翻訳 井上雅夫 1998.05.18; 2000.02.16   ↑UP 

Sun v. Microsoft Java事件
98.03.24

カリフォルニア北部合衆国地方裁判所

原告 SUN MICROSYSTEMS, INC.,  a Delaware Corporation,
被告 MICROSOFT CORPORATION,  a Washington Corporation,

No. C 97-20884 RMW(PVT)

SUNのMICROSOFTに対する仮差止申立に関する命令

 原告Sun Microsystems, Inc.の仮差止申立訳1<the motion for a preliminary injunction>は1998年2月27日に審問された。裁判所は申立書および答弁書を書面審理し、弁護士の口頭の主張を審問した。以下の理由により、裁判所はSunの仮差止申立を認容する。

I.背        景

 原告Sun Microsystems, Inc.(「Sun」)は被告Microsoft Corporation (「Microsoft」)に対し、Microsoftが(消費者に)SunのJAVATMテクノロジーをライセンスする条件を定めた技術ライセンス及び配布契約 ( Technology License and Distribution Agreement 、以下「本件契約」と訳す)に違反したとして、本件を提訴した。また、Sunは、Microsoftの製品がある互換性テストをパスする条件で、MicrosoftにSunの「JAVA Compatible」商標を使用する権利を許可する本件契約の商標許諾条項に違反したことを争う。Sunは、Microsoftが本件契約の要件を満足しない商標を付して製品を販売することによって、Sunの「JAVA Compatible」商標を侵害したと主張する。Sunは現在、JAVATMテクノロジーの最新バージョンを含むSunの一揃えのテスト<Sun test suite>に最初にパスするまで、また、パスしないならば、MicrosoftがInternet Explorer 4.0 (「IE 4.0」)及びSoftware Developer's Kit for Java 2.0 (「SDKJ 2.0」)に「JAVA Compatible」商標を使用するのを仮に禁止するよう申し立てている。

A.SunのJAVATM テクノロジーとライセンスプログラム

 SunのJAVATMテクノロジーは、多数の異なった別な方法では互換性のないシステムプラットフォームとブラウザ上で動作することができるただ一つのバージョンのプログラムコードを創作し配布する能力を、ソフトウエア開発者に与える標準的なアプリケーションプログラミング環境を提供する。ほとんどのコンピュータシステムは、例えば、MicrosoftのWin32プログラミング環境のように、プラットフォーム依存プログラミング環境を与えるものである。特定のプラットフォーム上で走るように創作されたプログラムは異なったプラットフォーム上では機能を果たすことができない。従って、ソフトウエア開発者は、複数のプラットフォームを選択し、同じプログラムの異なったバージョンを開発しサポートしなければならない。Sunのプラットフォーム非依存JAVATMテクノロジーは、多数の異なったシステムプラットフォームとブラウザ上にインプリメント可能であり、同じプログラムの異なったバージョンの創作とサポートの必要性が不要となるものである。 

 SunのJAVATMテクノロジーは、いわゆる「class-based」言語であり、その機能性はプログラマーに利用可能なJavaクラス訳2によって決定される。それゆえ、新しい機能を得るためには新しいJavaクラスの開発が必要とされる。Javaプログラミング言語で書かれたプログラムはバイトコードあるいはアプレット(本件契約§1.2参照)とよばれる中間インストラクションにコンパイルされる。これらのバイトコードあるいはアプレットは、次に、Javaバーチャルマシン(本件契約§1.11参照)とよばれる仮想のCPUをエミュレートする他のコンピュータプログラムによって「通訳」される。JavaバーチャルマシンはアプレットをJavaバーチャルマシンが走る特定のコンピュータのCPUが解読できるインストラクションに変換する。それゆえ、Javaプログラムが走る各コンピュータのCPUには特有のインタープリタあるいはバーチャルマシンが必要となる。

 JAVATMテクノロジーの広範な採用を推進するために、Sunはオープンライセンシングプログラムに乗り出した。1995年8月から、Sunは、Apple, DEC, Fujitsu, Hewlett-Packard, IBM, Microsoft, Netscape, Novell, SCO, Siemens、および Silicon Graphicsを含む主要なプラットフォーム製造業者とライセンス及び配布契約を締結した。

 Sunは、一般に、これらのライセンス契約はSunのソースコードライセンシーにSunのJAVATMテクノロジーを組み込んだ付加価値製品の開発および配布の権利を許諾していると主張する。また、ライセンス契約は、ライセンシー<licensees>によって開発された製品が、 JCK compatibility test suiteと呼ばれる、Sunによって創作された互換性テストをパスすることを要求している。また、そのソフトウエア製品がSun test suiteをパスすることを条件として、ライセンシーはSunの「JAVA Compatible」商標をその製品に表示する権利を許諾される。Sunは、JAVATMプログラミング環境のプラットフォーム横断の利益を維持し、拡大するために、各ライセンシーのシステムプラットフォームあるいはブラウザがSunの発行するスペシフィケーションに厳格に準拠することが重要であるとも主張する。

 Sunのライセンシングプログラムと関連して、SunはJAVATM Compatibility Kit (「JCK」)を開発した。JCKは、Sunのライセンシーが開発した製品がJAVATMテクノロジーのスペシフィケーションに準拠しているかどうかを決定するための適合テスト群を構成する。1996年1月、Sunは JAVATM Development Kit (「JDK」)1.0の最初の商業バージョンをリリースした。同時に、Sunは約300の個別のテストからなるJAVATM 1.0 compatibility test suiteもリリースした。Schroer陳述書<decl.>¶8。1997年2月に、SunはJAVATMテクノロジーへのアップグレードであるJDK 1.1をリリースした。JDK 1.1リリースは、8000をこえる個別のテストが組み込まれているいわゆるJAVATM Compatibility Kit (「JCK」) l.la test suiteを伴っていた。Schroer陳述書¶9。

 JCK 1.1aリリースにおける一つのテストは、いわゆる「Signature Test 」である。Signature Testは、JAVATMテクノロジーをインプリメントした製品が「java.*」APIと呼ばれるパブリック・アプリケーション・プログラミング・インターフェースの標準セットに一律に準拠することを保証するように設計されている。Hankinson補足陳述書¶8。より具体的にいうと、JCK 1.1a Signature Testは、「java.*」を接頭語としてつけたあらゆるパッケージあるいはクラスのあらゆるパブリック・エレメントの追加、削除、修正を調査する。Hankinson補足陳述書¶8。

