親鸞聖人 ご消息(手紙)

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝 謹写


二十三

 誓願・名号同一の事
 御文くはしくうけたまはり候ひぬ。さては、この御不審しかるべしともおぼえず候ふ。そのゆゑは、誓願・名号と申してかはりたること候はず。誓願をはなれたる名号も候はず、名号をはなれたる誓願も候はず候ふ。かく申し候ふも、はからひにて候ふなり。ただ誓願を不思議と信じ、また名号を不思議と一念信じとなへつるうへは、なんでふわがはからひをいたすべき。

ききわけ、しりわくるなどわづらはしくは仰せられ候ふやらん。これみなひがことにて候ふなり。ただ不思議と信じつるうへは、とかく御はからひあるべからず候ふ。往生の業には、わたくしのはからひはあるまじく候ふなり。あなかしこ、あなかしこ。
 ただ如来にまかせまゐらせおはしますべく候ふ。あなかしこ、あなかしこ。
  五月五日       親鸞
 教名御房

 端書にいはく
 この文をもつて、ひとびとにもみせまゐらせさせたまふべく候ふ。他力には義なきを義とすとは申し候ふなり。

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