翻訳 井上雅夫 2000.08.20-09.24;01.02.09  ↑UP  

合衆国特許商標庁(USPTO)

コンピュータにインプリメントされたビジネス方法発明出願の
特許法103条〔自明性〕拒絶の論理づけ及び通知

2000.07.26

   目   次
I.イントロダクション
II.基本的な事実の調査
III.自明性の法的結論
IV.特許法103条に基づく適切な拒絶の論理づけの通知
 A.引用文献に明示又は暗示された論理づけの例
  例1:引用文献に明示された論理づけ
  例2:引用文献に明示された論理づけ
  例3:引用文献に暗示された論理づけ
  例4:引用文献に暗示された論理づけ
 B.引用文献以外から論理的に推論する論理づけの例
  例5:その技術における普通の知識から推論した論理づけ
  例6:定着したビジネス原理から推論した論理づけ
  例7:定着したビジネス原理から推論した論理づけ
  例8:判例(知られている手作業の方法の自動化)から推論した論理づけ
  例9:判例(知られている手作業の方法のインターネット上の自動化)から推論した論理づけ
  例10:判例(知られている手作業の方法の自動化及びインターネット上での実行)から推論した論理づけ
  例11:庁の告示から推論した論理づけ
  例12:差異が記憶させたデータであることから推論された論理づけ(製造品)
  例13:処理されるデータであることから推論した論理づけ(装置)
  例14:コンピュータプログラムを有する知られているシステム/装置(特許性あり/特許性なし)
  例15:その技術において認められている均等物から推論した論理づけ
  例16:その技術における技術水準から推論した論理づけ
V.特許法103条に基づく不適切な拒絶の例
  例17:あと知恵に基づいた不適切な拒絶(一般的な動機づけの記載)
  例18:あと知恵に基づいた不適切な拒絶(引用文献で述べられた目的と正反対の動機づけの示唆)
  例19:あと知恵に基づいた不適切な拒絶(提案された動機づけがクレームの差異に関係しない)
訳注

  
I.イントロダクション

 合衆国特許商標庁(USPTO)は特許性の要件が満たされたかどうかを決定するために特許出願を審査する。特許審査官の主要な職務は適切な先行技術のサーチを行い、クレームされたものが特許取得可能であるかどうかを決定することである。

 あらゆる技術分野の発明と同様に、クレームされたコンピュータにインプリメントされたビジネス方法発明の特許法102条及び103条に基づく特許性の決定は、クレームされたものと先行技術で知られているものとの比較から始める。もしクレームされた発明と先行技術との間に相違点が見いだされないなら、対応するクレームは特許法102条〔新規性〕に基づいて新規性に欠けているとして拒絶される。もし先行技術がクレームされた発明と同一のものを開示してはいないが、その技術において通常の技術を有する者に対してクレームされた発明を示唆したであろうなら、対応するクレームは特許法103条〔自明性〕に基づいて特許を受けることができないとして拒絶される。

 特許審査官は、最高裁判所がGraham v. John Deere事件で明確に述べた特許性の基準を全てのケースに確実に適用する責任を有する。Graham事件において最高裁判所が明確に判示した自明性を決定する4つの事実の調査は、(1)先行技術の範囲及び内容を決定すること、(2)先行技術と本願のクレームの間の相違点を確認すること、(3)その技術分野の通常の技術水準を決定すること、及び(4)二次的斟酌の証拠を評価することである。

 審査官は、自明性の結論の一応の証明を実際に支持することについて最初の立証責任を負う。もし審査官が一応の証明<a prima facie case>をなすことができないなら、出願人は非自明性の証拠を提出する義務はない。しかし、もし、審査官が一応の証明を行ったのであれば、証拠又は主張を提出する立証責任は出願人に移り、出願人はクレームされた発明は先行技術によっては予期されない特性の改善を奏する旨の追加の証拠を提出することができる。したがって、先行技術が関連技術における通常の技術を有する者にクレームされた発明を示唆したであろうことが一応証明されるまでは、自明性の一応の証明の最初の評価において、審査官及び出願人の両方は先行技術及び出願された明細書中の証拠以外の証拠を評価する必要がない。

 この文書はUSPTOにおける自明性の評価を論じる。関連する証拠の収集及び評価の手続は第II部の主題である、また、証拠の分析は第III部の主題である。ビジネス方法に関連した代表的な例を含めむ書面のオフィスアクションにおける拒絶の通知が第IV部の主題である。

     
II.基本的な事実の調査

A.Graham調査
 サーチ及び先行技術の評価の指針となる基本的な事実の調査は、1966年にGraham v. John Deere事件において最高裁判所によって次のように概説された:

(1)先行技術の範囲及び内容を決定すること;
(2)先行技術と本願のクレームの間の相違点を確認すること;
(3)その技術における通常の技術水準を決定すること;及び
(4)実証的な証拠(例えば、いわゆる「二次的斟酌」)を評価すること。
 審査官は最初に、特許出願の明細書中にクレームされ記載された発明について、最もありそうなサーチ分野を決定する。最もありそうなサーチ分野は、出願人が努力した分野ばかりでなく、類似した分野も含む。また、審査官は先行技術の内容を決定しなくてはならない。先行技術の内容は、あと知恵を避けるために、発明がされた時点で決定される。これらの調査は先行技術の範囲と内容を決定する。第二に、審査官は先行技術とクレームの間の相違点を決定する。先行技術とクレームの間の相違点を確かめるためには、クレームの文言を解釈すること及びクレームされた発明と先行技術引用文献の両方を全体として考慮することを必要とする。第三に、審査官はその技術分野における通常の技術水準を決定する。その技術分野での通常の技術水準の決定において、考慮される要素は以下を含む、(1)発明者の教育レベル、(2)その技術で遭遇された問題のタイプ、(3)それらの問題に対する先行技術の解決法、(4)イノベーションがなされる速度、(5)技術の複雑さ、及び(6)その分野の中で活動中の研究者の教育レベル。

B.事実の収集
 Graham事件に概説された基本的な事実の調査は通常次のように実行される:

(1)どこをサーチすべきか、及び何をサーチすべきかを決定すること;
(2)サーチ中に見いだされた技術が「先行技術」として資格を有するかどうかを決定すること;
(3)クレームされたものと各先行技術の関連性を決定すること。(例えば、先行技術のどれがクレームされた発明に最も近いか、最も近い関連する先行技術とクレームの間の相違点は何か、及び個々の相違点が先行技術のどこに示されているか)。
 この手順は以下で詳細に論じられる。

1.どこをサーチすべきか、及び何をサーチすべきかを決定すること。
 特許法103条によって求められる問題は「全体としてのクレーム」が発明時に自明であったであろうかどうかである。どこをサーチべきか、及び何をサーチべきかを決定する場合に、審査官は「全体として」発明を考慮しなければならない。

a.何をサーチすべきか:
 クレームされた発明の範囲はサーチの前に明確に決定されなければならない。特許の審査中、クレームは明細書と整合性がある最も広範囲な合理的な解釈を与えられる。サーチはクレームで明らかにされた文言の要素にだけ限定されるべきではない。出願人が補正で取り入れるかもしれないと審査官が合理的に予想するすべてのものも、可能な限り、カバーすべきである。ファーストオフィスアクションに応答する出願人によるクレームの補正によって必要とされない限り、最初のサーチは十分に完全であり、セカンドアクションではアップデートサーチだけが必要とされるようにすべきである。

b.どこをサーチすべきか:
 特許出願の審査において、審査官は先行技術の徹底的なサーチを行わなくてはならない。先行技術の徹底的なサーチを計画するためには審査官による3つの別のステップを必要とする:(1)サーチ分野を特定すること;(2)サーチするための適切なツールを選択すること;及び(3)選択されたそれぞれのサーチツールのための適切なサーチ戦略を決定すること、である。

 サーチ分野を決定するとき、3つの引用文献源−国内特許、外国特許文献、及び非特許文献(NPL)−が考慮されなければならない。審査官が、排除した情報源で既に発見したものよりも関連の深い引用文献が発見される可能性がないと合理的な確実性を持って正当化することができないなら、これらの情報源のいずれもサーチから排除することはできない。サーチ分野は優先順位付けされるべきであり、その分野で発明が最も見込みが高く先行技術が発見できるであろうところから始めるべきである。最も近い先行技術文献を発見する最も高い可能性はクレームされた発明と同じ「努力の分野」にある。これは、クレームを組み合わせる要素が最も多数発見される基本的なサーチ分野である。発明者の努力の分野で発見されなかった相違点は、その後、類似の技術分野、すなわち、その発明の課題と同じ又は同様な課題を扱っている分野でサーチされる。

 サーチ分野を決定した後、審査官は何のサーチツールを用いてサーチを行うべきかを決定するべきである。審査官には、多種多様な手作業の及び自動化されたサーチツールへのアクセスが用意されている。最も適切な先行技術がサーチ中に発見されることを保証するために、サーチツールの選択はキーとなる要因である。使われるサーチツールの選択は、技術が割り当てられた審査官が利用可能なサーチツールのカバー範囲、強さ及び弱さについての審査官の知識に基づいている。審査官にとってサーチツールの知識は、特許文献が発明に大きく後れを取り、従って、限定された価値の引用文献源でしかないかもしれない技術(例えば、非常に活気のあるハイテク技術)で特に重要である。これらの審査官は、サーチがNPLを含むように特別な配慮が必要であり、サーチニーズと関係があるNPLをカバーするように専門化されたツールを効率的に使用しなければならない。

 サーチを行うために何のサーチツールが使われるべきであるかを決定した後、審査官は選択されたそれぞれのサーチツールのために適切なサーチ戦略を決定すべきである。適切なサーチ戦略はケースバイケース・ベースで審査官によって決定されるべきであり、必要なときは、他の審査官及び/又は特許審査長と相談すべきである。

2.サーチ中に発見された技術が特許法102条に基づく「先行技術」の資格があるかどうかを決定すること。
 サーチ中に発見された技術は、クレームされた発明を拒絶するために使用可能であるためには、特許法102条によって定義された「先行技術」として資格を有していなければならない。何時その技術が公知になったか、誰が技術の源(例えば、発明者又は他の当事者)であるか、及び技術が特許法112条第1パラグラフの実施可能条項を満足するかどうかを決定することが必要である。特許法102条〔新規性〕に基づく先行技術が、特許法103条〔非自明性〕に基づく拒絶を支持するために使用することができる。

 後述するように、先行技術は典型的には印刷された形式での文献情報及びある種の非文献情報を含む。

a.文献情報
 発行された特許及び刊行物のような、公然と利用可能な文献が先行技術の拒絶で最も一般に使われる。もし公衆がアクセスできるなら、引用文献は「刊行物」である。刊行物は、通常、特定の発効日を持ち、それによって特許法102条に基づく先行技術として資格を有するかどうかを決定するのが容易である。

 オンライン・データベース又はインターネット出版を含めて、電子出版は、その文献に関連する技術に関係する人々がアクセスできたのであれば、特許法102条(a)及び(b)の意味の「刊行物」であると考えられる。

b.非文献情報
 公然と発表されない形式での利用可能な情報も先行技術として認めることができる。普通の例としては、出願人による自認、よく知られている科学的な原理、又はその技術における普通の知識を含む。

(i)自認
 発明の日前に、ある特定の情報が出願人に知られていた旨の明細書又は出願手続中に提出された他の書類でされた陳述は、先行技術を構成する。先行技術の自認は、特許法103条に基づく拒絶を含む、あらゆる目的のために使用できる。自認を支持するために、裏付ける引用文献を引用することは必要ではない。しかし、出願人は後に陳述が先行技術の自認としては実際に意図していなかった、又は陳述の意図する範囲は審査官によってそれに与えられた解釈と異なっていると主張してもよい。もし審査官が型どおりに<routinely>出願人に先行技術の自認と関係がある文献を提出するように要請するなら、そのような問題は最小限に抑えることができる。
  
