翻訳 井上雅夫 2007.08.13-22; 08.28  ↑UP  KSR判決を考慮した自明性の審査基準<New

Microsoft v. Lucent MP3特許事件地裁判決
2007.08.06判決
  目  次
判         決
 I.イントロダクション

 II.法的基準
  A.法律問題としての判決

  B.新しいトライアル
 III.080特許の所有権およびライセンス
  A.Mr. RestainoおよびMr. Devilliersの証言録取証言の排除
  B.JDAに基づく新しい研究成果と存在する技術
   1.クレーム2
   2.クレーム4
  C.080特許の所有権
  D.Lucentの当事者適格
  E.Microsoftのライセンス抗弁
 IV.457特許の侵害
  A.直接侵害
  B.間接侵害
 V.080特許の侵害

  A.クレーム解釈
  B.直接侵害
  C.全ての訴えられたエンコーダによる寄与侵害
  D.Cyberlinkエンコーダによる間接侵害
 VI.無効抗弁
  A.080特許の非新規性/自明性:OCF Paper

  B.Low Bit Rate Paperが遅れているという証言がない
  C.Mr. Johnstonの証言の排除
  D.KSR Intern. Co. v. Teleflex Inc.の衝撃
 VII.損害額
  A.ロイヤリティベース−全体マーケット価値ルールの適用
  B.ロイヤリティレート
  C.評決の矛盾
  D.Microsoft Corp. v. AT & TCorp.における最高裁判示の衝撃
  E.感情および偏見
 VIII.結論
脚注
訳注


カリフォルニア南地区合衆国地裁

 原告および反訴被告 LUCENT TECHNOLOGIES INC.
 被告および反訴原告 GATEWAY, INC. and GATEWAY COUNTRY STORES LLC, GATEWAY COMPANIES, INC., GATEWAY MANUFACTURING LLC and COWABUNGA ENTERPRISES, INC.
 訴訟参加人および反訴原告 MICROSOFT CORPORATION
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 原告および反訴被告 MICROSOFT CORPORATION
 被告および反訴原告 LUCENT TECHNOLOGIES INC.
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 原告 LUCENT TECHNOLOGIES INC.
 被告 DELL, INC.
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 民事No: 02CV2060-B(CAB)
 民事No: 03CV0699-B (CAB)および民事No: 03CV1108-B (CAB)を併合

 法律問題としての判決と新しいトライアルを求めるMICROSOFTの申立および米国特許5,341,457およびRE 39,080に関する判決を変更または修正するためのLUCENTの申立に関する命令

I.イントロダクション
 2007年1月29日、オーディオコーディング特許である米国特許5,341,457およびRE 39,080(それぞれ「457特許」および「080特許」)に関係する争点に関する事件番号02cv2060の陪審トライアルが開始された。2007年2月22日、陪審は、特許は有効であり被告Microsoft Corporation(「Microsoft」)によって侵害されたと認定して、Lucent Technologies, Inc.(「Lucent」)勝訴の評決を返した。

 トライアルに引き続き、本裁判所も当事者適格およびMicrosoftのライセンス抗弁についての非陪審争点に関して決定した。これらの決定は、米国特許5,627,938(「938特許」)(再発行080特許が基礎とする特許)の中に含まれている研究成果<work>は1989年4月またはその後に行われなかったという陪審の認定に基づいたものである。本裁判所は、080特許はFraunhoferによって共同所有されていない; Lucentは080特許の単独所有者であり侵害訴訟に関する当事者適格を有すると判示した。本裁判所はFraunhofer-Microsoft契約はMicrosoftに080特許を実施するライセンスを与えていないとも判示した。

 Microsoftは現在、(1)457特許の非侵害;(2)080特許の非侵害;(3)080特許はAT&T-Fraunhofer契約に基づく「存在する研究成果」ではないという争点に関して連邦民事訴訟規則50(b)に基づく法律上の争点に関する判決を本裁判所に申し立てている。加えて、Microsoftは Lucentの当事者適格およびMicrosoftのライセンス抗弁に関する連邦民事訴訟規則52(b)に基づく判決の修正を本裁判所に申し立てている。また、Microsoftは、(1)非侵害;(2)「存在する研究成果」としての080特許のカテゴリー;(3)無効;および(4)損害額を含む争点に関して、新しいトライアルを求めて申し立てている。[訳1]

II.法的基準
 A.法律問題としての判決

 陪審の判断が実質的な証拠によって支持されている場合、法律問題としての判決を求める申立は否定されなければならず、陪審の評決は維持される。Johnson v. Paradise Valley Unified School District, 251 F.3d 1222, 1227 (9th Cir. 2001). 実質的な証拠は、仮に同じ証拠から正反対の結論を引き出すことが可能であるとしても、陪審の結論を支持するに十分な証拠である。Id. 裁判所は、記録を、全体として、しかし陪審が信じることを必要とされない申立人に有利な全ての証拠を無視して、再審理しなければならない。Id. 全ての合理的な推論は被申立人に最も有利に行われなければならない。See Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 250-51 (1986).

 B.新しいトライアル
 連邦民事訴訟規則59(a)に基づく新しいトライアルを認める裁判所の権限は「ほとんど完全にトライアル裁判所側の裁量の行使に託されている。」Murphy v. City of Long Beach, 914 F.2d 183, 186 (9th Cir. 1990)(quoting Allied Chem. Corp. v. Daiflon, Inc., 449 U.S. 33, 36 (1980)). 法律問題としての判決を求める申立とは違い、「裁判官は証拠を秤量することができ、証人の信用性を評価することができる、そして優勢な当事者に最も有利な見方から証拠を見る必要はない。」Landes Const. Co., Inc. v. Royal Bank of Canada, 833 F.2d 1365, 1371 (9th Cir. 1987); Molski v. M.J. Cable, Inc., 481 F.3d 724, 729 (9th Cir. 2007)(「地裁は裁判所として証拠の秤量を行う義務を有する」)(internal quotations omitted). 地裁は、「裁判所の誠実な意見において、評決が証拠の明確な秤量に反している場合、実質的な証拠によって支持されているとしても、陪審の評決を無視」すべきである。Molski, 481 F.3d at 729.; see also Silver Sage Partners, Ltd. v. City of Desert Hot Springs, 251 F.3d 814, 819 (9th Cir. 2001)(「トライアル裁判所は、評決が証拠の明確な秤量に反している場合に…またはトライアル裁判所の健全な裁量において正義の不実現を防ぐために、新しいトライアルを認めることができる。」)。一般に、裁判所は、誤りがなされたことを明確にかつ断固として確信している場合のみ、新しいトライアルを認めるべきである。Landes Constr., 833 F.2d at 1372. 「地裁は、異なった評決に到達したであろうという理由だけで、新しいトライアルを認めてはならない。」Silver Sage Partners, 251 F.3d at 819.

III.080特許の所有権およびライセンス
 Microsoftが提起した積極的抗弁の中の二つは080特許の所有権に関係している。Microsoftは、080特許はドイツの研究会社Fraunhofer Gesellschaft(「Fraunhofer」)によって共同所有されていると主張した。Microsoftは 、そのようなものとしてのLucentは080特許の侵害を求めてMicrosoftに対して訴えを起こす当事者適格を欠いていると争う。Microsoftはライセンス抗弁も主張し、Fraunhoferから080特許を実施するライセンスを受けていると争う。これらの積極的抗弁はトライアルの二つの部分で扱われた。
陪審は、AT&TとFraunhoferの共同研究の期間になされた研究成果が、米国特許5,627,938(「938特許」)(これがその後080特許として再発行された)のクレームのいくつかの中に含まれているかどうかの事実問題に関する証拠を聞いた。特別評決用紙はこの争点に関する「特別質問」を含む:「938特許のクレームのいくつかの中に含まれている研究成果は1989年4月またはその後になされたことをMicrosoftは証拠の優越によって証明しましたか? イエスまたはノーで答えてください。」陪審は「ノー」と答えた。その後、この陪審の事実認定に基づいて、本裁判所は、1989年のAT&TとFraunhoferの研究契約(「JDA」)に基づき、Fraunhoferは938特許または080再発行特許の共同所有者ではないと判示した。それゆえ、 Lucentは訴えの当事者適格を有しており、ライセンス抗弁はMicrosoftに利用可能ではない。今、Microsoftは多くの根拠に基づいて陪審の認定およびそれに引き続く本裁判所の判示に異議を申し立てている。

 A.Mr. RestainoおよびMr. Devilliersの証言録取証言の排除
 2月12日のトライアルで、MicrosoftはLucentが反対した2つのビデオテープ証言録取を陪審の前で再生することを試みた。(Trial Tr. vol. X, 17:6-24:7, Feb. 12, 2007.) 最初のものはAT&TのMr. Restainoの証言録取であり、他のものはCreative LabsのMr. DeVilliersの証言録取であった。Mr. RestainoはJDAに基づく権利のAT&Tの見解について証言するものであった。(Id. at 18:4-18.) 本裁判所は、その契約に基づく Lucentの義務に関するAT&Tの見解は関連がないと判示した。(Id. at 19:16-24.) Mr. DeVilliersはJDAに基づく Lucentの権利を議論するためのCreative Labsとの交渉における Lucentの寡黙について証言するものであった。(Id. at 20: 8-16, 21:18-25.) 本裁判所は、後者の証言は間接的であり、関連性に欠けており、陪審を混乱させると判示した。(Id. at 23:2-6.)

 今、Microsoftは、陪審はAT&Tと LucentがどのようにJDAを見ていたかを聞く資格を与えられているから、これらの証言録取の排除は誤りであると論じる。しかしながら、本裁判所は、この排除にいかなる誤りも偏見も認めない。第1に、Microsoftは、その証言の排除に関する本裁判所の理由付けが「信用できない」とみなすからであると誤って主張している。これは記録と矛盾する;本裁判所は、この証言を関連しないおよび/または不利益はないとして排除した。Microsoftは、「信用性<credibility>」を「証拠能力<admissibility>」と混同している。証拠能力は裁判所のための問題であり、陪審のための問題ではない。Fed. R. Evid. 104. 加えて、Microsoftは、この証拠が関連しているであろういかなる陪審の争点も指摘していない。JDAの解釈は、陪審ではなく、裁判所に残された問題である。それゆえ、本裁判所は、この根拠に基づく新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立を否定する

 B.JDAに基づく新しい研究成果と存在する技術
 FraunhoferとAT&T間のJDAは、Karlheinz BrandenburgのAT&Tへの滞在の期間の共同研究を含んでいた。(DX 6489 at 2.) この期間は1989年に始まり、1990年に終了した。(Trial Tr. vol. VI, 192:15-17, Feb. 5, 2007.) この期間におけるデジタルオーディオコーディングに関してなされた全ての研究成果は「新しい研究成果<New Work>」として分類され、AT&TとFraunhoferによって共同して所有される。(DX 6489 at 2, 3 § 1.) 1991年、新しい研究成果を含む期間は、JDAの満了とBrandenburgの出発後に継続する研究成果を含めるために、AT&TとFraunhoferによって延長された。(「延長書簡」 DX5616.) 当事者らは、どちらかの当事者が契約の終了を通知するまで、無期限に期間を延長することに合意した。(Id.) 当事者らが契約を終了させたことに関する証拠は提出されていない。それゆえ、JDAと延長書簡の結合された効果により、新しい研究成果の期間はBrandenburgが到着した1989年4月に始まり、その後、無期限に継続している。

 本件トライアルにおいて、 LucentとMicrosoftは新しい研究成果の事実問題を、1989年またはその後になされた研究成果が938特許のクレームのいくつかの中に含まれているかどうかを質問することによって、陪審に提出することに合意した。(Special Verdict Form; Tr. Chambers Feb. 7, 2007, 173:12-24; Trial Tr. vol. XII, 90:7-22, Feb. 14, 2007.) Microsoftにとって一応有利な事件が成立するかどうかは938特許における研究成果の記述に依存している。938特許は、出願番号844,811の継続出願として1992年3月2日を優先権主張し、1994年9月22日に出願された。これがその中に記述されクレームされた研究成果に1992年の日付を定める。 Lucentは、938特許のクレームは1988年に出願された457特許明細書の中に記述されていたと論じる;これはこの研究成果の日付を、JDAにおける分割線の1989年より前に置く[1]。 また、LucentはMr. Johnston(938特許の発明者)の証言を、彼が1998年またはその頃に行った研究成果に関して、提出した。

 今、Microsoftは、938特許のクレーム2および4に含まれる研究成果が1989年4月またはその後に行われなかったことを陪審が認定し得た十分な証拠は存在しなかったと争う。

  1.クレーム2
 クレーム2は、クレーム1の方法を含み「周波数係数のセットはMDCT係数である」という限定を加えた従属クレームである。Microsoftは、MDCT(修正離散コサイン変換)係数は457特許のどこにも述べられておらず、それゆえこの特許およびその出願日はクレーム2の中に具体化された研究成果が1989年4月以前に行われた証拠にはなり得ないと争う。

 MDCTを用いるクレームされた方法の開示に関して、 Lucentはこの点に関して十分な証拠が証人の証言のおよびMDCT係数はこの技術においてよく知られているとを示す938特許明細書の記述の形で提出されたと論じる。 Lucentは、457特許は時間の周波数への変換を記述しており、MDCTはそのような変換の一つのタイプであるから、その技術の通常の技術者は457特許を938特許のクレーム2に開示された方法を含むと理解するであろうと争う。

 この争いは問題をはらんでいる。第1に、法律問題として、クレーム2は457特許への優先権を、トライアルで提出された証拠に基づいて、主張することができない。457明細書はMDCTを記述していない。Dr. Jayantの証言は、MDCTは457特許の時期に知られていたということを述べただけである。(Trial Tr. vol. XI, 101:4-11, Feb. 13, 2007.) また、彼はこの分野の通常の技術者は、クレームされた方法がMDCTによってインプリメントし得たであろうことを認識したであろうし、過度の詳述なしにそうすることができたであろうと証言した。(Id. at 101:12-24.) この証言は、クレーム2の方法が457特許に十分に記述されていることを証明していない。「より以前の出願日を得ようとする発明を自明とする記述では十分ではない。」Lockwood v. American Airlines, Inc., 107 F.3d 1565, 1572 (Fed. Cir. 1997). 自明性の証明は発明者がその発明を「所有していた」ことを証明するには十分ではない。Id.

