翻訳 井上雅夫 2004.08.30; 05.07.12    ↑UP  最高裁判決<New

MGM v. Grokster P2Pソフト配布事件 第9控訴裁判決

2004.08.19
   目       次
判   決
 意  見
  I.バックグラウンド
  II. 分  析
   A.寄与著作権侵害
    1.知っていること
    2.重要な寄与
   B.代位著作権侵害
    1.監督する権利と能力
   C.侵害を「見て見ぬふり」すること
  III.
 
 訳注

第9巡回区合衆国控訴裁判所

No. 03-55894
D.C. No. CV-01-08541-SVW
 原告−控訴人 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS, INC.; COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC.; DISNEY ENTERPRISES, INC.; PARAMOUNT PICTURES CORPORATION; TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION; UNIVERSAL CITY STUDIOS LLP, f/k/a Universal City Studios, Inc.; NEW LINE CINEMA CORPORATION; TIME WARNER ENTERTAINMENT COMPANY, LP; ATLANTIC RECORDING CORPORATION; ATLANTIC RHINO VENTURES, INC., d/b/a Rhino Entertainment, Inc.; ELEKTRA ENTERTAINMENT GROUP, INC.; LONDON-SIRE RECORDS, INC., LP; WARNER BROTHERS RECORDS, INC.; WEA INTERNATIONAL INC.; WARNER MUSIC LATINA, INC., f/k/a WEA Latina, Inc.; ARISTA RECORDS, INC.; BAD BOY RECORDS; CAPITOL RECORDS, INC.; HOLLYWOOD RECORDS, INC.; INTERSCOPE RECORDS; LAFACE RECORDS; MOTOWN RECORD COMPANY; RCA RECORDS LABEL, a unit of BMG Music d/b/a BMG Entertainment; SONY MUSIC ENTERTAINMENT, INC.; UMG RECORDINGS, INC.; VIRGIN RECORDS AMERICA, INC.; WALT DISNEY RECORDS, a division of ABC, Inc.; ZOMBA RECORDING CORP.
 被控訴人 GROKSTER LTD.; STREAMCAST NETWORKS, INC., f/k/a Musiccity.Com, Inc.
 及び被告 SHARMAN NETWORKS LIMITED; LEF INTERACTIVE PTY LTD.

No. 03-55901
D.C. No. CV-01-09923-SVW
 原告−控訴人 JERRY LEIBER, individually d/b/a Jerry Leiber Music; MIKE STOLLER, individually and d/b/a Mike Stoller Music; PEER INTERNATIONAL CORPORATION, PEER MUSIC LTD., SONGS OF PEER LTD.; CRITERION MUSIC CORPORATION; FAMOUS MUSIC CORPORATION, BRUIN MUSIC COMPANY; ENSIGN MUSIC CORPORATION; AND LET’S TALK SHOP, INC., d/b/a Beau-DI-ODO Music, on behalf of themselves and all other similarly situated
 被告 CONSUMER EMPOWERMENT BV, aka Fasttrack; SHARMAN NETWORKS LIMITED; LEF INTERACTIVE PTY LTD.
 及び被告−被控訴人 GROKSTER LTD.; STREAMCAST NETWORKS, INC., f/k/a Musiccity.Com, Inc.

No. 03-56236
D.C. No. CV-01-08541-SVW
 原告−控訴人 METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS, INC.; COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC.; DISNEY ENTERPRISES, INC.; PARAMOUNT PICTURES CORPORATION; TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION; UNIVERSAL CITY STUDIOS LLP, f/k/a Universal City Studios, Inc.; NEW LINE CINEMA CORPORATION; TIME WARNER ENTERTAINMENT COMPANY, LP; ATLANTIC RECORDING CORPORATION; ATLANTIC RHINO VENTURES, INC., d/b/a Rhino Entertainment, Inc.; ELEKTRA ENTERTAINMENT GROUP, INC.; LONDON-SIRE RECORDS, INC., LP; WARNER BROTHERS RECORDS, INC.; WEA INTERNATIONAL INC.; WARNER MUSIC LATINA, INC., f/k/a WEA Latina, Inc.; ARISTA RECORDS, INC.; BAD BOY RECORDS; CAPITOL RECORDS, INC.; HOLLYWOOD RECORDS, INC.; INTERSCOPE RECORDS; LAFACE RECORDS; MOTOWN RECORD COMPANY; RCA RECORDS LABEL, a unit of BMG Music d/b/a BMG Entertainment; SONY MUSIC ENTERTAINMENT, INC.; UMG RECORDINGS, INC.; VIRGIN RECORDS AMERICA, INC.; WALT DISNEY RECORDS, a division of ABC, Inc.; ZOMBA RECORDING CORP.
 被告−被控訴人 GROKSTER LTD.; STREAMCAST NETWORKS, INC., f/k/a Musiccity.Com, Inc.

意    見

 カリフォルニア中央地区合衆国地裁(Stephen V. Wilson地裁裁判官)からの控訴

 弁論及び提出2004年2月3日−Pasadena, California
 2004年8月19日判決登録

Robert Boochever、John T. Noonan、及びSidney R. Thomas巡回裁判官
Thomas裁判官による意見



代理人
 Russell J. Frackman and George M. Borkowski; Mitchell Silberberg, et al., LLP; Los Angeles, California; for plaintiffs-appellants Metro-Goldwyn-Mayer Studios, Bad Boy Records, Capitol Records, Inc., Hollywood Records, Inc., Interscope Records, Laface Records, Motown Record Co., RCA Records Label, Sony Music Entertainment, Inc., UMG Recordings, Inc., Virgin Records America, Inc., Walt Disney Records, Inc., and Zomba Recording Corp.
 Thomas G. Hentoff, David E. Kendall; Williams & Connolly; Washington, DC; for plaintiffs-appellants Metro-Goldwyn-Mayer Studios, Columbia Pictures Industries, Inc., Disney Enterprises, Inc., Paramount Pictures Corp., Twentieth Century Fox Film Corp., and Universal City Studios, LLP.
 Robert M. Schwartz; O’Melveny & Myers, LLP; Los Angeles, California, for Newline Cinema Corp., Time Warner Entertainment Co., Atlantic Recording Corp., Atlantic Rhino Ventures, Inc., Elektra Entertainment Group, Inc., London-Sire Records, Inc., LP, Warner Brothers Records, Inc., WEA International, Inc., Warner Music Latina, Inc., and Arista Records, Inc.
 Kelli L. Sager, Andrew J. Thomas, and Jeffrey H. Blum; Davis, Wright, Tremaine, LLP, Los Angeles, California; Carey Ramos; Paul, Weiss, Rifkind, Wharton & Garrison, LLP; New York, New York, for plaintiffs-appellants Jerry Leiber, Mike Stoller, Peer International Corp., Peer Music Ltd., Songs of Peer Ltd., Criterion Music Corp., Famous Music Corp., Bruin Music Co., Ensign Music Corp., and Let’s Talk Shop, Inc.
 Mark Lemley and Michael H. Page; Keker & Van Nest; San Francisco, California; Jennifer Stisa Granick; Stanford Law School; Stanford, California, for defendant-appellee Grokster Ltd.
 Cindy A. Cohn and Fred von Lohmann; Electronic Frontier Foundation; San Francisco, California; Charles S. Baker; Munsch, Hardt, Kopf & Harr, P.C.; Austin, Texas, for defendant-appellee StreamCast Networks, Inc.
 Hank L. Goldsmith; Proskauer, Rose LLP; Los Angeles, California, for amici Bureau International des Societes Gerant Les Droits D’enregistrement et de Reproduction Mecanique, et al.
 John M. Genga; Paul, Hastings, Janofsky & Walker LLP; Los Angeles, California, for amici Law Professors and Treatise Authors Neil Boorstyn, Jay Dougherty, James Gibson, Robert Gorman, Hugh Hansen, Douglas Lichtman, Roger Milgrim, Arthur Miller, and Eric Schwartz.
 Ian C. Ballon; Manatt, Phelps & Phillips, LLP; Los Angeles, California, for amici American Film Marketing Association, et al.
 Jeff G. Knowles; Coblentz, Patch, Duffy & Bass; San Francisco, California, for amici American Federation of Musicians, et al.
 Alan Malasky; Porter, Wright, Morris & Arthur, LLP; Washington, DC, for amici The Commissioner of Baseball, et al.
 Matthew S. Steinberg; Greenberg Traurig, LLP; Santa Monica, CA for amici National Academy of Recording Arts & Sciences, Inc.
 Jennifer M. Urban; Samuelson Law, Technology and Public Policy Clinic, University of California at Berkeley School of Law; Berkeley, California, for amici 40 Intellectual Property and Technology Law Professors.
 Jason M. Mahler; Washington, DC, for amicus Computer & Communications Industry Association, Netcoalition Industry Association.
 Christopher A. Hansen; ACLU Foundation; New York, New York, for amici American Civil Liberties Union, et al. Roderick G. Dorman; Hennigan, Bennett & Dorman, LLP; Los Angeles, California, for amicus Sharman Networks Ltd.



