システム概要

ここでは、システム面から見たTORGの魅力をご紹介します。
専門用語とかはできるだけ解説していきますが、不明な点などがありましたら御指摘頂けると幸いです。
また、誤りや疑問がありましたら、こちらもご指摘願います。


●システムの特徴

システム面におけるTORGの特徴は、以下のようなものです。
★トップページへ ★洞穴入り口へ ★テーブルトークRPG総合案内へ ★トーグのページへ

1.ヒロイック志向システム

ポイント:世界観に支えられたポシビリティドラマデッキ(カード)によってプレイヤーの意志を反映しやすい。

通常のテーブルトークRPG(以下TRPGと略す)のシステムは、大きく分けて2つに分けられます。それは、プレイヤーのキャラクター(以下PCと略する)にヒーロー性があるかないかです。
ヒーロー性のないゲームでは、某かの行動をする場合には、一般に「ダイスを振り」「能力や技能、難易度と比較して」「成功、失敗(あるいはどの程度成功したか、失敗したか)を判断する」という手順を踏みます。ここに、プレイヤー自身の意志は反映されません。ここで成功させたい!と思っても、ダイスの目が悪ければ失敗します。それを避ける術はありません。
一方ヒーロー性のあるゲームでは、「ダイスの目」「難易度」「能力や技能」「成功の度合い」のいずれかに、プレイヤーの意志が介入できます。この介入には2種類あり、先付け(例えば、あらかじめ難易度を下げておいてからダイスを振れば、成功したい行動の成功率を上げる事ができます。)と後付け(ダイスの目が悪かった時に振り直したり、振り足したりする。あるいは求められた成功の度合いを良くするなど。)、あるいはその両方が可能なものもあるでしょう。
これらの介入は、一般にヒーローポイントとかラック(幸運)、場合によっては気合という、御都合主義なシロモノによってなされます。

では、TORGではどうでしょうか。上の分類では、「ヒーロー性があり」「後付けの介入が可能な」システムになります。しかし、他のゲームと異なる点は、TORGにおける介入は、「ポシビリティ(可能性)のエネルギーを利用する」という世界観による裏付けがあります。
TORGの世界観では、「世界には可能性のエネルギーがあり、命あるものと命なきもの(いわゆるモノ)の間を循環する」という前提が存在します。一般の生物は、この循環に対してささやかな干渉しかできませんが、中にはわずかながらこの循環に強く干渉する希有の才能を持った者(ポシビリティ能力者といいます)が存在するのです。TORGにおけるヒーローや強力な悪人にはこの才能があるのです。
可能性に干渉する事で、不可能と思われる難題を克服したり、即死するであろう大怪我をカスリ傷ですませたりする訳です。そして、TORGの舞台であるポシビリティ戦争においては、「可能性の力こそが最大の武器」なのです。多くの才能なき人々に「希望」という可能性を与えるのが、ヒーローであるストームナイトの使命なのです。

TORGには、さらにドラマデッキ(カード)とよばれるアイテムが存在します。これは150枚強のカードで構成されており、プレイ中は各プレイヤーが(基本的に)4枚づつ所持します。カードはポシビリティ以上に強力な場合もあります。様々な効果を使用者の意志で得る事ができるのです。カードというのはヒーローの心の余裕であり、カードを有効に使うことで、よりヒーローらしく振舞えるようになります。尚、PC以外のいかなるキャラクターもカードを使う事はできません。そのセッション(TRPG1回のプレイのこと)におけるヒーローにのみ与えられる特権です。


