ダン ダン ダン ダン ダンダン ダン ダン ダン ダン ダン
 ダン ダン ダン ダン ダンダン ダン ダン ダン ダン ダンダン
 パー パーパパ パーパパッパッパー パーパーパ パーパパッパッパパー

 発令所は勇ましい音楽であふれかえっていた。
 サントラ集に入っている「DECISIVE BATTLE」だ。
 皆さんはあれはアニメ上の単なるSE(サウンド・エフェクト)だと思っていたであろうが(もちろん作者も)、実は違ったのである。
 指令席の下にオーディオの調整器があり、ゲンドウ自らが選曲しているのだそうだ。
 まったく、ケレン味の多いオヤジである。(ワンダバを聞いて育った世代はこれだから……)

 ミサトは腕を組んで下の定位置に佇み、正面のモニターを睨んでいた。
 いつもならこの時間はビールをかっくらって高いびきをかき、非常召集にも気付かず寝ているはずだが、今日はどうしたのだろうか。
 何か理由があってこんな時間まで起きていたようだ。
 ちなみに、服装はいつもの着くずした制服姿だが、後日聞いたある人の情報によると着けている下着は男物だったということだ。
 おそらく、暗かったので間違えたのだろう。
 誰のと間違えたのかって? まあ、いーじゃないの、そんなこと。(ミサト談)

「使徒の姿を確認。主モニターに回します」

 日向が慣れた手つきで目の前のスイッチ類を操作している。
 とはいえ、彼もだいぶ眠たそうである。
 おそらく、ミサトをデートに誘う(その12参照)のに失敗して、やけ酒でも飲んで寝ていたのだろう。
 隣の青葉も少々お疲れ気味のようで、キーボードを叩く手が時々痙攣している。
 どうやらライブ(その12参照)で燃え尽きたらしい。
 マヤさんは……もちろん、この場にはいない。
 リツコもまだ到着していないようだ。

「……常識を疑うわね」

 ミサトがモニターを見ながら、あきれたように言った。
 もちろん、使徒のことである。
 あさりよしとお氏や山下いくと氏ならもっとまともなデザインをしてくれたろうに……と思っているに違いない。
 全くもって申し訳ない。作者に絵心がないことが全ての原因である。
 なんせ、他にデザインを思い付かなかったもので……

 その夜、第3新東京市上空に現れた使徒は……何と、巨大な「招き猫」の姿をしていたのだった。


 The end of ネコ耳マヤさん



「鈴の代わりに光球ってわけね、なるほど」

 誰に向かって言ってるのか知らないが(たぶん作者だろうと思うが)、ミサトは独り言をぶつぶつと呟いている。
 よっぽど使徒の形状が不満らしい。
 でも、納得できる使徒の姿というものがあればぜひ教えて欲しいものだ。(と、開き直る作者)
 今までの使徒だってほとんど常識はずれの形をしていたんだし、たまにはこういうのもいいじゃないか。

「まあ、いいわ。エヴァの準備はできてる?」

 言葉ではそう言いながらも態度はまだ不満げなものを見せながら、ミサトは訊いた。

「弐号機は発進準備完了です」

 と、青葉。

「零号機、初号機はパイロットがまだ到着していません」

 こっちは日向である。
 いや、別にどっちがどれを言おうと読者の方にはどうでもいいことなのだろうが(笑)。
 万が一、この作品がOVAになったりしたときのことを考えて一応配役を決めておいた方がいいと思ったもので。(ないない(笑))

「ちっ、温泉行かせたのは間違いだったわね」

 ゲンドウに聞こえないように、ミサトは小声でぶつくさと呟いている。
 もしかしてリツコたちは無断で外泊していたのだろうか?
 でも、リツコがその辺のことをゲンドウに言ってないはずがないと思うんだけどな。
 それに温泉旅行はNERVの旅行センターで申し込んだんだから、その辺の情報はゲンドウに伝わっているだろうし。
 まあ、ゲンドウはレイにふられたショックでそんなことまで気が回らない可能性もあるけど(笑)。

『ミサトっ!』

 突然、アスカの大声がスピーカーを通して聞こえてきた。
 相変わらずえらそうである。

「何? アスカ」
『シンジたちなんかどうでもいいから、あたしを早く出してちょうだい!」
「バックアップがいないと危険よ。それでもいいの?」
『はん! あんなヤツ、あたし一人で充分よ!』
「わかったわ。初号機と零号機が準備できるまで、使徒を足止めしておいて」
『足止めどころか、シンジたちが出てくる頃には片付いちゃってるわ!』
「無茶はダメよ。弐号機、発進!」
「了解!」←日向

 バヒューン!

