翻訳 井上雅夫 2000.02.20; 3.19   ↑UP  

SONY v. CONNECTIX プレステ・エミュレータ事件控訴審判決
2000年2月10日

 目  次
当事者
意見
I.バックグラウンド
 A.製品
 B.リバースエンジニアリング
 C.ConnectixによるSony BIOSのリバースエンジニアリング
 D.訴訟の経過
II.検討
 A.フェアユース
  1.著作物の性質
  2.使用された部分の量及び実質性
  3.使用の目的及び性質
  4.潜在的マーケット対する使用の影響
 B.商標の汚し
結論
脚注
訳注
  

第9巡回区合衆国控訴裁判所

原告−被控訴人
SONY COMPUTER ENTERTAINMENT,INC.、日本国法人;
SONY COMPUTER ENTERTAINMENT AMERICA, INC.、デラウェア州法人

被告−控訴人
CONNECTIX CORPORATION、カリフォルニア州法人

No. 99-15852
判決登録 2000年2月10日
Herbert Y. C. Choy、William C. Canby、Barry G. Silverman巡回裁判官
意見執筆 Canby裁判官

被告−控訴人代理人
William S. Coats, III, Howrey & Simon, Menlo Park, California
原告−被控訴人代理人
Ezra Hendon, Crosby, Heafey, Roach & May, Oakland, California; James G. Gilliland, Jr., Townsend and Townsend and Crew, San Francisco, California
法廷助言者Institute for Electrical and Electronics Engineers - USAのための代理人 Annette L. Hurst, Howard, Rice, Nemerovski, Canady, Falk & Rabkin, San Francisco, California
法廷助言者American Committee、Interoperable Systems and Computer & Communications Industry Associationのための代理人 Peter M. C. Choy, American Committee for Interoperable Systems, Palo Alto, California
法廷助言者Law Professorsのための代理人Mark Lemley, University of Texas at Austin, Austin, Texas
法廷助言者Nintendo of America, Inc.、Sega of America, Inc.、及び 3dfx Interactiveのための代理人 Steven J. Metalitz, Smith & Metalitz, Washington, D.C.

原審
地裁事件番号 No. CV-99-00390-CAL
カリフォルニア北部合衆国地方裁判所
Charles A. Legge地裁裁判官
口頭弁論及び証拠提出 1999.9.14--San Francisco, California
  

意     見

CANBY巡回判事:

 本件において、我々は再び、著作権法の原理をコンピュータ及びそのソフトウエアに適用し、何が表現として保護されなければならないのか、何が機能として公衆がアクセスできなければならないのか、を決定することを求められた。本件著作権侵害事件を提訴したSony Computer Entertainment, Inc.はテレビに接続され挿入されたCD上のゲームをプレイするコントローラ付の小さなコンピュータ、Sony PlayStation本体を製造販売している。SonyはPlayStationを作動させるソフトウエア・プログラムであるベーシック・インプット・アウトプット・システム又はBIOSの著作権を保有している。Sonyは本件訴訟において特許権を主張していない。

 被告はConnectix Corporationであり、「Virtual Game Station」と呼ばれるソフトウエア・プログラムを製作販売している。Virtual Game Stationの目的はSony PlayStationの機能を普通のコンピュータ上でエミュレートすることであり、その結果、Virtual Game Stationを購入したコンピュータ所有者は彼らのコンピュータ上でSony PlayStationゲームをプレイすることができる。Virtual Game StationはSonyの著作物を全く含んでいない。しかし、Virtual Game Stationを作成するプロセスで、Connectixは、Sony PlayStationがどのように動作するのかを見つけるために行った「リバース・エンジニアリング」の過程で、Sonyが著作権を有するBIOSを繰り返しコピーした。Sonyは侵害を主張し、仮差止を請求した。地裁は、Connectixの「中間コピー<intermediate copying>」は著作権法107条に基づく「フェアユース」で保護されないから、Sonyは侵害事件に勝訴する可能性が高いと結論した。地裁はConnectixに対してVirtual Game Stationを販売すること又は他のVirtual Game Station製品の開発にSony BIOSをコピー若しくは使用することを禁じた。

 Connectixは控訴した。我々は取消し、差戻し、仮差止の解除を命令する。Sony BIOSのリバースエンジニアリングの過程でConnectixによってなされ使用された中間コピーは保護されたフェアユースであり、Connectixが 非侵害のVirtual Game StationをPlayStationゲームが作動するようにするために必要なものである。Connectixによるその他のあらゆる中間コピーは、仮にこれらのコピーが侵害であるとしても、差止救済を支持しない。また、地裁は、ConnectixによるVirtual Game Stationプログラムの販売は通商法(商標法)1125条に基づくSony PlayStation商標を汚している<tarnish>というSonyの主張が勝訴の可能性が高いと認定した。我々はこの認定も取消す。
  

I.バックグラウンド
   
A.製品
 SonyはSony PlayStation及びSony PlayStationゲームの両方の開発者であり、製造業者であり、販売業者である。また、Sonyは他の企業にPlayStationでプレイできるゲームの作成をライセンスしている。PlayStationシステムは本体(本質的に小さなコンピュータ)、コントローラ、及びテレビ上に三次元ゲームのプレイを生み出すソフトウエアからなる。PlayStationゲームは本体の上部に入れるCDである。PlayStation本体は(1)ハードウエア部分及び(2)リードオンリーメモリ(ROM)チップに書かれたファームウエアとして知られるソフトウエアの両方からなる。そのファームウエアがSony BIOSである。SonyはそのBIOSに著作権を有している。SonyはPlayStationのどの部分についても本件訴訟に関して特許権を主張していない。PlayStationはSonyの登録商標である。

 ConnectixのVirtual Game StationはPlayStation本体の機能を「エミュレート」するソフトウエアである。すなわち、消費者はコンピュータにVirtual Game Stationをロードし、そのコンピュータのCD−ROMドライブにPlayStationゲームを入れ、PlayStationゲームをプレイすることができる。それゆえ、Virtual Game StationソフトウエアはSony本体のハードウエア及びファームウエア部分の両方をエミュレートする。Virtual Game StationはSonyのPlayStationと同じ程度にはPlayStationゲームをプレイできない。差止時に、ConnectixはMacintoshコンピュータ用のVirtual Game Stationを販売していたが、まだWindows用のVirtual Game Stationソフトウエアは完成していなかった。

B.リバースエンジニアリング
 著作権で保護されたソフトウエアは通常、著作権で保護された要素と、保護されない又は機能的な要素の両方を含んでいる。Sega Enters. Ltd. v. Accolade, Inc., 977 F.2d 1510, 1520 (9th Cir. 1993)(修正された意見);著作権法102(b)条(著作権保護は著作物に表現された「アイディア、手順、プロセス、システム、操作方法、概念、原理、発見」には及ばない)参照。著作権で保護された製品と互換性を有しなければならない製品を設計するソフトウエア技術者はしばしば、その著作権で保護された製品の機能的な要素にアクセスするために、その著作権で保護された製品を「リバースエンジニアリング」しなければならない。Andrew Johnson-Laird, Software Reverse Engineering in the Real World, 19 U. Dayton L. Rev. 843, 845-46 (1994)参照。

