サイバー教皇領での冒険(Infiniverse Newsletter Vol.1 No.6より)  このシナリオは、サイバー教皇領ソースブックのために作られたもの だった。しかし、もっとクールな資料をソースブックに入れるために、 ページの余裕はなかった。そこで、資料のうちのいくらかはインフィニ バース誌で紹介するだけにした。購読してないお友達には……くどくど 言ったりしないように。 「戦うか、死ぬかどちらかだ。マルローの信徒どもに妥協なんてない。」  ―― ハンス・ストラッカー  サイバー教皇領での冒険といえば、生存と自由のための必死の戦いを 連想する。少数のヒーローたちのグループを、サイバー教会の権力と対 抗させる冒険である。戦いは一様ではない。教会が最大勢力で、何千人 という情報部員やスパイがいる。サイバー教皇領を打破するための戦い は、個人が英雄的行為や自己犠牲をする多くの機会によって、長引くで あろう。しかし、サイバー教皇領で行動しているストームナイトは、幸 運にも自分の武器を使って戦うことができるのである。使いなれた武器 を持って、ヒーローたちは戦いを五分五分にすることができる。教会警 察の大部隊を倒そうとすることは無駄なので、繰り返し小人数を各個撃 破することができるのでだ。  サイバー教皇領の戦況は厳しいし、厳格な神政国家の真っ只中で生き 残ることは、簡単なことではない。PCたちは他人の振る舞いに注意を 払い、サイバー教皇のスパイや情報部員がこそこそ隠れているのを見極 めなければならない。見つかるのを避けるには、移動しつづけるという のが良い方法である。もう一つの方法としては、自由パリのテリトリー で隠れ家を見つけることだ。  ゴッドネットの膨大なデータ保管所は、サイバー教会に対する戦いに おける最良の情報源である。デッカーは、ゴッドネットに入って、自分 たちや同業者の情報を編集したファイルを破壊して、サイバー教会の活 動についての情報を手に入れたがっている。偽の身元とパスワードでゴッ ドネットに入れば、自由に動き回ることができるのだ。サイバー教皇領 内での行動の自由というのは、重要である。偽の身元証明を使えば、街 から街へと移動できるが、いつでも見破られる危険性を背負うことにな る。もしそうなったら、PCたちは隠れておいて夜にだけ移動するよう にしなくてはならない。幸運なことに、まったくサイバー教皇に屈して いない場所もある。パリ、マルセイユ、レ・ヴォージュ、中央山地であ る。どこも安全な避難場所を提供してくれる。そして、多くの村や街に は最低1つのレジスタンス組織がある。こういう場所は、ヒーローがサ イバー教会の軍勢を繰り返し攻撃するための拠点を提供してくれる。  進歩した武器が利用できるので、戦闘ではいつも死の危険がある。サ イバー教皇領にいるヒーローは、失敗が続いた時の問題打破には武力を あてにするべきである。<隠れ身><裏街><魅了><説得>は、しば しば純粋な戦闘技能よりずっと役に立つだろう。しかしいつでも、戦闘 しか選択肢がない場合がある。その時は、まず確実に優位に戦える状況 を用意しなければならない。 冒険のアイデア  以下は、アイデアだけであり、シナリオになるほど肉付けされていな い。しかし、筋書きの概要をセッション用のシナリオへと膨らませるこ とができる。これらは、サイバー教皇領で行って欲しいシナリオのタイ プの見本である。 1.コレラ  パリを弱体化させる計画の一環として、サイバー司祭は水道水をコレ ラで汚染する。 第1幕:水に潜む死  2人の自由パリメンバーが路地で死んでいるのが発見される。喉は掻 き切られていたが、武器や防具は奪われていないため、間違いなくスト リートパンクやイカレ野郎の仕業ではないのは明らかだ。引きずった跡 が、浄水プラントに続いている。プラントで、衛兵が殺されているのを 発見する。プラント内に入ると、3人の変装したサイバー司祭が、水道 水に何かを注ぎ込んでいるのに出会う。大きな音を立てたりしなければ、 少なくとも3個の容器のうち1個を注ぎ終わる前に、サイバー司祭の機 先を制する。