三人の王 第三章 神の塔 <19>
三人の王

第三章 神の塔

< 19 >


「と、言う話じゃ」ローランは語り終えると、一息ついて言った。
「すると、こんな小さな物に、その光の龍が住んでいるのか」
「住んでいるのかどうかはわからんが、まあ、そういう事じゃ。わ
しが十万年間探して、やっと見つけたのがそれじゃ」
「十万年! 前人類の寿命はいったい、幾つ何だ?」ジルファーが
驚いて聞く。
「わしは、前人類ではない。わしもジャークと同じ生命体なんじゃ」
「すると、あんたはジャークの弟になるわけだ」
「そうなるな。しかし、奴は不老不死じゃが、わしには寿命がある。
後、五年程の命じゃ……」
「五年か……」ジルファーは呟いた。
「まだ、聞きたい事はないか?」
「そうだな。自分がいつ頃死ぬのか、わかっているってのは、どん
な気持ちだ?」ジルファーは聞いた。
「そうじゃの。やはり、不安じゃな。そして、怖い。逆に死なない
かも知れない。と、いう期待もあるがな。しかし、ジャークを倒さ
ん事には死んでも死に切れんな」ローランが笑って答える。
「そうか……。そうだよな……」ジルファーは下を見て、呟いた。
「ありがとう。これで、少しは吹っ切れたよ」ジルファーは顔を上
げた。
 その顔には不安を克服した人間の、笑みが浮かんでいた。
「もう一つ聞いていいか? なぜ、前人類は死滅したんだ?」
「死滅はしとらんよ。今のルーフ人が前人類の生き残りじゃ。まあ、
それは良い。なぜ、前人類は死滅しかけたのか、じゃな?」
 ジルファーは黙って頷いた。
「戦争じゃよ。四度目の世界大戦、核戦争の次の戦争じゃよ。しか
も、悲しい事にこの空間破壊砲による、最終戦争じゃ。その戦争で
元の大陸の半分が、海に沈んだのじゃ。今の大陸は元は二倍あった
のじゃよ」
「その点では、前人類も俺達も変わらないな。じゃあ」ジルファー
はローランに背を向けると、階段に向かって歩き出した。
「帰るのなら、レジンが塔の外に移動してくれるじゃろう」
 その言葉に、ジルファーは手を振って答えて、下へと降りていっ
た。
 しばらくして、ローランも下に降りていった。そこでは、レジン
がローランを待っていたかのように、階段の方を向いていた。
「ジルファーをどう思う?」
(そうですね。私の仲間が選んだだけの事はありますね)
「そして、オーディスの無限の剣、シルヴィファルツもジルファー
を選んだ」
(ええ)
 レジンは目を瞑った。何かを考えている様だった。
「そうじゃ。奴に、あれの端末を渡そう」ローランが手を打って言
う。
(ヴァザムの……、ですか?)
 物思いから抜け、レジンが聞く。
「そうじゃ。奴なら、間違った使い方はせんじゃろう」そう言うと、
ローランはいそいそと、上へと上っていった。
(なぜ、オーディス様の周期は乱れたのだろうか? しかも、人間
に火さえ与えねば、自らの兵器で死滅しかける事もなかっただろう
に)
 レジンは考えた。しかし、ただの金龍である、彼にわかるはずが
なかった。
 彼にできる事は、唯、主神オーディスが早く復活する事を、祈る
事だけであった。
第四章 建国王
6月15日 掲載予定


戻る