意    見

THOMAS巡回裁判官:

 本控訴は、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワーク・ソフトウェアの配布者がユーザによる著作権侵害に対して寄与又は代位責任を負うかどうかの問題を提出している。本件によって提出された状況において、我々は、被告らは寄与及び代位著作権侵害の責任を負わないと結論し、地裁のサマリ判決の一部認容を維持する。

I.バックグラウンド

 自動ピアノの出現以来、音を再生するあらゆる新しい手段は音楽著作権者と不協和音を奏で、しばしば連邦裁判所に訴訟が起こされてきた。本控訴は繰り返し起こる争いの最新のものであり、レコード産業とファイルシェアリング・コンピュータ・ソフトウェアの配布者間の一連の継続する訴訟の一つである。

 併合事件のおける原告ら(「本件著作権者ら」)は、彼ら自身の記述によると「合衆国内における著作権で保護された映画及びレコードの大多数を所有又は支配している」[1]作曲家、音楽出版社、及び映画スタジオである。被告Grokster Ltd.及びStreamCast Networks, Inc.(「本件ソフト配布者ら」)は、ユーザが互いにデジタル化された音楽及び映画を含むコンピュータファイルをシェアすることを可能とするソフトを無料で配布している会社である。本件著作権者らは、本件ソフト配布者らによって提供された「ピア・ツー・ピア」ファイルシェアリング・ソフトウェアを使用して交換されるファイルの90%以上が著作物に関係し、その70%は著作権者らによって所有されていると主張する。それゆえ、本件著作権者らは、本件ソフト配布者らは著作権法(2000年)501−13条に基づき、寄与及び代位著作権侵害の責任を負い、本件著作権者らは金銭及び差止救済を得る権利があると主張する。地裁は、本件ソフト配布者らに現在の活動から生じる責任に関して部分サマリ判決を認容し、民事訴訟規則54(b)条に基づき控訴のために決定された争点を認証した。Metro-Goldwyn-Mayer Studios, Inc. v. Grokster, Ltd., 259 F. Supp. 2d 1029 (C.D. Cal. 2003) (“Grokster I”).

 法的問題を適正に分析するために、とりわけピア・ツー・ピア・ファイルシェアリングが典型的なインターネットユーザの使用とは異なっているから、争点となっているピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ソフトウェアについての基本的理解が必要となる。日常的なインターネットの使用では、ユーザは情報を得る又は商業取引を行うためにインターネットを経由してウェブサイトに接続する。コンピュータ用語では、消費者が使用するパソコンが「クライアント」と考えられ、ウェブページをホストするコンピュータは「サーバ」である。クライアントは中央の情報源すなわちサーバから情報を得る。

 ピア・ツー・ピア配布ネットワークにおいては、アクセス可能な情報は中央のサーバ上には存在しない。どの一つのコンピュータも全てのユーザが利用できる全ての情報は保有していない。むしろ、それぞれのコンピュータがピア・ツー・ピア・ネットワーク内のそれぞれの他のコンピュータに情報を利用させることができる。他の言葉で言えば、ピア・ツー・ピア・ネットワークにおいては、それぞれのコンピュータが一つのサーバであり一つのクライアントでもある。

 ピア・ツー・ピア・ネットワークにおいては情報は非中央化されているから、そのソフトウェアはユーザがアクセスできるように利用可能な情報のインデックスを作成する何らかの方法を提供しなければならない。そのソフトウェアは、インターネット経由で、同一又は同様なソフトウェアの他のユーザに接続することによって作動する。いかなる時点においても、ネットワークはその時オンラインの他のユーザの同様又は同一のソフトウェアで構成される。したがって、シェアリングのために利用可能なファイルのインデックスはピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークの重要な構成要素である。

 現在、目録作成の3つの異なった方法がある:(1)一つ又はそれ以上の中央サーバ上に利用可能なファイルのリストを保持する中央インデックス作成システム;(2)それぞれのコンピュータがそのコンピュータだけで利用可能なファイルのリストを保持する完全な非中央インデックス作成システム;及び(3)かなりの数の選択されたコンピュータがインデックス作成サーバとして働く「スーパーノード」システム。[2]

 最初のNapsterは所有された<proprietary>中央インデックス作成ソフトウェア・アーキテクチャを使用しており、利用可能なファイルの共同のインデックスはNapsterが所有し運営するサーバ上に保持されていた。レコードのデジタルコピーを入手しようとするユーザは、Napsterのサーバへサーチ要求を送信し、ソフトウェアはファイルマッチングのための中央インデックスのテキストサーチを行い、サーチの結果が要求したユーザに送信される。その結果が、他のNapsterユーザがNapsterのサーバにログオンしており、要求したレコードのシェアを申し出ていることを示していれば、その要求しているユーザは申し出ているユーザに直接接続し、音楽ファイルをダウンロードする。[3]

 非中央インデックスのピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・モデルにおいては、それぞれのユーザはそのユーザが他のネットワークユーザに利用可能としたいファイルだけのインデックスを保持する。このモデルにおいては、ソフトウェアはネットワーク上の全てのコンピュータにサーチ要求をブロードキャスト(同時送信)し、個々のインデックスファイルのサーチが行われ、収集された結果が要求しているコンピュータに返される。このモデルはGnutellaソフトウェアシステムによって用いられており、被告StreamCastによって現在使用されているタイプのアーキテクチャである。Gnutellaはオープンソース・ソフトウェアであり、オープンソース・ソフトウェアとはソースコードがパブリックドメインであるか、著作権を有しソフトウェアの修正を何らかの制限のもとに許容するオープンソース・ライセンスに基づき配布されているソフトウェアを意味する。

