翻訳 井上雅夫 2004.01.17; 25     ↑UP 

 
MIDCOミーンズ・クレーム特許事件CAFC判決

2003.9.22
目次
 裁判所の意見
 反対意見
 
 訳注
連邦巡回区合衆国控訴裁判所(CAFC)
03-1032

原告−被控訴人 MEDICAL INSTRUMENTATION AND DIAGNOSTICS CORPORATION
被告−控訴人 ELEKTA AB, ELEKTA INSTRUMENT AB, ELEKTA INSTRUMENTS, INC.
及びELEKTA ONCOLOGY SYSTEMS, INC.,


2003年9月22日判決

NEWMAN、CLEVENGER、及びSCHALL巡回裁判官

裁判所の意見 CLEVENGER巡回裁判官    反対意見 NEWMAN巡回裁判官


CLEVENGER巡回裁判官(裁判所の意見、多数意見)

 Elekta AB, Elekta Instrument AB, Elekta Instruments, Inc.、及びElekta Oncology Systems, Inc. (総称して「Elekta」)は、Elektaの製品は米国特許第5,099,846号(「846特許」)及び第5,398,684号(「684特許」)を侵害しないというElektaの法律問題の申立(「JMOL」)を却下したカルフォルニア南地区合衆国地方裁判所の判決に対して控訴している。Med. Instrumentation & Diagnostics Corp. v. Elekta AB, No. 97-CV-2271 (S.D. Cal. Sept. 6, 2002) (JMOLを却下する命令)。また、Elektaは、846特許及び684特許は無効ではないというMedical Instrumentation and Diagnostics Corp. (「MIDCO」)の主張を認めた地裁の部分サマリ判決に対しても控訴している。Instrumentation & Diagnostics Corp. v. Elekta AB, No. 97-CV-2271 (S.D. Cal. Nov. 5, 2001)(非無効の部分サマリ判決を認容する命令)。地裁は「変換手段」限定の解釈において誤っており、クレーム解釈に基づき非侵害が認められるから、我々は非侵害のJMOLの地裁の却下を取り消す。また、Elektaは846特許及び685特許の有効性に関する重要な事実の真正な争点を提起するに十分な証拠を提出したから、我々は非無効のサマリ判決の認容も取り消す。したがって、我々はその争点及び侵害の争点におけるElektaに有利な判決のために本件を地裁に差し戻す。



 MIDCOは846特許及び684特許の特許権者であり、両方の特許は多種のスキャニング源からの画像の表示を用いた外科治療の計画のためのシステムに関する。648特許は846特許の出願の継続出願であり、ターミナル・ディスクレーマーを条件としたものである。両方の特許の開示は特に、外科医が手術する場所におかれる3次元座標システムを使用する脳外科手術の一種である定位脳固定外科手術<stereotactic surgery>に関する。Dorland's Medical Dictionary 1699 (29th ed. 2000).

 人間の脳の手術は極めて複雑であり、患者の脳のいかなる診査も極めてリスクが高いから外科的手術前の計画は特に重要である。それゆえ、もし手術前に外科医が患者の脳を「視覚化」する技術を使うことによって問題の部分の正確な地図をつくることができるとすれば、極めて好都合である。定位脳固定外科技術は「既知の解剖学及び局所解剖学における指標に関連する空間の座標の知識」(684特許、1欄31−3行)を使用してその場所を決定することによって表面から見えない脳組織を外科医が「診察」することを可能とする。患者の頭蓋骨を必要以上に開けることを回避するために、指標として、ある目標部分に取り付けられる電極を用いて、定位脳固定外科手術は本質的に「めくら」で行われる。同、1欄36−40行。脳組織の中のプローブの位置は極めて重要であるが、プローブは見えず、またプローブの位置は多くの複雑な角度変数に関係しているからその位置を概念化することは外科医にとって難しいことである。同、1欄40−60行。
 846特許及び684特許に開示された発明は、コンピュータ化されたアキシャルトモグラフィー(「CT」)及び核磁気共鳴(「NMR」)スキャニングを含む各種の画像技術と定位脳固定外科技術とを組み合わせることによって、脳内組織を概念化させる外科医の能力を向上させることを企てている。明細書は目的を次のように説明している:「本発明は主として大脳皮質下の組織、病巣、又は異常箇所のような局所的組織における定位脳固定外科への支援を改善するために、各種の複合画像を作成するコンピュータグラフィック技術及びスキャニング技術の使用に関する。」同、2欄31−36行。画像技術の使用はよりよい解決をもたらし、脳組織の推測よりも直接的な特定を可能とし、それゆえ、定位脳固定外科手術をより正確に行うことができる。

 846特許及び684特許の両方は「各種の別々のスキャナ画像源からの画像のビデオ表示を行うための方法及び装置」を記載している。846特許、6欄24−26行; 684特許、6欄25−27行。本発明の装置はこの画像表示を行うために一緒に働くいくつかの異なった構造からなる。この装置は異なったスキャナ源から画像データを得ることができ、その後、その画像データを選択されたデジタルフォーマットへ変換する。選択されたフォーマットへ変換するために、その装置は異なったスキャナ源から画像を受け、それらの画像が同じ配列(1対1ピクセル配列)で同じ数のピクセルを有する一つのフォーマットへ変換し、それにより互いに容易に比較することができる。また、この装置は画像を蓄積し、一つの画面上に少なくとも二つの画像を選択的に呼び出し表示することができる。画面上の複数の画像は独立して操作でき、また、好ましくは、最適な比較のために互いに一致するように形やサイズを決めることができる。さらに、本発明の装置は画像の各種の比較方法を行うことができ、定位脳固定座標を決定するために画像を使用することもできる。

 本発明の装置は腫瘍生体組織検査、視床切除手術、及び他の神経障害の治療のような定位脳固定外科手術において好適に使用される。684特許、9欄62−68行。本装置は外科手術の手順の事前の正確な計画において外科医を支援するために使用することができるだけでなく、好ましい実施形態は外科手術中に外科医が画像を見て比較するために使用することもできる。赤外線タッチ画面により外科医は手術を行っている間に菌が入らない方法でシステムと直接交信することができる。Id., col. 10, ll. 10-17. 

 1997年、MIDCOは、ElektaのGammaKnife、GammaPlan、ScopePlan、及びSurgiPlan製品が846特許及び684特許を侵害するとして、Elektaに対して特許権侵害訴訟をカルフォルニア南地区合衆国地裁に起こした。Elektaは積極抗弁を主張し、非侵害及び無効の反訴を行った。本訴訟においてMIDCOによって主張された独立クレームは684特許のクレーム1と846特許のクレーム9だけであり、両方とも装置クレームである。684特許[訳1]のクレーム1は以下のとおりである:
 複数の別々の画像源から複数の画像を取得する手段<means for>、
 前記複数の画像を選択されたフォーマットに変換する手段、
 前記複数の画像を蓄積する手段、
 前記複数の画像のうち少なくとも2つの画像を選択的に呼び出し1つの表示装置上に表示する手段、
 前記の少なくとも2つの画像のうち少なくとも1つを他の画像と独立して操作する手段、
 少なくとも2つの画像を比較する手段、
 定位脳固定座標を決定し前記の少なくとも2つの画像から体積の決定を行う手段、および
 前記の少なくとも2つの画像から距離及び面積を決定する手段
 からなる各種の画像源からの画像の表示を行う装置<apparatus>。
684特許、19欄14−32行。846特許のクレーム9は極めて類似しているが、脳の画像の使用だけを特にクレームしている。846特許、19欄55行−20欄11行。

 マークマン・ヒアリングを行った後、地裁はクレーム解釈の命令を行い、その後、クレーム解釈の明確化のためのElektaの申立を一部認容し一部却下する命令を行った。Med. Instrumentation & Diagnostics Corp. v. Elekta AB, No. 97-CV-2271 (S.D. Cal. Apr. 4, 2001) (第1のクレーム解釈命令); Med. Instrumentation & Diagnostics Corp. v. Elekta AB, No. 97-CV-2271 (S.D. Cal. July 13, 2001)(クレーム解釈の一部明確化)。地裁は、846特許のための分析は本質的に同じであろうと結論して、684特許のクレーム1を分析することによってクレームを解釈した。両当事者はこの扱いに対しては争っていない。

