抄訳 井上雅夫 1998.09.23  06.07終局判決〔是正措置〕   ↑UP 

マイクロソフト独禁法事件
98.09.14

DISTRICT OF COLUMBIA合衆国地方裁判所

民事訴訟 No. 98-1232
原告 アメリカ合衆国
被告 MICROSOFT CORPORATION

民事訴訟 No. 98-1233
原告 ニューヨーク州他
被告 MICROSOFT CORPORATION

メモランダム及び命令

 1998月5月18日、合衆国司法省(「U.S.」又は「司法省」)及び20州の司法省官(「州ら」)[1]は、別々の訴訟で、Microsoft Corporation (「Microsoft」)に対して訴状を提出し、連邦及び多数の州の独禁法の違反を申し立てた。司法省及び州らは、インターネット・ブラウザ・マーケットにおける競争及びパーソナル・コンピュータ(「パソコン」)・オペレーティング・システム・マーケットにおける将来可能性のある競争に回復不能の被害を防ぐために、別々に仮差止も申し立てた。裁判所は連邦民訴規則P. 42(a)に基づいて両訴訟を併合し、連邦民訴規則P. 65(a)(2)に基づいて両本案訴訟のトライアルを繰り上げ原告らの仮差止申立の審問と併合した。審問/トライアルは1998年9月23日に始まるようにスケジュールを決定する。

 原告らは基本的に同じ独禁法違反、すなわち:Microsoftは(1)Windows 98にインターネット・ブラウザを「抱き合わせ」ることによって不当に競争を抑制した;(2)多くのインターネット・プロバイダに「排他的取引」契約を結ぶことによって不当に競争を抑制した;(3)オリジナル機器製造業者(「OEM」)に「ブート及びスタートアップ・スクリーン」の制限を課すことによって不当に競争を抑制した;(4)抱き合わせ及び排他的取引契約を含む(しかしこれ限らない)多くの排他的及び略奪的慣行を通してオペレーティングシステム・ソフトウエアにおける独占を違法に維持した;及び(5)インターネット・ブラウザ・マーケットの独占を企てた、ことを申し立てている。州らは独占の「てこ<leveraging>」の別の請求をし、なかんずく、Microsoftはブラウザ・マーケットにおける競争上の利益を得るためにオペレーティングシステム独占を違法に使用したと主張する。また、各州にはそれぞれの州の独禁法違反を申し立てる未決の請求がある。

 U.S.及び原告州らは事実上同じ救済、すなわち、裁判所がMicrosoftに対して次のことの禁止を求めている。:(1)競合するインターネットブラウザの配布及び/又は販売促進を排除する契約を結ぶ又は強いること;(2)Microsoftがブラウザ機能を削除する実際に役に立つ方法を提供せず、かつ、ブラウザのライセンスを望まないOEMにロイヤリティの適切な割引を提供しないならば、オペレーティングシステム及びブラウザの「バンドルされた」バージョンを配布すること;(3)MicrosoftがNetscape Corporation(「Netscape」)ブラウザを含ませるか含ませないかで自社のものと同じに扱わないならば、オペレーティングシステムとブラウザの「バンドルされた」バージョンを配布すること;及び(4)Windows 98からMicrosoftのブラウザを取り除くことを選択するOEMに対して報復すること。

 Microsoftは申立を否認し、全ての争点についてサマリージャッジメント〔トライアル(証人尋問)なしで書証のみで判断する判決〕を申し立てている。裁判所は原告の請求の一つを除く全てについてサマリージャッジメントは不可能であり、論争すべき十分な重要な事実を認定する。「独占のてこ」はシャーマン法〔独禁法〕の明瞭な文言及びその範囲の一般的な制限に関する最高裁の判決の両方と一致しないから、裁判所は州らの第3の救済の請求に関してMicrosoftを勝ちとするサマリージャッジメントを認容する。States' First Am. Compl. at 26参照。その他の全ての点において、申立を却下する。

I.