 アスカを乗せた弐号機は、使徒の待つ地上へと射出されていった。
 しかし、興奮したときのアスカってあんまり頼りにならないからなぁ、大丈夫だろうか。
 ま、でも、この作品ではアスカはメインじゃないからどうでもいいんだけど(笑)。

「シンジくんとレイはまだ到着しないの!?」
「まだです……あ、いえ、今到着しました!」

 ちょうどその時、シンジが初号機のエントリープラグにボッチャーンと“着水”した。
 どうしてこんなに時間がかかったのかというと……何しろ、猫又温泉からの直結スロープである。十キロはあるのだ。
 おまけに生身の身体で滑ってきているので、そんなにスピードも出ない。
 市内にいるミサトやアスカよりも遅いのは当然だろう。
 でも、こんなことでは緊急用として作った意味があるのかどうか疑問なのだが。

「何とか間に合ったわね。よし、すぐに出撃させて!」
「え? いや、しかし……」
「何やってんのよ、急ぎなさい!」
「は、はい!」

 有無を言わさず日向に命令を下すミサト。
 今にも首を絞められそうな勢いに、日向はしぶしぶ射出ボタンを押した。
 だが、日向がなぜ戸惑ったのかは読者の皆さんにはおわかりだろう。

 バヒューン!

 初号機が射出されたちょうどその時、リツコが発令所に駆け込んできた。
 おそらく彼女も直結スロープを使って本部に到着したのだろう。
 スロープを滑ってきて風を受けたせいか、前髪が少し跳ね上がっていた。
 いつもの白衣姿だが、そのお尻の部分が心持ちてかっているようだ。

「ミサト! 初号機はもう発進したの!?」

 入ってくるなりそう訊いてきたリツコに、ミサトはいつものお返しとばかりにジト目を投げかけた。

「遅かったじゃないのよ、何やってたのよ……もちろんもう出しちゃったわよ!」
「くっ! 間に合わなかったわね……」
「は?」

 こういうときにいつも遅れてくるのはミサトの方であり、今日はそのお返しをたっぷり……と思っていた矢先、リツコが意外なことを言い出したので、ミサトは気勢をそがれてしまった。

「な、何言ってんの、間に合ったわよ? まだ使徒は上空に……」

 ミサトの目はジト目から点になっている。
 アニメの絵ヅラなら、ついでに大粒の汗をタラーとさせているところだろう。
 作戦課長のくせに状況を全く把握していないのである。
 追い打ちをかけるように、リツコが鋭く言い放った。

「あの初号機には、レイやマヤも乗ってるのよ!」
「へ? ええっ? えーっ!?」

 驚きのあまり“いやーんな感じ”のポーズをしてしまうミサト。
 それを見ていた日向が、上司に対する考えを変えようかと真剣に悩んだのは言うまでもない。



 そのころ、既に地上では、弐号機と使徒の戦いが始まりつつあった。
 上空に浮かんでいた使徒はゆっくりと高度を下げてくる。
 スマッシュホークを大上段に構えながら、アスカは慎重に使徒との間合いを計っていた。

「来たわね……シンジやファーストがいなくったって、あんたなんかあたし一人で……」

 お茶の子さいさいよ!とアスカが言おうとしたその時だった。
 目の前の招き猫が、「招き」をしている方の手を、くいっと動かしたのである。
 と、途端に前に向かってすってんころりんと転げてしまう弐号機。

「きゃあっ!?」

 アスカの方は何がなんだかわからない。
 せっかくかっこよくセリフを決めていたのに、何たるざまだろうか。
 まるで水戸黄門が印籠を出しているときに悪人に討ち取られたみたいな感じだ。
 慌てて起きようとすると、使徒がまた手をくいくいっと動かした。

「きゃーっ! な、何よ、これーっ!???」

 使徒の手の動きに合わせるように、弐号機はころころと転げ回ってしまう。
 これじゃまるでヨーヨーである(「犬の散歩」という技だな)。

「きゃーっ! きゃーっ!」

 アスカはすっかり目が回ってしまっていた。



「ど、どういうことっ!」

 発令所ではミサトがいつものセリフを叫んでいた。
 全く、こんなのでよく作戦課長が務まるものだ。
 まあ、使徒の攻撃が予想できる人間はそうはいないと思うけど。

「そ、それが、2枚のATフィールドの壁が弐号機を挟んで、使徒の手の動きに合わせて移動していますっ!」

 負けずに叫び返す青葉。

「新しい使い方ね」

 リツコはすっかり平静に戻っていた。
 敵の特徴もわからないのに挑みかかっていく方が悪いとでも言いたげだ。
 使徒の方は、ひとしきり弐号機をもてあそんでから、くいくいと動かしていた手を、手首を返すようにしてきゅっと捻りあげた。

