翻訳 井上雅夫 2001.02.25;03.04     ↑UP 

アマゾン1クリック事件CAFC判決 

連邦巡回区合衆国控訴裁判所(CAFC)
00-1109
原告−被控訴人 AMAZON.COM, INC.
被告−控訴人 BARNESANDNOBLE.COM, INC.、BARNESANDNOBLE.COM, LLC

2001.02.14判決

目次
I 〔バックグラウンド〕
II 〔本件特許〕
III 〔判断基準〕
IV 〔被告−控訴人の主張〕
V 〔「シングルアクション」の意味〕
VI 〔特許権侵害〕
VII 〔特許の無効〕
結論
費用
脚注
訳注

CLEVENGER、GAJARSA及びLINN巡回判事による審理
CLEVENGER巡回判事執筆

 本件はbarnesandnoble.com、inc.及びbarnesandnoble.com llc(合わせて「BN」)に対してAmazon.com(「Amazon」)が提訴した特許権侵害訴訟である。Amazonは、BNが「Express Lane」と呼ばれるウエブサイトの特徴を使用することを禁止する仮差止を申し立てた。BNはいくつかの根拠に基づいて仮差止に対抗した、その根拠には、Express LaneはAmazonの特許のクレームを侵害しないこと、及びAmazonの特許の有効性に対する実質的な疑問が存在することが含まれている。Washington西部地区合衆国地裁はBNの主張を拒絶した。その代わりに、地裁は、AmazonはBNの侵害の可能性を証明する論拠を提出した、そして、本件特許の有効性に対するBNの異議はAmazonに特別の仮差止救済を与えることを避けるためには十分ではない、と判示した。地裁はAmazonの申立を認容し、BNは仮差止命令に対する適時の控訴を行った。我々は28 U.S.C .第1292(c)(1)条(1994年)に基づき地裁の命令を再審理する管轄権を有している。
 地裁の意見、記録及び当事者の主張を注意深く再審理し、我々は本件特許の有効性に対してBNが実質的な異議を提起したと結論する。このような状況においてはAmazonは仮差止救済の権利を有しないから、我々は仮差止を命じる地裁の命令を取り消し、更なる手続きを行うために本件を差し戻す。
I 〔バックグラウンド〕
 本件は1999年9月28日に発行されAmazonが譲り受けた合衆国特許No. 5,960,411(「’411特許」)に関するものである。 1999年10月21日、AmazonはBNに対して特許権侵害を主張して提訴し仮差止を請求した。
 Amazonの特許はインターネットのようなクライアント/サーバ環境における品目の「シングルアクション」注文のための方法とシステムに関する。’411特許において、クライアント/サーバ環境は2つのコンピュータシステムの間の関係を表しており、そこにおいては、クライアント・コンピュータシステム上で実行しているプログラムがサービス要求を行い、サーバー・コンピュータシステム上で実行しているもう1つのプログラムがその要求を実行する。第1欄第10−31行;第3欄第31−33行;第5欄第56行ないし第6欄第21行;図2参照。典型的には、クライアント・コンピュータシステムとサーバー・コンピュータシステムはお互に遠く隔たった位置にあり、データ通信ネットワークによって通信する。
 ’411特許はクライアント・コンピュータシステム上で、コンピュータのマウスボタンのクリックのような、「シングルアクション」だけを使って電子ネットワークを介して品目の購入注文を完了することができる方法及びシステムを記述する。Amazonは、「ショッピングカートモデル」として知られる電子コマース購入システムによって引き起こされる不満に対処するために、その特許を開発した。ショッピングカートモデルの先行例では、(ウエブブラウザ・プログラムを実行しているパソコンのような)クライアント・コンピュータシステムを使っている買い手は典型的には、「ショッピングカートに追加」アイコンをクリックし、それによって品目を「仮想の」ショッピングカートに載せることによって、電子カタログから品目を選ぶことができた。カタログから他の品目を同じ方法でショッピングカートに加えることができた。買い物客が選択プロセスを完了すると、電子コマース・イベントはレジへ動くであろう。それから、買い手の識別、請求書、発送する住所に関する情報が買い手によって取引情報ベースに入力されるであろう。最終的に、買い手は画面上に示されたボタンを「クリック」するか、あるいは注文の完了を実行するコマンドを行うであろう、そしてサーバー・コンピュータシステムは取引に関係する情報を確認し、記憶するであろう。
 以上のことから明らかなように、ショッピングカートモデルを使っている電子コマースの買い手は、注文の最終的な目的を達成する前に、いくつかのアクションを実行するように要求される。’411特許は注文するために消費者が必要とするアクションの数を減らすことを目的としたものである。’411特許の明細書には以下のことが記載されている:
本発明はクライアント/サーバ環境において品目のシングルアクション注文のための方法及びシステムを提供する。本発明のシングルアクション注文システムは注文を行うのに必要な買い手の対話型作業の数を減少させ、クライアントシステムとサーバーシステムの間に伝達される機密性の高い情報の量を減少させる。
第3欄第31−37行。どのようにして買い手の対話型作業の数を減らせるのですか? と人は聞くかもしれない。その答えは、買い手が以前に売り手のウエブサイトを訪問し売買取引の達成のために必要な請求及び発送情報の全てを売り手のデータベースに入力しているから、買い手の対話型作業の数を減らすことができる、というものである。その後に、買い手が売り手のウエブサイトを訪問しそのサイトから製品の購入を望む時は、この特許はシングルアクションだけが品目の注文を出すために必要であることを特徴とする。明細書の記載に基づくと、「品目の記載が表示されると、買い手は単にその品目を購入するための注文を行うシングルアクションを行う必要があるだけである」。第3欄第64−66行。
II 〔本件特許〕
 ’411特許は26のクレームを有しており、そのうち4クレームが独立形式である。独立形式クレーム1及び11が品目の注文を行うことに関する方法クレームであり、独立形式クレーム6は品目を注文するクライアントシステムに関する装置クレームであり、独立形式クレーム9は注文を生成するためのサーバーシステムに関する装置クレームである。AmazonはBNに対してクレーム1−3、5−12、14−17、及び21−24を主張した。本件のさまざまな独立形式及び従属形式クレームの間に有意差はあるが、本件控訴の目的のために、我々は最初は各クレームに含まれている「シングルアクション」の限定に主要な焦点を合わせることができる。BNの控訴は、被告の方法が全てのクレームに存在する「シングルアクション」の限定を侵害しない、本件特許の「シングルアクション」の特徴は無効である、又は、その両方である、という根拠に基づいて、差止を攻撃しているから、このように焦点を合わせるのは適切である。
 我々の審理と関係があるクレーム(すなわち、クレーム1、2、6、9、及び11)の記載から始める。争点となっているクレームの用語を強調している:
1. クライアントシステムの制御のもとに、
   その品目を識別する情報を表示すること;及び
   シングルアクションが行われるのに対応して、その商品の購入者の識別子と一緒にその品目の注文の要求をサーバーシステムへ送信すること;
   サーバーシステムのシングルアクション注文構成部分の制御のもとに、
   要求を受信すること;
   受信した要求内の識別子によって識別された購入者のために以前に保存された付加的な情報を検索すること;及び
   受信された要求中の識別子によって識別された購入者のために検索された追加的な情報を使用して要求された品目を購入する注文を生成すること;及び
   品目の購入が完了するように生成された注文を実行すること
   からなり、それによって品目がショッピングカート注文モデルを使用することなしに注文される
   品目を注文する方法。

2. 情報の表示がシングルアクションを指示する情報の表示を含む請求項1記載の方法。

・・・

6. 顧客を識別する識別子;
   品目を識別する情報を表示する表示構成部分;
   サーバーシステムが注文を完了するために必要なローカルな付加的情報の位置を突き止めることができ、その結果サーバーシステムが品目の購入を完了させるため生成された注文を実行することができる識別子を要求が含んでおり、シングルアクションだけの実行に応答して、識別された品目をサーバーシステムに注文する要求を送信するシングルアクション注文構成部分;及び
   ショッピングカートへの追加行為の実行に応答してショッピングカートに品目を追加する要求をサーバーシステムに送信するショッピングカート注文構成部分
   からなる品目注文用クライアントシステム。

・・・

9. ショッピングカート注文構成部分;及び
   以下を含むシングルアクション注文構成部分
   複数のユーザーの情報を保存するデータ記憶媒体;
   要求は複数のユーザーの1名の指示を含み、要求はシングルアクションが実行されたことにだけ応答して送信される、品目を注文する要求を受信する受信構成部分;及び
   データ記憶媒体から、指示されたユーザーのための情報を検索し、検索された情報を、指示されたユーザーのために品目の注文に使用する注文構成部分;及び
   シングルアクション注文構成部分によってなされた注文に対応してその品目の購入を完了させる注文実行構成部分
   からなる注文生成用サーバーシステム。