 マイクロプロセッサー[2]はパソコンの「頭脳」である。多くの世界中のパソコンはIntel Corporationによってオリジナルに設計された「x86/ペンティアム」クラスのマイクロプロセッサの上で走っている。プロセッサに加えて、パソコンは他の多くの構成要素、ハードウエア装置(例えば、ディスクドライブ)及びオペレーティングシステムから構成されている。

 オペレーティングシステムはパソコンの「コマンド・センター」であり、プロセッサ、記憶装置、キーボード、スクリーン、ディスクドライブ及びプリンタのような周辺装置の間の相互作用をコントロールする。独立系ソフトウエア・ベンダー(「ISV」)はOSに埋め込まれた一般的な機能に依存したソフトウエア・アプリケーション・プログラム(ワードプロセッサ、ゲーム等)を書いている。アプリケーション・ソフトウエアはOSのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(「API」)を使用する(又は「呼び出す」)ことによってこれを行う。これらの機能はOSの側にあるから、ISVは彼らが開発するそれぞれのソフトウエア・アプリケーションにそれらを書く必要はない。

 1980年、Microsoftは他の会社からパソコン・オペレーティングシステムのライセンスを得て、改造し、1981年に「Microsoftディスクオペレーティング・システム」(「MS-DOS」)として売り出した。IBMがパソコン・マーケットに1981年に参入したとき、MS-DOSをそのオペレーティングシステムとして選択した。その結果、MS-DOSは莫大なセールスを享受し、やがてはそのマーケットの支配的なシェアを占めた。

 1985年、Microsoftは「Windows」と呼ばれる製品を売り出した。最初は、Windowsは「シェル」であり、ユーザーとMS-DOSオペレーティングシステムの間のグラフィカル・インターフェースとして作動し、テキストをタイプすることによるよりも、マウスでポイントしクリックすることによって機能を実行することをユーザーができるようにした。Windows及びMS-DOSは初めは別々に売り出されたが、Microsoftは、現在世界で最も広く使用されているパソコン・オペレーティングシステムである「Windows 95」において、基礎をなすオペレーティングシステムをグラフィカル・ユーザー・インターフェースに結合した。

 インターネットはより小さなネットワークをつなぐグローバルなネットワークである。World Wide Web (「ウエブ」)はインターネットの最も早く成長している部分であり、ハイパーマークアップ言語(「HTML」)で書かれたマルチメディア「ページ」からなり、 ハイパーテキストリンクで他のページと結合されている。「ブラウザ」はパソコンユーザーが場所を示し、アクセスし、HTMLをユーザーが理解できる書式に「翻訳」することによってウエブ上に位置するコンテント及びアプリケーションを表示することができるようにするように専門化したソフトウエア・プログラムである。

 消費者はブラウザをOEMがプレインストールしたソフトウエアとして、又はインターネット・アクセス・プロバイダ(「IAP」)からのダウンロード経由で得ることが最も多い。IAPはユーザーのコンピュータがウエブをアクセスするために使う電話番号とソフトウエアをユーザーに提供する。IAPには二つのタイプがある:(1)オンラインサービスプロバイダ(「OLS」)(例えば、America Online, Prodigy, CompuServe, Microsoft Network)はウエブ・アクセスに加えて、電子メール、news、娯楽及び同様な興味を持つ人々を「会わせる」場所を含むフルレンジのオンライン・サービスを提供する;(2)インターネット・サービス・プロバイダ(「ISP」)(例えば、AT&T Worldnet, Mindspring, Netcom)はより安く電子メール、ウエブアクセス及び基本ソフトウエアを含む「要点」パッケージを提供する。

 1994年7月15日、U.S.はMicrosoftに対してSherman法2条、15U.S.C.(「§2」)(LII)に基づく訴訟を開始した。原告らは、Microsoftは反競争的契約を結び、OEMに向けた違法なマーケット慣行に携わったと主張した。これらの慣行の効果は、司法省の主張によれば、パソコン・オペレーティングシステム・マーケットにおけるMicrosoftの独占を違法に維持するものである。