2.メタジャンル・システム

ポイント:世界観の定量的な扱いにより、世界を把握しやすい。また、様々な数値を対数で扱う事で、同じ土俵で扱いきれる数字としている。

一般のTRPGでは、一つの決まった世界をプレイする事が多いはずです。つまり、ある一つの世界観を共有してプレイすることになります。汎用システム(多くの世界観でのプレイを前提とするシステム。一般には、基本となる判定ルールやキャラクター作成ルールが共通で、そこに世界によるルールを付加して使用する。)などの多くのジャンルを持つTRPGシステムであっても、1回の冒険で複数の世界を取り扱う事はほとんど無いでしょう。
TORGでは、キャラクターそれぞれが異なる世界観(リアリティと呼びます)を持ち、お互いに理解し得ない技術や才能を持っています。
各キャラクターや場所にはそれぞれ固有のリアリティがあり、生き物は現在いる場所のリアリティに縛られます。但し、ポシビリティ能力者は、別のリアリティが働く場所においても、自分自身のリアリティを保ち続ける事ができます。
例えば、ファンタジー世界の魔法使いと、超越的な科学技術でサイバー化(身体の一部を機械に置き換える事。一般には生身より強力だったり、生身の時には持ち得ない能力を得る)した戦士、原始的で強力な信仰の力を持つトカゲ人、そして我々の世界の傭兵、といった面々が一同に会するのです。
...え?そんなことして大丈夫なのか?大丈夫です!!TORGにおいては、リアリティを4つの数字(アクシオム)世界法則で表します。

(1)アクシオム:リアリティを定量的に表す数字をアクシオムと呼びます。アクシオムには「魔法」「社会」「信仰」「技術」の4種類が存在し、それぞれの分野で「生き物とモノがどれだけ結びついているか」を表します。具体的には、「そのジャンルがどれだけ一般的に認知され利用されるか」、という事です。
アクシオムは0(全く存在しない)から33(その分野は完璧)という値で示されます。例えば、コアアース(我々の地球)をアクシオムで表すと、

魔法 7(全然信じられていないし、魔法を使うのも覚えるのも大変)
社会21(良く発達しており、複雑な社会システムが理解され利用されている)
信仰 9(神の奇跡などは、一般には絵空事と認識されている)
技術23(良く発展しており、生活に浸透している)
というような形になります。
特定の道具(武器、呪文、神の奇跡、社会的概念も含む)には必要なアクシオムが定められており、そのアクシオムを超える道具の使用は、そのリアリティに反する行為として打ち消されます。
そのため、アクシオムの数字を比較する事で、ある行動や道具の使用がリアリティに反するか否かが明確になるのです。

(2)世界法則:リアリティを表現するのに、もう一つの特徴的なモノが存在します。それが世界法則です。世界法則とは、その世界の特質を文章で表現したもので、場合によってはキャラクターの行動を方向づけたり、有利にしたりするものです。
例えば、コアアースでは「天才の法則」「希望の法則」「偉業の法則」という3つの世界法則が存在します(注:この世界法則名は筆者が英語版資料から翻訳したものです)。すなわち、

コアアースには可能性のエネルギーが溢れているため、天才が生まれやすい。
コアアースの人間はどんな困難でも希望を失わず頑固である。
コアアースのストームナイトが持つ可能性の性質から、一般人に希望を与えやすい。

アクシオムと世界法則によって、そのリアリティは説明できます。そのため、世界観を把握しやすく、比較しやすくなるのです。そして、新たなリアリティを自分で作る場合にも、アクシオムと世界法則の決定によって、説明が容易になるのです。

一方で、そういうリアリティ間の差違が問題になります。例えば、あるリアリティでは剣が標準的な武器であり、別のリアリティでは強力なエネルギー兵器を活用しています。それらを同じ土俵において大丈夫なのでしょうか?
一般的なTPRGでは、武器の威力を「数字の差」「ダイスの個数」「ダイスの種類」等で表します。短剣と両手剣を上の例で比較すると、「1と4」「ダイス2個とダイス4個」「4面ダイス1個分と10面ダイス1個分」といった風に表現する訳です。ではここにエネルギー兵器を導入するとどうなるでしょう..。2つ目の例で言えば、ダイス20個とかに相当するのでしょうか?これではゲームのバランスはめちゃくちゃです。