 リバースエンジニアリングはソフトウエア・プログラムの機能的な要素にアクセスするいくつかの方法を含んでいる。それらは:(1)プログラムについて読んで知ること;(2)「コンピュータ上でプログラムを使用することによって動作状態のプログラム」を観察すること;(3)「プログラム内に含まれる個々のコンピュータ指令の静的な調査」を行うこと;及び(4)「コンピュータ上でプログラムが走っているときの個々のコンピュータ指令の動的な調査」を行うこと、である。同846頁。方法(1)は最も効果的ではない、なぜなら、個々のソフトウエア・マニュアルはしばしば実際の製品を誤って記述しているからである。同参照。本件においては、SonyがPlayStationについての情報を利用できるようにしていないから、特に効果的でないであろう。方法(2)、(3)、及び(4)は、アクセスしたい者はコンピュータ上にターゲット・プログラムをロードする必要であり、それは必然的に著作権で保護されたプログラムをコンピュータのランダムアクセスメモリ又はRAMにコピーすることを含む作業である。[1]

 方法(2)のプログラムの観察はいくつかの形を取ることができる。例えば、ワープロ・プログラム、スプレッドシート、及びビデオゲームの表示のようなソフトウエア・プログラムの機能的要素はコンピュータ画面の観察で認識できる。Sega, 977 F.2d at 1520参照。もちろん、そのような状況のリバースエンジニアリングはオブジェクトコード自体を観察するものではなく[2]、観察できるのはコンピュータ上でそのコードの動作の外部的視覚表現だけである。ここでは、技術者がコンピュータを立ち上げる毎に、ソフトウエア・プログラムはコピーされ、コンピュータはプログラムをRAMにコピーする。

 観察の他の形はより侵入的<intrusive>である。オペレーション・システム、システム・インターフェース・プロシージャ、及びSony BIOSのようなプログラムは、それが作動しているのを、ユーザーが見ることはできない。同参照。これらのプログラムの作動を「観察」する方法の一つは、エミュレーション環境でそのプログラムを走らせることである。Sony BIOSの場合、これはPlayStationのハードウエアの作動をシミュレートするソフトウエアを有するコンピュータ上で、そのBIOSを作動させることを意味する;「デバッガ」として知られるもう一つのプログラムと接続して、そのBIOSを作動させると、技術者がそのコンピュータ上でそのBIOSと他のプログラム間の信号を観察することができるようになる。この後者の方法は、PlayStation内のチップからそのコンピュータへSony BIOSをコピーすることを必要とする。ここでも技術者がコンピュータを立ち上げる毎に、Sony BIOSはコピーされ、コンピュータはそのプログラムをRAMにコピーする。このコピーの全ては中間的なものである;すなわち、いかなるSonyの著作物もConnectixの最終製品、Virtual Game Stationにコピーされず、姿を見せない。
 
 方法(3)及び(4)はオブジェクトコードのソースコードへの「逆アセンブル」からなる[3]。それぞれの場合、技術者は「逆アセンブラ」として知られるプログラムを使用し、バイナリのマシンが読めるオブジェクトコードの0と1をソースコードの文字及び数字へ翻訳する。この翻訳されたソースコードはオブジェクトコード[4]を作成するために最初に使用されたソースコードと類似しているが、プログラムの作者によって作成されソースコードの機能を説明する注釈が欠けている。方法(3)のコンピュータ指令の静的な調査においては、技術者はプログラムのオブジェクトコードの全て又は一部を逆アセンブルする。一般的に、そのプログラムは逆アセンブルを実行するために一回又はより多くコピーされる。方法(4)のコンピュータ指令の動的な調査においては、技術者は逆アセンブラ・プログラムを使って、一度に一指令づつ、プログラムを走らせて、プログラムの一部を逆アセンブルする。この方法も、コンピュータを立ち上げる毎に、プログラムのコピーが必要であり、作業が行われる回数に応じて、RAMに追加的なプログラムのコピーが必要となるかもしれない。

C.ConnectixによるSony BIOSのリバースエンジニアリング
 ConnectixはMacintosh用Virtual Game Stationの開発を1998年7月1日頃に始めたPlayStationエミュレータを開発するために、ConnectixはPlayStationのハードウエア及びファームウエア(Sony BIOS)の両方をエミュレートする必要があった。
  
 Connectixは最初にPlayStationのハードウエアをエミュレートすることを決定した。そうするために、Connectixの技術者は一台のPlayStation本体を購入し、Sony BIOSを本体内のチップから引き出した。それから、Connectixの技術者はSony BIOSを彼らのコンピュータのRAMにコピーし、ConnectixはVirtual Game Stationハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを開発しているところであったので、そのハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを接続してSony BIOSの機能を観察した<Connectix engineers then copied the Sony BIOS into the RAM of their computers and observed the functioning of the Sony BIOS in conjunction with the Virtual Game Station hardware emulation software as that hardware emulation software was being developed by Connectix.>。技術者は、BIOSとハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアの間の信号を観察できるデバッガ・プログラムを使用して、Sony BIOSの作動を観察した。この過程で、Connectixの技術者は、彼らのコンピュータを立ち上げる毎に、Sony BIOSの追加的なコピーを行い、Sony BIOSはRAMにロードされた。[訳1]

 一度、ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアの開発ができると、Connectixの技術者はもう一度Sony BIOSを使用して、エミュレーション・ソフトウエアを「デバッグ」した[訳2]<Once they had developed the hardware emulation software, Connectix engineers also used the Sony BIOS to "debug" the emulation software.>。そうすることによって、彼らはSony BIOSの個別的な部分を繰り返しコピーし、逆アセンブルした。

 また、ConnectixはSony BIOSを使用して、Windows用のVirtual Game Stationの開発も始めた。特に、彼らは毎日Sony BIOSをRAMにコピーし、Windows用Virtual Game StationのためのWindowsに特有なシステムを開発するためにSony BIOSを使用した。そのときConnectixは自社のBIOSを有していたが、Sony BIOSがConnectix BIOSには含まれていないCD−ROMコードを含んでいたから、Connectixの技術者はSony BIOSを使用した。

 開発の初期に、Connectixの技術者Aaron Gilesはインターネットからダウンロードした完全なSony BIOSのコピーを逆アセンブルした。彼が作成した「逆アセンブラ」プログラムのテストの目的で、そうしたのである。そのソースコードのプリントアウトはVirtual Game Stationエミュレータの開発には使用しなかった。最初、Connectixの技術者はこのSony BIOSのコピーをリバースエンジニアリングのプロセスを開始するために使用したが、それが日本語バージョンであることを知った後には、それを止めた。

 Virtual Game Stationの開発中、ConnectixはSonyにコンタクトをとり、SonyにVirtual Game Stationの開発を完成するための「技術的な援助」を求めた。ConnectixとSonyの代表者は1998年9月に会った。SonyはConnectixの援助の要請を拒否した。

 Connectixは1998年12月下旬にMacintoshコンピュータ用Virtual Game Stationを完成した。Connectixは1999年1月5日のMacWorld Expoで新製品を発表した。MacWorldで、ConnectixはVirtual Game Stationを「PlayStationエミュレータ」としてマーケットに出した。その資料には、Virtual Game Stationがあればユーザーが「SonyのPlayStation本体を持っていなくても」コンピュータ上で「好みのPlayStationゲーム」をプレイすることができると記載されていた。

D.訴訟の経過
 1999年1月27日、SonyはConnectixに対する著作権侵害及びその他の訴因を主張した訴状を提出した。その後、Sonyは著作権及び商標権侵害に基づく仮差止申請を行った。地裁はその申請を認容し、Connectixに以下のことを禁じた:

(1)Windows用Virtual Game Stationの開発のためにSony BIOSをコピー又は使用すること;及び
(2)Macintosh用Virtual Game Station又はWindows用Virtual Game Stationを販売すること。
Order on Mot. for Prelim. Inj. at 27。また、地裁はConnectixによるSony BIOSの全てのコピー及びSony BIOSを基礎とする又は組み入れた全ての著作物を押収した。同at 27-28。Connectixはこの命令に対して控訴した。 
 
II.検討
  
〔1〕差止請求の申請に勝つためには、Sonyは「本案訴訟において勝訴する可能性及び回復不能な損害の可能性、又は、本案訴訟に進むことに重大な問題が生じかつ困難性の天秤がはっきりと有利に傾くことのどちらか」を立証することが必要である<To prevail on its motion for injunctive relief, Sony was required to demonstrate "either a likelihood of success on the merits and the possibility of irreparable injury or that serious questions going to the merits were raised and the balance of the hardships tip sharply in its favor.">。Cadence Design Sys., Inc. v. Avant! Corp., 125 F.3d 824, 826 (9th Cir. 1997)(内部の引用記号及びかっこを削除)、上告不受理、523 U.S. 1118 (1998)。「地裁が自由裁量を乱用したとき、又は誤った法的基準による判断若しくは明らかに誤った事実認定による判断に基づいたとき」、我々は仮差止の認容を取消すRoe v. Anderson, 134 F.3d 1400, 1402 n.1 (9th Cir. 1998)(内部の引用記号を削除)、他の理由で維持、Saenz v. Roe, 526 U.S. 489 (1999)。我々は自由裁量の乱用に関して差止救済の範囲を再審理する。SEC v. Interlink Data Network of L.A., Inc., 77 F.3d 1201, 1204 (9th Cir. 1996)。

 Connectixは、Sonyが著作権を有するBIOSソフトウエアをVirtual Game Stationの開発でコピーしたことを認めたが、そうすることは著作権法107条に基づくフェアユースとして保護されていると主張する。また、ConnectixはVirtual Game StationがPlayStation商標を汚していることの可能性をSonyが立証したという地裁の結論を争う。我々はこれらの主張それぞれについて以下で検討する。
  
A.フェアユース
 フェアユース問題は現在の状況の中で、コンピュータ・ソフトウエアのある特性のために、生じたものである。プログラムのオブジェクトコードは表現として著作権を保護し得るが、著作権法102(a)条、プログラムはアイディアも含み、著作権保護適格のない機能を実行する。著作権法102(b)条参照。しかし、オブジェクトコードは人間には読むことができない。それゆえ、コードの保護されないアイディア及び機能は通常は著作物のコピーを必要とする調査や翻訳なしには発見できない。本件の事実及び我々の巡回区の先例に基づき、我々はSonyが著作権を有するBIOSのConnectixによる中間コピー及び使用はSonyのソフトウエアの保護されない要素にアクセスするためのフェアユースであると結論する。
 
〔2〕フェアユースの分析の一般的な枠組みは著作権法107条[5]で確立している。我々はこの制定法及びSega Enterprises Ltd. v. Accolade, Inc., 977 F.2d 1510 (9th Cir. 1993)(修正された意見)事件[訳5]におけるコンピュータ・ソフトウエアの逆アセンブルについてのフェアユース論を適用する。現在の我々の決定の中心となる原理はSega事件において明らかにされている:

逆アセンブルは著作権で保護されたコンピュータ・プログラムに表現されたアイディア及び機能的要素にアクセスする唯一の方法であり、そのようなアクセスを求める正当な理由がある場合、法律問題として、逆アセンブルは著作物のフェアユースである。
同at 1527-28。Sega事件において、我々は中間コピーは、最終製品自体が著作物を含まないとしても、著作権侵害を構成し得ると認識した。同at 1518-19。しかし、それにもかかわらず、そのコピーが、ソフトウエア自体の機能的要素へのアクセスを得るために「必要<necessary>」であるとすれば、フェアユースとして保護し得るだろう。同at 1524-26。著作権法は、ソフトウエア・プログラムの表現だけを保護し、アイディア又は機能面は保護しないことから、我々はこの区別を引き出した。同at 1524(著作権法102(b)条を引用している)参照。また、我々は、コンピュータ・プログラムの事件において、アイディア/表現の区別は「特有な問題」を持ち出すと認識した、なぜならば、コンピュータ・プログラムは「本質的に、実用品 −− 仕事を成し遂げるものである。そういうものとして、プログラムは、実行されるべき機能、考慮されるべき効率、又は互換性要件及び産業的需要のような外部要因が要求する多くの論理的、構造的、及び視覚的表示の要素を含んでいる」からである。同。したがって、フェアユース論は著作権で保護されたコンピュータ・ソフトウエア・プログラムに表現されたアイディア及び機能的要素に公衆がアクセスすることを保護する。このアプローチは「『[著作権法の]究極の目的、一般社会の利益のためのアーティスティックな創作性の奨励』」Sony Corp. of Am. v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417, 432 (1984)(Twentieth Century Music Corp. v. Aiken, 422 U.S. 151, 156 (1975)を引用している)と矛盾しない。それでは、我々がSega事件の先例で知ったように、我々は制定法のフェアユースの要素に向かおう。
  
1.著作物の性質
〔3〕第二の制定法の要素である著作物の性質についての我々の分析に基づき、我々は、「著作物のなかで、あるものは、他のものよりも、予定された著作権保護の中心に近いところにある」ことを認識している。Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc. , 510 U.S. 569, 586 (1994)。SonyのBIOSは、コピーしなければ調べることができない保護されない面を含んでいるから、中心からある距離に位置する。Sega, 977 F.2d at 1526参照。その結果、我々はプログラムに「伝統的な文字の著作物よりも低いレベルの保護<lower degree of protection than more traditional literary works.>」を与える[訳3]。同。我々はこの基準を適用したので、ConnectixによるSony BIOSのコピーがフェアユースであるためには「必要」だったのでなければならない<As we have applied this standard, Connectix's copying of the Sony BIOS must have been "necessary" to have been fair use>。同at 1524-26参照。我々は、そうであったと結論する。
 
〔4〕Sony BIOSが保護されない機能的要素を含んでいることは疑いない。Connectixがこれらの保護されない機能的要素をSony BIOSをコピーせずにアクセスできないことも争いがない。Sony BIOSの機能に関する技術情報が公衆にほとんど利用できないことをSonyは認めている。Sony BIOSはその機能を反映する画面表示をしない内部的なオペレーティングシステムである。その結果、ConnectixがSony BIOSの機能的要素にアクセスしなければならないときには、コンピュータにSony BIOSをコピーする必要があるリバースエンジニアリングの形でなければならない[6]。Sonyはこのことを争っていない。

〔5〕そうすると、問題は、ConnectixがSony BIOSをリバースエンジニアリングした方法が、プログラム中の保護されない機能的要素をアクセスするのに必要であったかどうか、になる。我々はそうであったと結論する。Connectixはリバースエンジニアリングのいくつかの方法(観察及び部分逆アセンブルを伴った観察)を行ったが、それぞれにおいてConnectixは著作物の中間コピーを必要とした。これらの方法のどれもフェアユースを適用できないものはない。Sega事件では明確に逆アセンブルを是認した。同at 1527-28参照。我々は、エミュレートされたコンピュータ環境における著作権で保護されたソフトウエアの観察を区別する理由を持たない。どちらの方法もリバースエンジニアはコンピュータ・プログラムの保護されない要素ばかりでなく保護される要素もコピーする必要がある。この中間コピーは中間侵害<intermediate infringement>の主張の要点であり、著作権法106(1)条;Sega, 977 F.2d at 1518-19、両方のリバースエンジニアリングの方法が中間コピーを必要とするから、著作権法の問題として、これらの方法に固有な一方を選ぶ理由はないと認定する。Connectixは、Sony BIOSの機能的な面を観察するためにエミュレータ環境でSony BIOSを観察した証拠を提出した。このリバースエンジニアリングの方法が成功しなかったとき、Connectixの技術者はSony BIOSの中に含まれているアイディアを直接的に見るために個別的な部分を逆アセンブルした。我々は、このような中間コピーはSega事件の意味の範囲内の「必要」であると結論する。