『きゃああーっ!!!』

 哀れ弐号機は、アスカの一際大きな悲鳴と共に、第2芦ノ湖の方まですっ飛んでいってしまったのだった。

「無様ね」

 追い打ちをかけるように呟くリツコ。
 そこまで言わなくてもと思うくらい厳しいが、このSSでのSALの役回りはこんなものだから仕方ないのだろうか。

「シンジくん、気を付けて。敵は怪しい技を使うわよ。今の、見てたわね?」
『は、はい……』

 初号機が地上に出てきたのはちょうど弐号機がぽいっと放り投げられるところだったので、シンジは一応弐号機がどうなったかを知っていた。
 しかし、今は戦闘どころではない。
 狭いエントリープラグの中に、マヤさんやレイと一緒に押し込められているのである。
 おまけにシンジの姿はといえば、タオルを腰に巻いているだけ。
 それを発令所でモニターされているのだ。恥ずかしいことこの上ない。
 ちなみに、いつもは避難してしまうはずの非戦闘員である女子社員たちが、モニターの前に鈴なりになってきゃあきゃあ言っているのをシンジが知るはずもない(笑)。

「慎重に間合いを詰めるのよ、慎重に……」
『せ、先輩っ!』

 ミサトがシンジに呼びかけていると、いきなりマヤさんの声が割り込んできた。
 かなり切迫した声である。

「何なの? マヤ」
『あ、あの、私……その……』
「どうしたの、早く言いなさい!」
『わ、私……使徒を説得してみます!』
「は?」

 ここから降ろして下さい、とでも言われると思ったリツコは、見事に裏切られて口をポカンと開けてしまっていた。
 慌てて素に返ると、リツコはマヤさんを問いただす。

「説得? どういうこと? あなた、使徒の言葉がわかるの?」
『い、いえ、でも、相手は何だかネコみたいだし……』
「じゃ、ネコ語で話しかけるとでも?」
『は、はあ、一応……』
「……わかったわ。やってみなさい」
『は、はい……にゃあにゃあ、にゃあにゃあ、にゃ……』

 どうやらマヤさんはネコ語で使徒との会話を始めたらしい。
 その姿を呆気にとられて眺めるミサト。
 それからミサトはおそるおそるリツコの方に話しかけた。

「あの……リツコ……」
「何よ」
「マヤちゃん、どうしてネコ語なんて話せるのよ?」
「そんなこと、私が知る訳ないでしょう」

 嘘である。知らないはずがない。
 しかし、リツコは素知らぬ顔でミサトの質問を受け流している。
 マヤさんがネコ語を話せるなんて、自分も今知ったばかりだとでも言わんばかりの表情だ。
 全く、マッドサイエンティストはこれだから怖い。

「まあ、それはいいんだけど、リツコ」
「何よ、まだ質問?」
「たぶん、あの3人は温泉に入ってたからあんな格好(作者註:裸にタオル巻いただけ)してるんだろうけどさ」
「わかってるのなら訊かないでよ」
「どうしてマヤちゃん、ネコ耳なんて付けてるの?」
「さあ? コンテストで優勝したから気に入ってるんじゃない?」

 またまた空とぼけるリツコ。
 男のためでなくても友人に嘘がつける女なのだった。

「ところで、そもそもなんで温泉になんか行こうと……」
『せ、先輩っ!』

 ミサトはまだリツコに疑問をぶつけようとしたのだが、使徒に向かってしばらくネコ語を話していたマヤさんが、またリツコに呼びかけてきた。

「どうしたの? 使徒との話が付いたの?」
『い、いえ、それが……』
「じゃ、交渉が決裂したの?」

 リツコはさっと顔色を変え、マヤさんの答えを待った。
 机に手をついて身を乗り出し、今にもモニターに向かって躍りかからんばかりになっている。

『す、すいません! 私、やっぱりネコ語なんて話せませんでした!』

 ガッシャーン!