(ii)その技術における普通/従来の知識
 先行技術はその技術で普通の技術水準を表しているすべて公衆の知識を含む。審査官は、「その技術において周知である」として、手軽で明白な論証ができる証拠外の事実のオフィシャルな通知を行うことができる。審査官はその技術における普通の/従来の知識に基づいてクレームを拒絶することができるが、このプラックティスは自制して適用されるべきものである。拒絶を支持するために引用文献を発見することは常に審査官に義務づけられる。もし出願人がこのような〔審査官による周知の〕主張を否定するなら、審査官は自分の立場を支持する引用文献を引用するべきである。拒絶が審査官の個人的な知識の事実に基づいているとき、そのデータは可能な限り特定して述べられるべきである、そして、出願人によって要求されるときは、その事実は審査官の供述書によって、支持されなくてはならない。このような供述書は、出願人及び他の人々の供述書による反駁又は説明を免れることはできない。特許規則1.104(d)(2)参照。

 もし出願人が審査中に周知である旨の〔審査官の〕陳述を適切な時期に否定しないなら、周知である旨の〔審査官の〕陳述の対象は自認された先行技術であるとされる。[訳1]

3.クレームされたものに対して複数の先行技術の関連性を決定すること。
 審査官は、どの技術がクレームされた発明に最も近いか、最も近い先行技術によって示されないすべての相違点を〔その他の〕先行技術が示すかどうか、及びその技術が個別の教示を組み合わせることを示唆するかどうかを決定するために、サーチ中に発見した技術を絶えず評価する。

 
   
III.自明性の法的結論

A.自明性の一応の証明の評価
 自明性の一応の証明を評価するためには、3つの基本的な基準が満たされなくてはならない。最初に、引用文献自身又はその技術において通常の技術を有する者に一般的に利用可能な知識の中に、引用文献を修正するか又は引用文献の教示を組み合わせる、何らかの示唆又は動機づけがなければならない。第二に、拒絶査定の合理的な期待がなければならない。最後に、先行技術引用文献(又は組み合わされた引用文献)が全てのクレームの限定を教示又は示唆しなければならない。

 出願人が行ったことを行うことの望ましさについて何かの示唆を提供する最初の立証責任は審査官にある。クレームされた発明が自明であるという結論を支持するためには、複数の引用文献がクレームされた発明を明示的又は暗黙に示唆していなくてはならないか、又は、技術者がクレームされた発明が引用文献の教示に照らして自明であったことを見いだしたであろう理由について、審査官が説得力のある推論を提出しなくてはならないか、のどちらかである。クレームされた組合わせを行う示唆及び拒絶査定の合理的な期待の両方が、出願人の開示の中ではなく、先行技術の中で見いだされなければならない。

 しばしば、組み合わせる理由又は動機づけが、出願人が主張するのとは異なった目的のため又は異なった問題を解決するために、出願人がしたことを行うことを示唆するかもしれない。先行技術の組み合わせが出願人によって発見されたものと同じ利点又は結果を達成することを先行技術が示唆することは、自明性の一応の証明を確立するためには必要とはされない。

 先行技術の組み合わせを支持する論理づけは判例に基づくこともできる。もし先行する判決の中に記載された事実が審査中の出願の中の事実に十分に類似しているなら、審査官は裁判所によって使われた論理づけに頼ることができる。いくつもの裁判所が、物品のサイズ、形状若しくは色の単なる変更、又は装置内の機械部品を逆にすることのような普通の慣行は、一般に、その技術における通常の技術だけを必要とするに過ぎず、それゆえ、平凡な手段であると判断されると判示している。普通の事実の根拠が証明されたときだけ、先行する判例法に依存するのが適切である。もし出願人が特定の限定の重要性を証明したのなら、自明性による拒絶を支持するために単に先行する判例法に頼ることは適当ではないであろう。

B.一応の証明の反論
 自明性の一応の証明がなされると、立証責任は一応の証明に反駁する証拠を申し出るために出願人に移る。この証拠には一般に2つのタイプがある:(1)最も近い先行技術と比較して予期されない又は自明でない効果又は利点の証拠;及び(2)発明の商業的成功又はその技術で長く感じられた必要性に対する解決を提供する活動のような証拠である。出願人による主張は証拠ではない。

 発明によって作り出された利点又は予期されない結果の証拠は特許規則1.132に基づく供述書又は宣言書によって立証されるかもしれない、又は拒絶に対する書面の記載又は応答の形で宣誓しない形式で提出することができる。このような証拠は典型的には、発明が先行技術が有していない効果を作り出したことを明示する「比較の例」の形である。非自明性の証拠の考慮において、利点又は予期されない結果が事実の証拠によって立証されなくてはならないということは、十分に定着している。単なる主張又は断固たる主張は事実の証拠ではない。より優れた又は予期されない結果が主張されるときは、これらの結果が最も近い先行技術に記載された他の装置、方法等によって達成された結果と比較して、より優れていることが論理的に示されなくてはならない。

 また、審査官は実証的な証拠がクレームの範囲に対応しているかどうかも考えなくてはならない。証拠はクレームされた発明の範囲に合理的に対応していなければならない。特に、自明性の一応の証明の反論のための比較テスト結果は、クレームされた発明を最も近い先行技術と比較しなくてはならない。これらのテストは、例えば、最も近い先行技術が問題に遭遇し、クレームされた発明がその問題を克服したことを立証するかもしれない。比較テストはあらゆる点で真実の比較でなければならない。テストは特別な状態に基づいて行われてはならない。生成されたデータは本当に際立って異なっていなければならず、単なる普通に期待される差異であってはならない。

 また、出願人は、非自明性の証拠を提出しないで、自明性の一応の証明が、誤った事実認定、若しくは事実認定及び法的判断の適切な法的基準の適用の失敗に基づいた欠陥、又は自明性の結論が法的問題として誤りであるという欠陥を有することを示そうとすることができる。

 予期されない結果の証拠は、発明が、知られていた問題を解決したこと又は先行技術によっては予期されない利点を作り出したことを直接的に立証するように意図される。また、他のタイプの実証的な証拠は間接的に発明の利点を立証するために提出することができる。この証拠は、その技術において通常の技術を有する者が行ったであろう又は行わなかったであろうことの推論として、他の者の実社会の活動に関連している。非自明性の基準として認知されている実社会の出来事の一般的な例は以下を含む:

(1)クレームされた発明の商業的成功;
(2)その技術で知られていた問題に対する解決の必要性が長期間感じられていたこと;
(3)知られていた問題の解決の他の者の失敗;
(4)専門家の疑念;及び
(5)先行技術に優先してその発明がコピーされたこと。
 非自明性の実証的な証拠は常に考慮されるべきであるが、このような証拠の単なる存在は必ずしも非自明性の結論を命じるものではない。証拠は、大規模な広告による攻撃的なマーケティング又はその他のそのような無関係な活動ではなく、クレームされた発明の功績と実際に関連したものでなければならない。特に、クレームされた発明の功績と提示された証拠の間の関連性が立証されなくてはならない。もし実証的な証拠がクレームされていない特徴に関係するのなら、その証拠はその成功がクレームされていない特徴のためではないことを立証するものでなくてはならない。

C.最終の法的結論
 特許法103条に基づく適切な決定に達するために、審査官は、発明が知られてなくかつ発明がなされる直前の仮定上の「その技術における通常の知識を有する者」の立場に、時間的に後ろ向きに、あとずさりしなければならない。すべての事実の情報を考慮して、審査官はそれでクレームされた発明が「全体として」その時に上記の者にとって自明であったであろうかどうかを決定しなければならない。この決定に到達するときには、出願人が開示した知識は故意に忘れなければならないが、それでもなお、「相違点」を決定し、発明の「全体としてのもの」をサーチ及び評価するためには、念頭におかなければならない。出願人の開示に基づく「あと知恵」に訴える傾向はしばしば審査プロセスのまさしくその性質のために避けることが難しい。しかし、許されないあと知恵及び出願それ自体ルールは避けられなくてはならず、法的結論は先行技術からだけ収集された事実をベースにして達せられなくてはならない。

  
   
IV.特許法103条に基づく適切な拒絶の論理づけの通知

 審査官が、特許性の法定要件の一つ又はそれ以上を満たしていないとして、クレームを拒絶する場合、行政デュープロセス及び特許法132条は、出願人が進む方法を決定できるように、出願人に対してクレームの拒絶の理由を適切に通知することを要求する。オフィスアクションはあらゆる拒絶理由を述べるという法定の要件は、適切なアクションがなされるために決定的に重要である。

 特許法103条に基づく拒絶を書く場合は、審査官は以下のように適切に通知すべきである:

(1)引用文献の特定の引用部分は実際に使用できる程度に綿密に明示されるべきである;特許規則1.104(c)(2);
(2)クレームされた発明と最も近い先行技術の間の相違点;
(3)先行技術の中で、相違点が発見又は示唆される部分;
(4)先行技術の教示が組み合わせられる方法;及び
(5)それらの教示の組合わせが、発明がされた時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう理由。クレームされた発明が示す先行技術の開示を動機づけとして挙げてはいけない。引用文献自体、その技術における通常の技術を有する者の知識、又は解かれる問題の性質が、先行技術文献を組み合わせる動機づけを立証する理由を通知する。
 出願人が反論証拠を提出した場合は、審査官は全部の記録から判断して、最初のあらゆる自明性の判断を再考すべきである。すべての提案された拒絶及びその基礎はその正当性を確証するために再検討されるべきである。その後にだけ、オフィスアクションとして拒絶が課されるべきである。オフィスアクションは、庁の認定及び結論を明確に通知すべきであり、いかに結論が認定によって支持されているのかを明確に表現すべきである。

 以下は、支持する論理づけを通知する適切な方法を例証する自明性の拒絶の例である。例は2つの広範囲なカテゴリーの中にまとめられる:論理づけが引用文献に暗示又は明示されているもの、及び、定着したビジネスの原則、その技術において認められている均等物、判例、普通の知識又は庁の告示のようなテクニカルな推論に、論理づけが基づいているもの、である。

  
A.引用文献に明示又は暗示された論理づけの例

 以下の例は適用された引用文献の一つに含まれた明示又は暗示された論理づけに基づくものである。

例1:引用文献に明示された論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明は、スタート価格、型番及び入手可能な数量を含む(ただしそれに制限されない)販売品目情報がディスプレイ上のウエブページに表示されるオンラインのオークション会社に関する。開示されたオークション方法は、登録されたユーザーから品目に対する付け値を受け取り、オークションの指定された終了時に成功裏に他のユーザーより高い値を付けた入札者に品目を与えるネットワーク上の中央の場所を含む。加えて、このウエブサイトは、誰と競り合っているのかを他のユーザーが特定できるように、値を付けたユーザ名を表示する。

クレーム1:
 それぞれの品目のために、品目のカラー写真、型番若しくはその他の特有な識別名、入手可能な数量、及び指定スタート価格を含みウエブページ上にオークションに出されている複数の品目を表示するステップ;
 中央の場所に、現在入札に出されている品目の型番又その他の特有な識別名、付け値を提出した時間順の全関係者の名前の現在のリスト及び彼らの付け値の完全なリスト、及び品目のための残りのオークション期間を含む入札者の表示板を提供するステップ;
 品目のためのオークション期間の終了時に、競り勝った関係者と付け値を決定するステップ;及び
 インターネットを介して競り勝った関係者に転送される競り勝った関係者の決済用のオークション販売契約書を用意するステップ;
 からなるインターネットによるオンラインのオークションを行う方法。
b. 証拠
 2つの先行技術が存在する。第1引用文献はSmithであり、特定の品目を入札しているユーザ名を表示することを除き、クレームされた出願の要素のすべてを含むオンラインのオークション方法を教示する。第2引用文献はJones他であり、クレームされた多くの特徴を欠いたオークションを教示するが、Jones他はオークションが他のユーザーが誰と競争しているのかを見ることを可能にするために特定の品目を入札しているユーザーを表示することを教示する。Jones他は続いて、ユーザーの身元を表示することによって、同じ会社で働いているかもしれないユーザー又は友人たちであるユーザーが、お互いに競争入札をすることを防止するであろうこと、及び、それによって入札の対象物の価格を暴騰させないことを示している。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はJones他を考慮したSmithに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。Smithは、オークションの間に入札している人たちの名前を表示すること以外のクレームされた要素のすべてを教示する。Jones他は、特定のオークションで品目に値を付けた者の名前の表示を教示することで引用された。Jones他はさらに、名前を表示することによって、対象物の価格が同僚又は友人たちが同じ理由で同じ対象物を入札することによって過度に暴騰しないであろうことを教示する。もし品目がビジネスのためのものであるなら、同僚たちはただ一人の入札者だけに参加させる可能性がより高いであろう。そのために、上記の明示された理由により、Jones他に教示されるように、Smithにおいてオークションの関係者の名前を表示したことは、本願発明にその技術において通常の技術を有する者に自明であったであろう。