〔6〕我々は地裁がとったアプローチに従うことは断る。地裁は、ConnectixによるSony BIOSのコピーが機能的要素のアクセスに必要かどうかに、焦点を当てなかった。その代わりに、地裁はConnectixが自社のソフトウエアを開発するために行ったSony BIOSのコピー及び使用はSega事件の範囲を超えていると認定した。Order at 17(「彼らがSonyのコードを逆アセンブルしたのは、概念を研究するためだけではなかった。彼らは実際に[彼らの]製品の開発にそのコードを使用した」)参照。この論理は説得力がない。Sega事件において「著作権で保護されたコンピュータ・プログラムの保護されない面を研究し調査する」ことについて言及したことは事実である。977 F.2d at 1520。しかし、Sega事件において、Accoladeは「逆アセンブルしたコードをコンピュータにロードし、プログラムを修正し結果を研究することによって、Genesis本体のためのインターフェース・スペシフィケーションを発見するための実験」同at 1515さえしたけれども、AccoladeによるSegaのゲームカートリッジのコピー、観察及び逆アセンブルは、フェアユースであると判示された。したがって、「研究<studying>」及び「使用<use>」の区別はSega事件によって支持されていない。さらに、リバースエンジニアリングは技術的に複雑で、しばしば反復するプロセスである。Johnson-Laird, 19 U. Dayton L. Rev. at 843-44。中間侵害の請求という限定的な状況において、我々は「研究」と「使用」の間の意味の区別は不自然であると認定し、フェアユースを決定する目的でそれを採用するのは断る。[7]
  
〔7〕我々は、エミュレータ環境でSony BIOSを繰り返し観察しそれによりSony BIOSを繰り返しコピーしたことによってConnectixがSonyの著作権を侵害したという、Sonyが主張する議論も拒絶する。Connectixの技術者はSony BIOS全体を最初に逆アセンブルし、その後、彼ら自身のConnectix BIOSを書き、そのConnectix BIOSをVirtual Game Stationハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを開発するために使用し得たから、これらの中間コピーはSega事件に基づく「必要」ではあり得ない、とSonyは主張する。我々は、Sonyの事実の主張を本件控訴に限定された目的で受け入れる[8]。しかし、我々がそうしても、Sonyの助けにはならない。

〔8〕Sonyは、エミュレータ環境でSony BIOSを観察するというConnectixの判断によって、そのプログラムを完全に逆アセンブルするよりも、より多くのSony BIOSの中間コピーが必要となったという理論的根拠に基づいて、ConnectixによるSony BIOSのリバースエンジニアリングは不必要であると考えられるべきであると主張する[訳4]。この理論によれば、中間コピーの少なくともいくつかはSega事件の意味で必要ではない。この解釈はSega事件をあまりに拡張しすぎている。我々がSega事件で述べた「必要」は方法すなわち、逆アセンブルの必要性であり、方法が適用される回数の必要性ではない。977 F.2d at 1524-26参照。とにかく、Sonyが進める解釈はフェアユースの貧弱な基準である。Sony BIOSの中間コピーのほとんどは、Connectixの技術者がコンピュータを立ち上げ、Sony BIOSがRAMにコピーされた時に行われた。しかし、もし、Connectixの技術者がエミュレータ環境でSony BIOSを観察している間をとおしてコンピュータの電源をONにしたままにしていたとしたら、Sony BIOSの中間コピーは遙かに少なくなされたであろう(たぶん、コンピュータ一台につき一回)。我々は違うが、仮に、我々が極めて細かくソフトウエア企業のエンジニアリング・ソリューションを監督する気になったとしてさえ、我々の著作権法の適用はそのような区別にはよらないであろう[9]<Even if we were inclined to supervise the engineering solutions of software companies in minute detail, and we are not, our application of the copyright law would not turn on such a distinction>。そのような規則は簡単にごまかすことができるだろう<Such a rule could be easily manipulated.>。もっと重要なのは、Sonyが促す規則によれば、ソフトウエア技術者が、保護されたものと保護されないものの中間コピーが必要となる二つのエンジニアリング・ソリューションに直面したときに、しばしば最も効率の悪いソリューションに従うことになる。(最も少ない中間コピーを必要とするソリューションが最も効率的でもある場合は、たぶん、我々が促さなくても、技術者はそれを行うだろう。)これはまさに、「アイディア及び事実を著作権保護の範囲外とすることを・・・妨げようとする無益な努力」の一種である<This is precisely the kind of "wasted effort that the proscription against the copyright of ideas and facts . . . [is] designed to prevent.">。Feist Publications, Inc. v. Rural Tel. Serv. Co., 499 U.S. 340, 354 (1991)(内部の引用記号を削除)。そのようなアプローチは、著作権で保護されたプログラムに含まれるアイディアに公衆がアクセスする道に技巧的なハードルを立てるだろう。アイディア及び事実は議会によって著作権保護を明確に否定されている。Sega, 977 F.2d at 1526 (著作権法102条(b)を引用している)。我々は本件においてそのようなバリアを立てることを断る。もし、Sonyがソフトウエアの機能的な概念に法律的な独占を得たいならば、より厳重な特許法の基準を満足しなければならない。Bonito Boats, Inc. v. Thunder Craft Boats, Inc., 489 U.S. 141, 160-61(1989); Sega, 977 F.2d at 1526。これをSonyは行っていない。制定法の第二の要素は強くConnectixに有利である。

2.使用された部分の量及び実質性
〔9〕著作物全体に関して使用された部分の量及び実質性という制定法の第三の要素に関しては、ConnectixはSony BIOSの一部を逆アセンブルし、全体のSony BIOSを多数回コピーした。それゆえ、この要素はConnectixに不利である。しかし、我々はSega事件で、最終製品自体に侵害品を含まない中間侵害の場合は、この要素は「極めて僅かの重み」しかないと結論した。Sega, 977 F.2d at 1526-27;Sony Corp. of Am. v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417, 449-50 (1984)(全体の作品のコピーはフェアユースを排除しない)も参照。

3.使用の目的及び性質
〔10〕使用の目的及び性質という第一の要素に基づいて、我々はConnectixのVirtual Game Stationが、以下のものであるかどうかを調べる

オリジナルな創作の対象を単に取り替えるだけなのか、又は、それよりも、最初のものを新しい表現、意味、若しくはメッセージで変え、更なる目的若しくは異なった性質と共に、新しい何かを付け加えるものかどうか;他の言葉で言えば、新しい作品が「一変させるものである<transformative>」かどうか、及びそれがどの程度かを調べる。
Campbell v. Acuff-Rose Music, Inc., 510 U.S. 569, 579 (1994)(内部の引用記号及び引用を削除)。最初の問題として、我々は、地裁が誤った法的基準を適用したと結論する;Sony BIOSのコピーにおけるConnectixの商業的目的から「商業的使用の特質によって反駁され得るアンフェアの推定」が生じると判示した。Order at 14-15(Sega, 977 F.2d at 1522を引用している)。しかし、Sega事以来、最高裁はこの推定をフェアユースの分析の第一及び第四の要素に適用することを拒否してきた。Acuff-Rose, 510 U.S. at 584, 594(Sony, 464 U.S. at 451を明確化している)その代わり、ConnectixによるSony BIOSのコピーが商業的目的のためであるという事実は「フェアユースの認定に対して不利に働く別の要素<separate factor that tends to weigh against a finding of fair use>」であるに過ぎない。同at 585(内部の引用記号を削除)[10])。

