抄訳 井上雅夫 1999.11.07-2000.02.27  06.07終局判決〔是正措置〕   ↑UP 

Microsoft独禁法事件 事実認定(抄訳)
1999.11.05
 目  次  (段落番号)
 事実認定
I.バックグラウンド(1)
II.関連するマーケット(18)
 A.代替可能な需要
  1.サーバー・オペレーティングシステム(19)
  2.非Intel互換PCオペレーティングシステム(20)
  3.情報家電(23)
  4.ネットワーク・コンピュータ(26)
  5.一般的なサーバー・ベース・コンピューティング(27)
  6.ミドルウエア(28)
 B.供給可能性(30)
III.関連するマーケットにおけるMicrosoftの力(33)
 A.マーケットシェア(35)
 B.アプリケーション参入障壁
  1.アプリケーション参入障壁の描写(36)
  2.アプリケーション参入障壁の経験的な証拠(45)
   a.OS/2 Warp (46)
   b.Mac OS (47)
   c.周辺的なオペレーティングシステム(49)
  3.オープンソース・アプリケーション開発(51)
  4.32ビットWindows APIクローン(52)
 C.Windowsの存在可能な代替品(53)
 D.Microsoftのインストールされた基盤による価格拘束(57)
 E.違法コピーによる価格拘束(58)
 F.長期の脅威による価格拘束(59)
 G.Microsoftのイノベーションの重要性(61)
 H.Microsoftの価格設定行為(62)
 I.Microsoftの他の会社への行為(67)
IV.ミドルウエアの脅威(68)
 A.Netscapeウエブブラウザ(69)
 B.SunのJavaテクノロジーのインプリメンテーション(73)
 C.他のミドルウエアの脅威(78)
V.ブラウザの脅威に対するMicrosoftの反応
 A.Navigatorをプラットフォームとして開発するのをNetscapeに思いとどまらせるMicrosoftの試み(79)
 B.重要な技術情報の留保(90)
 C.Microsoftとの取引における他の会社の同様な経験(93)
  1.Intel (94)
  2.Apple (104)
  3.RealNetworks (111)
  4.IBM (115)
 D.競合するブラウザの開発(133)
 E.Internet Explorerの無料化と利用シェア増加を促進した企業への報酬(136)
 F.主要な配布チャネルからのNavigatorの排除(143)
  1.OEM及びIAPチャネルの重要性(144)
  2.OEMチャネルからのNavigatorの排除
   a.Internet ExplorerのWindowsへの結合
    i.ウエブブラウザの独立した製品としての地位(150)
    ii.Microsoftの行為(155)
    iii.根拠の欠如(175)
    iv.ウエブブラウザ機能のマーケット(201)
   b.Internet Explorerの即時利用手段の除去及びNavigatorのブート・シークエンスへの追加をOEMが行うことの防止(202)
   c.Internet Explorerを推奨しNavigatorをプレインストール又は推奨しないようにさせるOEMに対する圧力(230)
   d.OEMチャネルにおけるMicrosoftの行為の効果(239)
  3.IAPチャネルからのNavigatorの排除(242) 
   a.Internet Explorerアクセス・キット契約(248)
   b.参照サーバー契約(253)
   c.オンライン・サービス・ホルダ契約(272)
    i.AOL (273)
    ii.他のオンラインサービス(305)
   d.IAPチャネルにおけるMicrosoftの行為の効果(307)
  4.Navigatorを犠牲にしてInternet Explorerの利用シェアを増大させるためのICPに対する誘い(311)
  5.Navigatorが露出するAPIではなくMicrosoftのブラウザ技術に依存させるISVに対する直接的な誘い(337)
  6.Navigatorの配布チャネルとしてのAppleの排除(341)
 G.最も効率よくブラウザ利用へ導くチャネルからNavigatorを排除することのMicrosoftの成功(357)
 H.Navigatorの犠牲でInternet Explorerの利用シェアを最大化させるMicrosoftの努力の成功(358)
  1.Internet ExplorerとNavigatorの利用シェアの変化(359)
  2.利用シェアの変化の原因(375)
 I.Navigatorによる脅威からアプリケーション参入障壁を守るMicrosoftの努力の成功(377)
VI.SunのJAVAインプリメンテーションの脅威に対するMicrosoftの反応(386)
 A.ポータビリティを傷つける他のインプリメンテーションとの互換性のないWindows用Javaインプリメンテーションの創作(387)
 B.Sun準拠インプリメンテーションではなくMicrosoftのJavaインプリメンテーションを使用するようにする開発者への誘い(395)
 C.Javaクラスライブラリの拡張の妨害(404)
 D.Javaがアプリケーション参入障壁を減少させるのを防ぐMicrosoftの努力の効果(407)
VII.アプリケーション参入障壁を守るMicrosoftの努力の消費者への影響(408)
 
DISTRICT OF COLUMBIA合衆国地方裁判所
民事訴訟 No. 98-1232(TPJ)
原告 アメリカ合衆国
被告 MICROSOFT CORPORATION

民事訴訟 No. 98-1233(TPJ)
原告・反訴被告 ニューヨーク州他
被告・反訴原告 MICROSOFT CORPORATION 

事実認定

 証拠提出が終了した1999年7月28日現在の裁判所の記録に基づいて、裁判所は証拠の優位によって証明された以下の事実を認定する。裁判所は適正な手続きによる別のメモランダム及び命令において法的結論を述べることとする。

   
I.バックグラウンド

 1.「パーソナルコンピュータ」(「PC」、日本語では「パソコン」)は一度に一人の人間が使用するように設計されたデジタル情報処理装置である。デスクトップ及びラップトップモデルを含むPCシステムは、「サーバー」として知られるより強力でより高価なコンピュータと区別することができる。

 2.「オペレーティングシステム」は、特定のユーザー向けの仕事を実行する「アプリケーション」と呼ばれるソフトウエアプログラムの機能を支援する。オペレーティングシステムは、「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」又は「API」と呼ばれるインターフェースを露出することによってアプリケーションの機能を支援する。これらはオペレーティングシステムの中に事前に作成されたコードのブロックを呼び出すためにアプリケーションの開発者が接続することができるシナプスである。そのコードのブロックはコンピュータの画面にテキストを表示するような重要な仕事を行う。オペレーティングシステムはアプリケーションがPCシステムのハードウエアと相互作用するように支援するから、「プラットフォーム」として役割を果たしていると言われている。

 3.Intel互換PCはIntelの80x86/ペンティアム・マイクロプロセッサ又はIntel若しくは他の会社によって製造された互換マイクロプロセッサのファミリーと共に機能するように設計されたものである。

 4.一つのオペレーティングシステムに特有のAPIに依存するアプリケーションは、他のオペレーティングシステムのAPIに適合又は「ポート」されない限り、他のオペレーティングシステム上では機能しない。

 8.1995年、MicrosoftはWindows 95と呼ばれるソフトウエアパッケージを売り出し、Windows 95は消費者の空前の人気を享受し、1998年6月にMicrosoftはその後継製品、Windows 98をリリースした。

 10.Microsoftは消費者に直接そのソフトウエアプログラムのコピーをライセンスしている。しかし、Windowsの販売の大部分は、IBM PC Company、Compaq Computer Corporation(「Compaq」)のようなPCの製造業者(「オリジナル機器製造業者」又は「OEM」)への製品のライセンスである。

 13.インターネット・コンテンツ・プロバイダ(「ICP」)はウエブページを公表することによってウエブ上に「サイト」を設立した個人又は組織である。

 15.PCは典型的にはインターネット・アクセス・プロバイダ(「IAP」)のサービスをとおしてインターネットに接続する。IAPには二つのタイプがある。America Online(「AOL」)、 Microsoft Network(「MSN」)のようなオンラインサービス(「OLS」)は、インターネットアクセスに加えて、様々なサービス及び専用のコンテンツを提供している。他方、MindSpring 及び Netcomのようなインターネット・サービス・プロバイダ(「ISP」)はインターネットアクセス以外のサービスはほとんと提供していない。

 17.Navigatorと呼ばれる最初の利益を得るために配布された広く人気のあるグラフィカルブラウザは1994年12月にNetscape Communications Corporation(「Netscape」)によってマーケットにもたらされた。MicrosoftはInternet Explorerと呼ばれるブラウザを1995年6月に提供した。
   

II.関連するマーケット

 18.関連するマーケットは世界中の全Intel互換PCオペレーティングシステムのライセンシングである。

A.代替可能な需要

1.サーバー・オペレーティングシステム
  19.消費者はかなりの費用なしにIntel互換PCオペレーティングシステムからIntel互換サーバー・オペレーティングシステムに変わることはできない。

2.非Intel互換PCオペレーティングシステム
 20.Intel互換PCシステムを既に保有している消費者にとって、非Intel互換PCオペレーティングシステムへ乗り換える費用は新しいオペレーティングシステムの費用を含むだけでなく、新しいPC及び新しい周辺機器の価格をも含むことになる。また、新しいシステムの使い方に習熟する努力、新しい互換アプリケーションを購入する費用、及び古いアプリケーションに関連したファイル及び文書を置き換える作業も含まれる。

 21.Intel互換PCオペレーティングシステムのライセンスをコントロールする会社が、永続する価格上昇の結果、多くの新しいPCユーザーをAppleに失うことはあり得ない。それゆえ、Mac OSを排除して関連するマーケットを定義するのが適切である。

3.情報家電
 23.情報家電は、ほとんどの消費者がPCシステム及びその上で走るアプリケーションに求める全ての特徴は提供できない。したがって、情報家電を購入するほとんどの者は、Intel互換PCシステムの購入の、代わりではなく、追加でそうするであろう。そのため、近い将来において、全てのIntel互換PCオペレーティングシステムのライセンシングをコントロールしている会社は、情報家電によって容認できないほどビジネスの額を失うことなしに、競争的なレベルよりかなり高く価格を維持することができるだろう。

4.ネットワーク・コンピュータ
 26.現在、極めてわずかな会社がネットワーク・コンピュータ・システムを販売しているに過ぎず、そのシステムは消費者の需要をまだ引きつけてはいない。

5.一般的なサーバー・ベース・コンピューティング
 27.少なくともこれから数年の間、サーバー・ベースのアプリケーションをアクセスする消費者の圧倒的大多数はIntel互換PCシステム及びブラウザを使用して、そうするだろう。

6.ミドルウエア
 28.オペレーティングシステムがアプリケーション開発者に対してAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を露出する唯一のソフトウエアプログラムではない。Netscapeウエブブラウザ及びSun Microsystems, Inc.のJavaクラスライブラリは同様に動作する非オペレーティングシステム・ソフトウエアの例である。そのようなソフトウエアは時々「ミドルウエア」と呼ばれる。現在のミドルウエア製品はそれらのAPIだけに依存して十分な機能を有するパーソナル生産性アプリケーションを書くことが独立系ソフトウエア・ベンダー(「ISV」)の利益になるほど十分に露出してはいない。

 29.ミドルウエア及びそれをサポートするアプリケーションが現状から、Intel互換PCオペレーティングシステムの値づけに影響を及ぼすほど非Intel互換PCオペレーティングシステムを選択する平均的な消費者の費用が低下するまでに発展するには数年はかかるだろう。

B.供給の可能性
 30.一般にソフトウエア開発者は、全てのPCユーザーのなかで既に支配的に使用されているオペレーティングシステムのために、最初に、そして時にはそれのみのために、アプリケーションを作成する。ユーザーは、そのシステムが彼らのニーズを満たすアプリケーションの世代をサポートしていることが明らかでなければ、オペレーティングシステムに出費することを望まない、そして、開発者は、相当な大きさで安定したマーケットがあることが明らかでない限り、あるオペレーティングシステムのためのアプリケーションを作成すること、又は急いでポートすることに、投資しようとしない。

 31.卵が先か鶏が先かの問題(以下、「アプリケーション参入障壁」という)により、新しいIntel互換PCオペレーティングシステムが数年以内に支配的な現オペレーティングシステムに対する存在可能な代替品になるのに十分なだけ開発者及び消費者を引きつけるためには、手がでないほどの費用がかかるであろう。

 32.Intel互換PCオペレーティングシステムを既に販売していない会社が、5年以内に、意味のあるパーセントの消費者に現オペレーティングシステムに対する存在可能な代替品を提供するであろうものの販売を始めることは、極めて起こりにくいことである。
  

III.関連するマーケットにおけるMicrosoftの力

 33.Microsoftは関連するマーケットにおいて独占力を享受している。

 34.第1に、MicrosoftのIntel互換PCオペレーティングシステムのマーケットのシェアが極端に大きくかつ安定している。第2に、Microsoftが支配しているマーケットシェアは高い参入障壁で守られている。第3に、そして、大部分はその障壁の結果として、Microsoftの顧客にとってWindowsに対する商業的に存在可能な代替品が欠如している。

A.マーケットシェア
 35.過去10年間の各年において、Intel互換PCオペレーティングシステムのマーケットのMicrosoftのシェアは90%を越えている。過去2年間では、その数字は少なくとも95%であり、アナリストはそのシェアは今後数年間、より高くなるだろうと予想している。

B.アプリケーション参入障壁
1.アプリケーション参入障壁の描写
 36.障壁はWindows以外のIntel互換PCオペレーティングシステムがかなりの消費者の需要を引きつけるのを防いでおり、Microsoftが競争的レベルよりかなり高く価格を維持してさえ、そうであり続けるであろう。

 37.他のPCオペレーティングシステムと比較してWindowsのために書かれたアプリケーションの数が膨大であるという事実が消費者をWindowsに引きつける、なぜなら、Microsoftの製品を使用する限り彼らの利益にかなうことを再確認させるからである。

 38.ソフトウエア開発は実質的な規模の経済によって特徴づけられる。アプリケーション開発者は最もユーザーの多いオペレーティングシステム − Windows − に最初に書く傾向がある。

 39.正のネットワーク効果は、製品の魅力がそれを使う人の数と共に増加する現象である。Windowsの需要が正のネットワーク効果を経験する主な理由はWindowsのインストールされた基盤がISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)を最初に真っ先にWindowsへのアプリケーションを書くように駆り立てることであり、それにより消費者が選択できるアプリケーションの多さが保証されることである。それゆえ、アプリケーションの多さはWindowsの需要を増強し、Microsoftの支配的な地位を増大させ、それによって、ISVがWindowsのためのアプリケーションを第一に書くインセンティブが持続するのである。この自己増強サイクルは時々「正のフィードバック・ループ」として言及される。

 40.Microsoftにとっての正のフィードバック・ループは、競争志望者にとっては悪循環サイクルである。Windowsの存在可能な代替品を提供するためには、他のPCオペレーティングシステムは、消費者の多様さ、選択の豊富さ及び流行について、Windowsを選択するのと同じ程度に満足できることを消費者に認識させるために、互換アプリケーションの大量で多様で十分な基盤を必要とするであろう  。

 41.ほとんどのISVはそのシステムが確立されるまでそのための開発にリソースを投資しようとは思わない。早期に採用することのリスクに耐えるために誰もがほかの誰もを待っているから、新しいオペレーティングシステムは正のフィードバック・ループを引き起こす十分なアプリケーションを引きつけるのが困難である。

 42.「最初に動いた者のインセンティブ」が知られている。新しいオペレーティングシステムの需要が突然爆発すれば、その最初に動いた者は他の競争者が到着する前に大きな販売額を上げることができる。一度、最初に動いた者がアプリケーションの主要なカテゴリーへの権利を杭で囲うと、新しいオペレーティングシステムが立ち上がる力強いチャンスとなるであろう;しかし、重要なアプリケーションのカテゴリーへ更なるISVを引きつける最初に動いた者のインセンティブはもはや働かなくでなるであろう。

 43.もし、MicrosoftがWindowsのためにアプリケーションを書くようにISVを誘導するための年間数億ドルの投資を止めたとすると、競争者が正のフィードバックを得ることが現在よりも容易になるかもしれない。Microsoftがプラットフォーム「伝道<evangelization>」に他のPCオペレーティングシステム・ベンダーよりも多く費やしているが、なぜ、アプリケーション障壁により主に恩恵を受けている者がそれを増大させるために、野心のあるライバルがそれを浸食するための危険な努力において費やすのより多くのリソースを費やすのかを理解するのは困難である。

 44.Microsoftは継続的にそのPCオペレーティングシステムの「新しい改良された」バージョンをリリースしている。ISVが新しいAPIを利用するのに時間がかかるとしても、新しいシステムを採用する消費者の道にアプリケーション障壁はない、なぜなら、MicrosoftはWindowsの継続バージョンが以前のバージョンのために開発されたアプリケーションが走る能力を保持していることを保証するからである。Microsoftは、他のPCオペレーティングシステムのベンダー及びベンダー志望者が乗り越えなければならない参入障壁のような障害物には全く直面することがない。

2.アプリケーション参入障壁の経験的な証拠
 45.1990年代中期及び後期におけるMicrosoftのオペレーティングシステムの重要なライバルであるIBM及びAppleの経験はアプリケーション参入障壁の強さを確証している。

a.OS/2 Warp
 46.1994年遅く、IBMはIntel互換OS/2 Warpオペレーティングシステムを売り出し、ISVがOS/2のためのアプリケーションを書くための努力及びWindows APIセット部分のリバースエンジニアリング又は「クローン」への試みに数千万ドルを使った。これらの努力にもかかわらず、IBMはかなりのマーケットシェアもOS/2 WarpのためのISVのサポートも得ることはできなかった。IBMは現在ニッチ・マーケット、すなわちOS/2 Warp上で走る特定のタイプのアプリケーションに興味を持つ企業消費者(主に銀行)、をその製品のターゲットとしている。

b.Mac OS
 47.AppleのMac OSは12,000以上のアプリケーションをサポートしているが、その程度ではAppleがWindowsの存在可能な代替品をかなりのパーセントのユーザーに提供するには十分ではない。Mac OSを関連するマーケットに含めようと含めまいと、Microsoftの価格コントロール能力をMac OSが妨げるのをアプリケーション障壁が防いでいる。

c.周辺的なオペレーティングシステム
 49.Beはマルチメディア機能をサポートするのに特に適したBeOSと呼ばれるIntel互換PCオペレーティングシステムを販売している。BeOSが小さなアプリケーションの基盤にもかかわらず多くのユーザーを引きつけることができる理由の一つは、それがWindowsの代替品としてではなく、Windowsを補足するものであるとして宣伝していることである。デュアル・ロードPCシステムがONされると、Windowsが自動的にブートする;ユーザーはそれから積極的にBeOSを呼び出すステップを踏まなければならない。このスキームがBeOSをマーケットのなかでニッチを占めさせるのを許しているが、相当数のPC上のWindowsを置き換える軌道に製品を乗せることはない。

 50.同様に、Intel互換PC上で走るバージョンのLinuxオペレーティングシステムの経験はアプリケーション参入障壁の存在をやりこめることに失敗している。Linuxは1千万と1千5百万の間のユーザーを有しているが、彼らの大多数はそのオペレーティングシステムを、PCではなく、サーバーを走らせるのに使用している。消費者は全般的に、PC領域における将来が不明確なオペレーティングシステムを選び、Windowsをその信頼できる開発者のサポートと共に捨てる、傾向をほとんど見せていない。

3.オープンソース・アプリケーション開発
 51.理論上は、オープンソース開発者は少なくとも、彼らがWindows互換アプリケーションを書くのと同じように、非Microsoftオペレーティングシステムのためにアプリケーションを開発することがありそうである。実際、彼らはイデオロギー的にLinuxのようなオープンソース・プラットフォームに彼らの努力を集中する傾向を示すかもしれない。しかしながら、Microsoftにとって幸運なことに、公益ソフトウエアを書き、テストし、デバッグすることに才能を捧げようとする開発者は世界的にそれほど多くない。

