はじめにプログラムは、小説、論文、音楽、絵画などと同様に著作権で保護されています。基本的には、それで問題はないのですが、プログラムの著作物には他の著作物とは異なった面もあります。
少なくともこれまでは、アプリケーションプログラムは特定のOS(コンピュータを動作させるためのプログラム)の上でしか動作しませんでした。その結果、アプリケーションソフトを作成する場合は、できるだけ普及したOS上で動作するプログラムを作成するのが有利となり、それによって、さらにそのOSは普及し、デファクトスタンダードとなります。そうなると、他社がどれほど優れたOSを開発したところで、使用できるアプリケーションソフトがない以上売れるはずはなく、デファクトスタンダードを握ったメーカーの独占状態となります。技術の進歩もそのメーカの考え方だけによって思うままに行われることになり、また、ユーザーの選択の幅も狭まります。
だからといってプログラムの著作権による保護を否定するのがよいわけではありません。著作権は知的所有権(知的財産権と言われることもある)の一種ですから、通常の所有権と同様に考えればよいはずです。通常の所有権に基づいて、我々は様々なものを所有し、また、会社は利益を上げ、投資をします。その結果、特定の会社が大きなシェアを握り独占状態になり弊害が生じたとしても、所有権を否定する必要はなく、独禁法で弊害を取り除いてやればよいのです。
同様にプログラムも著作権の保護の結果、独占状態となり弊害が生じたら、独禁法で弊害を取り除いてやればよいはずです。通常の独禁法の適用と異なるところがあるとすれば、独禁当局や裁判所がプログラムやコンピュータ技術に不慣れであることぐらいだと思います。
最近、Javaというプログラミング言語が開発され、プログラムの世界に新しい時代が訪れようとしています。Java言語によって作成されたアプリケーションソフトはOSやブラウザやハードウエアに依存しないのです。Java言語によるアプリケーションソフトが多くなれば、自由にOSやブラウザやハードを開発して販売することができるようになり、競争の結果、ハード、ソフトが発展し、独占状態も起こりにくくなり、ユーザーの選択の幅も広がるはずです。しかし、もし、Java言語の変種ができれば、互換性は損なわれ、これまでと同様に独占状態が生じやすい環境になります。
現在、アメリカで、これらに関した訴訟が行われており、その結果が今後のコンピュータの世界に大きな影響を及ぼします。このページでは、これらの訴訟の判決を翻訳し掲示していきます。
翻訳しにくい用語や翻訳に自信がないときには<>内に原文を表示します。また、「 [1]、[2]、[3]、・・・」は原文の注であり、「[訳1]、[訳2]、[訳3]、・・・」は訳注で、リンクをはっています。 〔 〕は翻訳上説明のために付け加えたかっこです。
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翻訳文 / 原文(FindLaw)
当時は「ファイナルジャッジメント」(終局判決)と考えられていたが、現在からみれば、これが発端である。内容としては和解なので、同意判決とも呼ばれる。後に、Windows
95, 98 と IE 3.0, 4.0 が、IV E(i) 条のただし書きに記載された「統合された製品」に該当するかどうかが争われることになる。
翻訳文 / 原文(夏井研)
合衆国(司法省)は、マイクロソフトがパソコンメーカーにプレインストール用 Windows
をライセンスする契約においてファイナルジャッジメントに違反し、民事的裁判所侮辱罪(ファイナルジャッジメントを無視した民事上の罪)に当たるとして、1997.10.20に提訴。Jackson判事はわずか2ヶ月のスピード審理で、政府はマイクロソフトが違反したことを明白に確信させていないとして、民事的(裁判所)侮辱罪は適用できない、しかし、マイクロソフトの主張も裁判所を確信させていないとして、職権で、IE
3.0, 4.0 のライセンスを条件として Windows 95 および後継バーションをライセンスすることを仮差止し、更なるデスカバリ(証拠開示手続き)を行うよう促した。
翻訳文
マイクロソフトはWindows 98に限って、1997.12.11の仮差止命令の停止を申し立て、認容された。マイクロソフトの強力な法務力により、法的な障害が少なくとも現時点では取り除かれ、Windows
98は予定通り販売されることになった。
翻訳文(多数意見) 翻訳文(少数意見) / 原文(CADC)
