家証人の両方と同様に、SASのような複雑なコンピュータプログラムの作成をとおして、作者は割り当てられた仕事<task>をいかに成し遂げるかに関してほとんどエンドレスな決定の連続に直面すると証言している。プログラムの全体的な目的の広範囲で一般的な記述に始まって、作者は割り当てられた仕事をより小さな仕事にいかに分割するのかを決定しなければならず、そのより小さな仕事それぞれを引き続いてより小さくより詳細な仕事に順番に分割しなければならない。その後、一番低いレベルで詳細な仕事<the detailed tasks>がソースコードにプログラムされる。単純な統計計算の場合においてさえ、演算作業が実行される順番のように、変化の余地がある。S&H自体、最も単純な統計分析である「MEANS」プロシージャをプログラムする少なくとも二つの実質的に異なった方法があることの証拠を提出している。計算の複雑さが増加するにしたがい、表現の変化の機会も増加する。

 60.S&Hは、SASの機能的能力、アイディア、方法、及びプロセスが極めて限定された方法だけで表現されるものであることの証拠を提出していない。それどころか、本裁判所は、SASとS&H製品との類似性が存在する範囲で、それらは不必要で意図的な表現の複製である<to the extent that similarities between SAS and the S&H product have existed, they represent unnecessary, intentional duplication of expression>と認める。

 61.Goodnight博士、Peterson博士及びKennedy教授を含むInstituteの証言が、S&Hのプログラムは、詳細なレベルに至るまで、SASの構成された構造を模倣したものである<the S&H program follows the organizational structure of SAS, down to a detailed level>ことを立証した。この証言は、本裁判所が信頼できないと認定したSherrodとRayによるコピーの断固たる否認を除き、反証されていない。

 62.一枚の図は「MEANS」プロシージャに関係するPeterson博士の例29である。Peterson博士は、S&HはSASの構造と構成の極めて近い言い換え<a very close paraphrase of the SAS structure and organization>を使っていると証言した。しかしながら、Peterson博士は、S&Hは、明らかにS&Hによってなされた関連のない変更による、全体的に機能のない異常な論理的テスト(ソースコードの「IF」文)を含んでいると論証した。S&Hがこの文を含めたことは構造的詳細をすっかり模倣するコピー<slavish copying of structural detail>の結果としてしか説明できない。

 63.S&Hはトライアルにおいて、そのアプローチは本質的にSASの構成の仕組み<organizational scheme>を採用するためであり、単に実際のSASのコードと独立して最も下のレベルの仕事<task>の各々のために実際のプログラムコードを書くためである。本裁判所はS&Hの証言を信頼しないが、信頼できるとして受け入れたとしてさえ、述べられた方法はMeredith Corporation v. Harper & Row Publishers, Inc., 378 F.Supp. 686, 182 USPQ 609 (S.D.N.Y.), aff'd., 500 F.2d 1221, 182 USPQ 577 (2d Cir. 1974), opinion after trial, 413 F.Supp. 385, 192 USPQ 92 (S.D.N.Y. 1975)事件で述べられたことと驚くほど類似している。その裁判所は次のように認定した:教科書は被告のある従業員によって略述された<outlined>、その略述<the outlines>は他の職員に配布された、そして彼らがその略述に基づいて「オリジナルな」テキストを書き、結果として表現の複製及び単なるアイディアではないものの複製が生じる。[訳4]

 64.この結果はS&Hが頼った主要な判例であるSynercom Technology, Inc. v. University Computing Co., 462 F.Supp. 1003, 199 USPQ 537 (N.D.Texas 1978)事件によっても支持される。Synercom事件では、問題解決の詳細な英語の文のソースコードでのプログラミングは表現の複製及び著作権侵害を結果としてもたらすだろう<the programming in source code of a detailed English-language statement of a problem solution would result in duplication of expression and copyright infringement>、と特に言及している;本件では、S&Hはより単純なルートであるSASソースコードから直接的にコピーした。

 65.トライアルで提出された証拠により、本裁判所は、S&Hによって行われた実際の方法は証言で述べられた方法ではないと認定する。むしろ、S&Hのプログラマは実際にSASのソースコード及び他の所有された著作権で保護されたものに組織的に広く参照し、依存したことは明らかである。これが、トライアルで証明された類似性の性質及び範囲から、S&Hの本件訴訟前及び訴訟中の自認した行為から、S&HによるSASのライセンスの意図の故意の非開示から、その製品がSASのVAXバージョンとしてInstituteにより採用されるというS&Hの明確な期待から、S&H製品に関連して「SAS」の名称を使用したことから、製品の商標及び販売名としてS&Hが最初に「PSAS」の使用を意図していたことから(甲9号証参照)、SASの「改造版」及び「モデルにした」としてその製品をS&H自身が記述したことから(甲11,14号証)、及びトライアルにおける信じがたい話に関するS&Hの頑固な主張から、引き出される唯一の合理的な推論である。