 Microsoftは最終的に「ファイナルジャッジメント」(又は「同意判決」)の登録に同意し、裁判所は1995年8月21日に登録した。同意判決はMicrosoftに訴えられた慣行を続けること及び他の反競争行為を行うことを禁じた。

 1997年10月20日、U.S.は、MicrosoftのWindows 95オペレーティングシステムのライセンスを得る条件としてMicrosoftのインターネットブラウザ(「Internet Explorer」又は「IE」)のライセンス及び配布をOEMに要求することによって、Microsoft は同意判決違反により民事的(裁判所)侮辱罪が判定されないことを証明せよという命令を求める申立を行った。1997年12月11日、裁判所は、Microsoftに侮辱罪を宣告するのは否定したが、訴えられたライセンス慣行を仮に差し止めた。United States v. MicrosoftCorp., 980 F. Supp. 537 (D.D.C. 1997)参照。

 Microsoftは12月11日の命令を控訴した。D.C.巡回区〔控訴裁判所〕は〔仮差止を〕取り消し、差し戻し、地裁は「Microsoftに告知することなしに仮差止を発したことにおいて手続的に、仮差止の根拠となる同意判決の内在する解釈において本質的に、誤りを犯したものと認める」と判示した。United States v. Microsoft Corp., 147 F.3d 935, 938 (D.C.Cir. 1998) (「Microsoft」)参照。D.C.巡回区〔控訴裁判所〕はMicrosoftが申し立てた〔事件付託取消〕執行令状の申請も認容し、特別補助裁判官への地裁の事件付託を取消した。同。

 控訴裁判所は「ためらいがちに<tentatively>」Windows 95/IEは同意判決の適用条件により許容される「統合された製品」であると結論した。同953頁。「統合された製品」は、控訴裁判所の判示によれば、その〔二つの〕機能が購入者によって別個に購入され、結合されたとすれば、その長所が利用できないという方法で、(別個にも販売されるかもしれないが共に働く)機能を結合したものである。同948頁。D.C.巡回区〔控訴裁判所〕は、スタンドアローン・ブラウザを結合したオペレーティングシステムと比較したときに、統合された設計による表面的にもっともらしい長所を有することの証明責任をMicrosoftは明らかに果たした、同950頁、しかしこの問題は「より完全な記録」に基づいて最終的に決定されることになるとした。同952頁。

II.

 MicrosoftはIntel x86/ペンティアム・マイクロプロセッサとコンパチブルであるオペレーティングシステムのマーケットにおいて独占を享受していると、原告らは主張し、また、現在の目的では裁判所はそのように推定しなければならない。[3] 司法省の経済専門家によると、1991〜1997年の間、Microsoftのマーケットのシェアは一貫してほぼ90%を保っている。David S. Sibley[4]の陳述書(「Sibley陳述書」)¶ 14 (International Data Corp., Operating Environments,Review and Forecast 1996-2001 (1997)を引用している)参照。Packard Bell、HewlettPackard、Micron、及びGatewayを含むいくつかのOEMは、Microsoftのオペレーティングシステムの商業的に意味のある代替品はないという確信を表明している。マーケットにおけるMicrosoftの支配的地位は、参入への高い障壁、最も重要なことにはその巨大な「インストールされた基盤」とWindowsでは走るが他のオペレーティングシステムでは走らない多数のソフトウエア・アプリケーションによって、強化されていることを原告らは前提としている。

 オペレーティングシステムのマーケットにおける強力な地位にもかかわらず、Microsoftの内部の電子メールのやりとり<correspondence>はこの会社が最近インターネット・ブラウザの人気が増大する中でそのオペレーティングシステム独占への脅威を認識していたことを示している。ブラウザは様々なオペレーティングシステム上でアプリケーションが走るのを可能とし、異なったオペレーティングシステムの間の非互換性に打ち勝つ可能性を提供しているから、Microsoftのオペレーティングシステム・マーケットのシェアを保護するキーとなる参入障壁をブラウザが減少させ又は消滅させる恐れがある。

