翻訳 井上雅夫 2005.08.20     ↑UP 

 
Phillips
特許事件CAFC大法廷判決
2005.07.12
 目   次
判決
 裁判所の意見

  

  II

   A
   B
    
    
    
   C
  III
   A
   B

  IV
   A
   B

  V
  VI




合衆国巡回控訴裁判所(CAFC)
03-1269, -1286

原告−控訴人 EDWARD H. PHILLIPS
被告−交差控訴人 AWH CORPORATION, HOPEMAN BROTHERS, INC., and LOFTON CORPORATION

2005年7月12日判決


MICHEL首席裁判官、NEWMAN、MAYER、LOURIE、CLEVENGER、RADER、SCHALL、BRYSON、GAJARSA、LINN、DYK、およびPROST巡回裁判官

 裁判所の意見はBRYSON巡回裁判官により登録され、それにMICHEL首席裁判官、CLEVENGER、RADER、SCHALL、GAJARSA、LINN, DYK、およびPROST巡回裁判官が加わり;LOURIE巡回裁判官がI、II、III、V、およびVIの部分に関して加わった。一部賛成一部反対意見がLOURIE巡回裁判官により登録され、それにNEWMAN巡回裁判官が加わった。反対意見がMAYER巡回裁判官によって登録され、それにNEWMAN巡回裁判官が加わった。

BRYSON巡回裁判官〔による裁判所の意見〕

 Edward H. Phillipsは、互いに溶接され故意の破壊に耐性のある壁を形成するモジュラー・スチール・シェル・パネル<modular, steel-shell panels>を発明した。そのパネルは、耐荷重性および耐衝撃性があり、また火災および騒音も遮断するので、刑務所を建築するのに特に有用である。Phillips氏は、その発明について米国特許4,677,798号(「798特許」)を取得し、その後、そのパネルの販売についてAWH Corporation, Hopeman Brothers, Inc., and Lofton Corporation(合わせて「AWH」)と協定を結んだ。協定は1990年に終了した。しかし、1991年にPhillips氏はAWHが彼の同意なしに彼のトレードシークレットを使用し続けていることを示すAWHの販売パンフレットを受け取った。1991年と1992年の一連の書簡において、Phillips氏は特許権侵害とトレードシークレット不正使用でAWHを非難した。その後、この問題に関する当事者らのやりとりは終了した。

 1997年2月、Phillips氏はAWHをトレードシークレット不正使用ならびに798特許のクレーム1、21、22、24、25、および26の侵害を主張してコロラド地区合衆国地裁に訴えた。Phillips v. AWH Corp., No. 97-N-212 (D. Colo.). 地裁はコロラドの3年制限法により禁じられるとしてトレードシークレット不正使用の請求を却下した。特許権侵害問題に関しては、「スチールシェル壁から内側に延在する複数の内部スチールバッフル<baffles>からなる耐荷重性を増大するためにシェルの内側に配置される更なる手段<means>」と記載するクレーム1の文言に地裁は焦点を合わせた。地裁は、この文言を米国特許法第112条第6パラグラフ(そのようなクレームは「明細書に記載された対応する構造、材料、又は行為<structure, material, or acts>及びその均等物に及ぶものと解釈する」と規定する)に基づく「特定の機能を実現するための・・・手段<a means . . . for performing a specified function>」として解釈した。798特許の明細書を参照して、地裁は、「明細書の全ての本文の記載および図面がバッフルが壁面に90°以外の角度で配置されていることを示している」、そして「そのような角度のバッフルの配置が間を連結するが無垢ではない内部バリアを作りだす」と書き留めている。それゆえ、地裁は、798特許において、バッフルは「壁面に斜めまたは鋭角でスチールシェル壁から内側に延在」しなければならず、また、壁モジュールの内側で連結する障壁部を形成しなければならないと判示した。Phillips氏はそのクレーム解釈のもとで侵害を証明できなかったから、地裁は非侵害のサマリ判決を下した。

 Phillips氏はトレードシークレットと特許権侵害の両方の請求に関して控訴した。本裁判所の〔3名の巡回裁判官による〕合議体は両方の争点に関して地裁判決を維持した。Phillips v. AWH Corp., 363 F.3d 1207 (Fed. Cir. 2004). トレードシークレットの請求に関しては、合議体は、その請求は適用できる制限法によって禁じられるという地裁の判示を満場一致で支持した。Id. at 1215. 特許権侵害請求に関しては、合議体の判断は分かれた。多数意見は、異なった根拠ではあるが、地裁の非侵害のサマリ判決を維持した。反対意見の裁判官は非侵害のサマリ判決に反対した。

 最初に、合議体は、798特許の主張されたクレームは十分な構造の記載を含んでいるから、地裁は112条第6パラグラフによって認められる「ミーンズ・プラス・ファンクション」クレームに頼って用語「バッフル」を解釈した点で誤ったと判断した。Id. at 1212. それにもかかわらず、合議体は、本件特許は用語「バッフル」を限定的な方法で使用したと結論した。特許の説明の記載<patent's written description>に基づいて、合議体は、用語「バッフル」は壁から90°で延在する構造を排除していると判示した。合議体は、明細書が発射物の向きをそらすためのクレームされたバッフルの機能に繰り返し言及しており、明細書はバッフルを「外側スチールパネルを貫通するかもしれない弾丸の向きをそらせるような角度で配置される」ものとして記載していると書き留めている。’798 patent, col. 2, ll. 13-15; see also id. at col. 5, ll. 17-19(バッフルは「弾丸の向きをそらせるために役立つ角度で配置される」)。加えて、合議体は、本件特許の中のどこにも、直角に壁から突出するバッフルの記載はなく、壁に90°に向けられたバッフルは従来技術に見いだされると認めた。「明細書の明瞭な説明<the specification's explicit descriptions>」に基づき、合議体は「特許権者は彼の発明を耐衝撃性または耐投射物性を提供するパネルとみなしており、バッフルは90°以外の角度を向いていなければならない」と結論した
。Phillips, 363 F.3d at 1213. 合議体は、特許明細書「はクレームを支持し性格付けることが意図されており、それにより本件特許が90°以外の角度を有するバッフルに関係していることは明らかである」と付け加えた。Id. at 1214. それゆえ、合議体は、地裁の非侵害のサマリ判決を支持した。

 反対意見の裁判官は、用語「バッフル」の「明白な意味<plain meaning>」を採用し、合議体は請求項を明細書に開示された発明の特定の実施形態に不適切に制限したと主張した。反対意見の裁判官は、当事者らは「バッフル」は「何かの流れを遮断、妨害、または阻止する手段」であることに合意しており、多数意見はバッフルの通常の意味は「流れの偏向、阻止、またはその他の規制のための何か」であることに合意していると書き留めている。Phillips, 363 F.3d at 1216-17. 反対意見の見解によれば、明細書中に、用語「バッフル」を再定義するもの、または普通の意味の全範囲より少なくなるようにその用語を特に限定する放棄を構成するものは何もない。反対意見の裁判官は、明細書は「本件発明のいくつかの目的の一つとして耐衝撃性を単に扱っているに過ぎない」と主張する。Id. at 1217. 要するに、反対意見は、「クレーム文言の明白な意味に、好適な実施形態から限定を加える理由は存在しない」と結論した。Id. at 1218. 結局、反対意見の裁判官は、裁判所は用語バッフルの一般的な目的の辞書の定義、すなわち「何かの流れを遮断、妨害、または阻止する手段」を採用すべきであり、id.、それゆえ、非侵害のサマリ判決は棄却されるべきであると主張した。

 本裁判所は、本控訴を大法廷で再審理することに合意し、合議体の判決を取り消した。Phillips v. AWH Corp., 376 F.3d 1382 (Fed. Cir. 2004). 今、我々は、地裁の判決のトレードシークレット不正使用請求を扱った部分を維持する。しかし、我々は、地裁判決の非侵害の争点を扱った部分を破棄する。



 798特許のクレーム1は用語「バッフル」の使用に関して、主張されたクレームの代表的なものである。クレーム1は次のように記載している:
外側シェル・・・、密閉手段・・・およびスチールシェル壁から内側に延在する複数の内部スチールバッフル<baffles>からなる耐荷重性を増大するためにシェルの内側に配置される更なる手段<means>の組み合わせからなる、記録および人間を保護するために使用する耐火、遮音および耐衝撃セキュリティ障壁および部屋を建築するための相互結合に適した建築モジュール。
 準備的な問題として、我々は、用語「バッフル」が米国特許法第112条第6パラグラフで規定するミーンズ・プラス・ファンクション文言ではない点で合議体に合意する。確かに、クレームには「耐荷重性を増大するためにシェルの内側に配置される手段<means>」(通常はミーンズ・プラス・ファンクション・クレーム形式と見なされるであろう記述)が記載されている。しかしながら、クレームは、シェルの耐荷重性を増大させる機能を実現する構造<structure>として「内部スチールバッフル」を具体的に<specifically>記載している。「耐荷重性手段」の限定とは対照的に、「バッフル」の記載には用語「手段」を使用しておらず、我々は、その用語の欠如により112条第6パラグラフが適用されない反駁可能な推定がなされると判示した。See Personalized Media Communications, LLC v. Int’l Trade Comm’n, 161 F.3d 696, 703-04 (Fed. Cir. 1998).

 ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームは、記載された機能を実現する構造を規定しない純粋な機能的限定だけに適用される。See Watts v. XL Sys., Inc., 232 F.3d 877, 880-81 (Fed. Cir. 2000). 798特許のバッフルは明らかにいくつかの機能を実現することを意図されているが、それにもかかわらず、用語「バッフル」は構造的であり、その構造が明細書によって満たされる純粋に機能的な置き換えられるもの<placeholder>ではない。See TurboCare Div. of Demag Delaval Turbomachinery Corp. v. Gen. Elec. Co., 264 F.3d 1111, 1121 (Fed. Cir. 2001)(特許権者が用語「圧縮されたスプリング」を、特定の機能を実現する能力を有する構造を意味するように使用していることを示すものは明細書または出願経過中に全くないと理由付けている);Greenberg v. Ethicon Endo-Surgery, Inc., 91 F.3d 1580, 1583 (Fed. Cir. 1996)(用語「戻り止めメカニズム」を、その用語が機能的な言外の意味を有しているにもかかわらず、特定の構造に言及するものとして解釈している)。「スチールバッフル」が特定の物理的器具に関連していることはクレームおよび明細書が間違いなく証明している。クレームはバッフルをスチールシェル壁から「内部に延在する」と特徴づけており、それはバッフルが構造であることを明確に意味している。明細書は同様に、用語「スチールバッフル」が特定の内部壁構造に関係し、特定の機能を実現するであろう何らかの構造の単なる一般的記述ではない<not simply a general description of any structure that will perform a particular function>ことを明らかにしている。See, e.g., ’798 patent, col. 4, ll. 25-26(「耐荷重バッフル16はより長いパネルと共に使用してもよい」); id., col. 4, ll. 49-50(反対のパネルは「フランジ35およびバッフル26の間に押し込まれる」)。用語「バッフル」は112条第6パラグラフには従わないから、地裁はその用語を明細書に開示された対応する構造およびその均等物に限定することにより誤ったとした点で我々は合議体に同意する。したがって、我々は798特許で使用されている構造的用語「バッフル」の正しい解釈を決定しなければならない。

II

 特許法第112条第1パラグラフ(35 U.S.C. § 112)は、明細書は、
発明が属する技術又は最も関係する技術における技術者が同じものを製造・・・できる程度に、十分に、明瞭に、詳細に、かつ正確な用語で、発明並びにそれを製造及び使用する方法及び手順の説明の記載<written description>を含むものとする・・・
と規定している。

 特許法第112条第2パラグラフは、
明細書は、出願人が発明とみなす発明を特定し明確に<distinctly>請求する1又は2以上のクレームで終わるものとする
と規定している。

 112条のこれらの二つのパラグラフは、我々のためにクレーム解釈の問題に枠組みを与えている。第2パラグラフは「出願人が彼の発明とみなす」ものを決定するためにクレームの文言を見ることを我々に要求している。他方、第1パラグラフは、明細書がクレームで明らかにした発明を説明していることを要求する。本件が我々に提出する主要な問題は、我々がクレームの適切な範囲を確かめることを求めるときに特許の明細書にどの程度頼り信頼するかである。

 これは新しい問題はない。クレーム解釈における明細書の役割は2世紀近いこの国の特許法判決において争点であり続けた。我々は、Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 979-81 (Fed. Cir. 1995) (en banc), aff’d, 517 U.S. 370 (1996)事件の我々の大法廷の意見において、明細書およびクレームの間の関係についてかなり詳しく扱った。我々はVitronics Corp. v. Conceptronic, Inc., 90 F.3d 1576 (Fed. Cir. 1996)事件において、もっと最近ではInnova/Pure Water, Inc. v. Safari Water Filtration Systems, Inc., 381 F.3d 1111 (Fed. Cir. 2004)事件において、適用可能な原則を再び要約した。
これらの事件で我々が述べたことは、そこで概説されたクレーム解釈の基本的原則は現在でも適用可能であるから、再度述べる価値があり、我々は今日これらを再確認する。以前に我々はクレーム解釈において辞書の使用も考慮した。我々がその考慮において述べたことは明確化を必要とする。



 「特許のクレームは特許権者が排他権を受ける発明を定義する」ということは特許法の「根本的な原則」である。Innova, 381 F.3d at 1115; see also Vitronics, 90 F.3d at 1582(「我々はクレームの文言自体を・・・特許された発明の範囲を定義するもとのして見る」); Markman, 52 F.3d at 980(「明細書の説明の記載の部分自体は排他権の範囲を定めない」)。この原則は少なくとも1836年以来、すなわち議会が、明細書は発明者が「彼が彼自身の発明または発見として主張する部分、改良、または組み合わせを特に特定し指摘する」部分を含む、ということを最初に要求した時以来、認識されてきた。Act of July 4, 1836, ch. 357, § 6, 5 Stat. 117, 119. それ以来、最高裁は、クレームは「特許されたものを正確に確かめるための努力において、根本的に重要」であることを明らかにしてきた。 Merrill v. Yeomans, 94 U.S. 568, 570 (1876). 特許権者は「彼が発明したものを正確に定義」することが要求されるから、本裁判所は、クレームをその用語の明白な意味から異なった形で解釈することは「法の裏をかくだけでなく、公衆に対して不公正」であると説明してきた。White v. Dunbar, 119 U.S. 47, 52 (1886); see also Cont’l Paper Bag Co. v. E. Paper Bag Co., 210 U.S. 405, 419 (1908)(「クレームが発明を判定する」); McCarty v. Lehigh Valley R.R. Co., 160 U.S. 110, 116 (1895)(「仮に我々がクレームに記載されていない要素を一度含ませてしまうと・・・、我々はどこでストップするのかを決して知ることはないであろう」); Aro Mfg. Co. v. Convertible Top Replacement Co., 365 U.S. 336, 339 (1961)(「特許に記載されたクレームは特許されたものの唯一の尺度である」)。

 我々はしばしば、クレームの言葉には「一般的に普通で通例の意味<ordinary and customary meaning>が与えられる」ことを述べてきた。Vitronics, 90 F.3d at 1582; see also Toro Co. v. White Consol. Indus., Inc., 199 F.3d 1295, 1299 (Fed. Cir. 1999); Renishaw PLC v. Marposs Societa’ per Azioni, 158 F.3d 1243, 1249 (Fed. Cir. 1998). 我々は、さらに、クレームの用語の普通で通例の意味は、発明時すなわち有効な特許出願日にその技術における通常の技術者にとってその用語がもつであろう意味であることを明確にしてきた。See Innova, 381 F.3d at 1116(「特許のクレームを解釈する裁判所は、発明時にその技術における通常の技術者にとってそれがもつであろう意味を
クレームに与えることを追求する。」); Home Diagnostics, Inc. v. LifeScan, Inc., 381 F.3d 1352, 1358 (Fed. Cir. 2004)(「通例の意味」は「その技術分野における通常の意味」に関連している); Ferguson Beauregard/Logic Controls v. Mega Sys., LLC, 350 F.3d 1327, 1338 (Fed. Cir. 2003)(クレームの用語は「その技術における技術者の観察鏡を通して検討される」); see also PC Connector Solutions LLC v. SmartDisk Corp., 406 F.3d 1359, 1363 (Fed. Cir. 2005)(クレームの意味は、特許出願の「有効な出願日のものとして解釈されなければならない」); Schering Corp. v. Amgen Inc., 222 F.3d 1347, 1353 (Fed. Cir. 2000)(同)。