 66.SASのものの使用及び悪用からS&Hが引き出した利益はこれらのもののコピー及び翻案に限定されなかった。完成した証明された設計を得ることによって、S&Hはオリジナルな設計で開発する相当な時間と労力を節約した。SASの構造<structure>は証明されているから、S&Hは誤ったスタート、デッドエンド、再設計、及びその他の成果のない労力を節約した。S&Hの行為は超高層ビルの青写真を盗み、技術的研究の労力及び費用、構造分析、及び無数の設計判断を回避するのに類似している[訳5]。S&Hが得た利益の程度は正確に評価することは困難であるが、明らかに相当なものである。


法 的 結 論

I.SAS 79.5の著作権の有効性

 SAS Release 79.5の著作権登録証(甲2号証)は著作権の有効性の一応の証拠である。著作権法§410(c)。この有効性の推定を覆す証明責任はS&Hにある、Williams Electronics, Inc. v. Artic International, Inc., 685 F.2d 870, 215 USPQ 405 (3d Cir. 1982)。S&Hが示唆した著作権が無効であることの唯一の理由はSAS 79.5と初期のSASのリリース、特に76.2の間の関係である。本裁判所は、事実問題として、SAS 79.5は、SASの初期のリリースに含まれた既に存在した作品をはるかに超えており、圧倒的に新規でオリジナルな著作物であると認定する。したがって、SAS 79.5の著作権は有効であり完全にエンフォースメント可能である。著作権法§103(a)(著作権は二次的著作物を含む) 、§ 101(二次的著作物の定義)。これはSAS 79.2がパブリックドメインかどうかにかかわらない。初期の段階のサマリージャッジメントの申立との関連で、本裁判所はSAS release 76.2はパブリックドメインであると判示した。

 S&Hは、この点は訴答において取り上げなかったが、Instituteのコピーのエンフォースメントはクリーンハンド又著作権局におけるフロードの根拠に基づいて拒絶されるべきであると主張した。しかしながら、S&Hは、登録の拒絶をまねくかもしれない情報協会<the Institute of Information >による留保を証明せず、情報協会又は他の誰かが何らかの方法でInstituteの登録申請によってミスリードされたことを証明することもしていない。したがって、制定法の登録要件の目的は満たされており、S&Hの主張は拒絶されなければならない。Midway Mfg, Co. v. Artic International, Inc., 547 F.Supp. 999, 1009-10, 216 USPQ 413, 420-21 (N.D.Ill. 1982), aff'd, 704 F.2d 1009, 218 USPQ 791 (7th Cir. 1983)。

II.Instituteの契約の請求

 本裁判所は以前にS&Hがライセンス契約の特定の条件に違反したというInstituteの部分的サマリージャッジメントの最初の申立に関連して決定をした。これらの違反は権限のないCPU上でのSASの使用、SASの権限のないコピーの作成、及び1982年6月3日にInstituteによるライセンス契約の正当な終了の後のSASの使用を含んでいた。甲29号証。July 25, 1983, 222 USPQ 715において本裁判所がなしたメモランダムの意見は、これらの判示がSAS 79.5の著作権の有効性の証拠に依存していることを示していた。著作権の有効性は認定されていたのであり、この結果、本裁判所の契約違反及びライセンスの終了に関する認定は採用され、合併され、絶対的なものとされる。ライセンス契約は有効でありエンフォース可能であるから著作権の有効性がないとしても、これらの判示を暫定的とする必要はないというInstituteの主張を書き留める。しかしながら、本裁判所は著作権の有効性を認定していたから、この問題に立ち入る必要はない。

 サマリージャッジメントの判示においては、S&Hがライセンス契約の含意された契約にも違反したというInstituteの主張に本裁判所は立ち入らなかった。InstituteとS&Hの間のライセンス契約が誠実と公正取引の含意された義務を含むことは疑いない。「全ての契約はその履行とエンフォースメントにおいて誠実と公正取引の義務を両当事者に課す。」リステートメント(第2)の契約§205 (1979)。契約の正確な範囲はそれぞれの事件の事実に関連して考慮されなければならない。「契約の誠実な履行又はエンフォースメントは合意された共通の目的及び他者の正当な期待との一貫性への誠実さを強調している・・・ごまかし及び言い抜けは、その行為者がその行為が正当化されると信じていたとしても、履行における誠実の義務違反である・・・不誠実の種類は取引の真意のごまかし[及び]意図的不完全履行を[含む]・・・」同、コメントa,d。