4.32ビットWindows APIクローン
 52.理論的に、非Microsoft、Intel互換PCオペレーティングシステムの開発者はWindowsの32ビット・バージョン(Windows 9x及びWindows NT)によるAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)のクローンを作成してアプリケーション参入障壁を迂回することができる。しかしながら、この理論を実行に移すことは事実上不可能である。まず最初に、Windowsが既に備える数千のAPIのクローンを作成することは極めて高額の事業であろう。さらに怯ませるのはMicrosoftがアップデート及び新バージョンをとおしてWindowsに継続的にAPIを追加している事実である。

C.Windowsの存在可能な代替品
 53.Microsoftのマーケットシェア及びアプリケーション参入障壁が連携してMicrosoftにIntel互換PCオペレーティングシステムのマーケットにおける独占力を付与していることは、MicrosoftのPCオペレーティングシステム製品に現実的で商業的な代替品の持続した不在によって直接的に証明される。

 54.たとえば、1995年、IBMがまだライバルのWindowsに対するOS/2の能力に希望を持っていたときに、それにもかかわらず、そのPCにWindows 95を搭載しないとすれば、70%と90%の間の販売を失うであろうことを計算していた。いくつかのOEMはいくつかのコンピュータにLinuxをプレインストールする意向をアナウンスしているが、(サーバーとは反対に)目に見える数のPCシステムにWindowsの代わりにLinuxをインストールすることを計画している会社はない。BeはOEMにBeOSをインストールしたPCにWindowsを排除することを求めてさえいない。

 55.MicrosoftはOEM(オリジナル機器製造業者)がWindowsをロードする以外の選択がないことを知っている。この状況をMicrosoftが認識していることは、MicrosoftのOEM担当の役員が、1996年の自社の執行委員会におけるプレゼンテーションで、違法コピーが引き続き自社のオペレーティングシステム製品への主な競争相手であると報告した事実が示している。この情報に安心して、MicrosoftはWindows 98の価格の決定のときに、他のIntel互換PCオペレーティングシステムの価格を考慮しなかった。

 56.上述のとおり、サーバー及びミドルウエアウエア・ベースのアプリケーション開発の増大がアプリケーション参入障壁をついには弱めるかもしれない。しかし、ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)がサーバー及びミドルウエアによって露出されたAPIだけに依存する全ての特徴を持ったアプリケーションの多数の、種々のアプリケーションを開発するかどうかははっきりしない。

D.Microsoftのインストールされた基盤による価格拘束
 57.Microsoftのオペレーティングシステム製品のライセンスは、他のマシンにそのオペレーティングシステムを移転することユーザーに禁じているから、Microsoftのオペレーティングシステムの法的なセカンダリー・マーケットは存在しない。Windowsを望み、新しいIntel互換PCを購入する消費者は新しいオペレーティングシステムのコピーを購入しなければならない。Microsoftは新しいPCシステムをとおして新しいオペレーティングシステムのコピーを売ることができるから、これらのシステムに設定する平均価格は古いWindowsのバージョンが決してすり減らないという事実によってほとんど影響を受けない。

E.違法コピーによる価格拘束
 58.ソフトウエア海賊はWindowsのようなソフトウエア製品を違法にコピーし、ベンダーの通常の価格よりはるかに安くコピーを販売している。Microsoftが海賊と戦う一つの方法は、OEMがプレインストールされたオペレーティングシステムなしで販売するPCの数を徹底的に制限しなければ、Windowsの価格はより高くなることをOEMにアドバイスすることである。1998年、主要なOEMはこの制限に合意した。新しいPCの価格に含まれる合法的なコピーを既に受けている消費者に対して、Windowsの海賊されたコピーを販売するのは困難である。

F.長期の脅威による価格拘束
 59.リーダーを交代させるものは、同じソフトウエアのカテゴリー内の他の製品からの競争ではなく、むしろ、そのカテゴリーを時代遅れにしてしまう技術的な進歩からの競争である。これらの出来事は「屈曲点」といわれている。

 60.インターネットの指数関数的な発展はコンピュータ及びテレコミュニケーション産業における技術的進歩の屈曲点を示している。これから発生するパラダイムがPCオペレーティングシステムを主要なプラットフォームから追い出すことになるだろう。その日がこない限り、そして来るまで、かなりのパーセントの消費者がWindowsを捨てることはできないだろう。それゆえ、MicrosoftはWindowsを競争的なマーケットにおけるよりも実質的に高い価格を設定することができる。Microsoftは余剰な独占力を高価格よりも他の方法で使うことによって新しいパラダイムの到来を遅らせることができるだろう。

G.Microsoftのイノベーションの重要性
 61.Microsoftが研究開発に大いに投資している事実は独占力がないことの証拠ではない。

H.Microsoftの価格設定行為
 62.Windows 98の価格設定時に、この会社が他のベンダーのIntel互換PCオペレーティングシステムを考慮しないで決めたことは独占力の証拠である。もう一つの独占力のしるしは、MicrosoftがOEMに対してWindows 95の価格を、新しい製品がリリースされるちょうど前に、Windows 98の価格と同様な水準に上げたという事実である。競争的なマーケットにおいては、古いオペレーティングシステムの価格は、新しいより魅力的なバージョンのリリースで、同じか下がることが期待される。しかし、Microsoftは古いバージョンに賛成のOEMにWindows 98を出荷させることをだけを気にかけていたのである。

 63.Microsoftの調査は1997年11月から(Windows 95からの)Windows 98へのアップグレードを49ドルとすることができることを示していたが、収入を最大化する価格として89ドルを鑑定した。したがって、Microsoftは高い方の価格を選択した。

 64.Microsoftの価格設定行動の一面は、異なったOEMに対して、個々のOEMがMicrosoftの望みに従った程度に応じて、Windowsの異なった価格を課していたという事実である。5つの主要なOEMの中で、アプリケーション参入障壁を維持するMicrosoftの努力に抵抗するGatewayとIBMは、Microsoftとより少ない争いを追求してきたCompaq、Dell、及びHewlett-Packardよりも高い価格を支払っていた。

 66.MicrosoftはWindowsのライセンスに、アプリケーション参入障壁を弱めるソフトウエアを販売するOEMの能力を制限する条件を付け加えている。Microsoftはほとんど全てのマシンにオペレーティングシステムをプレインストールするOEMに安い価格を課している。

I.Microsoftの他の会社への行為
 67.Microsoftの独占力は、独占力を増強するように働くときだけ、都合がよい行為を数年間にわたって行ってきたという事実によっても証明される。それらの行為は以下に述べる。

  
IV.ミドルウエアの脅威

 68.より人気のあるミドルウエアがより多くのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を露出するほど、アプリケーション参入障壁を維持する正のフィードバックループがより少なくなる。 Microsoftはアプリケーション障壁を一緒になってひどく弱める可能性のある二つのミドルウエアに反感を集中した。Netscapeウエブブラウザ及びSunのJavaテクノロジーのインプリメンテーションである。

A.Netscapeウエブブラウザ
 69.Netscape Navigatorはアプリケーション参入障壁を消滅させる可能性を与える三つのキーとなるミドルウエア属性を有している。第一は、ブラウザは広く使用されている。第二に消費者によって他のソフトウエアのためのプラットフォームとしての役割を果たすことができる。最後に、Navigatorは15以上の異なったオペレーティングシステムにポートされている。したがって、もし、開発者がNavigatorによって露出されたAPIだけに依存するアプリケーションを書けば、そのアプリケーションは多くの異なったオペレーティングシステム上で走るだろう。

 70.インターネットが消費者がPCを最初に購入する主な動機となり、現在のPCユーザーが主に時間をかけ注意をはらうものとなってきたという事実がNavigatorが参入障壁を弱める可能性をより強くしている。

 72.1995年5月下旬、Microsoft会長兼CEOのBill Gatesは「インターネット大津波」と題したメモをMicrosoftの役員たちに送り、Netscapeを「インターネット上に『生まれた』新しい競争者」として記述した。彼は同僚に対して、Netscapeは「基礎となるオペレーティングシステムを日用品化するためにクライアントの中にキーとなるAPIを提供するマルチ・プラットフォーム戦略を追求している」ことを警告した。1995年の春遅くまでに、Microsoftの戦略立案に責任のある役員たちはNetscapeがアプリケーション参入障壁を消滅させる方向にビジネスを移行しつつあることを深く懸念していた。

B.SunのJavaテクノロジーのインプリメンテーション
 73.用語「Java」は4つの連結した要素に関係している。第一に、開発者がアプリケーションを書くJavaプログラム言語である。第二に、Javaで書く開発者が依存するAPIを露出するJavaで書かれた一組のプログラムである。第三の要素は、開発者によって書かれたコードをJava「バイトコード」に翻訳するJavaコンパイラである。最後に、Javaバイトコードを基礎となるオペレーティングシステムが理解できる命令に翻訳する「Java仮想マシン」又はJVMと呼ばれるプログラムである。もし、Javaクラスライブラリ及びJVMがPCシステムに導入されると、そのシステムは「Javaランタイム環境」にあると呼ばれる。

 74.Javaで書かれ、Javaクラスライブラリによって露出されたAPIだけに依存するプログラムはJVMを含むあらゆるPCシステム上で走る。Sunの最終的な望みは多くの豊富な特徴をもちエンドユーザー指向アプリケーションがクロスプラットフォームで書ける程度にまでクラスライブラリを拡張することである。Sunが「一度書けば、どこでも走る」のゴールに近づけば近づくほど、アプリケーション参入障壁は浸食されるだろう。

 75.1996年の春遅くまでに、Microsoftの上級役員たちはSunのJavaテクノロジーがアプリケーション参入障壁を消滅させる可能性について深く心配していた。

 76.Sunにとって幸運なことに、Netscapeが1995年5月にSunのJavaランタイム環境をNavigatorに含ませることに合意し、NavigatorはJavaランタイム環境をWindowsユーザーのPCシステム上に置くための主要な手段となった。

 77.これらのミドルウエア技術がアプリケーション参入障壁を危険にさらすまでには長い道のりがある。Windows 98は1万近くのAPIを露出しているが、NavigatorとJavaクラスライブラリのAPIは1000より少ない。Microsoftの政策決定者たちは現在の脅威と同様に可能性についても懸念しており、Microsoftの役員たちはNetscapeのSunとの提携をNavigatorの使用の増加を恐れる更なる理由と見ていた。

C.他のミドルウエアの脅威
 78.1994年から、Microsoftは最初Lotusその後IBMによって配布されたソフトウエア製品Notesにかなり懸念を示していた。次に、1995年には、Microsoftはオペレーティングシステムとは独立してマイクロプロセッサと相互作用しマルチメディア・コンテンツの開発者に直接APIを露出するIntelのNative Signal Processingソフトウエアに警戒した。最後に、1997年、MicrosoftはAppleとRealNetworksのマルチメディア再生技術の危険性に言及した。Microsoftは、これらの技術の全てを恐れた、なぜなら、基礎となるオペレーティングシステムの独自性に無関係のユーザー指向ソフトウエアの開発を可能とさせるからである。

 
V.ブラウザの脅威に対するMicrosoftの反応

A.Navigatorをプラットフォームとして開発するのをNetscapeに思いとどまらせるMicrosoftの試み
 79.Navigatorの脅威に対するMicrosoftの最初の反応は、NetscapeがWindowsのためのプラットフォーム・レベルのブラウザを配布しないように説得することであった。

 80.Microsoftの役員たちは1995年5月上旬にNetscapeがWindows 95上で走るNavigatorのバージョンを開発していることの確証を得た。Microsoftの上級役員たちは、もしこのNavigatorのバージョンがWindows 95のインターネット関連API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に代替するAPIを提供するのを妨げられるなら、Navigatorのブランドを有するその技術は開発者への代替プラットフォームを提供しないことを理解した。Navigatorの非Windowsバージョンがインターネット関連APIを露出しているとしても、これらのAPIのために書かれたアプリケーションは、Windows 95上では走らない。それゆえ、Gatesの激励及び支持を受けて、Microsoftの役員のあるグループが1995年夏にNetscapeにWindows 95用のプラットフォーム・レベル・ブラウザ技術の開発を止めるよう説得するキャンペーンを開始した。

 81.1995年6月2日、Microsoftの本社で開かれた会議で、Microsoftの役員たちはNetscapeのCEOであるJames Barksdaleに対して、Windows 95用のNavigatorのバージョンはWindows 95のインターネット関連APIに依存して設計するよう提案した。BarksdaleはMicrosoftの代表者たちに、ブラウザはNetscapeのビジネス戦略の重要な部分であり、Windows 3.1及びWindows 95はNavigatorにとっての主要なプラットフォームであると期待していると告げた。

 82.Microsoftは、まだ説得できることを望んで、Barksdaleの招待を受け入れ、6月21日のNetscapeの本社での技術「ブレーンストーミング会議」に代表を送った。Netscapeの上級役員たちはその会議を、NavigatorがWindows 95上でうまく走るために必要な重要な技術情報にアクセスすることをMicrosoftに求める機会として理解していた。

 83.6月21日の会議の冒頭で、Microsoftの代表たちはBarksdaleと他のNetscapeの役員たちに対して、二つの会社のより広範囲でより親密な関係を構築する可能性を探求したいと述べた。MicrosoftはMac OS、UNIX及びMicrosoftの16ビット・オペレーティングシステム製品用のブラウザ製品の開発をNetscapeに残すことを説明した。しかしながら、Microsoftの代表たちは、MicrosoftがWindows 95用の独自のブラウザを販売し、この製品はMicrosoftのプラットフォーム・レベルのインターネット技術に依存することを明らかにした。もし、Netscapeが異なった技術に基礎を置くWindows 95用のブラウザを販売するとすれば、MicrosoftはNetscapeを競争者と見なし、パートナーとは見なさないだろう。

 85.Barksdaleは二つの質問をした:第一は、プラットフォーム(マイクロソフトの排他的領域)とアプリケーション(Netscapeが機能し続けることができる領域)の間の線はどこに引くのか? 第二は、誰がそれを決めるのか? Microsoftの代表たちはMicrosoftはNetscapeブラウザの機能のほとんどをWindows 95プラットフォームに合体させ、Netscapeにはユーザー・インターフェース・シェルを配布する余地を残すであろうと答えた。Microsoftの代表たちは、境界線はMicrosoftとISV(独立系ソフトウエア・ベンダ)パートナーとの共同決定プロセスによって引かれると、Barksdaleに保証したが、代表者たちは既にNetscapeがユーザーとMicrosoftのプラットフォーム領域の間で占めることが許される領域は極めて狭いことを暗に示していた。もし、Microsoftがプラットフォームに構築しようと計画しているインターネット関連APIと競い合うAPIをNavigatorが露出するとすれば、MicrosoftはNetscapeを領域侵入者として見なすであろう。

 86.その会議は通信線をオープンにしておくことを両者が約束して、終了した。

 87.Microsoftの派遣団をリードしたDaniel Rosenは楽観的であったが、Thomas ReardonはNetscapeがMicrosoftのプラットフォーム・レベル・インターネット技術のほとんど全てで競合するであろうことを予測した。両方を聞き、GatesはReardonが状況をより正確に評価していると結論した。1995年6月中旬、Rosenの上司はNetscapeと戦略的協定を結ぶ努力を止めるようにRosenに指示した。

 88.Microsoftが境界線を正確に引く前に議論は終わったが、Microsoftの提案をNetscapeが受けたとしてNetscapeが独立したビジネスとして生き残る能力が残されたかどうかは明確ではない。

 89.Microsoftがこの提案を提出したときに、Navigatorはマーケットで意味のあるシェアを有する唯一のブラウザ製品であり、アプリケーション参入障壁を弱める可能性をもつ唯一のものであった。したがって、Netscapeを「特別な関係」の提案を受け入れるよう説得できたとしたら、Microsoftはネットワーク・アプリケーション(ウエブブラウザを含む)に使う拡張及び標準を急速にコントロールし、それが全てとなり、他の将来のライバルのブラウザがMicrosoftのプラットフォームから開発者の興味を引きつけることを不可能にしたであろう。

B.重要な技術情報の留保
 90.Microsoftは、NetscapeがWindows 95のリリースまでにNavigatorのWindows 95バージョンを完成させるために重要な技術情報及び援助を必要としていることを知っていた。実際、Netscapeの役員たちは6月21日の会議で特にリモート・ネットワーク・アクセス(「RNA」)APIの情報を要請した。Microsoftの代表者 J. AllardはBarksdaleに対して、この会議の結論によってNetscapeがRNA APIを直ちに又は3ヶ月以内に入手するかどうかが決まるであろうと述べた。

 91.Netscapeのねばり強さにもかかわらず、MicrosoftはそのAPIを10月下旬までNetscapeに対して解禁しなかった。この遅れが、1995年8月のWindows 95(及びInternet Explorer)のリリースの後まで、Windows 95ブラウザのリリースを延期することをNetscapeに強いたのである。

 92.Microsoftは同様に、NetscapeがブラウザをダイアルアップISP(インターネット・サービス・プロバイダ)との互換性を確保するために必要としたスクリプト・ツールを留保した。Microsoftはそのツールをそれを求めるISPに無料でライセンスしており、実際、1996年6月中旬までにMicrosoftの役員によってサインされるだけで発効するライセンス契約案をNetscapeと作成していた。しかし、それは停止された。Netscapeはそのスクリプト・ツールのライセンスを受けることはなく、その結果、ある期間、ある種のISPとビジネスをすることができなかった。
 
C.Microsoftとの取引における他の会社の同様な経験
 93.コンピュータ産業の他の企業はMicrosoftとの間で上記のNetscapeの経験と同様なことを経験している。これらは、アプリケーション参入障壁を弱める可能性を示すかMicrosoftが最も大切にするソフトウエア製品と直接に競争するソフトウエアの開発を停止するように他の会社に圧力を加えることがMicrosoftの会社としての行為であることを示している。

1.Intel
 94.MicrosoftはIntelに対してもオペレーティングシステムに独立なインターフェースを提供するソフトウエアの開発停止の説得を試みていた。

 95.1995年の早い時期までに、Intelアーキテクチャ・ラボ(「IAL」)は、通常は「デジタル・シグナル・プロセッサ」によって実行されるタスクをInte 80x86マイクロプロセッサが実行できるようにするソフトウエアの開発を進めていた。このネイティブ・シグナル・プロセッシング(「NSP」)と呼ばれるソフトウエアはIntelのマイクロプロセッサのビデオ及びグラフィックのパフォーマンスを向上させるものである。

 96.IALは、Intel独自のAPIとデバイス・ドライバ・インターフェース(「DDI」)が露出するように、NSPソフトウエアを設計した。

 97.Intelは非Microsoftオペレーティングシステム用のNSPソフトウエアのバージョンも開発していた。そのバージョンは同じソフトウエア・インターフェースを露出しており、アプリケーションを非Microsoftオペレーティングシステムにポートすることがより容易となる。IntelのNSPはMicrosoftの独占力を保護する障壁を弱める潜在力を有していた。

 100.Microsoftは1995年の春にNSPについてIntelに不平を言い始めた。6月の最初の週に、Gates自身がIntelのCEOであるAndrew Groveに合い、NSPについて議論した。Gatesは、上級役員へのメモランダムの中で、「NSPを発売しないように」、また、Intelでソフトウエアに従事する人員を減らすように、Groveに説得したと報告した。

 101.MicrosoftはNSPをPCにインストールしないように主なOEMに圧力をかけた。IntelはMicrosoftにソフトウエアのイノベーションを明け渡すしか選択の余地がないことを思い知り、1995年6月末までに、NSPソフトウエアの開発を停止することに合意した。MicrosoftはオペレーティングシステムにNSPのいくつかの部分を合体させたが、1998年末においても、Intelが1995年に消費者に提供する用意があったキーとなる能力を、Microsoftはまだインプリメントしていない。

 102.MicrosoftはNSPソフトウエアを鎮圧しただけでは満足しなかった。GatesはGroveに対して、IntelがWindowsと競合するプラットフォーム・レベルのソフトウエアを開発する限り、MicrosoftがIntelの次世代マイクロプロセッサをサポートするかどうかわからないと述べた。Intelは、プラットフォーム・レベルのインターフェースの開発を中止することに合意した。