・・・

11.品目を識別する情報を表示すること及び識別された品目を注文するために行われるシングルアクションの指示を表示すること;及び
   指示されたシングルアクションが行われただけに応答して、指示された品目を注文する要求をサーバーシステムに送信すること
   それによりその品目はショッピングカートモデルとは独立して注文されその注文はその品目の購入を完了するために実行される
   ことを含むクライアントシステムを使用して品目を注文する方法。

 地裁はキーとなる「シングルアクション」のクレーム限定(各関連クレームにみられる)を以下の意味に解釈した:
用語「シングルアクション」は特許明細書によって定義されていない・・・。結果として、’411特許で使われている用語「シングルアクション」は、(1)品目の記載;及び(2)ユーザーが品目の購入注文を完了させるためになさなければならないシングルアクションの記載、の情報がユーザーに表示されたときに、その品目を購入するために行う(マウスボタンをクリックするような)1つのアクションに関係するようにみえる。
 地裁は、キーとなるクレーム限定のこの解釈を手元において、BNの提訴された注文システムに対応した。本件特許によって熟考されたシステムのように、「Express Lane」と呼ばれるBNのショートカット注文システムは以前に入力された顧客のための請求及び発送情報を含んでいる。1つのインプリメンテーションでは、ユーザーは、BNの最初のウエブページ(「メニューページ」として言及する)を提示された後、メニューページ上のアイコンで「製品ページ」と呼ばれるものを呼び出すことができる。BNの製品ページは選択された製品のイメージと記載を表示し、また、ユーザーに品目の購入注文を完了するためのシングルアクションの記載を提示する。もし、シングルアクションの記載が、例えばマウスでクリックされると、ユーザーはBNのExpress Laneを使って購入注文を実行したことになる。
 したがって、BNのExpress Laneは製品ページを提示しており、製品ページは購入される品目の記載を含み、注文を実行するためのシングルアクションの「記載」を含んでいる。購入注文を完了するために、製品ページが表示されるとシングルアクションだけしか行う必要がないから、地裁はAmazonが特許権侵害の申立に勝訴の可能性を証明したと結論した。
 実質的な疑問が’411特許の有効性に関して存在するというBNの主張に応えて、地裁はBNの有効性に対する異議の根拠となる先行技術引用例を検討した。地裁は、どの先行技術引用例も’411特許のクレームを特許法第102条(1994年)に基づいて先に行っておらず[訳1]、また、クレームされた発明が特許法第103条(1994年)に基づいて自明であるということもできない[訳2]、と結論した。
III 〔判断基準〕
 特許法第283条(1994年)に基づく仮差止[訳3]の認容又は却下は地裁の適切な自由裁量による。Novo Nordisk of N. Am., Inc. v. Genentech, Inc., 77 F.3d 1364, 1367, 37 USPQ2d 1773, 1775 (Fed. Cir. 1996)。「裁判所が、関連する要因の秤量の判断において明確な誤りを犯したこと、又は法的誤り若しくは明らかな事実認定の誤りに基づいて自由裁量を行使したこと、を証明することによって、自由裁量の乱用が成り立ち得る。」同上。
 Amazonは、申し立てた当事者として、以下のことを証明することに成功すれば、仮差止の権利を与えられることになる:(1)本案訴訟において勝訴する合理的な可能性;(2)差止が認容されない場合の回復不能の被害;(3)困難性の天秤がはっきりと有利に傾くこと及び(4)公共の利益における差止の好ましい影響。Reebok Int'l Ltd. v. J. Baker, Inc., 32 F.3d 1552, 1555, 31 USPQ2d 1781, 1783 (Fed. Cir. 1994)。「これらの要素は、それぞれとしては決定的ではない;むしろ、地裁は他の要素に対して、並びに、求められた救済の形及び規模に対して、各要素を秤量し評価しなくてはならない。」Hybritech, Inc. v. Abbott Labs., 849 F.2d 1446, 1451, 7 USPQ2d 1191, 1195 (Fed. Cir. 1988)。
 特許の有効性及び侵害の明確な証明がなされたとき、回復不能の被害が推定される。Bell & Howell Document Mgmt. Prods. Co. v. Altek Sys., Inc. 132 F.3d 701, 708, 45 USPQ2d 1033, 1039-40 (Fed. Cir. 1997) (citing H.H. Robertson v. United Steel Deck, Inc., 820 F.2d 384, 390, 2 USPQ2d 1926, 1929-30 (Fed. Cir. 1987))。「この推定は一つには特許の有限の期間から生じる、なぜなら特許の有効期間の満了は訴訟の間停止されず、時間の流れは回復不能の被害をもたらし得るからである。」同上。
 最初の2つの要素、すなわち、本案訴訟における勝訴の可能性及び回復不能の被害の両方を立証しないならば、我々の判例法及び論理は共に、申立人に仮差止は与えらないことを要求する。Vehicular Techs. Corp. v. Titan Wheel Int'l, Inc., 141 F.3d 1084, 1088, 46 USPQ2d 1257, 1259-60 (Fed. Cir. 1998) (citing Reebok Int'l, 32 F.3d at 1555, 31 USPQ2d at 1873)。
 Amazonは、本案訴訟における勝訴の可能性を証明するためには、本案訴訟におけるトライアルに存在するだろう推定及び立証責任に照らして、(1)AmazonはBNの’411特許の侵害の可能性を証明するだろうこと、及びAmazonの侵害の主張が’411特許の有効性及び執行可能性に対するBNの異議に耐えるだろうこと、を証明しなければならない。Genentech, Inc. v. Novo Nordisk, A/S, 108 F.3d 1361, 1364, 42 USPQ2d 1001, 1003 (Fed. Cir. 1997)。もしBNが侵害又は有効性のどちらかに関して実質的な疑問を提起するなら、すなわち、特許権者が「実質的な価値に欠ける」と証明し得ない侵害又は無効の抗弁をBNが言い張ることができるのなら、仮差止は発せられるべきではない。同上。
 もちろん、仮差止段階で行われるのか、あるいは特別の事例において少し遅れた段階で行われるのかにかかわらず、侵害と有効性分析は「クレーム・バイ・クレーム」の原理に基づいて行われなくてはならない。例えば、Bayer AG v. Elan Pharm. Research Corp., 212 F.3d 1241, 1247, 54 USPQ2d 1711, 1715 (Fed. Cir. 2000)(「文言侵害は、特許権者に、被告の装置がクレームのそれぞれの限定を含んでいることの証明を要求する。」); Ortho Pharm. Corp. v. Smith, 959 F.2d 936, 942, 22 USPQ2d 1119, 1124 (Fed. Cir. 1992)(特許法第282条(1994年)の明瞭な規定によって要求されるように、無効の全ての根拠は個々のクレームに対して評価されなければならない、と結論している)参照。したがって、多数の特許クレームを含む場合は、本案訴訟における勝訴の可能性を証明するために、特許権者は本件特許の1又はそれ以上のクレームの侵害を証明するであろうこと、及び侵害を主張する同じクレームの少なくとも1つは侵害と主張される者による有効性に対する異議に耐えるであろうことを証明しなければならない。
 本控訴において侵害と有効性の両方が問題となっている。侵害分析が2つのステップを含むことは確立されている:クレームの範囲が最初に決定される、次に、クレームの限定のすべてが文言どおりに又は実質的な均等物により存在しているかどうかを決定するために、適切に解釈されたクレームと訴えられた装置とが対比される。例えば、Young Dental Mfg. Co. v. Q3 Special Prods., Inc., 112 F.3d 1137, 1141, 42 USPQ2d 1589, 1592 (Fed. Cir. 1997)参照。概念的には、先行技術引用例を考慮した先行及び/又は自明に基づいた無効の分析の第1のステップは、侵害の分析のそれと異ならない。「特許が有効であるかどうか、そして、もし有効なら、侵害されたかどうか、を決定する場合、第1のステップは本件各クレームの意味及び範囲を決定することである、というのが特許法の基本である。」Lemelson v. Gen. Mills, Inc., 968 F.2d 1202, 1206, 23 USPQ2d 1284, 1287 (Fed. Cir. 1992)。「クレームは、侵害を決める前に最初に解釈されるのと同様に、その有効性を決定する前に解釈されなくてはならない。」Markman v. Westview Instruments, Inc., 52 F.3d 967, 996 n.7, 34 USPQ2d 1321, 1344 n.7 (Fed. Cir. 1995) (Mayer, J., concurring), aff'd, 517 U.S. 370 (1996)。
 クレームが適切に理解された時だけ、そのクレームが被告の装置又は方法の「上で読める」かどうか、又は先行技術がそのクレームされた発明を先に行っているかどうか及び/又は自明とするかどうか、を決定することができる。同上参照。特許のクレームによって本件発明が評価されるから、クレームは解釈されなければならず、有効性及び侵害の分析の両方の目的のために同じ意味が与えられなくてはならない。SmithKline Diagnostics, Inc. v. Helena Labs. Corp., 859 F.2d 878, 882, 8 USPQ2d 1468, 1471 (Fed. Cir. 1988)参照。「特許は、「蝋の鼻<nose of wax>」のように、先行を避ける一つの方法と侵害を認定するもう一つの方法にねじ曲がってはいないだろう。」Sterner Lighting, Inc. v. Allied Elec. Supply, Inc., 431 F.2d 539, 544 (5th Cir. 1970) (citing White v. Dunbar, 119 U.S. 47, 51 (1886))。裁判所は適切にクレームを解釈しなくてはならない、なぜなら妥当でないクレーム解釈が侵害と有効性分析をゆがめるかもしれないからである。Bausch & Lomb, Inc. v. Barnes-Hind/Hydrocurve, Inc., 796 F.2d 443, 450, 230 USPQ 416, 421 (Fed. Cir. 1986)参照。
IV 〔被告−控訴人の主張〕