 この含意された契約の内容は著作権ライセンスに関して裁判所によって以前に検討された。Nimmer教授は、無関係な者が、許諾する者の著作権を侵害することなしに、同じアイディア、テーマ又はタイトルで新しい作品を作成することができたとしても、ライセンシーが同じアイディア、テーマ又はタイトルに基づいた新しい作品を作成することは契約違反であるという法則を述べている。3 Nimmer on Copyright §10.11[B] (1983)。S&Hはライセンシーは出版者としてその作品の販売促進の義務を有することは真実であると正しく指摘している。しかしながら、S&Hはその契約がこれらの状況に限定されることを本裁判所に説得するのに失敗した。

 逆に、S&HはUproar Co. v. National Broadcasting Co., 81 F.2d 373 (1st Cir. 1935), cert. denied, 298 U.S. 670 (1936)のような事件を無視し、Instituteによって引用された298 U.S. 670 (1936)を否定した。Uproar事件において、あるコメディアンがラジオ放送〔の台本〕を書き、演じた;その後、彼はその台本を出版し販売した。地裁はこれを含意された契約違反であると判示し、控訴裁判所は支持した。「原理は明確に確立されている:『各契約の中にはどちらの当事者も何もしないという含意された契約があり、それは他の当事者がその契約の果実を受ける権利を破壊又は傷づけないという効果を有し、各契約の中には誠実及び公正取引の含意された契約が存在することを意味している。』」81 F.2d at 376-77、Kirke La Shelle Co. v. Paul Armstrong Co., 263 N.Y. 79, 188 N.E. 163, 164 (1933)を引用しており、Instituteもこれを信頼した。

 County of Ventura v. Blackburn,. 362 F.2d 515 (9th Cir. 1966)事件において、著作権で保護された地図を複製販売するライセンスに関して同じ結果が得られている。地裁は、「契約は暗黙に、ライセンシーにその履行において誠実に行動することを要求しており、また、[ライセンサー]のその著作権の価値を傷つけ又は破壊すること及び[ライセンサー]がその契約の内容に関してライセンシーと相互に同じ義務を持つことを行わないことを要求している。」362 F.2d at 918。控訴裁判所は損害賠償額に関してその事件を差し戻したが、「他の全ての点で」原判決を維持した。同at 522. Cf. Manners v. Morosco, 252 U.S. 317, 327 (1920)(ライセンスが効力を有する間、ライセンサーがそれを行わないという条件において、演劇のライセンシーは映画バージョンを作成することを禁られている);Harper Bros. v. Klaw,232 F. 609, 613 (S.D.N.Y. 1916)(「否定的な契約」が暗黙に含まれる;「法は、財産のある使用を行う契約からそれ以外のものを行うことに対して否定的な契約を含意することに類似している」)。

 【1】要するに、S&Hはトライアル書面において、VAXコンピュータ上で作動するように設計された統計ソフトウエアを作成しないことを、暗黙にも明示的にも、合意したことは決してないと主張しており、それは真実かもしれないが、S&Hは法律的に、所有権のあるSASのものをS&Hが行ったように使用しないことをその経過において合意した。S&Hの行為が誠実及び公正取引の法的義務に従っていると言うことはできない。

III.Instituteの著作権侵害の請求

 Instituteの著作権の請求は二つの部分からなる。第一に、S&Hがその製品を作成する過程でSASのソースコードのいくつか又は全ての権限のない従って侵害の不明数の正確なコピー<exact copies>を行い、他の権限のない侵害行為も行ったとInstituteは主張する。第二に、S&H製品自体がSASの「複製物」<a "copy">又はSASに基づく「二次的著作物」<a "derivative work">のどちらかであり、どちらにしても侵害品であるとInstituteは主張する。その主張は、S&H製品は、いくらかのオリジナルな要素を含んでいるかもしれないとしても、実質的部分において、SASからの複製又は翻案<copying or derivation>によって作成されたものであるというものである。

 第一の主張はInstituteの最初の部分的サマリージャッジメントの申立に関してInstituteに有利に決定された。そこにおいて、本裁判所は、SAS 79.5の著作権の有効性の証拠だけに基づいて、S&Hが権限のないコンピュータ上でSASを使用したこと、権限のない目的のために膨大な複製物を作成したこと、及びInstituteによるライセンス契約の適法な終了後のSASのあらゆる使用は著作権侵害を構成すると認定した。Gilliam v. American Broadcasting Companies, Inc., 538 F.2d 14, 129 USPQ I (2d Cir. 1976.); National Bank of Commerce v. Shaklee Corporation, 503 F.Supp. 533, 207 USPQ 1005 (W.D.Texas 1980)。本裁判所は上述のようにInstituteSAS 79.5の著作権は実際に有効であることを認定しており、サマリージャッジメントの申立における本裁判所の認定はここに採用され、合併され、絶対的なものとされる。