 103.OEMはMicrosoftのWindowsに依存しているから、MicrosoftはIntelに対して影響力を行使し続けることを享受した。Gatesは1995年10月に上級役員に対して、「我々が全てのOEMを掌握していることをIntelは感じている」と報告することができた。

2.Apple
 104.QuickTime はマルチメディア・コンテンツ(たとえば、オーディオ、ビデオ、グラフィック、3−Dグラフィック)を創作し、編集し、出版し、再生するAppleのソフトウエア・アーキテクチャである。AppleはMac OSとWindowsの両方で走るQuickTimeのバージョンを作成した。QuickTimeは「DirectXと呼ばれる」MicrosoftのマルチメディアAPI及びそのマルチメディア・プレイヤーと競合する。QuickTimeはクロスプラットフォーム・ミドルウエアであるから、Microsoftはアプリケーション参入障壁への潜在的な脅威と感じた。

 105.1997年の春の初めから1998年の夏にかけて、MicrosoftはAppleに、MicrosoftのマルチメディアAPIの代替品を提供するマルチメディア再生ソフトウエアのWindows 95バージョンの作成を停止するよう説得を試みた。Microsoftの役員は、もし、Appleがこの提案を受け入れれば、Microsoftはオーサリング事業には参入せず、そのかわりマルチメディア・コンテンツを書くツールの開発販売でAppleを援助すると述べた。

 106.Appleとの議論の中で、Microsoftの役員たちは、AppleがWindows 95用のマルチメディア再生ソフトウエアを販売し続けるとすれば、Microsoftはオーサリング事業に参入すると述べた。Microsoftの役員たちは、Microsoftは開発者がMicrosoftのツールを使用することを確実にするのに必要なリソースには何でも投資する、オーサリング・ソフトウエアからの利益があまり多くないとしても投資すると警告した。

 108.マルチメディア再生ソフトウエアについての議論は、1998年6月15日にAppleの本社で開かれた、Microsoftの役員たちとSteve Jobsを含むAppleの役員たちの間の会議で頂点に達した。MicrosoftのEric Engstromは両社がWindows上のマルチメディア・コンテンツを再生するソフトウエアのコンフィグレーションを単一化することで合意することができると述べ、統合化されたマルチメディア再生ソフトウエアはDirectXに基礎を置かなければならないと付け加えた。

 109.Jobsは数週間後にきっぱりとMicrosoftの提案を拒絶した。もし、Appleが受け入れていたとしたら、Microsoftはマルチメディア・コンテンツのクロスプラットフォーム開発を制限することに成功していたであろう。

3. RealNetworks
 111.RealNetworksはウエブからオーディオ又はビデオ・コンテンツの「ストリーミング」をサポートするソフトウエアのリーダーである。RealNetworksのストリーミング・ソフトウエアはMicrosoftのDirectXのストリーミング技術と競合するAPIを提供する。Appleと同様に、RealNetworksは多くのオペレーティングシステムのためのバージョンを開発した。

 112.1997年5月末、Gatesは、RealNetworksを敵と認め、Microsoftがストリーミングのスタンダードを握るのを加速するために、一つのストリーミング・ソフトウエア会社のために6500万ドルの支払いの権限を認めた。2週間後、MicrosoftはVXtremeと呼ばれるストリーミング・メディア会社の買収のサインをした。

 113.差し迫った危機を感じて、RealNetworksの役員たちはMicrosoftとコンタクトをとり、二つの会社が戦略的な関係に入ることを提案した。7月18日、MicrosoftとRealNetworksは、MicrosoftがRealNetworksのmedia playerをInternet Explorerと共に配布する契約を締結した。 MicrosoftのMugliaはRealNetworksがその代わりにMicrosoftのストリーミング・メディア技術をその製品に合体することに合意することを信じていた。

 114.RealNetworksはその契約を異なった形で理解し、基本的なストリーミング・ソフトウエアの開発の継続を発表した。それでも、MicrosoftのRealNetworksに対する意図は、Microsoftの政策決定者たちがアプリケーション参入障壁を弱める可能性のあるソフトウエアの開発を停止するために、よろこんで巨額の現金及び他のリソースを投資することを示している。

4.IBM
 115.IBMは一方ではIntel互換PCを製造しライセンスしているが、他方でIntel互換PCオペレーティングシステム及びオフィス製品を開発販売している。IBM PC Companyは、Windowsが無ければほとんどの消費者はIBMのPCシステムを購入しないのでMicrosoftとの協力に強く依存して利益を得ている。他方、IBMのソフトウエア部門はMicrosoftと直接競合している。たとえば、IBMはかつてOS/2をWindowsの代替品として販売したことがあり、現在はMicrosoftのOfficeの代替品としてOfficeアプリケーションを販売している。

 116.MicrosoftはIBMに対して、Windows及びOfficeと直接競合する製品から撤退するよう説得を試みた。IBMが拒否すると、Microsoftは、高価格、Windows 95のライセンスの遅延、及び技術販売サポートの留保で、IBM PC Companyを罰した。

 117.MicrosoftはIBM PC Companyに、MicrosoftとCompaqの間の契約と同様の「フロントライン・パートナーシップ」を締結することを提案した。この提案に従うと、MicrosoftとIBM PC Companyは、共同の販売、開発を行い、将来のMicrosoftの製品を業界で最も低いレートで受けることができる。

 118.IBM PC Companyは、もし、IBMのPCの宣伝で他のオペレーティングシステムについて言及せず、従業員のための標準オペレーティングシステムとしてWindows 95を採用し、Windows 95のリリース後2ヶ月の時点でPCの少なくとも50%にWindows 95をプレインストールすれば、Windows 95のロイヤリティについて8ドルの割引をうける。

 119.IBMはこの条件を拒否した。

 120.IBMは、1994年遅くに始まったOS/2 Warpの激賞とWindowsの軽蔑を含む、自社のソフトウエア製品の精力的な販売促進を始めた。IBMはLotus Development Corporationを買収し、Lotus Notes及びLotus SmartSuiteを含むLotusグループウエア製品を所有した。IBMはSmartSuite を主要なデスクトップ・ソフトウエアにするつもりであると発表した。

 122.IBM PC Company はMicrosoftとWindows 95のライセンス交渉を1995年2月下旬に開始し、最初の2ヶ月間は、交渉はスムースに進んだ。しかし、IBMがLotusの買収を発表した後は、Microsoftの交渉者は、電話に返事しなかったり、ライセンス草案の返事に遅れたりして、会議をキャンセルし始めた。1995年7月20日、IBMが自社のPCにSmartSuiteをプレインストールすることを発表した3日後、あるMicrosoftの役員はWindows 95に関する交渉を終了することを伝えた。MicrosoftはWindows 95の「golden master」コードのリリースも拒否した。

 123.IBMの役員たちは既に全ての主要な競合会社がWindows 95のライセンスにサインしていると推測した。IBMの役員たちは継続中の監査からライセンス交渉を分離することをMicrosoftに嘆願し、将来の監査でIBMが過小報告しいることが発見されたらペナルティと利息を支払うという条件をWindows 95ライセンス契約に加えることも提案した。

 124.1995年8月9日、IBM PC Companyの上級役員はRedmondにOEMへの販売の責任者のJoachim Kempinに合いに行った。Kempinは、IBMがSmartSuiteをPCにバンドルしないよう提案し、IBMのSmartSuiteのバンドルはMicrosoftがOfficeから得る利ざやを脅かしていると説明した。IBMの役員はKempinの提案を拒絶した。

 125.IBMはSmartSuiteの放棄に同意せず、結局、Microsoftは、1995年8月24日のMicrosoftの公式発売イベントのスタートの15分前まで、Windows 95のプレインストールのライセンスをIBMに許諾しなかった。

 126.Microsoftは IBM PC Companyを他の主要なOEMよりも不利に扱い続けた。1996年1月5日、Kempinは書簡を送り、IBMのソフトウエア部門がMicrosoftのビジネスの核となる製品と競合しない場合に限り、より親密でより協力的な関係を享受することができると説明した。

 127.Kempinが1996年8月に説明したように、MicrosoftはIBMがSmartSuiteと共に販売するPCシステムを推奨するプレスリリースを提供するのを拒絶した。その後、MicrosoftはMicrosoftのEncartaの代わりにWorld Book electronic encyclopediaと共に販売するIBM PCもカバーするようにルールを拡張した。

 128.また、Microsoftは、Compaq、Hewlett-Packard、及びDECのようなOEMのために行っている、いわゆる「特別権能プログラム<enabling programs>」にIBM PC Company がアクセスするのを拒否した。IBMが排除されたことで、消費者はMicrosoftのソフトウエアがIBMのPCで最適に働くかどうか疑問を感じるよう導かれた。

 129.Microsoftの役員たちはしつこかった。Microsoftの代表たちがIBMに与えた最初の誘引剤は、Compaqや他のOEMが享受しているWindowsのソースコードへの早期のアクセスである。IBMはこの早期のアクセスをMicrosoftのオペレーティングシステム製品とハードウエアの互換性を確保するために望んだ。次に、Microsoftは、Microsoftが課しているハードウエア要件に従っていることをIBMが自社で認証できることを提案した。両方の恩恵に関して、Microsoftの代表たちは、Microsoftの利益に脅威を与えるソフトウエアをPCにのせることを停止する条件で、IBMに与えると説明した。

 130.1990年代の後半、IBMは(Gatewayと共に)、他の主要なOEM(たとえば、Compaq、Dell、及びHewlett-Packard)よりもWindowsにかなり多くを支払った。

 131.最後には、Microsoftは、IBM担当のMicrosoftのOEM取引マネージャーの数を1/3に減少させることによって、フラストレーションをIBMに知らせた。

 132.要するに、1994年から1997年にかけて、Microsoftは継続的にIBMに対して、Microsoftと競合するソフトウエア製品のサポートを減らすように、圧力をかけ続け、MicrosoftはIntel互換PCオペレーティングシステム・マーケットにおける独占力をIBMを罰するために行使した。とにかく、MicrosoftのNetscape、IBM、Intel、Apple、及びRealNetworksとの関係はどれも、Microsoftに脅威を与えるプロジェクトを放棄させるように、また、抵抗する会社を懲罰するために、独占力を行使するMicrosoftのビジネス戦略を明らかにしている。
 
D.競合するブラウザの開発
 133.NetscapeがNavigatorの開発を放棄しないことが明らかになったとき、Microsoftは開発者がNavigatorのAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)に依存するアプリケーションを書かないようにする努力に集中した。MicrosoftはInternet Explorerのシェアを最大化することを開始した。

 134.Gatesが1995年5月の「インターネット大津波」メモランダムでMicrosoftの役員に書いたように、「第一に我々はきちんとしたクライアントを提供する必要がある」、しかし、「これだけではNetscapeから人々を切り替えさせることはできない」。平均的な消費者がNavigatorと同じようにInternet Explorerで快適にブラウジングできることを確実にしたら、Microsoftは消費者がNetscapeの代わりにInternet Explorerを使用するように誘導する他の仕掛けを使用することができた。

 135.1995年から、Microsoftは毎年1億ドルをInternet Explorerの開発のために費やした。会社の経営陣はInternet Explorerに従事する従業員の数を1995年の早い時期の5〜6名から、1999年には1000名以上に増加させた。1995年7月にリリースされたInternet Explorerの最初のバージョンはNetscapeの当時のブラウザ製品より劣っていたが、Microsoftの投資はついに技術的な成果を生み始めた。1996年遅くInternet Explorer 3.0をリリースしたときには、批評家は広範囲に改善された品質を賞賛し、何人かはNavigatorと同様であると評価した。1997年遅くにInternet Explorer 4.0が登場したときには、より優れた製品であるとした批評家の数がNavigatorを選んだ者とほぼ同数となった。

E.Internet Explorerの無料化と利用シェア増加を促進した企業への報酬
 136.Microsoftは無料にすることによってブラウザの製品シェアを増加させようとした。また、Microsoftは、Internet Explorerの配布に貢献する企業に、価値あるものを与えた。

 137.Microsoftは1995年の中頃、NetscapeがNavigatorのライセンス料を消費者から取っており、Netscapeはブラウザのライセンスを販売することによって収入のかなりの部分を得ていることを知っていた。Internet Explorerの販売によってかなりの額の収入を得る機会があるにもかかわらず、Microsoftの上級役員たちはInternet Explorerの利用シェアの獲得という戦略的なゴールを目指して、ブラウザを無料にすることを決定した。

 139.MicrosoftはIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)、ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)、Appleに対してInternet Explorerの配布のライセンス料を課すことができたにもかかわらず、Microsoftは関連した技術及び技術サポートと共に無料でライセンスした。MicrosoftはIAP及びICP(インターネット・コンテンツ・プロバイダ)にWindowsの中で彼らのサービスやコンテンツを推奨する代償としてかなりの額の金銭を課すことができたにもかかわらず、MicrosoftはWindowsの価値あるデスクトップ上の「地所」と、Internet Explorerの配布、Navigatorの配布禁止、及びMicrosoftのインターネット技術に依存するウエブサイトを開発者に書かせる技術の使用とを、物々交換した。また、Microsoftは、利用者のインストールされた基盤をNavigatorからInternet Explorerへ変更させるためのIAPの努力と引き替えに、ユーザーがWindowsのインターネット参照サーバーを使用してサインアップするときに、IAPが支払う参照料を低減させた。たとえば、MicrosoftはAOLと契約を結び、AOLがNavigatorの代わりにInternet Explorerを使うように変えた利用者についてMicrosoftがAOLに実際に報奨金を支払った。 OEMに関しては、Microsoftは、Internet Explorerの推奨、及び、いくつかのケースではNavigatorの推奨の放棄、に合意したOEMに対して共同マーケッティング基金の支出及びWindowsのロイヤリティの減額を行った。

 141.仮に、Microsoftがアプリケーション参入障壁を守るためのキーとしてブラウザの利用シェアを認識していなかったとすれば、MicrosoftがInternet Explorerの利用シェアを増加させるために他の企業に協力するためのかなりの付加的な費用を費やすことはなかったはずである。この投資はアプリケーション参入障壁を保護する限りにおいてのみ有益である。Windows上でのNavigatorの使用を制限するためにMicrosoftの費用をかけた努力はWindowsの需要のためのものではない。さらに、AppleのPCシステムにInternet ExplorerをプレインストールするようAppleを誘導したMicrosoftの費用のかかる努力がWindowsの需要を増加させるとは考えられない。

 142.Microsoftの役員たちが互いにやりとりした無数の連絡が、ブラウザの利用を獲得するのは、収入を得るためではなく、NetscapeのNavigatorとSunのJavaのインプリメンテーションにより脅威にさらされたアプリケーション参入障壁を保護するためであることを示している。たとえば、1996年4月、Microsoftの副社長Brad Chaseは販売担当役員たちに、Internet Explorerが「収入を得る製品ではない」としても、君たちは「BillGと同じくらいブラウザのシェアについて悩む」べきだ、なぜならば、「もし、我々がユーザーのインストールされた基盤を持たないならば、インターネット・プラットフォーム戦争に負けるからだ、もし、君たちのお客にNetscape Navigatorが配備されてしまえば、デスクトップ上のリーダーシップを失うのだ」と述べた。
  
F.主要な配布チャネルからのNavigatorの排除
 143.MicrosoftがInternet Explorerのシェアを増加させNavigatorのシェアを減少させるために、Microsoftの役員たちはNavigatorの配布チャネルへのアクセスを制限する必要があると信じていた。

1.OEM及びIAPチャネルの重要性
 144.MicrosoftはOEM(オリジナル機器製造業者)によるプレインストール及びIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)のクライアント・ソフトウエアにバンドルすることがブラウザの最も効率的な配布チャネルであると認識した。

 148.MicrosoftはOEMとIAPがInternet Explorerをバンドルし、Navigatorを除外することを確実にしようとした。

2.OEMチャネルからのNavigatorの排除
a.Internet ExplorerのWindowsへの結合
i.ウエブブラウザの独立した製品としての地位
 150.用語「ウエブブラウザ」の意味は明確ではないが、ウエブブラウザがユーザーに提供する機能に関してソフトウエア業界のコンセンサスがある。特に、ウエブブラウザはエンドユーザーにウエブ上のリソースを選択し、検索し、知覚するための能力を提供する。また、これらの機能がオペレーティングシステムによって提供される機能とは異なっているというソフトウエア業界のコンセンサスがある。

 151.多くの消費者はオペレーティングシステムの選択とウエブブラウザの選択を別々にしたいと望んでいる。特に企業消費者はブラウザとオペレーティングシステムが別であることを要求する、なぜなら、異なったオペレーティングシステムをとおして同一のブラウザで統一することを好むからである。ブラウザを統一することによって生産性の向上、教育・サポート費用の低減を図ることができ、ウエブアクセス管理におけるセキュリティとプライバシーについて首尾一貫したポリシーを持つことができるのである。

 152.さらに、オペレーティングシステムを必要とする多くの消費者(企業消費者のかなりのパーセントを含む)はブラウザを全く必要としない。たとえば、ウエブをブラウズすることを望まない消費者は、ブラウザがハードディスクの記憶容量を使い、システムのパフォーマンスを低下させるのを望まない。また、従業員がインターネットにアクセスするのを禁止するのに最も効率的な解決策はブラウザなしでPCシステムを使用することである。

 153.多くのオペレーティングシステムでは、ブラウザなしのオペレーティングシステムのライセンスを選択できる。ブラウザをオペレーティングシステムにバンドルしているベンダーは、OEM、付加価値小売業者及び消費者にブラウザをインストールしないか、ブラウザがプリンストールされている場合はアンインストールできるようにしている。Microsoftは唯一このような柔軟性を提供していないが、Internet ExplorerをWindowsとは別にいくつかのチャネルで配布している。

 154.結論として、消費者の好み及びソフトウエア会社の行動が、ウエブブラウザ及びオペレーティングシステムが別個の製品であることを証明している。

ii.Microsoftの行為
 155.他のオペレーティングシステムのベンダーとは対照的に、Microsoftはブラウザなしのオペレーティングシステムのライセンスを拒否し、OEM及びエンドユーザーがブラウザを取り除くことを、最初は契約によって、後には技術的に、制限した。内部文書及びライセンス慣行からみて、競争上の目的ではなく、Navigatorがアプリケーション参入障壁を弱めるのを防ぐために、MicrosoftがInternet ExplorerをWindowsに結合させる決定をしたことは明らかである。

 160.Microsoftの役員たちは、OEMに課した契約上の制限では、Navigatorの利用シェアを逆転させるには十分ではないと信じ、1995年遅くか1996年早くに、MicrosoftはWindows 95とInternet Explorerを技術的により強固に結合させることを始めた。1995年末にBrad Chaseが上司に書いたように、「我々はInternet Explorerをシェルに結合する、その結果、他のブラウザの動作はガタガタになる。」

 164.Windows 95 OSR 2から、MicrosoftはInternet Explorerで使用されるルーチンの多く(ブラウザ特有のルーチンを含む)を32ビットWindows API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)をサポートするファイルの中に配置した。この行為のMicrosoftの主な動機は、ブラウザ特有のルーチンを含むファイルを削除すると、オペレーティングシステムに必須のルーチンも削除され、Windows 95が不具になることを確実にすることであった。

 165.ユーザーは、Windows 95の後継バージョンであるOSR 2から、ブラウザ機能を提供するルーチンの全てを取り除くことはできないが、Microsoftは「追加と削除」パネルを使用してInternet Explorerをアンインストールする機能をまだ提供していた。

 166.1996年遅く、Microsoftの上級役員たちはMicrosoftがInternet ExplorerをWindowsに十分強固に結合していないことについて議論を始めた。最初、1996年12月にJames AllchinはPaul Maritzに次のように書いた:

私には、どうしてIEが勝つのかわからない。現在の方針はNetscapeがパッケージし製品を賢くしている全てを単にコピーしているだけだ。IEがNavigator/Communicatorと同じように良いとしよう。誰が勝つ? 一方は80%のマーケットシェア。たぶん、タダであることは我々に有利だが、一度、人々がある製品に慣れてしまうと、それを変えるのは難しい。Officeを考えてみろ。我々のOfficeは他社のよりも値段が高いがそれでも我々は勝っている。私の結論は我々はWindowsをもっとテコとして使用しなければならないというものだ。IEをWindowsへのクロスプラットフォームのアドオンのように扱えば我々の最大の強み − Windowsのマーケットシェア − を失うことになる。我々は、技術的にもっとWindowsをテコとして使用する道を見つけだすことを一つの横断的なチームに専念させるべきだ、・・・、我々は一つの統合されたソリューション − 我々の強さ − について考えるべきだ。
1997年1月2日、AllchinはMaritzへのもう一つのメールで追い打ちをかけた:
ブラウザのシェアが仕事の1番目であることは君はわかっている、・・・、我々は今の道では勝てるような気がしない。我々はWindowsをテコにしていない、我々はNetscapeをコピーして、IEをプラットフォームにしようとしている。我々は我々の強みを使っていない、我々はWindowsのインストールされた基盤をもっている、そして、Windowsのための力強いOEM出荷チャネルをもっている。ブラウザとブラウザを競争させることは難しい、なぜなら、Netscapeは80%のマーケットシェアを持っているのに、我々は<20%だ、・・・、我々はWindows − 彼らがもっていないもの − を使用しなければならないと私は確信している、・・・、我々はブラウザの特徴で競争的でなければならないが、それ以上のもの − Windows − が必要なんだ。Windowsが莫大な財産であることに君が合意するなら、我々がIEとWindowsを一緒にする道を見つけることに十分な投資をしていないということが当然にでてくる。これは君がやるしかない、・・・、Memphis[Windows 98のMicrosoftのコードネーム]は単なるアップグレードでなけらばならない、しかし、最も重要なことは、OEMのPCシステム上でNetscapeがチャンスを得ることが決してないように、それがOEMの出荷におけるキラーでなければならないのだ。


 167.MaritzはAllchinの2番目のメッセージに同意して、「我々はWindowsの統合を基本的な戦略にしなければならない」と返信した。

 168.MaritzはAllchinが正しいと決めると、彼はInternet Explorer 4.0が強固に結合されるまで、Windows 98のリリースを遅らせることを関係する社員に命じる必要があった。1997年1月7日、ある役員が「クリスマスのOEMのショーウインドに並ばないとしても、memphisはIE4を待つ」という点について確認を求めたときに、Maritzはそのとおりと答え、次のように説明した、

主な理由は・・・ネスケ<Nscp>と戦うことだ、我々はブラウザを「消え失せる」場所に置き、Windowsにより深く結合しなければならない。これを伝染させる強力な方法はWindowsの「新リリース」であり、それで大きな取引をすることだ、・・・、IE統合がMemphisの最もやらなければならない特徴だ。
それゆえ、Microsoftは、アプリケーション参入障壁を保護するために、消費者に有益な新しいハードウエア装置のサポートを含む多くの特徴のデビューを遅らせたのである。

 169.1997年2月下旬、MicrosoftのChristian Wildfeuerは次のように書いた:

魅力的な洞察はこれだ:[ユーザーを]Navigatorから転換させるために、我々はユーザーをMemphisにアップグレードさせる。・・・、IE 4だけの長所でブラウザのマーケットシェアの向上は難しいことは明らかだと思う。人々にNavigatorの代わりにIEを使わせるためにはOSの資産をテコとして使うのが重要だ。
4月、Microsoftの調査担当者Kumar Mehtaは、「我々が行った全てのIEリサーチによれば、IEのバンドルなしでmemphisをリリースするのは間違いであるという感じ」をある同僚と共有していた。

 170.Microsoftの技術スタッフはAllchinの「Windows統合」戦略を二つの方法でインプリメントした。第一は、彼らはWindows 98からInternet Explorerをアンインストールする機能をユーザーに提供しなかった。アンインストールする方法を提供してほしいというGatewayからの要望にもかかわらず、Microsoftはこれを行った。

 171.第二は、ある状況においてユーザーのデフォルト・ブラウザの選択を無効にすることであった。ユーザーに出荷されるとき、Windows 98はInternet Explorerがデフォルト・ブラウザとして設定してある。Windows 98はユーザーにデフォルト・ブラウザを選択する能力を提供してはいるが、通常の意味の「デフォルト・ブラウザ」としてではない。ユーザーがInternet Explorer以外のブラウザを選択するときには、Windows 98は、ユーザーからみて全く予期しない多くの状況の下で、ユーザーにInternet Explorerを使用することを要求する。その結果、Internet Explorer以外のブラウザをデフォルトに選択するユーザーはWindows 98を普通に使用するときに、かなりの不安と混乱に直面する。

 173.Microsoftの行為はウエブブラウザを全く使用しない消費者にも被害を与える。彼らは、オペレーティングシステムのルーチンのファイルにブラウザ特有のルーチンをまき散らさない場合よりも、遅いオペレーティングシステムに甘んじなければならない。これらには、パフォーマンスの低下、互換性不良のリスク、バグの導入が含まれる。

 174.MicrosoftはInternet Explorerを使いたい消費者にさえ被害を与えた。ブラウザ特有のルーチンをオペレーティングシステムのルーチンに混合する限りにおいて、Microsoftはオペレーティングシステムの安定性及びセキュリティを不当に危険にさらした。特に、ブラウザのクラッシュが全体のシステムのクラッシュを引き起こす可能性を増大させ、また、ウイルスがInternet Explorerを経由してシステムの非ブラウザ部分に感染する可能性を増大させた。

iii.根拠の欠如
 175.技術上の理由からInternet Explorer 1.0、2.0なしのWindows 95のライセンスをMicrosoftが拒否することを説明することはでない。MicrosoftがWindows 95のOEMバージョンに含ませたInternet Explorer 1.0、2.0のバージョンは別のディスクで供給される分離可能なプログラムファイルであった。さらに、インストール後でも、「追加/削除」パネルを使ってInternet Explorer 1.0、2.0を簡単に取り除く方法もあった。このことがMicrosoftの拒否に技術上の根拠が欠如していることを証明している。

 176.同様に、Internet Explorer 3.0、4.0なしのWindows 95のライセンスをMicrosoftがOEMに対して拒否することを正当化する技術上の根拠はない。

 177.同様に、ブラウザなしのWindows 98の消費者の需要を拒否することを正当化する技術上の根拠はない。ブラウザ機能を持たないWindows 98をMicrosoftは簡単に提供できたはずである。Windows 98の非ブラウザ部分に悪影響なしにWindows 98からブラウザ機能を取り除く余地が残されている可能性がある。実際、Felten教授のプロトタイプ削除プログラムの修正バージョンをWindows 98がインストールされたコンピュータで走らせると、まさにこの結果が得られる。

 178.Feltenは、主尋問で、彼のプロトタイプ削除プログラムが何を行っているかについて十分な技術的な証言を行った。Feltenのプログラムの修正バージョンをWindows 98を有するコンピュータ上で走らせると、Feltenが当時知っていたWindows 98でブラウザを始動させる21の方法のいずれを用いても、ブラウザは始動しない。

 179.James Allchinはビデオテープを用いて、プロトタイプ削除プログラムを走らせた後でも、Windowsのレジストリ・データベースに新しいエントリを手動で追加することによって、Internet Explorerの機能を作動させることができることを示した。Feltenの反証尋問の時に、Microsoftの弁護士はWindowsアップデートを実行した後、「コントロール」と「N」キーを同時に押すと、Internet Explorerは作動させることができることを示した。後者は、Windows 98 PCシステム上にEncompassシェルブラウザと他のアプリケーションがインストールされていたから、信頼のおけるテストとは言い難い。

 180.また、AllchinはFeltenのプログラムがWindows 98のパフォーマンスの低下を招くことを示そうと試みた。しかし、これらのデモンストレーションはいくつかのサードパーティのプログラムがインストールされ、ダイアルアップでインターネットに接続されているPC上で実行された。

 181.Feltenのプログラムの修正バージョンではWindows 98のパフォーマンスも安定性も全く損なわれなかった。反対に、Internet Explorerの削除により、Windows 98の全体的なスピードが僅かに向上した。

 182.自社製品についての特別な知識をもってすれば、MicrosoftがFeltenのプロトタイプ削除プログラムを改善したインプリメンテーションを作成することは容易である。特に、Microsoftは共有したファイルから分離することができるブラウザ特有のコードを簡単に特定することができ、それによってオペレーティングシステムのメモリ及びハードディスク要件を低減でき、Feltenによってなされた以上のパフォーマンスの改善を得ることができる。

 183.MicrosoftはFeltenのプロトタイプ削除プログラムは削除してるのではなく、「隠す」だけであると主張する。

 184.Microsoftの意見によればFeltenのプログラムはハードディスク上のWindows 98の「足跡」を大幅に減少させてはいないが、これはこの問題とは関係がない。ソフトウエア・コードが何かの機能を提供するためには、そのコードはコンピュータのダイナミック・メモリにロードされ実行されなければならない。ソフトウエアをアンインストールするためには、問題のコードが実行されないようにすれば十分である。

 185.これがまさにFeltenのプロトタイプ・プログラムが行ったことである。実行されないコードはメモリにロードされないから、FeltenのプログラムはWindows 98に割り当てるメモリを約20%減少させることができる。

 186.抽象的、一般的な問題としては、多くの消費者が付加的な料金なしでWindowsオペレーティングシステムにブラウザ機能を入れたことにより利益を得るということができる。しかし、Internet ExplorerなしのWindowsのバージョンを拒否すること、又はWindowsからのInternet Explorerのアンインストールを拒否することによって、利益を受ける消費者はいない。

 187.Feltenのプログラムが証明したように、Microsoftがブラウザ機能のないWindows 98を提供することは実行可能である。

 188.Microsoftは「統合された」Internet Explorerブラウザ機能をサービスパック・アップグレードとして提供することができる。この方法によって、現在のWindows 98の全ての機能を望む消費者は、ブラウザなしのオペレーティングシステム・パッケージとサービスパック・アップグレードを入手し、それらを一緒にインストールすることによって、それを得ることができる。

 189.Microsoftは、サービスパックはオペレーティングシステムのファイルの多くを置換及び付加するから必然的にオペレーティングシステムの一部であるとみなされると主張する。この主張は誤りである。アプリケーションであるMicrosoft Wordも、ユーティリティとアプリケーションの組み合わせであるNorton Utilitiesも、両方とも、Windows のファイルを置換及び追加するが、それによってオペレーティングシステムの一部になるわけではない。

 191.製品を別々に配布し、希望するOEM又は消費者自身に製品を結合させることによって、Microsoftは現在のWindows 98パッケージの全ての利益を消費者に提供することができるだろう。もし、消費者が本当にInternet ExplorerをバンドルしたWindowsを好むならば、消費者は強制されるのではなく、マーケットでそれを選択することができる。

 192.Windows 98はブラウザに関係しない利益、たとえば、Windows 98は新しいハードウエア技術及びデータフォーマットのサポートを含んでいる。Microsoftは、Internet Explorerを望まないがそれとは関係のない利益を得たいWindows ユーザーにInternet Explorerのライセンス、インストール、及び使用を強制している。

 193.オペレーティングシステムへのブラウザの結合はWindowsのプラットフォームの「完全性」を維持するために必要であるというMicrosoftの主張も同様に見かけ倒しである。第一に、Windows 95にInternet Explorerを結合したMicrosoftの最初の決定を説明できない、なぜなら、Internet Explorer 1.0、2.0はAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を有しなかったからである。第二に、MicrosoftがOEMに対してInternet Explorerをアンインストールするオプションを与えないことを説明できない、なぜなら、APIはInternet Explorerがアンインストールされてもシステム上に残るからである。第三に、ブラウザ関連APIをインストールするかどうかの選択をOEMに与えるとWindows のプラットフォームがバラバラになるというMicrosoftの主張は説得力がない、なぜなら、OEMは競争的なマーケットで営業しており、消費者が望むアプリケーションが必要とするAPIを含ませる強いインセンティブがあるからである。第四に、一揃いのAPIのライセンスを強要することによる潜在的な利益があったとしても、本件においては根拠にならない、なぜなら、Microsoft自身が新しいAPIを含むアップデートによってプラットフォームをバラバラにしているからである。この現実に対応するために、ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)は、彼らのアプリケーションに必要なAPIを再配布している。Microsoft自身、Windows と別にアプリケーションを配布するときには、Internet Explorerと共に配布するAPIをバンドルしている。

 194.また、Microsoftは、「最良品種」インプリメンテーションを供給することによって、人気のあるオペレーティングシステムのベンダーは、消費者に利益を与えることができ、ソフトウエア・マーケットの効率を改善できると主張している。しかし、ブラウザなしのWindows 98の提供の拒否はそのようなことを目的にしてはいない。むしろ、イノベーションを破壊する目的と効果である。

 198.Microsoftが、「最良品種」ブラウザを供給するように運命づけられていることを示すものは何もない。

iv.ウエブブラウザ機能のマーケット
 201.ウエブ処理を容易にするソフトウエアの機能に対する消費者の需要、及びその需要に対するブラウザ・ベンダーの対応が、ウエブブラウザ機能のマーケットを作り出す。現在、一般的にウエブブラウザは有料ではライセンスされてはいないが、全てのウエブ処理は消費者にコストを課しており、Microsoftを含め全てのブラウザ・ベンダーは、彼らのブラウザ機能の利用の最大化に経済的な利害を有している。
   
b.Internet Explorerの即時利用手段の除去及びNavigatorのブート・シークエンスへの追加をOEMが行うことの防止
 202.1995年6月のInternet Explorer 1.0のリリース以来、MicrosoftはWindowsの全てのバージョンをInternet Explorerと共に配布してきた。その結果、OEM(オリジナル機器製造業者)はInternet ExplorerなしのWindows 95又はWindows 98のコピーをライセンスすることができなかった。ブラウザなしの(及びその分だけ割引した)WindowsのバージョンをOEMに提供することを拒否することは、OEMにInternet Explorerを購入する(及び支払う)ことを強制するが、それにもかかわらず、断固としたOEMが消費者に異なったブラウザを提供するのを防ぐことはできなかった。MicrosoftがOEMによるアンインストールの拒否を追加してさえ、工夫に富むOEMが消費者に他のブラウザを提供することを完全に排除することはできなかった。たとえば、大手OEMは十分な専門技術を有しており、消費者にブラウザの選択を提示することができた。もし、ユーザーがNavigatorを選択すると、システムは(実際のアンインストールではなく)デスクトップ画面からInternet Explorerをアクセスする手段を自動的に削除したのである。

 203.Microsoftは、戦略的なゴールにOEMを協力させるために、Windowsのデスクトップあるいは「スマート」メニューからMicrosoftが選択したアイコン及びプログラム・エントリを取り除くOEMに対して、Windowsのライセンスを終了すると脅した。MicrosoftはWindowsの「ブート」シークエンスにサードパーティのソフトウエアを入れたOEMも同様に罰した。これらの禁止はOEMとMicrosoftの関係を気むずかしいものとし、Windows PCシステムをユーザーにより満足できるものとするイノベーションを困難にした。

 204.Microsoftの最初のWindows 95のライセンスは、Microsoftの「OEMプレインストール・キット」又は「OPK」によって明確に許可されていない修正をWindows製品にインプリメントする許可を、OEMに与えなかったが、ある種のOEMに対してはOPKに明記されていないある程度の修正を許可するのがMicrosoftの慣行であった。しかし、1995年夏にOEMがInternet Explorerアイコンの除去を要求し始めたとき、Microsoftは首尾一貫して断固として拒否した。Compaqが1996年の前半に学んだように、Microsoftは最も緊密なOEM盟友に対してさえこの禁則を強制する用意ができていた。

 205.1995年8月、CompaqはAOL(America Online)と契約を結んだ。その付属文書には、CompaqはそのPCのデスクトップ上にAOLのアイコンを置き、他のOLS(オンラインサービス)のアイコンは置かないことが規定されていた。この義務に従い、Compaqは1995年遅くか1996年早くに、WindowsデスクトップからMSN(Microsoft Network)のアイコンを除去し、AOLのアイコンを追加したPresario PCの出荷を始めた。同時に、CompaqはInternet Explorerのアイコンを取り除き、Spry ISPとそれがバンドルするブラウザ製品つまりNavigator の両方を意味するアイコンに置き換えた。Internet Explorerのアイコンを取り除いたのは初心者を混乱させたくなかったからである。

 206.Microsoftは、Compaqの計画を知ったとき、MSNとInternet Explorerのアイコンの除去はOPKの違反であるとCompaqに伝えた。一方、AOLは、Spryのアイコンは契約違反であると、Compaqに伝えた。MicrosoftとAOLの抗議にもかかわらず、CompaqはPresarioのデスクトップを元に戻すのを拒否した。数ヶ月後の1996年5月31日、MicrosoftはCompaqに書簡を送り、MSNとInternet Explorerのアイコンを元の位置に戻さなければ、Windows 95のライセンスを終了するつもりであると伝えた。Compaqの役員たちはWindowsのライセンスなしでは事業を続けられないと考え、6月にMSNとInternet Explorerのアイコンを元に戻した。

 207.1996年9月、AOLがCompaqに契約終了の公式通知を送った後、CompaqはSpry/Navigatorアイコンを削除した。

 208.Compaqとの衝突で、Microsoftは、WindowsのデスクトップからMicrosoftのインターネット関連アイコンを取り除くことを禁止するために、最大手のOEMパートナーへの全てのWindowsの販売を失う瀬戸際に行く用意があることを証明した。

 209.もし、Microsoftのアイコンとプログラム・エントリを除去することに対する禁止だけであれば、まだNavigatorをひいきするOEMは彼らのPCのWindowsデスクトップでNavigatorを推奨することができた。Windows 95のリリースと共に、大手OEM数社はWindowsのブート・シークエンスのカスタマイズを始め、その結果、ユーザーが最初に新しいPCのスイッチを入れると、Windowsデスクトップが表示される前に、OEMが設計したチュートリアル及び登録プログラムが作動した。

 210.非Microsoftソフトウエア及びサービスの推奨はOEMの前置プログラムの主要な目的ではなかった。むしろ、主要な目的は、特に初心者のユーザーが新しいPCシステムをセットアップし使用法を学ぶ過程を、より簡単により混乱しないようにすることであった。そのようにすることによって、OEMはシステムの価値を高め、製品の返品とサポート電話の両方を最小化させたのである。ブート・シークエンスにプログラムを挿入する第二の目的は、製品を差別化することであった。最後に、OEMはIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)及びISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)からブート・シークエンスで彼らのサービスやソフトウエアを推奨することの代償として報奨金を集めることであった。

 211.チュートリアル及びサインアップ・プログラムに加えて、数社の大手OEMは新しいPCシステムの最初のブート・シークエンスの終わりに自動的に実行するプログラムを開発した。これらのプログラムはWindowsデスクトップをOEMによって設計されたユーザーインターフェース又はNavigatorのユーザーインターフェースに置き換えた。自動ロード代替ユーザーインターフェースをインプリメントしたOEMがそのようにしたのは、多くのユーザー、特に初心者が代替インターフェースの方がWindowsデスクトップと比較して、より複雑でなく、より混乱しにくいと考えたからである。

 212.1996年1月6日、GatesはOEM担当役員のKempinに次のように書いた:「ブラウザのシェアで勝つことは我々にとって非常に非常に重要なゴールだ。明らかに、多くのOEMが、MSNと我々のブラウザよりも遙かに目立つように、非Microsoftブラウザをバンドルし、インターネット・サービス・プロバイダと一緒に表示している」。3週間以内に、Kempinは上司への半期OEM販売レポートを作成した。彼はその中でこれまで半年間見逃してきた権益として「スタートアップ画面、MSN及びIEの配置の管理」を指摘した。Kempinの意見の中でCompaqとの進行中の紛争が目立っているが、彼はブートプロセスに対する管理の確立がMSNとInternet Explorerの優先的なポジショニングに必要であることも認識していた。