 控訴審においてBNは地裁が仮差止の適法性を害する法律上の誤りを犯したと強く主張する。特に、BNは、地裁が、キーとなるクレームの限定を、侵害の分析の目的のために一つの方法で解釈し、BNの有効性に対する異議を考慮するときには、もう一つの方法で解釈したと断言する。BNは、一貫したクレーム解釈のものでは、Express Laneは’411特許を侵害しない、又はもし特許の侵害責任を支持するように解釈されるなら、特許のクレームは有効性に対する厳しい異議にさらされると断言する。BNは、キーとなるクレームの限定が適切に解釈されるとき、Amazonが侵害請求の本案訴訟で勝訴する可能性は高くないか、あるいはBNが’411特許の有効性に重大な疑問を持ち出すことに成功したことは明確だろう、加えて、地裁が、先行技術引用例の教示を誤解し、それによって先行技術引用例の理解のために確定した事実の断定において明確な誤りを犯した、と断言する。
 Amazonは、無理もないことだが、クレーム解釈の誤りはなく仮差止の認容を害するであろう事実認定に明確な誤りはないと断言して、地裁と連携している。そこで我々は本控訴の法律上の主要訴因に取りかかることにする。
V 〔「シングルアクション」の意味〕
 地裁が「シングルアクション」の限定に認めた意味が時間の考慮を含むことは地裁の意見から明確である。購入注文を完了するためになされる「シングルアクション」は、地裁によれば、他のイベントが起きた後にだけ起こる。地裁のクレーム解釈に従うと、必要とされる準備的なイベントは購入されるための品目の記載の提示と、品目の購入注文を完了するためにユーザーが行わなければならないシングルアクションの提示である。
 Amazonは特許出願手続の間に出願人によってなされた陳述に基づいてこの時間の解釈を弁護する。以下で明らかにされるが、これらの陳述は重要である、なぜならそれらの陳述は出願経過においてクレームにシングルアクションの限定を含むように補正した時点でなされているからである。
 1999年2月26日付け補正に伴う主張において、Amazonはクレームへの補正案を説明し、「クレームされたシングルアクション注文技術がショッピングカート・メタファーとは異なることを明確にする」ために、(特定のクレームに限定せずに)次のコメントを提出した:
出願人のシングルアクション注文技術が買い手の対話型作業の数を減少させること、及び注文をするときクライアントコンピュータとサーバーコンピュータの間に伝送される機密性が高い情報の量を減少させること、によって電子注文を容易にする。シングルアクション注文技術を使用することによって品目を注文するためには、買い手は最初に、その品目のカタログをブラウズすることによって、品目を検索することによって、品目へのリンクを選ぶことによって、又は品目を捜し出す他の手段を使うことによって、品目を捜し出す。品目を捜し出すと、買い手は品目の注文を生成し生成された注文を実行するために、シングルアクションを実行することだけが必要である。シングルアクションは、例えば、ウェブページ上に表示されたボタンを選ぶこと又はコマンドを話すことでもよい。買い手についての(例えば、請求及び発送)情報が(例えば、以前の購入で)保管されているから、その情報はシングルアクションが実行されたとき注文を生成し実行するために捜し出された品目の識別と組み合わせることができる。
 出願経過のこの節は、文面上、買い手がどんな手段によってでも品目を捜し出すと、シングルアクションだけが品目の注文を生成するために必要である。しかしながら、Amazonは、どんな手段によってでも品目を捜し出す買い手の概念に特別な解釈を加えているのであろう。出願経過のAmazonの見方では、注文を生成する前のステップ数を数える目的のためには、買い手は、買い手が品目を購入する決断をするまで、品目を探し出せなかった。本件の場合に適用されたように、Amazonは、BNのメニューページ上の品目についての情報の表示は注文をする意志で捜し出された品目を示さない;BNのメニューページからその製品ページへ移動した後にだけ、シングルアクションによって注文をする目的のために品目を「捜し出した」、と論ずる。注文するためにはBNの製品ページ上でシングルアクションを行うだけであるから、AmazonはBNが’411特許を侵害しているであろうと強く主張する。
 出願経過からのキーとなる節についてのAmazonの解釈は侵害の分析に主観的な見解を入れることになる。例えば、もし買いたいと思っている者が、BNのメニューページに来る前に品目の購入の決断をし、そしてそこで(メニューページで)買い手は表示された品目を見たとすると、品目の表示の後になされたシングルアクションは注文を成就させないであろうことをAmazonは認めなければならないであろう。そうではなく、買い手はメニューページから製品ページへ進むための第1のアクションを行い、その後、注文をする第2のアクションを行う必要があるであろう。我々は、特許クレームに、侵害と主張される者の精神状態に依存する意味を割り当てる用意はできていない。したがって、我々は購入される品目を捜し出すことについてのAmazonの特別な意味を拒絶する。
 しかし、我々が今から詳細に論じるように、我々は最終的にはAmazonと意見が一致し、すべての4つの独立形式クレーム(すなわち、クレーム1、6、9、及び11)は、シングルアクションが品目についての情報の表示のすぐ後に、いかなる間に入っているアクションもなく、行われることを求めているが、必ずしも第1の表示又は各表示のすぐ後である必要はない、と解釈する。
 我々の分析はクレーム自体のわかりやすい文言から始まる。用語「シングルアクション」は’411特許の独立形式クレームの中で次の形で出現する:「シングルアクションが行われるのに対応して」(クレーム1及び9)、「シングルアクション注文構成部分」(クレーム1、6、及び9)、「シングルアクションだけの実行に応答して」(クレーム6)「指示されたシングルアクションが行われただけに応答して」(クレーム11)、「識別された品目を注文するために行われるシングルアクションの指示を表示すること」(クレーム11)。
 クレーム1、6、及び11で、クレームの文脈は、品目についての何かの情報が表示された後、シングルアクションが行われることを明確にしている。クレーム1は「その品目を識別する情報を表示すること」を規定して、そして次に直ちに「シングルアクションが行われるのに対応して」、品目を購入する要求がサーバーシステムへ送られると規定している。クレーム6は「品目を識別する情報を表示する表示構成部分」を規定して、そして次に直ちに「識別された品目をサーバーシステムに注文する要求を送信するシングルアクション注文構成部分」がサーバーシステムへ品目を購入する要求を送ると規定している。クレーム11は「識別された品目を注文するために行われるシングルアクションの指示を表示すること」を規定し、そして次に直ちに「指示されたシングルアクションが行われただけに応答して」品目を購入する要求がサーバーシステムへ送られると規定している。また、文脈は、どんな間に入っているアクションもなく、品目についての情報が表示された後、シングルアクションが行われるか、又は行われることができることを示している。しかし、それぞれの表示の後に、又は情報の第1の表示のすぐ後でさえ、シングルアクションが行われなくてはならないことを示唆するものは何もない。クレーム9は明示的に情報を表示することを規定してはいない。品目を注文する要求は「シングルアクションが実行されたことにだけ応答して送信される」と規定しているだけである。しかし、クレーム9が「表示すること」を規定しないけれども、明細書の記載はクレーム9の「シングルアクションが実行されたこと」の文言は情報が表示されたことが必要であることを定義する。
 さまざまなクレームで使われた「シングルアクション」の通常の意味は簡単である、しかし、その句だけは何時アクションを数え始めるのかを示さない。そのために、我々は更なるガイダンスを求めて最初に’411特許の明細書の記載に目を向けなければならない。
 明細書の記載は、情報が「表示された」後に、シングルアクションの注文はユーザーにとって利用可能な選択であり、シングルアクションの注文が実際にユーザーによって選択されるときに、数えることがクレームの範囲の中に収まることを支持している。クレームがこの点においてあいまいであると思われる程度によって、明細書の記載が「シングルアクション」を定義する必要が多くなる。明細書は、本願発明の要約において、「品目を識別する情報を表示しアクションの指示を表示する・・・[そして]指示されたアクションが実行されたことに応答して、」品目を注文するという態様を記載している。第2欄第54−59行。同様に、発明の詳細な説明において、明細書は「品目の記載が表示されると、買い手はシングルアクションを行うことだけが必要である」と記載している。第3欄第65−66行。これは開示された実施例のすべてで一貫している。
 そのために、明細書の記載とクレームのわかりやすい意味のいずれもが、シングルアクションの注文が情報のおのおの及びすべての表示の後に(又は情報の第1の表示のすぐ後でも)可能であることを要求しない。クレームのわかりやすい文言と明細書の記載はシングルアクションの注文が何かの情報の表示の後に可能であることだけを要求する。実際、明細書の記載は、先立つ情報の表示が注文の直前の表示の前に起こっているであろうという可能性を許容しており、また示唆している。
 発明の詳細な説明は図1Aについて、「[品目の概要の記載を含む]このウエブページの例は・・・買い手がその品目についての詳細な情報を検討することを要求する時に送られた」と記述している。第4欄第7−9行(強調付加)。明細書の記載がこれ以前にオンライン購入が「ブラウズする」(第1欄第55行)ことを含むものとして記載されているから、品目について詳細でない情報がすでに表示されていたと結論することは合理的である。
 また、この節は、買い手が品目についての詳細でない情報を見て、他のところをブラウズすることを決めて、それから最終的に戻りその品目についてのより詳細な情報を得て最後にそれを注文するという可能性を許容している。したがって、品目についての情報の連続した表示に加えて、品目についての情報の断続的な表示はあり得るだろう、そしてそれぞれ及び全ての表示がシングルアクションの注文の能力を有している必要はない。
 上記の節は、明細書の記載は、情報のすべての表示に起こること、又は第1の表示のすぐ後でさえ起きること、に関係していないことを示しており、シングルアクションの注文が行われることができる何かの表示が存在することだけを示唆している。
 また、’411特許の出願経過は上記のクレーム解釈を支持する。庁のアクションに応えて、本意見の前の方で引用した出願経過の節において、特許権者は次のように述べている「買い手は最初に、[1]その品目のカタログをブラウズすることによって、[2]品目を検索することによって、[3]品目へのリンクを選ぶことによって、又は[4]品目を捜し出す他の手段を使うことによって、品目を捜し出す(番号付加)。品目を捜し出すと、買い手は品目の注文を生成し生成された注文を実行するために、シングルアクションを実行することだけが必要である。品目を捜し出すかもしれない種々の方法のこの列挙は、シングルアクションの注文が使用可能である前に表示された品目に関する情報を許容する。これは、第3番目に列挙された方法「品目へのリンクを選ぶことによって」において最も明らかに見ることができる。「品目へのリンク」(強調付加)であるとすれば、そのリンク又はそのリンクの周りの品目についての情報の何かの表示があるに違いない。したがって、品目についての情報は時々、品目を「捜し出す」前に、(それ故、シングルアクションの注文が使用可能である前に)表示されるかもしれない。