 Instituteの第2の主張もまたサマリージャッジメントに関して検討されたが、決定はされなかった。そこにおける本裁判所が書き留めた、決定的な問題はS&HがSASからアイディア及びコンセプトだけを使用したのか、あるいは表現も使用したのかである。この判断は、あらゆる事件で、困難であり、その事件限りのものであるが<difficult and ad hoc in any case>、Peter Pan Fabrics, Inc. v. Martin Weiner Corp., 274 F.2d 487, 489, 124 USPQ 154, 155-56 (2d Cir. 1960)参照、複雑なコンピュータソフトウエアの事件では特に困難である。ニューテクノロジー利用国家委員会(「CONTU」)の最終報告で述べられたように、「もし、機械がその中に置かれた著作物を有する場合、それと同じことを行う機械を作ることは、海賊行為によってではなく、創作的努力によってのみ、常に自由にできる。」本裁判所はInstituteのサマリージャッジメントの申立に関して、もし、申立の証明に成功したのなら、Instituteはこの権利を回復する権利が与えられるであろうと述べた。今、本裁判所はInstituteがこれらの主張を十分に証明したかどうかを決定しなければならない。

 著作権法に基づく本件において、本裁判所は制定法自体から検討を始める。一般的に、Apple Computer, Inc. v. Franklin Computer Corporation, 219 USPQ 113, No. 82-1582 (3d Cir. Aug. 30, 1983)参照。著作権法の501(a)条は次のように著作権侵害を定義する:「106条から118条に規定されたように著作権者の排他的権利を侵害した者・・・は著作権侵害者である」。106条に基づいて、「本法に基づく著作権者は次に挙げることを行使および許諾する排他的な権利を有する:(1)著作物を複製物として又はフォノレコードとして複製すること、(2)著作物に基づいて二次的著作物を作ること・・・ 」S&H製品の作成においてSASの使用はInstituteによって権限が与えられていないことは争いがないから、唯一に問題はその製品がSASを基礎にした「複製物」又は「二次的著作物」を構成するかどうかである。

 用語「複製物<copies>」は法の101条に、「その中で作品が現在知られ又は後に開発された方法によって固定され、それからその作品が直接的又は機械若しくは装置の助けにより知覚され、複製され、又は他の方法で伝達されるフォノレコード以外の有形物。」と定義されている。この定義は明らかに、争われている作品が「複製物<copy>」であることを立証するために証明しなければならない類似性の程度よりも、「固定」要件に焦点が合わされている。それゆえ、本裁判所はこの用語の法的解釈に戻らなければならず、そしてS&H製品がSASに「実質的に類似」しているかどうかを決定しなければならないと結論する。もちろん、実質的類似性は文字どおりの同一性をを要求しない;「演劇はその対話を使用することなしに海賊することができる。」Sheldon v. Metro-Goldwyn Pictures Corp., 81 F.2d 49, 55, 28 USPQ 330, 337 (2d Cir.), cert. denied, 298 U.S. 669 (1936)。

 S&H製品とSASとの間に多くの類似性があることは争いがない。S&Hの専門家証人でさえPeterson博士の例の少なくとも18例が明らかな類似性を示していることに合意している。しかしながら、S&Hは、論証されたような類似性は表現ではなくアイディアの類似性であり、そして、いずれにしても、Peterson博士のコピーの例はあまりに少なくあまりに遠く離れており、法的問題として実質的類似性を立証するには些細で不十分であると主張する。S&H製品とSASとの間に証明された類似性がアイディアか表現かは事実問題である。Goodson-Todman Enterprises, Ltd. v. Kellogg Company, 513 F.2d 913, 185 USPQ 193 (9th Cir. 1975)。本裁判所は事実問題として、SASの単なるアイディアではなくSASの表現が複製されたのであり、それゆえ、テストのこの枝は満足する。

 類似性の実質性の問題も事実問題である;量的にわずかな部分(「バラは他の名前であったとしても同じように甘く香るだろう<a rose by any other name would smell as sweet>」)でさえ海賊行為は質的に実質的であり得る。Roy Export Company Establishment v. Columbia Broadcasting System, Inc., 503 F.Supp. 1137, 1145, 208 USPQ 580 , 586-87 (S.D.N.Y. 1980), aff’d., 672 F.2d 1095, 215 USPQ 289 (2d Cir.), cert. denied, 103 S.Ct. 60 (1982)。間違いなく、コピーの44の特定の例は法律問題として実質がないと言うことはできない。さらに、本裁判所は事実問題として、コピーの証拠は、S&Hがそのプログラムの証拠を破壊しマスクしその行為の偽装を行う前には、はるかに広範囲なものであったものとを認定する。