 その技術における通常の技術者がクレームの用語をどのように理解するのかを審理することが、クレーム解釈を始めるための客観的な基準線を提供する。See Innova, 381 F.3d at 1116. スタート地点は発明者がその発明の技術における典型的な技術者であり、その特許は適切な技術における他の技術者によって読まれることが意図されているという十分に確立した理解に基づいている。See Verve, LLC v. Crane Cams, Inc., 311 F.3d 1116, 1119 (Fed. Cir. 2002)(特許文書は「その分野の者のための簡潔な記述」であることが予定されている); In re Nelson, 280 F.2d 172, 181 (CCPA 1960)(特許における説明は一般の公衆、法律家または裁判官に対して述べられたものではなく、112条が述べるように、発明が属するまたは最も近く関係している技術における技術者に対して述べられたものである)。

 重要なことは、その技術における通常の技術者は、争われている用語が現れている特定のクレームの文脈だけでなく、明細書を含む特許全体の文脈のなかで、クレームを読むとみなされていることである。本裁判所はこの点をMultiform Desiccants, Inc. v. Medzam, Ltd., 133 F.3d 1473, 1477 (Fed. Cir. 1998)事件において次のように指摘した:
 発明の技術における通常の技術者の目を通してクレームは解釈される。そのような技術者は、特許文書で使用される言葉をその分野の意味で理解して読み、その分野における特別な意味および慣例について知識があるとみなされている。発明を説明するために使用された発明者の言葉(発明者による辞書の執筆)はその技術分野の者によって理解され解釈されるであろうように裁判所によって理解され解釈されなければならない。それゆえ、裁判所は、判断プロセスをその者と同じリソースすなわち特許明細書および出願経過を審理することから始める。
See also Medrad, Inc. v. MRI Devices Corp., 401 F.3d 1313, 1319 (Fed. Cir. 2005)(「我々は真空の中に・・・その用語の通常の意味を見いだすことはできない。むしろ、我々は説明の記載および出願経過の文脈の中で通常の意味を探さなければならない。」); V-Formation, Inc. v. Benetton Group SpA, 401 F.3d 1307, 1310 (Fed. Cir. 2005)(内部記録〔明細書および出願経過〕は通常、「発明時にその技術における通常の技術者にとってのクレームの意味を裁判所が確かめることができるようにする技術的および時間的状況<technological and temporal context>を提供する」); Unitherm Food Sys., Inc. v. Swift-Eckrich, Inc., 375 F.3d 1341, 1351 (Fed. Cir. 2004)(適切な定義は「その技術における通常の技術者が記録の中の内部証拠から確かめることができる定義」である)。



 いくつかの事件においては、その技術における技術者によって理解されるクレーム文言の通常の意味は素人裁判官にさえたやすく明らかであるかもしれない、そのような事件におけるクレーム解釈は一般に理解された言葉の広く受け入れられた意味の適用以上のものはほとんど必要としない。See Brown v. 3M, 265 F.3d 1349, 1352 (Fed Cir. 2001)(クレームは「入念な解釈を必要としない」と判示している)。そのような状況では、一般用の辞書が助けになるかもしれない。しかしながら、訴訟が提起される多くの事件においては、クレームの通常で通例の意味を決定するためには、その技術分野における特別の意味を有する用語の調査が必要とされる。その技術における技術者によって理解されるクレームの用語の意味は直ちに明らかにならない場合もあり、また、特許権者は用語を独特に使用する場合がしばしばあるから、裁判所は「その技術における技術者が争われているクレーム文言が意味するものを理解するであろうものを示す公衆に利用可能なソース」を参照する。Innova, 381 F.3d at 1116. これらのソースは「クレームの言葉自身、明細書のその他の部分、出願経過、ならびに、関連のある科学的原理、技術用語の意味、およびその分野の状況に関係する外部証拠」を含む。Id.; see also Gemstar-TV Guide Int’l, Inc. v. Int’l Trade Comm’n, 383 F.3d 1352, 1364 (Fed. Cir. 2004); Vitronics, 90 F.3d at 1582-83; Markman, 52 F.3d at 979-
80.



 記載された説明および出願経過から全く離れて、クレーム自体は特定のクレームの用語の意味に関して実質的なガイダンスを提供する。See Vitronics, 90 F.3d at 1582; see also ACTV, Inc. v. Walt Disney Co., 346 F.3d 1082, 1088 (Fed. Cir. 2003)(そのクレームを取り囲む文脈もこれらの用語の普通で通例の意味を決定するときに考慮されなければならない」)。
 まず、第一に、用語が主張されたクレームの中で使われている文脈は極めて有益である。簡単な例を挙げれば、本件におけるクレームは「スチールバッフル」に言及しており、これは用語「バッフル」は本来スチールでできた物を意味しないことを強く暗示している。本裁判所の多数の事件が、クレーム内の用語の使用が用語を解釈するための堅固な基礎を提供している膨大な同じような例を提供している。See, e.g., Mars, Inc. v. H.J. Heinz Co., 377 F.3d 1369, 1374 (Fed. Cir. 2004)(クレームの用語「成分」は同じクレームのフレーズにおける用語「混合物」の使用に照らして解釈される); Process Control Corp. v. HydReclaim Corp., 190 F.3d 1350, 1356 (Fed. Cir. 1999)(クレームの用語「放電率」は同じクレームの他の限定における同じ用語の使用に照らして解釈される)。

 問題の特許の他のクレームは、主張されていても主張されていなくても、クレーム用語の意味について啓発する価値あるソースであり得る。Vitronics, 90 F.3d at 1582. クレームの用語は普通は特許を通して一貫して使用されているから、一つのクレームにおける用語の使用が他のクレームにおける同じ用語の意味をしばしば明らかにする。See Rexnord Corp. v. Laitram Corp., 274 F.3d 1336, 1342 (Fed. Cir. 2001); CVI/Beta Ventures, Inc. v. Tura LP, 112 F.3d 1146, 1159 (Fed. Cir. 1997). クレーム間の違いは特定のクレームの用語の意味を理解する上で有用なガイドになり得る。See Laitram Corp. v. Rexnord, Inc., 939 F.2d 1533, 1538 (Fed. Cir. 1991). 例えば、特定の限定を付加する従属クレームの存在は独立クレームの中には問題の限定が存在しないという推定を生じさせる。See Liebel-Flarsheim Co. v. Medrad, Inc., 358 F.3d 898, 910 (Fed. Cir. 2004).



 もちろん、クレームは孤立しているわけではない。むしろ、クレームは「完全に統合された法律的文書」の一部であり、Markman, 52 F.3d at 978、クレームで終わる明細書を主に構成するものである。この理由により、クレームは「それが一部を占める明細書を考慮して読まれなければならない。」Id. at 979. 我々がVitronics事件において述べたように、明細書は「クレーム解釈分析に常に強く関連している。普通はこれが方向を決定する;争われている用語の意味の唯一の最も良いガイドである。」90 F.3d at 1582.

 本裁判所およびその前身の裁判所〔請求裁判所、関税・特許控訴裁判所〕は長い間、クレーム解釈において明細書の重要性を強調してきた。Autogiro Co. of America v. United States, 384 F.2d 391, 397-98 (Ct. Cl. 1967)事件において、請求裁判所は、明細書は特許された発明「を製造及び使用する方法及び手順を説明する」という制定法の要件に基づいて」、明細書を「クレームのための用語索引」として特徴付けた。関税・特許控訴裁判所は同様な論点を力説している。See In re Fout, 675 F.2d 297, 300 (CCPA 1982)(クレームは常に明細書に照らして読まれなければならない。本件において、明細書は控訴人が発明したものおよび発明しないもの・・・を明らかにしている)。

 本裁判所が設立された直後に、Rich裁判官は「明細書の説明部分は、クレームの言葉がその説明に基づいていなければならない限り、クレームの範囲と意味を確かめる助けをしている。それゆえ、明細書はクレーム解釈の主要な基礎である。」Standard Oil Co. v. Am. Cyanamid Co., 774 F.2d 448, 452 (Fed. Cir. 1985). それ以来膨大な機会に、我々は、技術用語の理解のための最もよいソースは、それが生じ、必要により出願経過によって知らされる明細書であると述べて、この論点を再確認してきた。Multiform Dessicants, 133 F.3d at 1478; Metabolite Labs., Inc. v. Lab. Corp. of Am. Holdings, 370 F.3d 1354, 1360 (Fed. Cir. 2004)(「ほとんどの事件では、クレームの用語の適切な文脈を見つけるための最も良いソースは、特許出願人が発明を説明している特許明細書である。」); see also, e.g., Kinik Co. v. Int’l Trade Comm’n, 362 F.3d 1359, 1365 (Fed. Cir. 2004)(「特許のクレームの言葉は、明細書および出願経過中で使用されている意味と範囲を有している。」); Moba, B.V. v. Diamond Automation, Inc., 325 F.3d 1306, 1315 (Fed. Cir. 2003)(「クレームの意味の最も良い指示器は、発明時にその技術における技術者によって理解される文脈におけるその使用である。」)。