 同様に、第1番目に列挙された方法(ブラウズすること)は、シングルアクションの注文が使用可能である前に品目についての「詳細な情報」を要求することを含意するために、明細書の記載の中で説明されている。これにより「詳細でない」又は一般的な情報がそれより前に表示されたと推測される。同様に、第2番目に列挙された方法(検索すること)では、特定の著者によって書かれた又は特定の主題を扱うすべての本のリストのような、検索文字列と一致する種々の品目についての情報を最初に表示することが一般に必要である。選択された品目が「捜し出され」シングルアクションの注文が使用可能である場所で、買い手は、一般的に、これらの品目の1つを選択するよりも、より詳細な情報を受け取ること選択する。
VI 〔特許権侵害〕
 シングルアクションの限定の正しい意味が訴えられたBNのシステム上で読まれるとき、クレーム1の限定が訴えられたシステムによって満たされるであろうことが明白になる。BNの「Express Lane」の運営に関する記録内の証拠に争いはない。’411特許が発行された時に、BNは2つの購入の選択肢を顧客に提供していた。1つは「ショッピングカート」と呼ばれ、もう一つは「Express Lane」と呼ばれた。ショッピングカートの選択肢は「仮想の」ショッピングカートに品目を加えるステップ、次に購入を完了するために「チェックアウトする」ステップを含む。それと対照的に、Express Laneの選択肢では、この特徴について登録された顧客は、購入される本又は他の品目を記載し識別する「詳細ページ」又は「製品ページ」上に用意された「Express Lane」ボタンを「クリックする」ことだけによって、品目を購入することができる。Express Laneボタンの下のテキストは「1クリックで直ちに購入」とユーザーを誘った。
 侵害と申し立てられているBNのウエブサイトは、いくつかの品目をリストしているカタログを表示しているが「注文」アイコンは含んでいない「ページ1」(「メニュー」ページ)と、1つの品目についての情報を含み注文アイコンも示す「ページ2」(「製品」又は「詳細」ページ)を有しているということができる。このウエブサイトで買い物をする者はページ1でカタログを見て、ページ2へ行く第1のクリックを実行するであろう。ページ2で、注文アイコンの第2のクリックを行うと、注文要求が送信されるであろう。この中で説明されたクレームの解釈に基づいて、BNはクレーム1を侵害していそうである、なぜなら、ページ2で、品目がそこに表示され(クレームのステップ1を満たす)その後シングルアクションだけで注文要求が送信される(ステップ2を満たす)からである。BNのウエブサイトのページ1にインプリメントされた方法は侵害してないが、ページ2の方法は侵害している。これは買い手の精神状態に何も関係を有しておらず、明細書の記載の文脈及び出願経過に照らしてクレームの文言の通常の意味を疑いなく反映している。
 我々はこの解釈に基づいて、クレーム1は先行技術ショッピングカートモデル上で読めるであろうと認識する(なぜなら、ショッピングカートモデルの最終のページは、選択された複数の製品のリストの中で購入される品目を表示し、かつ「購入確認」アイコンをクリックする1つの次のアクション<single next action>に応答して注文要求信号を送るからである)。しかし、ショッピングカートモデルは、クレームの最後の、それによって句<whereby clause>によって、明示的にクレーム1から排除される。
 我々は、地裁が「barnesandnoble.comがクレーム1、2、3、5、11、12、12、14、15、16、17、21、22、23、[及び]24を侵害する」、及び「同じく’411特許のクレーム6−10を侵害する」と結論したことを指摘する。しかし、仮差止段階における適切な判決は侵害の最終的な問題についての法的な結論ではなく、Amazonの侵害請求が勝訴する実質的な可能性である。したがって、我々は地裁の結論はAmazonが列挙されたクレームの文言侵害を証明する実質的な可能性を証明したことの決定であると理解する。
 クレーム2のわかりやすい文言によれば、「クリックを数え」始める参照時点は、実行される「シングルアクションを指示する情報」が表示される時(すなわち、「Express Lane」又は「直ちに購入」ボタンが表示された時)まで始まらない。したがって、その時点の後にBNのExpress Laneを使って品目を注文するための要求を送信するために、シングルアクションだけが必要とされると主張する点においてAmazonは正しい。この理由のために、我々は、BNが訴訟のこの段階において「シングルアクション」限定に関する’411特許のクレーム2の非侵害の実質的な疑問を持ち出したと、言うことはできない。
 我々は、BNが「それによって<whereby>」句の中の用語「ショッピングカートモデル」に基づくクレーム1、2、及び11に関する非侵害の議論を追加したことを指摘する。クレーム1及び2は、「ショッピングカート注文モデルを使用することなし」で、品目が注文されることを要求する。同様に、クレーム11は、「ショッピングカートモデルとは独立して」、品目が注文されることを要求する。それゆえ、BNによれば、たとえ侵害と訴えられた注文システムがクレームされた「シングルアクション」技術を使用したとしても、シングルアクション技術が「ショッピングカートモデル」のパラダイムの中で使われる限り、クレーム1、2、又は11を侵害しないであろう。
 したがって、BNは、たとえそのExpress Laneが’411特許のクレームの範囲の中にあるシングルアクション技術を使用すると言われるとしても、それにもかかわらずExpress Laneは「ショッピングカートモデル」である、なぜなら、明細書記載によれば、「ショッピングカートモデル」は品目が購入のために選ばれるとき、チェックアウトが自動的に生じるモデルを含むと解釈されるべきであるからである、と論ずる。実際、’411特許の明細書には、代替の先行技術ショッピングカートモデルは「買い手が何か1つの品目を選ぶと、自動的に請求及び発送情報の入力をユーザーに促すことによって、その品目は「チェックアウト」される」という特徴を有していると記載されている。第2欄第24−27行。それで、BNは、Express Laneは、’411特許の明細書の記載の中で先行技術と認められた代替のショッピングカートモデルの具体化であるから、侵害しないと主張する。
 地裁は、「ショッピングカートモデル」は「ユーザーが、商店主のサイトをブラウズして品目を選んで蓄積し、その後、購入を完了するために1若しくはそれ以上のチェックアウト又は確認ステップを続けなければならないオンラインの注文の方法」を意味すると解釈した。BNは、この解釈は’411特許の明細書の記載と矛盾する、なぜなら明細書に記載された代替のショッピングカートを排除するからである、と論ずる。しかし、我々は「ショッピングカートモデル」の地裁の解釈に誤りがあるとは認めない、なぜならそれは明細書の記載と一貫しており、また、「シングルアクション」の限定に関連して既に検討したように、’411特許の出願手続中にこの用語を議論したAmazonによってされたコメントとも一貫しているからである。地裁の解釈はBNによって言及された代替のショッピングカートモデルの不適切な排除を行っていない、なぜなら、これらの代替のショッピングカートモデルを使うとき品目が自動的にチェックアウトされるかもしれないけれども、明細書は、ユーザーは依然として請求及び発送情報を(その情報が前の注文のときにユーザーによって提供された情報で「あらかじめ満たされていない」限り)提供しなくてはならないと記載しているからである。さらに、「買い手固有の注文情報」が前もって満たされるかどうかにかかわらず、買い手が購入を完了するために注文ウエブページを与えられると、そのユーザーは依然として少なくとも1つの確認ステップを実行しなくてはならない。第2欄第24−3行参照。そうとすれば、「Express Lane」を「ショッピングカートモデル」であると特徴づけることに基礎を置くBNの非侵害の主張は失敗である、なぜなら、買い手が「Express Lane」注文ボタンをクリックすると、その品目の注文要求がサーバーシステムへ送られる前に、いかなる追加のチェックアウト又は確認ステップも必要とされないからである。
 我々は、BNの代わりの非侵害の主張を考慮し、拒絶して、Amazonがクレーム2の侵害の可能性に関する本案訴訟の立証責任を果たしたと認定する。我々はここに明らかにされたクレーム解釈に基づいてクレーム1と2の間に若干の冗長性があることを指摘する。しかし、2つのクレームの範囲は同一ではない。例えば、クレーム2は、ウエブサイトの第1のページに「注文は、後続のどれかのページ上に表示したどれかの品目の写真を直接クリックしてください」というようなテキスト・メッセージを含む方法については、読めないであろう。このような方法のもとでは、品目とその品目を注文するシングルアクションの両方が表示されるであろうページは決してないであろう。クレーム2ではこのようなシステムは侵害ではないであろうが、クレーム1では侵害であろう。
 我々はさらにAmazonはクレーム11の侵害に関しても勝訴の可能性を証明したことを指摘する。クレーム11は、「シングルアクションの指示を表示すること」を必要とする限定を含むから、クレーム2に類似している。クレーム2に関する上述の理由により、BNがクレーム11に関して非侵害の実質的な疑問を提起していないと結論することにおいて、地裁は正しかった。
 「シングルアクション」の我々の解釈から判断して、我々は地裁がBNが「シングルアクション」の限定に関してクレーム6及び9の非侵害に対する実質的な疑問を提起していないと正しく結論したと認める。
 しかし、我々はBNが用語「実行する」及び「実行」に基づいたクレーム6及び9に関する非侵害の議論を追加したことも指摘する。クレーム6は、サーバーが「品目の購入を完了させるため生成された注文を実行する」ための能力を有していることを要求する。同様に、クレーム9は、サーバーシステムのシングルアクション注文構成部分が「その品目の購入を完了させる注文実行構成部分」を含まなくてはならないことを要求する。BNは、「実行する」及び「実行」は倉庫の棚から製品を選び、発送のために荷造りし、顧客に発送するために必要とされる全てのステップを指していると主張する。BNはそのような解釈が少なくとも直接侵害に関してはクレーム6及び9の非侵害に導くであろうと信じているようである。