この意見は、裁判所の意見(多数意見)と、Wald判事の一部同意・一部反対意見(少数意見)とからなる。多数意見の結論は、告知することなしに仮差止を発したことにおいて手続き的に、同意判決の解釈において本質的に誤ったとして、Windows
95についての地裁の命令を全面的に取り消している(Windows 98については5.12の命令で取り消し済み)。しかし、その理由は技術的にも法律的にも論理的であるとはいえず、この多数意見を執筆したWilliams巡回判事はマイクロソフトを擁護する立場の裁判官のようである。 I と IV が技術論であり、その他が法律論である。全部を読む時間のない方は、訳注5、6、10、11等をお読みください。Wald判事は同意判決の解釈に関してのみ反対している。少数意見は技術的にも法律的にも合理的であり、多数意見を批判する一方で、地裁のJackson判事に声援を送っているような意見である。
1998.08.08 この事件の今後の展開とこれからのソフトウエア・ビジネスについて、私の考えを書いてみました。
抄訳文 / 原文(DCDC)
司法省のホームページでは、1997年秋に始まった事件をContempt(侮辱罪)事件、1998年5月から始まった事件をトライアルと呼んでいるので、このホームページでも、そのように呼ぶことにします。
Microsoftがサマリー判決(事実審理なしの判決)を求めたのに対し、Jackson判事はこれを却下し、証人尋問が行われることになった。法律的にはそれほど重要なものではないが、マイクロソフト社内の電子メールが引用されている。なお、最近、マリッツ氏とオールチン氏は法廷で証言しています(ZDNet、ZDNet)。
1999.11.05 事実認定(地裁)
Microsoftは、Netscape、IBM、Compaq、Intel、及びその他の企業を傷つけ、イノベーションを押さえつけることに成功し、その究極の結果は、Microsoftの私欲に合致しないというだけの理由で、本当に消費者のためになるであろうイノベーションが決して起こらないということであると認定。
I.シャーマン法第2条「独占する会社又は独占を試みた会社は不法」
A.反競争的手段による独占力の維持
Microsoftは、ミドルウエアは、一度受け入れると、事実上アプリケーション参入障壁〔Windows上で走るアプリケーションが多いため他のOSの参入を困難にさせている障壁〕を浸透し、ライバルのオペレーティングシステムがIntel互換PCオペレーティングシステムのマーケットにスムーズに参入できるトロイの木馬であると認識した。この脅威を警戒して、Microsoftは、開発者がWindows特有APIに集中し、NetscapeのNavigator及びSunのJavaによって露出されたインターフェースを無視するように納得させようとした。Microsoftの組織的活動は、
Navigator及びJavaがIntel互換PCオペレーティングシステムのマーケットを長所での競争に開放する潜在力を実現するのを防ぐことに成功した。Microsoftは競争擁護の正当性を欠く排他的行為をとおしてこの結果を獲得したから、Microsoftの行為は反競争的手段による独占力の維持である。この会社の行為の略奪的性質からみて、本裁判所はMicrosoftはシャーマン法2条に基づく責任があると判決せざるを得ない。
B.反競争的手段による第2のマーケットにおける独占力獲得の未遂
Windows用プラットフォームレベル・ブラウザの開発を中止するようにNetscapeを納得させるMicrosoftの努力は、Netscapeがおとなしく従えばブラウザマーケットにおける当時のNavigatorのデファクトの独占力をMicrosoftに寄贈するのと同程度の大きな利用シェアをInternet
Explorerに残すことを知った上でなされたものである。ブラウザマーケットの独占未遂の責任の認定を十分支持できる。
II.シャーマン法第1条「通商を制限する契約、提携、又は共謀の禁止」
A.抱き合わせ
OEMはInternet ExplorerのないWindows 95の消費者需要を満たすことを許可されなかった。OEMがデスクトップ上のInternet
Explorerアイコンの削除を控えない限り、MicrosoftはWindows 98をライセンスすることを拒否した。追加/削除機能にInternet
Explorerを含めるのを中止し、デフォルトとして他のブラウザの選択を尊重しないことによって、消費者はWindows 98と一緒にInternet
