お釈迦様の名前 

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝


本住  さて、今日から仏教入門をやるんだが、なにから始めるかね。

法伝  どうでしょう、お釈迦様についてのお話なんぞ、お願いしたいのですが...。

本住  なるほど、オーソドックスな話題だろうねえ。お前さんには、似合わないが..。

法伝  ほっといてください。それにしても、お釈迦様の呼び名って、いろいろありますよねえ。

本住  そうだなあ。どのくらい知っているかね。

法伝  ゴータマ・シッダールタ。釈迦牟尼(しゃかむに)。釈尊。釈迦如来、そのくらいですかね。

本住  まあ、そのくらい知っていればいいだろう。ゴータマ・シッダールタというのは、姓がゴータマ(ガウタマ)、名がシッダールタ(スィッダッタ)ということだ。漢字では悉達多と書くなあ。

法伝  ゴータマ・シッダルタというのは、本名なんですか。

本住  学者によっては、怪しいという人もいる。ゴータマというのは、「古いインドの宗教で、ゴータマ仙の流れを汲むものだ」ということだから、王族であるお釈迦様の姓にしてはおかしいということらしい。

法伝  へええ。

本住  シッダールタも、「目的を成し遂げた者」という意味だから、後から名付けれた可能性があるらしい。しかも、この、ゴータマ・シッダールタという名前は、古い文献には出てこない。だから、お釈迦様の本名と言えるかどうか、断定はできないね。

法伝  それじゃあ、釈迦牟尼というのはどうなんですか。

本住  これは、サンスクリット語(インドの古語)で、釈迦族の聖者という意味だから、名前ではないだろうよ。釈尊というのは、この釈迦牟尼(サキヤムニ)を中国語に訳したものだ。

法伝  それじゃあ、釈迦牟尼仏というのは、どうなるんです。

本住  仏というのは、仏陀(ブッダ)というサンスクリット語(インドの古語)で、目覚めた人とか、悟った人という意味の言葉を、中国語に音だけ写したものだ。

法伝  すると、釈迦牟尼仏というのは、「悟りを開いた釈迦族の聖者」という意味なんですね。

本住  そういうことになるな。

法伝  結論をいうと、お釈迦様の本名は不明なんですね。なんだか寂しいですねえ。

本住  そうかい。

法伝  ところで、本名が不明だったら、これから、お釈迦様のことをどう呼びましょうか。

本住  そうよなあ、まあ、これまでお釈迦様と呼んできたんだから、それで良いじゃないか。最近は、ゴータマ・ブッダ等と呼ぶ学者もいるようだが、私は、あまり好きじゃない。

法伝  ところで、今日は、お菓子が出てきませんねえ。お茶ばっかり。

本住  お前はここへ何をしに来ているんだ。 

法伝  お菓子...。

本住  解った、解った。この次は、上菓子を用意しておくから。