 この原則は最高裁判決においても長い系図を有している。See Hogg v. Emerson, 47 U.S. (6 How.) 437, 482 (1848)(明細書は「特許の構成部分<component part of the patent>」であり、「[特許文書]と共にそれらを解釈する上で、捺印証書または他の契約において言及された書面と同様に、考慮されるべきものである」); Bates v. Coe, 98 U.S. 31, 38 (1878)(「疑いがある場合またはあいまいな場合にクレームの中で使用されている文言の疑いを解くまたは真の意図および意味を確かめる助けに明細書の説明部分を参照することは全ての場合に適切である」); White v. Dunbar, 119 U.S. 47, 51 (1886)(明細書は「クレームの意味をよりよく理解する目的のために適切に頼ることができる」); Schriber-Schroth Co. v. Cleveland Trust Co., 311 U.S. 211, 217 (1940)(「特許のクレームは常にその明細書に照らして読まれ、解釈されるべきものである。」); United States v. Adams, 383 U.S. 39, 49 (1966)(クレームは明細書に照らして解釈されるべきものであり、両方が発明を確かめるために一つの見方で読まれるべきものであることが基本である)。

 クレーム解釈における明細書の重要性はその特許法上の役割から導かれる。説明の記載とクレームの間の関連は、明細書はクレームされた発明を「十分に、明瞭に、詳細に、かつ正確な用語」で説明するという特許法上の要求によってなされる。35 U.S.C. § 112, para. 1; see Netword, LLC v. Centraal Corp., 242 F.3d 1347, 1352 (Fed. Cir. 2001)(「クレームは明細書中で説明された発明に向けられている;クレームはそれが生じた文脈から離れた意味は持たない。」); see also Markman v. Westview Instruments, Inc., 517 U.S. 370, 389 (1996)(「クレームの用語は全体として法律的文書に適合する方法でのみ定義され得る。」)。発明者はクレームされた発明の「十分な」かつ「正確な」説明を提供するという特許法の規定により、明細書は必然的にクレームの正しい解釈を知らせている。See Merck & Co. v. Teva Pharms. USA, Inc., 347 F.3d 1367, 1371 (Fed. Cir. 2003)(「クレーム解釈の基本的ルールは特許文書中の用語がその特許文書の中で開示された意味で解釈されることである。それゆえ、クレームは明細書と一貫しているように解釈されなければならない。」)(citations omitted). 本裁判所はRenishaw事件でこの点を簡潔に要約した:
 結局、用語に与えられる解釈は発明者が実際に発明したものおよびクレームに包み込んだものの完全な理解をともなって決定することができ確かめることができるだけである。クレーム文言に正確であり特許発明の説明と最も自然に整合する解釈が、結局は、正しい解釈である。
158 F.3d at 1250 (citations omitted).

 一般的な原則と首尾一貫して、我々の事件は、明細書は、他の場合では有しているであろう意味とは違う、特許権者によってクレーム用語に与えられた特別な定義を明らかにすることができることを認めている。そのような事件では、発明者の辞書編集によって決まることになる。See CCS Fitness, Inc. v. Brunswick Corp., 288 F.3d 1359, 1366 (Fed. Cir. 2002). 他の事件では、明細書は発明者によるクレームの範囲の意図的な放棄または否認を明らかにするかもしれない。この場合も、発明者は正しいクレームの範囲を指示しており、明細書中に表現されている発明者の意図は方向を決定するものとみなされる。See SciMed Life Sys., Inc. v. Advanced Cardiovascular Sys., Inc., 242 F.3d 1337, 1343-44 (Fed. Cir. 2001).

 クレーム解釈への明細書の関係は特許が発行された方法によって補強される。米国特許商標庁(「PTO」)は特許出願のクレームの範囲を、クレームの文言を基礎にするだけでなく、クレームに「その技術における技術者によって解釈されるであろうように明細書に照らして」最も広い合理的な解釈を与えて、決定している。In re Am. Acad. of Sci. Tech. Ctr., 367 F.3d 1359, 1364 (Fed. Cir. 2004). 実際、PTOのルールは、出願のクレームは「明細書の残りの部分に開示された発明に一致」しなければならず、「クレームで使用される用語とフレーズは、クレーム中の用語の意味が説明への参照によって確かめられるように、明細書中に明確なサポートまたは先行する基礎が見いだされなければならない」と要求している。37 C.F.R. § 1.75(d)(1). それゆえ、裁判所が、クレーム解釈を行う時に、クレームの意味に関するガイダンスのために説明の記載に強く頼ることは完全に適切である。



 裁判所は、明細書を調べることに加えて、「もし証拠の中に存在すれば、特許出願経過も考慮すべきである」と我々は判示してきた。Markman, 52 F.3d at 980; see also Graham v. John Deere Co., 383 U.S. 1, 33 (1966)(「発明はクレームに照らすばかりでなく、特許庁における包袋または出願経過を参照して解釈される。」)。出願経過(我々は「内部証拠」の一部としている)は、PTOにおける手続きの完全な記録から成り、その特許の審査中に引用された先行技術を含む。Autogiro, 384 F.2d at 399. 明細書と同じように、出願経過はPTOと発明者がその特許をどのように理解したかの証拠を提供する。See Lemelson v. Gen. Mills, Inc., 968 F.2d 1202, 1206 (Fed. Cir. 1992). さらに、明細書と同じように、出願経過は特許権者が特許を説明し特許を得る努力の中で作られたものである。ではあるが、出願経過はPTOと出願人の間の、交渉の最終結果よりも、進行中の交渉を表しているので、明細書の明確性に欠ける場合があり、それゆえクレーム解釈の目的における有用性はより低い。See Inverness Med. Switz. GmbH v. Warner Lambert Co., 309 F.3d 1373, 1380-82 (Fed. Cir. 2002)(出願経過のあいまいさがクレーム解釈への関連性をより少なくしている); Athletic Alternatives, Inc. v. Prince Mfg., Inc., 73 F.3d 1573, 1580 (Fed. Cir. 1996)(出願経過のあいまいさがクレーム解釈のための「解釈のリソースとして助けにならなく」している)。それにもかかわらず、出願経過は、発明者がどのように発明を理解したか、発明者がクレームの範囲を狭くして出願経過中に発明を限定したかどうかを示すことによって、クレーム文言の意味を知らせることがあり得る。Vitronics, 90 F.3d at 1582-83; see also Chimie v. PPG Indus., Inc., 402 F.3d 1371, 1384 (Fed. Cir. 2005)(「クレーム解釈において出願経過を調べる目的は『手続き中に放棄された解釈を排除する』ためである。」),quotingZMI Corp. v. Cardiac Resuscitator Corp. Southwall Techs., Inc. v. Cardinal IG Co. , 844 F.2d 1576, 1580 (Fed. Cir. 1988); Southwall Techs., Inc. v. Cardinal IG Co., 54 F.3d 1570, 1576 (Fed. Cir. 1995)。



 我々はクレーム解釈における内部証拠の重要性を強調したが、我々は地裁に外部証拠に頼る権限も与えている。外部証拠は「特許と出願経過以外の全ての証拠から成り、専門家および発明者の証言、辞書、および学術書を含む」。Markman, 52 F.3d at 980, citing Seymour v. Osborne, 78 U.S. (11 Wall.) 516, 546 (1870); see also Vitronics, 90 F.3d at 1583. しかしながら、外部証拠は「関連する技術に有用な光を与えることができる」が、我々は「『クレーム文言の法的効力を有する意味』の決定において内部証拠より重要ではないと説明してきた。」C.R. Bard, Inc. v. U.S. Surgical Corp., 388 F.3d 858, 862 (Fed. Cir. 2004), quoting Vanderlande Indus. Nederland BV v. Int’l Trade Comm’n, 366 F.3d 1311, 1318 (Fed. Cir. 2004); see also Astrazeneca AB v. Mutual Pharm. Co., 384 F.3d 1333, 1337 (Fed. Cir. 2004).