 地裁は「前記複数の画像を選択されたフォーマットに変換する手段<means for converting said plurality of images into a selected format
>」の機能を、取得した多数の画像を特定の選択されたデジタルフォーマットへ変換することと解釈した。その後、裁判所はこの機能に対応する構造はVMEバスをベースにしたフレームグラバ<framegrabber>ビデオ表示ボード、コンピュータ・ビデオ・プロセッサ(「CVP」)、及び「当業者に知られたデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアルーチン」であると認定した。フレームグラバ及びCVPの両方はアナログデータを選択されたデジタルフォーマットに変換すること(アナログ−デジタル変換として知られる)だけを行う。被告装置はアナログ−デジタル変換は行なわず、ソフトウェアを使用してデジタル−デジタル変換のみを行う。特許権者は、被告装置はフレームグラバ又は均等物と考え得るものを有していないことを認めている。当事者間の主要な争点は、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアを変換手段に対応する構造に含めた点で地裁は正しかったかどうかである。もし、そうなら、侵害の判断は正しいことになり、そうでなければ、その判断は間違いということになる。

 MIDCOは特許は無効ではないとの部分サマリ判決の申立を行い、地裁はこの申立を認めた。その後、本件は陪審に付され、陪審は両方の特許が侵害されており、損害賠償額として1600万ドルを認める認定を行った。評決後、地裁はElektaのJMOLの申立を却下した。

 Elektaは、現在、本裁判所に控訴し、地裁のクレーム解釈は多くのクレームの用語に関して誤っており、非侵害のJMOLが認められるべきであり、地裁は非無効の部分サマリ判決において誤った旨を主張している。我々は28 U.S.C. 1295(a)(1)に基づく控訴管轄権を有している。

II

 我々は、JMOLの基準を再適用することにより非侵害のJMOLの地裁の却下を再審理するが、「陪審の事実認定が実質的な証拠によって支持されない場合又は陪審の評決に含まれる法的結論がこれらの認定によって法律上支持できない場合のみ」Cybor Corp. v. FAS Techs., 138 F.3d 1448, 1454 (Fed. Cir. 1998) (en banc)、我々は申立の却下を取り消す。

 侵害の決定は2ステップの分析である。第1のステップは特許クレームの意味と範囲を確かめることであり、第2のステップは正しく解釈されたクレームと侵害とされる装置とを比較することである。Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 976 (Fed. Cir. 1995) (en banc), aff'd, 517 U.S. 370 (1996).  第1のステップ(クレーム解釈)は初めからの再審理に服する法律問題である。Cybor, 138 F.3d at 1454.  第2のステップ(被告装置とクレームの対比)は事実問題である。Bai v. L & L Wings, Inc., 160 F.3d 1350, 1353 (Fed. Cir. 1998).

 我々は地裁のサマリ判決の認容を初めから再審理する。Golan v. Pingel Enter., Inc., 310 F.3d 1360, 1367 (Fed. Cir. 2002).

III

 Elektaは、地裁はクレーム解釈において多くの誤りを犯したと主張するが、我々は「変換手段<means for converting>」の解釈にだけ焦点を当てる。なぜなら、我々はそれが侵害問題の方向を決定するものであると認めるからである。この限定はミーンズ・プラス・ファンクション<means-plus-function>形式で書かれており、米国特許法112条第6パラグラフに基づくことに争いはない。112条第6パラグラフは次のように規定する:「組み合わせのクレームにおける構成要素は、それらを支持する構造・・・の記載なしに、特定の機能を実行するための手段<a means>又はステップとして記載することができる、そして、そのようなクレームは明細書に記載された対応する構造<the corresponding structure>・・・及びその均等物に及ぶものと解釈される。」35 U.S.C. 112, 6 (2000).  ミーンズ・プラス・ファンクション・クレームの解釈における第1のステップは、特定のクレームされた機能を確認することである。Micro Chem., Inc. v. Great Plains Chem. Co., 194 F.3d 1250, 1258 (Fed. Cir. 1999).  その分析における第2のステップは明細書に目を向け、その機能に対応する構造を確認することである。Id.  この第2のステップの元では、「明細書に開示された構造は、明細書又は出願経過がクレームに記載された機能にその構造を明確に関連又は関係づけている<clearly links or associates>時のみ『対応する』構造<'corresponding' structure>である」。

 地裁は、「変換手段」限定の機能は、取得した多数の画像を特定の選択されたデジタルフォーマットへ変換することであり、この機能に対応する構造は、フレームグラバ、CVP、及び「当業者に知られたデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアルーチン」であると解釈した。Elektaは、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアを対応する構造とした地裁の結論は誤りであると主張する。Elektaによれば、両方の特許が変換手段と関連づけている開示された構造はフレームグラバとCVPだけである。Elektaは、明細書中にいくつかの種類のソフトウェアが確かに開示されているが、そのようなソフトウェアは、画像を「操作する手段」のような、他の機能に明確に関連づけられていると指摘する。

 MIDCOは、フレームグラバ及びCPVに加えて、地裁は、ソフトウェアは変換機能に対応する構造としても開示されていると正しく認定していると論じる。MIDCOは、変換機能に対応する構造としてソフトウェアが明確かつ適切に開示されていると主張する明細書中の3カ所を指摘する:(1)図1のブロックダイアグラムにおける「画像フォーマット変換<Image Format Conversion>」ボックス、(2)明細書(684特許、10欄28行)の「画像フォーマット変換」の言及、及び(3)明細書(同、11欄43行)の「画像編集」の言及。

 我々は、地裁は、「変換手段」の機能を、取得した多数の画像を特定の選択されたデジタルフォーマットへ変換することであると正しく解釈したと結論する。また、地裁は、フレームグラバ及びCVPの両方が対応する構造であると正しく認定した。明細書はこれらの構造を取得した画像を選択されたフォーマットへ変換する機能と明確に関連づけている。684特許、16欄4−6行(「[VMEバスをベースにしたフレームグラバ・ビデオ表示ボード]は標準(RS−170)又は非標準ビデオ信号をメモリに記憶するデジタルフォーマットに変換する能力がある。」);同、17欄65行−18欄2行(コンピュータ・ビデオ・プロセッサ・ユニットのレベルで、非標準ビデオ信号がそのシステムの信号プロセッサによって分析され変換され、標準RS−170ビデオ出力に変換され、その後、VMEバスをベースにしたフレームグラバ表示ボードに出力される。」)。しかし、地裁は、この限定に対応する追加的な構造としてソフトウェアを認定した点で誤った。明細書又は出願経過中に、ソフトウェアを、選択されたフォーマットへ画像を変換する機能に明確に関連又は関係づけているものは何もない。

 構造を、クレームされた機能に明確に関連又は関係づける特許権者の義務は、特許権者に112条第6パラグラフに基づいて機能の表現でクレームを記載することを許すことの対価である。Budde v. Harley-Davidson, Inc., 250 F.3d 1369, 1377 (Fed. Cir. 2001). 112条第6パラグラフは、クレームされた装置<apparatus>における手段として使用することができる全ての可能な構造をクレームの中に記載することを特許権者に要求することなしに、特許クレームにおける手段<means>表現の使用を許すことが意図されている。O.I. Corp. v. Tekmar Co., 115 F.3d 1576, 1583 (Fed. Cir. 1997).  しかしながら、「この便宜を使用するために払わなければならない代償は、記載中に明記された手段及びその均等物へのクレームの限定である。」Id.  もし、特許権者がクレームされた機能に対応すると意図する構造に関して明細書が明確でないのならば、特許権者は代償を払わずに明細書中に構造のいかなる言及によっても縛られない機能的用語でクレームすることを試みていることになる。そのようなことは制定法に基づき容認することはできない。

 ある構造が、対応する構造として適格であるために、クレームされた機能に明確に関連づけられるという要件は、発明は詳細に指摘されかつ明瞭にクレームされなければならないという米国特許法112条第2パラグラフの要件によっても支持されている。B. Braun, 124 F.3d at 1424-25.  「クレームが発明を『特定しかつ明瞭にクレーム<particularly pointed out and distinctly claimed>』する要件は、クレームが明細書の他の部分と共に読まれるとき、その発明の分野における経験のある者が特許されたものの範囲を理解するであろう時に満たされる。」S3, Inc. v. nVIDIA Corp., 259 F.3d 1364, 1367 (Fed. Cir. 2001).  明細書はフレームグラバとCVPを画像変換機能に対応する構造として開示しているからクレームの不正確さは本件の争点ではないが、ソフトウェアを変換手段と関係づけていないから、その機能を実行する手段としてその特定な構造を特定しかつクレームしていないことになる。See B. Braun, 124 F.3d at 1425 (「Braunの明細書はディスクを正しい場所にしっかりと保持する構造としてバルブシートを適切に開示していないから、Braunの明細書はその特定な構造を特定しかつ明瞭にクレームしていない。」)。 