  
例2:引用文献に明示された論理づけ

a.クレームされた発明
 開示された発明は、銀行の顧客が種々の銀行業務機能を実行するためにインターネットを利用できるオンライン遠隔操作銀行システムである。実行できる銀行業務機能のなかに、1口座から他への資金の転送、顧客口座情報へのアクセス、及び、銀行が提供する投資信託及び有価証券のような、種々の投資手段の購入がある。また、銀行は、提供したサービスに対する顧客の好みと顧客満足度を決定するためにオンラインの調査を行うこともできる。

クレーム1:
 離れた場所に位置している複数の顧客のコンピュータを銀行と関係した中央コンピュータに結ぶ手段;
 自分の個人口座と関係した選択された情報にアクセスし検索することを顧客に許可する手段;
 上記顧客のコンピュータを使用して、ある顧客口座から他の顧客口座へ資金を移すことを顧客に許可する手段;及び
 上記顧客のコンピュータを使用して、上記銀行によって提供された投資信託を購入する手段;
 からなるインターネット上の遠隔操作銀行システム。
b.証拠
 Jonesはインターネット上で使用する種々のソフトウェアパッケージを開示する。これらのパッケージは通常ユーザーと対面した取引でだけ実行される種々の機能を、遠隔操作で実行することを可能とする。Jonesに記載された最初のパッケージは、銀行の顧客が残高情報のために彼らの口座にアクセスし、また、1つの口座からもう1つへ資金を移すことを可能にするためにインターネットを利用する遠隔操作銀行業務である。もう1つの記載されたパッケージは、投資家に種々の取引の買い注文と売り注文を出すためにインターネットによって彼らのブローカーと連絡を取ることを許す遠隔操作リモート投資である。

 Smithは、銀行が、従来の銀行業務サービスに加えて、いっそうしばしば、株、債券、投資信託、先物等を含む種々の投資の購入を仲介するために使われていることを開示する。顧客は引き出しのために銀行に立ち寄ることもでき、同時に投資することを決めることもできる。Smithはこの組み合わせられたサービスが非常に人気が高いこと及び銀行業務顧客によく受け取られたことを開示する。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はSmithを考慮したJonesに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。Jonesは、口座の情報へのアクセス、及びある口座からもう1つへの資金の移動を含む種々の機能を実行するためにインターネットを介して離れて位置した銀行のコンピュータと連絡を取るためにパーソナル・コンピュータを使うことを顧客に許す手段を開示する。また、Jonesは、インターネットユーザがブローカーに取引の注文を遠隔操作で出すために自分のパーソナル・コンピュータを使用することができる手段を開示する。しかし、Jonesは、銀行が顧客に自分のパーソナル・コンピュータ又は銀行で有価証券又は投資取引の注文をすることを許すであろうことを開示していない。Smithには、銀行が従来の銀行業務機能に加えて投資ブローカーの役割を行うことができ、その結果、顧客は銀行業務と投資機会の両方から利益を得ることができることが明確に開示されている。Smithの明確な示唆からみて、銀行が顧客に提供するサービスの1つとして遠隔操作取引を含むビジネスをインターネットを介して行うことを可能とするために、Jonesの遠隔操作投資パッケージを利用することは自明であったであろう。

  
例3:引用文献に暗示された論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明は、コンピュータ・ネットワーク上の同一金融機関の複数の口座間で遠隔操作で金を転送する能力を銀行の顧客に提供する方法に関する。転送するために都合が良い方法を顧客に提供すると同時に、このシステム及びこの方法は、転送を始めるための前提条件として必要な権限書式を含むことによって高レベルの取引の保証を提供する。この書式は、種々の口座にアクセスする権利がパスワードシステムを通して一度確立した顧客にだけ提供される。この書式は転送の認証記録を顧客と金融機関両方に提供する。

クレーム1:
(1)口座所有者からのID及びパスワード情報を検索するステップ;
(2)口座所有者がID及びパスワード情報に基づいて資金を転送する権限を持っているかどうかを決定するステップ;
(3)もし権限が確認されるなら、口座所有者に1つの口座から他に資金移動についての情報を質問する電子書式を伝達するステップ;
(4)口座所有者が書式に書き込み、電子的にそれを銀行に送り返すステップ;及び
(5)銀行のコンピュータがその書式を受け、書式で指定されるように1つの口座から他の口座へ自動的に資金を転送するステップ;
 からなる口座所有者による遠隔操作により銀行内で一つの口座から他の口座へ資金を転送する方法。
b.証拠
 引用文献Aは同一金融機関が保有する複数の口座間で、資金を転送する方法を示す。この方法はコンピュータ・ネットワーク上で遠隔操作で行なわれ、取引を記録するために認証書式を使用する。この方法は口座所有者へ転送情報を要求する電子書式を送るステップ、書式に書き込むステップ、及び電子的にそれを銀行に送り返すステップ、並びにその書式を銀行のコンピュータが受けると書式で指定されるように自動的に1つの口座から他の口座へ資金を自動的に転送するステップを含む。その開示はその方法のためにパスワード保護を含むことに関しては何も述べていない。

 引用文献Bは、口座情報にアクセスし口座残高をチェックするための遠隔操作の銀行業務方法を示す。顧客にアクセス及び取引の保証を提供するために、このシステム及びこの方法はパスワード保護システムを含む。口座情報にアクセスするために顧客はIDとパスワード情報を用意しなくてはならない、その情報は金融機関によって認証されなくてはならない、そして銀行によって認証された場合だけその顧客にアクセスが認められる。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。引用文献Aは次のステップからなる銀行での1つの口座から他の口座へと遠隔操作で資金を移す方法を示す:口座保有者に転送についての情報を求める電子書式を送ること、書式に書き込み電子的にそれを銀行に送り返すこと、及び銀行のコンピュータが書式を受け取り、書式で指定されるように1つの口座から他の口座へ自動的に資金を転送すること。引用文献Aは書式を求め転送を実行する顧客の権限を認証するために、口座所有者からのIDとパスワード情報を検索することは明示されていない。引用文献Bは、口座所有者からのIDとパスワード情報を検索して;口座所有者IDとパスワードが一致するかどうかを決定して;もしIDとパスワードが一致するなら口座所有者の取引を処理することを教示する。この一致をとるステップは口座所有者が、求められた銀行業務機能を処理する権限を持っているかどうかを決定することを暗示していることに注意してください。

 資金転送取引は権限のある顧客だけのために実行されることが明らかに意図されているから、引用文献Aによって教示されているような1つの口座から他の口座へ資金を移す方法を、引用文献BのIDとパスワードの認証ステップを含むように、修正することは、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者に自明であったであろう。顧客のために取引の保証を高めるステップは引用文献Aによって教示された先行技術の自明な修正を示している。

  
例4:引用文献に暗示された論理づけ

aクレームされた発明
 複数の他の医者によってなされた複数の先行する診断との比較に基づいて患者の病気を診断するシステムである。この開示された発明は患者の現在の身体的状態と症状について医者が複数のデータを入力する手段を含むコンピュータシステムを含む。このコンピュータシステムは、現在の患者のために可能性のある診断のリストを決定するために、入力されたデータを、他の医者によってなされた先行する診断及び他の医者によって治療されていた患者の基礎をなす身体的状態と症状のデータベースに対して比較する;リストは提案された診断が正しい確率のリスト含む。このコンピュータシステムは、その後、患者が本当にリストされた病気のそれぞれを持っていることを医者が確認するために、確率及び可能なテストとともに患者が持っているかもしれない1又はそれ以上の可能な病気のリストが記載された報告書を印字する。

クレーム1:
 a.患者の現在の身体的状態と症状を表すデータをコンピュータシステムへ入力するステップ;
 b.前記患者の現在の身体的状態及び症状を、コンピュータ内の他の患者の身体的状態及び症状を含む医学的病気データベースと比較するステップ;
 c.前記現在の患者が病気を持っている可能性を含む前記患者の現在の可能な病気のリストを準備するステップ;
 d.前記患者が本当に前記可能な病気を持っていることを確認するために医学テストのリストを準備するステップ;
 e.前記医学テストのリストをスケジュールに入れ、行われたテストの結果に従って前記患者を治療するステップ;
 からなる一連の先行する診断に基づいて病気を診断するコンピュータにインプリメントされた診断方法。
b.証拠
 Jones引用文献は、先行する診断及びそれぞれの診断の基礎となるデータのデータベースに対して比較のために、患者の現在の医学的データが入力されるコンピュータシステムを含む健康状態診断システムを開示する。このシステムは、本願発明で開示されているように、患者の現在の身体的状態及び症状のデータフィールドのすべてを含む。このシステムはリストされた診断が正確である確率を含む患者のための可能性がある診断のリストの出力を提供する。

 Smith引用文献は、医学的テストのリストを準備し、患者を診断するためにテストのリストを実行することが知られていることを教示する標準的な医学の引用文献である。この引用文献は特定の病気又は状態の可能性のある診断を確認するために実行される適切なテストのリストを提供する。この引用文献は、それぞれの可能性のある病気又は健康状態のために、義務的なテスト、及び、もし結果を確証することが望ましいか、又は必要であるなら、実行することができる他の任意のテストのリストを提供する。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はSmithを考慮したJonesに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。Jonesは、データベースと比較するために患者の医学的データを入力すること、及び可能性のある診断を決定することを教示するが、医学テストのリストを準備し、適切な治療を確認するためのテストの前記リストを実行し、患者を治療するステップを教示しない。Smithは、医学テストのリストを準備すること、及び患者の可能性のある診断を確認するためにテストのリストを実行することが周知であることを教示する。適切に患者を治療するために、Jonesの方法の中に、Smithによって教示されたように、医学テストのリストを準備し、前記テストのリストを実行することを含めることは、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。不正確な診断を避けるために、出力を信頼する前に、コンピュータシステムの比較から可能性のある診断を確証することは、自明であったであろう。さらに、テストが実行されると、患者の治療は、クレームされた方法における自明な次のステップであったであろう。

  
B.引用文献以外から論理的に推論する論理づけの例

 以下の例は拒絶を支持する論理づけとして引用文献から明示的又は暗黙に教示される以外の教示に頼っている、すなわち、論理づけは適用された引用文献の中には見いだされない。

 論理づけは、その技術における普通の知識、庁の告示<official notice>、知られているビジネス原理、その技術において認められている均等物<art-recognized equivalents>、又は先行する判例法によって確立された判例から推論することができる。差異は「設計的選択」又は「利点又は予期されない結果の欠如」である、という単なる記載は、よく書かれた法的に十分な拒絶を支持する論理づけとしては不十分である。これらは、結論であり、事実の記載ではない。

  
例5:その技術における普通の知識から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明はウェブページを介して本を売るためのコンピュータ及びインターネットの使用に関する。顧客が展示された本に目を通し、書式に書き込み、クレジットカード情報を提示して注文を行い、その結果、顧客に請求することが可能となり、わずか数日中に注文品が届く。