 現在のピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークの第3のタイプは、「スーパーノード」モデルであり、ネットワーク上のかなりの数の選択されたコンピュータがインデックス作成サーバとして選択される。ファイルサーチを始めるユーザは最も簡単にアクセスできるスーパーノードに接続し、そのスーパーノードがインデックスのサーチを行いその結果をユーザに提供する。処理速度のような技術的要件を満たすならば、ネットワーク上のあらゆるコンピュータがスーパーノードとして機能することができる。「スーパーノード」アーキテクチャはドイツの会社、KaZaa BVによって開発され、FastTrackテクノロジーの名称でライセンスされている。[4]

 GroksterもStreamCastも最初はFastTrackテクノロジーを使用していた。しかし、StreamCastはKaZaaとライセンス紛争を起こし、現在はオープンソースGnutellaコードの独自ブランドである「Morpheus」バージョンを使用している。StreamCastのユーザはGnutellaベースのピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ソフトウェアの他のユーザと接続する[5]。GroksterもStreamも彼らの別々のソフトウェアを無料で配布している。ユーザのコンピュータに一度ダウンロードされると、そのソフトウェアはそのユーザがインターネット上のそれぞれのピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークに参加することを可能とする。[6]

 ソフトウェアのユーザはデジタル・オーディオ、ビデオ、画像、及びテキスト・ファイルをシェアできる。そのファイルのいくらかは著作権で保護され、許諾なしにシェアされており、そのほか
は(パブリックドメインの作品のように)著作権で保護されておらず、さらにそのほかは著作権で保護されているが、著作権者が彼らの作品をピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークで配布することをソフトウェアユーザに許諾しているものである<Some of the files are copyrighted and shared without authorization, others are not copyrighted (such as public domain works), and still others are copyrighted, but the copyright owners have authorized software users in peer-topeer file-sharing networks to distribute their work.>。本件著作権者らは、本件ソフト配布者らによる真剣な争いなしに、そのファイルの大多数<the vast majority of the files>は著作権法に違反して違法に交換されていると主張する。[訳1]

II. 分  析

 直接著作権侵害は本件における争点ではない。むしろ、本件著作権者らは、本件ソフト配布者がソフトウェアユーザの著作権侵害に責任を負うと主張する。本件著作権者らは二次的著作権責任の二つの認められた法理である寄与著作権侵害と代位著作権侵害に頼っている。Ellison v. Robertson, 357 F.3d 1072, 1076 (9th Cir. 2004). 我々は、本件ソフト配布者らの現在の活動はどちらの法理に基づいても責任を生じさせないという地裁のよく理由付けられた分析に同意する。

A.寄与著作権侵害

 〔1〕寄与著作権侵害論に基づいて被告の責任を証明するための3つの要件は、(1)第一の侵害者による直接侵害、(2)その侵害を知っていること、及び(3)侵害への重要な寄与である。Id. 直接侵害の要件は本件においては争われていない。

1.知っていること
 寄与著作権侵害の審理は、重要な判例であるSony Corp. of America v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417 (1984) (「Sony-Betamax事件」)に従わなければならない。Sony-Betamax事件において、最高裁は、ビデオテープレコーダの販売は、被告がその装置が侵害に使用されるものであることを知っていたとしても、寄与著作権侵害責任を生じさせないと判示した。最高裁は、寄与著作権侵害の輪郭を分析して、特許法から「主要商品<staple article of commerce>」の法理を利用した。Id. at 440-42. その法理に基づくと、被告がその製品が「かなりの」又は「商業的に相当な非侵害使用が可能なものである」ことを証明したなら<if the defendant showed that the product was “capable of substantial” or “commercially significant noninfringing uses.”>、寄与著作権侵害の主張を打ち破るに十分であろう。この法理の適用において、最高裁は、ソニーのBetamaxビデオレコーダは商業的に相当な非侵害使用をし得るものであるから、ソニーが一般にそのレコーダが侵害のために使用され得ることを知っている事実から侵害行為を推定的に知っているとされることはないであろうと判示した<constructive knowledge of the infringing activity could not be imputed from the fact that Sony knew the recorders, as a general matter, could be used for infringement.>。Id. at 442.

 〔2〕Napster I 事件において、我々は、寄与著作権侵害の知っていることの要件を適用するために、Sony-Betamax事件を解釈した。Napster I 事件において、被告がその製品がかなりの又は商業的に相当な非侵害使用が可能なものであることを証明したならば、侵害を推定的に知っているとされることはないであろうと判示した。むしろ、かなりの非侵害使用が証明されたなら、著作権者は、被告が特定の侵害ファイルを合理的に知っていることを証明することを要求されるであろう[7][訳2]Napster I, 239 F.3d at 1027; see also A&M Records v. Napster, 284 F.3d 1091, 1095-96 (9th Cir. 2002) (“Napster II”).[8]

 したがって、侵害を知っていることの要件を分析するために、最初に我々は要求される知っていることのレベルがどのレベルかを決定しなければならない。争われている製品がかなりの又は商業的に相当な非侵害使用が可能なものでないのなら、著作権者は被告が侵害を推定的に知っていることだけを証明すればよい。他方、争われている製品がかなりの又は商業的に相当な非侵害使用が可能なものであるのならば、著作権者は、被告が特定の侵害ファイルを合理的に知っており、侵害を防ぐためにその知識に基づいて行動していないことを証明しなければならない。See Napster I, 239 F.3d at 1027.

 〔3〕本件において、地裁は各被告によって配布されているソフトウェアがかなりの非侵害使用が可能なものであることを認めた。Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1035. 記録を注意深く調べてみると、非侵害使用に関する重要な事実の本物の問題は存在しないことがわかる。実際、本件ソフト配布者らは、自分の作品がそのソフトウェアで配布されることを認める者又はパブリックドメインの作品を配布するためにそのソフトウェアを使用している者による多数の陳述書を提出している。See id. 本件ソフト配布者によって提出された一つの印象的な例は、レコード会社が商業的に見込みがないとしてアルバムの一つのリリースを拒否したポピュラー音楽のバンドWilcoである。Wilcoは、レコード会社からその作品を再購入し、そのアルバムを自分のウェブサイトからでも本件ソフトウェアのユーザのネットワークからでも無料ダウンロードできるようにした。その結果、広範囲の興味を引き起こし、その結果として、Wilcoは他のレコーディング契約を受けたのである。他のレコーディング・アーティストはユーザのネットワークを通して彼らの作品を配布している。実際、他の数千の音楽グループがインターネットを通して彼らの作品の無料配布を許可していることを記録が示している。音楽に加えて、本件ソフトウェアは、Prelinger Archiveによってリリースされた歴史的なパブリックドメイン映画やグーテンベルグ・プロジェクトを通して利用できる数千のパブリックドメインの文学作品をシェアするために使用されている。ようするに、地裁は、提出された証拠から、本件ソフトウェアがかなりの非侵害使用が可能なものであり、それゆえ、Sony-Betamax事件の法理が適用されると極めて正しく結論づけた。