B.SunのMicrosoftとのライセンス契約

 1.JAVAコンパティビリティ

 1996年3月11日、MicrosoftはSunと本件契約を結んだ。本件契約の2.1及び2.2条に従い、Sunは、SunのJAVATMテクノロジーを組み込んだソフトウエア製品を開発し配布するライセンスをMicrosoftに認めた。Baratz陳述書 書証A<Decl.Ex.A>参照。2.6(a)(iv)条に従い、SunのJAVATMテクノロジーを組み込むあらゆるMicrosoftの製品の新バージョンは各々JCKのtest suitesをパスしなければならない。本件契約は「Java Test Suite」を「Javaバイトコードを解釈する製品が、テストの時期のAAPIのSUNのスペシフィケーションに準拠していることを確認するSunの公衆に利用可能なtest suitesであると定義している。」(本件契約§1.15)。AAPIは次のように定義されている。

本契約期間にSUNによって修正されたものとしての(a)証拠Aで確認されるテクノロジーが反映されたJavaアプレット環境(JAE)へのパブリック・アプリケーション・プログラミング・インターフェース、(b)「OEM Java バーチャルマシン・スペシフィケーション」と題された文書におけるバイトコード・スペシフィケーション、(c)「OEM Java言語スペシフィケーション」と題するJava言語スペシフィケーション、および(d)OEM Java APIスペシフィケーション
本件契約§1.1。SunとMicrosoftは、また、本件契約と同時に商標ライセンス契約を結んだ。商標ライセンス契約は、Sunのrelevant compatibility test suitesをパスする製品に関連してのみSunの「JAVA Compatible」商標の使用のライセンスをMicrosoftに与える。

 2.JAVATMテクノロジーの特殊なインプリメンテーションを決定するMicrosoftの権利

 Microsoftは、本件契約がMicrosoftがその製品にJAVATMテクノロジーを組み込むことに大きな影響を与えるSunの能力に意味のある抑制を含んでいると、主張する。第1に、JAVATMテクノロジーへ付け加えられる機能性は「Supplemental Java Classes」と呼ばれる新しいクラスを含まなければならない(本件契約§1.23)。しかしながら、Microsoftは、代わりの配布チャネルを通して公衆に利用可能とするSupplemental Java Classesを作成することを条件として、その製品にSupplemental JAVA Classesを含む義務を負わない(本件契約§§2.6(a)(vii),2.7(a))。本件契約は、また、あらゆるSupplemental Java ClassesがJAVATMテクノロジーを組み込んだMicrosoftの最新の製品上で走らなければならないことを要求している(本件契約§2.7(a)参照)。

  第2に、本件契約は、実在するJavaクラスに対する「[彼らの]最初に意図された目的と整合し続ける合理的な発展」へ向けてのSunの修正に制限を設けているようにみえる(本件契約§2.7(b))。さらに、Sunは、JAVATMテクノロジーへのあらゆるアップグレードも二つの先行するアップグレードと後方互換性を持つであろうことに合意している(本件契約§2.6(a)(iii))。

 本件契約は、「付加価値オープンパッケージ」あるいは「VAOP」と呼ばれるAAPIの拡張あるいは追加をMicrosoftに許諾している(本件契約§§1.28,2.8(a))。しかしながら、本件契約は、MicrosoftのあらゆるVAOPのための特殊なネーミング方法を制限している(本件契約§2.8(d))。加えて、本件契約は、「「java」、「COM.sun」あるいはその等価なものから始まる名前」のパブリックjavaクラスの名称のいかなる修正あるいは付加も禁止している(本件契約§2.8(d))。

 3.救済の制限

 Microsoftは、また、本件契約はSunが主張する差止の救済を排除していると主張している。本件契約の11.2(d)条は次のように規定する:

11.2条および12.6条で明確に規定されていることを除いて、当事者は、本件契約のいずれかの重要な条件にどちらかの当事者が違反した場合には、違反しなかった当事者は違反した当事者に通知し、違反した当事者はそのような違反を是正するために、通知を受けてから30日間を与えられる。30日間経過後に違反が継続していた場合は、違反していない当事者の唯一の救済は適法な管轄権を有する裁判所における金銭上の損害賠償金を求めることである。
Baratz陳述書 書証A。さらに、11.2(b)条は、故意の契約違反<a wilful and intentional breach>の場合、SunからMicrosoftへの契約違反の通知から1年以内にMicrosoftが契約違反を是正することに失敗すれば、Sunに本件契約に基づいて許諾されるライセンスを終了する権利を与えている。同書。そのような契約終了は、しかしながら、その終了の時に商業的に使用されている製品については適用しないようにみえる。同書。加えて、本件契約にはSunとMicrosoftの間の商標ライセンスが参照文によって<by referenc>明らかに合体されている。Baratz陳述書 書証A,§2.6(a)(ix)。商標ライセンスは、また、本件契約と商標ライセンスの間に何らかの矛盾が生じた場合に本件契約が優先する<control>と規定している。 Baratz陳述書 書証B。

 Microsoftは、これらの条文と、1995年11月29日にMicrosoftに送られたSunが提案したライセンス契約の条文とを対比する。Sunの提案したライセンス契約は、Microsoftは拒否したが、「回復不能の被害」条項を含んでいたのであり、次のように規定している:

契約違反をしていない方の当事者は権利を有するであろうあらゆる他の法的救済に加えて、その当事者は[提案された契約書の2.0, 5.2, 5.3, 7.0, 9.2 又は11.6]条に違反する場合は直ちに差止の救済を求めてもよいことを[両当事者は]合意する。
Muglia陳述書 書証A、§10.7。Microsoftは、本件契約に至る交渉の間に、Microsoftは明確な論争解決メカニズム並びに損害賠償額及び救済の制限について具体的に話し合った。Muglia 陳述 ¶ I0。

 一方、Sunは本件契約は差止救済を排除していないと主張する。Sunは、本件契約の11.2(d)条は適用できないと主張する。むしろ、Microsoftの上級経営者<senior management>が本件契約の互換性条項を意図的<wilfully>に違反しているから、Sunは11.2(b)条が適用されると争っている。11.2(b)条は次のように規定する:

ライセンシーは、契約期間内のいかなる時においても、ライセンシーのプロダクトグループの役員、取締役、総支配人<an officer, director, or General Manager of a product group >が契約の重要な条文である2.6条に故意に違反し、かつ、SUNがライセンシーにその通知をした日ののち1年の期間内にそのような契約違反をライセンシーが是正することに失敗すれば、SUNはこの契約を終了し、2条において明らかにされたライセンス許諾<license grants>を終了する権利を有する。ただし、終了の日に(i)商業的に公衆が利用可能であり<commercially available to the public>、又は、(ii)終了の日にサードパーティーによってベータ版テストが行われており、又は、(iii)終了の後6ヶ月以内に商業的に公衆に利用可能にされた、あらゆるアップグレード、バージョン、その後継品を含むあらゆる製品(あわせて「残存製品<Surviving Products>」)を除く。残存製品に関する本契約の2条に基づくライセンシーの権利は本契約の満了あるいは終了によりいかなる影響も受けない<survive>。
Sunは、11.2(b)条は、Microsoftの本件契約の互換性条項の故意の<intentional>契約違反に対しては、Sunの救済に制限を設けていないと争う。Sunは、本件契約の11.2(b)条は、互換性はSunにとって決定的に重要であり、Sunは、本件契約の互換性条項が故意に違反されたときには、いかなる法的処置が必要であったとしてもそれを行う能力を制限することは望まないことをSunの交渉担当者が明らかにした後、作成されたものであると論じている。Day陳述書 書証R(Baratz証言録取書< Depo.> at 105:9-16)。また、Sunは、Microsoftの本件契約の解釈は、Sunの差止救済の権利の暗黙の放棄をもたらすものであると主張する。Sunは、そのような解釈は、知られている権利について意図的放棄を要求する放棄の法< the law of waiver which requires the intentional relinquishment of a known right>と矛盾すると争う。

C.MicrosoftのSunのJAVATMテクノロジーと「JAVA Compatible」商標の使用

 1997年9月30日、MicrosoftはMicrosoftウェブサイトでIE 4.0ウェブブラウザの商業的な配布を始めた。Microsoftによると、IE 4.0はJDK 1.1バージョンを組み込んでおり、SunのJAVATMテクノロジーのJDK 1.1バージョンと完全な互換性を有している。Schroer陳述書 書証A。IE 4.0のリリースに数ヶ月先行する期間およびそれ以来引き続いて、MicrosoftはウェブサイトにおいてMicrosoftのIE 4.0のロゴの近くにSunの「JAVA Compatible」商標を表示した。IE 4.0のMicrosoftのCD-ROMバージョンのパッケージにもまた「JAVA Compatible」商標を利用した。Deutsch陳述書 書証D。同様にMicrosoftのSDKJ 2.0製品のウェブサイトにも「JAVA Compatible」商標を表示した。Armstrong陳述書 書証C。

D. SUNのIE 4.0 およびSDKJ 2.0のテスト

 1997年10月30日から、SunはMicrosoftのIE 4.0 および SDKJ 2.0の様々な商業バージョンをJCK 1.la test suite に通し、MicrosoftのJAVATMテクノロジーのインプリメントが互換性を有するかどうか決定した。Sunのテストは、IE 4.0 および SDKJ 2.0 が JCK 1.la test suiteをパスすることに失敗したことを明らかにした。1997年10月7日、SunはMicrosoftに、これらのソフトウエア製品がtest suitesをパスするのに失敗したことを通知し、Microsoftがそれらを(test suitesに)従わせるように約束することを求めた。Baratz陳述書 書証C。1997年10月29日、Microsoftは、IE 4.0および SDKJ 2.0は本件契約に完全に従っており、それゆえ本件契約で要求される「JAVA Compatible」商標の使用を続けるつもりであると書簡をもって答えた。Baratz陳述書 書証D。

 Sunの社内の独立したテストは両方共にIE 4.0がSunのSignature Testをパスすることに失敗したことを明らかにした。実際、IE 4.0では約900のSignature Testエラーが発生し、そのうち792は、MicrosoftがJava Remote Method Invocation (「RMI」)クラスを含ませないことを選択した事実に基づくものである。Schroer補足陳述書¶6、Hankinson陳述¶30。しかしながら、RMIクラスは「Supplemental Java Classes」であるから、本件契約は、MMicrosoftがそのRMIクラスライブラリーを公衆に利用可能とする限り、JAVATMテクノロジーの製品インプリメンテーション<implementation>からそれを除くオプションをMicrosoftに許している。本件契約§2.7(a)参照。また、Sunは、MicrosoftがRMIクラスライブラリーの配布について、2.7(a)条に基づく義務を果たすことにも失敗していると主張している。加えて、IE 4.0 はSunのJava Native Interface (「JNI」)を含んでいおらず、それゆえ、JNIに関連する239のテストのいずれにもパスすることに失敗している。Schroer補足陳述書¶7。MicrosoftのSDKJ 2.0製品も同じ失敗を引き起こす。Schroer補足陳述書8。

 MicrosoftのSunのテストへの回答は、その結果が正確であることを認めているように見える。しかしながら、Microsoftは、Sunのテスト結果は本件契約の条件<terms>に照らして評価するとき、IE 4.0 およびSDKJ 2.0は両当事者の合意に正確に従っており、それゆえ、完全にライセンスされた製品であると争っている。Microsoftは、例えば、互換性テストはAAPIに限定されるから、本件契約はSunのJNIクラスライブラリーを含むようにMicrosoftに義務づけてはいないと主張する。RMIクラスの排除に関連のないSignature Testエラーについては、MicrosoftはこれらのエラーはSunによるパブリックjavaクラスの故意の修正から生じていると主張する。Microsoftは、本件契約がこれらのJavaクラスの名前を変えない限りこれらのJavaクラスの修正を許していると主張する。本件契約§2.8(d)。Armstrong陳述書 書証A;Hankinson補足陳述書 書証B(Arun証言録取書at 159:3-25);Microsoftの反論16頁も参照。