 外部証拠の種類の中で、辞書および学術書はクレーム解釈において有用であり得ると本裁判所は述べてきた。See Renishaw, 158 F.3d at 1250; Rexnord, 274 F.3d at 1344. 我々は、技術的辞書は裁判所に「基礎となる技術のよりよい理解」およびその技術における技術者がクレームの用語を使用する方法を提供することで助けになることを特に書き留めてきた。Vitronics, 90 F.3d at 1584 n.6. 辞書特に技術的辞書は様々な科学技術分野において使用される用語の受け入れられている意味を収集する努力をしているから、多くの手段の中でこれらのリソースはその発明の技術における技術者にとって特別な用語法の意味を決定する時に裁判所の助けになると正しく認識されてきた。See Teleflex, Inc. v. Ficosa N. Am. Corp., 299 F.3d 1313, 1325 (Fed. Cir. 2002). このような証拠は、裁判所が「特許クレームの中で使用されている文言の真の意味」を決定するために助けになると考えれば、考慮することができると我々は判示してきた。Markman, 52 F.3d at 980.

 我々は、専門家証人の形の外部証拠は様々な目的のために、例えば、争点の技術のバックグラウンドを提供するために、発明がどのように働くのかを説明するために、その特許の技術的特徴についての裁判所の理解がその技術における技術者と一致していることを確実にするために、あるいは特許または従来技術における特定の用語が関連する分野において特別な意味を有していることを立証するために、裁判所に有用であり得るとも判示してきた。See Pitney Bowes, Inc. v. Hewlett-Packard Co., 182 F.3d 1298, 1308-09 (Fed. Cir. 1999); Key Pharms. v. Hercon Labs. Corp., 161 F.3d 709, 716 (Fed. Cir. 1998). しかしながら、結論的には、クレームの用語の定義に関する専門家による、実証されていない主張は裁判所にとって有用ではない。同様に、裁判所は、「クレーム自体、説明の記載、および出願経過、別の言葉で言えば、特許の書面の記録によって与えられるクレーム解釈に明らかに反する」専門家の証言を割り引いて考えるべきである。Key Pharms., 161 F.3d at 716.

 我々は、いくつかの理由から、一般に外部証拠は、クレームの用語をいかに読むかを決定する場合に、特許および出願経過よりも、より信頼性が低いことを見てきた。第一に、外部証拠は定義により特許の一部ではなく、特許の範囲と意味を説明する目的のために特許手続きの時に作られた明細書の長所を有していない。第二に、クレームはその技術における仮想的な技術者によって理解されるであろうように解釈されるが、外部の出版は技術者によってあるいは技術者のために書かれたものでないかもしれず、それゆえ特許の技術における技術者の理解を反映していないかもしれない。第三に、専門家の報告書および証言で構成される外部証拠は訴訟の時に訴訟の目的で作られたものであり、それゆえ内部証拠においては存在しない先入観を有する可能性がある。この先入観の効果は、もし、その専門家が関連する技術における技術者でない場合、あるいは、もし、専門家の意見が反対尋問にさらされていない形で提供されている場合に、悪化する傾向がある。See Senmed, Inc. v. Richard-Allan Med. Indus., Inc., 888 F.2d 815, 819 n.8 (Fed. Cir. 1989). 第四に、クレーム解釈問題に関して提出可能な、関連性があまり重要でない外部証拠の事実上際限のない宇宙が存在する。訴訟の過程において、各当事者は自然にその主張に最も有利な外部証拠を選択するだろうから、裁判所には、つまらないものから有用な外部証拠をフィルタリングする相当な仕事が残される。See Daubert v. Merrell Dow Pharms., Inc., 509 U.S. 579, 595 (1993)(「専門家の証拠は、それを評価するのが困難であるから、有力であることも完全に誤解させるものであることもあり得る。」)。最後に、外部証拠へ過度に依存することは、「クレーム、明細書および出願経過から構成される争い余地のない公的な記録」の価値を低下させ、クレームの意味を変えるために使用されるリスクが生じ、それによって特許の公衆への通知の機能を傷つける。Southwall Techs., 54 F.3d at 1578.

 要するに、外部証拠は、裁判所に有用であるかもしれないが、内部証拠の文脈において考慮されない限り、特許クレームの信頼できる解釈を結果として生じそうにない。それにもかかわらず、外部証拠は発明の分野に関して裁判所を教育するのを助けることができ、その技術における通常の技術者がクレームの用語が何を意味すると理解するであろうかを裁判所が決定する助けになることができるから、健全な裁量のもとに地裁がそのような証拠を受け入れ使用することは許されることである。その裁量を行使する時に、また、クレーム解釈に関係する全ての証拠を重み付けする時に、裁判所は、それぞれの種類の証拠に固有の欠点を心に留めておき、それに応じてその証拠を評価しなければならない。

III

 以上に概説した原則は多数の機会に明言されてきたことではあるが、本裁判所のいくつかの事件はクレーム解釈にやや異なったアプローチを示しており、本裁判所はそれらの事件においてクレームの用語の辞書の定義をより強く強調し、明細書および出願経過により突出しない役割を与えている。この方向の指導的判例はTexas Digital Systems, Inc. v. Telegenix, Inc., 308 F.3d 1193 (Fed. Cir. 2002)事件である。



 Texas Digital事件において、本裁判所は「クレームの用語の普通で通例の意味を決定するために辞書、百科事典および学術書は裁判所にとって特に有用なリソースである」と書き留めている。308 F.3d at 1202. 裁判所が説示したこれらの文章は、「その技術における技術者によってクレームの用語であると考えられるであろう確立された意味に関する情報の信頼できるソースとして役に立つ客観的なリソース」であり、それらは法の他の分野におけるよりも「クレーム解釈の状況において誠実な価値が少ないわけではない」。Id. at 1203. 裁判所は、言葉は時々多数の辞書の意味を有するから、異なった可能な辞書の意味のどれが発明者による問題の用語の使用に最も一致するのかを決定するために、内部記録が調べられなければならないと付け加えている。もし、一つの辞書の定義が内部記録におけるその言葉の使用と一致するならば、「クレームの用語はそのような一致した意味全てを包含するように解釈され得る」と裁判所は説示している。Id.

 さらに、Texas Digital事件の裁判所は、特許の明細書および出願経過は、特許権者が「[クレームの]言葉を例えば辞書の定義を反映した通常の意味と明らかに一致しない方法で」使用したかどうかを決定するために調べられなければならない。308 F.3d at 1204. 裁判所は不一致が認められるかもしれない二つの状況を明らかにした。第一は、「辞書の定義に賛成する推定は、特許権者が辞書編集者として行動し通常の意味とは異なった明確な定義を明らかにしている場合に、覆るだろう。」Id. 第二は、「その推定は、発明者がクレームの範囲の明確な否認を示し、明確な排除または限定の言葉もしくは表現を使用することによって、範囲を否認または放棄している場合にも反駁されるだろう」。Id.

 Texas Digital事件の裁判所は、裁判所が特許法の主要な罪の一つ(説明の記載からクレームへ限定を読み込むこと)と呼ぶものと戦う努力の中で、その意見の中で明らかにされた方法論を前進させた、と説明している。SciMed Life Sys., 242 F.3d at 1340. 裁判所は、「その言葉自体に帰属する普通で通例の意味をはっきり認識する努力がなされる前に、クレーム解釈のプロセスの入り口の段階で、説明の記載および出願経過」を調べることは不適切であると結論している。Texas Digital, 308 F.3d at 1204. そうすることは「クレームに限定を持ち込むことに対して忠告している我々の先例に対する違反を招く」、と裁判所は論じている。Id. その分析を要約して、Texas Digital事件の裁判所は次のように説示している:
 その技術における技術者によってクレームの言葉に帰属されるであろう可能な意味を確かめるために、関連する辞書、百科事典、および学術書を調べることによって、また、これらの可能な意味から、発明者によるその言葉の使用と最も一致するものを選択するために内部記録をさらに利用することによって、発明者によって意図された限定の完全な広さがより正確に決定され、説明の記載からクレームへの意図されない限定の不適切な持ち込みはより簡単に避けられるだろう。
Id. at 1205.



