(ふぅ……)
僕はため息をついた。
「ケンスケの奴……」
そしてそう呟いた。
今、僕がいるのは自分の部屋。時は夕方。
手の中には、何枚かの写真。
僕が密かに気にかけている女の子の写真。
今までなら、特別割引で買えたのに。
いきなり『通常料金にさせてもらうよ』だって?
……まあ、しかたないか。
最後の一枚を見た時、僕は思わず納得させられてしまった。
そして、その写真を特別料金300円で、他の写真は通常料金を払って買った。
『安心しろよ。こいつだけは他の奴には見せないからさ』
当たり前だろ。袋叩きにあうよ、そんなことされたら。
いや、男子なら、まだいいんだけど……
僕はその写真をもう一度見た。
他の写真は、その子のワンショットか、何人かの中央に映った写真。
あるいは、僕らがみんなで撮った写真。
でも、その写真だけは珍しいツーショット。
水色の傘の下の二人の後ろ姿。
空色の髪のその子の横にいるのは……
ミス フォトジェニック
Miss Photogenic
そして、写真を見ながらその日のことを思い出す。
傘を忘れたおかげで相合い傘になったのはいいけれど、別れ際に急に強い雨が降ってきて……
緊急避難で入った喫茶店でおしゃべり。これはうれしいアクシデントだった。
時間が経つのを忘れるほどしゃべって、その後、帰ろうとしたら、その子は傘を盗られたとかで、おまけにまた強い雨が降ってきて……
『遣らずの雨』なんて言葉も頭に浮かんだけど、傘に入れてもらったお礼ついでにその子を家まで送って行こうとした。母さんに車で来てもらってだけど。
そしたら、車に乗った途端に、母さんがその子に余計なことを……
全く、僕がいつその子のことを家で話題にしたって言うんだ。
転校して来た時と、みんなでスケートに行った時と、バレンタインの時と、テストの勉強会の時と、ホワイトデーの時と、ついこないだの春休みにみんなで遊園地に遊びに行った時と……それくらいじゃないか。
月に一回くらいしか話してないよな、うん。
たまに、名前だけが出てくることはあるけど……
それだったら、アスカの方がずっと多いじゃないか。
何しろ、毎日のように僕の家に来てTVゲームしたりしてるんだから。
だいたい、写真も見せてないのにどうしてその子のことがわかったんだ。
……ま、髪が空色の子なんて滅多にいないけどな。
それはともかく、どうして家まで連れて来たりするんだよ。
おまけに、『あなたみたいな人が一緒についていてくれると助かるのにね』なんて言っちゃってさ。
そんなの、いつもアスカにも言ってるだろ。
そう言えばこないだはアスカに『シンジをもらってやってくれる?』だって。
冗談も程々にして欲しいよ。まだそんな話、早いって。
でも、僕はそういうときは下手に反発しないようにしてる。
前に一度、そういうこと言うなって言ったら、『あら、アスカちゃんのこと嫌いなの?』なんて言われて、挙げ句の果てに僕が寝言でアスカの名前を呼んでたことをバラしたりして……
……あの時の夢は参ったな、アスカにいじめられてたら、それを助けてくれたのがもう一人のアスカだったんだ。
それはきっと、僕の中のアスカの姿なんだろうな。いじめられる対象であり、守ってくれる対象でもある……
もしかしたら、アスカにいじめられることの潜在願望なのかも知れないけど。
ま、それはそれとして、もしかしたら知らない間に寝言でその子の名前を呼んでたりするかも知れないから(しかし、どうして寝言なんて聞いてるんだ?)、その時はほったらかしにされてむくれてるふりをしておいた。
でもなぁ……
母さんがあの言葉をその子に言った時は、何だか一瞬ヒヤリとしたんだよな。
あれはいったい何だったんだろう。
もしかしたら、その……僕が、その子のことを気にかけていることを、その子に知られたらマズイって思ったんだろうか。
気にかけていると言うよりは、もっと強くその……
……
あーあ。
やっぱり知られちゃマズイよな。
僕みたいな卑怯で、臆病で、ずるくて、弱虫な奴がその子のことを、その……そんな風に思ってるなんて知られたら、きっとその子が迷惑すると思うんだ。
今は、友達として見てくれているけど、その関係が壊れるなんて、考えただけでも僕は堪えられない。
でも、いつかきっと、言いたいんだけど……その時まで、その子が、僕の友達でいてくれるかどうか……
いつかは離れなきゃいけない時が来るんだ。
その時までだけでも、その子といい思い出をいっぱい作りたいんだ。
だから、今は……
「はいっ、チーズ!」
「ぶいっ!」
パシャ!
