レプリカ
レプリカ

 二度の大戦があった。最初の大戦は光の側が勝利を収め、次の大
戦では闇の側が勝利した。
 その二度の大戦の勝敗を決した物。それは、一本の魔剣であった。
 そして、三度目の大戦。その魔剣は光の側にあった。

 その時、魔剣の所有者であるその男は戦場にいた。対峙した相手
を物の数秒で屠る男の前に、敵はいなかった。
「元気そうで、何よりだな」
 と、背後で声がし、男は振り向いた。そこには、黒い鎧兜に身を
包んだ男がいた。
「きさまか……」
 その黒騎士を見て、男がそう吐く様に言う。
「今日こそ、私がきさまを倒す。これが、わかるか?」
 黒騎士はそう嘲笑うように言うと、ゆっくりと腰の剣を引き抜い
た。
「それは……。まさか?」
 それを見て、男が驚きの声を上げる。
「そう。その魔剣と同じ物だ。正確に言えば、複製品だがな」
「武器が同じなら、勝敗を分ける物は、その使い手次第と言う事か」
「その通りだ。そして、勝つのは私だ!」
 黒騎士はそう叫ぶと、魔剣を振り翳した。

 一足飛びに間合いを詰め、黒騎士が魔剣を振り下ろす。寸前、男
がその剣先を交す。
 と、鈍い打撃音と共にさっきまで男が立っていた地面が抉れた。
「はっ!」
 間合いを詰め、男が黒騎士目掛けて魔剣を振り下ろす。それに合
わせて、黒騎士も魔剣を振り上げる。
 次の瞬間、魔剣同士がぶつかり合い、その強大な力と力の衝突で、
空間が歪む。
「なるほど、威力は折り紙付のようだな。だが……」
 と、男が魔剣を大きく振り翳し、間髪入れず振り下ろす。が、黒
騎士はそれを難なく受け止めた。
「どうした?単なる、力任せとはな。きさまの力はその程度だった
のか?」
 そう言い、黒騎士が男を押しのける。
「ふっ」
 男はそう不敵な笑みを浮かべ、再び、魔剣を振り上げる。
「その程度の攻撃など、弾き返してくれるわ!」
 そう、黒騎士が叫んだ瞬間、男は魔剣を振り下ろした。

「な……ぜ、だ?」
 自らの血に染まった黒騎士がそう、呻くように言う。その足下に
は、真っ二つに折れた魔剣があった。
「所詮、それは模造品。本物とは違うと言う事だ」
 そう、男が静かに答える。
「模造品では、本物には勝てない。くっくっくっ。なるほど……、
そう言う事……、か」
 と、黒騎士の兜が音も無く割れ、その顔が露になる。その黒騎士
の顔は、男の物と瓜二つだった。
「きさまは……?」
「所詮、私も模造品……、か」
 そう言い残すと、黒騎士はその場にゆっくりと崩れ落ちた。

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