 本件においては、地裁でさえソフトウェアと変換機能との関連は完全には明確ではないことを認めている。地裁は、「明細書はデジタル−デジタル変換を実行する手段の開示については、あまり明確ではない」と述べている。それにもかかわらず、地裁は、これらの変換を実行する技術は本出願時点の当業者に知られていたから、当業者はソフトウェアが変換機能に対応する構造であることを理解したであろうと結論した。明細書がクレームされた機能に対応する構造を適切に記述し関連づけているかどうかの問題に答えるために、我々が関連分野に習熟した者の観点からその開示を見なければならないことはもちろん正しい。Budde, 250 F.3d at 1376.  MIDCOは、本出願時点の習熟したプログラマは画像サイズのデジタル−デジタル変換のプログラムを書くことができたことを示すいくつかの証拠を地裁に提出した。我々はその主張を疑うべき理由を持たない。医療画像分野におけるソフトウェアプログラムに関して、MIDCOの専門家証人は、「この分野の習熟したソフトウェアプログラマは・・・ルーチン、モジュール、さらに開発中のより大規模なプログラムに組み入れることができる・・・小規模なプログラムの情報源を知っていたと思います。これらのプログラムはよく知られた情報源から広く利用でき、あるいは他のソフトウェア開発者から入手可能でした・・・。」と説明した。その後、MIDCOは、特許出願時に入手可能であったであろうデジタル−デジタル画像変換プログラムのサンプル(どれも本特許で引用されていない)を提出した。

 しかしながら、これは正しい審理ではない。正しい審理は、本特許の開示を見て、単に当業者がそのようなソフトウェアプログラムを書くことができたであろうかどうかではなく、当業者がその開示がデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアを含むと理解したであろうかどうかを決定することである。See Atmel Corp. v. Info. Storage Devices, Inc., 198 F.3d 1374, 1380 (Fed. Cir. 1999)(「開示されているものの解釈は当業者の知識に照らしてなされなければならない。」); see also Omega Eng'g, Inc. v. Raytek Corp., Nos. 01-1546, 02-1478, slip op. at 28-29 (Fed. Cir. July 7, 2003)(専門家証人の陳述は明細書中の文言が何も提示しないものに明確な関連を作り出すために「特許明細書を書き換える」ために使用することはできないと説示している); Medtronic, Inc. v. Advanced Cardiovascular Sys., Inc., 248 F.3d 1303, 1313 (Fed. Cir. 2001)(「当業者はこれらの構造と、[記載された]連結隣接要素の機能との間の明確な関連又は関係がわからなかったであろうから」、特定な構造が対応する構造ではないと認定している)。単に当業者がその構造を実装できたであろうかどうかではなく、当業者が明細書自体がその構造を開示していると理解できたであろうかどうかを決定することが重要である。See Atmel, 198 F.3d at 1382(「112条第6パラグラフの交換条件は、構造の完全な脱落がある場合は満たすことができない。」)。実際、対応する構造を認定するためにその開示に頼る要件は、112条第6パラグラフ自体から来る。特許の開示から離れた関係のない当業者の知識に頼ることは正しくない。

 本件において、MIDCOの専門家証人は、デジタル−デジタル変換のための構造の明細書中の開示を全く指摘していない。その代わりに、本特許中のデジタル−デジタル変換について質問されたときに、彼は次のように説明した:「例えば、ピクセルの数を他のピクセルの数にデジタルフォーマットを変更する実際の様子は、書類の中では開示や議論がなされていません・・・その分野でよく知られていて、説明の必要がなかったからです。」

 さて、我々は、MIDCOが変換手段に対応する構造としてデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアが開示されていると主張する明細書の3つの部分と、ソフトウェアと変換の関連を我々が認定でき得るとする部分に関するMIDCOの他の主張について検討する。我々は、変換機能に明確に関連するソフトウェアを十分に開示するものは明細書又は出願経過には存在しないと結論する。



 両方の特許の図1における「画像フォーマット変換<Image Format Conversion>」ボックスは構造の描写ではない。この図は、主張するクレームの対象である装置の構造ではなく、本発明の好ましい方法のステップを図示するために描かれたものである。684特許、9欄44−45行。この図は構造を全く記述していないから、方法のステップの記載以外の何かを当業者が理解するであろう徴候は存在せず、この図は画像を選択されたフォーマットに変換する機能に対応する構造としてソフトウェアを明確に関連づける役割を果たしていない。

 これはOverhead Door Corp. v. Chamberlain Group, Inc., 194 F.3d 1261 (Fed. Cir. 1999)事件[訳2]における状況とは異なる。この事件においては、「第2のメモリ選択スイッチ手段」に対応する構造は、本特許の一つの図に示された機械的スイッチの実施例だけを含み、他の図におけるフローダイアグラムによって図示されたソフトウェアの実施例は含まないと地裁が認定したのは誤りであると、我々は判示した。本裁判所はソフトウェアの実施例も代わりの対応する構造として含まれるべきであると判示した。Id. at 1272.  ソフトウェアの実施例は、手段限定<the means limitation>のクレームされた機能に明確に関連づけられている。Id.  第1に、当業者がフローダイアグラムの関連部分がクレームされた機能を実行するためのソフトウェア・オペレーションを記述していると解釈するであろうことを専門家の証言が示している。Id.  第2に、出願経過が「スイッチ手段は手動スイッチだけでなく電子的スイッチも含む」という明示的な陳述を含んでいる。Id.  したがって、Overhead Door事件における特許のフローダイアグラム図は当業者によって、記載された機能にソフトウェアの実施例が明確に関連するものとして理解されたであろう。対照的に、本件特許の図1における「画像フォーマット変換」ボックスは問題の装置クレームよりも方法クレームに関連しており、当業者によって、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアはもちろんのこと、構造に関連すると理解されるであろう証拠は全く存在しない。

 図1が全く構造の描写ではないことは、本特許が実際の構造を描写する2つの図を含んでいるという事実によっても更に明らかである。本件特許の図2は本発明の好ましいハードウェアを描いたブロックダイアグラムである。図2の中のブロックの一つは「コンピュータ・ビデオ信号プロセッサ<Computer Video Signal Processor>」と記載されており、明細書はこの構成部分の中で、「各種の(典型的には非標準の)フォーマットのスキャンデータが本発明に従い標準フォーマットに変換可能である」と説明している。684特許、10欄66行。また、その図は「セントラル・プロセッシング・ユニット<Central Processing Unit>」と記載されたブロックを有し、明細書は「セントラル・プロセッシング・ユニット(CPU)は・・・好ましくはディスク記憶装置、フロッピーディスク記憶装置、テープ記憶装置、及び高速グラフィック・ビデオ画像プロセッサを備える高解像度フレームグラバから構成される」と説明している。同、11欄8−13行。図3は好ましい装置を描写しており、その図面の番号を付された部分のどれもソフトウェアには関連しない。したがって、変換機能に明細書によって明確に関連された2つの構造が本特許の図面の中に記載されているが、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアは記載されていない。既に述べたように、開示された構造はアナログ−デジタル変換を行うが、デジタル−デジタル変換は行わない。

 もし、図1の「画像フォーマット変換」と記載されたボックスが、クレームされた方法における一つのステップに単に関連している代わりに、実際に何かの構造に関連していたとすれば、状況はかなり異なっていたかもしれない。過去の事件において、我々は、明細書が当業者に知られていたであろう構造への一般的な言及を含み、その構造がクレームされた機能の実行に明確に関係する場合に、対応する構造であるものを認定することにおいて寛大であった。例えば、Intel Corp. v. VIA Technologies, Inc., 319 F.3d 1357, 1366 (Fed. Cir. 2003)事件において、我々は、明細書はどのように改造されなければならないかを厳密に示すコア・ロジック<core logic>の内部回路を開示していないにもかかわらず、特定のプログラムを実行するために改造された「コア・ロジック」がクレームされた機能に適切に対応する構造であると認定した。コア・ロジックは明細書中に構造として記載されており、コア・ロジックはクレームで記載された機能を実行することができるように改造されたコア・ロジックであると明細書は説明している。同。この事件においては具体的な回路の開示は必要がなく、同様に、本件においても、ソフトウェアが変換機能に関連しており、当業者がその種のプログラムを使用することを知っていたであろう場合は、具体的なプログラムコードの開示は必要ではないであろう。しかしながら、本件においては、「画像フォーマット変換」ボックスは構造の類型に関連しておらず、そうであるから変換機能にソフトウェアを関連させる役には立っていない。もし、図1におけるボックスが「画像変換ソフトウェア」と記載されていたとすれば、あるいは、少なくとも装置の部分を描いた図の中にそれが出現していれば、Intel事件における状況により類似したであろう。