 〔4〕本件著作権者らはこれらの陳述書を否定することができる証拠を何ら提出していない。むしろ、本件著作権者らは、大多数の本件ソフトウェアの使用が著作権侵害のためのものであることを証拠が示していると主張する。この主張は、Sony事件によって課された制限を適用する目的で、製品がかなりの非侵害使用が可能なものであることだけが必要であることを強調してNapster I 事件において解釈したSony事件の基準を誤解している。Napster I, 239 F.3d at 1021[9]. 本件においては、本件ソフト配布者らは、彼らの製品がかなりの非侵害使用が可能なものであるものであることを証明しただけでなく[10]、その使用が商業的に存続可能であることも証明している。それゆえ、地裁は、Napster I 事件、Napster II 事件、及びSony-Betamax事件を本件記録に適用して、本件ソフト配布者らが彼らの製品がかなりの又は商業的に相当な非侵害使用が可能なものであることを証明したと正しく結論づけた。したがって、地裁は、本件ソフト配布者らは侵害を推定的に知っていることの責を負わされることはあり得ず、知っていることの要件を満たすためには、本件著作権者らが本件ソフト配布者が特定の侵害を合理的に知っていたことを証明しなければならないと正しく推論した。

 〔5〕我々は、「特定の侵害を合理的に知っていること」の要件が本件において適用されることを決定したから、次に、本件著作権者らがそのより高い基準を満たすために重要な事実の十分に本物の問題を提起したかどうかを決定しなければならない。地裁が正しく結論づけたように、そのような知っていることが得られた時が重要である。寄与著作権侵害には知っていること及び重要な寄与が要求されるから、本件著作権者らは本件ソフト配布者らが「侵害に寄与した時に特定の侵害を知っており、その情報に基づいて行動していない」ことを証明することが要求される[訳3]。Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1036 (Napster I, 239 F.3d at 1021を引用している). 地裁が正しく認め、かつ重要な寄与の審理において我々が更に説示するように、「侵害行為の原告らによる通知は意味がない」、なぜなら、「その通知が」特定の著作権で保護されたコンテンツの「主張された侵害に対して被告らが助長することも停止することもできない時に届くからである」。Id. at 1037. See Napster II, 284 F.3d at 1096(「違法なコンテンツへのアクセスを妨げる義務がNapsterに課せられる前に、原告らは、NapsterにNapsterのシステム上で利用可能な著作物及び著作物を含むファイルを通知する責を負う。」).

 〔6〕本件における状況では、本件ソフトウェアの設計が極めて重要である。前述のように、Napster I 事件及びNapster II 事件で争点となったソフトウェアは、利用可能なファイルのインデックスを保持する中央サーバ群を使用していた。これとは対照的に、StreamCastの非中央化されたGnutellaタイプのネットワークにおいても、Groksterの半非中央化されたスーパーノードのKaZaaタイプのネットワークにおいても、中央インデックスが保持されることはない。実際、現在、StreamCastもGroksterもインデックスファイルを管理していない。地裁が認めたように、本件ソフト配布者らが「ドアを閉め、彼らが管理する全てのコンピュータを停止したとしても、彼らの製品のユーザはほとんどあるいは全く妨害されることなくファイルのシェアをし続けることができる。」Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1041.

 〔7〕したがって、我々は、知っていることの要件において、本件ソフト配布者らが部分サマリ判決を得る資格があるとした地裁に同意する。

2.重要な寄与
 我々は、被告らの現在のソフトウェア配布及び関連する行為に関して、被告らが著作権侵害に重要な寄与をしていないという点でも地裁に同意する。

 Napster I 事件において、我々は、「Napsterは統合化されたサービスである」という地裁の事実認定を引用した後、重要な寄与を認定した。239 F.3d at 1022. 我々は、「Napsterが直接侵害のための敷地と設備を提供した」ことに同意した。Id. (internal quotation marks omitted). さらに、我々は、Netcomが「[ユーザの]侵害メッセージを削除せず、それゆえ世界中に頒布されている侵害コピーを停止しなかった」ことに基づいて、「かなりの関与」を認定したNetcom事件の判示を引用した。Id. (quoting Religious Tech. Ctr. v. Netcom On-Line Communication Servs., 907 F. Supp. 1361, 1372 (N.D. Cal. 1995)) (alteration in original). また、我々は、被告が、侵害品が販売されている交換会を運営し、施設、駐車場、及び広告を提供していることから(Fonovisa, Inc. v. Cherry Auction, Inc., 76 F.3d 259, 261, 264 (9th Cir. 1996))、重要な寄与を認定した。

 記録が示すように、本件ソフト配布者らは侵害のための「敷地と設備」を提供しておらず、その他の点でも直接侵害に重要な寄与をしていない。侵害メッセージ又はファイルは被告らのコンピュータ上には存在せず、ユーザのアカウントを停止する能力も持っていない。Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1037, 1039-41.

 〔8〕重要な寄与は、侵害のための敷地と設備を提供し、特定の侵害を知った時に特定の侵害の事例を停止しないことで立証されるが、本件ソフト配布者らは第一に侵害のための敷地と設備を提供していない。仮に、本件ソフト配布者らが実際にアクセスプロバイダであるとすれば、ユーザの特定の侵害を知ったのちそのアクセスを不能にしていないならば重要な寄与をしていることになる。Netcom, 907 F. Supp. at 1375. あるいは、仮に、本件ソフト配布者らが、ファイル又はインデックスを保持し、侵害ファイル又は侵害インデックスリストを削除していないなら、重要な寄与をしていることになる。Napster I, 239 F.3d at 1022. しかし、本件ソフト配布者らはアクセスプロバイダではなく、また、ファイルの保存及びインデックスの保持を提供していない。むしろ、インターネットを介して互いに接続することによって、ネットワークを作り出し、アクセスを提供しているのは、本件ソフトウェアのユーザである。他人のコンピュータ上に存在するソフトウェアを変更「しない」ことは、自分自身のコンピュータからファイル名を削除しないこと、自分のユーザリストから特定のユーザの登録名とパスワードを削除しないこと、又は、自分自身のコンピュータ上のソフトウェアを修正しないこと、と類似してはいない。

 〔9〕本件著作権者らは、何らかの他の方法によって被告らが重要な寄与をしたという証拠を提出していない。StreamCastはユーザのソフトウェアが定期的にパラメータを検索するXML[11]ファイルを保持している。これらの値は活動中のユーザのリストが保持されているウェブサイトのアドレスを含んでいるかもしれない。FastTrackソフトウェアの所有者であるSharmanは、ユーザが接続できる現在活動中のスーパーノードのリストを含むルートノードを保持している。どちらの被告も付随的にユーザと通信しているが、侵害を促進してはいない[訳4]。これらの活動の全ては、直接著作権侵害への重要な寄与を構成するためにはあまりにも枝葉的である。侵害ファイルも侵害ファイルのリストも被告らによってホストされておらず、被告らはアクセスを規制又は提供していない。

 〔10〕特にGroksterとStreamCastは「次のNapster」になろうとしているのかもしれないが(Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1036)、争われているピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング技術はNapster I 事件及びNapster II 事件の判示を迂回するために設計された単なるツールではない。この技術は、多数の他の使用がなされており、パブリックドメイン及び黙認されてシェアされている芸術及び言論の配布コストを著しく低下させ、その配布の中央化された管理を減少させている[訳5]。特に、寄与著作権侵害責任は侵害からの直接的な金銭上の利益の証拠を必要としないことに照らして、我々は、著作権者らが要求する方法で寄与著作権責任を拡張することを拒絶する。

