タバコ病あれこれ第3回:動脈硬化


 喫煙関連疾患の中には、特に動脈硬化が病気を悪化させる要因になっているものがあります。狭心症や心筋梗塞などの虚血性心臓病、脳血管障害の発症には、動脈硬化が関係しており、死亡率も高いことがわかっています。

 虚血性心臓病で亡くなる人は、年齢別にみても、また、男性でも女性でも、喫煙者である率が非常に高いのです。虚血性心臓病で亡くなった人を調べてみると、タバコを吸う人は、吸わない人よりも5年早く、なくなっていることが分かります。特に30歳から45歳の急性心筋梗塞は、そのほとんどが、喫煙の影響で引き起こされたものと考えられています(兼本ら)。

 タバコの煙の中の、一酸化炭素とニコチンには、動脈硬化を促進する作用があります。一酸化炭素は、低酸素血症を引き起こし、かつ血管内皮細胞を傷害し動脈の粥状硬化を促進します。ニコチンはLDLコレステロール(悪玉)を増やし、HDLコレステロール(善玉)を減少させ、血小板凝集能を亢進させるなど、血管を詰まりやすくします。また最近、タバコ煙がLDLを変性させ、それによってさらに動脈硬化が進むことが分かりました。

 同様のことが受動喫煙を受けている非喫煙者にも起きている、ということが報告されています。喫煙者のいる職場で働く非喫煙者では、虚血性心臓病のリスクが、男性で15%、女性では30%前後も、高くなるといわれています。

 糖尿病も、動脈病変が進むことにより、その合併症である網膜症や、腎症が進むので、タバコは厳禁です。糖尿病で通院していて、きちんと生活指導をしてくれる医者にあたると、必ず「タバコはやめましょう。」という話が出るはずなのです。医者はここで述べているような医学的な事実に基づいて話しています。喫煙者の方は「タバコのことはいわれたくない。」「うるさいな。」などとかたくなにならず、素直に耳を傾け、自分の将来の健康に向けて、一歩を踏み出していくのが得策といえるでしょう。


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