「はしら〜のキ〜ズはおとといの〜」
立ちあがりばな、ちょっと口から零れただけみたいな何の気無い呟きが背中をつつーっと。
穿たれた穴は目の高さよりちょっと上。
重みに耐えかねた木ネジが、下の方に抉った跡が妙に生々しいじゃないですか。
忘れかけていたのに
忘れかけたふりをしていたのに
「柱〜のキ〜ズは一昨年の〜」
まだお雛も済んでないのに、どうしたんです?
別に良いじゃないですか、背競べでもしましょうよ。
ほら、立ってください。
背中はちゃんとくっつけてね。
足は揃えて。
アゴもしっかり引いてね。
あ、そのまま腰を落せます?
へ? 背競べじゃないんですか?
良いのいいの、そう、そうやって中腰くらいにしゃがんでね。
それから腕をうーんて上に延ばしてー。
やっぱ身体柔らかいですねぇ、イルカ先生。
木ネジがギシギシと鳴いてます。
そんなに暴れるとネジが抜けちゃうじゃないですか・・・
って、耳元でそんな風に囁かれたらなおさら。
脚は痺れてががくがく。
あらら、恥ずかしいですねぇ って言われても、
知らず開いてしまうのを、意識・・ させないで・・・
ふふ
楽し・・そう・・・ ですね?
楽しいですよぉ、
あなたも楽しいでしょう?
楽しくなんか・・・ 楽しくなんか・・・
「手首〜の痣はおとといの〜」
細い縛めが重みを支えたそのシルシ。
身をよじるほどに、擦れて腫れた蒼い痕。
笑いを含んだ歌声が、あの時の疼痛を蘇らせて、
カカシさん・・・ オレ 身体が熱い・・・。
「忘れようとしてたでしょう」
「忘れたくないくせに」
図星です、上忍さま。
また穴が増えたら、そろそろ大家さんに怒られそうです。