〔11〕我々はConnectixのVirtual Game Stationは控えめに一変させるものである<modestly transformative>と認定する。その製品は新しいプラットフォーム、消費者がSony PlayStation用のゲームをプレイすることができるパソコンを作り出した。このイノベーションは新しい環境、特にSony PlayStation本体とテレビが利用できず、CD−ROM付きのコンピュータが利用できるところではどこでもゲームをプレイできる機会を提供している。もっと重要なことは、Sony PlayStationとVirtual Game Stationとが用途と機能で類似しているにもかからず、Virtual Game Station自体全体として新しい製品であることである。ソフトウエアの表現的な要素はコンピュータ画面上に表れるコードの視覚的表現のなかにあるのと同じくらいコンピュータの中で走るオブジェクトコードの構成と構造<organization and structure>のなかにある。著作権法102(a)条(著作権の保護を「直接的に、又は機械若しくは装置の助けにより、知覚され、複製され又は別の方法で伝達されることができる」オリジナルな著作物に拡大している)参照。SonyはVirtual Game Station自体がSonyの著作権を侵害するオブジェクトコードを含んでいるとは主張していない。それゆえ、我々は、機能及び画面出力の類似性にもかかわらず、どうしてConnectixのVGSプログラムのための完全に新しいオブジェクトコードの作成が一変させるものであるといえないのか理解できない<We are therefore at a loss to see how Connectix's drafting of entirely new object code for its VGS program could not be transformative, despite the similarities in function and screen output>。

〔12〕最後に、我々は、フェアユースに不利に作用する商業主義を含む他の要素の重要性に対して、ConnectixのVirtual Game Stationの変形<transformation>の程度を比較考量しなければならない。Acuff-Rose, 510 U.S. at 579参照。Connectixの著作物の商業的使用は中間的なもの<an intermediate one>であり、それゆえ、「間接的又は派生的<indirect or derivative>」であるに過ぎない。Sega, 977 F.2d at 1522参照。さらに、ConnectixがSony BIOSをリバースエンジニアリングをおこなったのは、Sony PlayStation用ゲームと互換性のある製品を製作するためである。我々は、この目的はフェアユースの第一の要素のもとで適法なものであると認識する。同参照。これらの要素を比較考量して、我々は第一の要素はConnectixに有利であると認定する。

 しかし、地裁は、コンピュータ画面及びテレビ画面は交換可能であり、それゆえConnectixの製品はSony PlayStation本体に取って代わっているに過ぎないという理論的解釈で、Virtual Game Stationは一変させるものであるとはいえないと判示した。Order at 15。地裁が誤ったのは明らかである。上述の理由により、Virtual Game Stationは一変させるものであり、単にSony PlayStation本体に取って代わっているのではない。この決定に達するなかで、地裁はVirtual Game Stationソフトウエア自体の表現的性質を考察するのに明らかに失敗した。SonyはInfinity Broadcast Corp. v. Kirkwood, 150 F.3d 104 (2d Cir. 1998)事件に頼ったが、同じ欠点がある。Infinity事件において、裁判所は、「フォーマットの変更は、役には立つが、技術的に一変させるものであるとはいえない」と論じた。同at 108 n.2。しかし、その事件において侵害している当事者は著作権で保護されたラジオの送信を受け、それを単に電話線に再送信したのである;新しい表現は存在しない。同at 108。Infinity事件が我々の結論を変えることはない;Connectixのコピーの目的及び性質がフェアユースであることを示している。

4.潜在的マーケット対する使用の影響
〔13〕また、我々は潜在的マーケット対する使用の影響という第四の要素もConnectixに有利であると認定する。この要素に基づき、我々は

申し立てられた侵害者の特定の行為によってもたらされたマーケットの被害の程度だけでなく、「被告によって為された種類の無制限の広く行き渡った行為が」オリジナルの製品の「潜在的なマーケットに実質的に不利なインパクトをもたらしたであろうかどうか」も考慮する。
Acuff-Rose, 510 U.S. at 590(3 M. Nimmer & D. Nimmer, Nimmer on Copyright, S 13.05[A][4], at 13-102.61 (1993)を引用している)。他のものに単に取り代わる又は取って代わるだけの作品はオリジナルの作品の潜在的なマーケットに対する実質的に不利なインパクトの原因となりやすいが、一変させる作品はそうなりにくい。同at 591; Harper & Row, Publishers, Inc. v. Nation Enters, Inc., 471 U.S. 539, 567-69 (1985)。

〔14〕地裁は、「[ConnectixのVirtual Game StationがSony PlayStationの]代用品<a substitution>になっている範囲で、Sonyは本体の販売と利益を失うだろう」と認定した。Order at 19。我々はそうかもしれないと認識する。しかし、Virtual Game Stationは一変させるものであり、PlayStation本体を単に取って代わる<supplant>ものではないから、Virtual Game StationはSonyのゲーム及びSonyがライセンスしたゲームをプレイできるプラットフォームのマーケットにおける適法な競争品である。Sega, 977 F.2d at 1522-23参照。この理由により、この競争の結果、Sonyが被るいくらかの経済的損失によって、フェアユースが成立しないとの認定が強いられることはない。SonyはSonyが作成又はライセンスしたゲームをプレイする装置のマーケットに対する管理を求めていると理解できる。しかし、著作権法はそのような独占を与えることはない。同at 1523-24(「他者が競争できなくすることによってマーケットを独占する試みは、創作的表現を奨励する著作権法の目的に反し、フェアユース論に抵抗できる衡平法上の強い根拠となり得ない。」)参照。この要素はConnectixに有利である。

〔15〕著作権法の四つのフェアユースの要素は「著作権法の目的に照らして、一緒に比較考量」されなければならない。Acuff-Rose, 510 U.S. at 578。ここで、三つの要素はConnectixに有利であり;一つはSonyに有利で、僅かな重みである。もちろん、制定法の要素は他を排除するわけではないが、Harper & Row, 471 U.S. at 560、我々の分析に影響を与える既に検討しなかった他の要素は知らない。したがって、我々は、法律問題として、リバースエンジニアリングの過程でのConnectixによるSony BIOSの中間コピーは著作権法107条に基づくフェアユースであると結論する。著作権侵害の請求に関して、Sonyは本案訴訟において勝訴する可能性又は困難性の天秤が有利に傾くことのどちらも立証できなかった。Cadence Design Sys., Inc. v. Avant! Corp., 125 F.3d 824, 826 (9th Cir. 1997)、上告不受理、523 U.S. 1118 (1998)参照。したがって、我々はConnectixによって主張された著作権法117(a)(1)条に基づく抗弁及び著作権ミスユースの抗弁に言及する必要がない。我々は、著作権侵害に基づく地裁の仮差止の認容を取消す[11]