クレーム1:
 説明とともに本の表紙のイメージを表示することによるウェブページ上で販売する本の展示品を提示すること;
 買手が購入する本を選択することができるように、販売する各本に隣接して選択ボックスを提示すること;
 顧客の選択のために備えられたオンライン・ショッピングカートに一つの選択品又は複数の選択品を加えること;そして
 売買取引をインターネット上で実行するために、顧客のクレジットカード情報を書き入れる書式を顧客に提示すること;
 からなるインターネットを介する提示及び注文方法。
b. 証拠
 審査官が引用文献として引用したSmithは、本の売り手にどのようにして金を送るのか(インターネットでクレジットカード情報を提供することを含む)に関しては何も記載されていないことを除き、この発明の全ての特徴を持っている。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はSmithに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。インターネットで購入した本の支払方法としてクレジットカード情報を用いることを除き、Smithはクレームされた要素のすべてを教示する。審査官は、インターネットを介して送られたクレジットカード情報を利用する購入の支払いは消費者が品目を購入するための便利な方法としてeコマースの売買において古くかつ定着している、という庁の告示を採用する。このビジネス慣行が、方法を合理化し、消費者が購入に使う時間を節約し、どんなタイプの製品の販売にでも適用できることを熟練した技術者は明らかに認識したであろうから、インターネットを介して送ったクレジットカードを使うことによって、Smithにおける本の購入のために支払いステップを含めたことは、本願発明時にその技術で通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。これらの利点はその技術において熟練した者によく知られている。

  
例6:定着したビジネス原理から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明はオンラインの書店に関する。書店は一連のウェブページを通して利用可能な異なった本のカタログを有している。インターネット・アクセスを有する顧客は本の収集物に目を通し、彼らが買いたいものを選択し、クレジットカードを使ってオンラインで購入することができる。書店はそれからオーダーを受け入れ、クレジットカード情報を処理し、郵便で顧客へ本を送ることになる。このオンラインの書店は、本が配達される条件、ウェブページの使いやすさ、及び顧客が加えたいその他のコメントを顧客がコメントできる顧客サービス調査で購入後に顧客に電子メールを出す付加的な特徴を有している。

クレーム1:
 説明とともに本の表紙のイメージを表示することによってウェブページ上の販売用の本の展示品を提示すること;
 買手が購入する本を選ぶことができるように、販売の各本に隣接して選択ボックスを提示すること;
 顧客の選択のために用意されたオンラインショッピングカートに一つ又は複数の選択品を加えること;
 インターネット上で売買取引を実行できるようにするために、顧客のクレジットカード情報を書き入れる書式を顧客に提示すること;及び
 購入後の前もって決定された時に、顧客フィードバックを得る方法として顧客によって書き込まれる顧客サービス調査を顧客に電子メールすること;
 からなるインターネットを介する本の提示及び注文方法。
b. 証拠
 Smith引用文献が引用された。Smithは、顧客調査電子メールを欠いていることを除き、この出願と極めて一致する方法でインターネットを使用するオンラインの書店を教示する。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はSmithに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。本の購入後のいずれかの時に、顧客サービス調査を電子メールで顧客に送ることを除き、Smithはクレームされた方法ステップのすべてを教示する。レンガとモルタルであるか、オンラインであるかにかかわらず、顧客サービスは、どんなビジネスの成功においてもキーとなる要因である。顧客サービスを計測する最も普通のビジネスのための伝達手段は、直接、顧客にその取引で彼らが経験したことについて、何が良いと思うか、何が悪いと思うかを尋ねることである。事業家たちは、コメントカード、フォローアップ電話、顧客調査の顧客への郵送を含む、顧客コメントを得る多くの異なった技術を用いてきた。この慣行は、業界でよく知られおり、競合が時々世界的であり顧客がビジネスの成功に対してより大きい影響を有しているインターネットの世界おいても引き継がれるであろう。そのために、顧客から彼らのサービスについての情報を得る目的で、Smithの方法に、オンライン購入時に顧客に電子メールアドレスを求め、後で顧客サービス調査を電子メールで送るよく知られたステップを加えたことは、本願発明時にその技術で通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。

  
例7:定着したビジネス原理から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明は、顧客がウエブサイトを訪問し、一般に金物屋で見いだされる種々の品目を買いに行くオンラインの金物屋に関する。金物屋に関連するこのウエブサイトは、顧客がバーチャルに買い物をし、ショッピングカートの中に購入した品目を加えることができる技術で知られるショッピングカートを含む。また、このオンラインの店はどんな広告された販売とも同じ価格とする能力も有している。例えば、このオンラインの店が、ある特定のブランドのレンチを表示された価格で販売するとする。同じレンチが〔他店で〕より低価格で宣伝されているのを見た顧客は、より低価格の証拠を単に提供することによって、その価格ばかりではなくその価格でのパーセント割引も得ることができる。他の広告の電子コピーを提出することによって、証拠は提供される;例えば、他のウエブサイトのURLを提出する。オンラインの店はそれから提出された他の広告を再検討して、価格割引と追加のパーセント割引が適切であるかどうか決定することができる。

クレーム1:
 工具の写真、ブランド名及び価格タッグを含みウェブページに販売用の工具を表示すること、;
 顧客が購入の意志のある工具を加えられるようにショッピングカートを顧客に提供すること;
 表示された価格より安い広告された価格を明示する他の売り手の販売広告を表す電子指標を顧客から受け入れること;及び
 もし他の販売広告が有効であるなら、より安い広告された価格を、より安い広告された価格のパーセント割引を加えて、顧客に提供すること;
 からなるウェブページを通してインターネット上で工具を販売する方法。
b. 証拠
 Smithはクレームされたものと類似したオンラインの金物屋を教示する、その金物屋は、オンラインの注文と、購入と関係する問題に関して顧客が売り手へ情報又は質問を提出するための電子メール能力を備えているが、顧客が工具の割引価格を得るために販売広告を受け入れる方法及び追加の割引を提供する方法はない。Jonesは、そのウエブサイトで見いだされるかもしれない有用な情報の存在を、他の者に注目させるか、知らせるために、電子メールメッセージによるURLのようなハイパーテキスト・リンクを使用することを教示する。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はJonesを考慮したSmithに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。広告を受け入れ、消費者により安い価格プラスより安い価格の追加的なパーセント割引を提示することを除いて、Smithはクレームされたステップのすべてを教示する。Jonesは他の者へ他のウエブサイトの情報を提供する便利な方法として電子メールでURLのようなハイパーテキスト・リンクを使用することを教示する。〔他店の〕販売広告と〔価格を〕一致させ、〔他店の〕販売広告〔価格〕から顧客にパーセント割引を与えるビジネス慣行は古い定着したビジネス慣行である。この慣行は彼らが通常訪問しないであろう特定の店へ顧客を誘惑するよう意図される。それは顧客との関係を改善し、リターンビジネスを生み出すのを助ける。Smithの方法に、上述の競争店の広告を使用する周知のビジネス慣習を考慮して、購入する商品についてより安い価格プラス追加的パーセント価格割引を得るために、Jonesによって教示されたように、他のウエブサイトの広告の電子メールを提出することを含めることは、本願発明時にその技術において通常の知識を有する者にとって自明であったであろう。Jonesの教示のとおり、同じ製品のより安い価格を明示する競争店のウエブサイトのURLを売り手への電子メールメッセージ中に加えることを含むSmithへの付加的なステップは、競合店の広告を提出するという古くよく知られている手作業の方法の単なる自動化であることに注意してください。

  
例8:判例(知られている手作業の方法の自動化)から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 開示された発明は特定の個人のために所定の保険会社から保険証券の「ベストフィット」を決定する方法である。保険外交員は、個人による特定の要求に応えるか又は一般的な販売/マーケティング計画の一部として、アンケートをインターネットを介して特定の客へ送る。客はアンケートに返答して、回答を保険外交員に転送する。外交員はそれから客の回答及びその中のデータを客の保険の目標又は目的に適合するかもしれない多くの可能性がある保険証券と比較する。この比較は、どれほどうまくそれが種々の客の基準に適合するかを基礎として、プログラムされたコンピュータプラットホーム上で、それぞれの保険を採点することによってなされる。可能性がある個別の保険のそれぞれが採点された後、プログラムされたコンピュータプラットホームは全体の結果を比較して、個別の客のためにベストフィットを決定する。その後、保険外交員はその結果を客への推奨に使用する。

クレーム1:
(1)顧客からの情報と保険証券を検索するステップ;
(2)顧客からの情報と保険に基づいて保険証券を自動的に採点するステップ;及び
(3)ステップ2から決定された点数に基づいて最も良い保険証券が選ばれるまで、異なった保険で(1)から(2)までのステップを自動的に反復するステップ;
 からなる保険証券のコンピュータ化された選択方法。
b. 証拠
 引用文献Aは保険会社が保険外交員を訓練するために使う出版されたトレーニングマニュアルである。そのマニュアルは外交員によってされる次の手作業のステップを開示する:
(1)顧客から受け取られた情報と少なくとも2つの保険証券を検討するステップ;
(2)トレーニングマニュアルのペーパーワークシート上で顧客からの情報に基づいてそれぞれの保険証券を採点をするステップ;及び
(3)外交員がいずれの保険証券が顧客に最も良いかを決定するまで、その会社が販売する異なった保険で(1)から(2)までのステップを反復するステップ。
c.拒絶の適切な記載
 クレーム1は引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。引用文献Aは以下を示す:
以下のステップからなる保険証券の選択方法:
(1)顧客からの情報と保険証券を検索するステップ;
(2)顧客からの情報と保険証券に基づいて保険証券を採点すること;及び
(3)ステップ2からを決定された点数に基づいて最も良い保険証券が選択されるまで、異なった保険証券で(1)から(2)までのステップを反復するステップ。
 引用文献Aは自動化されたステップ2と3を明示してはいない。

 同じ結果を達成する手作業の活動を置換して自動化された手段を単に設けることは先行技術と区別するには十分でないことが本願発明時に知られていた、In re Venner, 262 F.2d 91, 95, 120 USPQ 193, 194 (CCPA 1958)。例えば、顧客からの情報と保険に基づいて保険証券を採点するステップを単に自動化することは、引用文献Aに示されるように手作業のステップから予期されるであろうものを与えるだけである。換言すれば、クレームされたステップで見いだされる改良はない。クレームされた採点ステップはただ手作業の活動を自動化して提供するだけである。同様に、反復ステップ(ステップ3)を自動化することは、単に引用文献に示された手作業のステップから予期されるであろうことを与えるだけである。最終結果は手作業の方法と比較して同じである。コンピュータがより速くステップを反復することができるにすぎない。結果は同じである。

 採点及びステップの反復を自動化することは、顧客と保険を一致させる方法を速めるであろうが、それはその技術で知られていることの自動化から単に知られ予期された結果であるから、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。[訳2]

  
例9:判例(知られている手作業の方法のインターネット上の自動化)から推論した論理づけ

a. クレームされた発明
 開示された発明は特定の個人のために所定の保険会社の保険証券から「ベストフィット」を決定する方法である。保険外交員が、個人による特定の要請に応えて又は一般的な販売/マーケティング計画の一部として、アンケートをインターネットを介して特定の客へ転送する。客はアンケートに答え、返答を保険外交員へ転送する。外交員はそれから客の返答とその中のデータを客の保険の目標又は目的に適合するかもしれない多くの可能性がある保険証券と比較する。様々な客の基準によく適合するのかを基準として、この比較は、プログラムされたコンピュータプラットホーム上でそれぞれの保険を採点することによって行われる。可能性のある個別の保険のそれぞれが採点された後、プログラムされたコンピュータプラットホームは全体の結果を比較して、個別の客のためにベストフィットを決定する。その後、保険外交員はその結果を客への推奨に使用する。