TORGにおいては、画期的な試みとして対数システムを導入しました。数値を対数化して扱う事で、絶対的な差を小さくしているのです。対数化の基本ルールとしては、「1違うと1.5倍」「5違うと10倍」というものです。
例えばTORGにおいては、普通のピストルのダメージが15、ビームピストルのダメージが24です。数字の上では差は9しかありませんが、実際には「5(10倍)+4(6倍)」となり、60倍の開きがあります。
このルールは距離や時間、重量にも利用されますから、数値の取り扱いが楽であり、しかも納得の行くバランスを維持できるのです。
但し、このルールの欠点として、細かい数字の差を出す事ができません。例えば、ワルサーPPKとニューナンブ(どちらもピストル)は、他のゲームでは細かい修正を付けられますが、TORGでは差がなくなってしまうのです。このあたりは雰囲気とこだわりでカバーするしかないでしょう。

しかし、それでもリアリティによる格差はあります。これを補うもう一つのルールが矛盾です。矛盾とは、リアリティを超える道具を利用する事です。ストームナイトなどのポシビリティ能力者は積極的に矛盾を起こす事ができます。自分の理解できない道具を使う、場所のリアリティに反する道具を使う、といったことが矛盾した行動です。
矛盾した行動を行なう際、5%〜20%の確率でリンク切断(自分の本来のリアリティを失い、今いる場所のリアリティに一時的に束縛される状態。この状態では矛盾を起こせなくなる)を起こす危険性があります。
例えばエネルギー兵器は強力ですが、高い技術アクシオムがなくては矛盾になります。一方で剣はほとんどの世界で矛盾を起こしません。そのため、強力ではあっても利用にハンデを背負う事になるのです。

以上のように、対数システムと矛盾チェックによって、異なるリアリティを同じ土俵の上で扱う事ができる訳です。


3.演出助長システム

ポイント:プレイを演劇に見立てるため、メリハリを付けやすい。また、プレイヤーにとっては演出する事がルール的に有利になるため、盛り上がりを強調し、演出を助長する。

映画やアニメなどでは、前半はヒーローがサクサクと話を進めますが、中盤以降に敵のボスや強力なライバルの登場により苦戦を強いられるようになります。そして、苦戦の中で一瞬の隙やチャンスをモノにする事で一発逆転!!という展開になる訳です。
TORGは、そういう展開を体験するためのシステムといっても過言ではありません。というか、そういうシチュエーションを再現するためのシステムなのです。

TORGにおいては、シナリオの展開は2つの「場面構成単位」で区切られます。どちらも演劇において使われる手法で、場面転換、場所の移動、時間の経過などで区切られるシーンと、いくつかのシーンで構成される大きな区切りです。
幕やシーンの管理はゲームマスターに任されますが、大抵1回のセッションは2から4幕、1幕は3〜7位のシーンで構成される事が多いようです。
シーンの変わり目では、減ってしまった手札を交換・補充します。また、幕間ではささやかなポシビリティが与えられます。こうやってプレイヤー側にもマスターにとっても気分を切り替え、だらだらとプレイを続ける場合と比べてメリハリを付けた展開にしやすい訳です。もちろん、時間とシナリオ展開の目安にもなります。(当然「5分休憩」とかいう使い方もあるはずです。)

シーンにはスタンダードシーンドラマチックシーンの2種類があります。
物語前半の「ヒーロー行け行け状態」を表すのがスタンダードシーンです。雑魚との戦闘は楽だし、ヒーロー側に有利に事が運びます。
しかし、物語の中盤からは悪役やライバルによって、ヒーローは追いつめられ苦戦を強いられます。この状態を表すのがドラマチックシーンです。ヒーローにとって不利な、そして悪役にとって有利な状況が続くのです。
ゲームマスターはこれら2つのシーンを使い分ける事で、ヒーロー達にプレッシャーを与え、最後に迎えるであろう勝利をより一層大きなモノに演出できるのです。(「苦しんだ後の一発逆転」という状況は、かなり爽快なものだと感じる人が多いでしょう。)