B.商標の汚し
〔16〕地裁は、通商法(商標法)1125(c)(1)条に基づいて、ConnectixのVirtual Game Stationの販売はSonyの「PlayStation」商標を汚している<tarnish>と認定した。しかし、地裁はSonyの著作権の請求に基づいてだけ仮差止を認容し、商標の汚しの認定を差止の根拠として言及していない。我々は「記録によって支持される理由に基づいて地裁を維持する」ことはできるが、Charley's Taxi Radio Dispatch Corp. v. SIDA of Haw., Inc., 810 F.2d、869, 874 (9th Cir. 1987)、我々はこの選択できる理由に基づいて維持することを断る。Sonyは商標の汚しの請求の各要素に関して勝訴の可能性を立証していない。

〔17〕商標の汚しの請求で勝つためには、Sonyは(1)PlayStation「商標が著名である」、(2)Connectixが「その商標の商業的使用を行った」、(3)Connectixの「使用がその商標が著名になった後に始まった」、かつ(4)Connectixの「商標の使用が、製品及びサービスを識別するその商標の能力を減少させることによって、その商標の質を希釈化する<dilute>ことを立証しなければならない。Films of Distinction, Inc. v. Allegro Film Prods., Inc., 12 F. Supp. 2d 1068, 1078 (C.D. Cal. 1998); 15 U.S.C. SS 1125(c)(1), 1127 (「希釈化」の定義)。Connectixは第一及び第三の要素を争っていない。我々は第四の要素だけに言及する。

 Sonyは希釈化の汚し論に基づいて主張を続けているから、Sonyは第四の要素に基づいてPlayStation商標がConnectixの使用をとおして「否定的な連想を招く<suffer negative associations>」であろうことを立証しなければならない。Hormel Foods Corp. v. Jim Henson Prods., Inc., 73F.3d 497, 507 (2d Cir. 1996); 4 J. Thomas McCarthy, McCarthy on Trademarks and Unfair CompetitionS 24.95 (4th ed. 1996 & Supp. 1999)も参照。地裁は、Virtual Game StationがPlayStationゲームをPlayStation本体と同様にはプレイすることができず、Virtual Game Stationのパッケージにはこの効果についての責任の否認が記載されているが、「ゲーム・プレーヤーはこの区別を理解できない」と認定した。Order at 24-25。それゆえ、Virtual Game Stationソフトウエア上でSonyのゲームをプレイする消費者の一部は混同し、Sony PlayStation商標は否定的な連想を招く。同at 25。

〔18〕記録上の証拠はそのような出所の混同<misattribution>の認定を支持していない。地裁は主にConnectixが提出したインターネットに掲示された一連の半匿名の批評に依存した。地裁が認めるように、これらの批評は信頼できると証明されておらず、出所が確認されていない。もっと重要なことは、そのコメントのプリントアウトはそのコメントがなされた状況を明らかにしていない;この脱落はゲーム・プレーヤーによる混同の程度の信頼性を評価するのを困難にしている。また、地裁はSonyの依頼で<at Sony's bequest>マーケット・リサーチ会社によっておこなわれた二つのグループ研究にも言及した。これらの研究はVirtual Game Station及びPlayStationの品質の相違を述べているが、出所の混同の問題に光を当てていない。したがって、我々は、汚しの出所の混同論に基づくVirtual Game StationがSony PlayStation商標を汚すという地裁の認定を明白な誤りとして拒絶する。

〔19〕また、我々は二つのプラットフォーム間の品質の相違自体で汚しの認定に十分であるというSonyの主張も納得しない。Deere & Co. v. MTD Prods, Inc., 41 F.3d 39, 43 (2d Cir. 1994)(「『汚し』は一般に原告の商標がごまかした品質<shoddy quality>の製品と結びつき、商標の価値を減ずるときに生じる「なぜなら、公衆は原告が関与しない商品から品質の欠如を関係づけて考えるからである。」)参照。仮に、我々が汚しの概念が現在の事実のシナリオに適切であると仮定してさえ、汚しの認定には証拠が不十分である。「汚しの必須要件は原告の商標が被告の使用をとおして否定的な連想を招くだろうという認定である。Hormel Foods, 73 F.3d at 507。本件の証拠はSonyの商標又は製品がConnectixのVirtual Game Stationのパフォーマンスによって、否定的にみなされた又はみなされやすかったことを証明又は示唆してはいない。それぞれのパフォーマンスの質についての証拠は大したものですらない。それぞれ8名の参加者を含むSonyの研究の結論には幅がある。一つの研究は、「結局、このフォーカス・グループ研究<focus group study>の結論は、テスターがVirtual Game Stationゲーム体験に対してPlayStationゲーム体験の方を好んだことを示している。」もう一つの研究は、消費者はVirtual Game Stationは一つのゲームでは「概して満足できた」が、もう一つのゲームでは「ほとんどプレイできなかった」ことを認めたと結論した。Connectixによって提出されたインターネットの批評も幅のある意見である;何人かの匿名の批評家はVirtual Game Stationを愛好したが、何人かはあいまいであり、比較的少数のものはVirtual Game Stationエミュレーションをひどく嫌った。出所<attribution>に関するただ一つの批評において、Newsweekはそのソフトウエアが「驚くほどよく」プレイでき、いくつかのゲームではVirtual Game Stationは「ロック」すると書いた。Steven Levy, "Play it Your Way," Newsweek, Mar. 15, 1999, at 84。Virtual Game Stationのごまかし<shoddiness>だけでSonyの商標を汚しているという結論を支持するにはこの証拠では不十分である。
  

結    論

 Connectixの技術者が購入した一台のSony PlayStationから引き出されたSony BIOSのConnectixによるリバースエンジニアリングは、フェアユースとして保護される。ConnectixによってなされたSony BIOSのその他の中間コピーは、仮にSonyの著作権を侵害するとしても、差止救済を正当化しない。これらの理由により、地裁の差止を解除し、本件は地裁に差し戻す。また、我々は、ConnectixのVirtual Game StationがSony PlayStation商標を汚したという地裁の認定も取消す。

取消し、差戻す。


脚注 
 
1.著作権で保護されたソフトウエア・プログラムの購入者は誰でも、そのプログラムを少しでも使用するためには、コンピュータのメモリにそのプログラムをコピーしなければならない。そのため著作権法117(a)(1)条が、ソフトウエア複製物の所有者が、「一つの装置に関連したコンピュータプログラムの利用において、欠くことのできない処置として作成され、かつ、その他の方法では使用されない」もう一つのコピーを作成することは侵害ではないと規定しているのである。Connectixは、そのコピーは117条の保護の範囲内であると主張しているが、我々はフェアユース問題で処理するので、その主張に言及する必要はない。Sega, 977 F.2d at 1517-18(逆アセンブルが117条によって保護されるという主張を拒絶している)参照。

2.オブジェクトコードはバイナリコードであり、0と1の数字の連続からなり、コンピュータにだけが読むことができる。

3.ソースコードはソフトウエア技術者には読めるが、コンピュータには読めない。

4.一般的にソフトウエアはプログラマによってソースコードで(及び他のより概念的なフォーマットで)記述され、その後オブジェクトコードへアセンブルされる。

5.考慮されるべき要素は以下のものを含むものとする −

(1)その使用が商業的なものか、非営利の教育目的かどうかを含む、その使用の目的及び性質;
(2)その著作物の性質;
(3)その著作物全体に関して使用された部分の量及び実質性;及び
(4)その著作物の潜在的マーケット又は価値に対するその使用の影響。
著作権法107条。