 第2に、この分野の技術者が457特許明細書とMDCTに関するこの分野の知識からクレーム2をインプリメントすることができたであろうかもしれないという理由だけで、938特許の発明者Johnstonが457特許の出願日現在にそのような研究結果を成し遂げたという結論は導かれない。この点に関して、Johnstonは、AT&T-Fraunhofer契約の共同研究期間が始まる前にこの研究成果を成し遂げることはなかったと証言した:
Q 誰があなたにMDCTについて教えましたか?
A えーっと、私はKarlheinzの論文を見るまでそれを聞いたことがありませんでした、その時、Karlheinzが来る前ですが、私はそれを多少は見ていました、しかし、Karlheinzが来て座ってそれを説明したとき、それが私が本当にそれについて学んだ時です。それが私が実際にそれを実質的に手に入れた最初の時です。
Q 言い換えれば、1989年?
A そうです。
Q わかりました。ところで、Karlheinz博士−−Brandenburg博士から何かの理解を得ましたか、457特許の研究成果を行っていた時に?
A いいえ。私はMDCTについては全く聞いていませんでした。それが公表されていたのは明らかですが、私はそれを見つけてはいませんでした。
(Trial Tr. vol. VI, 36:13-25, Feb 5, 2007.) Lucentは、陪審はこの証言を無視してもよいと論じるが、その研究成果が1989年4月以前に成し遂げられたことを示す他の証拠は全くない。クレーム2を含む研究成果の唯一の他の証拠は1992年2月の日付を持つ938明細書自体である[2]。それゆえ、クレーム2は1989年4月またはその後に成し遂げられなかったという陪審の認定は、十分な証拠によって支持されていない;それゆえ、本裁判所はこの根拠に基づき法律問題としての判決を認める。加えて、陪審の評決は証拠の明確な秤量に反しているから、二者択一的に、本裁判所はこの争点に関して新しいトライアルを認める

  2.クレーム4
 トライアルに先行するMarkman審理において、本裁判所はクレーム4において明らかにされる受信手段および変換手段について同じ対応する構造を必要とすると解釈した:
構造:([938]明細書のCol. 23:59 - Col. 24:1に記載されているように)[3]、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ソフトウェアを備えるDSP、VLSIハードウェア実施例、またはハイブリッドDSP/VLSL実施例。
これらの対応する構造(DSPおよびVLSI)は457明細書の中に現れていない;これらは1992年に出願された938特許明細書において初めて現れる。しかしながら、トライアルにおいて、Lucentの専門家証人Dr. Jayantはこの対応する構造は457明細書中に開示されていると断固たる方法で証言した。(Trial Tr. vol. XI, 110:12-18, Feb. 13, 2007.) しかし、彼はこれらの構造が457明細書の中で見い出すことができる部分を指摘しなかった。その代わりに、Jayantの証言は2つの道筋をたどった−457特許における記述がクレーム4に1988年の優先日を提供することができることを証明するには、どちらも法律問題として不十分である。

 第1に、Jayantは、二つの「手段」は457特許の図7の72および76の符号がつけられたボックスに見いだすことができると証言した。彼は、ボックス76はビットストリームがデコーダ内に入り中身を取り出す部分である;ボックス72は周波数情報をタイムウェーブ形式に変換する部分であると指摘した。(Id. at 109:5-15, 110:1-11.) 彼は、これらのボックスを「構造」として識別しなかった。457特許の図7は機能だけを識別しており、これらの機能を遂行するいかなる構造も記述されていない。さらに、ボックス72および76がそれら自体ほぼ間違いなくある構造を表すことができるとしても、Lucentは、Jayantあるいはその他の証人をとおして、そのような構造が本裁判所によって解釈されたクレーム4に対応する構造と同じまたは均等であることを証明する証拠を提出していない。

 第2に、この分野の技術者はDSP/VLSI構造が受信および変換機能のための手段をインプリメントするために使用され得ることを知っていたであろうというJayantの証言(id. at 110:19-111:6)も不十分である。「112条パラグラフ6に基づくミーンズプラスファンクションクレーム[手段プラス機能クレーム]を支持する構造は明細書中に現れていなければならない…この分野の技術者の理解の考慮が、特許権者から明細書中に十分な構造を開示することを軽減することは決してない。Medical Instrumentation and Diagnostics Corp. v. Elekta AB, 344 F.3d 1205, 1212 (Fed. Cir. 2003); Biomedino, LLC v. Waters Technologies Corp., - - F.3d - -, 2007 WL 1732121, *5 (Fed. Cir. June 18, 2007).

 Dr. Jayantの法的に支持できない意見が陪審の評決を支持することはできない。See Brooke Group Ltd. v. Brown & Williamson Tobacco Corp., 509 U.S. 209, 242 (1993)(「専門家証人の意見が法的な目で見て有効である十分な事実によって支持されていない場合、または争う余地のない記録の事実と矛盾する若しくはその他の点でその意見を不合理にする場合、その意見が陪審の評決を支持することはできない。」);Tronzo v. Biomet, Inc.,156 F.3d 1154, 1159 (Fed. Cir.1998)(特許明細書自体と矛盾するおよび/または適用法に基づき不適当である専門家証人の証言は、記述および優先日に関する陪審の評決を支持するには不十分である。)

 クレーム2と同様に、938特許の開示は、クレーム4に対応する構造がその点に関して最初に記述され、それゆえ1992年以前ではない日付が与えられる点で一応有利な事件を成立させる。クレーム4に関するDr. Jayantの証言を排除すると、この一応有利な事件の証明を反駁する他の証拠は存在しない。Lucentが頼る唯一の他の証拠であるる発明者Mr. Johnstonの証言はクレーム4に組み込まれた研究成果が1989年4月以前に成し遂げられたことを示してはいない。Johnstonは、彼の知覚変換(PXFM)デコーダソフトウェアを1987年4月2日までに作成したと証言した。(Trial Tr. vol. VI, 97:5-11, Feb. 5, 2007.) Johnstonは、457特許に記載されたデコーダに関係する機能を実現するPXFMを作成したと証言しただけである;彼は、彼が作成したデコーダが構造に対応するDSPおよび/またはVLSIを有していたかどうかについて証言していない。何人かの専門家が1989年4月以前にDSPの存在に関して証言したというLucentの主張は利用できるものではなく、Johnstonが(彼の発明の状況においてではなく)何らかの一般的な状況においてDSPについて知っているかもしないという証拠も利用できるものではない。問題は、発明者が対応する構造を備えたデコーダを作成し得たかどうかではなく、彼が作成したかどうかである。

 構造に対応するDSPおよび/またはVLSIを備えて作成されたデコーダを含む研究成果の唯一の証拠は、1994年9月22日に出願(優先日1992年3月2日)された938明細書の中で現れるから、クレーム4が1989年4月以前に成し遂げられたという陪審の評決を支持する十分な証拠は存在しない。それゆえ、この争点に関する法律問題としての判決を求める
Microsoftの申立は認められる。加えて、陪審の評決は証拠の明確な秤量に反しているから、二者択一的に、本裁判所はこの争点に関して新しいトライアルを認める

 C.080特許の所有権
 クレーム2および4が1989年4月またはその後に成し遂げられたことが決定されたから、JDAに基づいて、これらのクレームは「新しい研究成果」を構成する。それゆえ、問題は938および080特許にそのまま組み込まれたこの研究成果の所有権になる。JDAは新しい研究成果の所有権に関して以下の関連する条項を含んでいる:
全ての新しい研究成果は共同研究として扱われる。その研究成果の知的財産権はAT&T およびFhGによって共同して所有される。各当事者は(知的財産権を含む)新しい研究成果を使用する非独占的権利を有し、そのような新しい研究成果を使用する非独占的ライセンスを他者に許諾することができる。
 (DX 6489 at 3 § 1.)
当事者らは、刊行が提案された前述の通信と紙に示された新しい研究成果を含む新しい研究成果に関する特許出願に関して相互に協議する。各当事者は、その被雇用者によって主になされた新しい研究成果を特許出願する最初の機会を有するが、一当事者がそのような特許出願を行う権利を辞退する場合、または特許を出願後特許を取得する企てをさらに進めないことを選択した場合、他の当事者はそれを行うことを選択することができる。各当事者は、その被雇用者および新しい研究成果に協力する他の者が全ての特許出願において他の当事者と協力することを保証する。
(Id. at 3 § 2.) これらの節および契約の文脈に基づき、JDAは、特許が出願されるであろう研究成果を含む新しい研究成果の所有権を分け合う意図を証明している。

 共同で所有された新しい研究成果を含む938および080特許は新しい研究成果ではない2つの追加的なクレーム(クレーム1および3)も含んでいる[4]。これらのクレームはJDAに基づき「存在する技術」と分類され、JDAの付属文書AおよびBに記載されているように、BrandenburgのAT&Tの滞在の期間が始まる前(1989年4月以前)のデジタルオーディオコーディング研究成果として定義される。(Id. at 2.) JDAは存在する技術をライセンス条項で扱っている:
関連する特許および特許出願を含む存在するAT&T技術および存在するFhG技術は、AT&TおよびFhG間の永久的非独占的ロイヤリティフリーライセンスの条項に従うことを条件として、ライセンスに基づき他の当事者が利用可能である。
(Id. at 3 § 3.) JDAはFraunhoferがAT&Tの存在する技術を限定された状況においてのみサードパーティにサブライセンスする権利を有するであろうことも予見していた[5]。(Id. at 3 §§ 5, 6.)