U.判  断  基  準

 仮差止を得るためには、申立人は「本案訴訟訳3において勝訴する可能性及び回復不能な損害の可能性、又は、本案訴訟に進むことに重大な問題が生じかつ困難性の天秤がはっきりと有利に傾くことのどちらか」を立証しなければならない<To obtain a preliminary injunction, a movant must demonstrate "either a likelihood of success on the merits and the possibility of irreparable injury, or that serious questions going to the merits  were raised and the balance of hardships tips sharply in its favor.">。Sega Enterprises Ltd. v. Accolade, Inc., 977 F.2d 1510, 1517 (9th Cir. 1992) (引用は削除した)。上記基準に代わるものは、二つの別々のテストよりもむしろ「一つの連続体の両端<extremes of a single continuum>」に代表される。Benda v. Grand Lodge of Int'l Ass'n of Machinists & Aerospace Workers, 584 F.2d 308, 315 (9th Cir. 1978)。一つの「重大な疑問」は申立人が「本案訴訟において勝訴するかなりよいチャンス<fair chance of success on the merits>」を有していることに対するものである。Sierra On-Line, Inc. v. Phoenix Software, Inc., 739 F.2d 1415, 1421 (9th Cir. 1984). 「被害の天秤<balance of harm>」の評価は「勝訴可能性分析<likelihood of success analysis>」より先に行うべきである、なぜなら、被害の天秤が評価されるまでは、裁判所は、原告の勝訴の可能性の証明が、どれだけ強くまた実体のあるものでなければならないか< how strong and substantial the plaintiff's showing of the likelihood of success must be>を知ることができないからである。Alaska v. Native Village of Venetie, 856 F.2d 1384, 1389 (9th Cir. 1988)参照。もし、公衆の利益が伴う場合は、裁判所は、仮差止が公衆の利益に合致するかどうかも考慮すべきである。Westlands Water Dist. v. Natural Resources Defense Council, 43 F.3d 457, 459 (9th Cir. 1994)。

V.分         析

A.差止救済の利用に関する本件契約の効力

 「契約違反に対する排他的な救済の明確で不明瞭でない契約条項は実際に行使し得る。」 Fosson v. Palace (Waterland), Ltd., 78 F.3d 1448, 1455(9th Cir. 1996) (Price Dev. Co. v. Redevelopment Agency, 852 F.2d 1123, 1127 (9th Cir. 1988)を引用している)。

 本件において、本件契約はSunによって要求される差止救済を排除しているようにはみえない。仮処分について、裁判所は商標ライセンスおよび本件契約は一つの契約を構成するものと認める。本件契約は商標ライセンスと参照によって明白に結合されている。さらに、商標ライセンスは本件契約の条件<terms>が商標ライセンスと矛盾するすべての条項に優先すると規定している。 

 第2に、本件契約は互換性条項[11.2(b)条]の意図的及び故意の<wilful and intentional>契約違反と本件契約[11.2(d)条]の他の重要な契約違反とを区別しているようにみえる。本件契約の11.2(d)条はすべての重要な契約違反に対して金銭上の損害賠償額について両当事者の救済を明確に制限している。しかしながら、本件契約の互換性条項 2  の意図的及び故意の契約違反を含む状況では11.2(d)条よりむしろ11.2(b)条が適用されるようにみえる。

 第3に、11.2(b)条のいかなる文言も商標侵害をやめさせる差止の救済からSunを排除しない。そのわかりやすい意味で、11.2(b)条はSunに、Microsoftの上級経営者による互換性条項の意図的および故意の契約違反に対して、ある条件が合致することを条件として、本件契約に基づくライセンス許諾<license grants>を終了する権利を付与している。より重要なことには、この権利終了は排他的救済であるようにはみえない。本件契約§11.2(d)。したがって、11.2(b)は緊急の状況に適用するものであることと、Sunの終了の権利はSunの排他的救済ではないことを前提にすれば、本件契約は、SunのJCK test suiteをパスしない製品に、Microsoftが「JAVA Compatible」商標を使用することを禁じるよう求めることからSunを排除しない。McDonald v, Stockton Met. Transit Dist., 36 Cal. App. 3d 436, 442 (1973)参照。(「契約が契約違反に対する排他的救済について明文又は暗黙の制限を規定していないとき、損害を受けた当事者は法に基づくことを条件にあらゆる他の救済を求めることができる。」)

 この解釈は本件契約および連邦商標法の条件と矛盾がないようにみえる。商標ライセンスは、「JAVA Compatible」ロゴを使用するMicrosoftのライセンスは、本件契約によって予定されたJava test suitesを成功裏にパスした製品にのみ使用することを規定している。Baratz陳述書 書証B (商標ライセンス§3)。当然の結果として、本件契約で定義されているように、JAVATMテクノロジーの非互換実施品<an incompatible implementation>は、少なくともSunの「JAVA Compatible」商標の使用に関して権限のないかつライセンスされていない製品であることになる。それゆえ、ライセンスされておらず、かつ、SunのJAVATMテクノロジーと互換性がないとMicrosoftに認識されている製品に、Microsoftが「JAVA Compatible」商標を意図的に使用することに対して差止救済を求めることから、本件契約がSunを排除すると解釈することは異常であろう。実際、Microsoftの本件契約の解釈は、Sunが契約に基づいて許諾したライセンスを終了させた後でさえ、JAVATMテクノロジーの非互換実施品(「残存製品」)に、差止の最小限の脅威もなしに、「JAVA Compatible」商標を使い続けることをMicrosoftに許すだろう。本件契約§§11.2(b),11.5参照;Ticor Title Inc. Co.v, Rancho Santa Fe Assn.,177 Cal. App. 3d、730頁、(契約が二つの解釈が可能であるとき、裁判所は道理に反する結果をもたらす解釈をさけるべきである)。加えて、裁判所の解釈は、また、消費者の混同を防ぐ商標法の公的な目的<public policy>を促進するためになされる。Prudential Insilco. of America. v. Gibraltar Fin. Corp. of California, 694 F.2d 1150, 1153 (9th Cir. 1982) (ランハム法(合衆国商標法)は欺瞞や混同から公衆を保護することを意図している); Visa Intern. Service v. Bankcard Holders, 784 F.2d 1472, 1473-74 (9th Cir. 1986) (契約を行わせることが消費者の混同を通して公衆に損害をもたらすことにならない限り、商標の使用に関する和解協定のために、通常、会合<a party>がもたれる。)

 本件契約の11条の(Microsoftの)解釈は、Sunが提案したライセンス契約のなかの回復不能損害条項のMicrosoftの拒否によって裏付けられているとMicrosoftは主張する。Muglia陳述書¶10 & 書証A,§10.7。しかしながら、Sunの提案したライセンス契約は、本件契約の互換性条項に特有な意図的及び故意の契約違反と他の契約違反を区別していない。したがって、本件契約の中に11.2(b)条が内包するものは、あらゆる状況においてSunが差止救済の権利を放棄したというMicrosoftの主張の根本を削り去るものである。