 ソフトウエアは特定のオペレーティングシステム(又は「プラットフォーム」)上で走るように作られ、一般に異なったプラットフォーム上では機能しない。独立系ソフトウエア・ベンダー(「ISV」)はそれゆえ彼らが開発するソフトウエアのために複数のプラットフォームを選択し、彼らのソフトウエアの異なったバージョンをサポートしなければならない。Sun Microsystems, Inc. v. Microsoft Corp., 999 F. Supp. 1301, 1302 (N.D. Cal. 1998)を一般的に参照。Windowsの支配するマーケット・シェアのため、ISVは自然とWindows上で走るアプリケーションを書き、Microsoftの高いマーケット・シェアを維持する「ネットワーク効果」を導く;特定のOSのために書かれるアプリケーションがより多くなればなるほど、消費者がそのOSをより魅力的であることを見い出し、このようにして更なるマーケット・シェアが増大し、より多くの新しいソフトウエア・アプリケーションを導き、等々。

 「Java」[5]として知られる新しいプログラム言語はあらゆるプラットフォーム又はオペレーティングシステム上で走るようにアプリケーションを書くことができるように一部設計されており(「プラットフォーム横断」)、そのためISVは他の方法では非互換なシステム・プラットフォーム及びブラウザ上で動作する一つのソフトウエアのバージョンを作成し配布することができる。Javaで書かれたプログラムは中間インストラクションにコンパイルされ、「Javaバーチャル・マシン」(「JVM」)と呼ばれる仮想CPUをエミュレートする他のコンピュータ・プログラムによって「解釈」される。JVMは中間インストラクションをJVMが走っている特定のCPUによって理解できる言語に翻訳する。

 Netscape Corporation(「Netscape」)の「Navigator」ブラウザは、Javaが消費者に配布される手段の一つである、なぜなら、JVMコンポーネントはNetscapeのブラウザと共に出荷されるからである。 P.Maritz(Microsoftプラットフォーム・グループ担当の副社長)7/14/97電子メール(NetscapeをJavaの「主要な配布手段」として認識している)(Ex. 61 to Pls.' Joint Resp. to Microsoft's Mot. for Summ. J. & Reply in Supp. of Mots. for Prelim. Inj.)[6]参照。更に、Navigator自体それに対して多くのアプリケーションが書かれる一つの「プラットフォーム」である。

 それ〔Netscape〕がブラウザ又はJVM用に直接書かれたアプリケーションのホストを務めれば務めるほど、基礎となるオペレーティングシステムはより代替可能なものとなる。Navigatorのようなブラウザはいかなるオペレーティングシステム上でも走るであろうし、「クロス・プラットフォーム」アプリケーションのホストとなることができるから、Windowsの支配に潜在的な脅威を与えることになる。

 原告らが提出したMicrosoftの役員の陳述はこの会社が差し迫った脅威を認識していたことを示している。例えば、MicrosoftのCEOであるBill GatesはNetscape/Javaコンビによってオペレーティングシステムが「日用品化<commoditize>」する恐れがあると述べている。B. Gates5/26/95電子メール(PI Ex. 2)参照。Gates氏との1997年のミーティングに続いて、MicrosoftのBen SlivkaはJavaを「Microsoftに対する最大の脅威」として記述しており、「Javaチームがやっている仕事は明らかにあなたの神経に触れている」<"clearly the work the Java team is doing has hit a raw nerve with you"> とGates氏に書いている。SJ Opp'n Ex. 60。そして、Microsoftのウエブサイトに寄稿した一つのエッセイの中で、Gates氏はNetscapeのブラウザがソフトウエア開発のためのデファクト・プラットフォームになり、最終的にはソフトウエア・スタンダードの主流としてのWindowsを代替する可能性を認識している。States' PI Ex. 3。他のMicrosoftの役員はブラウザを「Windowsの代替プラットフォーム」として認識し、B. Silverberg Internet Platforms & Tools Div. Mtg. Agenda (強調は原文による)(PI Ex. 33)、結局はWindows は「すたれる<obsolete>」かもしれないことを認識していた。B. Chase4/4/97電子メール(PI Ex. 15)。一人の副社長は「状況は我々のオペレーティングシステムに脅威を与えつつあり、デスクトップ・アプリケーションは基本的なレベルで分け合う」と警告し、「Netscape汚染は撲滅されなければならない」と宣告した。J. Raikes 8/13/96 memo (PI Ex. 34)。