 加えて、トライアルで証明されたコピーはPeterson博士によって引用された具体的な行のコードに及んでいるだけではない。むしろ、それ〔証明されたコピー〕がSASの構成及び構造的詳細のコピーの典型を示している範囲で、そのようなコピーがS&H製品全体に広がっている<to the extent that it represents copying of the organization and structural details of SAS, such copying pervades the entire S&H product>。この点において、本裁判所は前記Meredith Corporation v. Harper & Row Publishers, Inc.事件の推論が説得力を有すると認める:

疑いのない実質的侵害者が剽窃部分をそうでない部分から削除する目的で侵害本の隅々まで裁判所の再吟味を受ける権利を有するかどうかの問題にパスする、その争点への単純な答は、記録が証明し本官が認定する次のものである、Meredithの本の11パーセントが疑いのない剽窃であるのに加えて、Mussenの本の構造及び話題の順序<structure and topical sequence>の広範囲な取り込み・・・したがって、Meredithのテキストはその作者の多少の独立したアイディア、多少の独立した研究、多少の追加的な話題及び多少の異なった構造を含んでいるが、Meredithの本の話題の選択及び配列は実質的な部分でMussenの本のコピーの結果であり、Meredithによる独立した努力又はカバーするものを組織し提供するための可能性が限定されることによる必然的な結果に帰することができないと結論する・・・したがって、侵害の疑いのない11パーセントだけではなく、コピーは全体のテキストに及ぶ。413 F.Supp. at 386, 387, 192 USPQ at 93-94 (emphasis original, citations omitted)。
 【2】Meredith事件の事実も本件の事実と驚くほど似ており、その分野のモデルとなる先導的な作品の抜粋(SherrodとRayはサードパーティへの手紙で彼らの製品をSASを「モデル」として記述した);プロジェクトのリーダーによるモデルの構成<the organization of the model>の複製(ここでPeterson博士とKennedy教授の証言によって証明され、しかし、SherrodとRayによって彼らの下で働くプログラマからさえ隠された);プロジェクトのリーダーの管理の下にいる補助的な職員による実際の記述;実際の作者らへのモデルの〔必要〕部分の支給(S&Hのプログラマは全てSASのソースコードにアクセスし、必要に応じてプリントアウトを与えられた);基本的な概略の複製の後の何らかのオリジナルな研究の実行;コピーを偽装するための引用文の置換;及びオリジナルな作者によって必要とされる時間のほんの一部の時間の仕事での完成を含んでいる。それ故、Meredith事件の裁判所が行ったように、両作品は実質的に類似であると結論する。S&H製品はSAS 79.5の著作権を侵害する。

 この結果はInstituteの第二の点においてより明確になる。「二次的著作物」は著作権法において、「翻訳、編曲、脚色、小説化、映画化、録音、美術複製、要約、簡約、又は作品が作り直され、変換され若しくは改造されるその他の形式のような一以上の既存の作品に基づく作品」著作権法§101。その定義は、「校閲、注釈、推敲、又は全体としてオリジナルな著作物に相当するその他の変更・・・」を含む。したがって、S&H製品が、S&Hが主張するように、S&Hが貢献した意味のあるオリジナルな部分を含んでいるかもしれないことは重要なことではない。本裁判所は事実問題としてその製品は実質的にかつ広くSASに「基づいて」いると認定した。

 【3】制定法は人間の行為、被告の製品を結果として生じしめた活動の性質を扱っている。S&Hの専門家証人も認めたように、S&HがSASを複製<duplication>の目標と定め、その後、S&H自身がSASの「改造版」と呼ぶものを成し遂げるために不適切な行為を行ったことは疑い得ない。それゆえ、S&H製品は制定法の二次的著作物の定義に十分当てはまり、かつ、Instituteによって権限を与えられていなかったことから、Instituteの著作権の侵害を構成する。Midway Mfg. Co. v. Artic International, Inc., 704 F.2d 1009, 218 USPQ 791 (7th Cir. 1983)(異なったより複雑な方法でキャラクタを動かすビデオゲーム用「スピードアップ−キット」は二次的著作物である)。

 単純な削除によって侵害を取り除くことができるというS&Hの主張は制定法と明白に矛盾する。その主張は本質的には、S&Hが建築物の全ての内部的及び外部的特徴を不正使用でき、窓の色合い及び壁板の色を変えることによって全ての不当性を取り除くことができるということである。その主張は拒絶されなければならない。Tennessee Fabricating Company v. Moultrie Manufacturing Company, 421 F.2d 279, 164 USPQ 481 (5th Cir.), cert. denied, 398 U.S. 928, 165 USPQ 609 (1970); Davis v. E.L duPont de Nemours & Co., 240 F.Supp. 612, 148 USPQ 328 (S.D.N.Y. 1965).