クレーム1:
(1)顧客のために1又はそれ以上の質問を生成するステップ;
(2)インターネットを介して顧客に質問を送るステップ;
(3)インターネットを介して顧客へ送ったそれぞれの質問に対する顧客の返答を受け取るステップ;
(4)顧客の返答からの特有な情報、及び保険会社のコンピュータからの少なくとも1つの保険証券をどちらもインターネットを介して検索するステップ;
(5)特有な情報と回答に基づいて保険証券を採点するステップ;及び
(6)最も良い保険証券が選択されるまで異なった保険証券でステップ(1)から(5)までを多数回自動的に反復するステップ;
からなるインターネットを介して保険証券を選ぶ方法。
b.証拠
 引用文献Aは、保険会社が保険外交員を訓練するために使う出版されたトレーニングマニュアルである。マニュアルは外交員によってなされる次の手作業のステップを開示する。マニュアルは外交員が顧客の特有な情報及び保険会社の保険証券を検索する方法を教示する。また、マニュアルは顧客のために1又はそれ以上の一連の質問をリストして、顧客へ質問するための方法を教示する。このマニュアルは顧客の返答を置くワークシートを提供して、異なった保険証券を採点し手作業でワークシートを使って最も良い1つを選ぶ方法を説明する。

 引用文献Bは、特定の製品についてのインターネットによる顧客調査及び消費者のニーズ/要望を最も満たす製品を決定するインターネットの方法を示している。この引用文献は以下を示している:

(1)顧客のために1又はそれ以上の質問を生成すること;
(2)インターネットを介して顧客に質問を送ること;
(3)それぞれの質問に対する顧客の応答を示している顧客の返答をインターネットを介して受け取ること;及び
(4)返答に基づいて自動的に最も良い製品を決定すること。
 また、引用文献Bは、インターネットを介して質疑応答を行うことの利点は会社がインターネットへアクセスを有する世界中の顧客と製品を適合させるができることであると記述している。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。

 引用文献Aは以下を示す:

(1)顧客からの特有な情報、及び保険会社の保険証券を検索するステップ;
(2)顧客のために1又はそれ以上の質問を決定するステップ;
(3)顧客へ質問をするステップ;
(4)それぞれの質問に対する顧客の応答を示している顧客の返答を受け取るステップ;
(5)特有な情報と回答に基づいた保険証券を採点するステップ;及び
(6)最も良い保険証券が選ばれるまで異なった保険でステップ(1)から(6)まで多数回反復するステップ;
からなる保険証券の選択方法。
 引用文献Aには、インターネットを介して特有な情報と保険証券を検索すること、インターネット上で質疑応答を行うこと、及びステップ6を自動化することは明示されていない。

 引用文献Bはインターネットを介して顧客と製品についての特有な情報を検索し;顧客と共にインターネット上で質疑応答を行い、顧客から受け取った返答に基づいて自動的に最も良い製品を決定することを教示する。

 引用文献Aに示された手作業の方法を自動化し、インターネットを介して特有な情報と保険証券を検索することを含むように修正し、インターネット上で質疑応答を行うことは、本願出願時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。なぜなら、インターネット上で質疑応答を行う利点は、引用文献Bによって明らかなように会社がインターネットへアクセスを有する世界中の顧客と製品を適合させるのを可能とするからである。

 さらに、同じ結果を達成する手作業の活動を置き換える自動化手段を単に提供することは先行技術と区別するには十分ではないことが一般に認識されているから、採点及び検索を自動化することは本願出願時にその技術分野において通常の知識を有する者にとって自明であったであろう。In re Venner, 262 F.2d 91, 95, 120 USPQ 193, 194 (CCPA 1958)。

  
例10:判例(知られている手作業の方法の自動化及びインターネット上での実行)から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明はインターネットを介して株仲買業活動を行う方法に関する。この方法は、口座を準備し、インターネットを介してブローカーと顧客の間のすべての取引の決定を行うことを含む。また、この方法は、顧客の投資目的を満たすために定義した前もって決定された株のリストに対して顧客の現在の株のポートフォリオを自動的に再検討する能力を含み、現在持っている株の売却及び/又は追加又は異なった株の購入がポートフォリオの価値を増やすかどうかを決定する。再検討はポートフォリオの組み立ての特定の変更がそのポートフォリオの価値を増やすかどうかを決定するコンピュータプログラム含むコンピュータプラットホームの支援で周期的にブローカーによって行われる。ブローカーはただコンピュータに、株Aの持ち分xを売る、株Bの持ち分yを買う、というような提案する変更を入力するだけであり、コンピュータがポートフォリオの価値の純利益が達成されたかどうかを決定する。その結果に基づいて、ブローカーは顧客へ取引を推奨することができる。

クレーム1:
 ブローカーのコンピュータに顧客の口座を準備するステップ;
 顧客のための株のポートフォリオを作るために株を購入するステップ;
 顧客のポートフォリオの価値を改善することができる提案された取引を自動的に決定し、インターネットを介して顧客へ提案された取引を伝達するステップ;
 顧客が提案された取引に同意するかどうかの通知をインターネットを介して返送するステップ;及び
 もし顧客が上記提案された取引に同意するなら、ブローカーが適切な株式取引所で取引を実行するステップ;
 からなるインターネットを介してブローカーから株を購入する方法。
b.証拠
 引用文献Aは株ブローカーの役割を説明する教科書である。その教科書は株ブローカーが顧客のために口座を準備し;それぞれの顧客のポートフォリオを管理し、料金を通してブローカーが金を得て、同時に顧客のためのポートフォリオの価値が増加するようにポートフォリオを最適化する方法を開示している。通常、ブローカーは顧客に電話して、既存のポートフォリオを改善する方法についてのブローカーのアイディアに興味を持っているかどうかを知るだろう。もし顧客が興味を持っているなら、顧客はブローカーのアイデアに従ってその株を売り又は買いの許可を与えるだろう。

 引用文献Bは、世界中の顧客に届くインターネットを介するビジネス通信の利点を示す。この引用文献は開示された計画がどんなタイプのビジネスにでも適用できることを示唆している。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。
引用文献Aは以下を示している:

 ブローカーにおける顧客の口座を準備するステップ;
 顧客のために株のポートフォリオを作るために株を購入するステップ;
 顧客へ提案された取引を伝えて、顧客のポートフォリオの価値を改善することができる提案された取引を決定するステップ;
 顧客が提案された取引に同意するか不同意するステップ;及び
 もし顧客が上記提案された取引に同意したときは、ブローカーは適切な株式取引所で取引を実行するステップ;
からなるブローカーから株を買う方法。
 引用文献Aは、開示された方法をインターネット上で自動化すること、及び顧客のポートフォリオを改善することができる提案された取引を決定するステップを自動的に行うことは明示されていない。

 同じ結果を達成する手作業の活動に取って代わる自動的な手段を単に提供することは先行技術と区別するには十分ではないことが、本願発明時に知られていた In re Venner, 262 F.2d 91, 95, 120 USPQ 193, 194 (CCPA 1958)。例えば、ポートフォリオを改善することができる提案された取引を決定するステップを単に自動化することは引用文献Aに示されるような手作業のステップ(ある特定の取引がポートフォリオの価値を増やすかどうかを決定すること及びいっそう好都合な方法でそうすること)から期待されるであろうことを与えるにすぎない。換言すれば、スピードが早くなるという知られた利点以外に、クレームされたステップで見いだされた改良はない[訳3]。最終結果は手作業の方法と比較して同じである。

 ポートフォリオを改善することができる提案された取引を決定するステップを自動化することは、決定ステップを速めるだろうが、それは単にその技術において知られていたことの自動化から知られ予期された結果に過ぎないであろうから、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。

 引用文献Aは、顧客にインターネットを介して提案された取引を伝達し、顧客が提案された取引に同意するかどうかの通知をインターネットを介して返送することは示していない。

 引用文献Bは、世界中のどこの顧客へも届くインターネットを介するビジネス通信の利点を示している。引用文献Bから明らかなように、インターネットを介する通信の利点が、ブローカーがインターネットにアクセスを有する世界中の顧客とビジネスをすることを可能とさせるから、インターネットを介して顧客へ提案された取引を伝達し、顧客にその提案された取引に同意するかどうかの通知をインターネットを介して送り返させることは本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。

  
例11:庁の告示から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明はウエブページを通して女性の衣類を販売するためのコンピュータとインターネットの使用に関する。買手はオンラインのカタログで女性の衣類の展示に目を通して、買手が望む選択された女性の衣類品の数及び適切な配送、請求処理情報のような情報を含む書式に書き込むことによって、注文をする。ウエブサーバーはそれぞれの特定のタイプの衣類、例えば、スラックス、の品物の数を前もって決定された数と比較する。もし特定のタイプの衣類の品物の求められた数が前もって決定された数より大きいなら、オーダーを受け入れる前に、サーバーは求められた数を確認する。確認の利点は、時間がかかり高価で受け入れ難い修正の努力を必要とするであろう明白なデータ入力エラーを避けることである。

クレーム1:
 a.買手から1又はそれ以上の希望する製品の選択品をサイズ、色及び数を含めて受けるステップ;
 b.上記買手から統計的データ、配送及び支払いの情報を受けるステップ;
 c.上記数が前もって決定された数を超える場合に上記買手に上記数の確認を要求するステップ;
 d.上記買手から上記数の確認を受けるステップ;
 e.上記配送と支払い情報を処理するステップ;及び
 f.上記配送情報に基づいて買手に上記希望する製品を発送するステップ;
 からなり、売手のウエブページ上のオンラインカタログの利用可能な衣類の品物を買手がぶらぶら見て回る、インターネットを介した女性の衣類を買手へ販売する方法。
b.証拠
 Smithはインターネット上にインプリメントされた衣類用オンライン注文システムを教示する。数の確認の特徴が開示されていないことを除き、このシステムとこのシステムの使用方法は現在の発明と同一の全ての特徴を含む。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はSmithに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。Smithは望んだ数の確認ステップを除きクレームされた要素のすべてを教示する。明らかに誤った数の注文を処理することを防ぐために、望んだ数を確認するであろう、という庁の告示を審査官は採用する。これの証拠はピザを注文するときの次の例によって与えられる。買手がピザ配送サービスに電話をして、500のピザを注文する。ピザ店は、注文を処理する前に、買手が5ではなく、500を示したことを確かめるであろう。注文された品目の数の確認は明らかな間違い注文の処理を防ぐであろうから、Smithのシステムにおいて確認を含めることは本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。このステップの使用及び利点はよく知られている。

  
例12:差異が記憶させたデータであることから推論された論理づけ(製造品)

a.クレームされた発明
 この発明は記憶させた複数のデータフィールドを含むコンピュータが読み取り可能なメモリに関する。データは、主要な抵当権保有者、抵当権設定者の名前と住所、抵当を保証する財産が位置する州と郡、及び抵当権設定者へハイエンドの権原保険と他の雑多な不動産製品を売る可能性を示す経済の基準を含む抵当ポートフォリオの追跡及び管理に関係する情報の種々のカテゴリーを表している。データはこのビジネスで使用するために設計された専門的なプログラムされたコンピュータシステム上で処理される。

クレーム1:
 抵当権設定者のために複数のレコードファイルを記憶しているコンピュータが読み取り可能な媒体であって;
 それぞれのレコードファイルが、
 抵当権設定者を識別する1番目のデータフィールド、
 上記抵当権設定者の地理的な位置を識別する2番目のデータフィールド、及び
 上記抵当権設定者へ権原保険製品を売ることについての成功の可能性を示す3番目のデータフィールド;
 からなる製造品。
b.証拠
 引用文献Aは、1枚のCD-ROMが複数のレコードファイルを記憶し、各レコードファイルは非ビジネス用途に関連するデータを記憶している3つのデータフィールドを有していることを示している。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1は引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。

 引用文献Aは以下を示している:

 複数のレコードファイルを記憶しているコンピュータが読み取り可能な媒体;
 3つのデータフィールドからなる各レコードファイル;
 からなる製造品。
 引用文献Aは、最初のデータフィールドが抵当権設定者を識別し、第2のデータフィールドが上記抵当権設定者の地理的な位置を識別し、第3のデータフィールドが上記抵当権設定者へ高価な製品を売ることについての成功の可能性を示していることは、明示してはいない。