B.代位著作権侵害

 〔11〕被告が著作権侵害の代位責任を有することを証明するための三つの要件は、(1)第一の当事者による直接侵害、(2)被告の直接的な金銭上の利益、及び(3)侵害者を監督する権利と能力である。Napster I, 239 F.3d at 1022. 「代位著作権責任」は、直接侵害者に対して十分に監督者的な関係にある者に課せられる「使用者責任の『派生物』」である。Id. (citing Cherry Auction, 76 F.3d at 262). Napster I 事件において、我々は、Sony-Betamax事件は「代位著作権侵害・・・を適用していない」と判示した、この事件においては、代位責任の争点は「最高裁の審理の対象ではなかった」からである。Id.
 直接侵害及び広告収入による直接的な金銭上の利益については、この事件では争われてないのである。

1.監督する権利と能力
 我々は、本件において、被告らが直接侵害者らを監督する権利と能力を有しているかどうかに関する重要な事実問題は存在しないという点で地裁に同意する。代位著作権責任事件における責任は、典型的な「ダンスホール経営者」と「土地所有者」被告の歴史的な区別から発展した。Cherry Auction, 76 F.3d at 262. ダンスホール経営者は責任があるが、土地所有者は責任を免れる、なぜなら、ダンスホール経営者は侵害行為を監督する権利と能力を有しているのに対して、土地所有者はそうではないからである。Id. それゆえ、「監督する権利と能力」は被告と直接侵害者の関係を表している。

 その関係の顕著な特質は、必ずしも常にではないが、しばしば、被告と直接侵害書の間の正式なライセンス契約である。See, e.g., Napster I, 239 F.3d at 1023; Cherry Auction, 76 F.3d at 261; Shapiro, Bernstein & Co. v. H.L. Green Co., 316 F.2d 304, 306 (2d Cir. 1963) (cited as the landmark case in Cherry Auction, 76 F.3d at 262). 実際、Napster I 事件では、Napsterがいかなる理由にしろ侵害者のアクセスをブロックする権利を保有するポリシーを明示していた事実が特に重要であると認定した。239 F.3d at 1023(「どのような理由であるかによらず特定の状況への侵害者らのアクセスをブロックする能力は監督する権利と能力の証拠である。」).

 Cherry事件において、我々は、交換会運営者が何らかの理由で売り手をやめさせ、交換会を促進し、顧客のアクセスをコントロールし、交換会をパトロールする権利を有し、交換会運営者の規則と規制により直接侵害者をコントロールすることができるところに、管理する権利と能力が存在すると判示した。76 F.3d at 262-63. 同様に、Napster I 事件において、我々は、Napsterがファイルの中央インデックスをコントロールし、ユーザは、Napsterに登録することが要求され、ユーザ登録の有効性に依存してシステムにアクセスしているから、NapsterはNapsterユーザを監督する権利と能力を有すると認定した。239 F.3d at 1011-12, 1023-24.

 〔12〕どちらの被告も個々のユーザのアクセスをブロックする能力を有していることは記録上のいかなる証拠からも見出せない。Groksterはアクセスを終了する権利を名目上は留保しているが、StreamCastはMorpheusをダウンロードする者とライセンス契約を結んでいない。しかし、登録及びログイン手続きを行わないとしても、Groksterでさえ、全てのユーザに対する強制的なアップグレード(特定のユーザは拒否し、又はIPアドレスのブロックを試みる[12])がないファイルシェア機能へのアクセスを実際にやめさせる能力は持っていない。また、被告らとユーザとの間のいかなる通信も侵害ファイルのフィルタリング又はサーチのためのアクセス・ポイントを提供していないことは明らかである、なぜなら、侵害物及び侵害インデックスは被告らのコンピュータを通過しないからである。

 〔13〕StreamCastの場合は、そのXMLファイルを完全に停止したとしても、いかなる者のGnutellaネットワークの使用も妨げることはできないであろう。Groksterの場合は、KaZaa/Sharmanとのライセンス契約がGroksterにルートノードを停止する権限を与えていない。さらに、原告らが主張する作動を完全に停止する能力は、個々の参加者を排除する能力、警備通路の実践、ログインのポイントで直接的に個々のユーザをブロックする能力、又は個人のコンピュータからファイル名を削除する能力というよりも、交換会全体を閉める又はソフトウェアの配布を全くやめる能力に類似している。See Napster I, 239 F.3d at 1023-24; Cherry Auction, 76 F.3d at 261-62. 過去に代位責任を支持したモニタリング及び監督関係の類は、本件においては全く存在しない。

 本件においてGroksterとStreamCastは、Napsterのように、彼らがモニタしコントロールする「統合化されたサービス」の運営及び計画はしていないと地裁は認定した。我々は同意する。Grokster及びStreamCastとユーザとの関係の特徴は、GroksterとStreamCastはより非中央化されたピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークであるから、交換会運営者とその参加者との関係又は以前のバージョンのNapsterとユーザとの関係の特徴とは著しく異なっている。

 地裁は、監督する権利と能力に関する本件著作権者らの証拠は、「ユーザが著作権で保護されたファイルをシェアすることを妨げるために本件ソフトウェア自体を変更することができる」という主張以下のものであると正しく述べている。Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1045. この能力が監督する権利と能力の証拠を構成するという主張において、本件著作権者らは、監督する権利と能力を、代位著作権侵害責任が既に決定された会社に課される強い義務と混同している;代位著作権侵害責任が既に決定された会社の場合は最大限に取り締まりを実施する義務(Napster事件における新しいフィルタリングメカニズムのインプリメントを含む)を有する。Napster II, 284 F.3d at 1098(公平な基準は修正された仮差止によって要求されるように原告らが適切に通知した著作物にのみ適用する。」). しかし、裁判所が代位責任を被告に課し得る潜在的な義務は、「監督する権利と能力」テストによって意図された「能力」と同じではない。さらに、自分自身のコンピュータシステム上に存在するソフトウェアとファイルを変更する義務は、他人のコンピュータ上に存在するソフトウェアを変更する義務とは全く性質が異なる。他人のコンピュータ上に存在するソフトウェアをアップグレードすることが可能であることと代位責任が存在するかどうかを決定することとは無関係であるという点で、我々は地裁に同意する。Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1045; see also Napster I, 239 F.3d at 1024(「Napsterが留保する取り締まる権利と能力はNapsterシステムの現在のアーキテクチャによって閉じこめられている。」<“Napster’s reserved ‘right and ability’ to police is cabined by the system’s current architecture.”>).

C.侵害を「見て見ぬふり」すること

 最後に、本件著作権者らは、GroksterとStreamCastが彼らのユーザの侵害を「見て見ぬふり」することによって代位責任を免れることができるべきではなく、利益を得るために探知できる侵害行為を「見て見ぬふり」することは責任を生じさせると主張する。Napster I, 239 F.3d at 1023. 仮に、本件ソフト配布者らがコントロールし監督する権利と能力を有し予防的に実行を拒否しているのであれば、そのような拒否は彼らを責任から放免させることはないであろう。See id. しかし、そのレトリックは時々代位著作権侵害を記述するときに使用されてきたが、責任の伝統的な要件と独立して存在する別個の「見て見ぬふり」論又は代位責任要件は存在しない。それゆえ、この主張は、本件著作権者らの代位著作権責任の主張に包含され、同じ理由により必然的に成り立たない。

III.