 213.OEMのカスタマイズの慣行を妨害するために、1996年春、MicrosoftはWindows 95デスクトップ及びブート・シークエンスを修正する能力の制限をOEMに強制し始めた。制限は次の5つである。第一は、MicrosoftがWindowsのデスクトップ上に置いたアイコン、フォルダ、「スタート」メニューを取り除くことの禁止。第二は、最初のWindowsのブート・シークエンスの修正の禁止。第三は、最初のWindowsブート・シークエンスの終了後に自動的に立ち上がるプログラムをインストールすることの禁止。第四は、Microsoftが供給したアイコンと類似したサイズと形を持つアイコン又はフォルダをWindowsデスクトップに追加することの禁止。最後に、Microsoftが後にInternet Explorer 4.0の一部としてアクティブ・デスクトップをリリースしたときに、サードパーティのブランドを表示するためにアクティブ・デスクトップを使用してはならないという制限が追加された。

 214.総計でIntel互換PCの販売の90%を超えるOEM数社は新しい制限がPCシステムをより複雑にし、より混乱させ、消費者により受け入れられがたいと思った。また、この規制により返品が増えサポートコストが増加すると予想した。これらのOEMは既にWindowsブート・シークエンス中に置くチュートリアル・プログラム、登録プログラム、及び/又は自動ロードされるグラフィカルインターフェースの開発とインプリメントに数百万ドルを費やしており、Microsoftの方針で大部分が無駄になることを嘆いた。Gateway、Hewlett-Packard、及びIBMは反対であることを伝え、Microsoftがその制限を解除するよう要求した。1997年5月に、Hewlett-Packardの研究開発部長がMicrosoftに送った書簡が大手のOEMのリアクションを象徴している。彼は次のように書いた:

 OEMの全てのブート・シークエンス及びオートスタート・プログラムの除去は小売りPCのHP-Pavilion電話に重大でコストのかかる問題を引き起こしています。
 我々のデータ(97.3.10現在)によれば、Windows 95についての電話が、全体の消費者サポート電話に対するパーセントで、10%増加しています・・・
 我々の登録率も80%台の真ん中あたりから60%台の低い方へ落ちました。
 また、どのOEMよりも低い(Appleさえよりも低い)我々の返品率が他のOEMベンダーと同程度のレベルになったと、流通パートナーは言っています。我々は消費者が求める満足とは逆方向に歩んでおり、重大な問題です。
 これらの三つのデータから、Microsoftが昨年の秋に出した指令によって我々が損害を受けていることは明らかです・・・
 消費者からみると、我々が産業と消費者を傷つけていることになります。PCは消費者が多額の金額を費やす驚くべきまた奇妙な技術のかたまりです。消費者が購入して箱から出すときの経験を劇的に改善することがPC供給者にとって決定的に重要です。我々のデータと同様に流通からのフィードバックからも我々が悪い方向へ進んでいることがわかります。これが、消費者の不満を引き起こし、複雑な電話サポート、必要のない取り替えのための消費者宅への訪問、最後には製品の返品の原因となっています。その多くは普通のユーザーにとってあまりにも複雑な製品に対するユーザーの誤解です・・・
 我々の消費者は我々の製品に対する不満をHPが説明する責任があると考えます。我々が製品の返品のコストを負担します。我々の消費者の技術サポートのコストは、貴社の製品によって引き起こされた品質の欠如あるいは混乱に関係した33%の電話を含めて、我々が責任を引き受けています。そして、最終的には、小売りPCマーケットにおける我々の成功、失敗の責任を我々が取ります。
 我々は我々のシステムをどのようにエンドユーザーに提供するのかを決める能力を持っていなければなりません。
 もし、我々が他の供給者を選択できれば、この領域における貴社の行動からすれば、我々は供給者として貴社を選択しないだろうと断言できます。
 貴社がこの決定を見直し、この受け入れがたい方針の変更を強く求めます。
 215.OEMからのこのような反対に直面してさえ、Microsoftは大部分の制限をやわらげることを拒否した。しかし、MicrosoftはHewlett-Packardと他のOEMに、各社のユーザーインターフェースをMicrosoftの要件に従わせるために必要な仕事の代償として、Windowsのロイヤリティ料金を割り引いた。Microsoftの要求が高コストであるにもかかわらず、OEMは、Windowsの代わりPCにプレインストールするものがないことを認識していたので、制限に従った。

 216.Microsoftの制限はNavigatorをプレインストールするコストを引き上げ、いくつかのOEMについては、Navigatorのプレインストールを思いとどまらせるに十分であった。他のOEMの場合は、次のセクションで検討するように、Microsoftがさらに圧力をかけた後に、Navigatorのプレインストールを行わないことを決定した。

 217.ライセンス契約では、MicrosoftはOEMに対して、Navigatorを含むプログラムをプレインストールし、アイコンを配置することを禁止したことは一度もなかった。しかし、Internet ExplorerとMSNのアイコンが存在する以上、Navigatorのアイコンの追加は初心者の混乱を招き、サポート電話と返品を増加させる。Microsoftは、Navigatorをプレインストールしないように説得する時に、まさにこの点をOEMに理解させた。

 218.Windows 98のライセンスはOEMがPCのキーボード上にNavigatorを利用するサイトにユーザーを直接導くボタンを置くことを禁止してはいないが、そのようなボタンを設けることはOEMにとってコスト高となる。

 219.1998年の春、Microsoftは徐々に制限の緩和を始めた。1998年5月下旬か6月上旬に、Microsoftは7社の大手OEMに対して、Windows 98のブート・シークエンスに各社の登録及びインターネット・サインアップ・プログラムを挿入する特典を与えることを伝えた。

 220.Microsoftが柔軟になったのは、制限が1年以上続いた後であり、重要なIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)にInternet Explorerを推奨するようにさせた後である。さらに、MicrosoftはOEMに対して、Internet Explorerで作られたOEMブランドのシェルブラウザを製品に含ませることを許可したが、Navigatorを含む非Microsoft製品の推奨を、一つの例外を別として、禁止し続けた。

 221.Microsoftは、制限はWindowsの品質と一貫性をOEMが傷つけるのを防ぐためであると主張する。しかし、Microsoftが禁じたOEMの修正は、Microsoftが現在許可している修正よりも、Windowsの品質又は一貫性を傷つけなかったあろう。Navigatorを犠牲としてInternet Explorerのシェアを最大化するする必要を感じていなかったら、Microsoftは、OEMと消費者に相当なコストを負わせ、Windowsの価値を下げ、主要なOEMとの関係を悪化させる制限を課すことはなかったであろう。

 222.Microsoftは、制限はMicrosoftが宣伝しているものを消費者が簡単にアクセスできるようにするためであると主張する。しかし、Microsoftのライセンス契約はOEMに製品サポートのコストを負担させているから、もし、消費者が難しいと感じたら、OEMのカスタマー・サービスに電話をかけるだろう。数回の電話でPCシステムの利益が帳消しになってしまうから、OEMは消費者が不平を言うようなものは全て嫌っている。したがって、もし、消費者があるアイコンを期待していることをマーケット・リサーチが示したとすれば、OEMがそれを取り去るはずはない。

 225.Microsoftの関心事が消費者の満足だけであったとしたら、Microsoftは、OEMが消費者を失望させる修正を行うのを防ぐために、自社のマーケット力ではなく、マーケットの力を信頼したであろう。

 226.Microsoftは、ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)がWindowsがハードウエアにかかわりなくアプリケーション開発のための同一のプラットフォームを提供している事実により利益を受けていると信じている。確かに、MicrosoftはOEMがライセンスに基づきAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を変えないことを保証する正当な利害を有している。しかしながら、この事実はMicrosoftの主張が正当であることに信憑性を与えない。第一に、Microsoft自身、Internet Explorerのアップデートをリリースすることによって同一だと言われているプラットフォームに不安定性を作り出している。そのため、ISVはアプリケーションと共にMicrosoftのインターネット関連APIを再配布する必要があることを知っている。そして、最も重要なことは、OEMが行おうとしていた修正はどれもWindows APIの削除又は変更をしていないという事実である。

 227.MicrosoftはOEMがAPIを変更してしまうことを懸念しているが、この懸念はOEMがWindows APIを修正することではない。むしろ、この懸念はOEMが追加的なAPIを露出するソフトウエアをプレインストールすることである。これらのプログラムがユーザーがPCの電源をONした時に自動的にロードされるとすると、開発者がそのプログラムが露出するAPIを利用するだろうことを、Microsoftは恐れているのである。したがって、Microsoftの本当の懸念はWindowsプラットフォームがバラバラにされることではなく、Microsoftが自動ロード・シェルを禁止する動機はOEMがアプリケーション参入障壁を弱めるミドルウエアをプレインストールことに対する恐れである。

 228.Windows 95、Windows 98は著作権で保護されているから、Microsoftはこれらの製品をOEMにライセンス契約に従って配布している。1998年の早い時期に、MicrosoftはOEMが上述の制限に従うことをライセンスの条件とした。ライセンス契約にこれらの制限を公式に含ませるかどうかにかかわりなく、Internet Explorerアイコンの除去及びNavigatorのブート・シークエンスへの追加は、Microsoftの創作的な表現を傷つけず、Windowsの開発における創意と投資の正当な代価を収穫する能力を妨害しない。

 229.最後に、MicrosoftがOEMに課している禁止は他のオペレーティングシステム・ベンダーよりも相当に制限的である。AppleはAppleがプレインストールしたアプリケーションを除去するのを小売業者に許可している。IBMはOEMライセンシーに対してOS/2全体を無効にすることを許している。その理由はこれらの会社はMicrosoftとは異なり参入障壁を保護する利益を有していないからである。

c.Internet Explorerを推奨しNavigatorをプレインストール又は推奨しないようにさせるOEMに対する圧力
 230.Microsoftの上級役員たちはMicrosoftが課した制約だけでは主要なOEMがNavigatorを排除してInternet Explorerを推奨することに確信が持てなかった。そのため、Microsoftは個々のOEMとの協力を確保する努力の中でインセンティブと脅しを使用した。

 231.MicrosoftはInternet Explorerをデフォルトにした大手OEMにWindowsのロイヤリティの減額を行った。MicrosoftはInternet Explorerの推奨活動と引き替えに数百万ドルの共同マーケッティング基金をOEMに与えることに合意した。

 232.1996年の早い時期に、Compaqは、MSNとInternet Explorerのアイコンを取り除き、インターネットに関してNetscapeと共に仕事をする意志を表明した。これに対して、Microsoftは不快感を示すために、DEC及びHewlett-Packardを含むCompaqのライバルと共同事業を始めた。

 233.CompaqがついにMSNとInternet Explorerのアイコンを元に戻すことに合意したのは、Microsoftとの特別な関係を取り戻す必要があると決定したからである。1997年2月、Compaqは、インターネットのサインアップを行ったユーザー毎にMicrosoftが報奨金を支払うことの代償として、Internet Explorerを排他的に推奨することを約束した。Compaqはほとんど全てのPCにNavigatorのプレインストールを中止した。

 234.降伏の代償として、MicrosoftはCompaqに対するWindowsの価格を他のOEMよりも安くし続けた。特に、1998年3月のCompaqとMicrosoftのオペレーティングシステム・ライセンスは2000年4月まで、Windows 95、Windows 98、及びWindows NT Workstationについて他のOEMよりも良い条件を保証している。

 236.Gateway は、Microsoftの圧力にもかかわらず、NavigatorをPCと共に出荷することの停止を拒否した。Microsoftは特別な脅しはしなかったが、Gatewayはライバルと比べてより高い価格を支払いつづけた。

 238.IBM PC CompanyはInternet Explorer 4.0を排他的に推奨することを拒否し、Navigatorをプレインストールし続けた。CompaqとIBMの対応の相違によって、Microsoftの二つの会社に対する扱いが際だって対照的なものとなったのである。

d.OEMチャネルにおけるMicrosoftの行為の効果
 239.Microsoftは重要なOEM配布チャネルからNavigatorを追放することにほぼ成功した。1996年以前、Navigatorは新しいPCのデスクトップ上で大きな増大する存在を享受していた。しかし、その後の2年間にわたって、Microsoftの行為により、OEMチャネルで配布されるNavigatorの数はわずかなものとなった。1998年1月までに、Kempinは上司に、60のOEMサブチャネル(15の主要なOEMがそれぞれ企業用デスクトップ、消費者/小企業、ノートブック、ワークステーションを提供している)のうち、Navigatorは僅かに4つで出荷しているだけです、と報告することができた。 さらに、Navigatorと共に出荷されるPCのほとんどは使用しにくい方法を取っている。たとえば、SonyはデスクトップではなくNavigatorをフォルダの中に置いており、Gatewayは別のCD−ROMで出荷している。1999年1月初めまでには、Navigatorがデスクトップ上に存在しているのはOEMが出荷するPCの僅かなパーセントだけとなっていた。

 241.要するに、Microsoftは効果的にブラウザの利用に導く二つの配布チャネルの一つをInternet Explorerのために確保すること − そして、Navigatorを排除すること − に成功した。NavigatorがいくつかのOEMチャネルへのアクセスを保持しているとしても、Microsoftは、Windowsデスクトップ上に目立つように表示されるInternet Explorerの配布形式と比較して、遙かに非効率的な配布形式となるように格下げさせた。Microsoftはこの偉業を相互に補完する戦術を使うことによって成し遂げた。第一に、MicrosoftはOEMにWindowsと共にInternet Explorerを利用するように強制し、取り除く又は覆い隠すことを禁じた − ユーザーのPCシステム上に目立つようにInternet Explorerの存在を確保すること及びNavigatorをプレインストールし推奨することに伴うコストを増大させる制限。第二に、さらにMicrosoftはNavigatorを推奨するコスト増大させる付加的な技術的な制限を課した。第三に、Microsoftは、排他的にInternet Explorerを推奨することに協力した見返りに価値ある報酬をOEMに提供した。最後に、Navigatorをプレインストールし推奨すると主張するOEMを罰すると脅した。OEMチャネルを獲得するMicrosoftのキャンペーンは成功したけれども、そのためにMicrosoftは莫大で雑多な投資を必要とした;また、Microsoftは、Windows PCをユーザーにより使いやすくし消費者により魅力的にするOEMによるイノベーションを押さえ込んだ。Microsoftが喜んでこの費用を払ったことが、Microsoftの政策決定者たちがNavigatorを犠牲としてInternet Explorerの利用シェアを最大化することがいかなる費用を払っても価値があると信じていたことを証明している。
    
3.IAPチャネルからのNavigatorの排除
 242.1995年遅くまでに、MicrosoftはIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)のクライアント・ソフトウエアとのバンドルが、ブラウザ配布の最も効率的な二つのチャネルのもう一つであることを認識した。しかし、その時までに、人気のあるIAPがNavigatorを使用していた。後からスタートすることを知って、MicrosoftはIAPチャネルをNetscapeからぶんどるために攻撃的な戦略を考え出した。

 244.Microsoftの最初の戦術は、利用者がMicrosoftのリストに掲載されたIAPに簡単にアクセスできるインターネット・サインアップ・プログラムをWindowsに含ませることであった。このリストに掲載する見返りに、Microsoftによれば、主要なIAPはInternet Explorerを配布、推奨し、非Microsoftブラウザの推奨を控え、非Microsoftブラウザを利用者の限られたパーセントだけに配布することを保証することに合意した。
 
 245.OLS(オンラインサービス)に対しては、Microsoftは「オンライン・サービス・フォルダ」を作成し、Windowsデスクトップ上にそのフォルダのアイコンを置いた。その見返りとして、再びMicrosoftによれば、主要なOLSは非Microsoftブラウザの配布を15%以下にすることを合意した。

 246.最後に、Microsoftは、既にNavigatorを使用している利用者をInternet Explorerを含む専用のアクセス・ソフトウエアにアップグレードさせるインセンティブをIAPに与えた。OLSに対しては、Microsoftは現金の報奨金を提供した。

 247.IAPがNavigatorを配布、推奨する自由に対する制限は、経済効率を達成するために必要な程度よりも、遙かに広範囲なものであった。IAPチャネルをつかむためのMicrosoftのキャンペーンは、消費者が製品の特徴に基づいてブラウザを選択する能力を著しく妨害した。

a.Internet Explorerアクセス・キット契約
 248.1996年9月、Microsoftは「Internet Explorerアクセス・キット」又は「IEAK」を発表した。Microsoftのサイトの該当するページを単にアクセスし、ライセンス契約を示すボックスをクリックするだけで、IAPはInternet Explorerを含んでいるIEAKをダウンロードできた。

 249.IEAKは、カスタマイズ及びインストールの容易さに加えて、ユーザーがインターネットにアクセスするときのデフォルト・ホームページを各IAPのサイトに設定することができた。これはIAPにとって重要なことであった。これに対して、NetscapeはIAPライセンシーがNavigatorのホームページをNetscapeのNetCenterポータル・サイトから変更することを拒否していた。

 250.NetscapeはIAPが配布するNavigatorの1コピーに対してIAPに対して15〜20ドルを課していた。一方、MicrosoftはInternet Explorerを含んでいるIEAKをIAPに対して無料でライセンスした。Netscapeは、9ヶ月遅れで、IEAKと同様なMission ControlをIAPが利用できるようにしたが、1,995ドルの一時払い金を課した。

 251.約2,500のIAPがIEAKのライセンス契約の電子コピーを行った。

 252.Internet Explorerの課金を放棄することによって、また、IEAKを相当なコストで開発し無料で提供することによって、Microsoftは重要なIAPチャネルをとおしてInternet Explorerの配布を増加させた。

b.参照サーバー契約
 253.1996年の夏の終わりに、Microsoftはインターネット接続ウィザード(「ICW」)をWindows 95 OSR 2に導入した。ユーザーがWindowsデスクトップ上のICWアイコンをクリックすると、プログラムがMicrosoftによって維持されているWindows参照サーバー<Windows Referral Server>に自動的にダイアルする。参照サーバーはユーザーが住んでいる場所のIAPのリストをユーザーのコンピュータに送信する。ユーザーがIAPリストの一つをクリックすると、ユーザーはIAPのサーバーに接続され、ユーザーのPCがそのIAPで正常に動作するように自動的に設定を行う。

 255.Microsoftは、Navigatorに優先してInternet Explorerを推奨、配布し、既存の利用者をNavigatorからInternet Explorerに変更させる契約と引き替えに、参照サーバーに配置することにした。

 256.1996年7月と9月の間に、Microsoftは14のIAPと参照サーバー契約を結んだ。これらは、AOL、AT&T WorldNet、Brigadoon、Concentric、Digex、EarthLink、GTE、IDT、MCI、MindSpring、Netcom、Prodigy、Sprint、及びSpryである。このうちBrigadoon、Digex、GTEはリストに入れる技術的なステップを行わなかった。AOLが参照サーバーのリストに入ったのは、Windows 98のリリース後の1998年11月になってからである。その他のIAPは北米の上位15のインターネット・アクセス・プロバイダのなかの10のIAPであった。

 258.第一に、その契約はIAPにホームページでNetscapeへのリンク又はその他の推奨を行うことを禁止した。第二に、その契約は利用者が特に要求しなければIAPが非Microsoftブラウザを提供することを禁じた。第三に、その契約は、IAPによって配布される非Microsoftブラウザが全ブラウザの25%より高い場合は、そのIAPを参照サーバーから除去する権利をMicrosoftに与えた。