 マヤさんの答えを聞いた拍子にリツコは手を滑らせ、床に向かって前のめりにつっこんでしまっていた。
 もちろん、ミサトも腰を抜かして後ろにすてーんとひっくり返ってしまっている。
 日向も青葉もずっこけてコンソールに突っ伏した。
 冬月は膝カックンになり、ゲンドウでさえ机についていた肘の片方をずり落ちさせたくらいだ。

「じゃ、何を喋っていたのよ、あなたは!」
『えーん、すいませんっ! 気持ちを込めて鳴き声を出してれば通じるかと思って……』
「もういいわよっ!」

 リツコは少し切れかかっていた。
 実は、マヤさんのネコ化が進み、ネコ語を話せるようになっていることを期待していたのかもしれない。

「たはは、ニャアニャア言ってる間に使徒が攻めてこなかったのが唯一の救いね……」

 制服のお尻の埃を手で払いながら、ミサトは立ち上がった。
 と、その時、使徒の手がくいっと動くのがモニターに映った。

「危ない! シンジ君、よけて!」
『わあっ!』

 初号機は慌てて後ろに飛びしざった。
 と、今まで初号機の足があったところの地面が爆発したかのようにえぐり取られ、土煙を上げた。
 正に間一髪。「よける」と思っただけでよけられるエヴァならではだ。

「シンジ君、早く、体勢を立て直して!」

 よけた拍子に、片膝をついたままの初号機。
 使徒がじりじりとその間を詰めてくる。
 だが、初号機の動きはいつになく鈍かった。

「ダメです、葛城さん! 初号機のシンクロ率が、20%以上も落ちてます!」

 日向が叫んだ。
 いつもシンクロ率をチェックしているマヤがいないものだから、大忙しだ。

「何ですって? どういうこと!?」
「わかったわ! インターフェイスを付けていないからよ!」

 ワンパターンのセリフを吐くミサトに、リツコの声がかぶさった。
 そう、まさしくリツコの察した通りである。
 実はインターフェースヘッドセットは非常用スロープの出口の辺りに用意してあったのだが、そうとは知らないシンジは取り損ねてしまったのである。
 加えて、プラグスーツではなくタオル一枚という格好。これではシンクロに集中できるわけがない。

「でも、レイも乗ってるんでしょう!? 相乗効果でシンクロ率が……」
「そ、それが、ファーストチルドレンはほとんどシンクロしていません!」

 そりゃそうだろう。
 プラグの中でシンジとの「混浴」を楽しんでしまっているレイが、シンクロするわけがない。
 何しろ、使徒の方を全く見ていないのである。
 おまけに、マヤさんまで乗り込んでしまっていては、異物の混入でシンクロ率が下がる一方で……
 (マヤさんを「異物」扱いするのは作者としては甚だ心苦しいのだが)

「くっ……万事休すか……」

 悔しそうな表情でモニターを見つめるミサト。
 しかし、そこに日向がおずおずと話しかけてきた。

「か、葛城さん……」
「何? 何かいいアイデアがあるの」
「いえ、それがその……伊吹二尉が……」
「へ? マヤちゃんがどうかしたの?」
「は、はあ、なぜかエヴァとシンクロしてるんですけど……」
「な、なぁんですってぇ!?」

 それを聞いたミサトの頭は完全に混乱していた。
 コンソールのディスプレイを覗き込むと、確かにマヤさんはエヴァとシンクロしていた。
 驚くなかれ、41.3%。
 シンジの初回シンクロ率と同じである。

(どういうことよっ!)

 ミサトがようやくのことでその言葉を飲み込んだ。
 たぶん、あまりにもワンパターン過ぎると思ったのだろう。
 だが、その程度のことしか考えられないミサトと違って、リツコの方がまだ少し落ち着いていた。

「わかったわ! ネコ耳がインターフェースの代わりをしているのね!」

 うーむ……
 まあ、暗闇でレーダーアンテナの代わりになるくらいだから、インターフェースの代わりになってもおかしくはない。
 だからといって、どうして初号機とシンクロするのかがいまいちよくわからないのだが……
 だが、リツコは一人で納得してしまい、茫然自失のミサトに代わって作戦の指揮を執り始めた。

「マヤ!」
『は、はいっ!』
「シンジ君と操縦を代わりなさい!」
『ええっ!? ど、どういうことですかっ!?』
「あなたがエヴァとシンクロしているのよ!」
『そ、そんなこと言われても……』
「いいから早くなさいっ!」
『えーん、わかりましたっ!』

 何が何だかわからないままリツコに怒鳴られ、おろおろするマヤさん。(なんて可哀想な)
 しかし、『見たことも聞いたこともないのに、できるわけないですっ!』と叫ぶわけにもいかない(笑)。
 言われたとおり、狭いエントリープラグの中でシンジと席を入れ替わった。
 シンジはマヤさんの右側からシートにしがみつく格好になっている。(註:レイは左にいる)
 そしてマヤさんはシートに座った。シートがチルドレン仕様だから小さすぎるのでは……とも思ったのだが、これがどういうわけかマヤさんにぴったり。
 うーむ、マヤさん、お尻の小さな女の子だったのですね。(キューティーハニーじゃないって)