 地裁は、複数のクレームをとおして「実行する」の種々の形は、さわることができる品目を取り扱うこと又は荷造りすることの物理的なステップとは対照的に、サーバーシステム上で実行される注文実行アプリケーションソフトウエアを指していると判示した。我々はこの解釈に誤りを認めない。BNが認めるように、クレーム6及び9のわかりやすい文言は、(クレーム6のように)実行ステップがサーバーシステムによって行われることができ、(クレーム9のように)注文実行構成部分がサーバーシステムの一部であることを要求する。明らかにサーバーシステムは、この用語が’411特許でコンピュータシステムを指すために使われているから(例えば、第1欄第15−16行参照)、倉庫の棚から製品を選び、発送のために荷造りし、顧客に発送する能力を有さない。したがって、用語「実行する」及びその同族源の語は間違いなくサーバーシステム上で実行される注文実行アプリケーションソフトウエアを指している。
 本件記録の完全な審理の後に、我々は、適切なクレーム解釈のもとで、Amazonは侵害事件のトライアルにおいて勝つ可能性を証明したと結論する。我々はAmazonが’411特許で少なくとも4つの独立したクレームの文言侵害の可能性を証明したと結論するから、我々は均等論に基づく侵害を検討する必要がない。しかしながら、残っている問題は、BNが’411特許のクレームの有効性に対して実質的な異議を提起することに失敗したと地裁が正しく判断したかどうかである。
VII 〔特許の無効〕
 地裁は、最終的には拒絶したが、BNが引用したいくつかの先行技術引用例によって無効となる可能性を検討した。地裁はBNが主張されたクレームのすべてを侵害したであろうと決定したから、地裁は有効性の問題の分析を特定のクレームには集中させなかった。その代わりに、地裁の有効性分析の中で、地裁はBNによって引用された引用例がシングルアクションの限定をインプリメントしていたかどうかに主要な注意を向けたようにみえる。
 訴訟の仮差止段階において、地裁は衡平法上の判決を下すための地位にあり、事実問題は地裁の終局判決の中で行われるのが当然のことである。例えば、無効の分析において、地裁は有効性に対する異議を支持するために引用された先行技術引用例の意味を評価しなくてはならない。しかし、引用例が教示するものは事実問題である。In re Beattie, 974 F.2d 1309, 1311, 24 USPQ2d 1040, 1041-42 (Fed. Cir. 1992)。したがって、地裁は主張された引用例の意味に関して、明示的又は暗黙的に、必ず事実認定を行う。地裁の引用例の解釈を基礎として、地裁は本件特許の有効性に関して判決を下す。我々は地裁の先行技術引用例の評価が明確な誤りであるかどうかを再審理する。例えば、同上;Novo Nordisk, 77 F.3d at 1367, 37 USPQ2d at 1775 (Fed. Cir. 1996) (仮差止を認容する自由裁量の乱用は、地裁が、関連する要素の秤量において明確な誤りを犯したこと、又は法的な誤り若しくは事実認定の明確な誤りに基づいて自由裁量を行使したことを証明することによって、成り立つと説示している)参照。
 本件において、地裁は、BNが引用した先行技術引用例の事実内容の解釈を誤ることによって、及び、これらの先行技術引用例を考慮すれば主張されたクレームは無効であるという実質的な疑問をBNが提起したと認定するのに失敗することによって、明白な誤りを犯した、と我々は認定する。
 仮差止訴訟手続きにおける有効性に対する異議は、トライアルにおいて無効の判決を支持するのには十分ではないであろう証拠に基づいて、成立し得る、すなわち、被告らは無効の実質的な疑問を提起することができる。例えば、Helifix Ltd. v. Blok-lok, Ltd., 208 F.3d 1339, 1352, 54 USPQ2d 1299, 1308 (Fed. Cir. 2000) (たとえ引用例に基づく先行に関するサマリー判決が支持されないとしても、先行していると申し立てられた同じ先行技術引用例は仮差止を否定するためには十分に無効の疑問を提起した、と判示している)参照。トライアルにおける無効のテストは明確かつ説得力がある証拠によってである。WMS Gaming, Inc. v. Int'l Game Tech., 184 F.3d 1339, 1355, 51 USPQ2d 1385, 1396-97 (Fed. Cir. 1999)。無効のサマリー判決[訳4]の申立が成立するためには、例えば、申立人は重要事実について本物の争いの欠如を証明し、かつ争いのない事実が明確かつ説得力をもって無効を証明することを示さなくてはならない。Robotic Vision Sys., Inc. v. View Eng'g, Inc., 112 F.3d 1163, 1165, 42 USPQ2d 1619, 1621 (Fed. Cir. 1997)。しかし、仮差止を阻止する場合は、実際の無効の論拠を証明する必要はない。脆弱性は仮差止段階における問題であり、一方、有効性はトライアルにおける問題である。したがって、無効に関して実質的な疑問を証明するには、無効自体を立証するのに必要な明確かつ説得力のある証明よりも劣った証拠でよい。そうであることは本件において明白である。
 仮差止の特別な救済を申し立てるとき、特許権者は疑問の余地のない特許の有効性を立証する必要はない。Atlas Powder Co. v. Ireco Chems., 773 F.2d, 1230, 1233, 227 USPQ 289, 292 (Fed. Cir. 1985)。しかし、特許権者は本件特許の有効性を支持する明確な論拠を提出しなくてはならない。Nutrition 21 v. United States, 930 F.2d 867, 871, 18 USPQ2d 1347, 1349 (Fed. Cir. 1991)参照。そのような論拠は、本件特許が以前の有効性に対する異議に耐えるのに成功したことを証明することによって支持できるであろう。そのような明確な論拠の更なる支持は特許の有効性についての長期間の産業界の黙認から来るかもしれない。Donald S. Chisum, Chisum on Patents * 20.04[1][c], at 20-673 to 20-693 (1998) (判例を引用している)参照。
 我々は最近Helifix事件において、先行していると主張された先行技術引用例に基づいて地裁が無効のサマリー判決の申立を認容し、その後すぐに、同じ先行技術引用例を使った有効性に対する異議に基づいて仮差止の申立を拒否した状況に直面した。208 F.3d at 1344-45, 54 USPQ2d at 1302。控訴審において、特許権者はサマリー裁判の取り消しを求めると共に、仮差止の権利があると主張した。我々はサマリー裁判は成り立たないと判示した、なぜなら無効に関する重要事実について争いのある問題がトライアルでの解決のために残っていたからである。同上at 208 F.3d 1352, 54 USPQ2d 1308。それにもかかわらず、我々は、提出された証拠の量は(無効自体を証明するには不足していたが)仮差止を妨げるのには十分である、と明確に説示した。同上。Helifix事件での先行の問題の対処法は本件の目的のために特に有益である。ある引用例が、その文面に明示的に記載されていないクレームの限定は当業者に教示しているかどうかに関する証言に対立があったが、本件クレームの全ての限定をその文面に開示していない引用例について先行について検討された。サマリー判決の申立の目的で無効を証明するには不十分であったが、その引用例は仮差止を妨げるのには十分であった。同at 208 F.3d 1351-52, 54 USPQ2d 1307-08。
 本件の状況は類似している。ここに、我々はクレームは無効であるとして裁判所に力説されたいくつかの引用例を持っている。地裁は、無効の分析の目的のためのそれらの引用例を退けた、なぜなら、地裁はそれらの引用例が本件クレームのあらゆる限定を列挙しているとは考えなかったからからである。本件において主張されている先行技術の我々の再審理において以下で述べるように、主張された引用例のそれぞれが本件特許のクレームのキーとなる限定を明確に教示している。BNは地裁に対して、もしトライアルで機会を与えられれば、当業者が主張された複数の引用例のギャップを満たすことができるであろうと論じた。
 主張された先行技術の重要性が正しい法的基準に照らして評価されるとき、我々はBNがAmazonの特許の有効性に対する重大な異議を提起したと結論する。しかし、我々はこの結論は仮差止の前提条件を傷つけるだけであると急ぎ付け加える。我々の有効性の問題に関する今回の決定は決して無効の最終的な疑問を解決しない。それはトライアルにおいて解決される問題である。特許に対して引用されるかもしれない他の引用例があるかどうかを知ることが残されており、また、BNの最初の仮の有効性に対する異議におけるいくつかの欠点がトライアルにおいて拡大されるか消失するかを知ることが確実に残っている。我々の判示の全ては、その間、BNが仮差止を避けるために’411特許の有効性に十分な疑いを投げかけたこと、及び有効性の問題はトライアルにおいて最終的に解決されるべきことである。
 BNによって引用された引用例の1つが「CompuServeトレンドシステム」であった。この争いのない証拠は1990年代の中ごろに、CompuServeがチャート毎に50セントの追加料金で加入者が株式チャートを得ることができた「トレンド」と呼ばれたサービスを提供していたことを示す。地裁において、BNはこのシステムが’411特許のクレーム11を先に行っていると論じた。地裁は、CompuServeトレンド引用例のシステムが’411特許のクレームの範囲の中の「シングルアクション注文技術」を使っていたようにみえるという、BNによって提起された無効の実質的な疑問を認識することに失敗した。
 最初に、地裁はこのシステムの重要性を、CompuServeのシステムはworld wide webアプリケーションではないということを一つの根拠として、退けた。クレームのどれもインターネット又はWorld Wide Webに言及していないので、この区別は的はずれである(インターネット及びWorld Wide Webの両方を一般的に結び付けたプログラム、HTMLに言及する従属形式クレーム15は例外である可能性がある)。さらに、’411特許の明細書は明示的に「当業者はシングルアクション注文技術がインターネット以外の種々の環境で使えることを理解するであろう」と記載している。第6欄第22−24行。
 更に重要なことは、(下に再現された)記録の中の一画面が、CompuServeトレンドシステムで、購入される「品目」(すなわち、株式チャート)が(有効な株式銘柄をタイプすることによって)表示されると、品目の即座の電子の配送(すなわち、「実行すること」)を得るために、シングルアクション(すなわち、「Chart ($.50)」とラベルされたボタンのシングルマウスクリック)だけが必要とされることを示している。「Chart ($.50)」とラベルされたボタンが買い手によって作動させられると、求められた株式チャートの電子バージョンが買い手に送信され、それが買い手のコンピュータ画面上に表示され、その取引に関して買い手の口座に50セントを請求する自動的なプロセスが始められるであろう。CompuServeトレンドシステムにおいてクレーム2及び11の文言の用語で、買い手によってタイプされた株式銘柄の文字が画面上にエコーバックされたとき、注文ボタンをクリックする前に、注文される品目は「表示されている」。 