 Texas Digital事件の裁判所によって表明された懸念は妥当であるが、その裁判所が採用した方法論は、辞書、学術書、および百科事典のような外部証拠に余りにも多く信頼を置き、内部リソース、特に明細書および出願経過に余りにも少なく信頼を置いている。その裁判所は、明細書は全ての事件で調べられなければならないと書き留めているが、争点となっているクレームの用語の通常の意味に関して、辞書、学術書、または他のソースに基礎を置くかどうかの決定がなされた後にだけ、明細書は調べられるべきであるというクレーム解釈の方法論を示している。その後でさえ、明細書へ頼ることは、明細書が辞書から導かれる意味の一つを排除しているかどうか、クレームの用語の辞書の定義に賛成する推定が「通常の意味とは異なった用語の明確な定義」によって覆るかどうか、あるいは、発明者が「クレームの範囲の明瞭な否認を示し、一目瞭然の排除または限定の言葉もしくは表現を使用することによって、範囲を否認または放棄している」かどうか、を決定するために限定されている。308 F.3d at 1204. 要するに、Texas Digital事件のアプローチは、クレーム解釈における明細書の役割を、明細書が裁判所に対して辞書の定義の全てより少ないものを適用すると結論するよう要求した時に、または、明細書が十分に特定された二者択一の定義もしくは否認を含んでいる時に、クレームの用語の辞書の意味のチェックとして役立てることに制限している。See, e.g., Texas Digital, 308 F.3d at 1202(「他の方法を強いられない限り、裁判所はクレームの用語にその通常の意味の十分な範囲を与えるだろう」); Nystrom v. TREX Co., 374 F.3d 1105, 1111-13 (Fed. Cir. 2004)(辞書の定義を通して用語「board」の通常の意味の「十分な範囲」を確かめ、これらの定義の候補は、説明の記載または出願経過の中で「放棄」されている場合にだけ、考慮から取り除くべきであると説示している); Inverness Med. Switz., 309 F.3d at 1379(「明細書または出願経過が多数の意味の一つだけが意図されていることを明確に示し」ていない限り、クレームは多数の辞書の意味を含むように解釈されるべきである)。このアプローチは、我々の見解では、クレーム解釈において明細書の役割を不適切に制限している。

 明細書にそのような制限された役割を割り付けること、特に明細書の中にクレームの文言の定義が表現されていることを要求することは、明細書は「争われている用語の意味についての唯一の最も良いガイド」であり、明細書は「クレームの中で使用された用語を明瞭に定義する場合または言外の意味によって用語を定義する場合に辞書の役割を努める」という我々のルールと一致しない。Vitronics, 90 F.3d at 1582; Irdeto Access, Inc. v. Echostar Satellite Corp., 383 F.3d 1295, 1300 (Fed. Cir. 2004)(「ガイダンスがはっきりと表現された定義形式で提供されていない場合であっても、意味が特許文書の解釈の中に見いだされるようなまたは解釈によって確かめら得るような言外の意味によって明細書はクレームの用語を定義することができる。」)(citations omitted); Novartis Pharms. Corp. v. Abbott Labs., 375 F.3d 1328, 1334-35 (Fed. Cir. 2004) (same); Bell Atl. Network Servs., Inc. v. Covad Communications Group, Inc., 262 F.3d 1258, 1268 (Fed. Cir. 2001)(「クレームの用語は再定義の明瞭に表現された記述なしに明確に再定義され得る。」)。

 そのように突出して辞書を高く評価することの主要な問題点は、特許の文脈の中のクレームの用語の意味よりも、むしろ言葉の抽象的な意味の審理に焦点を合わせてしまうことである。適切に審理されたクレームの用語の「通常の意味」は特許全体を読んだ後の通常の技術者にとっての意味である。さらに、内部証拠から分離された辞書への強い依存は、技術者にとってのクレームの用語の意味を、個別の文脈(明細書)から外れた抽象的な用語の意味に変換してしまうリスクがある。特許制度は、クレームが発明されたものだけをカバーするという命題に基礎を置いている。最高裁は、「特許権者と公衆の両方にとって、前者が、まさに彼が発明したものおよび何に対して特許をクレームするのかを理解し正しく記載すべきであること以上に、正当で公正であることはない、と我々にはみえる」と述べている。Merrill v. Yeomans, 94 U.S. at 573-74. 特許出願人は発明を記載するために辞書を作成しないから、辞書の定義の使用はこの〔最高裁の〕指示と矛盾し得る。要するに、発明を記載しクレームする特許権者の責任と、個々の言葉のために全ての可能な定義を収集する辞書編集者の目的との間に、断絶が存在するであろう。

 Texas Digital事件路線の事件は辞書の定義を明細書中に明瞭に表現された放棄または再定義がない場合でもいくつかの状況では狭めることを許容しているけれども、余りにも多くの場合、その路線の事件では説明の記載の文脈から完全に離れた辞書の意味の採用を大目に見ることに不適切に依存してきた。問題は、もし、地裁が全ての事件で広い辞書の定義からスタートし、いかに明細書がその定義を言外に制限しているのかを十分に認識できなければ、その誤りはクレーム解釈を系統的に不当に拡張することの原因になるだろうということである。系統的な拡張のリスクは、もし裁判所が、広い意味からスタートしそれを少しずつ削る代わりに、クレームされた用語を発明者がクレーム、明細書、出願経過でどのように使用したかに最初に焦点を合わせるとすれば、大幅に減少する。

 辞書は本質的に拡張的な定義群を提供する。特に一般的な辞書は個々の言葉の全ての使用法(普通のものからあいまいなものまで)を収集することに努めている。一般的な辞書は計画的に特定の技術分野だけでなく多くの異なった状況で使用される用語の定義を収集する。そのような状況では、一つの用語に対する多数の辞書の定義が「最初の特許の出願が継続中の時に特許権者またはその代理人によって表現され特許権者が認めた理解によって確かめられた特許の解釈」を越えて拡張することは避けがたい。Goodyear Dental Vulcanite Co. v. Davis, 102 U.S. 222, 227 (1880). それゆえ、辞書の使用は、発明者の特許によって適切に与えられるべきものを越えて特許の保護を拡張するだろう。See Smith v. Snow, 294 U.S. 1, 14 (1935)(「もし、クレームが二つの解釈を公平に許しているとすれば、採用されべきなのは彼の実際の発明が特許権者に確保した方である。」)。この理由により、我々は、「辞書の一般的な使用は」クレームの用語の「技術特有な意味の証拠に打ち勝つことはできない」と判示した。Vanderlande Indus. Nederland, 366 F.3d at 1321; see also Renishaw, 158 F.3d at 1250, quoting Liebscher v. Boothroyd, 258 F.2d 948, 951 (CCPA 1958)(「辞書に見いだされる定義への無差別な依存は不合理な結論を生むことがある。・・・その言葉が与えられたクレームの中で使用されている場合、どの意味が意図されているのかを決定するために、言葉の様々な認められた定義から恣意的に選ぶ必要はない。対象物<subject matter>、文脈等が正しい結論へ導かないことはないだろう。」)。

 技術的辞書または専門書でさえも、ある状況においては、これらの欠陥のいくつかを持つ。用語が特許権者によって使用されたであろうと同じ方法で学術書で使用されているという保証はない。実際、特許は本質的に新しい何かを記載するのであるから、特許と専門書の食い違いは一般的にありがちである。See Autogiro, 384 F.2d at 397(「発明は新しく、それを記述するための言葉が存在しないことがしばしばある。辞書が常に発明に遅れないわけではない。それは不可能である。」)。

 さらに、異なった辞書は同じ言葉に対していくぶん異なった定義群を含むかもしれない。特定の辞書編集者の好みに依存して、あるいは、他の辞書ではなくある一つの辞書に頼るという、明細書によって知らされない、裁判所の独自の判断に依存して、クレームは上下すべきではない。最後に、辞書または専門書の著者は考えを最も効果的に公衆に伝えるために単純化するかもしれず、それゆえ、個別のクレームの文言の理解に適切でない意味を選択するかもしれない。See generally Ellen P. Aprill, The Law of the Word: Dictionary Shopping in the Supreme Court, 30 Ariz. St. L.J. 275, 293-314 (1998). それゆえ、その結果である定義は、その個別の技術における通常の技術者が理解できるように発明を明確に表現するという発明者の目的を必然的に反映しない。

 しかしながら、すでに述べたように、我々は辞書の適切な使用を排除する意図はない。辞書または同等のソースは言葉の普通に理解される意味を理解する助けとしてしばしば有用であり、我々の裁判所および最高裁の両方でクレーム解釈に使用されてきた。See Exhibit Supply Co. v. Ace Patents Corp., 315 U.S. 126, 134 (1942)(クレームの用語「embedded」を解釈すために辞書に依存している); Weber Elec. Co. v. E.H. Freeman Elec. Co., 256 U.S. 668, 678 (1921)(クレームの用語を定義するために辞書の定義を使用した巡回裁判所に賛成している); Renishaw, 158 F.3d at 1247-53(内部証拠の役割に対する適切な尊重と共に辞書を使用することに賛成している)。辞書の定義は「訴訟を進める公衆にアクセス可能な」先入観のないソースとして価値を有する。Vitronics, 90 F.3d at 1585. 我々がVitronics事件で述べたように、裁判官は辞書および技術専門書を自由に、
基礎となる技術をよりよく理解するためにいつでも考慮でき、また、辞書の定義が特許文書の解釈によって見出されるまたは確かめられる定義と矛盾しない限り、クレームの用語の解釈に辞書の定義に頼ることもできる。
Id. at 1584 n.6.