「……代わったわね。シンクロ率は?」

 マヤさんとシンジが入れ代わったのをモニターで見ていたリツコが日向に訊いた。

「良好。40%台をキープしています」
「そう……来るわ! マヤ、よけて!」
『は、はいっ!』

 席を入れ替わった途端、使徒の手がまたくいっと動いた。途端に地面から巻き上がる爆裂。
 初号機はそれを横っ飛びしてよけた。まるでネコがジャンプするかのごとく……
 操縦がマヤさんに代わってから、初号機もすっかりネコ化してしまっている。(いや、元々かも)
 ちなみに、席を入れ代わっている間、使徒は全く攻撃を仕掛けようとしないで待っていたのだった。
 結構律儀なやつなのだろか。しかし、アスカの時は待たなかったはずだし、よくわからない奴である。
 (もしかしたら、作者のご都合主義に付き合ってくれているのかな?)

「よくよけたわ。でも、よけてばかりでなく、こちらからも攻撃しないと勝てないわよ!」
『ど、どうすればいいんですかっ!』
「あなた、いつもシンジ君の練習に付き合ってたじゃないの! あれと同じ要領よ!」
『えーん、だって、その時は本物の使徒なんていなかったんですよぉ!』

 どこかで聞いたようなセリフを吐くマヤさん。
 しかし、リツコも初陣のマヤさんにそんなに意地悪しなくても。

「じゃあ、こっちが指示するからその通りに動きなさい!」
『は、はいっ!』
「まず、インダクションモードへ移行! レバーを握って!」
『こ、これですかっ!』

 むにっ

『はうっ! マヤさん、そこ、違う……』
『え? ……っきゃ〜っ! ご、ごめんなさいっ!!!』

 マ、マヤさん、な、何を握ったんですか?(汗)
 いや、作者は発令所にいて、プラグの中をモニターを通してしか見られないもので、全貌を把握しているわけではないのである。
 もちろん、リツコを始めとする発令所の全員が呆然となっていた。
 もしや、マヤさんはシンジの○○○を……
 シンジ……操縦桿並み?(爆)

    while (1) {
        Maya("わ、私ったら……ドキドキ……不潔よっ!……");
    }
 マヤさんの思考は上記のように完全に無限ループに陥ってしまっていた。
 一応断っておくが、この「不潔よっ!」はシンジに対してではなく、自分自身に対しての言葉である。

「赤木博士、大変ですっ!」

 テレメトリーのCAUTIONランプの点滅で、いち早く我に返った日向が叫んだ。
 (ミサトを呼ばないということは、どうやら見放したようである)

「どうしたのっ!」
「シンクロ率がどんどん落ちています!」
「何ですって!? どういうことっ!」

 ありゃ、リツコもミサトと同じセリフを言ってしまった。

「パイロットの意識が乱れて、エヴァとのシンクロ波長が合いません!」
「マヤ! 何をやっているの、しっかりしなさい! マヤ!」

 必死になってプラグの中のマヤさんに呼びかけるリツコ。
 しかし、先程見ていただいたwhile文でおわかりのとおり、リツコの声ではマヤさんの無限ループはbreakしないのだ。
 悶々と……もとい、延々と自戒を続けるマヤさんであった。
 一方、シンジとの混浴体験に、戦闘中だというのに文字通り温泉気分に浸ってしまっているレイだったが、この時になってにわかに動きを見せた。

 スチャ

 レイはネコ耳を取り出すと、おもむろに頭に装着した。(どこに隠し持ってたんだ?)
 そしてごそごそと動き始める。もちろん、狭いエントリープラグの中なので、自由に動きが取れないのだが、どこをどう通ったものだか、いつの間にかシンジの右側にすり寄っていた。
 もちろん、シンジも頭を混乱させるばかりであった。

 つんつん

「碇くん……」

 出たな、ワンパターン。

「な、何?」

 シンジ、顔が引きつってるぞ。

「私も……操縦する……(ぽっ)」

 そう言ってレイはシンジの身体のどこかに向かって手を伸ばし……(汗)

「わーっ! やめてよーっ!」
「きゃーっ! 暴れないでっ!」

 逃げまどうシンジに追いかけるレイ。
 もう、エントリープラグの中はしっちゃかめっちゃか(死語)である。
 レイの手から逃げようとしたシンジに体当たりされたショックで、マヤさんはようやく無限ループからbreakしたものの(故障したテレビ直してるんじゃないんだから)、これではエヴァの操縦さえままならない。
 シンクロ率も下がったままだし……

「赤木博士、シンクロ率が!」

 ありゃ、また日向が叫んでいる。
 どうしたのだろう?