 JDAは、新しい研究成果および存在する技術の両方を含む新たに出願された特許および/または特許出願のための明示的な条項を含んでいない。Pope Mfg. Co. v. Gormully & Jeffery Mfg. Co., 144 U.S. 248, 252 (1892)に基づき、特許権者は、異なった当事者に対して分割したクレームを割り振ることにより、一つの存在する特許の所有権を分割することはできない。このゆえに、JDAは、Popeと矛盾をもたらさずに、938および/または080特許をAT&Tと Fraunhoferによって所有される「新しい研究成果」(クレーム2および4)とAT&Tによってだけ所有される「存在する技術」(クレーム1および3)に分割するように直ちに解釈することはできない。

  Lucentは、JDAは938および080特許の完全な所有権がAT&Tに与えられ、新しい研究成果に関するライセンス権だけをFraunhoferに与えると解釈されるべきであると論じる。Lucentは、新しい研究成果に関して「共同所有権」を規定する文章は、引き続く文章が新しい研究成果をつくるまたは販売する権利ではなく使用する権利だけをFraunhoferに与えているから、Fraunhoferに真の所有権を与えてはいないと論ずる。(See DX 6489 at 3 § 1.) この見解は説得力がない。JDAは当事者ら間で権利をつくる、使用するおよび販売することを分けていない。JDAは、両当事者に権利を「使用する」ことを規定しているだけである。このフレーズを使用する権利だけに解釈するとすれば、どちらの当事者も新しい研究成果を含む技術をつくるまたは販売することができず、意味のない結果を示唆することになるだろう。加えて、JDAは、当事者らは新しい研究成果の知的財産権を「使用する」ことができ、当事者らは新しい研究成果の権利は新しい研究成果に関して出願される特許出願の中に記録されるであろうことを規定している。(Id. at 3 §§ 1, 2.) 新しい研究成果に関する知的財産権(例えば、特許権)はつくる、使用するおよび販売する権利を含むであろう。JDAが新しい研究成果をつくる、使用するおよび販売する知的財産権を両当事者に流し込むことを意図していないことを示唆するものは何もない。

 本件における事情は、Israel Bio-Engineering Project v. Amgen, Inc., 475 F.3d 1256, 1263-64 (Fed. Cir. 2007)における事情と多くの点で類似している。この事件では、二つの当事者が共同研究および開発プロジェクトに関して、共同プロジェクトの期間に成し遂げられた研究成果の所有権を一方の当事者に与え、共同プロジェクトに引き続いてなされた全ての研究成果を他方の当事者に与える一連の契約を行った。Id. at 1259-1260. 3つのクレームを含むある特許が出願された:一つのクレームは共同プロジェクトの一部としてなされ、他の二つのクレームは後の研究成果を含んでいた。Id. at 1261. 所有権はその特許全体に結び付いているから、裁判所はどちらの当事者もその特許の単独の所有権を持つことができないと認定した。Id. at 1267-68. その代わりに、両当事者がそれぞれ分離不能の共同所有の権利を有する[6]。Id. at 1268. さらに、裁判所は、一方の当事者が全てのクレームを一緒に出願したから、その当事者がそこに含まれる共同研究成果の全ての所有権を失うという提案を拒絶した。その代わり、失われた唯一のものは、その特許の複数のクレームに含まれるあらゆる研究成果に対する両当事者の独占的権利である。Id. at 1267.

 本件においても同様に、存在する技術のクレームと同じ出願の中に新しい研究成果のクレームを綴じ込むことにより、その特許はAT&TとFraunhoferによって共同して所有される。AT&Tは、同じ特許出願の中にAT&Tの存在する技術を出願することによって、新しい研究成果のFraunhoferの所有権を喪失させることはできない。喪失されるものがあるとすれば、938特許全体に対するAT&Tの独占的所有権である。AT&Tは一つの出願の中に4つ全てのクレームを綴じ込むことを選択した時にその権利を失った。 Lucentは、080特許になる再発行出願の時に同じ決定をし、全体で一つの優先権を主張して、クレーム1および3を有する同じ出願の中にクレーム4を保ち続けることを選択した。それゆえ、本裁判所は、JDAに基づき、938特許およびその再発行080特許はAT&TとFraunhoferによって共同して所有されていると認定する

 D. Lucentの当事者適格
 「侵害訴訟は全ての共同所有者が原告として加わらなければならない。」Ethicon, Inc. v. U.S. Surgical Corp., 135 F.3d 1456, 1467 (Fed. Cir. 1998). Fraunhoferは080特許の共同所有者であり、本件訴訟に加わっていないから、 LucentはMicrosoftを本件特許に関して侵害を訴える当事者適格を欠いている。それゆえ、本裁判所は、080特許全体に関する Lucentの主張を連邦民事訴訟規則12(b)(1)に基づき却下し、それに応じて本裁判所の規則52(b)判決を修正する

  Lucentは本件訴訟において全ての共同所有者が加わるように訴状を修正し、当事者適格を確立できるであろうが、記録からFraunhoferはMicrosoftにライセンスを許諾しているようにみえる。このライセンスに対していかなる異議申し立てもないから、 Lucentが当事者適格を確立したとしても、Microsoftは Lucentまたは080特許の他の共同所有者に対して責任を負うことはないであろう。

 E.Microsoftのライセンス抗弁
 1997年、MicrosoftはFraunhoferとソフトウェア契約を締結した。(PX34.) この契約はMicrosoftにWindows Media Playerの中に組み込まれるコードを規定しており、このコードは現在本件訴訟における争点となっている。(Id. at § 4.1.) また、この契約は、そこに規定されたソフトウェアライセンス権利を行使するために必要なFraunhofer所有の特許のライセンスをMicrosoftに許諾している。(Id. at § 4.2.) 938特許およびそれゆえ080特許はAT&TとFraunhoferによって共同して所有されているから、080特許がここで訴えられているWindows Media Playerの機能の実行に必要な範囲で、MicrosoftはFraunhoferとの契約を通して080特許のライセンスを有している。See Schering Corp. v. Roussel-UCLAF SA., 104 F.3d 341, 344 (Fed. Cir. 1997)(「各共同所有者の所有権はそれらと共に他者へライセンスする権利、いかなる他の共同所有者の同意も必要としない権利を有している。」)Microsoftはライセンシーとして080特許の侵害に責任を有することはない。35 U.S.C. § 271. それゆえ、本裁判所は、Microsoftはライセンス抗弁に関して勝利し、080特許の侵害について責任を有しない
認定する。それに応じて本裁判所は本裁判所の規則52(b)判決を修正する

IV.457特許の侵害

 A.直接侵害
 Microsoftは、HQエンコーダがクレームされた方法を実行するという証拠はないから、合理的な陪審はトライアルで提出された証拠に基づいてWindows Media PlayerのバックアップHQエンコーダが457特許のクレームを侵害すると認定することはないと論じる。

 (457特許のクレーム1および5のような)方法クレームの侵害を証明するためには、装置がその方法を実行することができ、実際にその方法を実行していることを立証する十分な証拠が存在しなければならない。Joy Technologies, Inc. v. Flakt, Inc., 6 F.3d 770, 775 (Fed. Cir. 1993)(「方法クレームは特許された方法を実行するものによってのみ直接的に侵害される」); see also Ormco Corp. v. Align Technology, Inc., 463 F.3d 1299, 1311 n. 12 (Fed. Cir. 2006).

 HQエンコーダが特許された方法を実行していることを示すトライアルで提出された直接証拠はない。Lucentの専門家証人Dr. Polishでさえも、彼がHQレコーダが動作していることを観察したことはなく、彼がHQエンコーダによってCDをエンコードしたことはないと証言し、彼はどのようにしてユーザが(デフォルトのファーストエンコーダ<fast encoder>に代えて)HQエンコーダを選択し動作させるのかを説明できなかった。(Trial Tr. vol. III, 198:1-199:5, 200:18-24, Jan. 31, 2007.) その代わりに、Lucentは、ファーストエンコーダが働かないときにHQエンコーダが自動的に走り、それゆえ457特許のクレームを実行するという状況証拠に侵害の証明の中心を置いていると論じる。

 状況証拠は、直接侵害を証明するためにいくつかの状況において十分であり得る。 Moleculon Research Corp. v. CBS, Inc., 793 F.2d 1261, 1272 (Fed. Cir.1986)(「広範なパズル販売の状況証拠、各パズルで事前に選択されたパターンを元に戻す方法を教えるインストラクションシート、およびパズルの解き方に関する解決本が利用可能なことは、ルービックキューブを解くための特許された方法クレームの直接侵害を十分に証明している)。他の事実においては状況証拠では不十分である。E-Pass Technologies, Inc. v. 3Com Corp., 473 F.3d 1213, 1222 (Fed. Cir. 2007)(クレームされた方法の各ステップがバラバラに教示されているだけであり、顧客が特許にクレームされた順番で方法のステップを実行したと結論するにはあまりに多くの推論が必要がある。)

 本件において、HQエンコーダの機能に関する証拠は興味深いジレンマを提出する。Lucentの専門家証人Dr. Polishによれば、Windows Media Playerのデフォルトのファーストエンコーダが動作しないときにHQエンコーダがイニシャライズされ動作する。(Trial Tr. vol. III, 139:13-16; 142:16-20, Jan. 31, 2007.) この分析はソースコードについての彼の見解に基づいている。(Id. at 139:17-20, 141:15-24.) Dr. Polishは4種類のエラーがファーストエンコーダが動作しない原因だろうと意見を述べた。(Id. at 144:7-145:4.) 彼の意見ではこれらのエラーは実行中に起こると証言したが、(id. at 146:7-9)、彼はそのようなエラーがどのような率で起こるのか知らず、彼がそのようなエラーを観察したこともなかった(id. at 145:23-146:6, 185:8-25, 196:2-14)。また、ファーストエンコーダが動作しない原因となるエラーはHQが動作しない原因とはならない、なぜなら2つのエンコーダが異なったイニシャリゼーションテストを使用しているからであると証言した。(Id. at 146:17-147:9.) 再び、この分析はソースコードの調査に基づいていた;Dr. Polishは実行中にそれが起こったことを見たことはなく、彼自身がそれを再現することもなかった。(Id. at 185:1-186:5.) 他のどの証人も、HQレコーダの実行を観察したことを証言しておらず、そのような実行のいかなる具体的な証拠もない。印象的なのは、Lucentの専門家証人が彼の理論をテストしたかどうかを尋ねられたとき、彼は否定的に答えたことである。彼は本件訴訟における他の特許の080特許のクレームに属するとしてファーストエンコーダの機能をテストするために成功裏に使用したデバッガ(id. at 159:16-160:2)を利用できるにもかかわらず、彼は同じデバッガをファーストエンコーダの不動作またはHQエンコーダの動作のテストに決して使用しようしなかった。(id. at 197:7-13). さらに、彼は、ファーストエンコーダが動作せずHQエンコーダをトリガするであろうエラーをテストするために、ある装置を製作することができたことを認めたにもかかわらず、彼はそれを行わないことを選択した。(Id. at 197:14-19.) 彼がHQエンコーダが働くようにどのように取り組んだのかを陪審に説明できるかを聞かれた時に、彼はできないと答えた。(Id. at 198:6-17; see also id. at 199:4-5(「私がそれのやり方を言えるとすれば、私は自分でそれをやっていました。」)

 要するに、Lucentは、HQエンコーダがたぶん動作することができることをせいぜい証明する状況証拠を提出しに過ぎない。Lucentが状況証拠あるいは他の方法により証明することに失敗したのは、HQが実際に動作しクレームされた方法を実行していることである[7]。この証拠は方法特許の侵害を証明するためには法律問題として不十分である。Lucentは「HQエンコーダが動作中にごく普通に起こる通常の条件の結果として引き起こされるという証拠で記録は満ちあふれている」と論じるが、CAFCがE-Pass Technologies, Inc. v. 3Com Corp., 473 F.3d 1213, 1223 (Fed. Cir. 2007)で書き留めたように、それが通常であり、ごく普通であるなら、LucentはHQエンコーダが動作する少なくとも1例の証拠を提出することが間違いなくできたであろう。

 本件の状況はLucentが頼るMoleculonの状況とは異なる。その事件では、ユーザがインストラクションマニュアルに従えば、ルービックキューブパズルは解くことができたことに疑いはなかった。証人の証言が、パズルを解くインストラクションの状況証拠に加えて、多くの人々が、訴えられたルービックキューブを解くのを観察していたことを立証した。Moleculon Research Corp. v. CBS, Inc., 594 F. Supp. 1420, 1440 (D.C. Del. 1984), overruled by Moleculon, 793 F.2d 1261 (Fed. Cir.1986). 対照的に本件では、ソースコードに従えばHQエンコーダはそれが動作する時にクレームされた方法を侵害し得るが、それが一度でも動作したかどうかに関しては、証拠は不確実および推測を証明するのみである。E-Pass, 473 F.3d at 1222における状況のように、その事件では訴えられたパーソナルデジタルアシスタント(PDA)がクレームされた方法の他に多くの機能を実行しているが、本件において、Lucentの専門家証人に従えってさえ、Windows Media Playerが動作しているコンピュータは数千のインストラクションと共に数ダースのプロセスが動作しており、「バグがあるかもしれない。バグがないかもしれない。起こりうる全ての種類のものがあり得る。」のである。(Trial Tr. vol. III, 183:20-184:5.)[8]

 これだけの量の推測を前提として考え、本裁判所はLucentが457特許の方法クレームがHQレコーダによって実行されていることを、直接または状況証拠の優越によって、証明する責任を満たすことに失敗したと認定する。それゆえ、本裁判所は、HQエンコーダは457特許のクレーム1および5を侵害しないという法律問題としての判決を認める。二者択一的に、本裁判所はこれらのクレームの侵害に関する新しいトライアルを認める。Lucentまたはその専門家証人によるファーストエンコーダの不動作および/またはHQエンコーダの実行を証明する試みの欠如ばかりでなく、推測と不確実なことが多いこと基づき、本裁判所は陪審による侵害の評決は証拠の明確な秤量に反していると認定する。

 457特許の残りのクレームであるクレーム10はプロダクトバイプロセス・クレーム<product-by-process claim>である。このタイプのクレームを製品クレームとして扱うのかあるいはむしろ方法クレームのように扱うのかに関しては判例法は分かれている。 Scripps Clinic & Research Foundation v. Genentech, Inc., 927 F.2d 1565, 1583 (Fed. Cir. 1991)においては、CAFCの一つの合議体が方法による製品クレームは「クレーム内に明らかにされた方法によって準備された製品に限定されない」と判示している。1年後に、Atlantic Thermoplastics Co., Inc. v. Faytex Corp., 970 F.2d 834, 846 -847 (Fed. Cir. 1992)において、CAFCの他の合議体は「プロダクトバイプロセス・クレームにおける方法の条件は侵害を決定する際に限定として役割を果たす」と判示した。矛盾しているように見えるが、本裁判所は争点のクレームの文脈に基づき457特許に関連する問題を解決した。クレーム10は「…のステップからなるプロセスに従って作成された蓄積媒体」と読め、その後、そのプロセスを定義するいくつかのステップをリストしている。プロセスのステップを無視すれば、クレームされた製品としては「蓄積媒体」(蓄積媒体は457特許に関する技術において知られているから擁護できない地位)だけが残るだろう。したがって、本裁判所はクレーム10はこれらのプロセスのステップによって限定されると結論し、陪審に「プロダクトバイプロセス・クレームは製品を作成するために使用されたプロセスの1またはそれ以上のステップでさらに定義された製品または『装置』である」と説示した。(Court’s Jury Instruction No. 33; docket no. 1168.)