ここは昼休みの教室。相も変わらず騒がしい。
その中で、カメラを構えているのは相田ケンスケ。
そしてVサインでにっこり微笑んでいるのは綾波レイ。
「ケンスケ! またやってんの? ほんっとあんたって懲りないわねー」
二人の声とフラッシュの光に気付いて近づいてきたのは惣流・アスカ・ラングレー。そして洞木ヒカリ。
なお、碇シンジと鈴原トウジは傍観者(ギャラリーとも言う)だった。
「いいだろ。だって、カメラ向けると綾波がポーズとってくれるんだから」
「レイ! あんた、ケンスケが写真撮って、それをどうしてるのか知ってるの?」
ケンスケの『見たまんま』の状況報告を無視して、アスカはレイの方を向いて言った。
アスカがケンスケに何か文句を言うのは『型どおりの挨拶』のようなものだ。そして腰に手を当ててレイの方を睨む。
レイはそのご機嫌な笑顔をいささかも崩さずに言った。
「知ってるわよ。売りさばいてるんでしょ? 相田君も、たまには還元してよ」
「そうは言っても、収入は一枚5円だぜ。ゲーセンに言ったらすぐに飛んじゃうんだ」
「そうじゃなくて!」
レイの鮮やかなはぐらかしに、アスカは少々いらついた声を出した。
全く、この子はどうしていつもこうなのかしら。
ああ言えばこう言う、口の減らない子ね。
口から先に生まれて来たってのは、あんたみたいな子のことを言うのよ。
「肖像権って物を考えなさいよ。あんた、それを無視されてるのよ、このバカに」
「あら、あたしの肖像権はパブリック・ドメインよ」
「……何、それ?」
ドイツ人とのクォーターで、おかげで英語が堪能な(理由になってないが)アスカも、法律用語は知らなかったらしい。
また意味不明なこと言って誤魔化そうとしてるのかしら。そうはいかないわよとばかりにレイの顔を見る。
「つまり、肖像権が無くなった状態。観光地の銅像みたいなものね。自由の女神とか」
どうやらレイは暗に自分を女神に喩えているようだ。
「で、それが何?」
いつの間にかアスカが聞き役に廻ってしまっている。
見事な手並みだ、とケンスケは心の中で感心していた。
惣流アスカをここまで抑え込めるのは彼女しかいない。
全く心強い味方ができたものだ。被写体にはなってくれるし、願ったり叶ったりだな。
「別にアイドルじゃないんだしさ、写真撮られても文句は言えないじゃない」
「だから、ケンスケはそれを無断で売ってるんだってば」
「いいじゃない、それこそアイドルみたいで。でも、私の写真なんて、誰が買ってるのかな。その辺は気になるけどね」
いつも自分のことを美少女と言って憚らない彼女にしては、割合謙虚な発言だった。
「変な奴に買われてたら嫌だって思わないの?」
「でも、もしかしたら素敵な殿方が買ってくれて、密かに愛を囁いてくれてるかもよ」
「楽天的ねー。変なことに使われてるかも知れないのよ?」
「変なことって?」
「う、それは……」
さすがにそれはアスカも口に出しては言えない。
そしてこの話を漏れ聞いていたクラスの男子の何人かが顔を背けた。何か思い当たることがあるらしい。
「でもさー、被写体になれること自体、気分いいじゃない。それだけ写真に撮りたい素材ってことでしょ」
「でも、気付かない間に撮られたりするのよ。気分悪いじゃない」
「まーねー、でも、写してもらえるうちが華だし」
「ほんっと、あんたってどうしてそうお気楽でいられるのかしら」
「でもさ、写真って今のこの瞬間を切り取る物なのよね」
「?」
盗撮まがい云々の話がいきなり別の観点にすり替えられてしまい、アスカは困惑した。
ダメよ、アスカ、これがまたこの子の手なんだから。
しかしレイは遠い目になって続ける。
「別に若いときの自分を残しておきたいとかそういうんじゃなくて、懐かしい思い出を残しておきたいのよ。それを見てあの頃は楽しかったなぁとか、この頃の友達は今どうしてるのかなぁとか思えるような」
「でも……それは……何か、イベントがあったときに、撮ればいいじゃない。普段から撮らなくても……」
その時、レイが不意にアスカの目を見つめた。