汚染された水が上水道に流れていくのを止めるのには間に 合わない。  (サイバー司祭の持っていた)容器を調べると、高濃度のコレラ菌が 入っていたことがわかる。水を飲まないように呼びかけても、時すでに 遅しで、パリはコレラの大流行に直面するのである。どうしてもワクチ ンが必要だ。最近、医療物資を運ぶ教会警察の輸送部隊を、レ・ヴォー ジュのレジスタンス組織が襲撃した。PCたちは、医療物資を取りに行っ て、パリに持ち帰ってくるように依頼される。まず、パリの外で行動す るために、身分証明書が必要だ。偽のIDでゴッドネット内のストラスブー ル大聖堂の構造物に入ることが提案される。その一方で、偽造屋が証明 書を準備し、他のメンバーが旅用の衣装を用意することができる。 第2幕:パリ往復旅行  旅では、教会警察の巡査による身分証明チェックや、山賊の略奪を避 けるのに苦労する。最後に、PCたちはレ・ヴォージュのレジスタンス に接触し、ワクチンをパリに運ぶ計画をたてる。  ゴッドネットに入ると、教会警察の輸送部隊が、神の御手(誰も聞い てないところでは、HOGと呼ばれている)のための武器を載せて、ストラ スブールを出発してパリに向かう予定であることがわかる。PCたちは 再び偽IDを手配し、ワクチンを積んで2台のダビデホバーカーでパリへ と向かう。レジスタンスは、輸送部隊を襲撃してPCたちのために時間 稼ぎをすることに同意する。 第3幕:ひとっ走り  パリ郊外に辿り着くまでは全て順調であるが、PCたちを待ち受けて いた神の御手のメンバーに止められる。彼らは、PCたちを神の御手の 本部に連れて行こうとする。交渉系技能や隠れ身を使って、本当の身元 がばれる前になんとか逃れる。  PCたちはパリに辿り着き、伝染は避けられる。少なくとも、ワクチ ンの供給が続く限りは..。 2.パリでの銃撃戦  サイバー教皇領は、国民運動に市街中心部に侵入するよう命じた。彼 らの目標は、ビル爆破によってパリの亡命者と市民の間に恐怖心を行き 渡らせ、人々を家から逃げ出すようにすることである。 第1幕:パトロール  PCたちがパリをパトロールしていると、国民運動と自由パリのメン バーの間で、銃撃戦を繰り広げている場所に出くわす。自由パリは建物 の中から、2台のポンコツ車の陰にうずくまっている国民運動のメンバー を射撃している。PCたちは、国民運動を背後から捕まえられる場所に いる。戦闘後、ルランシーのデータ教会から送られた命令書のコピーを 見つける。国民運動に、パリの防備を調査させえる命令書である。 第2幕:ルランシー  PCたちはゴッドネットに入り、ルランシー構造物に入る。データ保 管所で、命令書を含んだファイルを発見し、2日以内に国民運動にパリ を襲撃させる、という内容である。このファイルでは、パリのユダヤ人 地区が攻撃の対象である、と強調されている。 第3幕:市民たちへの警告  PCたちは、襲撃についてをレジスタンスに知らせ、襲撃計画にあっ たユダヤ人コミュニティのリーダーたちに警告を送る。彼らは接触を求 めてきて、戦場を後退させるための計画を必要とする。バリケードが築 かれ、建物には防御工事を施す。  PCたちは、子供と老人をソルボンヌに逃がすように頼まれる。一行 はソルボンヌに行き、そこで非難した人たちを世話してもらえるように、 亡命者たちと交渉する。  自らすすんで、あるいはレジスタンスからの助言によって、関わって いる国民運動の人数を確認するために、PCたちは北へ向かって移動す る。そして、郊外に最低700人が集まって、攻撃に備えていることがわか る。理想的には戦闘は避けるべきなので、PCたちは結果を報告しに戻 ることになる。 第4幕:「運動」を止めろ  PCたちは突入の日に、敵が計画通りパリ中心部まで進むのを見下ろ せるビルに身を置く。他のレジスタンス組織は、自由パリやユダヤ人コ ミュニティと同じエリアにいる。夜が明け、最初に国民運動の巡察隊が ユダヤ人地区に接近しているのを発見する。