 Lucentは、MicrosoftのWindows Media Playerがロードされたコンピュータはこれらのプロセスのステップを実行できるから、このクレームの侵害に関する陪審の評決は十分な証拠によって支持されていると論じる。一般に、製品クレームを侵害するためには、訴えられた装置が侵害できることだけが必要とされるが、この決定はクレームの文言に依存し得る。Intel Corp. v. U.S. Intern. Trade Com'n, 946 F.2d 821, 832 (Fed. Cir. 1991)においては、「選択手段の能力を持ったプログラム」および「前記交互アドレッシングモードが選択された場合にそれに従って」というフレーズが使用されているが、裁判所は、そのような実際の動作の証明が必要であるのではなく、装置がそのような方法で動作できることが必要なだけであると結論した。対照的に、Cross Medical Products, Inc. v. Medtronic Sofamor Danek, Inc., 424 F.3d 1293, 1310-12 (Fed. Cir. 2005)においては、裁判所は用語「活動的に結合された」を、訴えられた装置が実際に結合されている場合だけ侵害であり、結合「できる」場合は侵害ではないというような構造的限定と認定した。

 本件では、クレームの文言はCross Medicalにおけるものと類似している。クレーム10は用語「からなるプロセスに従って作成された」を使用しており、このクレームを侵害するためには、このプロセスを実行できる以外の他の方法で作成されたものではなく、訴えられた蓄積媒体がこのプロセスを使用して作成されていなければならないことを示している。誰かがクレームされたプロセスで何かを作成した証拠はトライアルにおいて全く提出されなかった[9]。Lucentの専門家証人が認めるように、彼はHQエンコーダによって作成された(mp3ファイルを有するCDのような)蓄積媒体製品を作成することは言うまでもなく、HQエンコーダを動作させる試みさえしていなかった。それゆえ、本裁判所は、法律問題として、トライアルにおいて提出された証拠はクレーム10の侵害の認定を支持することができないと認定する。クレーム10の非侵害の法律問題としての判決を求めるMicrosoftの申立は認められる

 二者択一的に、本裁判所は、クレーム10の侵害に関する新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立も認める。新しいトライアルは二つの根拠から認められる。第一に、クレーム1および5のために認定したのと同じ理由により、証拠の明確な秤量は陪審によるクレーム10の侵害の認定を支持しない。第二に、本裁判所は、陪審説示の中に矛盾があり、陪審に誤った基準を提供したかもしれないことを認定する。本裁判所の陪審説示No. 32は「プロダクトバイプロセス・クレームの文言侵害のためには、あなたがたは訴えられた製品を作成するときにプロセスの各ステップが文言通り実行されたことを認定しなければならない」と陪審に正しく説示したが、本裁判所の陪審説示No. 33は「クレームに列挙されたプロセスのステップを使用することができるように訴えられた製品が作成された場合は、訴えられた製品はプロダクトバイプロセス・クレームを侵害すると認定することができる」と説示した。(See 本裁判所の陪審説示; docket no. 1168.) それゆえ、陪審は後者の説示で示された誤った基準に基づいてクレーム10の侵害の問題を決定したかもしれない。

 B.間接侵害
 「侵害の積極的誘因または寄与侵害の責任は直接侵害の存在に依存している。」Joy Technologies, Inc. v. Flakt, Inc., 6 F.3d 770, 774 (Fed. Cir. 1993). 本裁判所の直接侵害はないという決定に照らして、それゆえ、本裁判所は法律問題としての判決、二者択一的に、間接侵害に関する新しいトライアルを認める。Microsoftはその申立において他の根拠を提起しているが、本裁判所はここではそれらを扱う必要がないので、扱わない。

V.080特許の侵害
 この中で分析したように、Lucentは080特許の侵害を訴える当事者適格を欠いており、Microsoftは訴えられたエンコーダに関して080を実施するライセンスをFraunhoferとの契約を通して有しているが、本裁判所は二者択一的にこの中で、080特許についての法律問題としての判決および侵害の争点に関する新しいトライアルならびに無効および損害額のMicrosoftの申立に関しても判示する。

 A.クレーム解釈
 Microsoftは、080特許のクレーム1の要素(c)の本裁判所のクレーム解釈は広すぎ、それゆえ、新しいトライアルが正当化できると主張する。要素(c)は次のように読める:
(c)レートループプロセッサを反復して使用して一組の周波数係数のエンコードに使用するための一組の量子ステップサイズ係数を決定し、前記一組の量子ステップサイズ係数はマスキング閾値および絶対聴覚閾値を使用して決定される;
Microsoftは、本裁判所のクレーム解釈はマスキング閾値と絶対聴覚閾値を「インプット」としてレートループに結合することを含むと論じる。Microsoftは、出願経過がレートループ自体の中で両方の閾値の「使用」を要求していると論じる。

 この争点はMarkmanヒアリングにおいて検討され、本裁判所はクレームはレートループ内での両方の閾値の使用に限定されないと判示した。Microsoftはこの点に関して新しい主張を何ら提出していない。Microsoftは本件におけるこの争点は控訴審において維持すると単に断言するだけである。それゆえ、本裁判所は、この根拠に基づき新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立を否定する

 B.直接侵害
 Microsoftは、訴えられた製品のpbThresholdQuietが080特許クレームにおける絶対聴覚閾値(AHT)の本裁判所のクレーム解釈を満たすと陪審が結論したのは不十分な証拠によるものであるとぞんざいな方法で主張する。Microsoftは、Microsoftの専門家証人がpbThresholdQuietは本特許のAHTではないと正反対に証言したと主張する。しかしながら、Lucentは、pbThresholdQuietはAHTであるというLucent自身の専門家証人の証言を指摘する。さらに、LucentはMicrosoftの専門家証人の反対尋問を示し、そこでLucentはその専門家証人自身のレポートを彼を弾劾するために使用した;その専門家証人のレポートはpbThresholdQuietはAHTであると述べている。本裁判所は、陪審は侵害の認定を基礎づける十分な証拠を有していると認定する。

 また、Microsoftは、Dolby事件(Dolbyの技術に対する938特許の元の特許に関する訴訟)判決の参照を本裁判所が拒絶したことはMicrosoftの非侵害の証明能力を害していると主張する。Lucentの予備的な申立に関するヒアリングで、本裁判所はその事件において弾劾の目的のために証人または当事者によってなされた陳述を当事者らに使用することを許したにもかかわらず、本裁判所はDolbyにおける認定を伝聞だとして排除した。(Transcript in limine Hr’g, 113:7-9; 114:21-115:1, Jan. 3, 2007.)

 Microsoftは、この決定が誤りであることを示唆するであろう証拠規則に基づいて、伝聞に対する排除、免除または除外を申し出なかった。さらに、Microsoftは主にこの予備的な申立に反対して、その証拠は非侵害の直接証拠としてではなく、証人の故意および/または弾劾に関係していると主張した[10]。したがって、この排除は誤りではなく、Microsoftに不利益を与えることもない。080特許の直接侵害の争点に関する法律問題としての判決および新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立は否定される

 C.全ての訴えられたエンコーダによる寄与侵害
 Microsoftは、寄与侵害に関する陪審の認定は誤っており、Microsoft Corp. v. AT & T Corp., 127 S. Ct. 1746, 1750 (2007)における最近の最高裁の判示に照らして証拠の明確な秤量に反していると主張する。Microsoftは、特許法271(f)条に基づく外国における販売を扱ったAT&T事件の判示は、271(c)条に基づく国内における販売の侵害にも適用されるべきであると主張する。

 本裁判所はAT&T事件をそのように拡張的に解釈する理由を持たない。271(f)条に関する主要な問題の一つは、域外活動に関する合衆国特許法の効果である。「我々の特許法が国内的にのみ機能し、外国の活動に拡張されないという伝統的な理解は…特許は合衆国内における発明の排他的権利を与えるという特許法自体の中に埋め込まれている。」Id. at 1758 (internal quotations and citation omitted). この問題は271(c)条には影響を与えない。国内特許法は侵害の容易化および誘因をよりたやすく抑制しているが、271(f)条は合衆国の外で作成されるであろう結合のために供給される構成部分に限定されている。

 271(c)条の範囲を271(f)条に置かれた制限に限定する先例は存在しない。最高裁が特許法における潜在的な矛盾または抜け穴を改善するのを拒絶しそのような問題を議会が扱うために残したのとちょうど同じように、本件においても、本裁判所は「無形のもの」としてソフトウェアを提供することが271(c)条から免除されるかどうかは立法府が考慮するために残しておく。寄与侵害に基づく新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立は否定される

 D.Cyberlinkエンコーダによる間接侵害
 Microsoftは、Cyberlinkプラグインエンコーダによる080特許の寄与侵害および誘因侵害に関する陪審の評決について証拠の十分性を争う。寄与侵害に関して、Microsoftは、ぞんざいな方法で、Cyberlinkプラグインレコーダを備えるWindows Media Playerには実質的な非侵害使用があるから、Lucentは十分な証拠を提出できなかったと主張する。しかしながら、本裁判所は、記録の中にCyberlinkプラグインレコーダのいかなる他の使用の証拠も見出せない。CyberlinkプラグインエンコーダをWindows Media Player(それ自体多くの他の機能を有する装置)に単に詰め込んでも、そのエンコーダが侵害から隔離されることはない。Northern Telecom, Inc. v. Datapoint Corp., 908 F.2d 931, 945 (Fed. Cir. 1990)(特許された装置への追加的な特徴または特許された方法を実行する装置への機能の追加により直接侵害を免れることはない)[11]。したがって、Cyberlinkプラグインによる寄与侵害に関する法律問題としての判決および新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立は否定される

 誘因侵害に関してMicrosoftは、MicrosoftがCyberlink製品がどのように機能するのかを知っている証拠が存在せず、加えて、ウエブサイト以外の誘因の証拠はほとんどないか全くないから、明確な意図の要素が満たされていないと主張する。ウェブサイトに関しては、Microsoftがユーザに特徴の選択を提供するためにCyberlinkプラグインへのリンクでその製品を広告していることを示す証拠および証言が提出されていた;したがって、陪審はそのような広告は誘因のために十分な奨励および/または指示であると結論することができた。

 しかしながら、本裁判所は、MicrosoftがCyberlinkエンコーダが侵害装置であることを知っていることを示す十分な証拠はなかったと認定する。この争点に関してLucentによって指摘された証言は、Cyberlink CorporationからMicrosoftにソースコードは提供されず、バイナリコード(機械語)が提供されたことだけを証明するものである。(Trial Tr. vol. X, 26:22-27:4, Feb. 12, 2007.)  Lucentは、MicrosoftがCyberlinkプラグインが080特許を侵害していることをバイナリコードからいかにしてMicrosoftが知るべきであったのかを説明するいかなる証拠または証言も指摘していない。Cyberlinkの証人の証言によれば、mp3ファイルのエンコードに関するエンコーダの機能がMicrosoftで議論されたことはない。(Id. at 27:24-28:23.) それゆえ、Cyberlinkプラグインを有するWindows Media Playerに関係する誘因侵害に関して本裁判所は、Microsoftの援助または奨励が080特許の侵害を引き起こしたであろうことをMicrosoftが知ったまたは知っていたことを証明する証拠は不十分であると認定し;この争点に関する法律問題としての判決が認められる。二者択一的に、陪審の評決が証拠の明確な秤量に反していたから、本裁判所はこの争点に関して新しいトライアルを認める