 これらの争点が解決しても本件が終了するわけではない。地裁が明確に述べているように、この判決は地裁の判決の時に使用されている特定のソフトウェアに限定されている。本件著作権者らは本件ソフトウェアの以前のバージョン(ここで争点となったソフトウェアとは意味のある恐らく決定的に相違するソフトウェア)に基づいても救済を求めている。我々は、これらの争点に関しては全く意見を述べていない。

 手元の争点に関しては、本件ソフト配布者らに対する地裁の部分サマリ判決の認容は適切な判例によって明確に指図されたものである。本件著作権者らは、彼らが適切なパブリックポリシーであると信じるものに照らして、寄与及び代位著作権侵害論の射程を指数関数的に拡張するように、法を再審理するよう急き立てる。そのような革新は拘束力のある判例と矛盾するばかりでなく、あさはかなことであろう。疑いもなく、そのような方策は本件著作権者らの差し迫った経済的目的を満たすであろう。しかし、それはまた現在の状況以外における未知の最終結果を伴う大きな変更を一般的な著作権法に加えてしまうだろう。

 さらに、既に述べたように、我々は変動の激しい技術的環境の中でインターネット革新の流れを落ち着かせるには不向きな裁判所と同居している。AT&T Corp. v. City of Portland, 216 F.3d 871, 876 (9th Cir. 1999). 新技術の導入は常に古いマーケット、とりわけ定着した配布メカニズムを通じて作品を販売する著作権者らに対して、破壊的である。けれども、新技術が自動ピアノ、コピー機、テープレコーダ、ビデオレコーダ、パソコン、カラオケマシン、MP3プレーヤのいずれにせよ、時間とマーケットがしばしばインターネットをバランスさせ、均衡を作り出すことを歴史が示してきた。それゆえ、特定のマーケットの悪用を検討する目的で責任論を再構築することに、その明確な現在の重大さにかかわらず、裁判所は用心するのが賢明である。

 実際、最高裁はそのような問題を議会に託すよう我々に忠告している。Sony-Betamax事件において、最高裁は、著作権法の新技術への適用における議会の役割について極めて明確に述べている。その事件で最高裁が述べているように、「議会が科学と有用な技芸の発展を促進する権限を有するというのが憲法第1条の指示である。本件のように、議会が黙認しているとき、議会がどれだけ遠くまで行くことを選択したのかのサインは議会からだけ得ることができるのである。」464 U.S. at 456 (quoting Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S. 518, 530 (1972)).

 本件において、地裁は適切な法を正しく適用し、法を変更する誘いを正しく拒絶した。我々は地裁判決を維持し、残った争点についての決定のために差戻す。[訳6]

 原判決維持(控訴棄却)





(1)Leiber事件(訳注:本件は3件の事件の併合事件であるが、そのうちのNo. 03-55901)の原告らは、27,000を超える作曲家と音楽出版社の認定された集団を代表している。MGM事件(訳注:METRO-GOLDWYN-MAYER STUDIOS, INCが原告であるNo. 03-55894とNo. 03-56236)は、映画及びレコード会社の大部分を含んでいる。

(2)これはピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークの極めて簡単な概観である。より完全な解説書が多数利用可能である。See, e.g., Yochai Benkler, Coase’s Penguin, or, Linux and The Nature of the Firm, 112 Yale L.J. 369, 396-400 (2002); Jesse M. Feder, Is Betamax Obsolete?: Sony Corp. of America v. Universal City Studios, Inc. in the Age of Napster, 37 Creighton L. Rev. 859, 862-68 (2004).

(3)Napsterシステムのより完全な説明がA&M Records v. Napster, 239 F.3d 1004, 1011-12 (9th Cir. 2001) (“Napster I”) とA&M Records v. Napster, 114 F. Supp. 2d 896, 905-08 (N.D. Cal. 2000)に記載されている。本意見及びNapster事件に記述されているように、Napsterシステムは現在ではNapsterの資産を買収した会社によって使用されてはいない。

(4)本訴訟が開始して以来、FastTrackソフトウェアの管理はKaZaaからSharman Networksに移転している。KaZaaは本訴訟における被告として名を挙げられているが、結局は防御を止め、KaZaaに対する欠席判決が登録されている。

(5)FastTrackソフトウェアの所有者は、ソフトウェアのアップグレードをStreamCastユーザに送らないことによって、FastTrackのStreamCastバージョンのユーザがGrokster及びFastTrackのKaZaaユーザに接続できないようにすることに成功している。アップグレードを受け入れない者に対して、アップグレードを受け入れないユーザ同士では依然として互いに通信できものの、アップグレードを行う者とは通信できないように、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ソフトウェアのアップグレードのコードを作成することが可能である。これが既に行われたが、アップグレードしていない多くのユーザが依然としてお互いに通信しファイルをシェアしていることを記録が示している。

(6)各システムのより詳細な説明が本件の地裁の意見に記載されている。Grokster I, 259 F. Supp. 2d at 1031-33.

(7)詳しくは、Napster I 事件の被告らに対して採用された被告らの製品がかなりの又は商業的に相当な非侵害使用が可能であるかどうかのテストは、「寄与責任は、被告が(1)特定の侵害ファイルを合理的に知っており・・・;(2)そのようなファイルがNapsterシステム上で利用可能であることを知り又は知るべきであり;かつ(3)その作品のウイルス性の配布を防ぐ活動をしていない」ことである。239 F.3d at 1027. しかし、本局面では、
我々は適用されるべき知っていることの基準に焦点を合わせている。

(8)Napster I が判決された後、差戻審において地裁は、原告らにNapsterに対して特定の侵害ファイルの通知を行うことを要求し、Napsterにその後そのインデックスをサーチし問題となっている特定の作品を含む全てのファイルをブロックすることを要求した。Napster II, 284 F.3d at 1095-96. 原告らは控訴し、「Napsterは、原告らがファイル名を提供できた作品だけでなく、あらゆる著作権で保護された作品を含む全てのファイルをサーチしブロックすることが要求されるべきであると主張した」。Id. at 1096. 我々は、地裁が「法律上の誤りを犯しておらず、その裁量権を乱用していない」と認め、id. 、「地裁が要求した通知は、Napsterが違法コンテンツへのアクセスをできなくする義務を負う前に、Napsterシステム上で利用できる著作物及びそのような著作物を含むファイルの通知をNapsterに提供する責任を原告らが負うという我々の判示を守ったものである」と認めた。Id.