国民運動は、激しい十字砲 火に取り囲まれ、手酷い損害を受けて退却する。 3.破滅の炎  パリ南東の街、ロゼー・アン・ブリーで、宗教裁判が起きている。地 域のレジスタンス、その他の異端者などが検挙され、その中にPCの1 人の親しい友人もいる。 第1幕:火あぶりの試罪  ゴッドネット内の情報では、明日の朝裁判として、公開試練を行うら しい。そして、民衆を満足させるために虜囚の何人かを火あぶりにする ようだ。それ以外の囚人はアヴィニョンに連れて行かれ、さらに尋問さ れることになるだろう。  今のところ、囚人たちはその地域の神の救護院に囚われている。救護 院の地図とセキュリティシステムは、ネット内でその構造物に侵入する ことで手に入れられる。レジスタンスからの情報で、その地域のレジス タンスの中で1人だけ、何とか検挙を逃れた事がわかる。PCは彼女に 会い、その組織のメンバーを識別するための合い言葉を教えてもらう。 第2幕:燃えて死にゆく  ロゼー・アン・ブリーに到着し、PCたちは街が激しく病的な興奮に 包まれていることに気づく。市民は異端者の死について大声で騒ぎ立て、 よそ者を疑っている。PCたちは、多くの市民からじろじろ見られるこ とになる。PCたちが「自分たちは異端者の死を見届けに来た」と言え ば、それ以上疑われることはない。  知人に会うと、隠れ家として屋根裏部屋を提供してくれる。ここから は、火あぶりが行われる広場が良く見渡せる。彼女は知らないが、彼女 の家は教会警察に見張られている。  PCたちがどれだけ油断なく行動しているかによるが、家から通りを 挟んだ向かいに張り込みを発見すれば、他の計画を作ることになる。も し見つからなければ、教会警察の巡査と宗教裁判官が1時間後に到着し、 PCたちを逮捕する。  張り込みを見つけたか、家から逃げ出すために戦ったか、どちらにせ よ隠れる場所は他に1つしかない。街の郊外にある古くて使われていな い小屋である。ここから、火あぶりを邪魔するか、夕暮れを待って神の 救護院から残りの囚人を解放するか、どちらかの計画を立てる。  火あぶりを邪魔するなら、こそこそと街へ忍び込み、広場に据えられ た杭の近くに陣取るしかない。その前に囚人を解放している時間はない。 迅速に行動し、注意を逸らすような行動によって、PCたちは教会警察 のガードを打ち倒し、囚人を逃がすべきである。 第三幕:病院  神の救護院は街の郊外の崖の上にある。一本しかない道はしっかりと 警備されているので、崖と壁を登ると言うのが最善の道である。救護院 の構造物の中にいるデッカーは、他のPCが侵入する時に、警報を止め て救護院内のどこか別の場所に注意を引くために気を逸らすことができ る。  一旦囚人たちが解放されたら、比較的安全なパリへと戻ることになる だろう。PCたちに操縦技術の練習をする機会を山ほど与えてやるよう な、道路でのドラマチックなチェイスにすべきだろう。 4.巡礼の旅  いくつかの真実の十字架が、この何世紀かに姿を現した。それらは全 て偽物であることが明らかにされている。今回は、どうやら本物のよう だ。 第1幕:秘密のメッセージ  4人のサイバー司祭が、レ・ヴォージュあたりのレジスタンスのメン バーによって発見されている。奴らは、サイバー教皇領との戦いに重大 な影響を及ぼすかもしれない情報を持っている。  エージェントを捕らえてサイバー教皇の注意を引いてしまう危険を考 え、レジスタンスはパリに秘密のメッセージを送り、すぐにストームナ イトの援助を要請する。PCたちは、本当に急ぐことになる。到着して、 PCたちはレジスタンスのリーダーと会う。彼女は、4人のサイバー司 祭がリアリティストームのそばで野営しており、明らかにストームを突 破するチャンスを待っている、と告げる。レジスタンスは、PCたちの ためにコアアースのシトロエン(訳注:フランスの自動車メーカー)製 の自動車と、ドイツ国籍の偽のパスポートを用意してある。心配なのは、 サイバー司祭たちがレバノンに、正確にはレバノン山脈の山中にある修 道院に、向かっているらしいことである。