Side Story #10

ココにいてもいい理由












ココにいても、いいの?

私。






























私はまだ迷っている。

どうして私は迷っているの?

何度も悩んだはずなのに。

答えを出したはずなのに。

ずっと前から、考え続けてきたことなのに。

私とあなたが、出会ったときから。

あなたが私を、見てくれたときから。

私はずっと、迷っている。

心が痛い。胸が苦しい。

どうしてこんなに不安になるの?




















ココにいても、いいの?

私。




















ココにいるのは私。

椅子に座り、膝に手を置いて、

その時が来るのを待っている私。

そう、待っているのは私。

でも本当は他の人が、

私以外の人がいた方が、

別の人が待っている方が、

あの人がココにいた方が、

いいんじゃないの?

これでいいの? あなたは。




















ココにいても、いいの?

私。




















あの人、そう、弐号機パイロット。

惣流・アスカ・ラングレー。

私の代わりにあの人が、

ココにいるべきじゃないの?

あなたを待っているべきじゃないの?

わからない。

わからない。

わからない。

私にはわからない。何も。

本当にいいの? あなたは。




















ココにいても、いいの?

私。




















私は座って待っている。

あなたに呼ばれるまで待っている。

だけど本当に待っていていいの?

あなたを信じていいの?

だめ。信じなくてはだめ。

あなたを疑ってはだめ。

あなたを疑う私はだめ。

だから私は私が嫌い。

あなたを疑う私が嫌い。

まだ迷っている私が嫌い。




















ココにいても、いいの?

私。




















あなたは来ないかもしれない。

こんなに信じているのに。

あなたは来てくれるの?

私はそう信じているだけ。

信じるの。そう、信じる。

あなたのことを信じ続ける。

それだけで私はココにいられる。

私がココにいる理由。

私がココにいられる理由。

それはあなたを信じること。




















でも、本当に、

ココにいても、いいの?

私。




















扉が開く。

私は顔を上げた。

入ってきたのはあなた。

信じていたあなたの笑顔がそこにある。

こんなにうれしいのに、

どうして私、泣きそうになるの?

あなたに向かって私は微笑む。

だけど涙が止まらないの。

あなたは不思議そうな顔をして、

それから笑顔で私の涙を拭ってくれた。





















ココにいても、いいの?

私、あなたの側に。




















私は椅子から立ち上がり、

白いドレスの重い裾を持ち上げて、

あなたの後から歩いていく。

あなたが開いてくれた扉。

私はそこをくぐり抜けて、

その扉の向こうへと、

未来へと歩いていく。

あなたと共に。

希望に溢れる、明日へ。

そして、鐘は鳴り響いた。




















ココにいても、いいの?

いいの。

私、ココにいたいから。



















私がココにいる理由。

それはあなた。

あなたがいるから、

私はココにいたい。

あなたの側に、

あなたの笑顔と共に、

私はいたい。

限りある時間を、

あなたと分け合いたいから、

私は、ココに……




















だからもう、私は迷わない。

永遠に……










- Fin -




新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。

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Written by A.S.A.I. in the site Artificial Soul: Ayanamic Illusions