戦争の陰に利権あり

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 戦争は、損得勘定の結果、得になると判断した上でやるものである。これをしないで戦争をすればどうなるかを知りたければ、五十年ほど前に、この国が経験した戦争を調べてみればよい。
 希望的観測に基づく予測に基づいて、終戦の時期、方法について全く展望も持たず、行き当たりばったり、闇雲に兵站を延ばして、無残に敗北した。無知蒙昧、バカ丸出し。多くの犠牲者を思えば、あらん限りの罵詈雑言を浴びせても足らぬ。

 2001年10月7日、アメリカは、同時多発テロの首謀者オサマ・ビンラディン氏を匿うアフガニスタン(タリバン政権)に対する空爆を開始した。大義名分は、テロ撲滅。
 しかし、テロ撲滅が目的にしては、戦費が大きすぎる。いくらブッシュがバカでも、一発数千万円のミサイルや、一発数百万円の爆弾を打ち込んで、瓦礫の山をかき回すはずがない。それだけの戦費を支出をする以上、それに見合う利益があるに決まっている。余人は知らず、ラムズフェルド国防長官は、かつて、製薬化学会社の経営に辣腕を振るった有能な社長である。ブッシュ大統領の父の代からの大番頭である彼が、ブッシュの無駄な戦争を許すはずがない。
 繰り返して言うが、戦争は、損得勘定の上でやるものである。これが理解できないのは、先の戦争の後始末を極東軍事裁判に任せて、自国で総括できなかった日本の愚昧である。

 では、アフガニスタンにまつわる利権は何か。まずは、下の図をご覧いただこう。

 

 

 これは、国際石油開発(株)のサイトから無断借用したものである。消滅すると困るので、ついでに、このページの記事を無断引用する。文中のインドネシア石油(株)は、国際石油開発(株)の前身である。

(以下 引用)

中央アジアにおける天然ガス・パイプラインプロジェクトへの参加について

インドネシア石油(株)は、1997年10月25日にトルクメニスタンのアシガバードにおいて、ユノカル社をはじめとする国際企業6社(*)並びにトルクメニスタン国政府とセント・ガス社の設立のための調印式を行った。

セント・ガス社はトルクメニスタンに埋蔵されている豊富な天然ガスを、パイプラインを通じてパキスタンに供給するプロジェクトを推進することを目的としている。

同社は当面、本プロジェクトの商業化へ向けて大規模ガス田の開発を通じたガス供給の確保を含め幅広い事前調査を実施する予定である。

又、インドネシア石油(株)は、セント・ガス社の主要株主と共に本プロジェクトへガスを供給するドーレタバードガス田等の探鉱・開発事業へ参加を図ることとしている。

     

  1. 1997年10月25日、トルクメニスタンのアシガバードにおいてインドネシア石油(株)は、伊藤忠石油開発(株)、米国ユノカル社等の国際企業6社(*)並びにトルクメニスタン国政府とセント・ガス社の設立のための調印式を行った。
  2. セント・ガス社は、ドーレタバードガス田(可採埋蔵量25兆立方フィート)等のトルクメニスタンの豊富なガスを、ガス需要の拡大が期待できるパキスタンへ供給するため、当面同ガス田等の開発を通じたガス供給の確保並びにパイプライン建設の商業化へ向けての事前調査を実施する予定である。
  3. トルクメニスタン政府は、ドーレタバードガス田より天然ガスをトルクメニスタン・アフガニスタン国境で、本プロジェクトへ供給することを保証している。
    一方、同政府とパキスタン政府は、1995年3月トルクメニスタンからパキスタンへ天然ガスを供給することおよびその天然ガスをパキスタン政府が長期的に購入することを確認している。
    又、インドネシア石油(株)は、セント・ガス社の主要株主と共に本プロジェクトにガスを供給するドーレタバードガス田等の探鉱・開発事業へ参加を図ることとしている。
  4. 現在計画されている天然ガスのパイプラインは、トルクメニスタンの南東部のアフガニスタンとの国境地帯からパキスタンのムルタン(本都市を中継基地にし国内幹線に繋げる予定)までの間の1、271キロメートルの敷設が予定され、さらにインドまで640キロメートルを延長することも検討中である。また 、パイプラインの建設に係わる総費用額はパキスタンまでが19億米ドル、インドまではさらに6億米ドルを要すると見込まれている。
  5. 本プロジェクトに参加する各国企業および参加比率は次の通り。