IV.S&Hの請求

 S&Hの契約違反及び契約妨害の請求に関して、本裁判所はInstituteに有利に認定する。S&Hはこれらの請求を支持する証拠をほとんど又は全く提出しなかった。Tennessee州立大学に関するInstituteの行為は完全に道理にあったものであり、免責特権がある。リステートメント(第2)の不法行為§772 (1979)。1982年7月のソースコードの調査に関しては、S&HはInstituteによる契約違反又はその結果の被害を証明することに失敗した。これらの請求に関してInstituteに有利な判断がなされる。

V.弁護士料

 本裁判所はS&Hの故意の不法行為にかかわらず、著作権法§412に基づいてInstituteに弁護士料を認めることはできないことを書き留める。

VI.救済

 Instituteに差止救済の権利が与えられることを決定したから、本裁判所はその適切な範囲を決定しなければならない。S&Hは、本裁判所の権限は法によってPeterson博士のコピーの例の中で参照された特定のソースコードの行だけを削除する命令に限られると主張し、これに対してInstituteは、本裁判所がS&H製品の「スープ」からコピーの「毒」を分離する立場にはないから、製品全体が禁止されるべきであると主張する。

 本裁判所は差止救済の適正な範囲は本裁判所の有効な自由裁量であるという前提からスタートする。著作権法は「[裁判所]が著作権侵害の防止又は抑止のために合理的と考える条件で」特に最終的な差止救済の権利を与えている。著作権法§5O2(a)。本裁判所は、この概括的に決められた規定に基づく自由裁量の範囲は狭いというS&Hの主張を受け入れることはできない。

 第一に、S&HはPeterson博士によって確認された特定の例を製品から取り除くことによって最初の侵害は「取り除かれた」と主張する。S&Hは製品の最終的に販売されたバージョンだけが関連するという定義のために映画及びテレビ番組に関連する事件を引用している。しかしながら、これらの各事件において、原告は最終的な映画又はTV番組が原告の以前の作品と「実質的に類似」しているとだけ主張している。どの事件もその制作物が著作権法106(2)条の違反における「二次的著作物」であるという主張を含んでいなかった;S&H製品の初期のバージョン及び証拠を破壊し変更するS&Hの努力の両方がその主張の中心である。

 さらに、トライアルにおける証拠はS&H製品が「最終バージョン」を有していないことを証明した。映画又はテレビ番組とは異なり、コンピュータプログラムは連続的な変化の一生をおくる。それは販売後においてさえ常に編集され、改訂され、変更され、これらの変更は侵害部分を取り除くのと同様に簡単にそれらを導入することもできる。S&Hが訴訟の間にそのプログラムを変更し続けているから、ここにおいてそれが特に重要である。

 また、Peterson博士の例は決して徹底的なものではないが、その仕事が本当に巨大なものであることからみて限られた利用可能時間及び財源によって制限されていたというPeterson博士の証言を本裁判所は書き留める。S&Hによるコピー及びS&Hの証拠を破壊し変更し偽装する努力が広範に行われたことを考慮し、本裁判所はコピーの結果の全てが削除された又は削除されるだろうということは極めて疑わしいと考える。

 さらに、本裁判所はMerten博士が現在のS&HのソースコードとSASの間の類似性に関して意見を提出しないことに注視する。逆に、彼はWinner博士への報告が始まってから作成されたS&Hのソースコードを彼が調べなかったことを証言した。

 第二に、S&Hはその製品の「スーパーバイザ」部分は統計プロシージャから分離されており、それゆえ、本裁判所は法律問題としてその部分の販売を禁止できないと主張する。「被告の作品の残りの有益さを破壊することなしに侵害部分を取り除くことが可能であるなら、被告は永久的差止を避けることができるかもしれない」というNimmer教授の要約における示唆に本裁判所は合意する。3 Nimmer on Copyright §14.06[B] at 15-54、ここにおける議論は事実によって潰れる<the argument here founders on the facts>。

 コピーと翻案に関連した証言の多くはS&H製品のスーパーバイザと統計部分がそれをとおして伝達するインターフェース・ルーチンに関連していた。本裁判所はこれらのルーチンは所有されたSASのものから著しく引き出されたことを認定する。