 訴えによるとMicrosoftはJavaとNetscapeによって生じた脅威を消滅させることに着手した。Gates氏が「SunからJavaの監督権をもぎ取る」ように命令し、SJ Opp'n Ex.60、そして、Javaを、Microsoftのシステム上で走るものにアプリケーションを実質的に制限するMicrosoftが「汚染した<polluted>」バージョンと呼ぶものに改造するように命令したと原告らは主張する。このゴールを達成するために、Microsoftは、訴えによると、顧客及び競争者にJavaの使用を制限し、「J/Direct」として知られるJavaのMicrosoftバージョンの使用に切り替える一連の反競争的契約を結んだ。例えば、T. Nielsen 8/25/97 B. Gatesへの電子メール(「我々はSunの道に障害物を置き、J/Directを使用してJavaで書くのを望む者を得ることを先行学習的に<proactively>に試みつつある。」)(SJ Opp'n Ex. 62)参照。

 原告らによると、MicrosoftはSunのJavaと一方の前線で戦いながら、同時にNetscapeに照準を合わせた。1996年7月、Netscapeはブラウザマーケットの48%のシェアを享受し、対照的にMicrosoftは11%であったと原告らは主張する。Microsoft 11/11/96"Internet Explorer Marketing Plan Review" (States' PI Ex. 26)参照。訴えによれば、Microsoftはその不釣り合いを改善することを「仕事#1」とした。例えば、P. Maritz 6/20/96電子メール(PI Ex. 92)参照。しかし、その仕事を達成するために、MicrosoftはInternet Explorerだけの長所で競争することに気が進まなかったと原告らは主張する。

 原告らによれば、Microsoftの戦略はブラウザ・マーケットにおける足場を得るためにオペレーティングシステム・マーケットにおける強力な地位をテコとすることに大きく依存した。もう一度、原告らは、彼らの主張を支持するMicrosoftの役員の同時期の陳述を強く頼りにしている。例えば、Microsoftの上級副社長Jim Allchinは、「どうすればIEが勝てるかわからない。現在の道はNetscapeがパッケージし製品を賢くしている全ての点を単にコピーすることだ・・・私の結論はWindowsをテコとしてもっと使わなければならないということだ・・・我々はWindowsをもっと役立てる必要がある・・・もっと特に[Windows 98]。」と書いている。[訳1]PI Ex. 94。

 もう一人のMicrosoftの副社長Moshe DunieはGates氏及び他の何人かの役員への電子メールで、「魅力的な洞察はこれだ、[消費者を]Netscapeからスイッチさせるために、我々は彼らに[Windows 98]へアップグレードすること[原文のまま]させる必要がある<we need to make them to upgrade [sic] to [Windows 98] >・・・Navigatorのインストールされた基盤を転換させ、Netscapeのブラウザ・マーケット・シェアのリーダーシップを凌駕するために、我々はこれらの財産をテコとして使用することができる。しかし、もし我々がこれを達成するためにIE4だけに頼るとすれば、我々は失敗するだろう。」と書いている。M. Dunie 2/24/97電子メール(States' PI Ex. 1)参照。Microsoft役員Christian Wildfeuerは、「IE4だけの長所でブラウザ・マーケットのシェアを増加させることは非常に困難だろう。人々にNavigatorの代わりに、IEを使わせるために[オペレーティングシステムの]財産をテコとして使用することがもっと重要になるだろう。」と明白に同意している。C. Wildfeuer 2/24/97電子メール(PI Ex. 23)。