ユノカル社(米国/参加比率46.5%)、デルタ社(サウジアラビア/同15%)、ガスプロム社(*)(ロシア/同10%)、トルクメニスタン政府(同7%)、インドネシア石油(株)(日本/同6.5%)、伊藤忠石油開発(株)(日本/同6.5%)、現代社(韓国/同5%)、クレッセント・グループ(パキスタン/同3.5%)

(*)上記6社中ガスプロム社は、調印式には出席していなかった模様(現在現地と確認中)

(以上引用)

 賢明な諸兄は、既に、私の言わんとすることがお解りだと思う。これが、アフガニスタンを巡る直近の利権である。若干の補足と蛇足を加えると、こういうことになる。

 トルクメニスタンの天然ガスは、世銀の調査によれば、世界第四位の埋蔵量である。これを、アフガニスタン経由でパキスタンまで、パイプラインを敷設して運ぼうというのが、このプロジェクトである。

 プロジェクトに名を連ねる企業について解説すれば、まず、ユノカルは、創業百年の石油企業である。一部、レース好きの馬鹿者の間で、この会社のロゴは、カッコ良いらしい。この会社が、ミャンマーのプロジェクトで、現地人を強制労働させたことなど、知らぬからだろうが。
 もちろん、アメリカ政府は、このプロジェクトに一枚噛んでいる。実際、パイプライン計画が頓挫するまで、トルクメニスタンへの経済援助は、アメリカが第一位であり、計画が頓挫した途端、援助はゼロになっている。詳細はここ
 デルタ社は、サウジアラビアの王族が出資経営する石油会社ゆえ、実体は、国策会社である。同様に、ロシアのガスプロム社も、天然ガスを扱うロシアの国策会社であり、ロシアの放送局まで所有するコングロマリットである。インドネシア石油(現国際石油開発)も、石油公団を筆頭株主とする国策会社である。クレッセントグループも、パキスタンで最大規模を誇るコングロマリットである。

 ところが、これだけの顔ぶれを揃えながら、このプロジェクトは頓挫する。理由は、タリバン政権の人権軽視政策である。世界中の女権拡張論者は言うに及ばず、各種人権擁護団体、キリスト教を中心とする宗教団体までが、タリバン政権を非難し、アメリカのタリバン政権承認に反対した。その結果、最大の出資者であるユノカルが、資金調達の困難を理由に、1998年8月、同プロジェクトを放棄したのである。

 トルクメニスタンの天然ガスのその後だが、1997年に、トルクメニスタンからイランまでのパイプラインが完成し、輸出が始まっている。また、2000年から、ロシア向けに大規模な輸出が始まっている。更に、中国へのパイプライン敷設計画や、トルコに向けたカスピ海海底パイプライン計画もある。

 このまま行けば、トルクメニスタンの天然ガスは、ロシア、イラン、そして将来的には、中国に抑えられてしまう。しかも、トルクメニスタンに限らず、中央アジアには、手つかずの膨大な石油と天然ガスが埋蔵されている。早急にアフガニスタン・パキスタンルートを完成させなければ、この膨大な宝の山を失うことになる。宝の山を失うことは、OPECに、原油価格決定権を握られ続けるということでもある。

 アメリカのアフガニスタン侵攻は、まさに、この莫大な利権ゆえに行われた。冒頭に引用した、パイプラインプロジェクトへの参加国と、今回のタリバン政権に対する対応も、見事に一致する。サウジアラビアの、タリバン政権との国交断絶、アメリカ軍への便宜供与。日本の、早急なアメリカ支持表明と、その後の行動。パキスタン政府のタリバン切り捨て。
 なお、イギリスは、少々、特別な地位にある。イギリスは、既に、パキスタン北部で、石油、天然ガスの採掘権を獲得している。この事業は、トルクメニスタンからの天然ガス供給と衝突する可能性がある。もちろん、中央アジアの天然ガスと石油に色気があること、言うまでもない。いずれにせよ、今から、アメリカと歩調を合わせておかねば、後日に禍根を残すことになるのである。

 以上、戦争の陰に利権があることが、お解りいただけただろう。このように考えるのは、私だけではない。既に、伊藤忠商事の株価は、アフガニスタン空爆開始後から、上昇に転じ始めている。酷いようだが、それが娑婆というものである。

2001/10/13

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