安田病院

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 医療費の不正請求が発覚して、大阪の安田病院はつぶされた。医者と看護婦の数が基準以下の劣悪な病院だったと、マスコミは、口をそろえて安田病院を非難した。しかし、安田病院事件は、医療機関のモラルを問えば済むほど単純な事件ではない。

 普通ならば、誤って安田病院に入院しても、実体が判れば、退院、転院をする。それにも関わらず、安田病院に100人以上の患者がいたということは、彼らが行路(こうろ)病人だったことを暗示する。行路病人とは、帰るところも引き取り手もない病人のことである。医療福祉関係者が、彼らをこう呼ぶ。

 健全な経営を目指す医療機関は、行路病人の長期入院を嫌う。現行の医療保険制度では、3ヶ月以上の入院患者は儲からないからである。しかし、憲法が最低限文化的な生活を保障する以上、行政機関は彼らを放置できない。安田病院は、医師と看護婦の数を減らし、医療費を水増し請求することで、これら行路病人を引き受けていた。それは、行政にとっても都合のいい存在だったに違いないのだ。

 本当に問題なのは、行路病人の処遇である。実は、安田病院事件は、その歪んだ解決方法だったというに過ぎないのだ。