B.困難性の天秤

 後述するように、仮差止の認容に基づく困難性の天秤はSunに好意的である。Sunの申立は、本件契約の互換性要件に合致しない製品に「JAVA Compatible」商標をマイクロソフトが使用するのを停止するよう求めているだけである。すでに「JAVA Compatible」商標がつけられたマイクロソフトの製品については、Sunは当裁判所に、マイクロソフトに回収するか、リコールして非互換製品に「ステッカー」をつけるかのどちらかを<to either withdraw or recall and "sticker" non-complying products>請求している。そうでなければ、マイクロソフトによるSunのJAVATMテクノロジーの使用は、Sunによる仮差止請求の認容によって影響を受けないままになってしまうだろう。

 マイクロソフトは、請求された救済はマイクロソフトにとって重大な困難性を巻き起こすことになるだろうと主張する。マイクロソフトはそのような差止は製造工程及び流通チャネルをひどく崩壊させるだろうと主張する。しかしながら、マイクロソフトによって主張された困難性は、非互換製品へのマイクロソフトの「JAVA Compatible」商標の使用による、Sun、そのライセンシー及び消費者である公衆の潜在的な回復不能の被害より重いようにはみえない。

 また、Microsoftは、Sun(の仮差止申立)は合理性を欠くほど遅れ、それゆえ、差止の請求を禁じられるべきであると主張する。しかしながら、裁判所は、Sunは差止救済の求めに合理性を欠くほど遅れたとは認めない。Microsoftの製品が本件契約によって考慮されているTest Suitesをパスすることに失敗したことを示すSunの1997年10月7日の書簡のときに、MicrosoftはSunが差止救済を求める可能性に明らかに気がついていた。また、裁判所は、MicrosoftはSunの書簡に対する回答を1997年10月29日まで遅らせたことを特に書き留める。加えて、Microsoftの回答書と1997年11月17日に受理されたSunの仮差止申立の間の遅延は合理性を欠くようにはみえない。

C.本案訴訟において勝訴する可能性

 (1)商品もしくはサービス又は商品の容器上に、もしくは関連して、

(A)混同もしくは誤解の原因となる可能性を有し、又はその者と他の者とが提携、関係もしくは連合していると誤認させる可能性を有し、又はその者の商品、サービスもしくは商業活動が他の者によって生まれ、スポンサーされもしくは承認されたと誤認させる可能性を有し、又は、
(B)商業的宣伝もしくは販売促進において、ある者又は他の者の商品、サービスもしくは商業的活動の性質、特徴、品質もしくは地理的な出所を誤り伝える、

言葉、用語、名前、シンボルもしくは模様<device>、又はそれらの組合せ、又は偽りの出所の名称、又は偽りもしくは誤解させる事実の記載もしくは表示を、商業上用いる者は、 その行為によって損害を被り又は被る可能があると信じる者による民事訴訟において、責を負う。

合衆国法律集15§1125(a)。合衆国法律集15§1125(a)であるランハム法(合衆国商標法)43(a)条訳4に基づいて商標侵害の権利を立証するためには、原告は:1)保護可能な商標の所有;2)被告による商標の権限のない使用;3)被告の使用が商品又はサービスに関するものであること;4)その使用が州を越えたものであること;5)消費者の混同の可能性、を証明しなければならない。Metro Pub. Ltd. v. San Jose Mercury News, 987 F.2d 637, 640-41 (9th Cir. 1993); Summit Tech. v. High: Line Med. Instruments Co.,933 F. Supp. 918,928(C.D. Cal.1996); 3 J.Thomas McCarthy, McCarthy on Trademarks and Unfair Competition §27:13 at 27-23 (4th ed. 1997)参照。ランハム法43(a)条に基づく商標侵害のSunの権利に関して争われている唯一の問題は:1)MicrosoftのSunの「JAVA Compatible」商標の使用は本件契約に基づく権限を有するものであるかどうか;および2)消費者の混同の可能性があるかどうか、であることをSunとMicrosoftは合意しているようにみえる。

 1.Sunの「JAVA Compatible」ロゴの権限のない使用

 Microsoftが本件契約に従っていることの決定は、打ち寄せる波となった「JAVA Compatible」商標のMicrosoftによる使用が権限があるかどうかに左右されるようにみえる<A determination of Microsoft's compliance with the TLDA appears to be dispositive of whether its use of Surfs "JAVA Compatible" trademark is authorized>。Microsoftはこの観点から多数の問題を挙げている。

  a.「Relevant test suite」

  Microsoftは、本件契約の2.6(a)(iv)に基づくとMicrosoftの製品はSunが申立の基礎としているようにみえるJCK 1.la test suiteをパスすることを要求されていない、なぜならtest suiteを伴っているJDK 1.1アップグレードはJAVATMテクノロジーのSunの以前のバージョンと後方互換性がないからである、と主張する。本件契約§2.6(a)(iii); Baratz陳述書 書証A、Microsoftは、JDK 1.0.2バージョンと共にSunによって配布された test suite は本件契約の「Relevant Test Suite」であると争う。また、Microsoftは、1997年2月21日頃にJAVATMテクノロジーの最新バージョンは本件契約の2.6(a)(iii)条に従っていないことをSunに通知したと争う。McMahon陳述書 書証T。Sunは、しかしながら、そのような書簡は受け取っていないと争う。 Baratz答弁陳述書¶11。

2.6(a)(iv)条は次のように規定する:

2.6(a)(iii)条を満たすことを条件として、SUNが重要なアップグレード(それぞれ、一つの「Significant Upgrade」)として指定するアップグレードをライセンシーに配布した日の後(a)6月、又は(b)ライセンシーが Java Reference ImplementationのSignificant Upgradeをいずれかの製品の商業的リリースに含ませる日、の早いほうの時に、ライセンシーは、その重要なアップグレードに伴うtest suite(一つの「Relevant Test Suite」)をパスするJava Reference Implementation の一つのアップグレード(それぞれ、一つの「Compatible Implementation」)をSunに届けることに、ライセンシーは合意する。