Explorerの購入を強制された。バンドルされたバージョンだけを提供するというMicrosoftの決定は技術的必要性からもビジネスの効率性からも導かれず、競争を鎮圧するための故意かつ意図的な選択であった。Microsoftの契約及び技術的策術によるWindowsとInternet
Explorerの結合は、不法な抱き合わせを構成する。この結論は上記の控訴裁の1998.06.23判決と一致していない。控訴裁は、製品「改良」の名による統合に対する異常なまでの敬意と、事実における改良と反競争的目的の名ばかりの改良とを区別する裁判所の能力に対する自信の欠如の両方を示しており、最高裁の判例と少なくとも3点で矛盾している。
B.排他的取引契約
OLS、ICP、ISV、Compaq及びAppleとのMicrosoftの契約は、Navigatorの一部又は全部を排除してInternet Explorerを配布推奨することを要求した。
Microsoftの契約はブラウザ利用シェアを最も効果的にもたらすこれらの配布チャネルにNetscapeがアクセスすることをひどく制限した。しかし、全ての主要な判例は、責任はNetscapeが実際にウエブブラウザ・マーケットから閉め出されたかどうかで定めなければならないとしている。証拠はこれらの契約がNetscapeを完全に排除したという認定を支持していない。これらの契約については本裁判所は責任を課さない。
2001.04.08>今日の日経に、「抱き合わせ販売など懸念、ソフト取引に指針、公取委が年度内に、著作権乱用防ぐ」という見出しの記事が出ていました。(日本の)公取委はガイドラインを作るに当たってこの事件などを参考にするそうです。そこで上記の要約を読み直してみましたが、極めてわかりにくいことに気がつきました。私の翻訳が下手なこともありますが、Jackson判事の文章が極めてわかりにくいのも一因です。
修正司法省案(05.26DOJ)(Jackson判事の勧めにもかかわらず、司法省は再び2分割案を提出したようです。)
ノンフィクション作家の山根一眞氏が5.27の日経新聞の「デジタルスパイス」で、「同一遺伝子を持つ生命体は、同じ環境変化や病原菌の感染ですべて倒れる恐れが強い。今回の[ラブ・ウイルス]事件はそれと同じで、ウインドウズ+アウトルックという「デジタル遺伝子」を持つパソコンが寡占状態にあることが、原因の一つであることは間違いない。」と述べておられる。そのとおりだと思います。マイクロソフトのソフトウエアコードが全世界の全てのコンピュータにインストールされれば、一見、標準化がなされたようにも見えますが、一つのウイルスによって、全世界のコンピュータが動作不能になるという、極めて危険な標準化です。これに対して、司法省案のように、OS会社がAPI等を全てのソフトウエアベンダーに同時に提供するようになれば、インターフェースが標準化され、各ソフトウエアベンダーがそれぞれ独自のプログラムコードでソフトウエアを作成するので、ウイルスに強い標準化がなされることになり、これが本来の標準化です。
マイクロソフト反論(05.31MS)
命令(06.01DCDC)(裁判所は司法省に再修正案を6.05までに、マイクロソフトに6.07までに反論を提出するよう命令)
再修正司法省案(06.05DOJ)(司法省はマイクロソフトの主張を一部受け入れ「再編成<Reorganization>」を「企業分割<Divestiture>」と変更するような字句の訂正は行ったが、APIを内部インターフェースを含まないように定義するというようなマイクロソフトの主張は無視している。)
マイクロソフト最終反論(06.06MS)(マイクロソフトは期限より1日早く最終反論を提出)
翻訳文 / 終局判決原文(DCDC) メモランダム及び命令原文(DCDC)
マイクロソフトを2分割する地裁の終局判決〔是正措置〕がなされました。この是正措置は、企業分割については控訴期間中猶予されますが、それ以外の条項は控訴期間中も猶予されないので、マイクロソフトにとって極めて厳しい内容です。特に、3.b条は、これまでマイクロソフトが自社のInternet Explorer、エクセル、ワード等だけに使ってきたものも含めて全てのAPI等を、ISV、IHV、OEMにタイムリーな方法で公開するというものです。この条項は終局判決の登録日(6月7日)の90日後に発効します(6.a条)。判決後、マイクロソフトは終局判決の全ての条項を猶予するよう申立を行っていますが、90日以内にその申立が認められなければ、9月にこれらのAPI等が公開されることになり、Windowsに関連したソフトウエアベンダー、ハードウエアベンダーにとって、大きな嬉しい影響があると思います。