VI.無効抗弁
 A.080特許の非新規性/自明性:OCF Paper
 Microsoftは、OCFペーパーにより080特許のクレーム4は新規性がなくおよび/または自明であるというMicrosoftの一応有利な事件を反駁する証拠をLucentは全く提出できなかったと主張する。しかしながら、Lucentが主張するように、陪審はその評決に達することができた。Microsoftが明確で説得力のある証拠により無効を証明できなかったまたは/およびLucentの専門家証人Jayantが十分な反駁証拠を提供した。

 Microsoftの専門家証人Dr. Brandenburgは、クレーム4(ミーンズプラスファンクション・クレーム)はクレーム1といくつかの要素でオーバーラップしていると証言した (Trial Tr. vol. VII, 88:16-89:2, Feb. 6, 2007)。このようなオーバーラップしている要素がクレーム1に関して詳細に分析された。(Id. at 78:19-87:4.) 対照的に、Brandenburgは、クレーム1における要素ではないクレーム4のミーンズプラスファンクション要素をぞんざいな方法で述べた。(Id. at 91:4-13.) 彼はこの要素の機能について証言したが、彼は対応する構造が従来技術中の見出すことができる部分を述べなかった。

 反駁証拠に関しては、Lucentの専門家証人Dr. Jayantが、クレーム1の要素(c)および(d)はOCF Paperの中に見出されず、これらのクレームの限定に到達するために他の技術と組み合わせることも自明ではないと証言した。(Trial Tr. vol. XI, 78:24-90:4, Feb 13, 2007.) 上述のように、これらのクレームの限定はクレーム4の限定とオーバーラップしており、それゆえ、両方のクレーム中に見つからないものがあるだろう。したがって、本裁判所は、OCF Paperが080特許に先行しておらずまたは自明ともしていないという陪審の認定を指示する十分な証拠が記録中に存在すると認定する。この争点に関して法律問題としての判決および新しいトライアルを求めるMicrosoft申立は否定される

 B.Low Bit Rate Paperが遅れているという証言がない
 Microsoftは、陪審はLow Bit Rate Paperの観点でも080特許は有効であると認定し得なかったと主張する。Microsoftは、Lucentはこの引用文献が遅れていると証言する証拠を提出していない<Lucent failed to provide any evidence to swear behind this reference>、それゆえ Low Bit Rate Paperは明確に従来技術であると主張する。

 このpaperの従来技術としてのステータスに関して、Microsoftは、080特許の発明日を立証する全ての証拠は発明者Johnstonの確証されていない証言からくると主張する。応答で、LucentはJohnstonによる技術的なメモと刊行物の補強証拠を指摘する[12]。しかしながら、補強問題であるにもかかわらず、上述のように、Johnstonの証言および支持する文献は080特許の全てのクレームのために1988の優先日を支持することはできない。特に、ミーンズプラスファンクション限定のための特定の対応する構造を含むクレーム4のために、938特許自体より以前の発明日を立証していない。それゆえ、938特許より前に刊行されたLow Bit Rate Paperは少なくともクレーム4に対して従来技術と考えることができる。

 そうであっても、陪審はこの引用文献により080特許が新規性がないとだけ認定できたというMicrosoftの主張は問題に遭遇する。第一に、Lucentが指摘するように、Microsoftは明確で説得力のある証拠によって新規性がないことを証明する立証責任を負っている。Microsoftのこの点に関する唯一の証人Dr. Strawnは、クレーム1および2に関して意見を述べておらず、クレーム4に関して、このクレームの各要素がこの引用文献に記載されていることを示す図に単に「印をつける」断固たる証言をしただけである[13]。(Trial Tr. vol. VIII, 200:3 - 205:4, Feb. 7, 2007.) この証言だけでは実質的な証拠が陪審に提供されたと考えることはできない。See Koito Mfg. Co., Ltd. v. Turn-Key-Tech, LLC, 381 F.3d 1142, 1152 (Fed. Cir. 2004)(「新規性がないことに関する証言は…各クレーム要素を識別し、クレーム要素の証人の解釈を述べ、どのように各クレーム要素が従来技術文献の中に開示されているのかを詳細に説明しなければならない。証言は単に断固たるものである場合は十分ではない。」(quoting Schumer v. Lab. Computer Sys., Inc., 308 F.3d 1304, 1315-16 (Fed. Cir.2002))). したがって、本裁判所は、陪審の評決は実質的な証拠によって支持されていると認定し、この根拠に基づき法律問題としての判決を求めるMicrosoftの申立は否定される

 C.Mr. Johnstonの証言の排除
 MicrosoftはLucentの080特許クレームの解釈は広すぎ特許を無効とするというJohnstonの証言を聞き出すことを望んだが、許されなかった。Microsoftはこの排除がMicrosoftに対して実質的に不利益な結果を与えたと主張する。

 本裁判所は、この排除は誤りではなく、いかなる不利益な結果も与えていないと認定する。第一に、Johnstonの証言の範囲に関して、トライアルの前の予備的ヒアリングにおける申立で、Microsoftは本裁判所に対して、Johnstonは無効の意見は述べず、再発行出願に関連する状況のような問題に関する事実証人として証言すると陳述した。(Transcript in limine Hr’g, 26:23-27:12, Jan 3. 2007.) Microsoftがトライアルで追加的な証言を聞き出すことを望むのであれば、特に本裁判所に対する先の陳述に照らして、それを適切な時期に提起すべきであった。

 第二に、Microsoftは発明者の証言を特許を無効にするために使用できると主張するが、この争点に関してJohnstonが可能な証言の妥当性はいくらよく見ても疑わしい。クレーム解釈に関する発明者の主観的な意見にはもはや妥当性はない。「一度特許が発行されると、クレームと発明の詳細な説明はその分野の技術者の観点から客観的に見られなければならない。」Solomon v. Kimberly-Clark Corp., 216 F.3d 1372, 1380 (Fed. Cir. 2000). 本件においては、Johnstonは専門家証人として指名されておらず、それゆえ無効に関する意見を述べることはできない。さらに、Johnstonが本件における結果を変え得ることを述べるだろうという事実をMicrosoftは示していない。

 第三に、予備的ヒアリングおよびトライアルのサイドバーにおける申立の中で述べたようにJohnstonの証言の最初の目的は、特許または再発行特許を取得する時の不公正行為に関連し得る再発行出願の状況に関する事実を聞き出すことであった。(Transcript in limine Hr’g, 26:23- 27:12, Jan 3. 2007; Trial Tr. vol. VI, 73:8-79:13, Feb. 5, 2007.) 本裁判所は、トライアルでこの証言を許し、それゆえMicrosoftはこの争点に関していかなる不利益も被っていない。(Trial Tr. vol. VI, 83:13-84:5, Feb. 5, 2007.) したがって、この根拠に基づく新しいトライアルの申立は否定される

 D.KSR Intern. Co. v. Teleflex Inc.の衝撃
 KSR Intern. Co. v. Teleflex Inc., 127 S. Ct. 1727 (2007)における最近の合衆国最高裁の判示に基づいて、Microsoftは自明性に関する法律問題としての判決および/または新しいトライアルを求める申立を行っている[14]。自明性に関しトライアルで提出された証拠および陪審に与えられた説示を考慮し、本裁判所は法律問題としての判決も新しいトライアルも是認しないと認定する。トライアルで用いられた基準はKSRと一致しており、トライアルの時点でKSRの判示が利用できたとしたら自明性の分析が異なって行われたであろうことをMicrosoftは本裁判所に説得していない。

 本裁判所の陪審に対する説示は組み合わせることの明瞭な教示または示唆を求めてはいない:
従来技術の様々なもののなかに記載されたものを組み合わせるかどうかを決定する場合、技術者が特許クレームに含まれた組み合わせを行うための動機付けまたは示唆があるかないかを考慮することができる。異なった引用文献の教示を組み合わせるための動機付けまたは示唆は引用文献またはその分野の技術者に利用可能な一般的な知識の中に明瞭にまたは暗黙に見出されることができる
(本裁判所の陪審説示No. 51; docket no.1168 (emphasis added)). Microsoftは、説示は組み合わせるための示唆または動機付けが必要とされないことをはっきりと述べるべきであったと主張するが、KSRは自明性の分析からこれらの考慮を完全に取り除いてはいない:「いくつかの要素から構成される特許は、それぞれの要素が、独立して、従来技術において知られていることを単に証明することによっては自明が証明されることはない。」KSR, 127 S. Ct. at 1741. 硬直した公式である必要も、「形式主義的概念」である必要もないが、組み合わせの動機付けは依然として重要な考慮すべき事項である:
しばしば、裁判所は、多数の特許の相互に関係づけれた教示;設計コミュニティに知られたまたはマーケットにおいて存在する需要の影響;およびその分野における通常の技術者が有するバックグラウンドの知識を見ることが必要となるだろう、すべては、知られた要素を争点の特許によってクレームされたやり方で組み合わせるはっきりした理由があるかどうかを決定するためである。
Id. at 1740 -1741. また、KSRはGraham v. John Deere Co. of Kansas City, 383 U.S. 1, 17-18 (1966)で提示されたよく知られた原則を再び是認している。本件における陪審説示はGraham要素を反映したものであり、組み合わせるための硬直したまたは明白な教示、示唆または動機付けを要求するものではない。それゆえ、陪審はKSRと一致する説示に基づいて自明性の問題を検討した。

 Dr. Jayant(Lucentの専門家証人)の証言はKSRと矛盾するというMicrosoftの主張は根拠がない。Jayantは、OCF paper内の心理音響学に関する著書の引用がその分野の通常の技術者を二つを組み合わせて080特許発明とするように導いたと意見を述べたMicrosoftの専門家証人の結論と意見が異なると述べた:
…OCF paperの中で読者が知ることができることは心理音響学において存在するこの本があるということです。そして、それ自体は、その読者がその本を詳しく検討して、その本の中の一つの特定の部分を見て、実際に絶対閾値を詳しく検討することなどや、いうまでもなく、全てを一緒にして080特許のそのクレームの発明を見つけることを教示してることを意味するわけではありません。
(Trial Tr. vol. XI, 89:22-90:4, Feb. 13, 2007.) この証言は、以前に知られた従来技術からの要素を単に組み合わせる以上のものを要求するKSRと矛盾していない。KSR, 127 S. Ct. at 1741. あと知恵の使用が容認できないというJayantの言及もKSRと矛盾していない。「事実認定者は、もちろん、あと知恵の先入観による歪曲に気づくべきであり、事後の動機付けに頼る主張に用心深くなければならない。」Id. at 1742

 最後に、本裁判所は、KSRの「広い含蓄」が新しい従来技術の発見とサーチを再開することを保証しているとは考えていない。Microsoftは本裁判所がグループ4および5において発見の再開を許したと指摘するが、状況が本件とは異なる。グループ4および5はKSRの判示前にトライアルを始めていなかったが、グループ2のトライアルは終了していた。さらに、KSR判決以降の自明性に関する地裁およびCAFCの審理はMicrosoftが願う激変を支持していない[15]。要するに、Microsoftは、080特許に関する自明性が再審理されるべきという点または080特許を非自明とする陪審の評決は十分な証拠で支持されていないという点についての価値のある理由を提示していない。したがって、自明性に関する法律問題としての判決および新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立は否定される

 457特許に関しては、Microsoftは自明性の抗弁をサマリ判決またはトライアルで追求しなかった[16]。Microsoftはこの抗弁を追求しない戦術的な選択をした;MicrosoftはKSRによって変更された硬直したTSMテストまたはいくつかの他の要素のために、その抗弁が放棄されたことは説明していない。KSRが既に決定されていたとすれば異なった戦術を選択できたかもしれないという理由だけで、Microsoftはもの一つの「禁断の実の一噛み」をすべきではない。判例法は常に動いているターゲットであり、当事者は戦術的決定を行うときにそれを心に留めておかなければならない。したがって、457特許に関するこれらの根拠に基づく新しいトライアルを求める申立は否定される

VII.損害額
 制定法により、侵害の損害額は「侵害を補償するに適切な賠償額、ただし、侵害者による発明の使用に対する合理的なロイヤリティに裁判所が決定する利益及び費用を加算した額を下らない」額に設定される。陪審による損害額の裁定は「その金額が甚だしく過大または巨大である場合、証拠によって支持されないことが明らかである場合、または推測もしくは当てずっぽうにのみ基づく場合でなければ、維持されなければならない。」Monsanto Co. v. Ralph, 382 F.3d 1374, 1383 (Fed. Cir. 2004) (quoting Brooktree Corp. v. Advanced Micro Devices, Inc., 977 F.2d 1555, 1580 (Fed. Cir.1992)).