本件契約§2.6(a)(iv);Baratz陳述書 書証A。

  Microsoftは、JDK 1.0.2(前のバージョン)とJDK 1.1との間の11のエラーもしくは非互換性を指摘し、Sunが2.6(a)(iii)条に違反したと主張する。Sunはこれらのエラーのうち9つはJDK 1.0製品におけるプログラムエラーを取り除くための必要上創作された許容される非互換性に基づくものであると主張する。Schroer答弁陳述書¶9。本件契約§2.6(a)(iii)(後方互換性の要求からくるプログラム修正を除いて)も参照。SunはJDKのその次のアップグレードで残る二つのエラーを明らかに処理した。同書。

  タイミングの問題を考慮しなければ、Sunの現時点の互換性テストをパスするアップグレードされた「Java Reference Implementation」を届けるMicrosoftの義務は次の場合に生じる:

(1)Sunが本件契約の2.6(a)(iii)条に従うJAVATMテクノロジーのアップグレードを届け;かつ(2)Sunがそのアップグレードを「Significant Upgrade」と指定するとき。本件契約§2.6(a)(iv)。2.6(a)(iv)条は、明白に、Microsoftに、ある条件の下で一つのアップグレードされた「Java Reference Implementation」を届ける義務を負わせているだけのようにみえる。SunのJDK 1.1リリースが2.6(a)(iii)条に従っていないと仮定したとしてさえ、本件契約がMicrosoftに、すべての互換性義務から自由なソフトウエア製品に(SunのJDK 1.1)リリースを組み込むのを許しているようにはみえない。 3   Green River Bottling Co. v. Green River. Corp., 997 F.2d 359, 362 (7th Cir. 1993) (ライセンサーのライセンス契約違反に対して、商標権を侵害することによって自助救済を行うのは適切ではない。<infringement of trademark is not a proper self-help remedy for licensor's breach of license agreement>)参照。従って、本件契約の2.6(a)(iii)条に明らかに従わない一つのアップグレードに直面したときに、Microsoftの正しい道はその製品の組み込みを差し控えることであった。また、この結果は本件契約と整合するようにみえる、なぜなら、(Microsoftから)主張されたSunのアップグレードの後方互換性の失敗は「Compatibility Date」が進むのを妨げているようにみえるからである<since an alleged failure of Sun's upgrade to be backwards compatible appears to prevent the advance of the "Compatibility Date">。本件契約§2.6(a)(vi)(「製品のすべての新しいバージョンは・・・・もっとも最近のCompatibility Dateの後に対応する互換性インプリメンテーションを含むだけでよい<"any new version of a Product . . . after the most recent Compatibility Date shall only include the corresponding Compatible Implementation.">。」)参照。

  さらに、Microsoftは、IE 4.0とSDKJ 2.0 に、このアップグレードが2.6(a)(iii)条の要求に合致しないことを明確に知りながら、SunのJAVATMテクノロジーの JDK 1.1リリースを組み込んだ。当然、MicrosoftはRelevant Test SuiteとしてのJCK 1.1a test suiteに対する反論を差し控えることができたかもしれないことになる。加えて、Microsoft自身の内部文書は、MicrosoftがJCK 1.1a test suiteをパスする義務があることを感じていたことを明らかにしているようにみえる。Day陳述書 書証L & M。Sunの技術者は、今、Microsoftによって主張されている非互換性についてのいかなる反論も明らかに受けていなかった。Schroer答弁陳述書 書証¶9.

  b.JCK 1.1a Test Suiteを「パスすること」

  Microsoftの反論は、 IE 4.0 および SDKJ 2.0がSunのrelevant test suiteを「パスする」かどうかの決定は契約上の解釈だけである、ということである。MicrosoftはIE 4.0 および SDKJ 2.0製品がSignature Testの失敗を発生させていることを認めているようにみえる。しかしながら、Microsoftは、Signature Testの報告された失敗は本件契約の光の中で解釈される時、Microsoftの製品は2条が要求する互換性に完全に従っていると主張する。Microsoftは、本件契約はMicrosoftに「java.*クラスの名前を修正したり拡張しない限りjava.*クラスを拡張し改善することを許している。」反論16頁。本件契約§2.8(d)参照。したがって、Microsoftは、報告された Signature Test エラーは、本件契約によって許されたJavaクラスの変形の結果にすぎないと主張している。

  本件契約2条をめぐる曖昧な表現のMicrosoftの巧妙な取り扱いは、しかしながら、本件契約およびJAVATMテクノロジー自体の裏にある目的と一致することはできない。Microsoftの本件契約の読み方は、横断的なプラットフォームつまりJavaプログラミング環境の互換性を破壊することをMicrosoftにどうしても許してしまうだろう。Hankinson補足陳述書¶¶8,11,12。さらに、本件契約はpublic java.* class APIの外にあるクラスIにMicrosoftによって追加されたあらゆる機能(VAOP)を制限しているようにみえる<appears to limit any functionality added by Microsoft (VAOPs) to classes I outside the public java.* class APIs>。本件契約は、また、Microsoftにこの追加された機能に明確な命名の約束事に従うことを要求しているようにみえる。本件契約§§1.28,2.8.。

  Microsoftは、また、本件契約は IE 4.0 あるいはSDKJ 2.0 はJCK 1.1 aの中の各々の全てのテストを要求されてはいないと主張する。Microsoftはこの主張を、IE 3.0製品が JCK 1.0.2 test suiteのいくつかのテストをパスするのに失敗し、Sunがその失敗は受け入れ可能であることを示したことをもって裏付けている。Arun陳述書¶4,5。しかしながら、 IE 3.0に関しては、失敗を報告された15のうち2つのテストをパスするようにJDK 1.0.2 のインプリメンテーションをやめるようにMicrosoftは要求されていた。同書。したがって、MicrosoftとSunの間のやりとりの経過は、Sunが他の方法を指示しなければ、Microsoftの製品はJCK test suiteの中の全てのテストをパスしなければならないことを、ただ証明しているだけである。本件において、Microsoftは IE 4.0 および SDKJ 2.0のtest suiteの結果を再検討する機会をSunに与えていない。また、Sunは Relevant Test Suiteに100%準拠することがMicrosoftに要求されることを(本案訴訟において)証明することが十分に可能であることを(この仮差止申立で)立証した。Hankinson補足陳述書¶¶15,16。

  c.RMIおよびJNIクラスライブラリー

  Microsoftは、SunはMicrosoftの製品がJAVATMテクノロジーのRMIおよびJNIクラスライブラリーに準拠ことを適切にテストすることができないと主張する。