そしてレイの表情が、先程までとはほんの少し違うことにアスカは気付いた。
「アスカ、ちょっと……」
「え、何……」
レイはアスカの話をさえぎると、アスカを手招きで呼び寄せた。
そしてアスカが複雑な表情でレイの方に近寄る。
レイはアスカの腰を押すようにして、教室の隅にアスカを連れて行った。
「ちょっと、みんな、ゴメン……」
そう言いながら。
そして教室の隅の席で、レイとアスカは向かい合って何事か話していた。
時折、レイもアスカも、寂しげな表情になる。
シンジたちはそれを黙って見ていた。
「あのさ、ちょっと言いにくいんだけど……」
レイはアスカの顔を見ずに、少しうつむいてそう言った。
「何?」
アスカはレイの寂しげな表情を見ながら答えた。
この子のこんな表情、前も見たことがある。
その時、この子は……
「私さ、何度も転校繰り返してるじゃない。一つの学校に長くいることないから……」
「…………」
アスカは無言でレイの言うことを聞いていた。
「だからその……思い出とか、少なくて……」
「…………」
「思い出とか、作る暇が無くて……」
そうか、そういうことね。アスカはその先を聞かないでも、レイが言おうとしていることが解った。
「だから、何かがある毎に、じゃなくて、いつも思い出が残るようにしたいの。次の機会は、もしかしたら、無いかも知れないから。今を大切にしたいから。この学校からも、いつ転校するかわからないし、だから……」
「わかってる……」
レイの言葉を最後まで聞かずに、アスカはそう言った。
そして、レイも解っていた。アスカが自分のことを解ってくれていることを。
「それ以上、言わないで。寂しいから……さっきは、ちょっと気付かなかっただけ。今は、ちゃんとわかってるから……」
「そう……よかった」
レイはそう言って顔を上げた。少し寂しげでも、彼女は笑っていた。
アスカはその笑顔を見て思った。
この子は強い。自分の周りの変化を受け止めていける。
それに比べて私は、今の状態がずっと続くと思ってる。
みんなとずっと一緒にいられると思ってる。
でもそれは違うんだって事を、この子は教えてくれる。
……いい、友達、持ったな、私……
「忘れないからね……」
アスカはそっと呟いた。
「えっ?」
「あんたがもし、転校しても、私、忘れないから……」
「…………」
「ずっと、友達だからね……」
「うん……ありがと」
そして二人は顔を見合わせて微笑んだ。
が、次の瞬間。
「じゃあ、みんなで今から思い出を作りましょう!」
レイはそう言って立ち上がり、シンジたちの方へ戻って行った。
何て変わり身の早さなの。アスカは一瞬呆気にとられていたが、すぐにレイの背中を追いかけた。
まったくもう、いつもいつも私のことはぐらかして。
悪友……かな、この子……
「ところでさ、相田君」
レイは戻って来るなりそう言った。
いつもの脳天気な笑顔に戻っている。
「何だよ?」
「誰の写真が一番売れてるの?」
「それは企業秘密だな」
ケンスケは眼鏡を押し上げながらそう言った。レンズが妖しく光を反射させる。
そこに追いついてきたアスカが言葉を放った。
「何が企業よ。個人商店じゃない。だいたい企業なら、スポンサーである私たちに、情報を公開するのが筋でしょ。言わなきゃ、私の写真売るのは差し止めだからね」
普段から写真を売るなと言っておきながら、アスカは今更そんなことを言う。
もちろん、何度も差し止めを喰らいながらもケンスケが未だに写真を売り続けているのを、シンジから聞いてアスカは知っていた。
「わ、わかったよ。えっと……」
スポンサーには逆らえない。
ケンスケは鞄からPDAを取り出した。ここに全てのデータが管理されているらしい。
そしてそのスイッチを入れながら言う。
「言っとくけど、売った相手は言えないよ。これは個人のプライバシーの問題だからな。惣流が言うようにさ」
「ふん、何がプライバシーよ。人のプライバシー侵害するような写真撮っといて」
「な、何のことだよ……」
さては超望遠レンズで屋上から体育の着替えを隠し撮りしたのがバレているのだろうか?