6.Connectixは、PlayStation本体内にあるSony BIOSが置かれているチップの入出力リードに「ロジックアナライザ」を取り付けることによってSony BIOSの機能にアクセスを試みた証拠を提出している。この形の観察は、中間コピーの作成の必要がないようにみえるが、チップ間の信号を観測することはできるが、チップ内の信号は観測できないから、限定的な価値しかない。この形の観察だけでConnectixの技術者がSony BIOSの機能的要素にアクセスできるとはSonyは述べていない。
 
7.Connectixが「Sonyのコードを彼ら自身のコードに少しづつ変換した」 Order at 11という地裁の認定が、Connectixの技術者がオリジナルな著作物を創作するのに失敗したという意味であるとすれば、この認定を支持する証拠を記録の中に見つけることができない。正確には、Connectixの技術者はSony BIOSをVirtual Game Stationのハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアに結合して、ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアをテストし開発したことを認めた。しかし、Connectix BIOSの作成中に、Connectixの技術者は、Sony BIOSを使用し、観察し、コピーし、時には逆アセンブルしたけれども、彼ら自身のコードを書くこと以外のことを行ったとは主張していない。Sonyはこれに反する証拠を提出しておらず、Connectixの最終製品に侵害物が含まれているとも主張していない。

8.Connectixの技術者であるAaron Giles及びEric Trautの証言録取書はConnectixの技術者が他のエンジニアリング・ソリューションが時には利用できることを認識していたことを示唆している。
 エミュレータ環境におけるSony BIOSの観察に関して、Trautは、ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを開発するために、最初にConnectix自身のBIOSを開発し、その後、Connectix BIOSを使用してハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを開発するよりも、Sony BIOSを使用する方が簡単であることを認めた。
 選択的な逆アセンブルと共にSony BIOSを観察することに関して、Trautは一つのバグに関して、Sony BIOSの一部を逆アセンブルしなければそのバグをフィックスする方法がなかったろうと述べた。また、彼は、その他の時に、Sony BIOSの部分を逆アセンブルしたのは、「バグを発見する最も効率的な方法」であった時であるとも述べた。
 Windows用Virtual Game Stationの開発においてConnectixがSony BIOSを観察した点に関しては、その他のソリューション、たぶん逆アセンブルが可能だったかもしれない。Connectixの技術者のGilesは、Sonyの弁護士が「そのエミュレータを作成するまえにCD−ROMコードを書くことが可能であった」かどうかを質問したときに「わかりません」と答えた。

9.SonyはこれらのRAMコピーに頼って、本件の事実と我々がTriad Systems Corp. v. Southeastern Express Co., 64 F.3d 1330 (9th Cir. 1995)事件及びMAI Systems Corp. v. Peak Computer, Inc., 991 F.2d 511 (9th Cir. 1993)事件で行った判断とに実質的な違いがないと主張しているが、我々は拒否する。これらの事件は我々のフェアユースの分析には適さない。どちらも保護されない機能的要素へアクセスするためのリバースエンジニアリングに関係しない。

10.SonyはMicro Star v. Formgen, Inc., 154 F.3d 1107 (9th Cir. 1998)事件を指摘して、商業的使用はアンフェアを推定させると提議する。同at 1113(Sony Corp. of Am. v. Universal City Studios, Inc., 464 U.S. 417, 451 (1984)を引用している)。我々はMicro Star事件をそのようには解釈しない;さらに、そのような解釈はAcuff-Rose事件に反するであろう。Acuff-Rose事件はそのような「過度の証拠の推定」を明確に拒否しており、控訴裁判所はその使用の商業的性質に決定的な重要性を与えるのは「誤りである」と述べている。510 U.S. at 584。また、Micro Star事件自体、本件とは異なり、一変させるものではない<non-transformative>使用を含んでいる。Micro Star, 154 F.3d at 1113 & n.6. Cf. American Geophysical Union v. Texaco, Inc., 60 F.3d 913, 921-22 (2d Cir. 1995)(修正された意見)(Texacoによる著作物の中間コピーに適用するときに商業的使用によるアンフェアの推定を、Acuff-Rose事件等に基づいて、拒絶している)参照。

11.我々は、インターネットからのSonyのBIOSのダウンロード自体が差止の根拠となる侵害であるというSonyの主張を受け入れない。記録の中の証拠によれば、BIOSのダウンロードは、Virtual Game Stationの開発において、仮にあったとしても、最小の役割しか果たしていないことが示唆されている。本件記録に基づき、我々は、ダウンロード侵害は、仮にそのようなものがあったとしても、Virtual Game Stationの開発及び販売の差止の維持を正当化することはないと結論する。Virtual Game Station自体、著作権を侵害していない。「一般社会の利益ためにアーティスティックな創作を奨励する」Sony, 464 U.S. at 432 (内部の引用記号を削除)という著作権法の目的を思い起こし、我々は、Connectixのソフトウエアの頒布に適法な一般社会の利益が存し、その利益はBIOSのダウンロードと関連する記録上の証拠によって圧倒されないと結論する。差止の賦課は自由裁量である。著作権法502(a)条参照。本件記録に基づき、我々は、ダウンロードされたSony BIOSのConnectixによるコピー及び使用による差止を維持するのは適当ではない;その申し立てられた侵害に関するSonyの利益は損害賠償によって保護されるのが適切である、と結論する。Acuff-Rose, 510 U.S. at 578 n.10(フェアユースの限度を超えたと認定された製品を差し止めするかどうかを決定する際に評価されるべき要素を検討している)参照。
  


訳注

(訳1)この判決の記載から、技術的な面を推測すると次のようになると考えられる。SonyのPlayStationのシステム構成は、

 PlayStationハードウエア − Sony BIOS − PlayStationゲーム

である。これに対して、Connectixがハードウエア・エミュレーション・プログラムを開発している時のシステム構成は、

 Macintoshハードウエア − Mac OS − デバッガ − Virtual Game Stationハードウエア・エミュレーション・ソフトウエア − Sony BIOS − PlayStationゲーム

であると考えられる。ここで、Sony BIOSはSony PlayStation本体のROMからMacintoshのハードディスクにコピーしたものであり、Virtual Game Stationハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアはSony PlayStation本体内のチップの入出力リードに「ロジックアナライザ」を取り付けることによって入手した情報[6]、PlayStation本体のハードウエアに関する情報(例えば、PlayStationのCPUはR3000カスタムであり、「カスタム」部分は不明であるとしても、R3000は一般に知られたチップであるから技術情報を入手できる)等に基づいて作成したプロトタイプであると考えられる。そして、まず、Mac OSからデバッガを立ち上げ、デバッガからVirtual Game Stationハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを立ち上げ、そのハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアがSony BIOSを立ち上げたと考えられる。そうすると、デバッガの管理のもとにSony BIOSが動作するが、ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアは完全なものではないから、インターフェースがとれていない部分にさしかかるとハングアップすると考えられる。そこで、デバッガで何ステップか前に戻し、1ステップ毎に実行させ、Sony BIOSとハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアの間の信号のやりとりを読み取り(デバッガの機能によりMacintoshのCPU内のレジスタの内容、スタックメモリの内容等を観察できる)、時にはConnectixの技術者Aaron Gilesが作成した逆アセンブラでSony BIOSの一部を逆アセンブルし[7]、それに基づいて、ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアのその部分を書き換えて、インターフェースをとる、ということを繰り返して、最終的なハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを完成したものと考えられる。