 同様に、S3, Inc. v. nVIDIA Corp., 259 F.3d 1364, 1370-71 (Fed. Cir. 2001)事件において、我々は、センサーの電子的構造及びその動作の詳細は記載されていないにもかかわらず、「セレクタ」は「選択的に受ける・・・手段」に対応する構造として適切に開示されていると結論した。その特許の開示及び図面において言及されたセレクタは、846特許及び684特許における「画像フォーマット変換」の言及とは違って、明確に構造の類型であった。セレクタはその分野でよく知られた標準的な部品であり、そのような標準的な部品はその特許におけるのと同じ方法で表現されるのが普通であるという証言が存在した。Id. at 1370.  また、当業者は「明細書中に示されたセレクタ[は]その構造[が]よく知られた単純なマルチプレクサのような電子装置であると認識する」であろうという証言も存在した。Id.  当業者の知識を持って明細書の中に開示されたものに関係づけることができない本件における証拠とは違って、S3, Inc.事件の証言は、クレームされた機能に明細書が特定の構造を明確に関連づけていることを当業者が認めるであろうことを示している。本件においては、「画像フォーマット変換」ボックスが変換機能のためのソフトウェアに関連していると当業者が理解するであろうという徴候はない。

 Budde v. Harley-Davidson, Inc., 250 F.3d 1369 (Fed. Cir. 2002)事件もこの系列の事件の他の例である。Budde事件において、我々は、特許が「ステイタス・センシング手段」に適切に対応する構造を開示していると地裁が正しく認定したと判示した。Id. at 1381.  その機能の一部は取り入れ口マニフォールドの中で真空を測定するものであり、「真空センサーは商業的に入手可能なユニットであり、中央ユニットへのアナログ信号を生成する」と明細書は説明している。Id. (internal quotation marks omitted).  また、その特許は「真空センサー」と記載されたボックスを含むブロックダイアグラムを有していた。Id.  我々は、「商業的に入手可能なユニット」としての真空センサーの明細書の記述は、記載された機能を実行することができる構造を開示するものと当業者によって理解されるであろうと認定した。Id. at 1382.  本件特許の明細書とは違って、Budde事件の明細書はクレームされた機能に明確に関連する一般的な<generic>構造を開示していた。

 一般的な構造の言及とクレームされた機能の間の何らかの関連を認定した我々の以前の事件における状況とは異なり、本件においては、本件特許の図1の「画像フォーマット変換」ボックスを、画像を選択されたデジタルフォーマットに変換する機能に関連させるものは何もない。



 変換手段に対応する構造としてデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアを開示しているとMIDCOが主張する明細書の第2の部分は、「画像フォーマット変換」のもう一つの言及部分である。684特許、10欄28行。明細書は次のように説明している:
 本発明の方法は図1に示されている。本発明の方法は、患者の頭部又は他の身体部分のスキャニング10;得られたスキャンの画像取得12;同じフォーマットへ変換するための全ての画像の画像フォーマット変換14;画像保存16;複数画像呼び出し及び表示18;及び画像操作及び比較20からなる。
同、10欄25−32行(強調付加)。 再び、これは図1の簡単な説明であり、既に検討したように、装置というよりも本発明の方法を説明している。当業者がこのフレーズをデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアに言及していると理解するであろうという証拠は存在しない。したがって、この「画像フォーマット変換」への言及も画像を選択されたフォーマットに変換する機能に対応する構造としてソフトウェアを明確に関連づけるためには役立たない。



 変換手段に対応する構造としてソフトウェアを開示しているとMIDCOが指摘する明細書の第3のそして最後の部分は「画像編集」への言及である。684特許、11欄43行。明細書の完全な一節は次のとおりである:
 画像取得、エンハンスメント部、及び操作のための部分は以下のためのモジュール・ソフトウェア・サブルーチンを含む:1)画像キャプチャ、保存、及びアーカイブ;2)全体の画像又はユーザが定義した興味のある部分のピクセル分析;3)ズーム及びパン機能;4)スムージング、シェーピング、及び疑似カラーリング機能とともに画像の対比及びフィルタリング;5)画像比較;6)画像編集;及び7)各種エッジ検出ルーチン・・・
同、11欄36−44行(強調付加)。図1の「画像フォーマット変換」の言及及び明細書中の「画像フォーマット変換」の関連する議論とは違って、明細書のこれの引用部分はソフトウェアを記述している。しかしながら、「画像編集」フレーズの使用を、画像を選択されたデジタルフォーマットへ変換する機能への言及として当業者が理解するであろうという証拠は存在しない。引用された節の前には、「ソフトウェアは、CPU34に装備され、好ましくは、画像取得、エンハンスメント及び操作部と、グラフィック及びユーザ特有機能部から構成されるマルチ−モジュラー2分割基盤で作成される」という記載がある。684特許、11欄32−36行。もし、特許権者が「画像編集」を画像を変換する機能に関連させることを望んだなら、必要であったものはソフトウェアが含む部分のリストに「変換」を加えることだけであった。実際に記載されているように、変換が記載されたソフトウェアによって実行される機能の一つであること、あるいは当業者が明細書に記載されたソフトウェアがデジタル−デジタル画像変換を実行すると理解するであろうことを示すものは何もない。このソフトウェアの検討における「画像編集」の言及は変換機能へソフトウェアを明確に関係づけるには不十分である。

 明細書のこの部分はクレームされた画像の取得及び操作機能にソフトウェアを明確に関係づけており、それゆえ、これらの機能に対応する構造であると適切に考えることができる。しかし、MIDCOは、ソフトウェアの言及はクレームされた変換機能へ明確に関係づけられていないにもかかわらず、ソフトウェアも変換機能に対応する構造であることを我々に判示させようとしている。

 過去に、我々は、特定な機能に対応する追加的な構造として、明細書には記載されているがその特定のクレームされた機能に関係しない構造を含める同様な試みを拒絶したことがある。B. Braun事件において、我々は、明細書はバルブシートを示しているが、それは横の動きを抑制するために三角部材に対してフレキシブルディスクを保持するという記載された機能に対応する構造ではない、なぜなら、この構造と明細書又は出願経過と間の明確な関連がないからである、と判示した。B. Braun, 124 F.3d at 1425.  我々は、「バルブシートと、記載された機能との間の関連のこの欠如が、横のクロスバーと、記載された機能との間で提供されるはっきりした明確な関連をとりわけ印象づけている」と説示した。Id.  これは、明細書がフレームグラバとCVPを変換機能と明確に関連づけているが、ソフトウェアが明細書中に開示されているにもかかわらずソフトウェアをその機能に関連づけていない本件の状況と全く同じである。

 また、Medtronic, Inc. v. Advanced Cardiovascular Systems, Inc., 248 F.3d 1303 (Fed. Cir. 2001)事件において、我々は、一つの機能に対応する追加的な構造として、その機能に明確に関連していないが明細書中で異なった機能に明確に関連する構造を含める特許権者による同様な試みを拒絶した。Medtronic事件で問題となったクレーム限定は「隣接した要素を一緒に結合する手段」であり、明細書がその機能に明確に関連づけているように、明細書は対応する多様な構造を開示していると特許権者は主張した。Id. at 1311.  当事者らは、明細書がその機能に明確に関連づけているので、螺旋状巻線は対応する構造であることを争わなかった。むしろ、争点はまっすぐな線、フック、及び縫合線も対応する構造かどうかであった。Id.  本裁判所は、まっすぐな線、フック、及び縫合線は結合する機能を実行することが可能であるが、明細書も出願経過もそれらをその機能に明確に関連又は関係づけてはいないから、巻線が唯一の対応する構造であると判示した。Id. at 1312.  実際、ソフトウェアが他の機能を果たすとして明細書に記載されている本件と同様に、まっすぐな線、フック、及び縫合線は形成されたコイルの過度の緊張を防ぐ機能を有するとして明細書中に記載されていた。我々は、Medtronic事件において、「当業者は[まっすぐな線、フック、及び縫合線]と隣接する要素を一緒に結合する機能の間の明確な関連又は関係を読み取ることはないであろうと結論した。Id. at 1313.  我々は、本件において同様な結論に到達する:当業者がソフトウェアと選択されたデジタルフォーマットへ画像を変換する機能との間の明確な関連を理解するであろうことを示す証拠は存在しない。



