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子どもの王様 殊能将之 講談社 2003.10.8

 子供たちにとって団地の内と外が違う世界だ…というのは、ミステリアスでありファンタジックだと思う。だから、そのファンタジックさをドロドロした現実の大人の論理で崩されて行くのは、見ていてもあまり気持ちのいいものではない。種が割れてしまうとそこにあるのは両親の不和、DV(ドメスティックバイオレンス)、それに傷つく子供のPTSD。そしてあまりに身近で、でも陰惨な現実たる子どもの王様の正体。あまりに救いの無い結末。こじつけたようなラストの心象風景。

子供が大人になって行く過程で、そういう現実と向き合っていかねばならない局面もあるだろう。けれど、こういう物語ですらそういう現実と向き合い立ち向かわなければならないのだろうか?こんな立ち向かい方をしなければならないんだろうか?

ミステリーというのがどういうものなのか判らない。もしかするとこのシリーズは児童書として想定されたものでは無いのかもしれない。救いあるファンタジーである必要は無いのかもしれない。

それでも、小学校の中学年くらいを想定していると思われる登場人物たちと同時代を生きる子供たちが、これを読んでどう思うんだろう?というのがとても気になった。楽しい物語なんだろうか?それともホラーなんだろうか?

それだけ考えて思った。これは、子供のことを知らない大人が書いた、自分のための子供の物語なのかもしれない…と。
それとも私の感覚が間違っているのかなぁ…。

描写的に一番アレレだったのが、夏休みも終ったのにまだマーケットには冷房が入ってていささか寒い…という設定だってのに、「神聖騎士パルジファル」の最終回が近いって話。クリスマスセールも始まらない内に、戦隊ものが終るかい! こういう子供番組で秋に改変というのはほとんど無いと思うぞ。