 また、我々はTexas Digital路線の事件の基礎をなす目的(明細書からクレームに限定を読み込む危険を避けるという目的)が健全であることも認める。さらに、我々は、クレームの意味の解釈に明細書を使用することと、明細書からクレームへ限定を読み込むことの区別は実際に適用するのは難しいものであることを認識している。See Comark Communications, Inc. v. Harris Corp., 156 F.3d 1182, 1186-87 (Fed. Cir. 1998)(明細書に照らしてクレームを読むことと、明細書からクレームへ限定を読むことの間にしばしば微妙な線がある」)。しかしながら、用語を解釈することと限定を読み込むことの間の線は、裁判所の焦点がその技術における通常の技術者がそのクレームの用語をいかに理解するであろうかを理解することにあれば、合理的な確実性と予測性をもって見分けることができる。例えば、明細書はしばしば発明のきわめて特定の実施形態を記載しているが、我々はクレームを実施形態に限定することに対して繰り返し警告してきた。See, e.g., Nazomi Communications, Inc. v. ARM Holdings, PLC, 403 F.3d 1364, 1369 (Fed. Cir. 2005)(クレームは「明細書中の特定の実施形態に例証されたよりも異なった対象物を包含することができる」); Liebel-Flarsheim, 358 F.3d at 906-08; Teleflex, 299 F.3d at 1327; SRI Int’l v. Matsushita Elec. Corp. of Am., 775 F.2d 1107, 1121 (Fed. Cir. 1985). 特に、我々は、特許が一つの実施形態だけを記載している場合に、特許のクレームがその実施形態に限定されるように解釈しなければならないという主張を明確に拒絶してきた。Gemstar-TV Guide, 383 F.3d at 1366. これは、特許法第112条がクレーム自体が特許が許される限定を明らかにすることを要求しているからばかりでなく、その技術における通常の技術者が実施形態に描かれた表現に用語の定義をめったに限定しないからである。明細書からクレームへ限定を読み込むことを避けるためには、明細書の目的はその技術における技術者に発明を製造し使用することを教示し可能とするためであり、そのためにベストモードを提供するためであることを心に留めておくことが重要である。See Spectra-Physics, Inc. v. Coherent, Inc., 827 F.2d 1524, 1533 (Fed. Cir. 1987). その技術の通常の技術者に発明を製造し使用する方法を教える最も良い方法の一つは、特定の場合にその発明を実施する方法の例を提供することである。多くの時間、明細書をその文脈で読むことにより、特許権が目的を達成するために発明の特定の例を明らかにしているのかどうか、あるいは、その代わりに、特許権者がクレーと明細書中の実施形態が厳密に同じ広がりを持っていることを意図しているのかどうか、が明らかになるであろう。See SciMed Life Sys., 242 F.3d at 1341. 特許権者が明細書とクレームの中で用語を使用する方法が、普通はその区別を明らかにするだろう。See Snow v. Lake Shore & M.S. Ry. Co., 121 U.S. 617, 630 (1887)(開示された一つの実施形態の「代替の実施形態を特許権者が考えたことを示すものは文脈の中に全くない」ことは明細書から明らかである。)。

 いろいろ考慮してみてものなお、その分野の技術者が実施形態はクレームの用語の外延を定義するものと理解するだろうか、あるいは本質的に単なる典型的なものと理解するどうか、を決定するのが難しいいくつかの事件が残されるだろう。その仕事はいくつかの事件で困難性をもたらすが、それにもかかわらず、個別の特許の文脈の中でその問題の解決を試みることは、クレームの範囲を明細書に開示された実施形態に厳密に限定したり、クレームの文言を明細書から分離することよりも、実際の発明の範囲をより正確にとらえそうであると我々は信じている。

 Vitronics事件において、本裁判所は同じ問題に取り組み、クレームに不適切な限定を課すことなしに、正しいクレーム解釈に達するためのガイダンスを明らかにした。90 F.3d at 1582. Vitronics事件における我々の判決の目的は、その技術の通常の技術者がいかにクレームの用語を理解するであろうかを裁判所が理解する可能性を増大させることであった。See id. at 1584. その過程で、我々は、クレーム解釈を行うための魔法の公式やQ&A形式入門書は存在しないことを認めた。また、ソースが内部証拠に照らして疑わしくないクレームの意味と矛盾して使用されない限り、裁判所は特定のソースを調べることも禁じられず、特定の順番でソースを分析する必要もない。See id. at 1583-84; Intel Corp. v. VIA Techs., Inc., 319 F.3d 1357, 1367 (Fed. Cir. 2003). 例えば、特許を読んでいる間にクレームの用語に遭遇した裁判官は、特許権者がその用語をどのように使用したのかを決定するために特許の残りの部分を審理する前に、その用語の意味を理解し始めるために一般的な辞書または専門的辞書を調べるのはよいであろう。裁判官が様々なソースを調べる順序は重要ではない;重要なことは裁判所が特許法と特許法が知らせる政策に照らしてソースに適切な重みを割り当てることである。Vitronics, 90 F.3d at 1582. 我々は、Vitronics事件において、クレーム解釈のための厳格なアルゴリズムは提供しようとはせず、単に、一般的に、ある種類の証拠は他の種類の証拠よりも価値がある理由を説明しようとしただけである。今日、我々は、そのアプローチに付き従い、その事件、Markman事件、およびInnova事件において概説されたクレーム解釈へのアプローチを再び是認する。次に、我々は審理中の本事件へこれらの原理を適用する。

IV



 798特許のクレーム1の決定的な文言「スチールシェル壁から内側に延在する複数の内部スチールバッフル<baffles>からなる耐荷重性を増大するためにシェルの内側に配置される更なる手段<means>」は、バッフルに関して三つの明確な要件を課している。第一に、バッフルはスチール製でなければならい。第二に、バッフルは壁部分の耐荷重手段の一部でなければならない。第三に、バッフルは壁から内側に向いていなければならない。両当事者は共に、辞書の定義を明記して、用語「バッフル」は、何かの流れを停止、妨害、遮断する物に関連していることを認めている。内部証拠は、その技術の技術者は、798特許で使用されている用語「バッフル」は一般的な意味を持つと理解しているであろうことを確認する。

 798特許の他のクレームは、バッフルの特別の機能を明記している。例えば、従属クレーム2は「スチール板を貫通することができる銃弾のような発射物をそらせる角度で壁部分に配置」されることができると記載している。クレーム2に用語「バッフル」へのこのような特定の限定が含まれていることからみて、特許権者が用語「バッフル」に既にその限定が含んでいるとは考えていなかったようである。See Dow Chem. Co. v. United States, 226 F.3d 1334, 1341-42 (Fed. Cir. 2000)(従属クレームに冗長性を与えるのを避けるために、独立クレームには従属クレームより広い範囲が与えられるべきであると結論している)。独立クレーム17はさらにこの提案を支持する。クレーム17は、バッフルは「外側シェルを貫通する発射物をそらせるのに役立つ角度で外側シェルから内側に突出して」配置されると記載している。この限定は、もし、その分野における技術者がバッフルがそのような機能を本来備えていると理解するとすれば、不必要であろう。See TurboCare, 264 F.3d at 1123(クレームの用語は「他のクレームが発明をぴったり[同じ]方法で限定している場合に」同じ限定を含むように読むべきではない。)。従属クレーム6は、「両方の外側パネル部分の内部バッフルはモジュールの一の端部から他の端部へ延在するそらせパネルを提供する角度でオーバーラップし相互に結合する」と記載しており、バッフルに追加的な要件を与えている。もし、クレーム1のバッフルが本来特定の角度で設置され、中間バリアを形成するために相互に結合されるのであれば、クレーム6は冗長であることになるだろう。

 さらに明細書は、その技術における通常の技術者が789特許のバッフルを流れを停止、妨害、遮断する耐荷重物として理解するであろうという結論を支持する。明細書はいくつかの部分で発射体をそらすようにバッフルを配置することを論じている。See ’798 patent, col. 2, ll. 13-15; id., col. 5, ll. 17-19. 特許は、従来技術に対する本発明の一つの利点は「費用のかからないハウジングでこれらの強力な衝撃力を有する武器を処理する効果的な方法は存在しなかった」ことにあると記載している。Id., col. 3, ll. 28-30. この記載はこの発明がこの機能を有することを予見していることを明らかにしているが、クレームの意味の中のバッフルとして適格とする目的においては、全てのクレームの全ての実施形態において内部の支持構造が発射物をそらす機能を有しなければならないことを意味するわけではない。明細書は全てのクレームを教示し可能とさせなければならず、発射物をそらすバッフルの使用を論じている説明の部分は、発射物をそらすバッフルを特にクレームしているクレーム2、6、17、および23の目的をかなえるものである。See In re Wright, 999 F.2d 1557, 1561 (Fed. Cir. 1993).