 Microsoftの代表者は1995年6月21日にNetscapeからの首脳と会合をもった。両当事者はその会合の実体と目的に関して全く意見が食い違っている。MicrosoftはMicrosoftがWindowsにおいて使用するブラウザの単独の供給者となりNetscapeはAppleやUNIXのような他のパソコン・プラットフォームの単独の供給者となるという違法なマーケットの分割を提案したと原告らは主張する。この提案はIntel(あるソフトウエアの開発を続けないようにIntelに勧めた)、Apple(Windows用に「QuickTime」メディア・ストリーミング・ソフトウエアをAppleが販売するのを停止するように説得した)及びRealNetworksと呼ばれる会社(ベース・ストリーミング・メディア・プラットフォーム・ビジネスから手を引き、Microsoftの競争者と技術協力しないというReal Networkの保証を求めた)との同様な議論に含まれているMicrosoftの行動パターンと一致していると原告らは主張する。[訳2]

 Netscapeはマーケットの分割の提案を拒否し、それがMicrosoftにIEのマーケットシェアを得るために二つの部分の戦略を採用させたと原告らは主張する。第1に、MicrosoftはIEを無料で配布を始めた。一人のMicrosoftの副社長Paul Maritzは、訴えによれば、Intelの役員にMicrosoftは「[Netscapeの]空気の補給を断ち切る。彼らが販売している全てを、我々は無料で与えていく」つもりであると述べた。Steve Lohr & John Markoff, Why Microsoft is Taking a Hard LineWith the Government, N.Y. Times, Jan. 12, 1998, at D1 (PI Ex. 4)参照。

 Microsoftは法外な値段を付けてNetscapeを市場から追い出すことに甘んじることなく、Netscapeの製品配布手段を断ち切ることにも固く決意していたと原告らは更に攻撃する。Microsoftの内部書類によれば、消費者はIAP又はOEMによってプレインストールされたソフトウエアとしてブラウザを得ることが最も多く;全ブラウザ・ユーザーの約43%はこれらの二つのソースから彼らのソフトウエアを得ている。[7] 録取された証言において、Microsoftの役員はISPチャネルとOEMチャネルが最も重要な二つの配布チャネルであると認識していた。例えば、Myhrvold Dep. at 43:7-18参照。

 Microsoftは重要なマーケット参加者がIAP、OEMチャネルの両方を通してNetscapeのブラウザを配布しないことを確実にするために様々な違法な手段を使用したと原告らは主張する。訴えによれば、Microsoftはその目的を、(1)事実上全てのOEMによる新しいパソコンへインストールするために必然的に購入されるIEとWindowsの違法な抱き合わせの実施;及び(2)IAP及びインターネット・コンテント・プロバイダ(「ICP」)[8]が彼らの消費者に競合ブラウザを提供するのを制限するために、独占した財産−Windowsデスクトップ上の「不動産」−への支配の使用、によって達成した。

 Netscapeの主要な配布チャネルへの直接的な暴行に加えて、MicrosoftはApple及びIntelを含む主要なコンピュータ産業の会社に対しNetscapeのブラウザの彼らの使用及び支持を制限又は減少させる気にさせるためにその独占的な力を行使したと原告らは訴えている。Microsoftの努力の完全性の結果、ブラウザ・マーケットにおけるMicrosoftのシェアは1996年の早い時期の3〜4%から1998年の早い時期の約50%へと増加したと原告らは主張する。

 オペレーティングシステム・マーケットにおけるMicrosoftの優越自体は懸念を正当化しないことは原告は認めている。参入の高い障壁にもかかわらず、それ自体に残されたマーケットがWindowsの代替品を生み出さないであろうと信じる理由はない。Sibley Decl. ¶ 17参照。例えば、歴史的先例は、コンパクトディスク技術が音楽産業における同様な障壁に打ち勝つことができ、レコード音楽の標準的な媒体として、LPに取って代わることができたことを示している。しかしながら、もし、Microsoftのオペレーティングシステムの代替品を供給する自然な困難な仕事を更に制限する人為的な参入障壁をMicrosoftが作り出したことが証明された場合は、独禁法が関係する。