 しかし、これらの差異は単に製造品に記憶させた非関数データにおいて見いだされるだけである。抵当権設定者を識別するデータ、上記抵当権設定者の地理的な位置及び上記抵当権設定者へ意味ありげな製品を売ることについての成功の可能性を示すデータは、機能的に製造品である基板とは関係がない。それゆえ、この記録素材は特許に関してクレームされた発明を先行技術から区別しないだろう、In re Gulack, 703 F.2d 1381, 1385, 217 USPQ 401, 404 (Fed. Cir. 1983); In re Lowry, 32 F.3d 1579, 32 USPQ2d 1031 (Fed. Cir. 1994)参照。

 したがって、このようなデータは機能的に製造品である基板に関連しておらず、単に先行技術と異なるようにデータにラベルを貼ることは設計的選択である自明な問題であったであろうから、引用文献Aに示された製造品のフィールドに何かのデータを記憶させることは、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。In re Kuhle, 526 F.2d 553, 555, 188 USPQ 7, 9 (CCPA 1975)参照。[訳4]

  
例13:処理されるデータであることから推論した論理づけ(装置)

a.クレームされた発明
 この発明は好ましくはインターネット上にインプリメントされた個人の身体の健康のリモート評価のためのネットワークシステムに関する。このシステムは蓄積された回答に基づいて個人の一般的な身体の健康を示すよう作成された複数の質問を記憶している少なくとも1つのネットワークサーバーを含む。個人がパソコン端末をサーバーに接続し、診断コンピュータプログラムにしたがう分析サーバーへ伝送するために、提示された問合せに対して回答を入力する。リモート診断システムは個人の一般的な健康のあらましを知るのに便利で時間を省く方法を提供する。

クレーム1:
a)サーバー;
b)一連の質問をサーバーにプログラムするためのリモート・インタフェース;
c)個人への対話的な前記質問を提供し前記個人から回答を受ける前記サーバーに接続された個人が使用する複数のリモート端末;
d)要素a)、b)及びc)を接続するネットワーク;及び
e)前記個人の健康評価を助ける前記サーバーに格納された前記一連の質問;
からなる個人健康リモート評価システム。
b.証拠
 引用文献Aは一連の対話型の視聴者好み調査の質問を備えた対話型のテレビシステムを教示する。質問は個人のテレビに転送され、リモート制御装置を使って個人が入力した回答が分析のために返される。開示されたこの発明の第2の実施例は、消費者の購入の好みについての対話型のインターネット調査システムを含み、調査の質問がインターネット上のサーバーに蓄えられ、個人はクーポン及び他の報奨品と引き替えにそのサーバーに接続し製品の好みの質問に答えることができる。調査の質問はサーバーにロードされ、リモートインタフェース及びコントローラーを通して、周期的にアップデートされる。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1は引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。引用文献Aは、サーバー(図1の10)、そのサーバーに組み込まれたリモート・インターフェース(ローカルエリアネット[図1の17]に接続された、GUIを備えたコンピュータ[図1の15])、そのサーバーにアクセスする複数の個人ユーザー端末(図1の端末34)、上記の全ての要素を接続するネットワーク(インターネット)、及びインターネットを介して個人による対話型ユーザーのためにサーバー上に設けられた一連の対話型消費者好み質問、からなる消費者の購入の好みの対話型インターネット調査を教示する。引用文献Aはクレームされた発明で列挙された特定の質問を教示しない。しかし、サーバーにロードされた質問の特定の意味/解釈は特許性に関してクレームされたシステムを〔先行技術から〕区別しない。さらに、個人の健康を評価するという意図的な使用の列挙された記載は特許性に関してクレームされたシステムを〔先行技術から〕区別しない。質問の主観的な解釈は特許性に関してクレームされた発明、ネットワークシステムを〔先行技術から〕区別しないからから、引用文献Aによって教示されたシステムにおいて、いかなるタイプの質問を提供することも、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。

   
例14:コンピュータプログラムを有する知られているシステム/装置(特許性あり/特許性なし)

a.クレームされた発明
 小売店又は特定の品目の購入について顧客の愛顧に報いるためのシステムが開示されている。顧客がチェックアウト時に提示する顧客IDカードの使用によって顧客購入傾向及び愛顧情報が追跡調査される。カードは購入に伴ってスキャンされ、使用されたカードからIDが購入履歴データベースのインデックスとして読み込まれる。IDと結び付けられた顧客の記録がデータベースから読み込まれる。その後、これらの記録はスキャンされた品目から読まれた購買データでアップデートされる。その後、アップデートされた記録は確立された基準に基づいてクーポン又は他のインセンティブが顧客へ発行されるべきであるかどうかを決定するために使われる。基準は購入額、購入品目のタイプ、購入頻度等を含むことができる。加えて、購入履歴記録の購入日時がアップデートされる。この情報は常連客の追跡調査に使われる。開示されたシステムは上記システム及びそれに関連した方法をインプリメントするために必要な2つのコンピュータプログラムを含む。第1のプログラムは、データベースのデータの管理及び入力のために使用され、様々な要素を記憶する記憶装置内のエントリ及びロケーションのために適切なシークエンスを指定する。第2のプログラムは、クーポン又は他のインセンティブが発行されるべきかどうか、もしそうであるならどの種類が価値があるかを決定するための顧客及び製品データの検索及び分析を制御する。

クレーム1:
 顧客の識別を表す第1のコード化されたデータ含む第1の記録、及び顧客によって購入された品目を表す第2のコード化されたデータを含む第2の記録をスキャンするための手段;
 第1及び第2のデータの記憶を制御するためのプログラム手段;及び
 各購入履歴が前もって決定された一定の期間の個人顧客による全ての先行する購入履歴を表し、記憶されたデータが複数の個人顧客の購入履歴を表すデータベースに前記第1及び第2のデータを入力する手段;
 からなるデータベース内に顧客の複数の購入を表すデータを記憶し、顧客クーポンを生成するシステム。

クレーム2:
 顧客IDデータを検索するためにチェックアウト時に提示された顧客IDカードを走査する手段;
 購入履歴データベースから前記IDデータと結びつけられた顧客のためのデータに関連した顧客を含む記録を検索する手段;
 購入情報を検索するために前記チェックアウト時に購入された品目をスキャンする手段;
 顧客購入履歴をアップデートするために前記購入履歴データベース中に前記購入情報を記憶する手段;及び
 ある製品タイプの特定の製品ブランド又は特定の量の購入を含む特定の基準を満す顧客にクーポンを生成するために、前記購入履歴データベース内に記憶されたアップデートされた情報を処理するプログラムされた手段;
 からなる特定の品目の顧客の購入に報いるシステム。

b.証拠
 引用文献Aは、記録が有するコード化されたデータから、データを読み取るために1又はそれ以上のスキャナを使用する販売追跡調査システムを開示している。引用文献Aには、コード化された記録がカード上又は販売する製品を含む他の有形物上で見いだされることは知られている、と記述されている。そのシステムを使う場合、最初に販売員はIDカードをスキャナを使ってスキャンし、次に、同じ又は別のスキャナーを使って、顧客が購入したそれぞれの品目をスキャンする。それぞれのデータ項目が、スキャンされたIDカードと関連する後の使用のために、別の記憶装置に記憶される。

 引用文献Bは、与えられた期間に販売された全ての製品の在庫データと関連させてアップデートするために、記録が有する複数のデータから読み込まれたデータをデータベースへ記憶することを開示している。そのデータベースは、製品の種類のそれぞれのカテゴリーのための個々のフィールド、及びそれぞれの製品の種類について適正な在庫維持に使用するためのIDを示す他のフィールドを有する複数のデータフィールドを有している。データベースへのデータ入力及びそれからの検索は、データベースにデータが適切に記憶され検索できることを保証するために、入力シークエンスを制御するコンピュータプログラムによって制御される。

c.先行技術に基づく拒絶の分析
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから、次の理由により適切に拒絶されるであろう:クレーム1を分析すると、その中に定義された発明は、少なくとも(1)スキャンする手段、(2)前記スキャン手段によって読まれたデータをデータベースに入力する手段、及び(3)データベースにデータの入力を制御するコンピュータプログラムを有する手段を備えたシステムであることを明らかにしたものである。スキャンされ記憶されたデータは顧客ID及び購入品目データを表していると審査官は特に言及する。しかし、スキャナーによって読まれ、又はデータベースへ入力されたデータが表すものは、スキャナの構造及びデータ入力を制御するコンピュータプログラムのオペレーションを修正しない。従って、関連した特定のデータは特許を受けることができる差異を生み出さないであろう。引用文献Aは、記録が有するデータを読みデータベースにデータを記憶するために、スキャナを使用することを開示している。そのシステムは製品在庫データのスキャン及び記憶に関するものであるが、審査官は再び読み取られ記憶されたデータが表すものはスキャナー又はデータベースを変えてはいないと主張する。しかし、引用文献Aはデータベースにデータ入力を制御するためのクレームされたプログラム手段を欠いている。引用文献Bはデータベースへの複数のデータ要素の入力は、データが適切にデータベースに記憶され検索できるようにデータ入力を順序立てるコンピュータプログラムによって制御されることができることを教示する。このプログラムがデータベースの適切なフィールドに個人IDデータと製品データの両方を入力するのを制御していることに注意してください。引用文献Bによって教示されるように、データがデータベースの正しいフィールドに適切に入力されることを保証するために、データベースへのデータの入力を制御するプログラムされた手段を、引用文献Aの記録スキャンシステムに適用することは、その技術において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。データベースに入力されたデータの完全性を保証することは、データベース技術において周知であり、かつ望ましい利点である。さらに、データを記憶するために別々の記憶セクションを使用するよりもむしろデータベースを使用することは、その技術において通常の技術を有する者にとって周知の均等物であって、引用文献Aのシステムでの自明な修正であったであろう。

 クレーム2は引用文献A及び引用文献Bに示された先行技術に関して〔特許を〕許可することができる。引用文献Aで開示されているように、アウトプット又は結果を生み出すために2つの別の記録からデータをスキャンし使うシステムが知られているが、先行技術はクレームされたようにクーポンを生成するプログラムされたプロセッサを教示しない。プログラムされたプロセッサの限定は、特許法112条第6パラグラフ基づいて適切に解釈され、クレーム2で列挙したようなクーポンを生成するコンピュータプログラムを含まない他の装置とは異なった装置を定義する。クレーム2の発明は購入履歴データ(すなわち、スキャンされた品目データ)と消費者IDデータを使ってクーポンを生成する手段を含む。さらに、データは特定の機能を実行するために使われるから、クレーム2で使われる特定のデータはクレームに特許を受けることができる区別を与える。列挙された機能をインプリメントするためのソフトウェアが実行されるとき、この機能を実行するための用いられる装置(例えば、コンピュータ)は異なったものになる。[訳5]

  
例15:その技術において認められている均等物から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明は抵当貸付者を潜在的借り手と自動的に適合させるシステムに関する。それぞれの借り手は、現在の仕事の状態、年齢、負債負担、及び支払い履歴、債務不履行、支払遅延などを含む信用格付けに関する情報を得るためにインタビューされる。それから、この情報はリアルタイム信用採点のためにプログラムの中に入力される。プログラムは入力情報に基づいて潜在的借り手を採点するためにプロビットモデルを利用する。別のプログラムが貸し主によって指定された基準と借り手信用スコアに基づいて貸し主と借り手を自動的に適合させる。

クレーム1:
 仕事の状態、年齢、負債負担、及び支払い履歴、債務不履行、及び支払遅延を含む信用格付け信用等級に関連するデータを含む、潜在的債権者との最初のインタビューの間に得られた借り手情報を入力する手段;
 プロビットモデルに基づく信用スコアを作成することによって、前記潜在的借り手の信用価値を予測する手段;
 借り手と貸し主とを適合させる手段へ前記予測された信用スコアを入力する手段;
 借り手信用価値に対して貸し主の基準を自動的に調べる手段;
 前記潜在的借り手の信用スコアによって基準が満たされた貸し主を選択する手段;及び
 前記潜在的借り手による検討のために前記選択された貸し主を出力する手段;
 からなる自動的に潜在的債権者を抵当貸付者とを適合させるためのシステム。
b.証拠
 Jonesは、信用スコアに基づいて自動的に抵当貸付者と借り手とを適合させるシステムの使用を開示する。スコアは最初のインタビューの間に集められた借り手データを使って得られる。インタビューからの情報が借り手を採点する信用採点ソフトウェアへ入力される。システムとそのコンポーネントのすべては現在のクレームされた発明で列挙されれたものと正確に同じである。しかし、信用採点ソフトウェアは線形確率モデリングに基づいている。