マスコミ報道は分割についてばかりで、この点に関してはほとんど注目されていませんが、ZDNet(6.08/6.12)では報道しています。私としては、分割よりもAPI等の公開の方が遙かに重要なことだと思います。分割はAPI等の公開を確実にする手段として必要なだけです。Jackson判事も司法省もそのように考えていると思います。
巧妙な訴訟テクニックを持っているはずのマイクロソフトが今回はミスが目立ちます。5.31のマイクロソフト案では3.b条に内部的インターフェースは含めないという修正要求をしましたが、6.a条の発効日については修正要求をしませんでした。6.05に司法省は3.b条の修正を無視し、6.06にマイクロソフトはソースコードの公開を強いていると的はずれの反論をし、裁判所がこれを無視したので、このような結果になったようです。
要約
I.イントロダクション
II.独占
A.独占力
B.反競争的行為
1.オリジナル機器製造業者に対するライセンス
2.IEとWindowsの統合
3.インターネットアクセスプロバイダとの契約
4.インターネットコンテントプロバイダ、独立系ソフトウエアベンダー、及びApple Computerとの取
引
5.Java
6.行為の経緯
C.因果関係
III.独占未遂
IV.抱き合わせ
A.それ自体テストに基づく独立した製品の調査
まで仮訳しました。
08.08>マイクロソフトが上告(ZDNet)。08.17>マイクロソフトが要求していた上告期間中の差戻の延期を控訴裁が却下(CADC)。
司法省とマイクロソフトが和解して、終局判決案を裁判所に提出しました(ZDNet)。
2002.11.01 メモランダム意見及び命令(地裁差戻審)
2002.11.12 終局判決(地裁差戻審)
11月1日の命令で、合衆国とマイクロソフトが和解して提出した終局判決案の一部修正を命じていましたが、修正した案が提出され、裁判所はそのまま終局判決としました。極めてわかりにくい内容ですが、Microsoftが禁止される行為の概要は以下のとおりです。
A.OEMが、Microsoftプラットフォーム・ソフトウェア(Windows、MicrosoftのJavaバーチャルマシン、IE、Media
Player、Windows Messenger、Outlook Express)と競合するOS、ミドルウェアの配布、奨励を行っても報復しない(III.A)。
B.大手10社(11社〜20社は第二の料金表(III.B.3.a))のOEMに対して均一な料金表でWindowsのライセンスを行う(III.B)。
C.OEMが、競合ミドルウェアをプレインストールする、そのアイコンを表示する、競合ミドルウェアを自動立ち上げする、他のOSを立ち上げる、プロバイダのオファーを行うオプション、及びIII.Hのオプションを実施することを契約で制限しない(III.C)。
D.Windowsミドルウェアが使うWindowsのAPIをMicrosoft開発者ネットワーク等を通して開示する(III.D)。
E.Microsoftサーバ製品と通信するためのプロトコルを合理的非差別的条件でサードパーティが使用できるようにする(III.E)。
F.Microsoftプラットフォーム・ソフトウェアと競合するソフトウェア又はその上で走るソフトウェアの開発、奨励等を行っていることを理由にソフトベンダ、ハードベンダに報復しない(III.F)。
G.Microsoftプラットフォーム・ソフトウェアを配布、奨励する条件で、又は競合ソフトウェアを配布、奨励しない条件で、報酬を受ける会社とは契約しない(III.G)。
H.エンドユーザ、OEMが、Microsoftミドルウェア又は競合ミドルウェアのアイコンを表示、削除できるようにし、また、自動立ち上げを可能、不能にできるようにする(III.H.1)。ただし、Microsoftによって維持されているサーバにアクセスするときにはWindowsはMicrosoftミドルウェアを呼び出せる(III.H.2.a)。
I.ソフトベンダ、ハードベンダ、プロバイダ、OEMに、本終局判決に規定されたオプションを実施するために必要な知的財産権のライセンスをオファーする(III.I)。
J.(a)アンチ海賊、アンチウィルス、ソフトウェア・ライセンシング、デジタル権管理、暗号化、又は認証システムのセキュリティを危うくするAPI、ドキュメンテーション、又はプロトコル;又は(b)政府によって法的に指示されたAPI、インターフェース、又はその他の情報については、サードパーティへの文書提出、開示、ライセンスは要求されない(III.J)。