「どうしたのっ!」
「どんどん回復しています! 100%を突破しそうな勢いです!」
「初号機の周りに強力なATフィールドを確認! 計測不能です!」

 ついでに青葉も叫ぶ。
 リツコは慌ててコンソールに駆け寄ると、モニターに並ぶ数値を驚きの目で見つめていた。

「何ですって!? どういう……」

 お決まりのセリフを言いかけて、リツコははたと口をつぐんだ。
 何か思い付いたことがあるようだ。
 ここら辺がミサトと違うところであろうか。

「わかったわ! あれは、レイがシンクロしているのよ!」
「レイが? どういうこと!?」

 やれやれ、ミサトは全然進歩していないようだ。

「レイのネコ耳、あれはインターフェースヘッドセットで作ったものなんだわ!」
「なるほど! それを付けたおかげで、シンクロを始めたってわけね!」
「そうよ。そして、レイのシンジ君に対する集中力。それが強力なATフィールドを作り出しているんだわ!」

 ……何だかよくわからない理由だが、ともかくそういうことらしい。
 しかし、いくらシンクロ率が回復しても、この状況では操縦のしようがないと思うのだが。

「でも、リツコ、これじゃ防御はできるけど攻撃ができないわ!」

 ミサトも作者と同じことに気付いたらしい。
 しかし、リツコはミサトの顔を見ながら薄く笑った。
 どうやらいい作戦を思い付いたようだ。

「これだけ強力なATフィールドがあれば、使徒のATフィールドを破壊することができるわ」
「でも、どうやって?」

 ミサトの問いかけにリツコは答えず、主モニターの方に向き直るときびきびした声で言い放った。

「初号機のエントリープラグに、マタタビエキスを注入!」
「は、はあ? そ、そんなものがあったんですか?(汗)」←日向
「続いて、使途に向けてカツオ節弾を発射!」
「か、か、か……(検索中)……あ、ありました(汗)。目標を照準。発射します!」←青葉

 青葉がスイッチを押すと、町外れの山がゴゴーッと動き、ミサイル発射台が現れた。
 そして間髪を入れず、使途に向けてカツオ節弾が発射されていく。
 弾は使徒の上空で爆発し、トリモチ付きのカツオ節が使徒の頭の上から雨霰と降り注いだ。
 そのころ、ようやく日向もマタタビエキス注入スイッチを見つけ、初号機のエントリープラスにありったけのマタタビエキスを送り込んだ。
 #7の時はマタタビでぐったりとなってしまったマヤさんだったが、今回は……

「伊吹二尉の脳波を確認! 完全に興奮しています!」
「了解! さあ、マヤ、目の前に大好物のカツオ節があるわよっ!」
『にゃおーんっ!!!』

 マタタビエキスによって完全にネコ化したマヤさんは、カツオ節まみれになった使徒のほうへと突っ込んでいった。  いやもちろん、突っ込んでいくのは初号機なのだが、もはや完全にマヤさんと同化しているような感じだ。
 だが、なぜレイがシンクロしているのに、マヤさんが操縦できるのかというと……おそらくレイが「操縦する(何を?)」という一点に心を集中しているせいであろう。
 一方、使徒は目に見えるほどの強力なATフィールドのバリアを展開し、エヴァの突進を防ごうとする。
 だが、初号機のATフィールド(というか、マヤさんのカツオ節への執念)はそれを遙かに凌駕していた。
 まるでネコが壁を引っ掻くかのごとく、両手でATフィールドをバリバリと掻き分けて前進していく。

「す、すごい……」

 ミサトは目を丸くしてモニターに見入っている。
 もしかしたらあまりにも安直な展開に少々心配しているのかもしれない。
 一方、上の指令席では冬月がポツリと呟いていた。

「……勝った……かな?」
「……シンジ……よくもやってくれたな……」

 ゲンドウの受け答えは意味不明であった。
 結局、シンジとレイの混浴を阻止できなかったので機嫌が悪いのかもしれない。
 全く、こいつの考えてることは理解できん。
 これじゃ、いつになったらユイ君と会えることやら……
 冬月はそんなことを考えながら、少々寝不足の目で正面のモニターを見ていた。
 とりあえずもうすぐ終わるな、これは。

『ふみゃおぉーんっ!!!』

 その時、マヤさん(初号機)が一際大きな鳴き声を上げた。
 初号機がついに使徒のATフィールドを突破したのだ。
 使徒はネコ手をクイクイと動かし、ATフィールドの壁を初号機にぶつけてくるが、もやはそんなものは通用しない。
 初号機は使徒に飛びかかって馬乗り(ネコ乗り?)になり、使徒の身体に付いたカツオ節をカリカリと食べ始めた。
 エヴァとシンクロすると、痛みだけじゃなくて味まで共有できるらしい(笑)。

「使徒の光球を破壊しなさい、マヤ! そうすればカツオ節は全部あなたのものよ!」
『みゃあっ!』

 夢中でカツオ節をむさぼるマヤさんに、リツコの指令が飛ぶ。
 マヤさんはそれに答えて、使徒の喉元にある光球にかぶりついた!