(9)第7控訴裁がSony事件におけるかなりの非侵害使用の基準を異なった形で解釈したことを、我々が忘れているわけではない。In re Aimster Copyright Litig., 334 F.3d 643, 651 (7th Cir. 2003). 第7控訴裁は、製品の非侵害使用がどれだけ「ありそう<probable
>」かという重要な要素が追加されるとした。Id. at 653. 本件著作権者らはAimsterの解釈を採用するよう我々にしきりと勧めている。しかし、Aimster事件が、Napster I 事件におけるSony-Betamax事件の解釈とは基本的に一致しない前提に基づく事件であることは明らかである。我々は、我々の巡回区の拘束力のある先例を拒絶する自由を持っていない。Montana v. Johnson, 738 F.2d 1074, 1077 (9th Cir. 1984)(本裁判所の大法廷だけが本裁判所による先例を覆すことができると判示している)参照。仮に、我々が先例を覆す自由を有しているとしても、我々はSony-Betamax事件の判示を第7控訴裁が行ったように狭くは解釈しない。とにかく、Aimster事件の解釈の適用によって本件著作権者らが助かるのかどうかは明確ではない。Aimster事件の分析において、被告の知っていることのレベルにかかわらず、潜在的な使用を含む、かなりの非侵害使用の認定が寄与侵害請求に極めて重要であるということが暗に示されている。Aimster事件においては、非侵害の製品の使用の証拠は全く提出されていない。

(10)実際、本件著作権者らが主張するように、適法な使用が10%のレベルであったとしても、その使用の量は、最低、数十万の適法なファイル交換を示しているであろう<Indeed, even at a 10% level of legitimate use, as contended by the Copyright Owners, the volume of use would indicate a minimum of hundreds of thousands of legitimate file exchanges>。

(11)XMLはExtensible Markup Languageの略語である。読者により親しみがありそうなマークアップ言語はHTMLであるが、これはHyperText Markup Languageを表している。

(12)IPアドレスのブロックは、固定IPアドレスを有しておらず、インターネットに接続するたびにIPアドレスを割り付けられるほとんどのユーザに対しては効果がないだろう。



訳注
(訳1)第9控訴裁は、バックグラウンドすなわち争いのない事実として、「そのファイルのいくらか<some of the files>は著作権で保護され、許諾なしにシェアされており、そのほか<others>は(パブリックドメインの作品のように)著作権で保護されておらず、さらにそのほか<and still othersは著作権で保護されているが、著作権者が彼らの作品をピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ネットワークで配布することをソフトウェアユーザに許諾しているものである。」と記載している。「そのファイル」とはシェアされているファイルのことであるから、第9控訴裁は、シェアされているファイルのいくらか<some>が違法であり、それ以外すなわち大多数<the vast majority>は適法であると認識しているようにみえる。(地裁判決では、「被告らのソフトウェアを使用する個人の少なくともいくらか<at least some of the individuals>が原告の著作物の直接著作権侵害を行っていることには争いがない」と記載されているが、第9控訴裁は「少なくとも」を削除し、いくらかの侵害の事実に続けて「そのほか」、「さらにそのほか」を記載することで、争いのない事実を被告らに有利なように解釈してしまったのではないだろうか。)

 上記の記載に続いて、「
本件著作権者らは、本件ソフト配布者らによる真剣な争いなしに、そのファイルの大多数<the vast majority of the files>は著作権法に違反して違法に交換されていると主張する。」と記載されているから、原告側(本件著作権者ら)は、シェアされているファイルの大多数<the vast majority>が違法であり、それ以外すなわちいくらか<some>が適法であると主張しているのである。したがって、違法/適法の比率に関して、第9控訴裁と原告側では正反対の認識をしていることになる。「本件ソフト配布者らによる真剣な争いなしに」と記載されているのは、地裁がサマリ判決を行ったからである。サマリ判決は重要な事実の本物の問題が存在しない場合に、トライアルを行わずに、すなわち証拠調べ(証人尋問)を行わずに、裁判官が書いた判決である。したがって、原告側の「そのファイルの大多数は著作権法に違反して違法に交換されている」という主張は被告側から反対尋問を受けた後に裁判官によって事実認定されたものではないから、この原告側の主張が事実かどうかは裁判上は不明である。しかし、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・ソフトウェアを実際に使用してみれば、誰でも、原告側の認識が正しく、第9控訴裁の認識が誤っていることはわかるはずである。

 第9控訴裁は、Sony-Betamax事件の最高裁判例を適用して、被告らを勝ちとするのであるが、Sony-Betamax事件はVTRの販売が寄与著作権侵害であるかどうかが争われた事件である。VTRによる録画の多くは放送されたテレビ番組の私的録画であり、日本では著作権法30条により適法である。アメリカには日本の著作権法30条に相当する明文の規定はないが、
Sony-Betamax事件によれば、VTRによる録画のいくらか<some>が違法であり、それ以外すなわ大多数<the vast majority>が適法又は黙認されているということになる。第9控訴裁は、VTRに関するSony-Betamax事件の最高裁判例をそのまま適用したいために、本件における違法/適法の比率をSony-Betamax事件とそれほど違わないと信じたくなってしまったのではないだろうか。

(訳2)第9控訴裁は、「かなりの非侵害使用が証明されたなら、著作権者は、被告が特定の侵害ファイルを合理的に知っていることを証明することを要求されるであろう。」と述べている。しかし、この点においても、Sony-Betamax事件と本件では正反対の状況にあるのである。Sony-Betamax事件においては、被告のSonyが、自社のVTRのユーザが著作権侵害を行っている具体的事例を入手するためには、多くのユーザ宅に調査員を派遣し、その調査員がユーザがどのようなものを録画するのかを長期間調べなければならない。そのような調査は、膨大な費用がかかり、また、ユーザのプライバシーを考慮すれば実際に行うことは不可能である。つまり、Sonyが特定の侵害行為を合理的に知ることは実質的に不可能なのである。

 これに対して、本件においては、違法コピーは公衆が使用しているインターネット上で公然と行われるのである(一般には違法行為を公然と行う者は少ないと考えられるが、このようなソフトウェアを使用すれば、匿名性でユーザは守られているので、多くのユーザが公然と違法行為を行うのである)。日本の著作権法の用語を用いれば、本件被告らのソフトウェアのユーザは著作権で保護されたファイルを公衆送信可能化状態にしているのである。したがって、本件被告らのソフトウェアを使用すれば、誰でも、したがって本件被告ら自身も、特別な費用なしに、簡単にユーザの特定の侵害行為を知ることができるのである。

(訳3)第9控訴裁は、「そのような知っていることが得られた時が重要である。寄与著作権侵害には知っていること及び重要な寄与が要求されるから、本件著作権者らは本件ソフト配布者らが「侵害に寄与した時に特定の侵害を知っており、その情報に基づいて行動していない」ことを証明することが要求される。」と述べている。確かに、被告らを勝たせるためには、「知っていることが得られた時が重要である」。なぜなら、(訳2)で述べたように、このようなソフトを使用すれば、誰でも、直接著作権侵害の具体的事例をいくらでも見つけることができるのであるから、当然、被告らも多数の直接著作権侵害の具体的事例を知っているはずだからである。

 被告らは、例えばバージョンアップの際に、従来のバージョンによるネットワークと互換性があるかどうかをテストしなければならず、少なくともその時に、従来のバージョンのユーザが行っている多数の直接侵害の具体的事例を知るはずである。したがって、地裁でソフト開発者らの証人尋問が行われれば、自分たちが既に配布したソフトのユーザが直接著作権侵害をしている具体的事例を多数知っていると証言せざるを得ない。
しかし、被告らのサイトからユーザがソフトウェアをダウンロードした時点、すなわち被告らがそのユーザにソフトを配布した時点では、そのユーザはまだそのソフトウェアを使用しておらず、直接著作権侵害を行っていないから、その時点では被告らはそのソフトウェアによるそのユーザの直接著作権侵害の具体的事例を知り得ないことは明らかである。したがって、「侵害に寄与した時に特定の侵害を知っており、その情報に基づいて行動していない」という法律判断のもとでは、証人尋問を行わずに、被告らを勝ちとすることができるのである。