(訳2)判決には、『一度、ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアの開発ができると、Connectixの技術者はもう一度Sony BIOSを使用して、エミュレーション・ソフトウエアを「デバッグ」した<Once they had developed the hardware emulation software, Connectix engineers also used the Sony BIOS to "debug" the emulation software.>』と記載されていて、わかりにくい。最初の部分には、「ハードウエア・エミュレーション・ソフトウエア」と記載されているのに対して、後の部分には、「エミュレーション・ソフトウエア」と記載されており、後者には「ハードウエア」が記載されていない。そして、ConnectixはPlayStationエミュレータを開発するために、PlayStationのハードウエア及びファームウエア(Sony BIOS)の両方をエミュレートする必要があったのであるから、既に開発が終わったハードウエア・エミュレーション・ソフトウエアを使って、ファームウエア(Sony BIOS)のエミュレーション・ソフトウエア(Connectix BIOS)の開発を行ったことを述べていると考えられる。Connectix BIOSを作成するためには、Sony BIOSとPlayStationゲームとの間の信号のやりとりの方法、すなわち、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を知る必要がある。そのため、上記のハードウエア・エミュレーション・ソフトウエア開発中と同じシステム構成で、デバッガを使って、Sony BIOSとPlayStationゲームとの間の信号のやりとりの方法、すなわち、APIを知り、それを使って、Connectix BIOSを作成し、上記のシステム構成におけるSony BIOSをConnectix BIOSに置き換え、さらに、デバッグを行い、PlayStationエミュレータ(Virtual Game Station)を完成させたと考えられる。
  
(訳3)この判決は、『我々は、「著作物のなかで、あるものは、他のものよりも、予定された著作権保護の中心に近いところにある」ことを認識している。SonyのBIOSは、コピーしなければ調べることができない保護されない面を含んでいるから、中心からある距離に位置する。その結果、我々はプログラムに「伝統的な文字の著作物よりも低いレベルの保護」を与える。』と判示している。ここで注意しなければならないのは、この判示は、プログラムの著作権全体について伝統的著作物より低いレベルの保護を与えると述べているわけではないことである。プログラムも伝統的著作物と同様に著作権で保護されていることを当然の前提とした上で、リバースエンジニアリングをしなければアイディアを調べることができないという問題に関して、伝統的な著作物よりも低レベルの保護を与え、通常であれば著作権侵害であるリバースエンジニアリング中の中間コピーがフェアユース論により非侵害となるとしているのである。これに対して、日本では、1989年のシステムサイエンス事件高裁決定が、『あるプログラムがプログラム著作物の著作権を侵害するものと判断し得るためには、プログラム著作物の指令の組合せに創作性を認め得る部分があり、・・・・・プログラムはこれを表現する記号が極めて限定され、その体系(文法)も厳格であるから、電子計算機を機能させてより効果的に一の結果を得ることを企図すれば、指令の組合せが必然的に類似することを免れない部分が少なくないものである。したがって、プログラムの著作物についての著作権侵害の認定は慎重になされなければならない』と判示しており、これが日本におけるプログラムの著作権の基本判例とみなされている。この判示はプログラムが著作権で保護されるためには高度な創作性が必要であることを判示したと考えられているが、当時の日本の裁判所がプログラムについて十分に理解できていなかったことによる誤った判示である。したがって、日本のシステムサイエンス事件の判示と、このSony事件の判示は全く異なったものである。私自身、これまで著作物には著作権保護の中心に近いものと遠いものがあると考えてきた。著作権保護の中心に位置するのは小説、音楽、絵画、彫刻等である。学術論文の場合は、学術的思想や事実については著作権で保護されないから、著作権保護の中心から少し距離があると考えられる。プログラムの場合も、保護されないアイディア、機能を含んでおり、また、RAMへのコピーを伴うリバースエンジニアリングを行わなければ、保護されないアイディアや機能を取り出すことができないから、著作権保護の中心から少し離れていると考えられる。しかし、プログラムが中心から大きく離れているわけではなく、学術論文と同じ程度か、それよりやや遠いぐらいであると考えている。上記のシステムサイエンス事件高裁決定はプログラムが著作権保護の中心から大きく離れ、著作権保護の境界線上にあると誤って理解した結果であると考えられる。実際に著作権保護の中心から大きく離れ、著作権保護の境界線上にあるのは、建築の著作物や美術工芸品の著作物である。
  
(訳4)判決には、『Sonyは、エミュレータ環境でSony BIOSを観察するというConnectixの判断によって、そのプログラムを完全に逆アセンブルするよりも、より多くのSony BIOSの中間コピーが必要となったという理論的根拠に基づいて、ConnectixによるSony BIOSのリバースエンジニアリングは不必要であると考えられるべきであると主張する』と記載されている。このSonyの主張は、最初にSony BIOSを逆アセンブルして、そのリストをプリントアウトして、それに基づいて、Connectix BIOSを最初に作成し、それを使ってハードウエア・エミュレーション・プログラムを作成すれば、逆アセンブルリストを作成するときの一回だけのコピーで済むはずであり、Connectixが行ったように、多数回Sony BIOSをRAMにコピーする必要はなかったというものである。これは、Sega事件により、コピーが必要であることが、フェアユースであるための要件の一つであるから、Sonyが主張するようにリバースエンジニアリングを行えば、一回だけのコピーで済んだはずなのに、Connectixは必要のない多数回のコピーを行ったから、フェアユースに該当しないという主張である。この点に関して、Connectixの技術者Trautは、Sonyが主張する方法よりも、Connectixが行った方法の方が簡単であると主張している[8]。そのとおりだと思うが、それ以上に、Sonyの主張する方法では、どうしてもオリジナルなコードの表現をコピー又は翻案して使用しがちになるから、リバースエンジニアリングの方法としては、Connectixが行った方法の方が望ましいと考えられる。
 
(訳5) Sega v. Accolade (9th Cir. 1993)事件判決(FindLaw)には、被告Accoladeが行ったリバースエンジニアリングについて次のように記載されている:

 Accoladeは自社のビデオゲームをGenesis本体(アジアでは「Mega-Drive」の名称)と互換にするために二段階のプロセスを行った。第一段階で、Genesis本体と互換にするための要件を発見するために、Segaのビデオゲーム・プログラムの「リバースエンジニアリング」を行った。リバースエンジニアリングのプロセスの一部で、Accoladeは、「逆アセンブル」又は「逆コンパイル」と呼ばれる方法を使用して、Segaのゲームカートリッジに含まれているマシンが読めるオブジェクトコードを人間が読めるソースコードに変換した。Accoladeは1台のGenesis本体と3個のSegaゲームカートリッジを購入し、本体の回路に逆コンパイラを接続し、ソースコードのプリントアウトを作成した。Accoladeの技術者は、3個のゲームプログラムで共通の部分を特定するために、プリントアウトを研究し、注釈をつけた。その後、彼らはその逆アセンブルされたコードをコンピュータにロードし、Genesis本体へのインターフェース・スペシフィケーションを発見するために、そのプログラムを修正し、その結果を研究する実験を行った。リバースエンジニアリングのプロセスが終わるときに、Accoladeは、Genesis互換ゲームの要件について発見した情報を組み入れた開発マニュアルを作成した。そのマニュアルを作成したAccoladeの技術者によると、そのマニュアルはインターフェース要件の機能の記載だけが含まれ、Segaのコードは全く含まれていない。
 第二段階では、AccoladeはGenesisのための自社のゲームを創作した。Accoladeによると、この段階では、Segaのプログラムのコピーを行わず、開発マニュアルに含まれているGenesisへのインターフェース・スペシフィケーションに関連した情報だけに依存した。Accoladeは、インターフェース・スペシフィケーションを例外として、自社のゲーム中のコードはSegaのコードの調査から、いかなる方法でも、得たものはないと主張している。

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