親鸞聖人 ご消息(手紙)

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝 謹写


三十六

 このいまごぜんのははの、たのむかたもなく、そらうをもちて候はばこそ、譲りもし候はめ。せんしに候ひなば、くにの人人いとほしうせさせたまふべく候ふ。この文を書く常陸の人人をたのみまゐらせて候へば、申しおきてあはれみあはせたまふべく候ふ。この文をごらんあるべく候ふ。このそくしやうばうも、すぐべきやうもなきものにて候へば、申しおくべきやうも候はず。身のかなはず、わびしう候ふことは、ただこのこと、おなじことにて候ふ。ときにこのそくしやうばうにも、申しおかず候ふ。

常陸の人人ばかりぞ、このものどもをも、御あはれみ、あはれ候ふべからん。いとほしう、人人あはれみおぼしめすべし。この文にて、人人おなじ御こころに候ふべし。あなかしこ、あなかしこ。
  十一月十二日
       ぜんしん(花押)
 常陸の人人の御中へ

  常陸の人人の御中へ(花押)

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