 
 我々の前にある証拠は、電子株式チャートがクライアントシステムで受信されたことを示すメッセージをクライアントシステムがサーバーシステムへ送信するまで、電子株式チャートに対する請求プロセスは実際には始まらないであろうことを示している。Amazonは準備書面において、CompuServeトレンドシステムは結局「注文プロセスを完了するために必要な確認ステップ」を追加することになる、したがってCompuServeトレンドシステムが’411特許のクレームの範囲の中の「シングルアクション」技術を使っていないと主張する。しかし、すべてのクレームはシングルアクションだけの実行に応答して品目を注文する要求を送信することを必要とするだけである。CompuServeトレンドシステムにおいて、買い手が「Chart ($.50)」とラベルされたボタンを「クリックする」シングルアクションを実行するとき、この要件は満たされている。クレームは品目に対する請求プロセスもシングルアクションの実行に応答して始められなくてはならないことを要求しない。さらに、CompuServeトレンドシステムで、電子株式チャートの受信に成功したことを確認するメッセージをクライアントシステムからサーバーシステムへ送る「アクション」は、ユーザーの介入なしで、自動的に実行される。
 口頭弁論において、Amazonの弁護士はCompuServeトレンドシステムとクレームされた発明の間に3つの相違点を明言した。第一に、Amazonの弁護士は地裁の論法をそのまま繰り返し、CompuServeトレンドシステムはインターネット又はWorld Wide Webでないと断言した。上記のとおり、’411特許の明細書はこの区別が的はずれであることを示している。
 第二に、Amazonの弁護士は、CompuServeトレンドシステムは各セッションの始めにユーザーに「log in」することを要求する、したがって、各品目を購入する要求と一緒にクレームされた「識別子」を送信しないであろうから、’411特許のクレームとは異なっている、と主張した。しかし、クレーム11は品目を注文する要求と一緒に識別子の伝送を必要としない。この要件はクレーム1、6、及び9、並びにそれらの従属形式クレームでだけにみられる。
 表面上、CompuServeトレンド引用例は各品目を購入する要求と一緒にクレームされた識別子の伝送に言及していない。同様にこの段階の記録の中の証拠はCompuServeトレンドシステムがそのような識別子を伝達したことを示していない。したがって、BNはCompuServeトレンド引用例がこの点に関してサマリー判決を得るに必要なレベルでそのような識別子の伝達を必要とする’411特許のクレームを先に行っていることを証明してはいない。しかし、上記のとおり、仮差止訴訟手続きにおける有効性に対する異議は、トライアルにおいて無効の判決を支持するのには十分ではないであろう証拠に基づいて、成立し得る。Helifix, 208 F.3d at 1352, 54 USPQ2d at 1308参照。本件の記録は、CompuServeトレンドシステムが品目を注文する要求と一緒にクレームされた識別子を伝送するかどうか、又はこの限定が先行技術を考慮して自明であるかどうか、を判断できる点に至るまで熟していない。例えば、合衆国特許No.5,708,780(「’780特許」)(BNによって引用された引用例、以下でいっそう完全に論じられる)には、「クライアントからサーバーへサービス要求を転送し、要求のセッション内にクライアントからサーバーへのその要求及び次のサービス要求にセッションアイデンティフィケーション(SID)を添える」ことが記載されている。’780特許第3欄第12−16行。
 さらに、’411特許の明細書自体が、識別子が品目を注文する各要求と一緒に伝送される注文システムと、ユーザーが各セッションの始めに一度ログインするシステムとの区別を退けている。’411特許の第10欄第6−10行(「あるいは、買い手は、その顧客がサーバーシステムへアクセスを始めるとき顧客によって提供される及び各メッセージと共にサーバーシステムへ送信される固有の顧客識別子によって識別されることができる。」)。
 クレームされた発明とCompuServeトレンドシステムの間にAmazonの弁護士によって描かれた最終的な区別は、買い手がその画面を「呼び出す」であろう(Amazonによる)唯一の理由は電子株式チャートを実際に注文することであろう、したがって、その画面を呼び出すために買い手によってなされた、より早いアクションは追加の買い手のアクションとして計算すべきである、というものであった。この議論によれば、少なくとも2つのアクション(注文画面を呼び出す1つのアクションと、注文ボタンをクリックする第2のアクション)が1つの品目を注文するために行われる必要があるであろうから、CompuServeトレンドシステムは「シングルアクション」の限定を満たさないであろう。しかし、その一画面が明らかに示すように、買い手が電子株式チャートを注文する以外の目的のためにその表示画面を使用することができたであろう(例えば、株式銘柄の「Lookup」)。さらに、AmazonはCompuServeトレンドは最初に株式チャート注文画面を作動させるのに必要な「クリック」のために「シングルアクション」の限定を満たすことに失敗すると論じているのであるから、Amazonは、Express Laneを使うとき、メニューページから製品ページへ進むために必要とされる「クリック」のために同じ限定を満たし損ねることも認めている。
 CompuServeトレンド株式チャート注文画面が示すように、買い手が有効な株式銘柄をタイプすると、「その品目を識別する情報」(すなわち、望ましい電子株式チャートを識別する株式銘柄)と、識別された品目を注文するために実行されるための「シングルアクション」(すなわち、「Chart ($.50)」とラベルされたボタンをクリックすること)の指示の両方が画面に表示されることを我々は指摘する。したがって、CompuServeトレンド引用例によって提起された無効の実質的な疑問は、クレームが明示的にこれらの情報の両方が共に示されることが要求されると考えるのか(すなわち、クレーム2及び11)、クレームは「品目を識別する情報」だけが表示されることが要求されると考えるのか(すなわち、クレーム1、6、及び9)にかかわらず、同じである。
 以上を考慮して、我々は、CompuServeトレンド引用例が無効の実質的な疑問を提起していると認めることに失敗した点で、地裁は誤ったと結論する。CompuServeトレンド引用例がクレームされた発明を先に行っているか及び/又は自明にするかにかかわらず、当業者の知識を考慮したクレームされた発明はトライアルにおいて判断される事項である。
 CompuServeトレンドシステムに加えて、他の先行技術引用例がBNによって引用されたが、最終的には地裁によって拒絶された。例えば、BNの専門家Lockwood博士は1996年8月ごろに「Web-Basket」と呼ばれるオンライン注文システムシステムを開発したと証言した。Web-Basketシステムは「ショッピングカート注文部分」の具体化であるようにみえる:そのシステムはユーザーに仮想のショッピングかごの中に品目を蓄積しショッピングを終了する時これらの品目をチェックアウトすることを要求する。WebBasketは、ショッピングカートモデルのインプリメンテーションであるから、前もって登録されたユーザーでさえ購入を完了するいくつかの確認ステップを必要とする。
 しかし、Web-Basketはショッピングカートモデルの具体化であるにもかかわらず、Web-BasketがInternet Engineering Task Force(「IETF」)案の「クッキー」スペシフィケーションをインプリメントしており、ウエブサーバーがデータベースから情報検索に使用するためにクッキーの中に顧客識別子が記憶されていたことには争いがない。換言すれば、ユーザーが最初にWeb-Basketサイトを訪問したとき、クッキー(すなわち、次の使用のためにクライアントシステム上にサーバーシステムによって記憶されたファイル)がユーザーのコンピュータ上に識別子を記憶するために使用されていた。ユーザーがWeb-Basketサイト上で品目を購入した最初の時、ユーザーによって入力された購入の完了に必要な情報(例えば、名前、アドレス)が、クライアントシステム上のクッキーの中に記憶される識別子によって索引を付けられてサーバーシステム上のデータベースの中に記憶されるであろう。次の訪問で、そのクッキーはユーザー識別子を検索するために使われ、そのユーザー識別子はサーバーシステム上のデータベースからユーザー情報を検索するためのキーの役割をはたすであろう。
 仮差止段階の審尋の間にLockwood博士の宣言書と証言に基づいて、BNはWeb-Basket引用例は(適切な時期の当業者の知識と組み合わせて)クレームされた発明を自明とすると論じた[1]
 地裁は、Web-Basketシステムは「購入される品目が表示された時からマルチステップ注文プロセスが必要である」から、「’411特許のシングルアクション要件と一致していない」と結論した。しかし、前述のように、訴えられたBNのExpress Laneでも購入される品目がメニューページに最初に表示された時点からマルチステップ注文プロセス(すなわち、少なくとも2つの「クリック」)が必要であることを争いのない証拠が証明している、それでもなお、地裁はBNのExpress Laneは’411特許の主張されたクレームのすべてを侵害したと結論した。これらの2つの結論に矛盾があることを認識できなかった点で、地裁は誤りを犯した。
 さらに、地裁はWeb-Basket引用例の「クッキー」の性質に言及しなかった、そしてクライアントシステムから送信される識別子によって索引を付けられた買い手のデータを次の検索のためにサーバーシステム上に記憶するステップがWeb-Basket引用例によって先に行われていた及び/又は自明にされていたと合理的な陪審が認定し得ることを、地裁は認識できなかった。
 地裁は、原告が主張するBNの専門家の「自白」を根拠としたらしいが、BNの自明性の抗弁を退けた。地裁の意見の「先行技術の概要」と題された項で、地裁は次のように述べている:
明白性の問題に関して、本裁判所は被告によって提出された先行技術引用例と’411特許のクレームの間の相違は著しいと認定する。さらに、先行技術の中にeコマース技術の当業者を複数の引用例の組み合わせに導くであろう教示、示唆、又は動機づけに関する十分な証拠は記録にはない。特に、本裁判所は、Web Basketプログラムを修正してシングルアクション注文ができるようにインプリメンテントするのは容易であろうという証言にもかかわらず、そのような修正を行うことは決して心に浮かばなかったという印象的なLockwood博士の自白を認定する。この自白は先行技術引用例が当業者に’411特許発明を教示するというLockwood博士の断固たる陳述を否定するのに役に立つ。
上記のように、地裁は、Lockwood博士が個人的にクレームされた「シングルアクション」発明を考え出すために先行技術を組み合わせること又は修正することは決して考えなかったという「自白」に基礎を置いて、非自明性の結論を得たことは明らかである。このアプローチは法律問題として誤りである。Lockwood博士が彼の実際の知識に基づいてその時に個人的に実感したかしないかは争点とは無関係である。探究すべきものは仮想の当業者が’411特許につながる特許出願が出願された時に引用された複数の引用例から見つけたであろうものである。Kimberly-Clark Corp. v. Johnson & Johnson, 745 F.2d 1437, 1453, 223 USPQ 603, 612-14 (Fed. Cir. 1984)(仮想の当業者の起源と意義について詳細に論じている)参照。
 また、BNは1996年に著作権を得たCreating the Virtual Storeと題するMagdalena Yesilによって書かれた本からの抜粋を先行技術文献として提示した。地裁において、BNはこの引用文献がクレーム11のすべての限定を先に行っていると論じた。本裁判所において、BNは、多くの他のクレームの限定もその引用文献に開示されるが、仮差止段階では短縮化された準備書面及び審尋スケジュールを与えられ、これらの限定に関して、証言を準備する十分な時間がなかったと主張する。
 一般的な言い方で、その引用文献はショッピングカート注文モデルをインプリメンテトするためのソフトウェアを論じていることは明らかである。しかし、BNはその本のAppendix Fからの次に示す節に焦点を合わせる:
即時買いオプション
商店主は、チェックアウトの確認をスキップすることもできる、いくつか又は全ての品目に即時買いボタンを買い物客に提供することができる。これは彼らがショッピングの間に購入したい1つの品目を既に知っている顧客に対して追加のアピールを提供する。
地裁は、「文脈で読むと、被告らが頼りにするわずかの行は、購入を完了するための少なくとも2つの他の必要とされるステップをやめて、単にチェックアウトの確認ステップの除去を記述しているようにみえる」と述べて、その節の重要性を退けた。しかし、地裁は合理的な陪審がこの節が不必要なステップをスキップするようにショッピングカート購入ソフトウエアを修正する動機づけを提供することを認定でき得るであろうことを認識し損ねた。したがって、我々はこの節は、BNによって引用されたこの引用文献の残りと他の先行技術引用例に照らし、’411特許のクレームの有効性に対する実質的な疑問を提起すると認定する。
 BNによって引用された他の引用例、「Oliver's Market」注文システムを記述しているウエブページからのプリントアウトは、一般的に先行技術のマルチステップ・ショッピングカートモデルを記述している。BNはこの引用例が少なくともクレーム9を先に行っていると論じた。引用例は興味をそそる文で始まる:
写真上でのシングルクリックが品目注文のために行うことの全てである。
文脈で読んで、引用文はオンラインでの注文がいかに容易であるかを強調している。地裁は合理的な陪審が、この節が’411特許でクレームされたような「シングルクリック」をインプリメントするようにショッピングカートモデルを修正するための動機づけを提供することを認定し得るであろうことを認識し損ねた。加えて、地裁はその引用例の他の節が合理的な陪審によって’411特許の主張された新規な「シングルアクション注文技術」を先に行っている及び/又は自明にしていると解釈され得るであろうことを認識し損ねた。例えば、その引用例は「我々のソリューションは、どこであなたが製品の写真又は価格を見ても1クリック注文が可能です」と述べている。また、その引用例は、「ユーザーがある品目をクリックした最初のときに」ユーザー識別情報(例えば、ユーザ名及びパスワード)及び購入情報(例えば、名前、電話番号、支払い方法、配送住所)が取り込まれ、データベースに記憶され、対応するクッキーがクライアントシステムに記憶されるシステム、を記述している。このシステムにおいて、次の訪問の時にクッキーを読むことによって記憶された情報を自動的に検索することができる。これら節のすべてはさらに、有効性に対する実質的な疑問が、単独又は他の引用例と組み合わせて、この先行技術引用例によって提起されるというBNの議論を支持している。
 地裁によって考慮された最後の引用例は、「インターネットサーバーアクセス制御及び監視システム」という名称の’780特許である。Amazonの’411特許の出願前に合衆国で出願された特許出願を基礎として、’780特許は特許法第102(e)条(1994年)に基づく先行技術の資格がある。地裁において、BNはこの引用例が少なくとも’411特許のクレーム1を先に行っていると論じた。
 ’780特許に記載された好ましい実施例において、ユーザーが通常の方法でウエブをブラウズする、そしてコンテンツサーバーがユーザーにウエブドキュメンツを提供し、ユーザーが「管理された」コンテンツ、すなわち、ユーザーがブラウズするために権限を必要とするウエブページへアクセスを試みた時に、決定を行う。’780特許第7欄第7−11行。’780特許は、権限のある要求がコンテンツサーバーによって受信された時に、管理されたページがユーザーのブラウザに返されるシステム、を記載する。我々は、’780特許が「クライアントからサーバーへサービス要求を転送し、要求のセッション内にクライアントからサーバーへのその要求及び次のサービス要求にセッションアイデンティフィケーション(SID)を添える」ことを記載していることを指摘する。同上第3欄第12−16行。
 我々は地裁が合理的な陪審がこのような「品目」(すなわち、管理されたページ)がクレームされた発明の範囲に入り、ユーザーのブラウザから権限のある要求を受け取ることによるこれらの管理されたページの配送が’411特許のクレームの意味の「シングルアクション注文部分」を構成するかもしれないと判定し得るであろうことを認識し損ねたと結論する。そのために、’780特許は単独又は他の引用例と組み合わせるかのいずれかで、有効性の実質的な疑問の提示につながるBNによって引用されたさらにもう1つの先行技術引用例である。
 地裁はその非自明性の結論を支持するために「二次的斟酌」を引合いに出した。特に、地裁は、(1)Amazonが「1-Click(R)」を導入した後のBN及び他のeコマース小売業者による「発明のコピー」、及び(2)「見捨てられたショッピングカートの問題を解決する必要性」を引合いに出した。最初に、我々は、Amazonの「1-Click(R)」をコピーしたことの証拠は、Amazonの「1-Click(R)」がクレームの実施例であることを証明しなければ、法的に無関係であることを指摘する。Amazonがその「1-Click(R)」が正しいクレーム解釈に基づいて’411特許のどのクレームを具体化したのかを立証することができるのであれば、BN及び他の者によるコピーの証拠は、BNによって引用されここで論じられた先行技術引用例によって提起された有効性に対する実質的な疑問を考慮し、クレームされた発明の非自明性を証明するには不十分である。
 見捨てられたショッピングカートに関しては、この問題は’411特許の中で言及しさえされていない。さらに、Amazonは、その商業的成功が「1-Click(R)」注文に関連しているのか、又はシングルアクション注文が見捨てられたショッピングカートの数の減少の原因になっているのか、を証明する証拠も提出しなかった。したがって、我々はなぜこの「斟酌」がAmazonの非自明性の主張を支持するのかを理解することができない。
結論
 Amazonは侵害に関して勝訴する可能性を立証する証明責任を我々の前にある記録上で果たしたようにみえる、一方、BNが’411特許の有効性に関して実質的な疑問を提起したことも事実である。この理由のために、我々は仮差止のための必要な前提条件が現在欠けていると結論せざるをえない。したがって、我々は仮差止を取り消し、更なる訴訟手続きのために本件を差し戻す。
費用
費用なし。
取り消し、差し戻し
 