 Microsoftは陪審の損害額の評決は法律問題として覆されるべきであるおよび/または新しいトライアルが認められるべきであると主張するいくつかの根拠を明らかにしている:(1)合理的なロイヤリティを計算するために使用されたロイヤリティレートよびロイヤリティベース;(2)陪審の計算の一貫性の欠如;(3)Microsoft Corp. v. AT & T Corp., 127 S. Ct. 1746 (2007)における最近の最高裁の判示の衝撃;および(4)陪審のおける感情の揺れおよび偏見。以下にこれらそれぞれについて検討する。

 A.ロイヤリティベース−全体マーケット価値ルールの適用
 Lucentは特許のための合理的ロイヤリティに基づいて損害モデルを提出した;提出されたモデルは関連する年月のパソコンの平均価格に適用される0.5%ロイヤリティレートである。今、Microsoftは、Lucentがコンピュータ全体のコストに基づくロイヤリティの根拠となす全体マーケット価値ルールの適用を支持する十分な証拠はないと主張する。

 全体マーケット価値ルールは、特許および非特許構成部分が「望ましい最終製品または結果を生産するために」一つの機能ユニットとして一緒に販売された場合に適用可能である。Rite-Hite Corp. v. Kelley Co., Inc., 56 F.3d 1538, 1550 (Fed. Cir. 1995). さらに、その特許構成部分は「顧客の需要の基礎となる」または「その構成部分部品の価値を実質的に作り出す」ものでなければならない。Id. at 1549.

 本件における全体マーケット価値ルールの適用には二つの主要な問題がある。第一は、(オペレーティングシステム、Windows Media Player、MP3コーデックまたはいくつかの他の「ユニット」ではなく)コンピュータのコストと、特許技術の顧客の需要または価値の間の関連を立証する証拠の提出がないことである。第二は、多分よりやっかいな問題であるが、特許された特徴自体が何かの顧客の需要またはその製品の価値を作り出していることの立証がないことである。

 訴えられた製品はWindows Media Playerが提供するHQおよびファーストエンコーダである。Lucentはトライアルにおいて、これらの特徴の商業的必要性および/または望ましさがコンピュータに必要とされることを立証できていない。その代わり、LucentはパソコンがMP3の能力を有することが望ましいことをせいぜい立証しただけである。Microsoftのソフトウェア設計技術者Thobias Jonesは、MP3はWindows Media Playerを望むユーザに人気のある要求であると証言した。(Trial Tr. vol. IV, 14:1-13, Feb. 1, 2007.) Dellの代表者Leonard Zwikは、Windows Media Playerはコンピュータのオペレーティングシステムに統合された機能であり、DellはWindows Media PlayerなしのWindows operating systemを販売することはできないだろうと証言した。(Id. at 72:5-73:1.) また、彼はWindows Media Playerを欠くWindowsのバージョン(XP-N)の顧客需要はないと証言した。(Id. 73:2-74:10.) Microsoft Windows Digital Media Divisionのジェネラルマネージャである証人David FesterはMP3はユーザをWindows Media Playerに引きつける特徴であると証言した。(Id. at 85:23-86:7). 最後に、Windows Media Playerの開発の責任を有するMicrosoftの被雇用者Geoff HarrisはMP3エンコード能力に対してマーケットニーズおよび顧客の需要があると証言した。(Id. at 112:16-113:2.) これらの証拠の合計はせいぜいMP3の能力を有するWindows Media Playerを含むオペレーティングシステムのマーケット需要を立証するだけである。コンピュータに対する需要がMicrosoftのWindows Media Playerおよび/またはMP3技術に基づいていることは立証されていない。

 しかしながら、さらにより問題となるのは、457および/または080特許のクレームで明らかにされた特許された特徴が顧客の需要および/または販売された製品の実質的価値の基礎となっていることを示す証拠が欠如していることである。重要なことは、457特許も080特許もMP3の能力自体は含んではいないことである。むしろ、各特許はMP3の能力の特定の特徴に関係している[17]。それゆえ、全体マーケット価値ルールを適用するためには、これらの特徴が顧客の需要の基礎となっているまたは製品の価値を実質的に作り出していることを証拠が証明しなければならない。See e.g., Fonar Corp. v. General Elec. Co., 107 F.3d 1543, 1549, 1553 (Fed. Cir. 1997)(その特許においてクレームされたマルチアングル傾斜(MAO)イメージングの特徴が、侵害を認定された装置の販売の特徴として強調された、それゆえ、合理的ロイヤリティは装置全体のコストに基づくのが正しい。); Bose Corp. v. JBL, Inc., 274 F.3d 1354, 1361 (Fed. Cir. 2001)(特許された特徴が、望ましい聞き取り性能を提供するために他の構成部分と一つのユニットとして機能し、特許された特徴が、ラウドスピーカの性能を向上させ、かつ向上した性能が顧客の需要の基礎となっている場合は、ラウドスピーカ全体が適切なロイヤリティベースである。); Tec Air, Inc. v. Denso Mfg. Michigan Inc., 192 F.3d 1353, 1362 (Fed. Cir. 1999)(組立体全体の性能が顧客にとって重要であり、ファンがその組立体に必要とされ、ファンをバランスさせる特許された方法が組立体の機能に決定的であり、かつ組立体に対する顧客の需要が重要である場合、損害額はモータ、ラジエータおよび凝縮器の組立体全体に基づく。); compare e.g., Imonex Services, Inc. v. W.H. Munzprufer Dietmar Trenner GMBH, 408 F.3d 1374, 1380 (Fed. Cir. 2005)(どのコインが装置に入ったのかを識別する特許された特徴はランドリーマシン全体が顧客需要の基礎であることが証明されなかった場合、全体マーケットルールのための証拠は不十分である); Medtronic, Inc. v. Catalyst Research Corp., 547 F. Supp. 401, 414 (D.C. Minn. 1982)(ペースメーカーの価値が実質的に電池の特許された特徴によらない場合、ペースメーカー全体のコストはロイヤリティベースとはならない。)

 本件において、本裁判所は、457または080特許のどちらかの特許された特徴がMP3に決定的であること、またはそれらが顧客の需要もしくはMP3の価値の基礎であることを立証する証拠はトライアルで全く提示されなかったと認定する、コンピュータ全体に決定的であるもしくは価値を提供した点については言うまでもない。トライアルの記録からLucentが引用した証拠はMP3の能力が全体として商業的に重要な特徴であることを証明するだけである。Lucentの専門家証人Dr. Jayantに従えば、MP3技術は多くのソースに起源を有し、MP3標準はオーディオ圧縮の多く面を特徴付ける。(Trial Tr. vol. II, 121:11-123-22, Jan 30, 2007.) Jayantは彼がMP3において重要であると考えるものを指摘したが、彼が確認したキーテクノロジーは(異なった製造業者のデコーダがオーディオ信号を解釈しプレイバックできるようにする)ビットストリームシンタックスに関係する; 彼は080特許または457特許の発明のいずれもがMP3に決定的なものであるとはしなかった[18]。(Id. at 123:2-22.) 加えて、これらの特許発明がMP3標準と共に使用され得るが、それらはMP3標準に要求されておらず、MP3標準を実行するために決定的ではない。

 最後に、全体マーケット価値ルールの適用がないとしても、Microsoftは参加人であり、DellとGatewayの侵害のそれぞれに責任を有するから、ロイヤリティベースとしてコンピュータを使用することは正しいというLucentの主張は誤りである。間接侵害者は侵害する販売に帰する全ての損害額に責任を有し得るが、Water Tech., 850 F.2d 660, 669 (Fed. Cir. 1988); Glenayre v. Jackson, 443 F.3d 851 (Fed. Cir. 2006)、DellとGatewayが販売したという理由だけで、自動的にコンピュータがロイヤリティベースとして選定されるわけではない。全体マーケット価値ルールの適用に対する同様な根拠が、LucentがDellおよびGatewayと直接係争中であったとしても、必要とされる。この核心がないのであるから、Lucentは特許された技術自体の価値に対する損害額を取り戻せるだけである[19]

 要するに、本裁判所は、特許された特徴とコンピュータ全体の価値の間の要求される核心を立証する証拠は不十分であると認定する、それゆえ、陪審が全体マーケット価値ルールをコンピュータに適用したのは法律問題として支持されない。この根拠に基づき、損害額の裁定に関する法律問題としての判決を求めるMicrosoftの申立は認められる。トライアルにおける証拠は適切なロイヤリティベース(ベースであろうものおよびその額の両方)を立証する十分な証拠を欠いているから、本裁判所は損害額を決定するするための新しいトライアルも認める

 B.ロイヤリティレート
 Microsoftは、損害額の裁定において陪審によって利用された0.5%のロイヤリティレートの証拠は不十分であると主張する。この中で説明されたように、合理的なロイヤリティ計算において使用されたベースは再考されなければならないから、これは選択に影響を及ぼしそうであり、それゆえロイヤリティレートの再考が必要とされる。しかしながら、本裁判所はここで、ロイヤリティレートに特に関係する問題のいくつかを考える。

 Georgia Pacificに基づき、仮想的交渉が本件特許により受け取るロイヤリティと同等の技術のライセンスを考えることができる。Georgia-Pacific Corp. v. U.S. Plywood Corp., 318 F. Supp. 1116, 1120 (D.C.N.Y. 1970). 当事者らは、これらの要素に関して異なった考え方を提示した。Lucentは、457および080特許のためになされる一つのライセンス、IBMのハードウェア技術をライセンスする経験で得たLucentの専門の知識、およびMicrosoftによってなされた一つのロイヤリティ関連の契約に焦点を合わせた。Microsoftの証拠は、MP3技術に関してSISVEL(Societa Italiana Per Lo Sviluppo Dell Electtronica)と行った最近の複数のライセンス、HQおよびファーストエンコーダソフトウェアのためのFraunhoferとのMicrosoftの契約、および他のソフトウェア技術を他の会社と交換するMicrosoftの契約に集中している。それぞれの考え方は長所と短所を有しており、まだ、全部の結果でもこの技術に適用可能なロイヤリティを設定する陪審および当事者らに極めて少しのガイダンスしか提供していない。

  本件技術のLucentのライセンスに関しては、ロイヤリティベースのライセンスの一つの例にすぎず(PX 1532; Trial Tr. vol. IV, 161:1-162:8, 163:8-14, Feb. 1, 2007)、これは本件に関連するであろうよりも遙かに小さなスケールでなされたものである[20]。See Unisplay, S.A. v. American Electronic Sign Co., Inc., 69 F.3d 512, 519 (Fed. Cir. 1995) (ライセンシングの提案および契約の証拠は、ライセンスのスケールが同等ではないため、証拠とはなるが、十分ではない。)。Lucentの専門家証人Roger Smithは、Lucentの「最良ライセンシングプラックティス」文書は販売された製品に課される1−5%ロイヤリティレートを明記していると証言した。(Trial Tr. vol. IV,155:20-156:9, Feb. 1, 2007.) 彼は、LucentがMPEGおよびオーディオスタンダード特許を0.5%でライセンスする意図を有することを示す内部的なLucent文書についても証言した。(Id. at 156:22 - 157:4, 157:25-158:19.) これらのレートがかつて実行され、確立したレートと考えることができるかどうかは記録上明らかではない。See Trell v. Marlee Electronics Corp., 912 F.2d 1443, 1446 (Fed. Cir. 1990)(「ロイヤリティが確立されるためには、その発明を使用する理由がある者が一般的に納得して従っていることを示すようなかなりの人によって支払われなければならない。」); Hanson v. Alpine Valley Ski Area, Inc., 718 F.2d 1075, 1078 (Fed. Cir. 1983)(実際に完了したライセンスなしの「単なるライセンスの提案」はその技術に対して「確立された」ロイヤリティレートを証明するには十分ではない)。

 Smithは、IBM製品を使用するための1%ロイヤリティはコンピュータ産業における標準であるとも証言した。しかしながら、そのようなライセンス(see e.g., PX1560)はハードウェアライセンスであり、ソフトウェアまたは本件製品に相当するソフトウェアの特徴に対するライセンスではない。IBMのハードウェアライセンスの他に、Smithはある論文(PX 1505)で明らかにされた産業標準に言及したが、これもコンピュータハードウェアに対するロイヤリティの調査である;その論文は、本件で扱われるMP3に関連することは言うまでもなく、ソフトウェア産業を扱っていない。Smithはなぜ同じロイヤリティレートが本件における技術のライセンシングに適用されるのかは説明しなかった。

 LucentはMicrosoftと他の会社の契約に基づくロイヤリティレートの一例も有していた;Microsoft-Stac契約が1−2%ロイヤリティ関連契約の一例としてSmithによって提示された。(Id. at 174:2-9; PX1534.) Microsoftの契約のほとんどは一時金支払いのためのものであり(see e.g., Trial Tr. vol. IV, 170:11-20, 172:5-11, and 172:3-7, Feb. 1, 2007)、Smithによって特許ライセンスよりも制限されたソフトウェアライセンスとして分類された。(id. at 168:16-169:13).