 ピシピシッ

 赤い光球が、音を立ててひび割れていく。
 そしてすさまじい光を放ちながら……

ドッカーーーーーン!!!


















































































「はっ!」

 マヤさんは布団からがばっと飛び起きた。
 白を基調とした大きな部屋。目の前にあるのは見知らぬ天井。
 大きな窓から燦々と降り注ぐ陽の光。
 気が付けばどこからか聞こえてくる蝉時雨。
 ここは……?

「あら、気が付いたのね」

 人の気配と聞き覚えのある声に、マヤさんは視線を横にやった。

「先輩……」

 そこにはリツコが、いつもの白衣に身を包んで立っていた。

「身体の具合はどう? 食事を持ってこさせた方がいいかしら」
「あ、あの……私、どうしちゃったんですか?」

 いつも通りの、平静な表情を見せるリツコに、マヤさんはちょっと混乱していた。
 確か私、ネコ耳が生える病気にかかって、先輩たちと温泉に行って、使徒と戦って、それから……
 いろんな感覚が身体に残っている気がするのだが、どうも今ひとつ自信が持てないのだった。
 少々不安そうなマヤさんの顔を見ながら、リツコはクスリと微笑んで言った。

「そう、何にも覚えてないのね」
「えっ?」
「あなた、ネコ耳コンテストの後で、原因不明の病気にかかって寝込んでいたのよ、一週間くらい」
「…………」

 リツコの言葉を、マヤさんはぼんやりと聞いていた。
 起きたばかりで頭がよく働かない。
 原因不明の病気……確か、ネコ耳病にかかったはずだけど、どうも先輩の言ってることは少しニュアンスが違う気がする……
 じゃあ、あれは夢だったの? 私の頭に、ネコ耳が生えたのは……
 マヤさんは無意識のうちに、頭に手をやっていた。
 そして、ネコ耳があったはずのところをさわってみたのだが……

「何をしてるの?」

 マヤさんの妙な仕種に、リツコは怪訝そうな面もちをしながら言った。
 あわててマヤさんは布団の中に手を戻す。
 頭の上、何もなかった……

「いえっ、その……夢の中で……」
「夢?」
「はい……その、頭にネコの耳が生えてくる、変な病気にかかった夢を……」
「ネコの耳ですって?」

 リツコは今にも吹き出しそうだ。
 マヤさんは恥ずかしがりながら言い訳した。

「それがその、まるで夢じゃないみたいにリアルだったんです! 耳を触ったときの感触とか、手に残ってるみたいな気がするし、それにしっぽとか、肉球とか……」
「しっぽ? 肉球?」
「は、はい、私、すっかりネコになってしまったみたいで……でも、夢だったんですね……」

 ネコ耳……最初はいやだったけど、後半はちょっと楽しかった……
 マヤさんはほっとしたのか、残念なのか、よくわからない表情になってしまった。
 まだ夢から醒めきっていないようだ。

「そう、きっと楽しい夢だったのね」
「えっ?」

 密かに思っていることを言い当てられて、マヤさんは少し動揺した。
 リツコは軽く微笑みながら言った。

「あなた、病気で寝込んでるのに、とっても楽しそうな顔してたわよ」
「そ、そうだったんですか?」

 そう言われてすっかり恥ずかしがってしまうマヤさんだった。
 思わず布団をかぶりたくなってしまう。
 病気で寝てるのに楽しそうにしてるなんて、先輩、きっと私のこと変な子だと思ってただろうな……

「さ、そろそろそんな夢のことは忘れて、早く元気になってちょうだい。いっぱい仕事が待ってるわよ」
「は、はい!」

 くきゅるる……

 元気よく答えたマヤさんだったが、つられてお腹の虫まで返事をしてしまった。
 マヤさん、顔が真っ赤である。

「あらあら、お腹の方はすっかり元気みたいね」
「もう、先輩ったら!」

 昼下がりの病室は、明るい笑い声に包まれていた。







 ……彼女は自分の研究室に戻っていた。

 窓の外には果てしない闇の空間が広がり、部屋の中は影の世界に支配されていた。
 テーブルの上のスタンドだけが部屋の片隅を煌々と照らし出し、闇の中に光の島を作っている。
 その光の中から生まれたかのように、淹れ立てのコーヒーの香りがほのかに漂っていた。
 彼女はゆったりと椅子に身を沈め、モニターを横目で眺めていた。
 一つは病室で眠る可愛い後輩の姿、そうしてもう一つは……
 それらを代わる代わる目に映しながら、彼女は手にしたカップの中身を一口すすった。
 高貴な苦みと、微かな渋みが喉を潤し、彼女の精神を高揚させる。