脚注
1.控訴審において、BNは、先行の抗弁はLockwood博士のクレーム対応図によってWeb-Basketシステムに基づいて提起されたと主張する。しかし、我々の再審理では記録は、Lockwood博士が独立形式クレームのなかの少なくとも1つのクレームはWeb-Basketシステムによって先に行われていないかもしれないことを認めたことを示している。したがって、この段階で、我々はWeb-Basketシステムに関連しては自明性の問題だけを扱う。




訳注
(訳1)米国特許法102条(a)項は、「102条 人は、以下の場合でない限り、特許を受ける権利を有する−(a)発明が、特許出願人の発明前に、この国において他人によって知られ若しくは使用され、又はこの国若しくは外国において特許され若しくは印刷された刊行物に記載されたものである場合、」と規定しており、この規定は日本の特許法29条1項(新規性)に対応している。ただし、日本では先願主義であるから「出願前」であるのに対して、アメリカは先発明主義であるから「発明前」である。この102条の条文自体には規定されてはいないが、判決では102条に関して「anticipate」と述べられる場合が多い。この「anticipate」は一般には「予期している」、「予見している」等に訳されるが、私として「先に行っている」、「先行している」と翻訳した方が妥当であると考えている。例えば、ランダムハウス英語辞典(電子辞書)の「anticipate」の項には、「【1】予想[予期,予知]する;・・・:anticipate a favorable decision 有利な決定を予測する、・・・【2】〈ある行為・考え方に〉先鞭(せんべん)をつける,先取りする;〈人・計画などに〉(…の点で)先行する:Russia anticipated the United States in orbiting a satellite. ソ連は人工衛星を軌道に乗せることで米国に先んじた」と記載されており、また、「anticipation」の項には、「【1】予想,予知,予測、・・・【4】先を越すこと,先取り;事前行為[処理],先制行動、【5】先行するもの(発明,発見など)」と記載されている。これらの用例を見ると、「先に行っている」と訳した方が適切であると考える。「先行技術文献が本件特許発明を先に行っている」という意味であり、これなら102条の条文と完全に一致している。なお、102条で特許を無効とするためには、1つの先行技術文献が本件クレームの全ての限定を先に行っていることが必要である。複数の先行技術文献が関係する場合は、103条の問題となる。