  RMIクラスライブラリーに関しては、SunのRMIクラスは本件契約の2.7条によって決められた「Supplemental Java Classes」であり、Microsoftは IE 4.0 およびSDKJ 2.0にRMIクラスを含めないように選択したことは、SunとMicrosoftは合意しているようにみえる。したがって、Microsoftには公衆に利用可能なRMIクラスを作る疑う余地のない義務がある。しかしながら、Microsoftが本件契約の2.7(a)条が明らかにしている公衆配布要件のどれかに合致することに失敗したかどうかについては、SunとMicrosoftは合意していない。2.7(a)条の義務に合致したかどうかについては、裁判所はなにも見いだしていないが、Microsoftはその製品が本件契約に従うために、そうしなければならないことを特に書き留める。互換性については、本件契約は、Microsoftの製品のテストにこれらのSupplemental Java Classesを含めることを予定している。Microsoftの製品は、もし、Supplemental Classesと結合されたときそれらがパスすれば、Sunの互換性要件をパスすると思われている。本件契約2.6(a)(vii)。Sunは、Microsoftの IE 4.0 および SDKJ 2.0製品は、RMIクラスのファイルと結合されたとき、RMI特有の互換性テストをパスするとしても、これらの製品がまだSunの「Signature Test」に失敗していると争っている。裁判所は、Sunがたぶんこの論争において優勢であるだろうことを見いだしている。Schroer補足陳述書 23,24,25及び陳述書 書証A,B (IE 4.0 及び SDKJ 2.0は、RMIクラスライブラリーと結合されても、まだ、Signature Testエラーを発生する)。

  SunのJNIクラスライブラリーについては、Microsoftは、本件契約はJNI互換性についてのSunのテストを許してはいないと主張する。Microsoftは、本件契約はMicrosoftの互換性要件を「バイトコード・スペシフィケーション」に限定していると主張する。Microsoftは、JNIクラスはバイトコード・スペシフィケーションの部分ではないから、いかなるJNIテストも的外れであると主張する。一方、Sunは、ネイティブ・メソッド・インターフェース(JNIクラス)はAAPIの部分を構成すると主張する。より具体的にいうと、SunはJDK 1.1アップグレードのJNIクラスライブラリーは、以前のJDK 1.0.2 リリースに存在したネイティブ・メソッド・インターフェースのアップグレードに相当すると争っている。

  Sunの仮差止の申立の目的のために、JNI準拠テストが本件契約に基づいて適切であるかどうかについてシリアスな問題をSunは提出した。本件契約は、「Java Test Suite」をMicrosoftの製品が「AAPIのSunのスペシフィケーションに準拠する」かどうかを評価するテストとして定義している。本件契約§1.15。AAPIあるいは「Applet Application Programming Interface」は「証拠Aで定義されたテクノロジーの中で示されたJavaアプレット環境(JAE)へのパブリック・アプリケーション・プログラミング・インターフェース」を含んでいる。本件契約§1.1。本件契約に付属した証拠Aは、Javaアプレット環境は、疑う余地のないJavaクラス<certain Java Classes>及び「Java仮想マシンをインプリメントしたJavaランタイム・インタープリタ」とから構成されていることを明らかにしている。また、Sunは、JNIは、Javaランタイム・インタープリタへのパブリック・アプリケーション・プログラミング・インターフェースであることを示す専門家からの陳述書を提出している。Deutsch答弁陳述書¶12(c)。

  d.結論

要約すると、 JCK 1.1 aは本件契約に基づくRelevant Test Suiteであるようにみえる。さらに、MicrosoftのIE 4.0及びSDKJ 2.0製品はどちらもいくつかの重要な面でSunのJCK 1.1a test suiteに失敗しているようにみえる。それゆえ、Sunは、Microsoftの「JAVA Compatible」商標の使用が権限がないことを(本案訴訟で)証明する可能性を(この仮差止申立において)立証した。

  2.混同の可能性

  ライセンシーがライセンサーの商標の権限のない使用に固執する場合に、いくつもの裁判所は継続的な使用だけで消費者の混同の可能性を証明することを見い出した。Paisa, Inc. v. N & G Auto Inc., 928 F. Supp. 1009, 1012 n.4 (C.D. Cal. 1996); S & R Corp. v. Jiffy Lube Intern.,Inc., 968 F.2d 371,375 (3rd Cir. 1992); Hollywood Athletic Club v. Ghac-Citywalk, 938 F. Supp. 612, 614-15 (C.D. Cal. 1996) (混同の可能性および回復不能の被害を証明するためにはライセンサーはライセンシーによる権限のない使用だけを証明すればよいことを主張するためにChurch of Scientology Int'l v. Elmira Mission of the Church of Scientology, 794 F.2d 38 (2d Cir. 1986)を引用している)参照。

  本件においては、Sunは、Microsoftによる継続的で権限のない「JAVA Compatible」商標の使用を原因とする混同の可能性を証明することに成功する可能性を立証した。Sunによれば、「JAVA Compatible」商標は、そのマークをつけた全てのソフトウエア製品がSunの互換性 test suiteをパスしたことを消費者に示している。Sunの申立書6頁参照。Microsoftは、Sunがライセンシーに無節操な方法でそのマークの使用を許しているから、Sunの「JAVA Compatible」商標はそのような意味を伝えることはできないと主張する。Microsoftは、消費者はそのマークが正確に何を意味しているのを知らないから、いかなる混同の可能性もあり得ないとさえ主張する。しかしながら、Microsoftの主張は、その製品が JCK test suiteの全部あるいはほとんど全部のテストをパスしているかどうかに関わりなく、ライセンシーの「JAVA Compatible」商標の使用が、また、そのマークをつけている製品のSunの承認をも示しているという事実を説明できない。ここに、SunはMicrosoftのIE 4.0 及び SDKJ 2.0製品を承認していない。それゆえ、Microsoftの「JAVA Compatible」ロゴの使用は、そのソフトウエアプロダクトがSunによって承認されている意味のJAVATMテクノロジーをインプリメントしていることを偽って示している。