あれはシンジやトウジも知らない裏ルートで売りさばいているから、大丈夫なはずだが……
ブラフだ、ブラフに決まってる。ケンスケはそう思いながら売上管理データを呼び出していた。
「えっと、トータル枚数では惣流がダントツだな。2位以下とは桁が違うよ」
「ふ、ふん、当たり前じゃない。そんなこと、聞く前からわかってるわよ」
じゃあ、聞くなよ。ケンスケは言いそうになったが、これで惣流の写真がおおっぴらに売れるようになるなら、今、彼女の機嫌を損ねるのはまずい。商売人はそう思った。
「その2位に急上昇で躍り出てきたのが綾波だな。ここ3ヶ月の売り上げも惣流の倍を軽く超えてるね」
「え、私? うっそー!」
そう言ってレイは胸の前で手を合わせて小躍りしている。
アスカはそれをジト目で見ていたが、腰に手を当ててツンと上を向きながら言った。
「ま、それでもあたしに追いつくのはまだまだってとこね」
「そいつはどうかな?」
「ええっ?」
ケンスケの答に、アスカは驚いた顔で振り返った。
ケンスケの眼鏡が眩しく輝いていて、その目が見えない。
「綾波は惣流と違っていくらでも写真を撮らせてくれるからな。この先、惣流が写真を撮らせてくれないと、いずれはみんなが買う写真が無くなっちまう。同じ物ばかりになってさ。その点、綾波はこれからどんどん種類が増えることになる。今のペースなら種類的には夏までに惣流に追いつくだろうな。売り上げも、卒業までには……いや、この伸び率から行けば年末には……」
「だ、だからって、あたしの写真はそうは簡単に撮らせないからねっ!」
アスカの声が少し震えている。
「ああ、わかってるさ」
ケンスケはニヤリと笑った。
今の発言は裏を返せば、事実上の写真撮影及び販売解禁宣言に他ならない。
いわゆる普通のスナップショットでも、惣流の写真なら黙っていても売れるのさ。
それに、大量流出を恐れてストックしていた写真もあるし……
ケンスケの頭の中では既に売り上げ5割増しの結論が出ていた。
「それよりさ、相田君。みんなの写真撮ってくれない?」
横でニコニコしながら聞いていたレイがケンスケに声をかけた。
「みんなの?」
「そう、アスカとヒカリと私と、相田君と碇君と鈴原君の。みんなが揃ってるのって、少ないじゃない。いつも相田君、映す側に廻っちゃってるしさ」
「ま、売り上げには関係なさそうだけど、たまにはそういうのもいいかもな。いいよ、撮るよ」
「やった! じゃあ、誰かに頼んで……」
「三脚ならあるよ」
そう言ってケンスケは鞄の中から折り畳み式の三脚を取り出した。
どうして学校に三脚なんか持って来てるの?
これにはアスカのみならずレイまでも引いてしまった。
だがケンスケは悠々と三脚の脚を伸ばしながら被写体たちに指示を出す。
「バックは白い方がいいから、そっちの壁際に並んでよ」
「ほらほら、ヒカリも碇君も鈴原君も早く」
「何やぁ、何で教室で写真撮らないかんのや、めんどくさい……」
「スズハラ、そんなこと言わずに……」
ヒカリがそう言ってめんどくさがるトウジを促した。
彼女はたぶん、自分とトウジが並んで映っている写真が少ないことを気に病んでいるのだろう。
これならアスカも公認の写真だから、堂々と手に入れられる……
彼女は既にパネルサイズの引き延ばしまで考えていたかも知れない。
「しゃあないなぁ……」
「ほら、シンジも、早く、こっち!」
「あ、うん……」
「よし、俺、そっちの左側入るから、空けといてくれ。ほらほら、もっとくっついた方が大きく撮れるぜ」
「シンジ、今日は許したげるから、もっとこっちに寄りなさいよ」
「ほら、碇君、遠慮しないで」
「ス、スズハラ、もう少しそっちに寄らせて……」
「こ、これでええか……」
「引き延ばしその他は個別注文に応じるよ」
ケンスケはそう言ってまた眼鏡をクイッと指で押し上げると、カメラを離れアスカの左側に立った。
6人の並びは左から順に、ケンスケ、アスカ、シンジ、レイ、トウジ、ヒカリ。
「赤いランプが速く点滅してから3秒後な」
ケンスケがリモコンのスイッチを押す。
「一応、2枚撮るから……はい、3、2、1……」
光るフラッシュ。
「よし、もう一枚。今度はポーズ変えてもいいぜ」
LEDが点滅し始める。
大きく笑ってVサインのケンスケ、鏡を見て練習したとびきりの笑顔を見せるアスカ、美少女二人に挟まれて複雑な表情のシンジ、なぜか悪戯っぽく笑うレイ、緊張してしゃちほこばるトウジ、そのトウジに気付かれないようにそっと身体を寄せるヒカリ。そして……
「碇君っ!」
「えっ、あっ!」
「ちょっとおっ!」
パシャ!