 266.Microsoftの参照サーバー契約に対するリアクションとして、Netscapeは5つの地域Bell Operating会社(「RBOC」)と契約を締結した。Netscapeとの契約に基づき、RBOCは、利用者が積極的に他のブラウザを要求した時を除き、Netscapeをデフォルト・ブラウザとすることに合意した。その代償として、NetscapeはNetscapeの参照サーバーに含まれるIAPのなかでRBOCを最初にリストすることに合意した。Microsoftの契約とは対照的に、Netscapeの契約は他のブラウザの配布に制限を課していなかった。

 268.1998年4月、世論の批判の高まり、コンピュータ産業における競争に関する下院の委員会へのBill Gatesの出頭、及び本件訴訟の提起のなかで、MicrosoftはWindows 95参照サーバー契約の最も制限的な条項を一方的に放棄した。特に、Microsoftは非Microsoftブラウザの配布を制限する条項を放棄した。しかしながら、契約は依然としてIAPにInternet Explorerをデフォルト・ブラウザとすることを要求した。

 269.1998年9月末までに、Windows 95参照サーバー契約の全てが期間満了となった。Windows 98参照サーバー契約はInternet ExplorerがIAPの配布の特定のパーセントにすることを要求する条項は含まれていない。契約はIAPがInternet Explorerより以上に非Microsoftブラウザを推奨しないことだけを求めている。

 270.IAPはもはや1996年のようにWindows参照サーバーに価値を認めることはなかった。実際、1996年の第3四半期から1998年の第3四半期の間で、新しいインターネット・ユーザーの2.1%だけがWindows参照サーバー経由であるに過ぎなかった。

 271.1998年春、Microsoftは1996年秋に課した制限を緩和した。しかしながら、制限は1年半の間、十分に力を発揮し、主要なIAPに彼らのクライアント・ソフトウエアをInternet Explorerにカスタマイズさせ、彼らの販売マーケッティング活動をMicrosoftの技術に向け、彼らのインストールされた基盤の相当部分をNavigatorからInternet Explorerに変更するよう導いた。その結果、Navigatorの配布を増加させたISP(インターネット・サービス・プロバイダ)はほとんどなかった。さらに、1998年春に、IAPに対する管理をゆるめた理由は、AOL及び他の主要OLSによってブラウザの配布の管理を達成し、それを維持することを計画したからである。

c.オンラインサービス・ホルダ契約
 272.1995年遅くか1996年早くに、Microsoftの上級役員たちは、AOL(America Online)がそれまでの全インターネット利用の相当な部分を占めており、かつ、新しいIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)の利用者の非常に大きなパーセントを引きつけていることを認識した。Microsoftの役員たちは、もし、AOLがクライアント・ソフトウエアと共にNavigatorの代わりにInternet Explorerを配布するよう納得すればInternet ExplorerのためのIAPチャネルの大きな部分を − 一撃で − ぶんどることができることに気がついた。1996年早春、MicrosoftはWindowsデスクトップ上の良い位置と、AOLがNavigatorをほぼ排除しInternet Explorerを配布及び推奨することとを交換した。AOLがこの取り決めを受け入れたことにより、Internet Explorerの利用シェアが急増し、それに付随してNavigatorのシェアが減少した。AOLとの取引に加えて、Microsoftは同様な契約を他のOLS(オンラインサービス)とも締結した。これらの契約がMicrosoftにとって重要であるのは、Navigatorをほぼ排除しInternet Explorerを配布及び推奨することをOLSに対して要求する条件をMicrosoftが放棄しなかったという事実から、明らかである。

i.AOL
 273.1995年以前、OLSの利用者はそのOLSの特別なコンテンツだけを見る専用のアクセス・ソフトウエアを使用していた。しかし、1994年から、人々がウエブ上の情報をアクセスすることに興味を持つことが多くなった。そこで利用者を失わないように、また、新しい利用者を引きつけるために、OLSはウエブ・アクセスを提供するアップグレードを行った。

 275.1995年11月、AOLのDavid ColeはMicrosoftのPete Higginsに、AOLがブラウザを探しているとアドバイスした。続いて、Bill GatesとAOLの会長Steve Caseは電話で何回か話し合った。CaseはGatesに対して、MicrosoftがAOLのクライアント・ソフトウエアをMSN(Microsoft Network)と同様にWindowsのデスクトップ上に置いてもらいたいと述べた。Gatesは問題外であると主張した。

 277.数ヶ月後、Microsoftの上級役員たちは、Windows boxのMSNの競争者への開放はInternet Explorerの利用シェアを増加させるために必要な代償であるとの結論に達した。

 278.Caseは1996年1月にMicrosoftのRedmondキャンパスを訪問することに合意した。この会議の準備のために、Microsoftは5社の異なったOEM(Compaq、Hewlett-Packard、IBM、Packard Bell、及びNEC)のPCシステムを購入した。Microsoftの社員がそのシステムの電源をONすると、OEMは既に彼らのPCにAOLのソフトウエアをプレインストールして出荷しており、Windowsデスクトップ上でMSNよりも目立つ位置にAOLサービスが置かれていた。Gatesは、「Windows boxの開放」によってではなく、むしろ、WindowsデスクトップをOEMが変更する能力を取り締まることによって対応すべきであると感じているように見えた。

 279.既にAOLは主要なOEMと配布契約を結び、数百万の新しいPCシステムのデスクトップにAOLのアイコンを置いていた。しかし、OEM契約は短期でいくぶん弱々しいものであり、OEMがMicrosoftの意志に敏感であることを考慮して、AOLの役員たちはMicrosoftから契約上の同意を得てWindowsデスクトップにAOLを置くほうが安全であると考えた。CaseはGatesに対して、MicrosoftがWindowsデスクトップ上でAOLを推奨しない限り、AOLは利用者にInternet Explorerを推奨しないという正直な信念を明らかにした。

 284.GatesはAOLをWindows内で何らかの形で推奨することには合意したが、MicrosoftはAOLのアイコンをWindowsデスクトップ上に直接には置かないと言い張った。Gatesは他のOLSと一緒にデスクトップ上に置かれる「オンラインサービス・フォルダ」内にAOLを含めることに合意した。MSNのアイコンはデスクトップ上に直接置かれているから、OLSフォルダ内のAOLはMicrosoftのサービスよりも劣った地位に甘んじることになる。

 288.1996年3月12日、MicrosoftはAOLに対して、Internet Explorerのソースコードにアクセスし修正してAOLの専用アクセス・ソフトウエアとして使用するためにカスタマイズする権利を与えた。MicrosoftはAOLにInternet Explorerを無償で全世界へ配布する権利を与え、AOLのアイコンをWindowsデスクトップ上のOLSフォルダ内に置くことに合意した。

 289.Microsoftの約束のお返しに、AOLは旗艦オンライン・サービスのWindows用及びMac OS用の専用アクセス・ソフトウエアをInternet Explorerに基づくものにすることに合意した。契約の他の条項では、「AOLはAOLの旗艦サービスの利用者にInternet Explorerを排他的に推奨、販売、配布する」と規定している。AOLは積極的に要求する利用者に非Microsoftブラウザを配布する権利は、配布比率が15%を超えない限り、保持していた。また、AOLはAOLサービス用にカスタマイズされたNavigatorをダウンロードできるサイトにリンクする権利も保持していた。しかし、契約は利用者がAOLでNavigatorを使用できることを表現又は暗示することをAOLに禁じた。また、利用者にNavigatorをダウンロードできるサイトに行く方法を記載した説明文を、デフォルトページ又は他のページに掲載することは許されない。

 295.1996年10月28日、MicrosoftとAOLは追加の契約を締結し、AOLは既存のAOLの利用者にInternet Explorerを含む専用アクセス・ソフトウエアを推奨することに合意した。MicrosoftはAOLに50万ドルを支払い、さらにAOLの専用アクセス・ソフトウエアからInternet Explorerを含むバージョンへアップグレードした利用者毎に25セント(上限100万ドル)、さらに1997年4月までに525万人の利用者にアップグレードさせることに成功すれば60万ドルを支払うことに合意した。AOLはこれらの契約を履行するために、利用者がログオフするとき毎に、Internet Explorerを完備したクライアント・アクセス・ソフトウエアの最新バージョンをダウンロードするよう促した。

 296.1998年1月までに、Cameron Myhrvoldは、Gatesと他のMicrosoftの執行委員に、(そのときまでに1千万人を超えていた)AOLの利用者の92%がInternet Explorerを含むクライアント・アクセス・ソフトウエアを使用していることを報告することができた。1年前には、AOLの利用者のわずか34%だけがInternet Explorerを含むAOLのクライアント・ソフトウエアを使用していた。

 299.1998年11月24日、AOLとNetscapeは、AOLがNetscapeを買収することに合意した。関連した取引で、AOLはSunと3年間の戦略的な提携関係に入ることに合意した。AOLがNetscapeのブラウザ・ビジネスを買収したことに関しては、その主要なゴールはInternet Explorerに対してユーザーのシェアを競うことではなかった。むしろ、AOLはNetscapeのポータルサイトであるNetCenterでウエブ取引を営む限りにおいてNavigatorに興味を持っていた。また、AOLはInternet Explorerの代替品を確保することにも興味を持っていた;Microsoftの慈悲にすがる必要がない力を保持するために、Internet Explorerを下ろす選択肢を求めたのである。結局、AOLはMicrosoftがインターネットのスタンダードに対する完全な支配権を得ることがないようにNavigatorを存続させることに興味を持っていたのである。

 301.Netscapeの買収にもかかわらず、AOLはMicrosoftとの契約の排他的条項を終了する権利を行使しなかった。AOLの役員たちは1998年11月17日に取締役会の承認を得るためにNetscape/Sunとの取引を提案したときに、その理由を明らかにした。彼らは次のように書いている:

 我々が主要なブラウザ・コンポーネントとしてIEを使用する代わりに、MicrosoftはWindowsデスクトップ上の「オンラインサービス・フォルダ」内に[AOL]をバンドルしている。これは重要であり、我々の新しい顧客の価値ある源であり、我々が続けたいと思うものです。IEのための「実質的排他」条項を続けることに我々が同意しなければ、MicrosoftはWindows内に我々を含め続けることはないことを明らかにしています...IEを[Netscape]ブラウザに変えることは[Netscape]の利益になります − そうすれば、ブラウザ・マーケットのシェアを劇的に(現在の約50/50から[Netscape]有利の65/35に)変えるでしょう。しかし、我々の現在の利益はIEを続けることです、一部はWindowsバンドルによる継続した販売促進の利益を得るためであり、一部はMicrosoftとの継続する「緊張緩和」の可能性を最大化させるためです。
Microsoftとの契約の「実質排他」条項を終了する権利を行使しないことによって、AOLは2001年1月1日までこれらの制限を守ることになったのである。

 304.AOLの利用者は現在1600万人であり、全てのウエブ・ブラウジングの相当な部分がAOLをとおして行われている。貴重なデスクトップ地所をAOLに与えることによって、Microsoftはブラウザの最も重要なチャネルの一つをInternet Explorerのためにぶんどることに成功した。Microsoftが1996年3月にAOLと契約した日から始まって、少なくとも1998年11月にAOLがNetscapeの買収を発表するまで、開発者は現在および近い将来にわたって、非Microsoftソフトウエアがネットワーク・アプリケーションの標準的なスタンダードとしての地位を得ることはないと見る根拠を得たことになる。Microsoftはその期間を、Microsoftが所有するネットワーク・アプリケーション・インターフェースへの開発者の依存 − AOLが将来Internet Explorerの配布を停止したとしても、Microsoftにとって利益であり続けるだろう依存 − を増大させるために利用した。Microsoftが莫大な費用をかけ、また消費者の選択の自由を剥奪して達成したAOLの一撃がNavigatorによるアプリケーション参入障壁の脅威を消失させるのに貢献した。

ii.他のオンラインサービス
 305.1996年の夏から秋にかけて、Microsoftは他の3社のOLS(オンラインサービス)、すなわちAT&T WorldNet、Prodigy、及びAOLの子会社CompuServeと同様な契約を締結した。OLSは非Microsoftブラウザを配布し推奨する能力を制限する条項に不満を感じたが、OLSフォルダ内に置かれることが決定的であることを理解していたから、OLSはMicrosoftの条件を受け入れた。

d.IAPチャネルにおけるMicrosoftの行為の効果
 307.上述のとおり、Microsoftは、Microsoftに収入をもたらさない製品を配布、推奨することに合意したIAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)に価値ある報酬を与えた。さらに価値ある臨時収入を差し出すことによって、MicrosoftはIAPがNavigatorの配布及び推奨を劇的に制限するよう導いた。更なる他の譲歩によって、MicrosoftはIAPに既にNavigatorを使用している利用者をInternet Explorerユーザーに変えさせた。

 310.AdKnowledgeのヒットデータによれば、配布・推奨制限に関するIAPのカテゴリーによってInternet Explorerの成功に差があることが示されている。第1のカテゴリーは配布・推奨制限に全く従わないIAPの利用者からのヒットである。他のカテゴリーは全てのIAPの利用者からのヒットである。第3のカテゴリーはAOLとCompuServeの利用者からのヒットである。1997年1月から1998年8月までのヒットデータは、制限されていないIAPの利用者のInternet Explorerの利用シェアは約20%から約30%へと、10ポイント上昇した。同時期に、制限されたものも含む全IAPの利用者のInternet Explorerの利用シェアは22%から49%へと、27ポイント上昇した。最後に、最も厳しい制限に従った二つのIAP、すなわちAOL及びCompuServeの利用者のInternet Explorerの利用シェアは22%から87%へと、65ポイント上昇した。この三つのカテゴリーにおけるInternet Explorerの成功度合いの相違が、MicrosoftによるIAPチャネルにおけるNavigatorの禁止の排他的効果を明らかにしている。
   
4.Navigatorを犠牲にしてInternet Explorerの利用シェアを増大させるためのICPに対する誘い
 311.ICP(インターネット・コンテンツ・プロバイダ)はウエブ・ページを満たすコンテンツを作成する。コンテンツは広告やダウンロード・サイトへのリンクを含むから、ICPはブラウザの推奨及び配布チャネルを提供する。Microsoftの役員たちはICPはブラウザの配布チャネルとしてOEMやIAPほど重要ではないと認識していた。それでも、アプリケーション参入障壁を保護することがMicrosoftにおいて極めて高い優先順位を有していたから、上級役員たちはICPを得るために喜んで相当なリソースを投資した。Microsoftの役員たちはICPがMicrosoftのブラウザ・キャンペーンに協力する3種類の方法を決定した。第1は、ICPは、非Microsoftブラウザを排除し、Internet Explorerを宣伝及びリンクすることによって、Internet Explorerの利用シェアの向上を助けることができる。第2に、コンテンツばかりでなくソフトウエアを配布するICPは、Navigatorの代わりに、Internet Explorerを彼らの配布にバンドルすることができる。最後に、ICPがActiveXのようなMicrosoftの技術を使ってコンテンツを作成することによって、Navigatorの需要を押さえ、Internet Explorerの需要を増加することができる。

  312.1995年10月、Microsoftの役員たちはGatesに送ったメモで次のように書いている:

コンテンツがブラウザの採用を動かします、そして我々は上位5つのサイトに行き、彼らに「どうすればIEを採用していだだけますか?」と聞く必要があります。我々は、小切手を切り、サイトを買い、あるいは特徴を追加する − 採用を駆り立てるものは基本的に何でも行う − 準備をしなければなりません。
 313.1996年の中頃までに、この提案は会社の方針になった。Microsoftは至る所にあるWindowsの広告にICPを推奨する部分を作り、その部分に無料で掲載することと、重要なICPがInternet Explorerを排他的に推奨及び配布し、Internet Explorerで見たときに最適に見える技術でコンテンツを作成することとを交換した。Microsoftの役員たちをこの戦術を「戦略的物々交換」として言及した。

 314.Microsoftはチャンネルバーを含むActive Desktopを1997年9月30日にリリースしたInternet Explorer 4.0に導入した。

 315.Channel BarのトップチャンネルはMicrosoftのウエブサイトにリンクされており、プッシュ技術が利用できるサイトのリストを提供した。次の5つのチャンネルは「ニュース&テクノロジー」、「ビジネス」のような一般的なカテゴリーに分類されていた。これらの5つのチャンネルをクリックすると特定のウエブサイトのアイコンが表示された。

 316.ほとんどのICPはウエブページ上の広告に料金を課していた。ICPが引きつけるユーザーが多ければ多いほど、そのサイト上に広告を掲載する料金を高くすることができる。IntuitはWindowsデスクトップ上に置かれれば並ぶものがないほど有利になると考え、チャンネルバー上に置くために相当な料金を支払う準備ができていた。ZDNetもDisneyも同様に考えた。

 317.Microsoftの役員たちもチャンネルバーに課金することを考えた。彼らは、チャンネルバーに直接載せるICPは年間1千万ドルを、一般的なチャネルの下に載せる場合でも年間2百万ドルを支払うと見積もった。たとえば、アクティブデスクトップがデビューする9ヶ月前の1996年12月にチャンネルバー上に直接載せる1年目に、PointCastが1千万ドルを支払うという契約にMicrosoftはサインした。

 318.PointCastとの契約に続いて、Microsoftは他の23のICPと同様な「最上段」又は「プラチナ」契約を締結した。Microsoftは、用語「最上段」をチャンネルバーに直接載せる時に使用し、用語「プラチナ」を5つの一般的なカテゴリーからアクセスできる20のICPについて使用した。

 319.契約は最上段及びプラチナICPにMicrosoftに金銭を支払う義務を負わせていなかった。むしろ、契約はICPに他の方法でMicrosoftに埋め合わせを行うことを義務づけていた。PointCastがサインした契約は1千万ドルの支払いを必要とすると称しているが、契約はPointCastに、他のICPが約束するのと同様に行動すれば、全額を割引する権利を与えている。

 320.ICPの第1の義務は、Internet Explorerを配布し、「他のブラウザ」を配布しないことである。この義務はブラウザを配布していたPointCast、CNet、Intuit、AOL、Disney、及びNational Geographicについてだけである。

 321.また、最上段及びプラチナ契約は、ICPにInternet Explorerのダウンロードサイトへのリンクを置き、Navigatorのダウンロードサイトへのリンクを削除することを要求した。

 322.第3の規定は、「他のブラウザ」のベンダーと契約することの禁止である。最後に、契約は、Dynamic HTML及びActiveXのようなMicrosoftの技術を使用するよう要求した。例えば、Intuitとの契約は次のように規定している:「差別化されたコンテンツはIEユーザーにのみ利用可能であることができる、他のブラウザを使用したときに満足度が落ち、『IEを使用するときベスト』であることができる。」

 323.ICPはチャンネルバーに載せてもらいたい一心で、Microsoftが契約に含まれない制限を課したときにも、しぶしぶではあるとしても、従いさえした。

 327.最上段及びプラチナ契約に加えて、MicrosoftはICPと二つの他の契約を締結した。第1に、Microsoftは30から40のICPと「ゴールド」契約を結んだ。これらの契約に従うと、Microsoftは、チャンネルバーのトップリンクをクリックすると表示される「アクティブ・チャンネル・ガイド」ウエブサイトにICPを含めた。これと引き替えに、ICPはNavigatorを含む他のブラウザと少なくとも対等の資格でInternet Explorerを推奨することに合意した。

 328.第2に、Microsoftは8から12のビジネス関連のICPとIEAK契約を結んだ。Microsoftはチャンネルバーの「ビジネス」カテゴリーの下にICPのウエブサイトのリンクを含める機能を持つIEAKの中に含めることを合意した。その代償に、ICPはInternet Explorerを排他的に配布し、「他のブラウザ」の推奨を止め、Internet Explorerを推奨する約束をした。