 明細書はバッフルがかなえるいくつかの他の目的を論じている。例えば、バッフルは構造的な支持を提供するとして記載されている。特許は、荷重耐力を増加させる一つの方法は「スチールバッフル15、16の少なくとも一部を内側に向けて」使用することであると記載している。’798 patent, col. 4, ll. 14-15. バッフル16は「丈夫にする三角バッフル」として記載されている。Id., col. 4, line 37. 重要なことは、図4および6には、バッフルが「中間で相互に結合する、無垢でない、内部バリア」の一部として示されていることである。これらの図において、バッフル16は壁の一つの構造的な支持を単に提供しているに過ぎない。図4、6を以下に示す:


 バッフルの他の使用も明細書中に記載されている。図7において、オーバーラップフランジは「対向する[壁]面の間で実質的に中間バリアをつくり出すために複数のバッフルのオーバーラップおよび相互結合を提供している」:

’798 patent, col. 5, ll. 26-29. それゆえ、これらのバッフルは防音材および断熱材または発射物を停止させるための小石および砂利のいずれかで充填することができる小さな区画をつくり出している。Id., col. 5, ll. 29-34. 壁の間のエリアを区画(図7の区画55参照)に分離することにより、モジュールのユーザは各区画に異なった種類の物を選ぶことができ、その結果、モジュールは「簡単にそれぞれの据えつけの特有のニーズのために注文仕立て」にすることができる。Id., col. 5, ll. 36-37. 据え付けの間に壁の中に充填物が配置される時に、バッフルは一つの区画から他の区画への物の流れを、この「注文仕立て」が可能とするように、遮断する。

 798特許の説明の記載が複数のクレーム中に記載されたバッフルによってなされる多様な目的を明らかにしている事実は、用語「バッフル」がそれぞれの場合においてバッフルが列挙された全ての機能に役立つことを要求するように限定して読まれるべきでないことを確証している。我々は、「発明はいくつかの目的を達成すると特許が力説する事実により、全てのクレームが全ての目的を達成する能力を有する構造に限定して解釈される必要はない」と判示してきた。Liebel-Flarsheim, 358 F.3d at 908; see also Resonate Inc. v. Alteon Websystems, Inc., 338 F.3d 1360, 1367 (Fed. Cir. 2003). 発射物をそらすことは798特許のバッフルの利点の一つではあるが、特許は内側に延在する構造が常にその機能を達成する能力を有していることは要求していない。したがって、その技術の技術者は、壁面の一つから内側に延在する構造は鋭角または鈍角の場合は「バッフル」であり直角に配置される場合は「バッフル」ではないように、798特許の開示およびクレームを解釈することはないであろうと我々は結論する。



 「クレームは有効性を、もし可能であれば、維持するように解釈されるべきである」、Rhine v. Casio, Inc., 183 F.3d 1342, 1345 (Fed Cir. 1999)、という原則に頼って、AWHは、用語「バッフル」は、もしその用語が限定的に解釈されないとすると、主張されるクレームは無効であるから、限定的意味を与えられるべきであると主張する。

 クレームは有用性を維持するように解釈されるべきであるという格言を我々は知っているが、我々はその原則を広くは適用してきておらず、有効性の分析がクレーム解釈の正式の構成要素である制度は間違いなく是認してこなかった。See Nazomi Communications, 403 F.3d at 1368-69. その代わり、我々は「クレーム解釈の利用可能な全てのツールを適用した後、クレームが依然として、多義的であると裁判所が結論した」事件にその原則を制限してきた。Liebel-Flarsheim, 358 F.3d at 911; see also Generation II Orthonics Inc. v. Med. Tech. Inc., 263 F.3d 1356, 1365 (Fed. Cir. 2001)(「提案されたクレーム解釈が『実施可能であり』、健全なクレーム解釈の原則に基礎を置いており、かつクレームの明瞭な文言を修正または無視しない場合に、クレームが有効性を維持するように解釈されるに過ぎない。」);; Elekta Instrument S.A. v. O.U.R. Scientific Int’l, Inc., 214 F.3d 1302, 1309 (Fed. Cir. 2000)(「修正されたクレームは唯一の正当な解釈で受け入れることができると結論したから、我々は有効性を維持するために明白な意味<plain meaning>から離れてクレームを解釈することはできない」); E.I. du Pont de Nemours & Co. v. Phillips Petroleum Co., 849 F.2d 1430, 1434 (Fed. Cir. 1988)(クレームの有効性を維持するために限定がクレーム付加されるべきであるという主張を拒絶している)。そのような事件において、我々は、PTOは無効な特許を発行しないだろう、それゆえクレームの文言の多義性が特許の有効性を維持するように解決されるべきであると推論することが合理的であるかどうかを見ている。

 それが、そもそもその原則を生み出す理論的根拠である。Klein v. Russell, 86 U.S. (19 Wall.) 433, 466 (1873)事件において、訴えられた侵害者がより広い解釈を主張したが、再発行特許の所有者は特許の狭い解釈の主張をした。最高裁は、法は「再発行はオリジナルの特許と同じ発明のためのものであることを要求している」と書き留めている。Id. 米国特許法第251条の前の条文に基づいて与えられた再発行は広い解釈に基づくのは不適当であるから、最高裁は、「特許庁長官は義務を履行し」、無効な特許は発行しない「と推定した」。この理由等により、最高裁は、争われているクレームの文言を、「彼が使用した文言と矛盾なく行うことができた」から、「特許および特許権者が主張した解釈を維持する」ように解釈した。Id. それゆえ、個別の事件におけるこの理論の妥当性は、PTOが一つのクレーム解釈がクレームを無効とするであろうことを認識したであろう、かつPTOがそれを用語の正しい解釈であると考えて特許を発行しなかったであろうという推論の強さに依存する<The applicability of the doctrine in a particular case therefore depends on the strength of the inference that the PTO would have recognized that one claim interpretation would render the claim invalid, and that the PTO would not have issued the patent assuming that to be the proper construction of the term >。本件においては、Klein事件や有効性を維持するようにクレームを解釈する理論に頼った他の事件とは異なり、クレームの用語は多義的ではない。したがって、一つの可能な解釈がクレームを無効とし他の解釈では無効ではないといえるのかどうかを検討する必要なしに、解釈することができる。それゆえ、有効性を維持するようにクレームを解釈する理論(とにかく有用性が制限された理論)は本件においては適用しない。

 要するに、我々は用語「バッフル」の限定的な定義に賛成するAWHの主張を拒絶する。我々は地裁のクレーム解釈と意見を異にするから、我々は非侵害のサマリ判決を破棄する。クレーム解釈に関する我々の判断に照らして、さらなる手続きのために侵害請求を地裁に差し戻すことが必要である。



 Phillips氏によるトレードシークレット不正使用の訴えに関しては、地裁は制限法を根拠にトレードシークレットの請求を却下しており、See Phillips, 363 F.3d at 1214-1216、我々はこの争点について地裁の決定を支持した合議体の判断に同意する。したがって、本争点についての合議体の処分に基づき、我々は地裁のトレードシークレット請求の却下を維持する。AWHの交差控訴に関しては、交差控訴は不適当であるという合議体の理由付けと結論に我々も同意する。See id. at 1216. したがって、我々は交差控訴を却下する。

VI

 大法廷における再口頭弁論を認める我々の命令の中で、我々は様々な問題について摘要書を提出するよう当事者らに求めた。それには次のものが含まれる:「Markman v. Westview Instruments, 517 U.S. 370 (1996)事件最高裁判決およびCybor Corp. v. FAS Technologies, Inc., 138 F.3d 1448 (Fed. Cir. 1998)事件の我々の大法廷判決と矛盾なく、本裁判所が事実審裁判所〔地裁〕のクレーム解釈の何かの点について敬意を与えることは適切か?もしそうなら、どんな点についてか、どんな状況においてか、どの程度か?」この問題を審理した後、我々は今回はこの争点については扱わないと結論した。それゆえ、我々はCybor事件における以前の大法廷判決をそのまま残しておく。

 各当事者らは本控訴の自身の費用を負担するものとする。

一部維持、一部破棄、一部却下、および差戻。

 


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