中小企業の知的資産報告書の活用と有用性へ戻る


中小基盤整備機構主催の知的資産経営フォーラム2008(東京)に参加した際に各先生方に伺った内容のポイントを下記に示します。

                                            2008-11-17

中小企業のための知的資産経営フォーラム2008(東京)参加メモ 

                                         (応援コーディネータ  邦芳)

1.知的資産の特性は「収益逓増性」を有する事である。アイデア・知識等は蓄積されることによって、新たな知的資産を開発することが出きる。ノウハウやスキルは特定の企業や状況に固有であって模倣されにくい「コンテクスト依存性」をもつ。かつネットワークの規模が拡大するほどベネフィットも増大するという「ネットワーク効果」をもつ。これらは競争優位性の源泉である。

2.知的資産経営報告書は知的資産経営の第一歩である。

3.知的資産報告書のスローガンだけでは説得性はない、データの裏付け・リサーチが必要である。

4.財務情報は過去の結果の情報、非財務情報は将来の方向(仮説)が見える。伸びるか、横這いか、減速か、が読める。

5.銀行から見れば財務情報は企業の影、非財務情報は企業の実態である。5%売上が上がったと言われても単価が上がったのか、数量が伸びたのか、なぜ上がったのかが財務情報では見えない。財務情報の実態を掴むために非財務情報が必要である。親密な関係を長く維持し情報を蓄積するために有用である。「見せる化」→「魅せる化」の工夫も必要である。

6.商工中金は企業の格付けに非財務情報を使用している。企業が情報をクローズしたり、一部の情報を洩らしたり、開示が遅れた場合も格付けを下げる対象としている。

7.財務情報と非財務情報の使用比率は一般に7:3と言われているが、一体不可分の情報である。非財務情報が財務情報に与える影響は大きい。特に小規模企業程非財務情報のウェイトは大きい。

8.投資判断の場合は融資判断より更に多くの非財務情報を利用している、助成金、補助金を受けた実績も重視している、色が付くのはいやだという企業もあるがその様な心配は無用。

9.知的資産報告書はコミニケーションツールである。非財務情報の技術の効果、技術の再現性、特許ノウハウ、強い営業力等の内容にはデータの裏付けがりそれを元にシナリオ、ストーリー作りが必要、そのストリーは仮説である訳であるが、確度と信憑性が大切である。またその会社が進もうとしているところへフォーカスされていることが大切である。説明する側(企業)と説明を受ける側(銀行など)が協力し勉強することも大事であり、単純なIR活動ではない。

10.経済産業省の期待:経営者は企業の優位性のPRに関し、財務情報の確度を非財務情報で補うよう知的資産報告書を作って頂きたい。サポート支援者、支援機関の人は第三者的視点で「本当か?」と言うことの確認をして頂きたい。経済産業省は今後も中小企業の情報発信めの知的資産報告書の重要性についてPRしていく。それらの情報発信に関し、企業秘密をどのように管理していくのかのガイド・指針等を出していきたい。金融機関の方は、本質的な企業の強さを見極めて頂きたい。そのための研修会も作っていきたい。

11.知的資産報告書は作る側の企業経営者と見る側の金融機関等の間でミスマッチがおきないためのツール・フォーマットが必要。現在のフォーマットはWCI の国際的なフレームワークの中で進めて来たものである。

12.銀行員は専門家ではなく、また支店長クラスの人は2年位で転勤する。知的資産報告書があれば情報が銀行に残り密な関係が出来る。また銀行は融資する企業を決定する際、経営者の生き方を見る。知的資産報告書の銀行への説明は社長自らの口で融資担当に説明して欲しい。トツトツであっても良い。代理人の説明とは大違い、経営者自らが取り組むことが大切である。単なるプレゼンテーションではすぐばれる。一方、自社への展開もマネージメントツールとして役立つものである。

13.知的資産報告書を作成することは経営自体を見直すことである収益力(売上高、利益、株価等)→表の競争力(価格、ブランド、市場シェアー等)→裏の競争力(生産性、リードタイム、品質、開発等)→真の実力(風土、文化、教育、企業理念等)逆の流れで見直すのも良い。