2003年のベスト9 |
「ひらがな日本美術史」 橋本治(新潮社) 縄文土器から現代に至るまでの、美術品の歴史を追いかける写真満載のムック。軽妙な語り口で取っ付きにくい美術史の魅力を教えてくれます。光悦が好きとか印籠を作ってみたいとか狩野派はイマイチだなぁとか、そんな新しい好みを発見できるのが嬉しいです。2003年末現在5巻まで刊行中。 「スノウ・グッピー」 五條瑛(光文社) 日本の対戦兵器の実態ってご存じですか? 防衛庁の関係者だった作者が描く自衛隊の内実。物を動かす基本部分は自前で持っていないと如何に危ないかが、実感出来ます。2004年初頭、余りにリアルで怖いくらいです。 「日本の自然崇拝、西洋のアミニズム 宗教と文明 非西洋的な宗教理解への誘い」 保坂幸博(新潮社) 西洋の人々にとって、確固たる信仰を持たないという事は、とんでもなく未熟な民族だと思われるらしいです。しかし一見信仰もへったくれも無い様に思える日本人の行動の根底にあるもの、それは確実に信仰と言えるもの。そこには文化と宗教感の決定的な違いがあるのでした。自分の信仰を胸張って主張出来る様になる、そんな一冊です。 「凶笑面 丈那智フィールドファイルI」 北森鴻(新潮社) 各地に伝わる伝承の数々、民族学的見地からその本質を解き明かして行く短編集です。古事記や日本書紀まで遡ってそれらの物語が意味するものが本当はなんであったのかを教えてくれます。ぶっ飛んだ性格の助教授とそれに振回される助手の軽妙な掛け合いが良い味出してます。 「御町見役うずら伝右衛門(上)(下)」 東郷隆(講談社文庫) 八代目将軍締り屋吉宗と遊楽の尾張藩主宗春の、各種忍者入り乱れ、敵と味方がごっちゃになった攻防戦。池波正太郎の剣客商売を思わせるテイストですが、流石あの「定吉7番シリーズ」の作者だけあってみんな格好良くて微笑ましいのでした。 「放送禁止歌」 森達也(光文社) ある規制によって電波に乗らなくなった楽曲、それが放送禁止歌。けれどその規制の実態は極めて不可解なものなのでした。自らが共同の幻想の中に居るのだという事に気付かず流されて行く事の恐さ、真実を知る事の大切さを改めて思い知らされます。 「はじめてわかる国語」 清水義範(講談社) 日本語という極めていい加減で柔軟性の高い何でも受け入れてしまう、だから故に世界一難しいかもしれない言語の魅力と奥深さを、余す所なく並べて見せてくれます。あなたは“生”の意味をどれくらい言えますか? 空きカンと空き缶と空缶をどう使い分けますか? 「黄泉びと知らず」 梶尾真治(新潮文庫) 映画化されて評判になった「黄泉がえり」の外伝になる表題作を含む8本の短編集。微妙にホラー系のSFですがかなりアホっぽいSFでもあります。馬鹿馬鹿しいまでの不条理がお好きな人は是非どうぞ。 「間取りの手帖」 佐藤和歌子(リトル・モア) 実在する99の間取りを集めた本です。どの間取りも、いろいろと苦労の跡が見えます。何を考えて作ったのかわからないものもあります。編者の一言コメントが益々笑いを誘います。全てに家賃が載っているんですが住んでみたいとはあまり思いません。カバーがやたら凝っているので是非広げて見てください。 |