では、こつこつと積み上げた勝利を尊ぶ人にとっては、TORGはつまらないゲームなのでしょうか?いえいえ、もう一つのルールがあります。
TORGにおいて重要な意味を持つドラマデッキ(カード)。普段は手札にあればいつでも使えますが、戦闘などの時間を区切った展開(ラウンド進行といいます)では、1回の手番に1枚ずつ手札から場に置いて準備します。準備していないカードは使えません。ですから、(後述する)推奨行動でカードを溜めて、地道にカードを準備していき、ここぞという時に「ありったけのカードをつぎ込んで」判定します。これがドラマチックシーンにおいて、強力な悪役などに勝利する方法の一つです。演出として解説するなら、カードを準備している間はPCもチャンスを伺っているという形になるでしょう。

さて、戦闘の展開をもう少し説明しましょう。ラウンド進行においては、キャラクターは通常の戦闘行為(武器や魔法などでの攻撃)以外にも、相手をやり込める事が可能です。具体的には、言葉や行動で相手の動揺を誘うというものです。これらを対人行為と呼びます。
対人行為には以下のようなものがあります。

間合い:位置的な優位を取って相手を動揺させる。「死角に回り込む」「相手の剣の間合いぎりぎりに立つ」など。
トリック:相手に反射的な引っかけを行なう。「あっ!あれはなんだ?」「お前の剣ひびが入ってるぞ」など。
威圧:ガン付けなどで相手に疑心暗鬼を起こさせる。「この剣の錆になりたいのかね?」「次は外さないよ」など。
挑発:相手の自尊心をくすぐる。「銃に頼らないと何もできないのか?」「なぜかかってこない?私が恐いのか?」など。
威嚇:本能的に恐れるもので相手を脅す。「足元に銃を撃つ」「雄叫びを上げる」など。
こういった行動によって相手の冷静さを奪い、隙を作る事ができます。カードなどを一気に活用し、十分な結果を得る事ができれば、威圧で10人の兵士全員の士気をくじいたり、挑発で相手のたくらみを喋らせたりする事も可能です。
TORGにおいては、言葉や行動が時には銃や剣にも優る武器になりえます。
ただし、対人行為ではどうやって挑発するかというような演出を要求されます。ただ単に「挑発します」といってダイスを振る事は許されません。逆に言えば、そういう演出面を強調したシステムなわけです。

戦闘シーンなどのラウンド進行においては、毎ラウンド推奨行動が提示されます。一般には「挑発/威嚇」というように、「5種類の対人行為+攻撃+防御」から2種類が提示されるのです。あるラウンドにおいて推奨行動を実施し「成功した」場合、手札を1枚増やす事ができます。
ですから、ドラマチックシーンの戦闘などでは、「推奨行動である対人行為を繰り返してカードを溜め、ここぞという時の反撃にまとめて使用する」のがルール的に有利であり、しかもプレイにおいても盛り上がるようにシステムがデザインされています。

そしてもう一つ。カードの中には、サイドストーリーカードと呼ばれるカードがあります。これは、そのキャラクターを、メインストーリーからちょっと外れた脇道に進ませるものです。それは、ちょっとしたラブロマンスかもしれないし、長年追い続けていたライバルや、行方不明だった友人との再会かもしれません。あるいは、誰かに間違われてお大臣扱いされたり、逆に監獄に放り込まれるかもしれません。
これらのサイドストーリーは、PCがちょっとした厄介ごとを背負い込むことになりますが、PCの性格や考え、価値観や過去を明らかにするのに良い機会です。どうしてもそのPCにそぐわないと思えば、使わなくてもいいのです。

以上のようなファクターを盛り込んだことで、映画などのようなメリハリの効いた、そして爽快感のあるクライマックスが体験できる訳です。


★トップページへ ★テーブルトークRPG総合案内へ ★トーグのページへ ★このページの最初へ

ご意見・苦情・お問い合わせは、以下までどーぞ。
E-mail address:hibiki@venus.dti.ne.jp