 Windowsへのブラウザの抱き合わせ及びOEM、IAP及びICPの競合ブラウザの使用の契約上の制限を含むMicrosoftの行為はMicrosoftにブラウザ・マーケットを独占させるために立案されたと原告は主張する。意図された成果は二つあり:第一は、Microsoftのオペレーティングシステム独占に対して競争上の圧力をかけることができるソフトウエア・プラットフォームとしてのインターネット・ブラウザを取り除くこと;第2は、ブラウザ・マーケットにおけるMicrosoftにとっての新しい独占を構築することである。そのような行為はSherman法第1条(LII)第2条(LII)[9]に違反すると原告は申し立てる。

III.〜VIII.(法律論)は翻訳省略

 以上の理由により、1998年9月のこの 14 日、

 原告州の第3の救済請求に対してサマリージャッジメントを求める被告Microsoftの申立は認容され、そして、その請求は、権利関係に不利益を与えることなく、却下されることが命令され、そして、

 更に、他のMicrosoftのサマリージャッジメントの申立は却下されることが命令される。

Thomas Penfield Jackson
U.S.地裁判事





 
1.このメモランダムでは U.S.と州らをまとめて「原告ら」という。

2.マイクロプロセッサは時に「プロセッサ」、「マイクロチップ」(又は単に「チップ」)、あるいは中央演算装置(「CPU」)と呼ばれる。

3.Microsoftは原告らの「関連するマーケット」の定義及びこれらのマーケットにおけるMicrosoftの力についての原告らの主張を争っている。しかしながら、これらの問題は「両当事者によって激しく論争され」、トライアルにおけるエコノミスト専門家証人の間の論戦で典型的に解決されることをMicrosoftは認識している。Def.'s Mem. in Opp'n toPls.' Mots. for Prelim. Inj. at 2, 3参照。サマリージャッジメントの申立を決定する目的で、裁判所がMicrosoftが関連するマーケットで独占者であると推定しなければならないことをMicrosoftは認めている。

4.Sibley博士はAustinのテキサス大学経済学教授である。

5.JavaはSun Microsystems, Inc (「Sun」)によって開発された。

6.このメモランダムでは、司法省の仮差止申立における書証を「PIEx」という;州らの仮差止書証を「States' PI Ex」という。;Microsoftのサマリージャッジメントの書証を「SJEx」という、そして、原告らのそれに対する反証を「SJ Opp'n Ex」という。

7.25%が彼らのブラウザを彼らの勤務先から、13%がインターネットからダウンロード、4%が小売りから得ている。Microsoft 4/97 "IE Market Review" (States' PI Ex. 25)参照。

8.インターネット・コンテント・プロバイダはDisney、Hollywood Online及びCBS Sportslineのような会社であり、ウエブサイトからニュース、娯楽及び他の情報を提供する。

9.Sherman法第1条(LII)は「通商を抑制する全ての契約、連合、・・・又は共謀」を禁止する。15 U.S.C. §1。第2条(LII)は「数州にわたる通商の独占をするために・・・独占、又は独占の試み、又は連合もしくは共謀」を禁止している。15 U.S.C. § 2。

 

 (訳1)例えば、「・・・・・もっと特に[Windows 98]。」において、「 」内は、証拠として提出されたマイクロソフト社内の電子メールをJackson判事が引用したものであるが、[ ]で囲まれた部分(この場合は、Windows 98)は、Jackson判事が前後の文脈から補って記載したか、代名詞を対応する名詞に置き換えたのかのどちらかである。ただし、この場合は開発コード名 Memphis を Windows 98 に書き換えた可能性もある。なお、このような電子メールの記載があること自体は、マイクロソフトも認めざるを得ないだろうが、今後行われる証人尋問等で、その意味については争うことになると考えられる。

(訳2)このパラグラフ以降は、原告が主張していることが主である。これらの主張は、これからのディスカバリによって提出される文書、電子メール、及び、今後行われる証人尋問で立証されることになる。


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