この地域は現在、新制ナイル 帝国の支配者であるハイロード、Dr.メビウスの支配下にある。サイ バー司祭たちは、Dr.メビウスと何らかの取引をするつもりのようだ。 PCたちは、修道院へ行き、可能なら奴らが何をしようとしているのか を確認して妨害するよう依頼される。 第2幕:嵐を抜けて  リアリティストームについての推測は正しい。話し合いが終わると、 連中が嵐を抜けていったという情報が届く。シトロエンに飛び乗り、P Cたちはコアアースのドイツ、トルコを通り抜けて、レバノンへと向か う。道すがら、修道院を目指しているのが奴らだけではないことに気づ く。サイバー教皇は、他にも2組のエージェントを派遣しているのだ。 PCたちは、ナイル帝国のレルムに入る前に、そのうちの1つと出会う。 PCたちはDr.メビウスの手下に違いないと確信し、サイバー司祭た ちはPCたちを捕らえ、嵐の向こうのレルムについての情報を尋問して 聞き出そうとしているのだ。この遭遇によって、サイバー教皇領が新制 ナイルと手を結んでいないことが、PCたちはわかる。事実、サイバー 司祭っを尋問すれば、異教徒のDr.メビウスをどれほど軽蔑している かは明らかである。  ナイル帝国に入り、この場所のアクシオムの影響を受ける(ナイル帝 国ソースブック参照)。レバノン山脈への道を進んでいると、Dr.メ ビウスのエージェントも修道院を目指していることに気づく。PCたち の前方にはサイバー教皇のエージェント、後方にはエジプトのエージェ ントがいることに気づく。PCたちはついに修道院に辿り着くと、サイ バー教皇のエージェントが大修道院長と話している。PCたちがどうし たいかにより、エジプトの連中が修道院に入るまで隠れて待つことも、 先に修道院に行くこともできる。また、修道院を運営しているコプト教 徒(訳注:コプト教会は、エジプト古来のキリスト教会である)の修道 士に捕まることもできる。 第3幕:修道院  修道院には、真実の十字架が1つあり、それはエタニティーシャード である。修道院の修道士はDr.メビウスに対立し、真実の十字架を安 全に保管しようとしている。サイバー教皇のエージェントは十字架を手 に入れて、Dr.メビウスのエージェントが突っ込んでくる前に逃げる。 PCが修道士たちに捕まっているなら、自分たちもDr.メビウスに敵 対していることを修道士に納得させるチャンスがある。もし成功すれば、 PCたちは解放され、修道院を守る手助けを求められる。修道士に捕まっ ていなかったら、修道士を包囲するのに協力を申し出るとか、外から修 道士を支援することさえできる。  ゲームマスターの希望に従って、修道院の防衛を成功させてもいいし、 陥落させてPCたちに修道士と脱出するように仕向けても構わない。ど ちらの場合でも、サイバー教皇のエージェントが真実の十字架を持って 逃げているのに気づく。 第4幕:フランスへの帰途  PCたちは、Dr.メビウスの部隊を避け、サイバー教会のエージェ ントがフランスにつく前に捕らえなければならない。  ナイル帝国の外でも、Dr.メビウスのエージェントは追跡を続ける。 苦労の末、PCたちはサイバー教皇のエージェントを捕まえて十字架を 手に入れる。そして、Dr.メビウスの部隊を避けなくてはならない。  全てが上手くいくと、PCたちは真実の十字架でリアリティストーム の中に通り道を作って、サイバー教皇領に戻る。彼らが手にした真実の 十字架は、サイバー教皇との戦いに役立てることができる。不幸にも、 Dr.メビウスはそう簡単に諦めるような奴ではないので、真実の十字 架を探すためにサイバー教皇領にエージェントを派遣することになる。 真実の十字架  真実の十字架のパワーは以下の通り。  コズム:コアアース  ポシビリティ:何百も  使用難易度:15  目的:イエスが我々の罪を請け負うために死んだという世界を思い出     させる  グループパワー:センド  制限:真実の十字架のポシビリティは、《精神力》ベース技能や奇跡    の効果を増やすために使える。