「レイッ、思い出作るのはいいけど、そんなことしていいって言った憶えはないわよっ!」
「あーら、ごめんあそばせ、奥様。だってご主人があまりにも可愛らしいんですもの」
「誰が奥様よっ! ……ちょっと、シンジも、何、にやけてんのよっ!」
「えっ、ぼ、僕は別に……」
「碇君、こんな怖い奥様と別れて、私と駆け落ちしない?」
「いや、それは、その……」
「バカなこと言ってんじゃないわよっ!」
やっぱりこの子、悪友よ!
そして、これがその写真。
びっくりしたな、その子が、いきなり……だもんな。
心の準備をする暇もなかった。
にやけてるってアスカに言われたけど……どうなのかな。わかんない。複雑な表情……かな。
でも、大胆だよな、こんなことするなんて。
僕のこと、どう思ってるんだろう?
……やっぱり、友達かな。
でも、こんなことするってことは、もしかしたら……
いや、それはないか。いつものことだし。
はあ、でも、紛らわしいことしてくれるよな。
どうして僕のこと、こんな風にからかうんだろう?
パンツ覗き魔って呼ばれたことに始まって、この子には振り回されっぱなしだ。
でも……でもなあ……
こんなことされるの、嫌じゃないん、だよな……
思い出、か……
何年か後にこの写真を、僕は誰と見るんだろう。
できれば……
僕はそれらの写真を秘密のアルバムに入れると、机の引き出しの奥にしまっておいた。
「ふーん、なかなか良く撮れてるじゃない。さすがは相田君ね」
私は今日もらった3枚の写真を見ながらそう思った。
Vサインと、集合写真その1とその2。
特に、その2の方は何度見ても楽しい。
碇君のこういう顔はいくら見ていても飽きないわ。
でも……
「迷惑だったかな、やっぱり……」
そんな顔してるもんね。
しかし私は思い直す。
こんなこと、今のうちしかできない。
いつまた、みんなと離ればなれになるか、わからないんだから。
だから、もう少し。もう少しだけ。
「迷惑かけるけどゴメンね、碇君……」
でも、迷惑料どうしようかな。
何かプレゼントする?
あ、そうだ。
これをあげようかな。
でも、受け取ってくれるかな。
「私の写真なんて……」
よけい迷惑……かも……ね……
- Fin -
恒例のおまけ
次の日、碇家のダイニング───
「あなた、例のシンジのアルバム、昨日は5枚増えてましたよ」
「フォトファイルも5枚だ。同じ物だな。たぶん」
「それで中にね、レイちゃんがシンジに抱きついてるのがあるんですよ。大胆ね、あの子も。でも、シンジもまんざらでもないって顔してるのよ」
「ふっ、その写真は今シンジがパソコンで編集中だ。レイ君と自分だけ切り取ろうとしているぞ。アスカ君も入れてやれば角が立たないものを」
「本当、そうね。アスカちゃんが可哀想だわ」
「しかしシンジの奴、ディスクのバックアップをとっておらんようだな。壊れてしまってから泣いても遅いぞ」
「言ってやったらどうなんです?」
「問題ない。既に私がバックアップして保管している。サルベージに失敗して泣きついてくるシンジの顔が見えるようだ(ニヤリ)」
「まさかあなた、何か仕掛けたんじゃないでしょうね?」
「む……」
「あなた……そのうち刺されますよ」
もう一度
- Fin -
謝辞:最後になりましたが、この作品を作成するための示唆を頂いたXXXsさん、ぴぐさんにこの場を借りてお礼申し上げます。
新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。
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Written by A.S.A.I. in the site
Artificial Soul: Ayanamic Illusions