誓願・名号同一の事
御文くはしくうけたまはり候ひぬ。さては、この御不審しかるべしともおぼえず候ふ。そのゆゑは、誓願・名号と申してかはりたること候はず。誓願をはなれたる名号も候はず、名号をはなれたる誓願も候はず候ふ。かく申し候ふも、はからひにて候ふなり。ただ誓願を不思議と信じ、また名号を不思議と一念信じとなへつるうへは、なんでふわがはからひをいたすべき。
ききわけ、しりわくるなどわづらはしくは仰せられ候ふやらん。これみなひがことにて候ふなり。ただ不思議と信じつるうへは、とかく御はからひあるべからず候ふ。往生の業には、わたくしのはからひはあるまじく候ふなり。あなかしこ、あなかしこ。
ただ如来にまかせまゐらせおはしますべく候ふ。あなかしこ、あなかしこ。
五月五日 親鸞
教名御房
端書にいはく
この文をもつて、ひとびとにもみせまゐらせさせたまふべく候ふ。他力には義なきを義とすとは申し候ふなり。