 S&HはSASのスーパーバイザのソースコードは提供されていないからコピーし得ないという事実を大事にしている。しかしながら、これは、S&Hが主張するようにスーパーバイザがコピーを免れていることを意味してはいない。実際、スーパーバイザと非スーパーバイザ部分の境界(境界は明確ではない)はSASとS&H製品で相違している。Peterson博士は、インプットとアウトプットを扱うコードはInstituteではスーパーバイザの外に、S&Hではスーパーバイザの中に置かれていると証言した。Peterson博士の例34は「PROBHYPR機能」に関係しており、S&HはSASのソースコードを有していた;Merten博士によるとS&Hは、相当する(そしてコピーされた)コードをそのスーパーバイザの中においた。乙2号証。インターフェース・ルーチンに関係する証拠はS&HのスーパーバイザはSASの非スーパーバイザ部分からコピーされた情報を含んでいることを証明している。

 本裁判所はコンピュータプログララマではなく、統合された186,000行のコードから、それらのどれが不正使用を反映しているのかを簡単に決めることはできない。本裁判所は、その決定をするために、法廷での証言が本裁判所が価値がないと信じる宣告された剽窃者に頼りたくもない。第5巡回区〔控訴裁判所〕が述べたように、「[S&Hの]再設計のスタートポイントは[Instituteの]作品である」ということで十分である。Tennessee Fabricating Company v. Moultrie Manufacturing Company, 421 F.2d 279, 164 USPQ 481 (5th Cir.), cert. denied, 398 U.S. 928, 165 USPQ 609 (1970); Orth-O-Vision v. Home Box Office, 474 F.Supp. 672, 205 USPQ 644 (S.D.N.Y. 1979)(分割が技術的に実行できな場合は全体の製品に対する差止); Davis v. E.I. duPont de Nemours & Co., 240 F.Supp. 612, 148 USPQ 328 (S.D.N.Y. 1965); cf. Burroughs v. Metro-Goldwyn-Mayer, Inc., 683 F.2d 610, 620 n.9, 215 USPQ 495, 503 n.9 (2d Cir. 1982) (裁判所は「フィルム編集者の役割を引き受けるべきではない」)。

 INDASのスーパーバイザ部分の本裁判所の差止は著作権法の原理に基づく必要がない。

 広範囲な差止が発せされるべきであるという本裁判所の結論は契約法の基本的な原理の検討によって補強される。本裁判所は両当事者の期待の保護及び不正な蓄財の防止を含む契約上の救済は広範囲な目的を持っているということを心に留めている。リステートメント(第2)の契約§344。本裁判所によって許可された衡平法上の救済は本事件の事実のもとに実効性があるようにこれらの目的を達成するように仕立てられなければならない。

 ここに、広範囲な差止が二つの区別された契約上の根拠に支持されることができる。第一に、それがInstituteがその取引の利益を受け得るただ一つの方法である。両当事者の契約の中心になっていたのはSASのもののS&Hによる使用が厳格に制限されていたことである。明らかに、本裁判所が時計を逆に戻すことはできず、S&Hがこれらのものの容認できない使用をしたことを防ぐことはできない。しかしながら、S&Hがライセンス契約に従っていたとしたのと同じ立場に両当事者を置くことはできる。S&Hがそうしていたとしたら、S&Hは現在の製品を、少なくとも現在の形では、そして実際にかかった時間内では、開発していなかったであろう、。それゆえ、その製品を販売する立場にはなかったろうし、このゆえに、本裁判所はそうすることを許すべきではない。

 第二に、広範囲な差止がS&HがInstituteの費用で不正に蓄財しないことを保証するために必要である。賠償救済が契約解除と同様に契約違反の救済に適切である。リステートメント(第2)の契約§373。S&Hは提供されたものばかりでなく、契約に基づいて「受けたものの[S&H]の使用に由来する」全ての利益及び得たものを変換するように要求されるべきである。同§376, Comment a and Ilustration 5。本裁判所は事実問題として所有されたS&HのものはS&Hによって実質的な程度使用され、依存されているという事実を認定する;したがって、不正な蓄財の防止は、結果のS&H製品の販売及び更なる使用又は開発を禁止することによってのみ達成することができる。

VII.結論

 ここに明らかにされた理由により、本訴及び反訴の両方についてInstituteに有利な判決がなされる。差止が発せられ、INDAS、又はINDAS若しくはSASから複製若しくは翻案された他の製品のあらゆる販売が禁じられる。

 適切な命令が発せられる。


命       令

 ここに同時にファイルされたメモランダムの意見において述べられた理由により、S&H Computer Systems, Inc.の反訴は棄却され、費用を含めて、判決がSAS Institute, Incに与えられる。S&H Computer Systems, Inc.、その役員、代理人、使用人、及び従業員は、ここに、「INDAS」と称する製品又はコンピュータプログラム製品SASから複製若しくは翻案されたあらゆる他の製品の販売を禁止されることとする。