また、<医学><応急手当て>    <心理学>を使用した時に、そのロールを増やすために使える。    他の種類の技能には使えない。また、リアリティストームを通り    抜ける際に失うポシビリティを肩代わりするためにも使える(但    し、ストーム戦闘のどちらかの当事者には適用されない)。この    効果は、半径3メートルの範囲を持つ。十字架に触れた者なら、    十字架が持つ能力を知ることができるだろう。 コラム:恐怖のストリート  カンヌの雰囲気は、重苦しい。その日は朝から宗教裁判で騒がしかっ た。何百人もの被疑者が検挙され、駆り集められた列車で、操車場は一 杯だ。多くのものには、隣人や親戚が立ち寄っている。アヴィニョンの カトリックに心酔する者が何千も、手にロザリオや十字架を持ち、通り に列をなし、解放の英雄であるかのように宗教裁判官に歓声を上げる。 連れて行かれる異端者たちに、群衆は石ころや腐った果物を投げつけた。 6人の異端者が死んで通りへと倒れた。熱狂的な群衆による犠牲者だっ た。  宗教裁判官は、4つのグループに分れて街を巡視した。どのグループ も、サイバーウェアで強化され、サイバー教皇領の兵器工場における最 新の製品を携行していた。高層住宅の上にある隠された場所から、ストー ムナイトであるハンス・ストラッカーとマリー・クレアが見つめていた。 マリーは、手の中の小さなスクリーンに映し出される拡大映像を観察し た。映像は、ハンスの腰に繋がっているケーブルによって送られてきて おり、ハンスがサイバーアイで見たものを、マリーも見ることができる のである。「手も足も出ないと思うけど。助けるために私たちができる ことなんて、何もないんじゃない?」とマリーは言う。ハンスは肩を竦 めて言う。「何が起こるかを、ただ注意して見つめるだけだな。群衆を 刺激するような事をするのは自殺行為だ。」  ハンスは、サイバーアイで群衆をざっと見て、サイバー司祭の一団を ズームした。奴らはドアを破ろうとしている。ハンスとマリーの宿のド アを、だ。  ハンスは、素早く脚から配線を抜いて、飛び起きながら告げた。「こ こを離れる時が来たな。俺の背中におぶされ。いくぞ。」  マリーは、拳銃をリストホルスターに取りつけ、ハンスの首に抱きつ いてから、彼の背中にぶら下がった。ハンスは階段へと走る。サイバー レッグにより、彼は常人よりずっと速く走る。ドアを開けて階段を飛び 降り、そこで一旦止まる。マリーがハンスの背中から滑り降り、ハンス はサイバーアイを眼帯で隠した。2人のストームナイトは、歩いて通り へと出て、群衆に紛れ込んだ。  2人は、街の郊外へと向かった。サイバー司祭の巡視から2回身を隠 し、自分たちの車に辿り着いたところで、車の周りに4人のサイバー司 祭がいることに気づいた。  マリーが手首を曲げると、銃が飛び出してきて手に収まった。彼女の 傍らでは、ハンスが人差し指の先端を弾いて、内蔵したレーザー火器の 青い水晶を露出させた。2人は、そろそろとサイバー司祭に近づいていっ た。  サイバー司祭の1人が振り向いた。センサーがストームナイトの移動 を察知し、そのサイバーアイの中で赤いLED(発光ダイオード)がまたた いた。ハンスの指からの青いレーザー光が、サイバー司祭の首を薙いだ。 醜く赤い傷が浮き出て、サイバー司祭は倒れた。マリーの銃が火を噴い た。銃の照準システムからの情報が彼女のスマートガンリンクに供給さ れ、標的からの距離と偏差を、彼女は心で直接理解した。引き金を引く と、次々と弾丸が銃から飛び出した。サイバー司祭たちは、車の陰で銃 弾を避けようとしたが、上手く隠れられたのは1人だけだった。  生き残った司祭は、スロートマイクを指で弾いた。しかし、助けを呼 ぶ前に、ハンスがサイバーレッグによって車の上へと飛び乗った。金属 製の脚による蹴りで、司祭は頭蓋骨を砕かれて後ろに吹っ飛んだ。  マリーは車のエンジンをかけ、車は道路へと飛び出した。屋根の上か ら、ハンスは追手がいるかどうかを確かめ、いないことを確信して、助 手席へと這い降りた。