 MIDCOは、ソフトウェアはデジタル−デジタル変換機能に関連していると主張する明細書の3つの特定な部分に加えて、地裁の判断を支持する追加的な議論も提起している。MIDCOは、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアプログラムはその分野で知られているという専門家の証言は、「画像操作プログラムのような、本発明を実施するために使用される他のプログラムは商業的に利用可能であるか、プログラミング分野の専門家の技量の範囲内である」(648特許、12欄24−27行)という明細書の記載と結びついて、変換する機能がどのように実行されるかを当業者が理解していることを十分に示しており、それゆえソフトウェアが対応する構造であることを十分に示していると主張する。我々は同意しない。

 MIDCOは、Atmel事件における我々の議論に頼っているが、その事件において、我々は、当業者の知識に基づいて、「明細書が『既知の回路技術が高電圧回路34(On-Chip High Voltage Generation in NMOS Integrated Circuits Using an Improved Voltage Multiplier Technique, IEEE Journal of Solid State Circuits参照)を実施するために使用されていると明瞭に述べている』」場合は、十分な構造が高電圧発生手段のために開示されていると認定した。Atmel, 198 F.3d at 1382.  この事件は少なくとも2つの重要な点で本件と異なっている。第1に、Atmelで言及された「既知の技術」は高電圧発生手段に極めて明確に関連している。本訴訟の特許においては、商業的に利用可能なソフトウェア又はその分野で知られたソフトウェアの言及は変換手段と結合して議論されていない。第2に、Atmelの専門家証人は、その論文のタイトルが当業者に明細書によって意図された明確に対応する構造を十分に示していると実際に証言した。Id.  本件においては、デジタル−デジタル変換ソフトウェアが変換手段に対応する構造であることを当業者が明細書から理解するであろうことを示す同様な証拠は存在しない。もし、明細書がデジタル−デジタル変換は当業者に知られたソフトウェアプログラムによって実行され得ることを示唆する記載を含んでいたとすれば、異なった事件になるかもしれない。クレームされた機能に特有な分野における習熟した者の知識に言及する明細書の記載はAtmel事件のような他の事件において我々が引いた線により近づけるであろう。

 このタイプの状況のもう一つの例は、「再構成する手段」のクレームを含むIn re Dossel, 115 F.3d 942, 946 (Fed. Cir. 1997)事件[訳3]である。特許商標庁は再構成する手段に対応する構造が適切に開示されていないからクレームは無効であると認定した。本裁判所は、明細書は対応する構造としてコンピュータを十分に開示していると結論した。Id.  明細書は「コンピュータ」という用語は使用していないが、「デジタルデータを受け、複雑な数学的計算を実行し、その結果をディスプレイに表示する」構造を記載しており、我々は、医療画像処理の当業者はコンピュータがこれらの機能を実行するための構造であるに違いないと理解するであろうと結論した。Id. at 946-47.  さらに、コンピュータがその機能を実行するために使用するであろうコードは開示されていないが、明細書は、「既知のアルゴリズム」が再構成プロセスにおいて使用できると説明している。Id. at 946.

 Dossel事件と対照的に、846特許及び684特許の明細書は変換機能に既知のソフトウェアを明確に関連させていない。明細書は「商業的に利用可能であるか、プログラミング分野の専門家の技量の範囲内の」(684特許、12欄26−27行)ソフトウェアプログラムの使用に言及しているが、この記載は選択されたフォーマットに画像を変換する機能にソフトウェアを少しも関連させていない。明細書が変換のための商業的に利用できるプログラムに言及していることを示すものはない。仮に、ソフトウェアが画像を選択されたフォーマットへ変換する機能を実行できることを当業者が知っていたとしても、それが本発明における機能を実行するであろう構造でなければならないと示唆するものは本特許中には全く存在しない。クレームされた機能に対応する特定の構造を特許権者が意図していたことを公衆に示すためのものが開示の中になければならない。明細書中に、ある構造を載せるだけでは十分ではない;機能に対応する構造であるためには、その構造はクレームされた機能に明確に関連されていなければならない。さらに、本件においては、明細書はフレームグラバとCVPを変換機能を実行するとして明確に記載しており、そうであるから、Dossel事件とは違って、クレームは無効であるとの認定から救うために、ソフトウェアが対応する構造であると認定する必要はない。

 本件の事情はTexas Digital Systems, Inc. v. Telegenix, Inc., 308 F.3d 1193 (Fed. Cir. 2002)事件の事情と極めて類似している。Texas Digital事件において、我々は、「地裁が説明した『ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はハードウェアを含む』とした対応する構造は明細書に基礎をおいていなかった」から、地裁は「変換器手段」の解釈において誤ったと判示した。Id. at 1213.  明細書は変換機能に関連させて変換器を開示していたが、Texas Digital Systemsは、「当業者は変換器手段はハードウェア、ソフトウェア、及び/又はフォームウェアで実装することができることを認識していた」という専門家の証言を提出したと主張した。Id.  地裁は、クレームされた機能に対応するどんな構造が開示されているのかを決定するために調べるのにふさわしい場所である明細書に頼るよりも、地裁は「明細書のどこにも述べられていない幅広く記載された可能な構造を特定した」から、対応する構造を特定するステップを適切に実行することに失敗したと我々は結論した。Id.  現在、我々が審理している事件において、ソフトウェアは明細書中に述べられてはいるが、変換機能に関連する部分では述べられてはいない。

 しかしながら、Texas Digital事件と同様に、変換機能に明確に関連された他の構造が明細書中に存在する。また、Texas Digital事件における特許権者と同様に、MIDCOはデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアプログラムは当業者の知識のうちにあったであろうことを示す何らかの証拠を提出したが、その証言を明細書が実際に開示していると当業者が理解するものに結びつけるものは全くない。

 最後に、MIDCOが我々に特に注目させていない明細書中のソフトウェアへの他の言及はいずれも、画像を選択されたデジタルフォーマットに変換するクレームされた機能にソフトウェアを明確に関連づけるために役立っていない。明細書は「本発明に必要なものを実行するために装置ハードウェアと共に用いるのに適したソフトウェアがこれに添えて開示される」と述べている。684特許、12欄14−16行。MIDCOの専門家証人さえ認めるように、明らかに、明細書自体はデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアルーチンを開示していない。そのうえ、特許に添付されたソフトウェアルーチンは変換を処理してはいない。明細書は、添付されたマイクロフィッシュ中にどんなタイプのプログラムが含まれているのかを説明しているが、どれも変換を処理するプログラムではない。同、18欄48−57行。商業的に利用できる「画像操作プログラム」の言及(同、18欄57−58行)は同様にソフトウェアを変換機能に関連づけておらず、単に操作機能に関連づけているだけである。さらに、「CPUは全てのデータ流入及び流出を専用のソフトウェアプログラムによって制御している」(同、18欄41−42行)という記載は、ソフトウェアと変換機能の間の明確な関連として役に立っていない。特にこの記載は画像変換プログラムを含まない添付されたソフトウェアプログラムのリストの直前に記載されているから、この記載が画像のデジタル−デジタル変換の言及と理解されるであろうことを示すものは何もない。



 画像変換の機能とソフトウェアを明確に関連又は関係づける記載が明細書中にないことに加えて、出願経過にもこの関連を提供するものはない。846特許の出願経過において、出願人はクレームをUmemura文献と区別するための図を用意した。その図における比較のポイントの一つはそのシステムが「もっぱらA/D[アナログ−デジタル]変換システム」であるかどうかである。「現在の発明」と題する欄において、出願人は「ノー」と記し、Umemuraのための欄には出願人は「イエス」と記している。フレームグラバ及びCVPはアナログ−デジタル変換を実行するだけであるにもかかわらず、これは出願人が本発明がデジタル−デジタル変換を含んでいると意図していることを示しているのかもしれない。しかしながら、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアを、選択されたフォーマットへ画像を変換するクレームされた機能へ明確に関連づけるには十分ではない。出願経過のその部分にはソフトウェアの言及はなく、当業者がその表からソフトウェアが変換を実行するための構造でなければならないことを知るであろうことを示すものは何もない。