 329.相互マーケティング契約は必ずしも競争を減らすわけではない;しかしながら、4つの特徴から、この事件の契約が良性である状態から区別することができる。第1に、Microsoftは、競争者が匹敵できない資産を、独占力により、ICPに提供することができる。第2に、Microsoftはその資産と、Microsoftが独占力に対する潜在的脅威と見る技術の配布を抑圧し魅力を減少させること、とを物々交換した。第3に、MicrosoftはNetscapeによるICPの製品の推奨に対価を支払うことことを禁じた。最後に、MicrosoftはMicrosoftの技術のイノベーションの利点を利用するようにICPを勧誘するのを超えて、コンテンツがInternet ExplorerよりもNavigatorで見るときに質が低下することを明確に要求した。Navigatorの需要を低下させようとするMicrosoftの欲求はInternet Explorerの需要を増大させようとする単なる欲求とは無関係であり、遙かに悪意のあるものである。

 330.ICPとMicrosoftの契約の用語は、Navigatorによるアプリケーション参入障壁に対する脅威を消し去るためのMicrosoftの執念のない通例の経済的な言い回しでは説明することはできない。

 331.MicrosoftとICPの期待にもかかわらず、消費者はチャンネルバーあるいは一般にアクティブデスクトップにはほとんど興味を示さなかった。チャンネルバーは消費者の興味は引きつけなかったかもしれないが、チャンネルバーに関連したICPの契約は論争を引き起こした。実際、1998年3月、Gatesは、上院司法委員会に出頭した時に、それらについて辛辣な質問に直面した。1998年4月上旬、Microsoftは世論の批判を鎮めるためにいくつかの対策をとった。第1に、最上段及びプラチナ契約の最も制限的な条件を放棄した;その後の契約はICPに対して、Navigatorの推奨と少なくとも同じ方法でInternet Explorerを推奨することを単に求めた。第2に、Microsoftは1998年4月に終了するゴールド及びIEAK契約を更新しなかった。第3に、MicrosoftはOEMライセンシーに対して、Windows 98デスクトップをデフォルトでチャンネルバーが表れないように設定する権限を許可し、ほとんど全ての主要なOEMはその許可を利用した。チャンネルバーは有害無益であると考え、MicrosoftはWindows 98アップグレードを含む将来のバージョンから完全に削除することを決定した。

 332.しかしながら、8ヶ月間、Microsoftとの契約は約34のICPに対してNavigatorの配布及び推奨を禁じていた。1年から1年半の間、これらの34のICPプラス30から50以上のICPが少なくともNavigatorよりも目立つ形でInternet Explorerを推奨することが要求された。

 334.最上段、プラチナ、及びIEAKのICPの多くはMicrosoftとの契約以前はNavigatorをリンクしていたが、制限的条項が効力を発してからはInternet Explorerのダウンロード・リンクだけが許された。概して、Microsoftが課したICPに対する制限はNavigatorのコピーの相当な数、しかし1千万よりはすくない数の配布及びインストールを妨げたことが、証拠から合理的に推論できる。

 335.Microsoftが課した条件は、ICPがNavigator中又はNetscapeのウエブサイト上でのICPのコンテンツの推奨の対価をNetscapeへ支払うことを妨げた。Microsoftの制限は恐らく数百万ドルのNetscapeの収入を剥奪した。

 336.Microsoft特有ブラウザ技術の使用に関するMicrosoftが課した要求がNavigatorの利用シェアに有害な影響を及ぼしたとする証拠は十分ではない。
 
5.Navigatorが露出するAPIではなくMicrosoftのブラウザ技術に依存させるISVに対する直接的な誘い

 337.1995年以来、多くのISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)はブラウザの機能を生かして設計することによりアプリケーションの質を高めてきた。Microsoftは、Navigatorを不利にすることによってインセンティブを間接的に与えるのに加えて、直接、個々のISVからInternet Explorerに特有な技術に依存したウエブ・アプリケーションを作成する約束を引き出すことを目標に定めた。

 338.ソフトウエア産業において「販売時期」が重要であるから、Windows 98製品上で走るソフトウエアを開発するISVはWindowsのベータリリース及びその他の技術情報をできるだけ早くかつ一貫して得ようとする。MicrosoftがどのISVがベータ版とその他の技術サポートを受けるのかを決定するから、Windows製品上で走るソフトウエアのマーケットで競争するISVの能力はMicrosoftとの協力に強く依存する。

 339.1997年秋と1998年春の間に結ばれた数十の「第一波<First Wave>」契約において、Microsoftは条件に従うことに合意した重要なISVに、早期のWindows 98及びWindows NTベータ版、その他の技術サポート、及び、Microsoftの推奨シール使用権に関して、優先サポートを与えると約束した。条件の一つは、ISVがハイパーテキスト・ユーザーインターフェースを使うソフトウエアのためのデフォルトブラウザとしてInternet Explorerを使用することである。もう一つの条件は、ISVがアプリケーションにヘルプをインプリメントするときにInternet ExplorerでしかアクセスできないMicrosoftの「HTMLヘルプ」を使用することである。

 340.主要なISVに製品のデフォルトブラウザとしてInternet Explorerを使用させる契約と引き替えに、Microsoftは、最も人気のあるウエブアプリケーションがWindows上でのみ見ることができるブラウザ技術に依存し、これらの製品を使用する数百万の消費者がNavigatorではなくInternet Explorerを使用する可能性の増大を確実にしたのである。したがって、MicrosoftのISVとの関係はアプリケーション参入障壁の保護に対するMicrosoftの独占力の適用のもう一つの分野である。
 
6.Navigatorの配布チャネルとしてのAppleの排除
 341.1995年夏、Microsoftは、32ビットWindows製品用に開発したプラットフォーム・レベル・ブラウザ技術と競合するのをNetscapeが止めれば、Mac OS用ブラウザの開発をNetscapeに喜んで譲ろうとした。しかし、NetscapeがWindows、Mac OS、及びその他のプラットフォーム上に同一のAPIを露出するミドルウエア層を提供する決心を固めると、Microsoftは、Mac OSのような非Microsoftプラットフォームにおいてさえも、これらのAPIに向けられた開発者の注目を抑える必要があることを認識した。もし、NavigatorがMac OS上で人気があり、開発者がNavigatorによって露出されたAPIを広範囲に使用するようになれば、その開発者はWindows用のNavigatorによって露出された同一のAPIも使う気になるだろう。それゆえ、MicrosoftはInternet ExplorerのMac OSユーザーを募り、Mac OSユーザーのNavigatorの利用シェアを最小化することを開始した。

 342.Gatesは、AppleがMac OS用Internet ExplorerをプレインストールするようMicrosoftの役員たちが説得するようにしきりと促した。

 343.1996年夏までに、AppleはMac OS用Internet Explorerを既に出荷していたが、Navigatorをデフォルトブラウザとしてプレインストールしていた。1996年6月の会議の後、Gatesは上級役員たちの何人かに次のように書いた:「Apple関係に投資する上で2つのキーとなるゴールがある − 1)Appleのプラットフォーム上で我々のアプリケーションのシェアを維持する、及び 2)彼らにInternet Explorerを取り入れさせることができるかどうかを調べることである。同じメッセージの後半で、GatesはAppleが「IEを全てのシステムの標準ブラウザとして直ちに出荷する」という願望を表明した。

 344.MicrosoftがAppleに対して持っていたテコの一つは、オフィス生産性アプリケーションを使用しているMac OSユーザーの90%がMicrosoftのMac Officeを採用していたという事実である。1997年、Appleのビジネスは急速に傾いており、会社が長く続くかどうかを疑う者も多かった。Appleのマーケットでの実績をみて、多くのISVはMac OS用のアプリケーションを開発するために時間と金を使い続けることに疑問を持った。もし、Microsoftがこのような雰囲気の中で、Mac Officeの新しいバージョンの開発を止めると発表したら、多くのISV、顧客、開発者、及び投資家はAppleの死亡告知としてその発表を解釈したであろう。

 345.Appleの生き残りにMac Officが重要であることを認識して、Appleが両社間の顕著な争点の多くを妥協しなければ、MicrosoftはOffice製品を中止すると脅した。これらの争点の一つは、AppleがMac OSで、Navigatorに反対して、Internet Explorerを配布し推奨する点であった。

 346.1997年6月末、MicrosoftのMac Office担当役員、Ben WaldmanはGatesとMicrosoftの財務担当役員、Greg Maffeiにメッセージを送った:

Appleの最近の不満足な反応にも、Appleとの話し合いのペースにも、Microsoftの多くの人がフラストレーションを間違いなく感じています。Mac Office 97を中止するという脅しは、そのとおりにすれば直ちにAppleに大きな被害をもたらすから、間違いなく我々が持っている最も強い取引材料です。また、Appleはこの脅しをかなり深刻に受け取っていると思います・・・
 347.Waldmanは実際にはMac Office 97を即座にリリースすることの提唱者であり、メッセージの中でそれを強調した。GatesとMaffeiは、Waldmanの製品への献身をたたえる一方で、Mac Officeの中止の脅しは、MicrosoftがAppleから譲歩を引き出す前に、放棄することはありえないことを明らかにした。「Ben − すばらしいメールだ、しかし我々はやつらを押しつける方法を必要としており、これが彼らを動かすことができる唯一のものだ。」と書いた。Waldmanへの返事で、GatesはMicrosoftがMac Office 97の開発をほとんど完了している事実を来月いっぱいAppleから隠すことができるかどうか尋ねた。

 349.Waldmanとのメール交換の数日後、GatesはこれらのAppleとの交渉に最も関係したMicrosoftの役員たちに、話し合いは「全くうまくいっていない」と伝えた。その後、Gatesは彼が既に「Mac Officeの中止を発表する方法を尋ねるために」AppleのCEO(当時はGil Amelio)に電話したと報告した。

 350.GatesがAmelioに電話してから1ヶ月以内に、Steve Jobsが再びAppleのCEOとなり、二つの会社は1997年8月7日にサインした3つの契約で彼らの間の全ての未解決の問題を解決した。現在も有効な「技術契約」と題する契約に基づくMicrosoftの主要な義務は少なくとも5年間Mac Officeのアップデート・バージョンをリリースし続けることである。技術契約がAppleに課した義務のなかに、ブラウザに関連したものがいくつかある。

 351.第1に、MicrosoftがMac Officeをサポートし続ける限り、Appleは「MicrosoftのInternet Explorerの最新バージョンを・・・Macintosh用にリリースする全てのシステムソフトウエア(MacOS)にバンドルする」ことに合意した。また、技術契約は次のように規定している:「Mac OSシステムソフトウエアにInternet Explorer以外のブラウザをバンドルすることができるが、AppleはMacintosh用Internet Explorerをデフォルトブラウザとする。」この要件を満たすために、AppleはMac OS 8.5アップグレード製品のデフォルト・インストールにNavigatorを含めなかった。他の言葉で言えば、デフォルト・インストールでは、Navigatorはコンピュータのハードドライブにはインストールされない。それゆえ、Mac OS 8.5にアップグレードしたほとんどのユーザーは、カスタマイズ・インストールすることなしには、Navigatorをアクセスすることができなかった。

 352.さらに、技術契約は、Appleは「Appleがスポンサーとなる全てのイベントにおいて社員にMacintosh用Internet Explorerの使用を奨励する」とさえ規定している。この条文に基づき、Appleの経営陣はトレードショー及びそのほかの公開イベントのデモンストレーションでNavigatorを使用しないよう社員に指示した。また、その契約は、ブラウザ技術の推奨に関して、「ブラウザのロゴが表示されるAppleがコントロールする全てのウエブページ」においてAppleがInternet Explorerのロゴを表示することを要求している。

 355.AppleはInternet Explorerの配布及び推奨を増大させたが、Microsoftの製品の品質がNavigatorより優れていたとか消費者の需要がより大きいと確信したからではなく、Mac Officeを失うという恐怖におびえた結果である。率直に言うと、Microsoftは相当なリソースを投資し事実上出荷準備ができていた利益の上がる製品をAppleへ販売することを拒否すると脅したのである。この策略は投下コストを無駄にし相当な利益を犠牲とするばかりでなく、Mac Officeの新バージョンを期待していたAppleの消費者に対するMicrosoftの信用も傷つけたであろう。Microsoftがこれを犠牲とする準備ができていた主な理由、及びMicrosoftがAppleにInternet Explorerをデフォルトブラウザとするよう要求した唯一の理由は、アプリケーション参入障壁を保護することである。

 356.Internet ExplorerがMac OSのデフォルトブラウザとして確保され、Navigatorをより不利な地位に追いやり、Mac OS 8.5アップグレードのデフォルト・インストールからNavigatorの排除を要求し、AppleがNavigatorを推奨することを制限することによって、MicrosoftはMac OSのほとんどのユーザーがNavigatorではなく、Internet Explorerを使用するであろうことを確実にした。Mac OSのユーザーはWindowsのインストールされた基盤と比較すれば極めて小さなものではあるが、Mac OSはWindowsの次に最も重要な消費者向けオペレーティングシステム製品である。Windowsに依存しないクロスプラットフォーム・ソフトウエアの相当な量の開発を可能とするためには、NavigatorはMac OSユーザーの高いシェアを必要としていた。Mac OSにおけるNavigatorの利用を十分に減少させる条件をAppleから引き出すことによって、Microsoftはアプリケーション参入障壁を弱めるNavigatorの潜在力をひどく破壊した。
  
G.最も効率よくブラウザ利用へ導くチャネルからNavigatorを排除することのMicrosoftの成功
 357.上述の策略の累積の効果によって、ユーザーが利用できるウエブへの最も簡単な道がInternet Explorerへと通じたのである。

H.Navigatorの犠牲でInternet Explorerの利用シェアを最大化させるMicrosoftの努力の成功
 358.Navigatorの犠牲でInternet Explorerの利用シェアを最大化させるMicrosoftの努力は、まさに成し遂げられた。もし、Microsoftが正確にその目的に独占力を向けなかったとすれば、相対的なシェアはこのように大きく変化することはなかったであろう。

1.Internet ExplorerとNavigatorの利用シェアの変化
 359.開発者がNetscapeのブラウザのAPIを使用するか、MicrosoftのブラウザのAPIを使用するかを決める場合、NavigatorがInternet Explorerとの関係でどれだけ使用されているのかが問題となる。その問題の答えはそれぞれのブラウザ製品の利用を全ブラウザの利用によって割ることによって得られる。したがって、NavigatorとInternet Explorerが開発者を引きつける相対的な力はブラウザ利用の相対的なシェアに依存する。

 372.MicrosoftとAOLが信頼する推測及びAdKnowledgeとIllinois大学によってなされた計測が事実認定の根拠として適切であり、それによれば:第一に、1996年の早い時期から1998年の夏の終わりにかけて、Navigatorのシェアは70%以上から50%前後に落ち、一方、Internet Explorerのシェアは約5%から50%前後に上昇した;第二に、1998年までに、新規のNavigatorの利用は40%以下に落ち、一方、Internet Explorerは60%以上に上昇した。1998年の夏の終わり以来、Internet Explorerのシェアが上昇し続け、Navigatorのシェアは落ち続けていることを、あらゆるものが示している。したがって、Internet Explorerの利用シェアは50%を超え、Navigatorのシェアはそれを下回ったと結論できることは明らかである。

 373.この傾向は続いている。最も合理的な予測は、2001年1月までにInternet Explorerの利用シェアは60%を超え、Navigatorのシェアは40%に落ちるであろうというものである。

 374.Navigatorの大きくまた継続する利用シェアの下降はその製品が標準ブラウザとして失格であることを開発者に知らせている。同時に、Internet Explorerが利用シェアを得ることに成功したことは、Navigator以外の競合製品がないことと共に、いたる所にある32ビットWindows APIセットと競合するネットワーク・アプリケーション用プラットフォームは存在しないことを開発者に明確に伝えている。

2.利用シェアの変化の原因
 375.Microsoftがブラウザを改良しなかったならば、上記のような利用シェアの変化は起こらなかったに違いない。しかし、Microsoftの上席役員たちが予想したように、Internet Explorerの品質及び特徴は、Navigatorのインストールされた基盤をInternet Explorerに変更させるまでにはNavigatorを凌駕してはいなかった。1998年2月のMicrosoftの内部のプレゼンテーションでは、「多くの消費者は、MSとNSは同等な製品;変更する強い理由なし、と見ている」と結論された。しばらくの間、新規のユーザーでさえ、多くの者はNetscapeがインターネットと最先端ブラウザ技術に関係していると思っていたので、最も選ばれたのはNavigatorであった。したがって、もし、Microsoftが品質と特徴を改良すること以外の行動をとらなかったとしたら、Internet Explorerの利用シェアは実際に起こったよりも遙かにゆっくりと上昇したはずである。

 376.もし、MicrosoftがInternet Explorerの配布ライセンス及び他の価値あるものを無料で提供しなかったとしたら;Internet Explorerをアクセスするための目立った手段をOEMが除去しNavigatorを呼び物とするのを妨げなかったとしたら;そして、MicrosoftがNavigatorを犠牲にしてInternet Explorerの利用シェアを最大化するために使った他の全ての方策を行わなかったとしたら、MicrosoftのブラウザがNavigatorからこのような大きな利用シェアを剥奪し、3年間のうちにNavigatorを追い越すことはほとんど起こらなかったであろう。

I.Navigatorによる脅威からアプリケーション参入障壁を守るMicrosoftの努力の成功
 377.1995年の遅い時期から1996年の早い時期にかけて、Navigatorは標準ウエブブラウザになる道を進んでいるように見えた。しかし、3年で、MicrosoftはNavigatorのその地位を否定することに成功し、それゆえアプリケーション参入障壁への深刻な潜在的な脅威の機先を制することに成功した。実際、1998年2月、MicrosoftのKumar Mehtaは「ブラウザ戦争は終わりに近い」という「個人的な意見」をBrad Chaseに気持ちよく述べた。続いてMehtaは次のように述べた:「我々は2年前に、netscapeが標準を規定し、ブラウザapiの[原文のまま]をコントロールすることがないように、この任務を始めた。現在、全ての証拠は彼らがそうしていないことを示している。」

 378.ブラウザのユーザー人口が急速に増加しているので、利用シェアは落ちたとしても、Netscapeのインストールされた基盤は増大した。実際、AOLは、合衆国におけるNavigatorのインストールされた基盤は1996年の1500万から1998年12月の3300万に増加したと推計している。しかし、これはNavigatorがネットワーク・アプリケーションの開発者にとって十分魅力的なプラットフォームである、あるいは、あり続け、アプリケーション参入障壁を弱めることを意味しない。Navigatorのインストールされた基盤は増大し続けるかもしれないが、Internet Explorerのインストールされた基盤は今や、より大きくより急速に増大している。結局、Navigatorが露出するAPIが、十分な開発者の注目を引きつけ、アプリケーション参入障壁を打ち壊すに十分大きなクロス・プラットフォームのネットワーク・アプリケーションの一群を生み出すことにはならないだろう。

 379.MicrosoftはNavigatorがアプリケーション参入障壁を削り去るのを防いだばかりでなく、その過程でNetscapeのビジネスに相当な損害を与えた。効率的にブラウザの利用に導くチャネルを構成する会社が事実上Navigatorを排除してInternet Explorerを配布及び推奨することを確実にすることによって、MicrosoftはNetscapeがブラウザの配布及び推奨に、よりコストがかかり、より非効率な方法をとらざるを得ないようにした。MicrosoftがInternet Explorerを、OEMと消費者ばかりでなく、IAP(インターネット・アクセス・プロバイダ)、ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)、ICP(インターネット・コンテンツ・プロバイダ)、及びAppleにさえ、無料でライセンスを始めた後、Netscapeはそれに従うことを余儀なくされた。Microsoftは、Internet Explorerに料金を課さないにもかかわらず、利用シェアを最大化するための膨大なコストをWindowsのライセンスから稼いだ莫大な利益で支払うことができた。Netscapeはそのような贅沢はできないので、Navigatorからの収入の劇的な下落を十分に埋め合わせることができなかった。また、財務的な制約は、そうでなければNavigatorにインプリメントしたであろう技術的イノベーションをNetscapeが行うのを妨げた。それで、Microsoftは、1998年11月にNetscapeが他の会社によって買収された時に、全く驚かなかったのである。