 
訳注

(訳1)プロシージャ<procedure>」はプログラムの主要な構成単位。特定の問題解決の手順を書いた文をまとめておき、呼び出して利用する。式の中で使えるものが関数、それ以外のものがサブルーチンである(「詳説コンピュータ理工学辞典」岡本茂他、共立出版梶A1997年7月25日)。

(訳2)中山信弘著「ソフトウエアの法的保護(新版)」の136頁には、この判決に関連して、「プログラムの構成(organization)や詳細な構造(structural detail)をコピーしていれば、たとえ1万8600ステップ中44ステップしか直接的コピーをしていなくとも、IBM用のプログラムをVAX用に変換する行為は著作権侵害であるとされている。」と記載されているが、判決の原文は「S&H argued at trial that the 44 examples of copying presented by Dr. Peterson were trivial, in the context of the claimed 186,000 total lines of source code in S&H's product.」であるから、「S&Hはトライアルにおいて、Peterson博士によって提出された44のコピーの例は、S&H製品の〔侵害と〕主張された186,000行の全行数の中にあっては、些細なものであると主張した」と翻訳した。各例の具体的なコードは残念ながら記載されていないが、それらに関する記載が判決の次の部分にある。「36.・・・このプログラマFrank KyleはPeterson博士がその中にコピーの明白な証拠を発見した「TTEST」プロシージャの作者である。・・・例42−44。」、「43.・・・出力ラベルの最初にSAS自体が表示するのと同じタイトル及び同じスタイルを使用して「統計分析システム」と印字するようにプログラムされていた。・・・例40。」、「44.・・・ソースコードの少なくとも145の別々の行に「SAS」の名称が使用されていることである。・・・例27。」、「52.・・・SASに残る痕跡に相当する完全に機能のない「OBSTIME」を発見した。・・・例8。・・・第二のそのような例はPeterson博士によって彼の例38として提出された。」、「62.一枚の図は「MEANS」プロシージャに関係するPeterson博士の例29である。Peterson博士は、S&HはSASの構造と構成の極めて近い言い換えを使っていると証言した。」、「VI.救済 ・・・例34は「PROBHYPR機能」に関係しており、・・・Merten博士によるとS&Hは、相当する(そしてコピーされた)コードをそのスーパーバイザの中においた。」

(訳3)本件のように、あるプログラムを書き換えてあたかもオリジナルに作成したように見せかけたとしても、機能のない「OBSTIME」のようなルーチンが残っている場合がある。なぜなら、プログラムを実行してもそのルーチンが使用されることはないから、気がつかれにくく、書き換えが行われず、機能のないルーチンがあたかも化石のように当初の類似したままの状態で残ってしまうのである。

(訳4)「教科書は被告のある従業員によって略述された、その略述は他の職員に配布された、そして彼らがその略述に基づいて「オリジナルな」テキストを書き、結果として表現の複製及び単なるアイディアではないものの複製が生じる。」という記載は、いわゆるクリーンルームを教科書に適用した事例であるようにも見えるが、これはクリーンルームではなく、疑似クリーンルームとでもいうべきものである。この事件で被告が証言したのはこのような疑似クリーンルームのようなものと考えられるが、多分、実際は、原告のプログラム(IBM用)をエディタにロードし、それを書き換えて改造版(VAX用)を作成し、その後、上記の教科書のような疑似クリーンルーム方式で、より似ていないコードを作成したと推測する。なぜなら、動作しないプログラムを略述する<outline>のは、ソースコードとはいえ、困難なのに対して、エディタで書き換えるのは極めて簡単だからである。一応、VAX上で動作するプログラムが完成してから、疑似クリーンルーム方式で順次サブルーチンごとに書き換えて行ったと考えられる。なお、クリーンルームであるためには、ある従業員が教科書(又はプログラム)から、略述ではなく、学問的内容(又は統計分析のアルゴリズム、インターフェース情報等)を抽出し、それを利用して、他の従業員がオリジナルな教科書(又はプログラム)を創作する必要がある。そうすれば、教科書に記載されている学問内容(又はプログラムが実行する機能)はほぼ同じものができあがるが、その表現は全く異なったものとなっているはずであり、著作権侵害はない。ただし、本件のように、契約によってソースコードを入手した場合は、契約違反に問われることになるかもしれない。

(訳5)「超高層ビルの青写真を盗み、技術的研究の労力及び費用、構造分析、及び無数の設計判断を回避する」のは著作権侵害であるという意味であるが、これは超高層ビルが建築の著作物であるからである(日本の著作権法2条1項15号ロ(CRIC)参照)。著作物である建築や美術工芸品を除く、通常の製品の場合は、著作物ではないから、青写真から製品を製造することは著作権侵害ではないと考えられる。ただし、青写真をコピーするのは著作権侵害である。
 



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