D.回復不能な被害

 原告が混同の可能性を立証したときは、もし、差止救済が認められないとすると、原告は回復不能な被害を受けるだろうことは一般的に推定できる。San Jose Mercury News, 987 F,2d at 640; Vision Sports, Inc. v. Melville Corp., 888 F.2d 609, 612 n.3 (9th Cir. 1989)。説得力のある権威が示すように、ライセンシーの手によってある者のマークがコントロールできなくなることは、「ライセンスしている状況において<in the licensing context>回復不能な被害を構成するまさにそのものである」。Hollywood Athletic Club, 938 F. Supp. at 615 (引用は省略)。本件において、Sunは消費者の混同を証明する十分な可能性を立証しており、回復不能な被害の推定を受ける資格がある。

W.命      令

 Sunが本案訴訟で勝訴する見込みがあり、もしMicrosoftが禁じられないとすると、回復不能な被害を被るかもしれないことを、裁判所は見いだしており、これにより、Microsoft、その役員、代理人、使用人、従業員、弁護士、および、親展の送達又は他の方法で実際にこの命令の通知を受けた者と実際に関係または関与した者に対して、(本案)訴訟継続中に<pending trial>、次のことを仮に差し止める命令が発せられる。

  (1)各製品が本件契約でパスすることを定義されたJAVATMテクノロジーのもっとも最近のバージョンに伴うSunのtest suiteをパスしない限り、及び、パスするまで、直接的又は間接的に、Sunの「JAVA Compatible」商標もしくはあらゆる他のマーク、ロゴ、又は前述の「JAVA Compatible」商標を模倣し、装い、もしくは混同するほど似た出所表示を、MicrosoftのJava 2.0用ソフトウエア開発者キット(SDKJ 2.0)又はマイクロソフト・インターネット・イクスプローラー4.0(IE 4.0)の広告、配布、販売もしくは販売促進に又は関連して使用すること。そして、

  (2)現在商業配布チャネルにある全てのSDKJ 2.0 又は IE 4.0に関して、Microsoftは、商業販売チャネルからその製品を回収するか、又は、製品のパッケージ上および購入のあらゆる局面での広告、製品マニュアル、及び付帯物の外部に見える、及び、内部的には画面及びアイコン上の、「JAVA Compatible」マークを取り除くか、もしくは十分にステッカーを貼るか、不明瞭にするか、又はカバーするか、のいずれかに直ちに着手する。また、Microsoftは、「JAVA Compatible」商標をIE 4.0 又はSDKJ 2.0製品に関連するあらゆる位置、及び、前述の製品に関する一又はそれ以上のウェブページに一又はそれ以上リンクするあらゆる位置において(前述の商標が)現れるMicrosoftのウェブサイトの場所から直ちに取り除く。

 Microsoftには、前述のことを完了させ、かつ、それが終了したことをこの裁判所に証明するために、この命令の日から30日間が与えられる。

 この仮差止の条件として、Sunはこの命令の3日以内に、もし、誤って差し止めさせられたことが発見されたときにMicrosoftが被るかもしれないコストと損害の支払いのために100万ドルを担保として提出する。

日付:94年3月24日訳5

                                 RONALD M. WHITE   
合衆国地方裁判官   

 
1.当裁判所は、この申立、答弁、及び反論に関連したもの以外のいかなる書面も考慮していない。当裁判所はSunの反論書面後にどちらかの当事者によって提出された書面からは裁判所が考慮すべき十分な主張がなされたとは見ていない。

2.11.2(d)条の条項は、金銭的損害が唯一の救済であることを規定しているが、それは11.2(b)条によってカバーされる契約違反よりも、30日通知と是正期間が適用される契約違反に関連している。本件契約§11.2(d)参照。Ticor Title, Inc. Co. v. Rancho Santa Fe Ass'n.,177 Cal App. 3d 726, 730 (1986) (もし、一般的および詳細な条項が矛盾しているときは、詳細な条項による)も参照。

3.SunのJDK 1.1テクノロジーを組み込んだにもかかわらず、JDK 1.0.2リリースに伴うJCK test suiteがrelevant test suiteであるというMicrosoftの主張は説得力がない。このtest suitsのテストの多くはバーションに特有であるから、この議論はほとんど意味がないようにみえる。Hankinson補足陳述書¶14;Hankinson陳述書 20,22も参照。さらに、Microsoftの本件契約の解釈はプラットフォーム横断互換性というJavaの目的と矛盾する。


(訳1)日本の仮処分申立に相当すると考えられる。

(訳2)Java言語の「クラス」は、C++言語の「クラス」、C言語の「関数」、BASIC言語の「サブルーチン」に対応する。JavaのプログラムはC++のプログラムの表現に極めて似ている。しかし、従来型のプログラミング言語であるC++で作成されたアプリケーションプログラムはOS、CPUに依存するが、Javaで作成されたプログラムはOSに依存せず、バーチャルマシンさえ備えていれば、どのOSでも、どのCPUでも同じプログラムが動作する。また、Javaでは、OS上で動作するアプリケーションの他に、ブラウザ上で動作するアプレットが使用できる。インターネットを使用中に、画面がしばらく止まり、ブラウザのステータスバーに「Javaを起動しています。」という表示がでて、その後、画面が動きだしたら、Javaのアプレットがブラウザ上で動作しているのである。したがって、ブラウザがJava対応かどうかが問題となる。司法省とマイクロソフトとの間の独禁法違反事件は、OSとブラウザは統合された一つの製品か、二つの異なった製品の抱き合わせ販売かが争点であり、本件契約違反事件と密接に関係した事件である。

(訳3)仮差止に対して通常の民事訴訟を本案訴訟という。本件でも、この仮差止申立と平行して、本案訴訟も行われているようである。

(訳4)合衆国法律集15§1125(a)とランハム法(合衆国商標法)43(a)は同じ条文である。合衆国法律集タイトル15は「Commerce and Trade」であり、通商関係の法律の集合体である。その22章1051条〜1127条がランハム法(合衆国商標法)であり、合衆国法律集15の1125(a)条(LII)がランハム法の43(a)条に対応する。また、合衆国憲法第1編第8節(LII)に「議会は、・・・、外国との通商、いくつかの州の間の通商・・・を規制する権限、・・・を有し 、」と規定されているので、「4)その使用が州を越えたものであること」が要件となる。一つの州内だけで使用される商標はその州の商標制度による。

(訳5)「94年3月24日」は「98年3月24日」のタイプミスであると考えられる。


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