(訳4)第9控訴裁は、「どちらの被告も・・・侵害を促進してはいない」と述べている。これは本件被告ら(本件ソフト配布者ら)が言葉で侵害を促進する必要がないからである。このようなソフトのユーザであれば、ソフトの機能を知っただけで著作権侵害に最適なものであることが明確にわかるから、本件被告らはわざわざ言葉で述べる必要がないのである。

(訳5)第9控訴裁は、「この技術は、多数の他の使用がなされており、パブリックドメイン及び黙認されてシェアされている芸術及び言論の配布コストを著しく低下させ、その配布の中央化された管理を減少させている。」と述べている。それはそのとおりかもしれないが、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークは、音楽、映画等の著作権侵害に最も適し、その他の用途にはそれほど適しているとはいえないのである。

 それはこのようなネットワークは一種のフリーワード検索システムであるからである。音楽CDから音楽をリッピングしてファイル名を付けネットワークに流す者がフリーワード付与者であり、それをダウンロードするユーザが検索者である。フリーワード検索システムが良好に機能するためには、フリーワード付与者と検索者が共通のフリーワードを認識していなければならないが、これが違法コピーの場合は著作権者側の努力により成し遂げられるのである。例えば、レコード会社が新しい音楽CDを発売する場合は、発売日に向けて、アーティストをテレビ、ラジオに出演させ、プロモーション活動を行う。これにより、フリーワード付与者と検索者が同一のフリーワード(アーティスト名、曲名)を認識するので、フリーワード検索システムがきわめて良好に機能するのである。

 また、多くの音楽CDの場合、発売直後の売り上げ枚数が最大であり、その後、売り上げ枚数が減少する。違法コピーを行うも者も発売直後に入手したいから、一時期にアクセスが集中することになり、従来型の小規模のサイトからのダウンロードでは、ダウンロードに時間がかかり過ぎ、うまくいかないのである。その点、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークでは、一つのサイトに集中しないから、発売された直後に多数のユーザがダウンロードできるので、この点からも、音楽、映画等の違法コピーに最適なのである。

 一方、無名のアーティストが自分の音楽ファイルをピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークに流したとしても、そのアーティスト名や曲名が知られていないから、それほどダウンロードされることはないはずである。
また、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークは、匿名性があるから、違法なわいせつ映像等の頒布にも適していると一応はいえるが、テレビやラジオでプロモーションが行われることはなく、せいぜい、匿名電子掲示板でファイル名を知らせる程度であるから、フリーワード検索システムとしての効率は悪いと考えられる。また、パブリックドメインの古典芸術のようなものの場合は、フリーワード付与者と検索者が同じ作者名、作品名を認識していると考えられるが、一時期にアクセスが集中することはないから、それほどピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークを利用する必要性は高くはないと考えられる。

 
そして、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークの場合は、誰がファイルを作成しネットワークに流したのかが不明であり、つまり出所が不明であるから、そのファイルの品質に対する信頼もない。したがって、このようなネットワークを使って作者名、作品名で検索してパブリックドメインの古典芸術をダウンロードしたとしても、それが本物かどうか確信が得られないことになる。日本の著作権法の用語を使えば、そのファイルが作者の同一性保持権を尊重して作成されたと確信することができないのである。このようなことから、パブリックドメインの古典芸術をダウンロードする人の多くは、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークを選択せずに、信頼できるサイトにアクセスして解説等も見てダウンロードすることを選択するのではないだろうか。これに対して、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークに品質保証機能がないことは、音楽や映画の違法コピーには特に問題とはならないのである。なぜなら、ユーザはアーティストの歌声や俳優の顔つきを十分知っているから、ダウンロードしたファイルを再生してみれば、ユーザ自身で本物かどうかを確認できるからである。

(訳6)本件のようなソフトの配布が違法が適法かの最終決定は最高裁で行われると考えられるが、私としては、このようなソフトが存在しない方が、インターネットを利用した適法な著作物の流通が促進され、著作権者ばかりでなく著作物のユーザにとっても望ましい状況が実現するのではないかと考えている。もちろん、従来型のサイトからのダウンロードでも著作権侵害を行うことはできる。しかし、従来型のサイトからのダウンロードの場合は、いくらか<some>のサイトが違法であり、それ以外すなわち大多数<the vast majority>のサイトは適法である。

 従来型のサイトの場合は、著作権者が違法サイトを発見し、警告、訴訟等を行うのは容易である。そして、例えば、音楽の場合は、違法サイトは実はアーティストのファンサイトでもあることが少なくないのである。ファンサイトの運営者は自発的にアーティストの宣伝を行っているのであるから、著作権者としても、ある程度の著作権侵害を黙認しておいた方が、著作権者の利益が増大することもあるのである。また、このようなサイトは小規模であるから、サイトの規模に制限されそれほど大量の違法コピーが行われるわけではない。このようなことから、極めて厳しく著作権を主張する著作権者ばかりでなく、ある程度の著作権侵害は黙認する著作権者もいるのである。一方、ファンサイトの運営者としても、著作権者側がどのようなものであれば黙認するかどうかを判断してサイトを運営することになり、自制が働くことになる。その結果、著作権者にとっても、ファンサイトにとっても、ファンにとっても望ましい状況が生じる場合があるのである。

 これに対して、本件のようなソフトを使ったネットワークの場合は、実際に直接著作権侵害を行っているユーザを発見し、警告、訴訟等を行うのは、技術的、法律的に可能ではあるとしても、容易とはいえない。また、実際にそのようなユーザに対して訴訟を起こして損害賠償を得たとしても、その金額は調査費用、訴訟費用等より低額であろうから、一部のユーザを見せしめ的に訴えることはあるとしても、全てのユーザを訴えることはあり得ない。したがって、このようなソフトのユーザは高い匿名性で保護されていると感じるから、自制が働く余地は少ないのである。そして、このようなソフトによるネットワークの場合は、短時間に多くのコピーをなすことができ、また、一度流されてしまったファイルの流通を著作権者側が妨げる方法は実質的に全くなく、著作権者の複製権は完全に剥奪されているに等しいのである。

 したがって、このようなソフトによるネットワークにおいては、必然的に、いくらか<some>のコピーは適法であるが、それ以外すなわち大多数<the vast majority>のコピーは違法となるのである。ただし、以上の説明からも明らかなように、当然のことながら、
ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング技術そのものが違法コピーを誘発しているわけではない。本件のようなソフトが問題となるのは、ユーザを匿名性で保護しているからである。したがって、ピア・ツー・ピア・ファイルシェアリング・コンピュータ・ネットワークから匿名性を排除すれば、違法コピーやその他の違法行為を誘発することはなくなるのである。このことは、IT medhiaニュース2004/07/05に明快に記載されている。本件のようなソフトが問題となるのは、本件のようなソフトが、不特定多数の匿名のユーザが保有するファイルを様々な場所にいる不特定多数の他の匿名のユーザがコピーできるようにする機能を有するように設計されているからである。したがって、仮に、本件のようなソフトの配布が違法であるとされたとしても、そのような機能を有さない普通のコピー機やVTR等の販売が違法であるとされることはあり得ないのである。

   

トップページhttp://www.venus.dti.ne.jp/~inoue-m/ 独禁法 プログラム関連著作権 特許権 利用条件 参考文献    

since 2004.08.30