(訳2)米国特許法103条(a)項は、「第103条 (a)本法第102条に規定されているように発明が全く同一に開示又は記載されていないとしても、特許を求める発明と先行技術との相違が発明がなされた時に発明の属する技術において通常の技術を有する者にとって全体として自明であったであろう場合は、特許を受けることはできない。・・・」と規定しており、この規定は日本の特許法29条2項(進歩性)に対応している。

(訳3)アメリカの仮差止は、日本の仮処分事件における差止に対応している。「仮」とはいっても、バーチャルというわけではなく、実際に被告は侵害行為を禁止される。ただし、本案訴訟(「仮」に対して通常の訴訟を「本案訴訟」という)の判決で、逆転する可能性もあり、その場合の仮差止による被告の損害を補償するために、原告は補償金を供託しなければならない。

(訳4)サマリー判決とは、重要な事実について争点がなく法律問題だけで判決できる場合に、申立によりなされる判決である。サマリー判決の申立が認められる場合は、トライアルにおける事実審理、すなわち証人尋問(専門家証人の尋問を含む)を行わずに判決がなされる。ただし、サマリー判決は「仮」ではなく、本案訴訟における判決であるから、被告による無効のサマリー判決の申立が認められ、本件特許は無効であるとするサマリー判決がなされ、それが確定すれば、原告(特許権者)は侵害訴訟で勝つことは不可能である。これに対して、原告(特許権者)の仮差止の申立に対抗する、被告による無効の異議の場合は、異議が認められても、それは「仮の」無効であるから、原告(特許権者)は本案訴訟でトライアルで逆転して、本件特許は有効であり、被告の製品は侵害であるという判決を受けることが可能である。このようなことを背景として、本判決は、サマリー判決における無効の判断基準は本案訴訟のトライアルにおける判断基準、「明確かつ説得力がある証拠」によらなければならないが、仮差止に対抗するときの無効の異議の場合は、より劣った証拠で、仮の無効を判断できる旨判示していると考えられる。



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