 Smith、ビジネス銀行業務に関する出版された論文、は信用採点システムの原理として用いられるいくつかの統計的方法の比較を提供している。プロビット及び線形確率モデルの両方が適用可能な統計モデルについての解説に含まれている。その論文は、レビューした統計モデリング技術のそれぞれの基礎となる理論について記述しており、それぞれが借り手の信用格付けを決定するために使用される標準的な技術であると特に言及している。モデルの基礎となる理論に相違は認められるとしても、Smithは借り手の信用格付けを予測することにおいて、これらの標準的技術が等しく効果的であり、際立って結果に影響を与えず、交換可能に使われる得ることも開示している。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はSmithを考慮したJonesに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。Jonesは、インタビューの間に集まった借り手の情報を借り手の信用格付けを予測するシステムへの入力として使用することを開示している。このシステムによって出力された信用スコアは、それから、借り手の信用スコアに基づいて借り手を抵当貸付者と適合させるための基礎として用いられる。選択基準が借り手の信用スコアと適合する貸し主がその借り手への潜在的貸し主として列挙される。Jonesはクレームされた発明の限定のすべてを満たすが、信用スコアを作成するために使われたソフトウェアがプロビットモデルの代わりに線形確率モデルに基づいているという点で、クレームされた発明と相違する。しかし、審査官は、担保付き融資に関連する技術において信用採点モデルの基礎となるプロビットと線形確率が均等物であることを証明するSmithに留意する。ビジネスレビュー論文に記述されているように、線形確率とプロビットモデルは、借り手の信用スコアを作成するために使用される標準的な技術であり、借り手の信用格付けを評価するのに等しく効果的である。Smithの線形確率モデルのプロビットモデルへの置換は、それぞれが通常の技術者によって使用される標準的な技術であり、両方が潜在的借り手の信用格付けの良い評価を提供すると認識されているから、線形関係又は論理的配分(プロビット)を仮定したモデルのどちらが信用採点の基礎であるのかは問題とされず、発明時にその技術分野において通常の技術を有する者にとって自明であったであろう。[訳6]

  
例16:その技術における技術水準から推論した論理づけ

a.クレームされた発明
 この発明は、顧客へ彼らの銀行残高、月ベースのすべての取引の記録、及び銀行によって通常提供されるほとんどの他の情報的サービスを伝達するためにインターネットを利用する銀行システムに関する。その開示は、この発明がほとんどすべての通常の金融機関で通常利用可能な完全な銀行業務情報サービスをアクセスできる能力を提供するが、インターネットを介してそうすることを示している。このサービスは暗号化解読ソフトウェアインタフェースを通してすべての顧客活動のために取引の高レベルのセキュリティを提供する。この発明は、これが顧客へこのサービスを提供する最初の銀行システムであると述べている。

クレーム1:
 顧客の口座へアクセスするために使用する特有な顧客ID番号をそれぞれの顧客へ割り当てるステップ;
 前記ID番号で顧客がアクセスし、顧客が彼ら自身の個人的な銀行口座をアクセスすることができるウエブページを提供するステップ;及び
 顧客が口座残高及び取引情報を含む彼らの口座情報を読みダウンロードすることができる安全な接続をそれぞれの顧客に提供するステップ;
 からなる顧客へ銀行業務サービスを提供する方法。
b.証拠
 利用可能な先行技術は、本願発明で開示された情報銀行業務サービスのすべてを記述するAcme銀行のパンフレットであるが、これらのサービスを提供するためにインターネットを使用することは含んでいない。例えば、Acme銀行システムは顧客の口座に取引の毎月の計算書を提供する。先行技術は、この計算書が月単位でメールされるであろうこと、及び機密メーリングによってセキュリティが確保されていることを教示する。もう1つのAcme銀行の情報サービスの例は、PIN(個人的なID番号)制御アクセス方法によってセキュリティが確保されるという状態で、顧客がATMからリアルタイムに口座情報にアクセスすることができる方法である。

c.拒絶の適切な記載
 クレーム1はAcme銀行のパンフレットに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。Acme銀行のパンフレットは金融機関によって通常提供される情報の特徴のすべてを開示する。Acmeはクレームされたように顧客が自分の口座情報に安全にアクセスできるようにインターネットの使用を論じない。銀行業で一般に知られているものをインターネットの世界で知られているものに適用することについて明白性を決定する場合は、通常の技術水準を決定しなければならない(Dann v. Johnston, 425 U.S. 219, 189 USPQ 257 (1976))。インターネットは、その技術において通常の技術を有する者に、情報がコンピュータからコンピュータへと共有される伝達手段として認知されている。典型的な例は、一つのコンピュータがそれよりも異なったサイトに位置した他のコンピュータにアクセスし、ファイルをダウンロードすることであろう。このような情報を守るためのセキュリティは暗号化技術の使用によって広く知られている。また、銀行業は口座の経過を追うために何年間もコンピュータを利用し、金銭出納係、US郵便、及びATM装置を通して顧客にこのデータを提供してきた。したがって、口座情報を得る目的のためにAcme銀行のパンフレットで教示されたような典型的な銀行システムにおいて、一つの口座のデータにアクセスするためにインターネットを利用したことは、本願発明時にその技術において通常の知識を有する者にとって自明であったであろう。これをすることの望ましさは明らかに顧客が銀行へ行く時間又は顧客口座情報を受けとるために金銭出納係と接触する時間を省くことである。[訳7]

 
V.特許法103条に基づく不適切な拒絶の例

例17:あと知恵に基づいた不適切な拒絶(一般的な動機づけの記載)

a. クレームされた発明
 この発明は、事前に選択された製品グループの購入品のタイプ、数量、及び日付を記録することによって、消費者のショッピングの好みを追跡調査する追跡機構を含むスマートカードに関する。このスマートカードは買い物客が通常購入する製品と同じタイプの代替新製品を紹介するためのシステム及び方法において有用である。このスマートカードは買い物客の購入を記録し、事前に選択された製品で数量閾値が達成されたとき、買い物客へ自動的に通知を送る。この通知は、代替製品を購入するための、価格割引のような、消費者インセンティブを提供することにより、代替製品を考慮するように消費者に奨励するであろう。

クレーム1:
 製品が消費者によって購入された時、購入された製品のタイプ、数量及び日付を含む製品情報をスマートカードに記憶するステップ;
 購入された製品の前記タイプ、数量及び日付のそれぞれについて、それぞれの製品のために閾値を識別するステップ;
 前記閾値に基づいて代替製品のためのインセンティブを決定するステップ;及び
 スマートカード上で識別された所定の製品について前記閾値が達成された時、自動的に前記消費者に知らせ、インセンティブによって消費者に代替製品を考慮するように奨励する前記インセンティブを消費者に提供するステップ;
 からなる新製品を紹介するように設計された市場分析計画におけるスマートカードの使用方法。
b.証拠
 引用文献Aは、消費者の購入の傾向を決定するために事前に選択された製品の購入品のタイプ、数量、及び日付を記録することによって、消費者の好みを追跡調査するスマートカードを開示している。このスマートカードは市場分析のためにその内容を決定するために定期的にスキャナーによって読まれる。スマートカードを使いマーケティング計画に参加することに対するお返しに、利用者にはその客が通常購入する製品の無料の製品クーポンが提供される。

 引用文献Bは、顧客の忠誠心を増進するために、名指された製品の購入クーポンを、同じ製品の消費者の購入に基づいて、提供する伝統的な消費者インセンティブ制度を開示する。

c.拒絶の不適切な記載
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。引用文献Aは消費者の好みを追跡調査しインセンティブを提供するためのスマートカードの伝統的な使用を開示する。しかし、引用文献Aはインセンティブを提供する消費者への自動的な通知を開示しない。引用文献Bは望む製品を購入する消費者にインセンティブの提供を開示する。その組合わせは引用文献Aのマートカードをいっそう効率的であるようにするであろうから、引用文献Bの消費者へのインセンティブと引用文献Aのスマートカードを組み合わせることは自明であったであろう。

d.分析
 効率を促進するという動機づけはあまりにも一般的である、なぜなら、それは引用文献Aで考えられるほとんど全てのインセンティブをカバーすることができるだろうからである。加えて、どちらの引用文献の中にも、閾値に達したとき自動的に消費者に知らせることを示唆するものは何もなく、どちらの引用文献の中にも、知らせるステップを示唆するものも何もない。最終的に、引用文献Bは消費者の忠誠心を促進するための伝統的なクーポン制度を教示するけれども、出願人の開示以外に、この制度を代替新製品の紹介を推奨するために使用することの示唆はない。この拒絶は不適切である。

  
例18:あと知恵に基づいた不適切な拒絶(引用文献で述べられた目的と正反対の動機づけの示唆)

a.クレームされた発明
 クレームは、購入が消費者によってなされた時間間隔だけでなく、購入された製品のタイプ及び数量を含む消費者のショッピングの好みを追跡調査する追跡機構を含むスマートカードを列挙する。さらに、前もって定められた始動期間の後に、特定の製品が消費者によって通常購入されるであろうとき自動的な通知が消費者へ提供される。この通知は、売買及び製品への忠誠心を増加させる期間ベースで変わる相当な値下げ含むその製品を購入するためのインセンティブを提供することによって、消費者が同じ製品を考慮することを奨励するだろう。

クレーム1:
 製品が消費者によって購入された時、購入された製品のタイプ、数量及び製品の日付を含む製品情報をスマートカードに記憶するステップ;
 購入された製品の前記タイプ、数量及び日付のそれぞれについて閾値を識別するステップ;
 前記閾値に基づいてそれぞれの購入された製品ためにインセンティブを決定するステップ;及び
 スマートカード上で識別されたのと同じ製品のタイプについて前記閾値が達成されたとき、前記消費者に自動的に通知し、販売及び製品への忠誠心を促進するために、インセンティブが消費者に同じ製品を購入することを奨励するように、前記インセンティブを消費者に提供するステップ;
 からなる市場分析計画におけるスマートカードの使用方法。
b.証拠
 消費者の購入傾向及びある特定の買い物客に新しい製品を申し出る可能性を決定するために、事前に選択された製品の購入品のタイプ、数量、及び日付を記録することによって、消費者の好みを追跡調査するスマートカード開示する。スマートカードは市場分析のためにその内容を決定するために定期的にスキャナーによって読まれる。スマートカードを使いマーケティング計画に参加することに対するお返しに、利用者にその客が通常購入する製品と同じタイプの代替新製品の無料の製品クーポンが提供される。

 引用文献Bは、顧客の忠誠心を増進するために、名指された製品の購入クーポンを、同じ製品の消費者の購入に基づいて、提供する伝統的な消費者インセンティブ制度を開示する。

c.拒絶の不適切な記載
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。引用文献Aは、消費者の好みを追跡調査し、どの新製品に消費者が関心があるのかを決定するスマートカードの使用を開示する。しかし、引用文献Aはインセンティブを提供するために消費者への自動的な通知を開示しない。引用文献Bは望む製品を購入する消費者に、クーポンのような、インセンティブを提供することを開示する。その組合わせは引用文献Aのスマートカードは望む製品の販売を増加させるであろうから、引用文献Aのスマートカードを引用文献Bの消費へのインセンティブとを組み合わせることは、自明であったであろう。

d.分析
 引用文献のいずれかに、出願人の開示以外に引用文献を組み合わせるための動機づけが知られていることを示唆するであろうものは何もないから、この動機づけは妥当ではない。さらに、クレームされた通知するステップをスマートカードと組み合わせることを示唆するであろうことは引用文献には何もない。さらに、提案された修正は引用文献Aの意図された目的(代替新製品を紹介する計画を提供すること)と矛盾するであろう。この拒絶は不適切である。