 他方、MicrosoftはMP3技術に関連する2組の契約を提出した。1組は正に本件侵害において争点となっているソフトウェアコードに対するMicrosoftとFraunhoferでなされた二つの契約から構成される。Microsoftは総額1600万ドルを支払った。(PX34, PX36.) Lucentの専門家証人は、これらの契約はライセンスされたコードを使用するために必要最小限の特許だけに伴うソフトウェア契約であるとして酷評した。(Trial Tr. vol. V, 6:23-7:16, Feb. 2, 2007.) その契約はライセンスで与えられたソースおよびオブジェクトコードから離れた技術に対してFraunhoferの特許を使用する権利を許諾していなかった。本件における仮想的交渉は特定のソフトウェアコードに対する特許ライセンスに限定される必要はない。See Trell v. Marlee Electronics Corp., 912 F.2d 1443, 1447 (Fed. Cir. 1990)(「特定の料金は、その料金のそのライセンスに対してその特許権者によって提供された料金が被告が計上した料金に対応していないかぎり、損害額の正しい尺度とはならない。」(quoting Bandag, Inc. v. Gerrard Tire Co., Inc., 704 F.2d 1578, 1582 (Fed. Cir.1983)))。

 第二の契約は、オーディオコーディングの一群の特許権に関連してMicrosoft、Audi MPEGおよびSISVEL (Societa Italiana Per Lo Sviluppo Dell Electtronica)の間でなされたものである。(DX 6715.) ロイヤリティはソフトウェア当たり0.30ドル、最大562万5000ドルである。(Id. § 4.02.) この契約の仮想的交渉への関連性は、SISVELの契約が本件トライアルが始まる何ヶ月か前でしかない2006年11月に行われたから、疑わしい。See Panduit Corp. v. Stahlin Bros. Fibre Works, Inc., 575 F.2d 1152, 1158 (Fed. Cir.1978)(仮想的交渉は侵害日のほんの少し前になされた)。

 要するに、合理的なロイヤリティレートを基礎付ける証拠に欠けていたというほどではないが、証拠は限定されたガイダンスを提供しただけである。本裁判所は、合理的な陪審が評決用紙に記載された0.5%ロイヤリティレートに到達できた証拠が十分ではないと明確に結論することはできない、そのようなもとのとして、この根拠に基づく法律問題としての判決を求めるMicrosoftの申立は否定される。しかしながら、本裁判所は新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立を認める。本裁判所は、陪審の評決が証拠の明確な秤量に反していると認定する;多数のライセンス契約が証拠に含まれているが、0.5%のレンジにおけるロイヤリティレートを支持する証拠の大部分は本件の争点の技術、仮想的交渉の適切な日、および/または当事者ら間で交渉されるであろうライセンスの範囲に対する十分な関連性を欠いている。さらに、ロイヤリティベースが再度決定されなければならないから、それに依存するロイヤリティレートも再検討されなければならない。

 C.評決の矛盾
 陪審は各特許の侵害に対して7億6900万ドルを裁定した。特別評決用紙に従い、陪審は0.5%ロイヤリティレートを使用した。Microsoftは、陪審の評決はトライアルで提出された証拠と矛盾していると主張する;コンピュータの平均販売価格が1128ドル(see PX3134)であるとすれば、0.5%ロイヤリティはコンピュータ当たり5.64ドルとなる。HQエンコーダを備えて販売された1億3050万ユニットを適用すると、総額は457特許に対して約7億3600万ドルであるべきであり;080特許に対する2億7200万ユニットに適用すると、この特許に対して15億3000万ドルとなる。(See DX6099.) 二つの特許に対する損害額を加算すると22億6900万ドルの陪審評決となったであろう。

 陪審は、計算において考慮する侵害ユニット数を評決用紙上で伝えることを要求されなかった。さらに、陪審がMicrosoftの論理に従ったかどうか、または他の要素および/またはこの簡単な計算の調整に基づく合理的なロイヤリティに達することを選択したかどうかはわからない。他のライセンスに関連する過度の支払および総額は、当事者らの損害額モデルの要約スライドの他にも、証拠中に存在した。陪審が決定を行う過程の「ブラックボックス」は見ることができないから、本裁判所は陪審の評決が十分な証拠と矛盾するまたは支持されていないということはできない。さらに、いくつかの状況においては裁判所による調整のように損害額評決を合理化することが許され得るかもしれないが、本件における損害額評決に影響を及ぼす他の争点がこの考慮を非現実的なものとする。したがって、本裁判所はこの根拠に基づく法律問題としての判決および新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立を否定する

 D.Microsoft Corp. v. AT & TCorp.における最高裁判示の衝撃
 Microsoftは、Windows Media Playerの外国の販売が本件における損害額評決に含まれているから、15億3000万ドルの損害額は外国の販売を含んでおり、これは複製および販売のために海外に送られたマスターディスク上のソフトウェアに対する271(f)条の適用に関する最近のMicrosoft Corp. v. AT & T Corp., 127 S. Ct. 1746, 1750 (2007)における判示と矛盾していると主張する。

 AT&Tにおいて最高裁は、「抽象的なWindowsではなく、Windowsの一つの複製物が271(f)条に基づく『構成部分<component>』としての資格を有する」と判示した。Id. at 1756. 最高裁は、271(f)条に基づく「構成部分<components>」はコンピュータにインストールされたソフトウェアのコピーを、そのコピー自体が合衆国から供給されていない場合、含まないとも判示した。Id. at 1757.

 本件において、特別評決用紙は合衆国と外国に分けて損害額をリストするものではなかった。加えて、損害額が457特許と080特許の装置および方法クレームの両方の侵害をカバーしていることも疑わしい[21]。AT&T[事件における最高裁]はその判示を装置クレームに明確に限定している:
我々は、抽象的なまたは何らかの他の無形のソフトウェアが271(f)条に基づく構成部分であり得るかどうかについては述べる必要はない。例えば無形の方法またはプロセスが271(f)条に基づく「特許発明」として資格を有するとすれば(我々が意見を述べないものに関する問題)、その発明の組み合わせ可能な構成部分も同様に無形であり得るかもしれない。しかしながら、本件発明であるAT & Tのスピーチ処理コンピュータは有形物である。
Id. at 1756 n.13. 本裁判所が本件においてAT&Tが方法クレームに適用するように拡張されるかどうかについて検討することを辞退し、AT&Tの判示を装置クレームに適用するとしても、問題は解決しない。陪審が損害額評決の額に到達した方法に関して透明性を欠くから、外国販売を「引く」試みはほとんど不可能である。さらに、当事者らは、本件特許の装置クレームに対して方法クレームの侵害のために計算された損害額を分離する証拠を指摘しなかった。それゆえ、装置クレームだけに関連する外国販売の損害額を除く方法に関するいかなるガイダンスも本裁判所は持たない。

 しかしながら、本裁判所は、ロイヤリティベースとしてコンピュータに対する全体マーケット価値ルールを適用できない現状としては損害額評決を支持する十分な証拠が与えられていないから、この困難性の山を扱う必要はなく、扱うこともない。合理的なロイヤリティベースおよびレートが適切に扱われれば、これらの残った問題は新しいトライアルにおいて証拠、陪審説示および新しい評決の中で修正されることができる。それゆえ、本裁判所は、そのような時まで、損害額の裁定に関するAT&Tの衝撃の考慮を延期する。したがって、この争点に関して法律問題としての判決および新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立は争点性を喪失しているとして否定される

 E.感情および偏見
 次に、Microsoftは15億3000万ドルの損害額の裁定は大きく儲けている大企業としてのMicrosoftに対する陪審の感情および偏見によって生じたと主張する。Microsoftは 、Microsoftの「80%プラスの利益」および(Microsoftはコンピュータを販売してさえいないのに)380億ドル−610億ドルのコンピュータ販売からの収入への参照に言及する最終弁論におけるLucentによる陳述を指摘する。Microsoftは、外国販売を含めたことが損害額の計算に偏見をもたらしたとも主張する。Microsoftは、Microsoftが世界中に数百万のコピーを配布し数十億ドルを得たというLucentの陪審に対する陳述が陪審に先入観を持たせ、Georgia Pacifi
cに基づく考慮を不適切にふくらませたと争う[22]

 Microsoftの主張は単なる推測である。Lucentの冒頭陳述および最終弁論においてなされた孤立した陳述を除けば、評決が感情または偏見によってふくらまされたことを示唆するであろう証拠は全くない。膨大なユニット販売数、0.5−1%レンジ以外のロイヤリティ証拠の欠如、およびベース価格としてのコンピュータの使用が陪審の損害額評決に可能な根拠を与えただけである。本裁判所は、陪審がLucentの総計を額面通りに受け入れた以外に、損害額に達する上で感情および偏見が何らかの役割を必然的に果たしたということはできない。この根拠に基づく新しいトライアルを求めるMicrosoftの申立は否定される

VIII.結論

 この中における理由により、本裁判所は法律問題としての判決および/または新しいトライアルを求めるMicrosoftの根拠に関して以下のように判示する:

457特許に関する責任
 直接侵害なし
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる
 間接侵害なし
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる

080特許の所有権
 クレーム2および4は新しい研究成果である
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる
 Fraunhoferは080特許の共同所有者である
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる
 Lucentは当事者適格を欠く
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる
 Microsoftのライセンス抗弁
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる

080特許に関する責任
 不正確なクレーム解釈
   新しいトライアルに関して否定される[23]
 直接侵害なし
   法律問題としての判決および新しいトライアルに関して否定される
 間接侵害なし
   法律問題としての判決および新しいトライアルに関して否定される
 誘因侵害なし
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる

無効
 自明性−KSRの衝撃
   法律問題としての判決および新しいトライアルに関して否定される
 非新規性−OCF paper
   法律問題としての判決および新しいトライアルに関して否定される
 非新規性−low bit rate paper
   法律問題としての判決および新しいトライアルに関して否定される
 Johnston証言の排除
   新しいトライアルに関して否定される
 RestainoとdeVilliersの録取証言の排除
   新しいトライアルに関して否定される

損害額
 ロイヤリティベース−全体マーケット価値
   法律問題としての判決が認められる
   二者択一として、新しいトライアルが認められる
 ロイヤリティレート
   法律問題としての判決は否定され、新しいトライアルが認められる
 矛盾した評決
   法律問題としての判決および新しいトライアルに関して否定される
 AT&Tの衝撃
   争点性を喪失しているとして否定される
 感情/偏見
   新しいトライアルに関して否定される

//
//

 上記判示の最終的な結論は、合衆国特許5,341,457およびRE 39,080の二つの特許に関する訴訟を終結し、Microsoftが勝訴し、Lucentが敗訴し訴訟費用をMicrosoftに支払う連邦民事訴訟規則54(b)に基づく判決に帰着する。

 これらの判示に照らして、追加損害額、前もった判決および判決後の利益に関する連邦民事訴訟規則59(e)に基づく判決の修正または変更を求めるLucentの申立は、Lucentがもはや勝訴当事者ではなないから、争点性を喪失しているとして否定される

 そのように命令される。

日付:2007年8月6日
(署名)          
Hon. Rudi M. Brewster 
合衆国上席地裁裁判官
cc:Hon. Cathy Ann Bencivengo
   合衆国下級裁判官

   全ての記録上の弁護士


脚注
(1)080特許は、1988年12月に出願された出願の継続出願である1992年2月に出願された出願の部分継続出願(CIP)として優先権を主張している。この1988年出願は457特許として発行された。CIP出願における複数のクレームは異なった優先日を有することができるが、親出願によって支持されたものだけがより早い出願日の資格が与えられる。Waldemar Link v. Osteonics Corp., 32 F.3d 556, 558-59 (Fed. Cir. 1994) (各クレームの優先日は特許庁によって記念されない;争いが起こった時、裁判所が争点となっている各クレームのために適切な日を決定すると書き留めている)。


(2)080特許の図2における、ある刊行物への参照を有する従来技術としてのMDCTへの参照が1987年の日付を与えるというLucentの主張はこの分析を変更しない。この参照はどのみち、Johnstonが1989年4月以前にMDCTを使った彼の方法を実行したまたは考えたかどうかを示すものではない。080特許明細書は1992年に出願された複数の出願に基づいている。せいぜい、1992年または1994年もしくはその頃に、JohnstonがMDCTについて知っており、彼のクレームされた方法でその使用を考えたことを示すだけである。

(3)938明細書への参照が、080再発行特許明細書におけるCol. 24:18-24に対応する。

(4)938特許はクレーム1−4を含んでいる。080特許はクレーム1、3および4を含んでいる; Lucentは再発行出願の出願経過の間に080特許からクレーム2を取り除いた。トライアルで、Microsoftはクレーム1および3が080特許の最も早い優先日
(1988)の資格が与えられていないことを証明しなかった。証拠は、これらのクレームが、Fraunhoferとの共同研究の前にJohnstonによって成し遂げられ、457特許への優先権を主張できることを示している。457特許はJDAに基づく存在する技術として定義されている。(Id. at 2, Attachment A.)