 380.AOLがネットワーク・アプリケーションの開発者のために意味のあるプラットフォームを構築する意図でNavigatorの利用シェアをよみがえらせるつもりであるとしても、その努力はInternet Explorerを優先的に配布するAOLの義務が終了する2001年1月1日までは進捗しないであろう。実際、AOLがその日の後、Navigatorの利用シェアを十分に上昇させようとするだろうことを示すものは現時点ではなにもない。

 381.AOLがNavigatorによるミドルウエアの脅威をよみがえらせることに専心すると考えにくいのは、AOLが1998年11月にSunと結んだ契約の中のある条文が、Sunとの新しいパートナーシップはAOLがInternet Explorerをクライアント・ソフトウエアから下ろすことを義務づけないことを明確にしている事実があるからである。

 382.Bill Gates自身、1998年12月、AOL/Netscape/Sunの取引の意味を分析するために開いた会議で、集まったMicrosoftの役員たちに、「AOLはプラットフォームで我々を攻撃する遺伝子を持っていない」と言明した。

 383.AOLが2001年1月1日以後、Navigatorの利用シェアを復活させる意図でInternet Explorerを捨てNavigatorを採用するとしたとしても、アプリケーション参入障壁を脅かすに十分な魅力的なプラットフォームへNavigatorを変えることは、ネットワーク標準へのMicrosoftの増大する影響力を考えると、途方もない目標である。とにかく、2001年1月1日以後に起こることはMicrosoftが数年間Navigatorの発展に先んじることに成功した事実を変えることはないだろう。

 384.疑いは残るが、Microsoftの野心が将来ウエブ上で利用可能なほとんど又は全てのコンテンツがMicrosoftのブラウザだけでアクセスできることであると認定するには証拠は不十分である。しかし、十分な特徴を備えたサーバー・ベースのアプリケーションがウエブ上で多数出現したときに、(Navigatorのような)ミドルウエアAPIだけに依存するアプリケーションの数が少なすぎてアプリケーション参入障壁を弱めることができないようにする意図は証拠から認定できる。

 385.少なくともNavigatorの相当な利用シェアから、ほとんどの開発者は彼らのウエブ・コンテンツがNavigatorでアクセスしたときにInternet Explorerでアクセスしたときとほぼ同様に魅力的であると言い続けている。Navigatorは2000年末までかなりの利用シェアを保持するだろう。その後は、開発者の決定的多数が彼らのウエブ・コンテンツが非Microsoftブラウザで少なくともアクセスできる保証を止めるほどInternet Explorerが支配するのを、AOLが妨げようとし、また、妨げることができるかもしれない。したがって、現時点の問題として、Microsoftはアプリケーション参入障壁を貫通できる十分な特徴を持ったクロスプラットフォームのネットワーク・アプリケーションの十分な開発の機先を制することに成功したが、非Microsoft PCブラウザをマーケットから完全に追い出しそうには思えない。
 

VI.SunのJAVAインプリメンテーションの脅威に対するMicrosoftの反応

 386.Microsoftにとって、アプリケーション参入障壁を維持し強化するキーは、Windowsから他のプラットフォームへ及びその逆へのポートの困難性を維持することである。1996年、Microsoftの上級役員たちはJavaプログラム言語でネットワーク・アプリケーションを書いている開発者がかなりの数となり、Javaが開発者の中で人気を得そうであることに気がついた。それゆえ、MicrosoftはJavaで書かれたアプリケーションがWindowsから他のプラットフォームへ及びその逆へポートすることの困難性を最大化させることに興味を持つようになった。

A.ポータビリティを傷つける他のインプリメンテーションとの互換性のないWindows用Javaインプリメンテーションの創作
 387.Sunは最終的に開発者がJavaテクノロジーでポートなしで多くのオペレーティングシステム上で走るアプリケーションを書くことができることを意図していたが、Javaクラス・ライブラリは十分な特徴を有するアプリケーションをサポートするのに十分なAPIを露出してはいなかった。それゆえ、Java開発者は高度な機能を備えたアプリケーションを書くためには常にプラットフォーム特有のAPIに依存する必要があった。Sunは、これを認識して、特定のオペレーティングシステムのAPIに直接依存するが、異なったオペレーティングシステム上のJVM(Java仮想マシン)に比較的簡単にポートできる方法で、開発者がJavaで書くことができるソフトウエア・メソッドを創作するプロセスのスポンサーとなった。

 388.1996年3月12日、Sunは、MicrosoftにSunのJavaテクノロジーを配布し修正する権利を許諾する契約にサインした。Sunがスポンサーとなっている努力とMicrosoftのポートの困難性を維持する意図は正反対であるから、MicrosoftはSunが標準にしようと努力していた方法よりポートが難しい「ネイティブ」Windowsコードの「コール」メソッドを独自に開発した。Microsoftはこれらの異なった方法を自社の開発ツール及び自社のJVMにインプリメントした。また、Microsoftはビジネス盟友たちがSunの努力を助けることに反対した。

 389.Microsoftが提供したネイティブ・メソッドはSunのメソッドより開発者にとって使うのが少し容易であり、より速く走った。しかし、Windows互換JVMから異なったオペレーティングシステム上のJVMへポートするのは遙かに難しかった。

 390.Microsoftは、Java開発者がスピードとポータビリティのどちらかを選択できるように、Sunのネイティブ・メソッドを自社の開発ツール及びJVMに簡単にインプリメントできたが、MicrosoftはMicrosoftのメソッドだけをインプリメントした。非互換性は、偶然の成り行きとはほど遠く、Microsoftの意図的な努力の結果であった。Microsoftは、1998年11月に、ある裁判所の命令まで、Sunのネイティブ・メソッドのインプリメントを拒否し続けた。裁判所の命令の後、MicrosoftがSunのネイティブ・メソッドを自社の開発ツール及びJVMにインプリメントするのに僅か数週間しかかからなかった。

 391.1997年、Sunは、Javaアプリケーションが互いにコミュニケートすることができるリモート・メソッド・インボケイション又は「RMI」と呼ばれるクラスライブラリを追加した。Java開発者がそのJavaクラスライブラリをコールすればするほど、彼らのアプリケーションはよりポータブルになるであろう。MicrosoftはRMIの機能と類似した機能のWindows特有インターフェースを開発した;MicrosoftはJava開発者がSunのクロスプラットフォーム・インターフェースよりもこのWindows特有な技術に依存することを望んだ。したがって、MicrosoftはInternet Explorer 4.0と共に出荷したWindows用Javaランタイム環境に標準コンポーネントとしてRMIを含めることを拒否した。

 392.前年にSunと結んだライセンス契約はMicrosoftに最低限、開発者ウエブサイト上でRMIを提供することを義務づけていた。Microsoftはそうしたが、RMIのベータリリースについては、不明瞭な場所にリンクを隠し、サイトのインデックスにそこへの入口を含めるのを怠った。RMIとMicrosoftのサイトにそれを探しにアクセスするJava開発者に関して、あるMicrosoftの社員は彼の満足そうな上司に次のように書いた、「彼らはそこにあることを知るためにその周辺をうろつかなければならないでしょう・・・見事に隠したといえると思います。」

 393.最終的にMicrosoftがRMIを、より目立つところに置いたかどうかは不明である。仮にそうしたとしても、そのRMIはMicrosoftのWindows用Javaランタイム環境と共に出荷されなかったから、開発者は消費者のPCシステム上にインストールされていることを当てにすることができない。開発者がWindowsユーザーのシステム上に存在すると保証されているコミュニケーション・インターフェースをコールするJavaアプリケーションを望むなら、RMIの代わりにMicrosoft特有のインターフェースに依存する選択をするほかはない。Microsoftは、開発者がRMIとWindows特有インターフェースを選択できるように、単にRMIを置いておく代わりに、Java開発者が簡単にポータブルなアプリケーションを書くのを困難にすることだけを目的として、JavaクラスライブラリからRMIを取り除く努力を行った。

 394.さらに、Microsoftは、MicrosoftのWindows用Javaランタイム環境によってだけ正常に実行される「キーワード」及び「コンパイラ指令」を使ってJavaアプリケーションを書くことを奨励するようにJava開発ツールを設計した。Microsoftは、これらの拡張は他のランタイム環境では正常に動作せず他のJVMにポートするのは困難であるという警告をせずに、かつ、デフォルトで拡張が使用できるようにして出荷し、これらの拡張を使用することを開発者に奨励した。この行為は、1996年11月にMicrosoftのThomas Reardonが同僚に述べた示唆と符合している:「我々はただ静かに j++[Microsoftの開発ツール]のシェアを伸ばすべきだ、そして、人々が、win32だけのjavaアプリケーションを作っていることに気づかずに、我々のクラスの利点を採用するのは当然のことと考えるべきだ。」 Microsoftは、1998年11月に、ある裁判所がデフォルトでキーワードとコンパイラ指令を動作しないように設定し、MicrosoftのJava拡張は非Microsoftランタイム環境では非互換になることを警告するよう命令した時まで、開発者ツールを変更するのを拒否した。

B.Sun準拠インプリメンテーションではなくMicrosoftのJavaインプリメンテーションを使用するようにする開発者への誘い
 395.1995年5月、NetscapeがNavigatorにSun準拠のWindows用JVMを含めることを発表したときには、SunのJavaインプリメンテーションはWindows上で至る所にある状態を達成することができるようにみえた。

 397.Microsoftは、Internet ExplorerにWindows用JVMをバンドルし、独占力を使ってInternet Explorerの利用を最大化させ、莫大なWindowsのインストールされた基盤の至る所を自社のJavaランタイム環境とした。MicrosoftがNavigatorビジネスに与えた損害を一つの原因として、1998年、NetscapeはNavigatorにJVMのアップデートをバンドルし続けるのに必要な技術的な作業を行うことができないと決定した。その結果、Netscapeは、バージョン5.0から、Sun準拠のJVMの配布を止めると発表した。

 399.ネットワーク・アプリケーションの開発者の多くは彼らのアプリケーションに互換ランタイム環境をバンドルする。

 400.Microsoftは、ISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)がSun準拠のJavaランタイム環境のチャネルと認識し、Sun準拠ではなくMicrosoftのバージョンを配布するようISVを誘った。MicrosoftはJVMをInternet Explorerとは別にISVが利用できるようにした、その結果、ブラウザをバンドルする気のないISVもMicrosoftのJVMをバンドルすることができた。MicrosoftのDavid  Coleは1997年7月にJim Allchinに書いたメッセージでこのステップの動機を明らかにした:「我々はISVがIEなしにJava VMだけを再配布できるようにしなければならないことで一致しました。これを行うISVはWindowsに縛り付けられます、なぜなら、そこはVMだけが動作する場所であり、SunのAPIを遠ざけ続けるからです。」

 401.さらに、MicrosoftはMicrosoftのJavaインプリメンテーションの使用に合意したISVに価値のあるものを提供した。特に、1997年と1998年に数十のISVと結んだ第一波<First Wave>契約において、Microsoftは、早期のWindows 98及びWindows NTのベータ版、その他の技術情報、及びMicrosoftの推奨シールの使用権を、MicrosoftのWindows用JVMを「デフォルト」で使用することをISVが合意することを条件とした。MicrosoftのJVM互換とする唯一の効果的な方法は、MicrosoftのJava開発ツールを使用することであり、それはMicrosoftのネイティブ・コールのためのメソッドを使用し、Microsoftのその他の拡張を使用することを意味した。コストのかかる技術サポート及びその他の甘言と引き替えに、Microsoftは重要な数十のISVにWindows特有のテクノロジーに依存するJavaアプリケーションを作り、Sunの基準に従うJVMをWindowsユーザーに配布するのを控えるように導いたのである。Microsoftは、1998年11月に裁判所が差し止めるまで、第一波ISVにこの条項を守らせる自由を持ち続けた。

 403.RealNetworksはストリーミング・マルチメディア・コンテンツの最も人気のある創作・再生ソフトウエアを開発した。それゆえ、Microsoftは、RealNetworksに依存するJava開発者が、Sunの基準に準拠したJavaインプリメンテーションに依存しないことを確保するよう求めた。その後、RealNetworksは自社独自の基本的なストリーミング・ソフトウエアの開発を継続する計画であると発表したが、7月18日の契約が、そのソフトウエアにSunの基準に準拠するJavaテクノロジーを含ませることを制限している。

C.Javaクラスライブラリの拡張の妨害
 404.Microsoftは、Intelが革新的なマルチメディア機能をサポートするJavaクラスの開発でSunを助けるのを止めさせるために、Intelのマイクロプロセッサに対するWindowsオペレーティングシステムのサポートを留保すると脅した。

D.Javaがアプリケーション参入障壁を減少させるのを防ぐMicrosoftの努力の効果
 407.Microsoftがアプリケーション参入障壁を保護し増強することに傾倒してこなかったとしたら、MicrosoftはハイパフォーマンスのJVMを開発し、WindowsのAPI上で開発者がコールすることができるようにしたかもしれない。この傾倒がなければ、MicrosoftはJavaアプリケーションのポートの困難性を最大化させる努力をしなかっただろう。もし、MicrosoftがWindowsと他のプラットフォーム間でポートしやすいアプリケーションを開発者が書くのを思いとどまらせるように決心していなかったとしたら、MicrosoftはNavigatorの利用シェアを制限し、ISVが非MicrosoftのJavaテクノロジーを使用も配布もしないように誘い、Javaクラスライブラリの拡張を妨げる努力もしなかっただろう。アプリケーション参入障壁を保護するゴールへのMicrosoftの献身は、MicrosoftのJVMと他のものの間の非互換性を作り出す努力によってWindows上で走るアプリケーションが他のプラットフォーム上よりも少ないという結果を招いたという事実によって浮き彫りにされている。Microsoftは、他のプラットフォームへポートしやすいWindows互換アプリケーションの開発を妨害することが価値あることであると感じた。Microsoftの干渉がなければ、SunのJavaの努力が今までに、アプリケーション参入障壁を弱めるに十分なだけ、Windowsと他のプラットフォーム間でポートを楽にしたかどうかは明確ではない。しかし、MicrosoftがJavaの進歩を大きく妨げるのに成功したことは明らかである。
 

VII.アプリケーション参入障壁を守るMicrosoftの努力の消費者への影響

 408.Internet Explorerのデビュー及びその急速な改良はNetscapeに競争的速度でNavigatorの品質を改善するインセンティブを与えた。Internet Explorerを別料金なしにWindowsに含めたことは、少なくとも、NetscapeにNavigatorに対する課金を止めさせたから、インターネットに対する一般の親しみやすさを増大させ、公衆がアクセスするコストを低下させた。したがって、これらの行為はウエブブラウザの品質を改善し、コストを低下させ、入手可能性を増大させるのに貢献し、それにより、消費者に利益を与えた。

 409.しかし、Microsoftは立派な品質の革新的ブラウザを開発し、追加的な料金なしにWindowsにバンドルした以上に、消費者に損害を与えた。また、証明されたように、Microsoftはアプリケーション参入障壁、及びそれによる独占力を、Netscapeのブラウザ及びSunのJavaインプリメンテーションを含む種々のミドルウエアの脅威から守るために企てた一連の行為を行った。これらの行為の多くは直接かつ容易に認識できる方法で消費者を傷つけた。また、競争をゆがめることによって、直接的ではないが、深刻かつ影響の大きな消費者の被害の原因にもなった。

 410.ブラウザなしのWindowsを要求したOEMにそれを提供するのを拒否することによって、OEMが出荷前にInternet Explorer又はそのわかりやすい呼び出し手段を取り除くのを防ぐことによって、MicrosoftはブラウザなしのWindowsを求める消費者を無視することをOEMに強要した。同じ行為が、Navigatorを好む消費者を無視すること、あるいは、増大する混乱、システム・パフォーマンスの低下及び制約のあるメモリによって、与えられたブラウザを取るか取らぬかだけの選択を消費者にせまること、のどちらかをOEMに強要した。Windows 98において、Navigatorがデフォルトとして設定されていても、消費者がInternet Explorerを呼び出す明確な手段の全てを削除しても、特定の状況ではInternet Explorerが立ち上がることを確保することによって、Microsoftは消費者を混乱、挫折させ、また、業務用の顧客の技術サポート・コストを増大させた。ブラウザを求めないWindowsの購入者 − 例えば、PCシステムでウエブ・ブラウジングができることを懸念する業務用の購入者、又は親及び教師の購入者 − がInternet Explorerを呼び出す目に見える手段を取り除くための努力をしなければならないだけでなく、ブラウザなしの新しいWindowsのバージョンよりも、動作が遅く、利用できるメモリが少ないPCシステムにも満足しなければならない(当然、彼らはWindowsの古いバージョンで利用できなかったブラウザに関係しない新しい機能を必要としている)。Windowsブート・シークエンスに特定のソフトウエア・プログラムをOEMがインプリメントする自由を束縛することによって、Microsoftは、OEMがWindows PCシステムを、消費者が望む、より混乱しにくく、よりユーザーフレンドリーにする機会を排除した。上記の行為を行うことによって、そして、Microsoftだけが提供でき、企業がそれなしでは活動できないと信じる価値あるものによって、その企業をそそのかして排他的な契約をさせることによって、Microsoftは、そうでなければNavigatorを選択するだろうその企業の消費者に、かなりの犠牲(ダウンロード、インストール、混乱、システム・パフォーマンスの低下、及びメモリ容量の減少)を払うか、Internet Explorerで満足するかのどちらかを強制した。最後に、Intelにプラットフォーム・レベルのNSPの開発を止めるように、また、その他のソフトウエア開発努力も削減するよう圧力をかけることによって、Microsoftは、マーケットに出れば消費者に価値があるかもしれないソフトウエア・イノベーションを消費者から奪った。これらの行為のどれもが競争擁護の正当性<pro-competitive justifications>を有していない。

 411.また、Microsoftが行った多くの戦術は不正な競争のねじ曲げによって直接的に消費者を傷つけた。MicrosoftがNavigatorに対してとった行為は、Intel互換PCオペレーティングシステムのマーケットにおいてMicrosoftに対して他の企業が効果的に競争できるようにアプリケーション参入障壁を抑制する可能性を有する一つのタイプのイノベーションを妨害した。その競争は消費者の選択をもたらしたであろうし、イノベーションを育んだであろう。また、Navigatorに対するキャンペーンはSunのJavaインプリメンテーションが広く受け入れられるのを遅らせた。このキャンペーンは、開発者がWindowsと他のプラットフォームの間でポートできる技術でJavaアプリケーションを書くことを困難にさせるというだけの目的でMicrosoftが行った行為と共に、アプリケーション参入障壁を消滅させる可能性を持つもう一つのタイプのイノベーションを妨げた。Microsoftの行為がなければ、NavigatorとJavaが既にIntel互換PCオペレーティングシステムのマーケットにおいて本当の競争を点火させたであろうことを認定する証拠は十分ではない。しかし、Microsoftは、これらの二つのミドルウエア・テクノロジーが一つの重要なマーケットに競争の導入を促進したであろうプロセスを遅らせ、そして恐らく完全に消滅させたことは明らかである。

 412.最も有害なのは、Microsoftの行為がコンピュータ産業におけるイノベーションの可能性を有する各企業に伝えたメッセージである。Microsoftは、Netscape、IBM、Compaq、Intel、及びその他の企業に対する行為をとおして、Microsoftのコア製品の一つに対する競争を強めることを追求すると主張する企業を傷つけるために、巨大なマーケット力及び莫大な利益を使用することを実際にやって見せた。これまでMicrosoftがこれらの企業を傷つけイノベーションを押さえつけることに成功したことによって、Microsoftに対する潜在的な脅威を示す技術及びビジネスへの投資が妨げられた。その究極の結果は、Microsoftの私欲に合致しないというだけの理由で、本当に消費者のためになるであろうイノベーションが、決して起こらないということである。

Thomas Penfield Jackson
合衆国地裁裁判官
日付: 1999.11.05 



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