 したがって、我々は、明細書及び出願経過が変換機能の実行をソフトウェアに明確に関連又は関係づけていないから、地裁は変換手段に対応する構造としてソフトウェアを特定した点で誤ったと結論する。構造がクレームされた機能を明確に関連又は関係づけられなければならないという要件は機能用語でクレームする便宜のための対価である。See Budde, 250 F.3d at 1377.  MIDCOは、112条第6パラグラフの取引の対価の部分を、明細書又は出願経過においてその機能に関連づけられていない構造を変換機能に対応する構造として主張することによって、避けようとしている。クレームが特許権者の財産権の範囲の公衆への明確な通知を提供するための適切な機能を果たすために、我々は、当業者が公的な記録から理解するであろうものへの言及により本質的に束縛されることなく、特許権者が機能用語でクレームすることを許すことはできない。112条第6パラグラフに基づくクレームの範囲は明細書又は出願経過の中でクレームされた機能と明確に関連又は関係づけられた構造及びその構造の均等物に限られなければならない。本件において、変換機能に明確に関連するのは2つの構造、フレームグラバ及びCVPだけである。MIDCOは被告装置はこれらの構造又はその均等物を含んでいないことを認めているから、我々は侵害の判決を取り消し、侵害の争点においてElektaに有利な判決の登録のために差し戻す。

 特許権者はフレームグラバ及びCVPをクレームされた変換機能に対応する構造として明確かつ強調して選択したことは確かである。また、当業者がデジタル−デジタル変換を達成するソフトウェアプログラムを書くことができたことも同じように確かである。そうであるから、この特許権者が明細書中にクレームされた変換機能に明確に関連する構造を開示するために来る時に、直角の角を曲がること<to turn square corners>を要求されるべきでないということは魅力的かもしれない。なぜ、フレームグラバ又はCVPのような変換のための何らかの構造を開示するよう特許権者に単に要求し、その後、当業者がクレームされた機能を実行するソフトウェアプログラムを書くことができるかぎり、特許権者にソフトウェアのような何かの他の構造によって侵害を主張することを許さないのか? もちろん、その理由は、制定法自体が明細書中で対応する構造の開示を要求しており、その開示が、開示された構造とそれに関係するクレームされた機能を明確に関連づけなければならないからである。公衆は特許権者が排他的権利を享受する構造に関して推測することを要求されるべきではない。その代わりに、クレームが112条第6パラグラフに従って書かれた場合、公衆は特許権者がクレームされた機能のためにどんな種類の構造を選択したのかを正確に知る権利を有している。これは我々が正にAtmel事件で強調したポイントであり、その事件において我々は次のように説示した:
 [112条第6パラグラフ]の利益を得るためにしなければならないことは、明細書中にその手段に対応する何らかの構造を記載することである・・・・それゆえ、112条第6パラグラフにおける特定の構造の要件は、112条第1パラグラフにおけるような要件が必要とするであろうその分野の誰もが知っているものの果てしない開示の亡霊を呼び出すものではない<The requirement of specific structure in §112, ¶ 6 thus does not raise the specter of an unending disclosure of what everyone in the field knows that such a requirement in §112, ¶ 1 would entail. >。もし、我々の制定法の解釈が構造の完全な省略と比較して少しばかりの追加的な記載をもたらすとすれば、それは制定法が許す一般的な手段<means>の用語を出願人が使用することにより必要となる取引である。
Atmel, 198 F.3d at 1382.

 クレームされた機能に対応する構造がその構造とクレームされた機能との間の明確なつながりを明細書に開示されなければならないという我々の112条に関する判例法において確立されているルールは価値のある目的をかなえる。そのルールは結果的に確実性を生み出すことが意図されている。クレームすることにおける精密性は、112条第6パラグラフに基づいて機能的用語でクレームすることの利益を得るために支払うべき不当な代償ではない。

IV.

 Elektaは、本特許は無効ではないという地裁のサマリ判決の認容に対しても異議を申し立てている。サマリ判決は証拠が重要な事実の真正な争点を作り出すことがない場合にだけ適切なものである。Fed. R. Civ. P. 56(c).  さらに、全ての事実の推論は被申立人に有利になされなければならない。Anderson v. Liberty Lobby, Inc., 477 U.S. 242, 255 (1986).  新規性は事実問題であり、Atlas Powder Co. v. Ireco, Inc., 190 F.3d 1342, 1346 (Fed. Cir. 1999)、進歩性は基礎となる事実に基づく法律問題である、McGinley v. Franklin Sports, Inc., 262 F.3d 1339, 1349 (Fed. Cir. 2002)。この証拠提出申立された無効の証拠を見る場合に、発行された特許は有効の推定を享受し、それゆえ無効を示す証拠は明確で説得力のあるものでなければならないことを心に留めておく必要がある。Schumer v. Lab. Computer Sys., 308 F.3d 1304, 1315-16 (Fed. Cir. 2002).

 本件におけるElektaの専門家の証言は、無効の真正な争点を提起する法律問題として不十分であると我々が過去に認定した種類のものではない。Elektaの専門家証人は、トライアル裁判官に「可能性がある証拠のために長ったらしい技術文献をくまなく探させる」よりも、Biotec Biologische Naturverpackungen v. Biorcorp, Inc., 249 F.3d 1341, 1353 (Fed. Cir. 2001)、クレーム限定のそれぞれに関連する文献の特定の部分を引用した。そのうえ、その専門家証人は、彼の意見の中で、クレームが無効であるいう結論的な陳述を単に行わなかっただけである。See id.(「特許が無効であるという弁護士又は証人の結論的な陳述は事実の真正な争点を提起しないことは十分に確立されている。」)むしろ、彼は、クレームの各限定と、各特定の限定を教示していると彼が信じる先行技術の開示を結びつけたのである。

 Elektaはクレームされた発明と同一又は容易のどちらかであると申し立てる膨大な先行技術文献を提出した。地裁は、全ての文献は重要な事実の真正な争点を提起するには不十分であると認定し、それゆえ本特許は無効ではないというサマリ判決を認容した。我々は、Elektaは非無効のサマリ判決の申立に十分に耐える証拠を提出したと結論し、それゆえ我々は地裁のサマリ判決の認容を取り消す。

 Elektaは、本特許は出願経過において本特許の先行技術欄に書かれているKall/Kelly文献と同一であると主張する。MIDCOは、この文献は「・・・少なくとも2つの画像を選択的に呼び出し1つの表示装置上に表示する手段」を開示していないと主張する。Elektaは、この文献は、「外科医は、CT、MR、及びDSA画像を同時に3つの独立したモノクロモニタ<monochrome monitors>上又は疑似カラーで1つのカラーモニタ<the color monitor>上に表示し操作することにより、いつでも、画像データのどれでも再調査することができる」と述べており、選択的に呼び出し表示する手段を実際に教示していると主張する。地裁は、この文献はこの点で「あいまい」であり、それゆえ重要な事実の真正な争点を作り出してはいないと結論した。しかしながら、Elektaは、Kall/Kelly文献は呼び出して表示する限定を教示しているという専門家の証言を提出し、その文献の著者の一人もElektaの専門家が正しく解釈したことを証言した。

 MIDCOは、その文献があまりにも漠然としていると結論した地裁は正しいと主張し、証人は文献が当業者に教示するであろうものについてのみ証言でき、全くない情報を提供することにより「文献中のギャップを満たす」ことはできないということを主張するために、Scripps Clinic v. Genentech, Inc., 927 F.2d 1565, 1576-77 (Fed. Cir. 1991)事件を引用して、その文献の中に開示された構造は不十分であると主張した。しかしながら、Elektaの専門家証人は、Kall/Kelly文献が当業者に教示するであろうものを、その文献の特定の部分を参照して、証言しただけである。文献が教示するもの及びそれがクレームの各要素を記載しているかどうかの問題は事実認定者のための問題である。Advanced Display Sys. v. Kent State Univ., 212 F.3d 1272, 1283 (Fed. Cir. 2000).  地裁は、Kall/Kelly文献は「あいまい」であると結論したが、これは正確にその文献が教示するものの争点が陪審によって解決されるべきであることを我々に示している。地裁は、その文献が重要な事実の真正な争点を提起しないという認定における陪審の役割を不適切に奪い取った。

 また、地裁は、Elektaは進歩性の争点に関しても重要な事実の真正な問題を作り出すに十分な証拠を提出していないと結論し、この理由についてもサマリ判決を認容した。地裁によれば、Elektaは「陪審が各要素を、別々に見て、当業者が容易に発明できたであろうことを認定し得る十分な証拠を提出したが」、当業者が様々な文献を一つのシステムに結びつけることが容易であったであろうことは明確に証明していない。最終的な容易の決定は法律的結論であるが、「容易の決定における文献を組み合わせる動機付けの存在又は不存在は純粋な事実問題である。」In re Gartside, 203 F.3d 1305, 1316 (Fed. Cir. 2000).  文献を組み合わせる示唆又は動機付けは明確に述べられる必要はない;むしろ、それは「文献自体、クレームされた発明によって解決された課題の性質、又は当業者の知識を考慮することによって証明することができる。」Beckson Marine, Inc. v. NFM, Inc., 292 F.3d 718, 728 (Fed. Cir. 2002).