(5)これらの状況は、本件の争点の技術を含むFraunhofer-Microsoft契約には適用できないことが以前に決定されていた。

(6)Israelにおける状況は共同発明者にも関係しているが、その相違が現在の状況との対比を適用不能にすることはない。本件における新しい研究成果と存在する研究成果を一つの特許で出願することによって生じた状況は一人以上の発明者による一つの特許出願と、全ての発明者が全てのクレームに貢献していない場合、より多く類似している。Johnstonは単独の発明者であるとしても、存在する技術の単独の所有者としてのAT&Tと共にあるJohnstonと、新しい研究成果への共同所有者であるAT&TおよびFraunhoferと共にあるJohnstonが存在する。これらの二人の「人」の出願は、複数発明者(各譲受人が全体の特許の一人の共同所有者)の出願と同じ結果をもたらす。

(7)本裁判所は本件において法律問題としての判決を求める基準に基づいて考えている。Microsoftから Lucentの論理を論駁する証拠もトライアルで提出された。しかしならが、陪審はMicrosoftの専門家証人を信じる必要も、 Lucentの専門家証人と同じ重みを彼に与える必要もない。

(8)本裁判所は、HQエンコーダがバックアップとしてWindows Media Playerの中に存在するといる理由だけで、クレームされた方法が実行されるに違いないというLucentの主張は無駄であるとも認定する。MicrosoftがHQエンコーダでクレームされた方法を実行することを意図したまたは試みたかもしれないとしても、重要な問題は訴えられたソフトウェアが実行したかどうかである。「試みられた侵害」は責任を生じさせない。

(9)クレーム10のプロセスステップは本質的にはクレーム1で明らかにされた方法である。

(10)(See Transcript in limine Hr’g, 113:10-19, Jan. 3, 2007.) Microsoftは、この排除ににかかわらず、トライアルで故意の争点に関して優勢であった。侵害および有効の争点に関して、Microsoftは主に、 Lucentの立場と証人の立場の矛盾のためにDolby事件は関連があると主張した。本裁判所は、これらの目的のためにDolbyからの証言の使用を許可した。

(11)これはHodosh v. Block Drug Co., Inc., 833 F.2d 1575,1578 (Fed. Cir.1987)およびAquatex Industries, Inc. v. Techniche Solutions, 419 F.3d 1374, 1380 nにおいて提出された状況ではない。(Fed. Cir.2005)、そこでは、特許製品にある主要産品成分が組み込まれていた(そしてそれゆえその主要産品の販売は寄与侵害ではなかった)。本件においては、Cyberlink Plug-inは主要産品ではなく、それをWindows Media Playerに組み込んでもそれを主要産品成分に「変換」するわけではない。

(12)技術的なメモに関しては、Johnstonの署名と、ある追加的な名前がわからない「署名」があった。(PX128.) LucentはDr. Jayantの署名であると主張し、Microsoftはこの主張に異議申し立てをしなかった。後者の署名は発明日を立証するために必要な補強証拠として役割を果たす。See Finnigan Corp. v. International Trade Com'n, 180 F.3d 1354, 1369 (Fed. Cir. 1999)(「補強証拠は、証人の利益のレベルにかかわりなく、その証人の証言だけが特許を無効にすると主張される証人が必要とされる」ことを確立し、別なことを述べたThomson, S.A. v. Quixote Corp., 166 F.3d 1172, 1176 (Fed. Cir. 1999)のような以前の事件と区別している)。

(13)Strawnはこの分析は彼の専門家報告書の中に含まれているとも証言したが、彼はその報告書も同様に断固たるものであるのかあるいはより詳細なものであるのかどうかをそれ以上詳しく述べることはなく、その報告書は証拠の中に入ってもいなかった。(Trial Tr. vol. VIII, 205:10-12, Feb. 7, 2007.)

(14)KSR判決は、本件のグループ2トライアルにおける評決後のおよそ2ヶ月後の2007年4月30日になされた。このトライアルは本件において直接審理中のままであるから、KSRの判示を適用する。See Harper v. Virginia Dept. of Taxation, 509 U.S. 86, 90 (1993)(「[最高]裁判所の当事者らへの連邦法のルールの「最高」裁判所の適用は、各裁判所にその判決へ遡及効果を与えることを要求する」)。

(15)See e.g., Takeda Chemical Industries, Ltd. v. Alphapharm Pty., Ltd., - - F.3d - - , 2007 WL 1839698, *4 (Fed. Cir. June 28, 2007)(Graham要素を使用した地裁の自明性の分析はKSRに基づく分析と一致していると認定した); Leapfrog Enterprises, Inc. v.Fisher-Price, Inc., 485 F.3d 1157, 1162 (Fed. Cir. 2007)(要素を組み合わせるための産業界における動機付けは自明性を証明するに十分であるという地裁の認定を維持している); Sundance, Inc. v. De Monte Fabricating, Ltd., 2007 WL 1655423, *2 (E.D. Mich. June 7, 2007)(陪審の自明性の決定は硬直したTSMテストを使用しておらず、それゆえKSRと一致しているとして、法律問題としての判決および/または新しいトライアルを否定している); Stryker Trauma S.A. v. Synthes (USA), 2007 WL 1959231, *6 n.6 (D. N.J. June 29, 2007)(陪審が硬直した「TSM」テストを適用したという証拠は存在せず、評決はGraham要素だけを使用した分析で支持されるという十分な証拠が存在するとして、実質的証拠が非自明の評決を支持していると認定している)。

(16)サマリ判決でMicrosoftはこの特許の非新規性だけを述べた;それは事実問題から否定された。Microsoftはトライアルでさえこの無効抗弁を追求しなかった。

(17) Lucent自身の証人Dr. Jayantが、MP3技術は多くのソースに起源を有し、ビットストリームシンタックス(ビットストリームを解釈し、オーディオ信号をプレイバックするために意味があるようにデコードする方法)、デコーダの特徴およびエンコーダのいくつかの特徴を含む多くの特徴からなっていると証言した。(Trial Tr. vol. II, 121:11-23, 123:2-22, Jan. 30, 2007.) 対照的に、争点のクレームは、MP3エンコーダに関連して使用し得る特定の特徴だけに関係している。457特許は、楽調値およびマスキング閾値を使用するオーディオコーディングの方法に関係している。080特許は、マスキング閾値と関連する絶対聴覚閾値を使用するオーディオコーディング方法および装置に関係している。

(18)さらに、Lucentは、特許された特徴が本質的にMP3であるという証拠としてMicrosoftの証人Dr. Brandenburgの証言を指摘するが、この証言はせいぜい、米国特許5,040,217(217特許)で述べられた、457特許を改良する技術がMP3標準においてオプションの心理音響学モデルとして組み込まれていることを証明するだけである。彼は、217特許は(他の会社と一緒の)AT&TのMP3標準への提案(ASPEC提案)の基礎であると証言した。Brandenburgによれば、(080再発行特許の基礎となっている)938特許はこの提案がなされた頃でさえない。(Trial Tr. vol. VII, 13:2-17,15:10-17, Feb. 6, 2007.) 彼はこの技術はMP3標準のオプションであるとも証言した。(Id.at 191:4-11.)

(19)全体マーケット価値ルールの争点は別として、Microsoftは、15億3000万ドルの評決を正当化できる、訴えられたHQおよびファーストエンコーダの価値の十分な証拠をLucentが提出したことを一般的に争っている。この争点は新しいトライアルが認められた適切なロイヤリティベースの立証と絡み合っているから、この争点はここで扱う必要はなく、これ以上扱わない。

(20) Lucentの専門家証人Roger Smithは、争点となっている特許は産業界の多くの参加者(例えば、IBM、HP、Sony)にライセンスされてきたが、これらのライセンスは全て広範囲のクロスライセンスであり、そこから本件特許の価値を識別するのは困難であると証言した。(Trial Tr. vol. IV,159:20 -160:25, Feb. 1, 2007.) 一つのライセンス例(Nel-Techライセンス)では、本件特許に関連してMP3製品に1%のロイヤリティをオファーしたが、最初の四半期で生み出したのは1450ドルだけである。(Id. at 163:6-14.) さらに、このライセンスは本件訴訟の開始から2年後の2005年に LucentとNelTechの間で開始されたものである。(Trial Tr. vol. V, 26:19-27:1, Feb. 2, 2007.) 仮想的交渉の日付は侵害が始まる直前に設定される。Panduit Corp. v. Stahlin Bros.Fibre Works, Inc., 575 F.2d 1152, 1158 (Fed. Cir. 1978).  Lucentの専門家証人は、彼の計算は1988年の日付の仮想的交渉に基づいていると断言した(Trial Tr. vol. IV, 150:2-5, Feb. 1, 2007);しかし、彼は1997年または2004年の日付のMicrosoftのモデルが使用されるとすれば、彼の計算は変更されるだろうと主張した。(Id. at 150:6-19)

(21)457特許および080特許それぞれは争点となる3つのクレームを有しており、全部で6つのクレームであり、4つは方法クレームである。

(22)記録は、Microsoftがトライアル中にこれらの陳述に対して異議を申し立てたことを示していない。

(23)Microsoftは、アスタリスク(
)がつけられた争点に関しては、新しいトライアルだけを求め、法律問題としての判決は求めていない。


訳注
(訳1)本判決を理解するためには、米国の裁判制度についての知識が必要なので、米国の裁判制度について解説する。米国には州裁判所と合衆国裁判所(連邦裁判所)の2種類の裁判所があるが、特許については合衆国憲法の規定に基づき合衆国議会が特許法を制定しているので、特許事件は合衆国裁判所が管轄する。合衆国裁判所は地裁、控訴裁(特許事件についてはCAFC(連邦巡回区控訴裁判所)が専属管轄を有する)、最高裁の三審制である。事実審は地裁のみで、控訴裁と最高裁は法律審である
(日本では高裁は事実審である)。地裁は1名の裁判官(単独制)によって審理される(日本でも地裁は原則的に単独制であるが、特許事件は3名の裁判官の合議で行われるのが普通である)。どちらかの当事者が陪審裁判を希望すれば、地裁において陪審裁判が行われる。陪審裁判の場合は、法律判断は地裁裁判官が行うが、事実認定は陪審が行う(日本では全てを裁判官が行うから、法律問題と事実問題の区別はそれほど重要ではないが、米国では事実問題は陪審が審理するから、法律問題と事実問題の区別は重要である)。どちらの当事者も陪審裁判を希望しなければ、裁判官が法律判断および事実認定を行う。本件は陪審裁判によって行われた。裁判官はトライアル前にMarkmanヒアリングでクレーム解釈を行い、予備的ヒアリングでトライアルに提出する証拠の選択等を行う。トライアルが始まると、法廷において裁判官と陪審の前で、冒頭陳述、証人尋問、最終弁論が行われ、その後、裁判官が陪審に対して説示を行い本件において適用される法的基準を陪審に説明する。その後、陪審は評議室で評議を行い評決する。本件の場合、 陪審の評決は、Lucentの2つの特許のどちらにつても、有効であり、Microsoftが侵害していると認定し、さらに、世界中のWindows搭載パソコンについてその価格に0.5%を掛けて損害賠償額を算出した。これに対してMicrosoftが様々な根拠から申立を行い、これらの申立に対する法的判断を裁判所(地裁裁判官)が行ったのが、本判決である。本判決において裁判所は、 Lucentの2つの特許のどちらについても、陪審の評決を覆し、Microsoftの勝ちとしている。裁判所は陪審の評決を覆すのに必要最小限の申立だけでなく、KSR最高裁判決の影響や損害額の算出に関する申立も含む全ての申立について判示しているので、米国で特許裁判を行う日本企業にとって極めて参考になる判決であると思う。特に、陪審裁判で負けて高額の損害賠償額を評決された企業が、陪審の評決を覆すためのお手本として最適な判決ではないだろうか。


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