 
例19:あと知恵に基づいた不適切な拒絶(提案された動機づけがクレームの差異に関係しない)

a.クレームされた発明
 クレームは、購入が消費者によってなされた時間間隔ばかりでなく、購入された製品のタイプ及び数量を含む消費者のショッピングの好みを追跡調査する追跡機構を含むスマートカードを列挙する。さらに、前もって定められた始動期間の後に、数量要件を満たす特定の製品が消費者によって購入されたとき、消費者への自動的な通知が売場端末(POS)で提供される。この通知は、現在の購入の相当な値下げを含む、数量要件に達するための消費者インセンティブを提供することによって、消費者に絶えず同じ製品を購入することを奨励するであろう。値下げの幅は定期的に変化させることができる。

クレーム1:
 製品が消費者によって購入された時、購入された製品のタイプ、数量及び購入日を含む製品情報をスマートカードに記憶するステップ;
 購入された製品の前記タイプ、数量及び購入日のそれぞれについて閾値を識別するステップ;
 前記閾値に基づいてその製品のためのインセンティブを決定するステップ;及び
 スマートカード上で識別された同じタイプの製品について前記閾値が達成されたとき、POS端末において自動的に前記消費者に通知し、現在の購入品の相当な値下げを消費者に提供することによって、インセンティブが消費者にいっそうしばしばその製品を購入するように奨励する、前記インセンティブを消費者に提供するステップ;
 からなる市場分析計画におけるスマートカードの使用方法。
b.証拠
 引用文献Aは、在庫管理の目的で消費者の購入傾向を決定するために、事前に選択された製品の購入品のタイプ、数量、及び日付を記録することによって、消費者の好みを追跡調査するスマートカードを開示する。スマートカードは市場分析のためにその内容を決定するために定期的にスキャナーによって読まれる。スマートカードを使い、マーケティング計画に参加することに対するお返しに、その買い物客が通常購入する製品と同じタイプの代替新製品の無料の製品クーポンが利用者に提供される。

 引用文献Bは名指された製品の購入クーポンを提供する伝統的な消費者インセンティブ制度を開示する。

c.拒絶の不適切な記載
 クレーム1は引用文献Bを考慮した引用文献Aに基づいて特許を受けることができないから、特許法103条により拒絶される。引用文献Aは、消費者の好みを追跡調査するため、及びどの新製品に消費者が関心があるのかを決定するために、スマートカードの伝統的な使用を開示する、しかし、引用文献Aは数量閾値の達成に基づいてインセンティブを提供することを消費者に自動的に通知することを開示しない。引用文献Bは望みの製品を購入する消費者に、クーポンのような、インセンティブを提供することを開示する。その組合わせは引用文献Aのスマートカードが望ましい製品の販売を増加させるだろうから、引用文献Aのスマートカードを引用文献Bの消費者へのインセンティブと組み合わせることは自明であったであろう。さらに、クーポン及び値下げはその技術において周知の同等物である。

d.分析
 出願人の開示以外に、引用文献のいずれにも、引用文献を組み合わせるための動機づけが知られていることを示唆するであろうものは何もないから、動機づけは妥当ではない。さらに、引用文献にはクレームされたPOS端末で識別することとマートカードを組み合わせることを示唆するものは何もない。さらに、閾値データは特許を受けることができる区別を与え、データであるだけではないから、クレームされた閾値データは重要である。このデータは発明を区別する特徴において極めて重要な役割を演じている。また、審査官がこの見解に証拠を提出しておらず、それが周知であるように思われないから、その技術における均等物という記載はよく書かれているとはいえない;クーポンは通常製品製造業者によってサポートされ、値下げは消費者が買い物をする店によってサポートされるように思われる。この拒絶は不適切である。[訳8]
 



訳注

(訳1)この部分の記載だけを読むと、審査官が引用文献を提示せず、「その技術において周知である」と通知してきた場合は、常にその審査官の主張に反論した方が有利なようにみえる。審査官は反論されれば周知であることを証明する証拠を発見しなければならず、必ずしも見つけられるとは限らないから、常に反論した方が特許を得る可能性が増加すると考えられる。しかし、実質的検討をすることなく常に反論するのは危険である。なぜなら、アメリカの特許制度には開示義務があるから(特許規則1.56日本語宣言書(pdf/USPTO))、発明者、代理人等の開示義務を有する者が「その技術において周知である」ことを知っているのに、それに対して反論し特許性を主張して特許を取得すると、開示義務違反になるからである。特許権侵害訴訟において、被告側から開示義務違反を抗弁として主張され、それが立証されてしまうと、その特許の全てのクレーム(開示義務違反に無関係で特許性を有することが明らかなクレームも含む)が権利行使不能となるのである。
 
(訳2)例8に記載された「知られている手作業の方法の自動化」については、日本の特許庁が公開している「特許・実用新案審査基準」(JPO)の第VII部、「第1章 コンピュータ・ソフトウエア関連発明」の「2.3進歩性」に類似したことが記載されている。「2.3.4 当業者の通常の創作能力の発揮の例」の(4)に「人間が行っている業務のシステム化」が記載されている。

(訳3)例10には、「スピードが早くなるという知られた利点以外に、クレームされたステップで見いだされた改良はない」ことを拒絶の根拠の一つとしているが、類似したことが日本の上記審査基準の「2.3進歩性」に記載されている。「2.3.5 発明の効果」の項に「「速く処理できる」、「大量のデータを処理できる」、「誤りを少なくできる」、「均一な結果が得られる」などの一般的な効果は、システム化に伴う当然の効果であることが多く、通常は、技術水準から予測できない効果とはいえない。」と記載されている。

(訳4)例12に記載された「差異が記憶されたデータであることから推論された論理づけ」については、日本の特許庁の上記審査基準の「2.3進歩性」に類似したことが記載されている。「2.3.6 留意事項」の(2)に「請求項に係る発明と公知の引用発明との相違点として、データの内容(コンテンツ)が挙げられた場合、この相違点によって請求項にかかる発明の新規性が肯定されることはない。」と記載されている。
 
(訳5)例14には、クレーム1は拒絶されるが、クレーム2は「プログラムされたプロセッサの限定は・・・クレーム2で列挙したようなクーポンを生成するコンピュータプログラムを含まない他の装置とは異なった装置を定義する」という理由で引用文献A及びBでは拒絶されない旨記載されている。クレーム1とクレーム2を比較すると次のようになる。「・・・」は表現は異なるが、内容的には同様な技術である。

クレーム1:
 ・・・・・・
 からなるデータベース内に顧客の複数の購入を表すデータを記憶し、顧客クーポンを生成するシステム。

クレーム2:
 ・・・・・・
 ある製品タイプの特定の製品ブランド又は特定の量の購入を含む特定の基準を満す顧客にクーポンを生成するために、前記購入履歴データベース内に記憶されたアップデートされた情報を処理するプログラムされた手段;
 からなる特定の品目の顧客の購入に報いるシステム。

クレーム1でも、クレームの末尾(英文では文頭)に「からなるデータベース内に顧客の複数の購入を表すデータを記憶し、顧客クーポンを生成するシステム」と記載されており、一応、「顧客クーポンを生成する」と記載されているが、クレーム1の分析ではこの点について一切言及せずに、拒絶であるとしている。これに対して、クレーム2では、顧客クーポンを生成するための具体的な手段が記載されており、この具体的手段を開示する引用文献がないから、特許が許可されると判断しているようである。
  
(訳6)例15に記載されている「その技術において認められている均等物」については、日本の上記審査基準に類似したことが記載されている。「2.3進歩性」の「2.3.4 当業者の通常の創作能力の発揮の例」の(2)に「・・・システムの構成要素の一部を均等手段に置換しようとすることは、当業者の通常の創作能力の発揮にあたる。」と記載されている。

(訳7)例16に記載されている「その技術における技術水準」については、日本の上記運用指針の「2.3進歩性」に類似したことが記載されている。「2.3.3 当業者」の項に「特定分野に関するソフトウエア関連発明における当業者は、・・・その発明の属する技術分野(特定分野とコンピュータ技術分野)の出願時の技術水準にあるもののすべてを自らの知識とすることができる者を想定したものである。」と記載されている。
 
(訳8)例17〜19は拒絶の不適切な記載の例である。おそらく、「c.拒絶の不適切な記載」は審査官が作成した拒絶理由であり、「d.分析」はインプロセスレビューでなされた分析であると推測する。実際には一つの不適切な例を、クレーム及び証拠を微妙に異ならせて、3つの例を作成したのかもしれない。「d.分析」で指摘されたように、「c.拒絶の不適切な記載」はあと知恵的記載であり、また、引用文献A、Bには閾値について記載されていないので、確かに不適切な例といえるだろう。しかし、以下のように記載すれば、例19について、拒絶の適切な記載を作成できるかもしれない。

 クレーム1は引用例Aを考慮した定着したビジネス原理に基づいて特許を受けることができないから特許法103条により拒絶される。例えば、XXXというCDショップでCDを購入すると、レジのところで、カードをくれる。これはスマートカードではなく、二つ折りにした紙のカードでそのカードにはスタンプを押す欄が40箇所設けられており、「1回のお買い上げ金額1,000円毎にスタンプを1箇所押印いたします。ただし端数は切り捨てとなります。」と記載されている。そのカードには、「対象商品は音楽ソフト、影像ソフト、ゲームソフトといたします。」と記載されているので、このインセンティブの対象商品のタイプはこの3種類であり、この店で販売されている音楽雑誌、楽譜、未録音のテープ、CDラック等の商品タイプはこのインセンティブの対象とはならないことがわかる。また、「スタンプが40箇所になりますとご希望の対象商品の金額から2,000円を値引きいたします。」と記載されているので、カード上のスタンプが40箇所の閾値を達成したことを店員が識別したとき、レジにおいて店員が口頭で消費者にスタンプが40箇所(の閾値)を超えましたと通知し、現在の購入品の相当な値下げを消費者に提供することによって、インセンティブが消費者にいっそうしばしば音楽ソフト、影像ソフト、ゲームソフトのタイプの商品を購入するように奨励する、前記インセンティブを消費者に提供するステップ、が実行されると考えられる。そして、このカードには「交換期限 発行日より1年間」と記載されているので、購入日についての閾値を識別するステップも実行されると考えられる。このカードの場合は金額単位でのインセンティブであるが、YYYという靴店のカードは、「1足お買い上げごとに」スタンプを押してくれるので、この靴店のインセンティブは製品の数量で行われている。そして、上記のCDショップ及び靴店のようなカードを使用した販売促進方法は、これらの店ばかりでなく、多くの店で古くから行われており、定着したビジネス原理である。そして、同じ結果を達成する手作業の活動を置換して自動化された手段を単に設けることは先行技術と区別するには十分でないことが本願発明時に知られているから、In re Venner, 262 F.2d 91, 95, 120 USPQ 193, 194 (CCPA 1958)、上記の定着したビジネス原理の二つ折りにした紙のカードを使用した手作業の方法を引用例Aのスマートカードを使用した方法に置換して自動化することは、本願発明時にその技術において通常の技術を有する者に自明であったであろう。
 また、例18の場合は、一般的に「インセンティブ」を消費者に提供するものであるが、例19の「値下げ」はインセンティブの一種であるから、同様に拒絶の適切な記載を作成できると考えられる。例17の場合は、代替製品を考慮するように奨励するインセンティブを消費者に提供するものであるが、上記のCDショップのレジの所には、「スペシャル・プライス・セール」というパンフレットが置かれており、それには、セール期間中には、800アイテムのCDについて10%の割引を行うことが記載されている。多くの消費者はこの800アイテム以外のCDを購入するために来店するはずであり、そのような多くの消費者にとって、このパンフレットは代替製品を考慮するように奨励するインセンティブを消費者に提供するものである。このように代替製品を割引価格で提供することも古くから定着したビジネス原理であると考えられから、例17についても、同様に拒絶の適切な記載を作成することができるのではないだろうか。

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