 地裁は、MIDCOの発明は「定位脳固定技術と複合画像を中心に置いているように見える」と説示している。重要なのはこれらの2つの要素を組み合わせるための動機付けである。Elektaの専門家の陳述書はコンピュータ画像技術と定位脳固定技術の組み合わせを明確に論じているいくつかの従来技術の論文を引用している。例えば、一つの文献は「定位脳固定法は隠されたものの外科手術である」と説明している。隠されたものを視覚化する必要性はコンピュータグラフィック技術によるシミュレーションが必然的にこの専門分野の一部になってきていることの根拠である。そのうえ、Fraas/McShanによって書かれた論文もそのような組み合わせの動機付けを提供していることをElektaの専門家の陳述書が示唆している。Elektaは実際には、これらの論文は一つの文献として取り扱われるべきであり、一つの文献として、本特許に先行していると論じている。しかしながら、複数の文献として扱ったとしても、画像の連携と定位脳固定医療計画とについての教示が当業者にこれらの教示を組み合わせる動機付けを提供したであろうかどうかに関する事実問題が存在する。したがって、我々は、Elektaが進歩性に関する重要な事実の争点の存在を証明できなかったという認定において地裁は誤ったと結論する。



 ソフトウェアは、明細書又は出願経過において、画像を選択されたフォーマットに変換するクレームされた機能に明確に関連づけられていないから、ソフトウェアを「変換手段」に対応する構造であるとした地裁の認定は誤りである。その手段に対応する構造はフレームグラバ及びCVPだけであり、被告装置はこれらの構造又はその均等物を含まないことは明白である。したがって、我々は、Elektaの製品が846特許及び684特許を侵害しているという判決を取り消し、Elektaは非侵害のJMOLを受ける資格があると判示する。

 さらに、Elektaは新規性及び進歩性に関する重要な事実の真正な争点を作り出すに十分な証拠を提出したから、我々は、非無効の地裁のサマリ判決の認容を取り消す。本件は地裁に差し戻される。[1]

費用

 費用負担なし。

一部維持、一部取消、及び差戻





NEWMAN巡回裁判官の反対意見

 この徹底的にトライアルが行われた事件では、地裁裁判官によっていくつかの注意深くよく考えられた意見が作成されただけでなく、陪審によって1ヶ月のトライアルが行われている。多数意見は、地裁の判決と陪審の認定を否定し、ソフトウェアによるデジタル−デジタル変換は開示された「変換」の範囲内ではないと判示している。私は同意することができない。

 本特許明細書はクレームに含まれるあらゆる機能を記述しており、特許された発明に特有な機能のためのソフトウェアを含むマイクロフィッシュの付属物を含んでいる。本明細書は、これらのコンピュータで処理される機能がソフトウェアによって処理されることを記述している。両当事者らは、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェアルーチンは慣用技術の範囲内であることを証言している。多数意見はコンピュータをベースにした発明に不適当な条件、それにもかかわらず満たされるべき条件、を作り出した。トライアルの結果を覆す根拠は示されていない。



 本発明は、各種のスキャニング源からの画像の重ね合わせと操作を提供し、それにより脳の視覚化における正確性を向上させることによって脳外科手術を支援するコンピュータで実行されるシステムである。クレームは「前記複数の画像を選択されたフォーマットに変換する手段」節を含む。この節に多数意見は焦点を合わせ、この節を根拠にしてクレームが侵害されていないと判示している。

 多数意見は、ソフトウェアが明細書中に開示されていないと認定して、「地裁は、この限定に対応する追加的な構造としてソフトウェアを認定した点で誤った」と判示している。しかしながら、明細書は、クレームされた機能はソフトウェアによって実行されると述べている。846特許のクレーム8及び30はソフトウェアの使用を特定している。:例えば:
 8.全ての前記手段はソフトウェア−プログラム可能であるクレーム1の発明。
 地裁は、デジタル−デジタル変換のためのソフトウェア手順は当業者によく知られていると正しく認定している。多数意見はこの認定について「我々は疑うべき理由を持たない」と述べているが、これは不適切であるとも述べている。多数意見は次のように述べている:
 しかしながら、これは正しい審理ではない。正しい審理は、本特許の開示を見て、単に当業者がそのようなソフトウェアプログラムを書くことができたであろうかどうかではなく、当業者がその開示がデジタル−デジタル変換のためのソフトウェアを含むと理解したであろうかを決定することである。
Maj op. at 12. 多数意見は正しくない。特許明細書は「ソフトウェアを教示」する必要はなく、記載された方法をいかに実行するのかを教示するためのルーチンプログラムの記載は必要ではない。当業者がデジタル−デジタル変換の標準的なプログラムを「書くことができたであろう」ならば、それで十分である。プログラミング分野の当業者がそのようなプログラムを過度の実験的作業なしに書くことができたとすれば、制定法の要件は満たされる。See, e.g., Minnesota Mining and Manufacturing Co. v. Chemque, Inc., 303 F.3d 1294, 1301 (Fed. Cir. 2002)(実施可能性は開示がクレームされた発明を過度の実験的作業なしに実行する方法を教示していることを要求している)。

 684特許及び846特許の両方の明細書は、それぞれ11欄37−43行、11欄38−44行で、「画像編集」は「モジュラー・ソフトウェア・サブルーチン」によって実行されると述べている。地裁は、「本明細書はイーサネット接続又は磁気的移送媒体経由で取得したデジタルデータが共通のフォーマットへ変換されなければならない点で明確である」と認定した。証拠の中にはいくつかのデジタル−デジタル手順のための公然と利用できるルーチンがあり、商業的提供者ITEXからのプログラマ・マニュアルも含まれている。Midcoは、そのプログラマ・マニュアルには「画像データファイルにおけるピクセルの数を変更するためのルーチン」が含まれていたと述べている。Midcoの専門家証人は「例えば、ピクセルの数を他のピクセルの数にデジタルフォーマットを変更する実際の様子は、書類の中では開示や議論がなされていません・・・その分野でよく知られていて、説明の必要がなかったからです。」と説明した。多数意見が記載又は実施可能性要件において致命的な瑕疵を認定したかどうかは明確ではない、なぜなら両方に従うことはトライアルでなされ、トライアルで証拠によって裏付けられるからである。

 本明細書は、8シートのマイクロフィッシュ(1シートあたり65フレーム)を含む本発明に特有なプログラムの完全な詳細を含んでいる。本明細書は次のように述べている:
 本発明に必要なものを実行するために装置ハードウェアと共に用いるのに適したソフトウェアがこれに添えて開示される。
 マイクロフィッシュ付属物の中のプログラムのリストにはコンピュータ・ビデオ・プロセッサへのプログラムされたインターフェース;電気生理学マッププログラム、解剖学マッププログラム;プローブ配置プログラム、定位脳固定フレーム・キャリブレーション・プログラム、アイコンレイアウトプログラム及びタッチスクリーン制御プログラムが記載されている。これらのプログラムは本発明に特有である。画像操作プログラムのような本発明の実施において使用される他のプログラムは、商業的に利用可能かプログラミング分野における専門家の技量の範囲内のどちらかである。
'846 patent, 12:15-28.  多数意見は、多数意見が欠けていると言うソフトウェアプログラムは「商業的に利用可能か通常の専門家の技量の範囲内」であることを理解しているように見えるが、それでは十分ではないと判示している。先例は明らかに正反対である。数十年の間、ルール及びプラックティスは、そのようなソフトウェアは明細書中に含まれる必要ないというものであった。30年にわたって、本裁判所の先例はこの方式を支持し、In re Ghiron, 442 F.2d 985, 991 (CCPA 1971)事件において、「もし、そのような選択が『明確に当業者の技量の範囲内』であるとすれば、そのような機能タイプのブロックダイアグラムは容認することができる、実際、もし、明細書の残りの部分と関連して当業者がそのような選択を行い、プログラミング分野の当業者が合理的な程度の日常的な実験的作業だけでクレームされた発明を実施することができることに役立つのなら、むしろ望ましい。See Creo Products, Inc. v. Presstek, Inc., 305 F.3d 1337, 1347 (Fed. Cir. 2002) (「追加的な構造が『各シリンダを回転する』機能を完全に実行するために必要であると[原告−上告人]が主張する範囲で、我々はそのような構造を368特許の開示の中に暗黙に示されていると考える。112条第6パラグラフを解釈する我々の判例法に基づき、当業者の知識は明確性の制定法上の要件を満たす目的で明細書中に特定の構造の言及を肉付けするために使うことができる。」)

