踏み出す毎に遠くなる、砂の上の街
華やかな人々、暖かな灯、絶え間無い笑いと歌声 遥かな彼方から聞こえてくる、その光とざわめき いつになったら辿り付ける、砂の上の街
ここは砂の海 吹き荒れる砂塵、叩きつける砂の粒が、目を、口を、耳を、鼻を塞ぐ 重い足、渇く喉、凍える身体、舞い飛ぶ砂が皮膚を切る 吹き付ける砂塵を防ぐ腕の向こうに、見え隠れする街の輪郭 一昨日は右に、昨日は左に、そして今日は・・・ 砂の霧の彼方に、今も現れる、砂の上の街
ここは砂の沼 踏み出す足に砂が絡む 一歩、また一歩、進める毎に沈んでいく さらさらと、さらさらと、微かな音を立て、細かな砂が落ちていく さくさくと、さくさくと、踏み出す先の砂が落ちていく ゆっくりと、ゆっくりと、砂の壁が斜めにそびえ、漏斗の壁を作り出す 滑っていく、沈んでいく、思わずついた掌に、真綿の砂が纏い付く
ここは砂の夢の巣 すり鉢の底で、嗚咽の夢が待っている さらさらと、さらさらと、落ちていく もがくほど滑る、抗えば沈む
悪夢のあぎとがその牙を剥いた時・・・
砂の霧が晴れる 吹き付ける砂塵が音もなく消えていく 静まり返った大気の向こうから、楽しげな笑い声が響いてくる 砂の壁の上に現れたのは、はるか彼方の砂の上の街 華やかな人々、暖かな灯、絶え間無い笑いと歌声
手を伸ばす、喉を振り絞る、沈む足を、一歩でも進めようと・・・
届かない、声が出ない、歩みは滑る、落ちていく さらさらと、さらさらと、砂が落ちる 足を埋める、体を覆う、喉に、鼻に、目に、砂粒が入り込む 微かに響く街の声が、幻の様に耳に届いた時、
悪夢の爪がくい込む・・・
もう届かない、もうたどり着けない・・・ あれは、空の上の街 |