以上の他に、「Windowsオペレーティングシステム製品を構成するソフトウェアコードはMicrosoftによって自由裁量のみによって決定される(VI.U)」と規定されているので、Windowsに何をバンドルするのかはMicrosoftが自由に決めることであることを合衆国と裁判所が明確に認めたことになります。Microsoftにとって極めて有利な判決だと思いますが、この終局判決のエンフォースメントが適切に行われるとすれば、OEMは報復を心配せずにLinux等をプレインストールすることができます。
翻訳文 / 原文(Sun)
Javaに関する契約違反事件。Microsoftに対して「JAVA Compatible」商標の使用の仮差止が命令された。命令文の内容はパソコン雑誌の記事と法律文書が混ざったような文章で、担当の
WHITE判事もコンピュータに強い裁判官のようである。命令後の両当事者の対応は、下記のプレスリリースを参照してください。
翻訳文 / 原文(Sun) // 契約書(MS)
裁判所はMicrosoftに対し、ライセンス契約違反であるからSunのソースコードの著作権を侵害したとして、90日以内にJNIをサポートし、VJ++は互換モードをデフォルトとし、拡張モード禁止の可能性の警告を命令した。不公正競争を行わないこと、15日以内に矯正方法をサイトで通知することも命令した。Microsoftの「顧客への通知(米、日)」がこの通知であるが、命令とMicrosoftの発表は正反対のニュアンス。時間がない方は訳注を。12.07>MicrosoftはWindows等にJNIをサポート。12.09>Sunはライセンス条件を緩和したが(ZDNet、Sun)、「我々は互換インプリメントに専念する会社、個人とソースコードを共有する」としており、非互換インプリメントに専念するMicrosoftとの訴訟は続行。12.17>Microsoftは控訴(ZDNet、MS(米、日))。12.21>Microsoftは期限延期を申請(ZDNet、MS)。01.23>Microsoftは仮命令に従うVJ++を含むVisual
Studio 6のサービスパックをリリース。控訴中だが、これでMicrosoftは仮命令に一応従った。
上記1998.11.17の地裁の仮差止命令に対する控訴裁判所の判決。控訴裁判所は、契約の解釈でSunが勝ち、また、Microsoftの行為が侵害した可能性が高いという点で、Sunに同意するが、著作権侵害請求に適用できる回復不能の被害の推定を発動すべきではなかった点で、Microsoftに同意するとして、地裁の仮差止を取り消し、差し戻した。
SunとMicrosoftがJava契約事件で和解しました(ZDNet)。Microsoftが2000万ドルを支払い、SunからMicrosoftへのJavaライセンス契約は了します。ただし、マイクロソフトは今後7年間、現在市販しているJava製品を修正なしに配布することができます。なお、独禁法上の主張は放棄せず、留保しています。
この事件の発端は、Sunが「一度作れば、どこでも走る<write once, run anywhere>」というスローガンのもとにJavaを開発したことです。しかし、それが実現すると、Windowsのインストールされた基盤の価値はなくなり、Microsoftにとっては独占力を享受できなくなります。そこで、MicrosoftはSunとライセンス契約を結び、開発ツールVJ++を開発し、「VJ++で作成したプログラムは、どこでも走るが、拡張機能を使えば、Windows上では特によく走り、他では走らない」、ようにしました。それに対して、Sunが契約違反及び著作権侵害で訴えたのが、この事件です。最終的に、和解が成立し、MicrosoftはJavaから手を引くことになりました。今後、Microsoftは.NET戦略を展開します。これは、「Microsoftが供給するプログラム開発環境Visual
Studio.NETに含まれるプログラミング言語Visual Basic.NET、C#、Visual C++.NET、JScriptのどれで書いても、どこでも走る、しかし、Windows上なら、特によく走る」、というもののようです。Java陣営が勝つのか、.NET陣営が勝つのかは、法廷ではなく、マーケットが決めることになるはずです。もっとも、Microsoftが、Windowsの独占力を.NETを普及させるためのテコとして使用すれば、再び、法廷に呼び出されるかもしれません。