 多数意見は、ソフトウェアの使用は開示されていないという認定から、112条第6パラグラフに基づく非侵害の認定を導いている。コンピュータ化された変換がソフトウェアによって行われることよりも多くのものが記載されなければならないことを、今しがた要求しており、私の同僚らが要求するものは明確性からほど遠い。本裁判所は今や0と1の5フィートの棚を要求しているのだろうか? これらの特許文書は、この分野の専門家によって専門家のために書かれ、トライアルで完全に説明され、不十分であるとは証明されなかった。両方当事者側の専門家証人は、デジタル−デジタル変換のためのプログラミングは日常的な仕事であることで合意している。Elektaの専門家証人は「デジタルデータを移動、変更及び操作するために利用可能なおびただしい様々なルーチンやアルゴリズムがある」と証言した。クレームされた変換はアナログからデジタルへ又はデジタルからデジタルへ適切なように、本明細書において理解されるように、ソフトウェアによって全て実行される。

 控訴裁判所として、我々の義務は陪審の評決が、合理的な陪審によって正しい法に基づき、実質的な証拠に裏付けられてなされ得たかどうかを決定することであり、評決を拒否する方法を求めて努力することではない。See Lavender v. Kurn, 327 U.S. 645, 653 (1946) (「得られた結論を支持する証明力のある事実の完全な欠如の場合だけ、覆すことができる誤りが姿を現す。本件のように、陪審の評決に証拠の根拠がある場合は、陪審はその結論と矛盾するどんな事実でも捨てる又は信じない自由を有する。そして、証拠の根拠が明らかになった場合は、控訴裁判所の機能は尽くされたのであり、反対の推論を描く又は他の結論がより合理的であると感じることは関係ない。」)

 トライアルでの証拠は変換ステップの記述及びそれがどのように行われるのかと直接的に関係している。地裁は、「陪審は被告製品の中のソフトウェアが本裁判所によって解釈された本特許の要素を満たすという十分で反駁されていない証拠を有している」と判示した。陪審の評決を支持する実質的な証拠が存在する。私の同僚らによる評決の不適切な取り消しに、私は謹んで反対する。

II

 多数意見は、非侵害を認定しているが、それでもなお、有効性の争点の判決を差し戻している。しかしながら、本裁判所の判決と共に、この事件は終了する。私はもちろん、Cardinal Chemical Co. v. Morton International, Inc., 508 U.S. 83 (1993)事件がCAFCに対して、(本件のように)地裁が有効を決定した場合に、有効性の再審理をするよう要求していることに同意する。しかし、Cardinal Chemical事件は、論争が終了した場合に、当事者ら及び地裁に訴訟を継続するように要求してはいない。差戻審における自由裁量の問題ではなく、本事件は終了している。

 Cardinal Chemical事件において最高裁における争点は、CAFCによる非侵害の認定は「特許無効を判示する確認判決を取り消す十分な理由」であるかどうかであった。最高裁は、「非侵害の認定の認容の後でさえ」CAFCは無効の確認判決からの控訴を再審理する裁判管轄権を有すると決定し、「CAFCのプラックティスはそれゆえ我々の判例法に服しておらず、憲法第III編の『事件又は論争』要件によっても支持されない」と判決した。Id. at 99.  最高裁は、非侵害の控訴審の判決後に有効性の争点に関して地裁の判決を機械的に取り消していたCAFCのプラックティスを拒絶し、公衆、侵害と主張された者、及び特許権者の利益、全てが有効性の争点における反訴の本案訴訟において判決の控訴審の再審理を要求していると説示している。最高裁は、「通常の事件における要因は有効性の決定(それゆえ取り消すのが適当かもしれない決定)の本案訴訟に入ることの[CAFC]の拒絶を正当化するかもしれないことを認めた。しかしながら、非侵害の認定だけでは、そのような結果を正当化しない」Id. at 102.

 本件では、サマリ判決において地裁は有効性の争点に関するElektaの抗弁について決定した。Medical Instrumentation and Diagnostics Corp. v. Elekta AB, No. CV-97-2271 (S.D. Cal. Nov. 5, 2001) (Order).  本裁判所への控訴において、Elektaは、地裁は陪審の機能を奪い取ったと主張しており、多数意見は、「Elektaが進歩性に関する重要な事実の争点の存在を証明できなかったという認定において地裁は誤った」と述べて、トライアルにその問題を戻しているから、多数意見は明らかにElektaに同意している。

 私は、有効性の争点は控訴審の再審理のために熟していないことは認める。しかし、差戻審において、当事者間で継続する論争は残っていない。おそらく、これは、Cardinal Chemical事件において考えられたように、有効性の決定が単純な取り消しを認可する事件<a case in which a validity determination warrants simple vacatur>である。非侵害が控訴において認定された後に、当事者らが地裁において訴訟を継続し得ることを控訴裁判所が提案することは不適当であることは確かである。




(1)反対意見は有効性の争点に関して更なる判決のために我々が差し戻したことを問題にしている。我々はCardinal Chemical Co. v. Morton International, Inc., 508 U.S. 83 (1993)事件に基づく必要性を根拠に差し戻したのではない。既に説明したように、Elektaは、有効性の争点に関するトライアルの資格を主張して、本件の特許クレームの有効性を維持するサマリ判決に異議を申し立てている。原告特許権者は有効性の争点の争訟性喪失の理由による差し戻しに反対しておらず、その代わりに、サマリ判決は正しいと主張するのみである。我々の非侵害の判決に照らして、有効性の争点における更なる訴訟を保証するに十分に争訟が当事者間に残っているかどうかは、我々が当事者らから知らされていない問題である。地裁は差戻審において有効性に関して残存する争訟があるかどうかを決定することができる。
 本特許がデジタル−デジタル変換機能に対応する構造を開示しているかどうかの争点に関しては、我々は、本特許はデジタル−デジタル変換の実行に明確に関連するようにソフトウェアを開示していないと判示しただけである。当業者はソフトウェアが特定の変換機能を実行することができることを知っているであろうが、法は明細書が変換のための手段を開示することを要求している。本件において、ソフトウェアをデジタル−デジタル変換の実行に明確に関連づけるものは明細書中に全くない。




訳注
(訳1)以下に、この判決で引用されている684特許の図1〜図3を示します。図1は「好ましい本発明の方法を模式的に示した図」、図2は「本発明に従う好ましいハードウェア・ブロックダイアグラム」、図3は「本発明の好ましい装置の透視画法図」です。なお、図4〜12は「図3の装置のモニタ上の描かれる各種の脳の画像」であり、装置とは関係ありません。また、684特許の明細書は米国特許商標庁の特許番号検索ページで、「5,398,684」と入力して「search」をクリックすることにより読むことができます。

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(訳2)Overhead Door事件のCAFC判決は、Georgetown University Law SchoolのCAFC判決(Oct. 1999)のページで入手できます。また、この事件の特許明細書は米国特許商標庁の特許番号検索ページで、「RE35,364」と入力して「search」をクリックすることにより読むことができます。以下に、この特許の図2、図3を示します。図2は本判決で一つの図」と記載された機械的スイッチを含む図であり、図3は本判決で「他の図と記載されたフローダイアグラムを構成する図です。

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(訳3)In re Dossel事件は日本の審決取消訴訟に相当する事件ですが、この事件のCAFC判決は、Georgetown University Law SchoolのCAFC判決(May 1997)のページから入手できます。また、この事件の特許明細書は米国特許商標庁の特許番号検索ページで、「5,885,215」と入力して「search」をクリックすることにより読むことができます。以下に、この特許の図1、図2を示します。図1は磁場を測定する装置を示す図であり、図2は測定された信号を処理するための装置(unit)の回路ダイアグラム(circuit diagram)を示す図です。なお、この特許の図面は図1と図2だけです。

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