「……いろいろと、ハプニングはあったけど……」

 彼女の頭の中には、この一週間の出来事がよぎっていた。
 全てはネコ耳コンテストから始まった……マヤに渡した薬、仕込み針、ネコ耳の萌芽、しっぽ、赤いゴムまり、おかかごはん、黄色い毛糸玉、肉球、温泉、そして……
 大きな計算違いといえば、使徒襲来くらいか。
 だがそれも、事なきを得た。少なくともマヤに関しては……
 あらゆるデータは抹消済みだ。何も問題はない。全ては心の中にある……
 モニターの中の安らかな寝顔を見ながら、リツコは語りかけるように、静かに言葉を発した。

「……また今度、楽しみましょうね、マヤ……」

 キーボードのキーを一つ、軽く叩く。
 モニター画面の上にウインドウが立ち上がり、ワープロで作った文書が映し出された。

 『第2回NERV猫耳……』

 一瞬だけその文字が映ったかと思うと、すぐにそれはスクロールの洪水の中に飲み込まれていった。
 薄い笑みを浮かべながら、自分が作った文書にしばらく見入っていたリツコだったが、ふうっと深くため息を一つつくと、手にしたカップをテーブルの上に置き、隣のモニターに目を移した。

「後は、シンジ君とレイね……」

 早く帰ってきなさい……リツコは初号機のエントリープラグの中を映し出すモニターを、けだるい表情で見つめ続けていた……











 そのころ、シンジとレイは……

 LCLに溶けていた(笑)。

 賢明な読者の皆さんはもうお気付きのことと思うが、このSSは決して夢オチではない。
 夢だと思っているのは、マヤさんただ一人である。
 使徒との戦いで何が起こったのかというと……例によって、異常に高まったシンクロ率のために、マヤさんもシンジもレイも、LCLに溶けてしまったのである。
 もちろん、サルベージ作戦が行われ、マヤさんはいち早く現実世界に帰ってきていた。
 (たぶん、リツコに会いかたったからだろう)
 無事戻ってきたマヤさんの頭からはネコ耳がなくなっていたが、これは普通の女の子に返りたいと願ったからだろうか(笑)。
 そして、昏睡状態から醒めたのが、先ほどの病室の場面だ。

 マヤさんが真実に気付くことはおそらくないだろう。
 この1週間のデータはリツコがすっかり消去してしまっている。(全ては心の中に……)
 ゲンドウおよび委員会の不祥事(ネコ耳コンテストでのトトカルチョのことかな?)を隠蔽するために、使徒が来たことさえうやむやになってしまったし。
 (招き猫にちなんで、宝の天使「パラシエル」という名前を付けようと思ったのに(笑))
 もちろん、マヤさんが退院するまでに、シンジとレイのサルベージが済めばの話だが……



 ところで、シンジとレイがなぜまだ戻ってこないのかというと……

 つんつん

『綾波……』
『……何?』

 おや、いつもと逆だね。

『早く、帰ろうよ〜……』
『……まだ……混浴(ぽっ)』

 というわけなのだった(笑)。
 こりゃ、当分戻ってきそうにないな。(ちゃんちゃん!)



- das Ende -





最終回、お待たせしてすいませんでした(^_^;)
……え? まだ、続きが?












 The end of “The end of ネコ耳マヤさん”




「おはようございます!」
「やあ、おはよう」
「おはようございます!」
「おはよう、マヤちゃん」

 本部に着くと、マヤさんは会う人ごとに挨拶する。
 だからマヤさんは結構人気があったりする。
 何でも、『親衛隊』や『補完委員会』が結成されているとかいないとか。
 特にこの日は挨拶の数が多かった。つまり、出勤している人が多いのである。
 それでもマヤさんはニコニコ笑顔を崩さない。それも人気の秘訣。
 更衣室でいつもの制服に着替えると、技術局第一課の居室へ。

「おはようございます!」

 一際大きなマヤさんの声が部屋に響く。
 皆が一斉に振り返り、笑顔で口々に挨拶の言葉を返してくれる。

「おはよう、マヤ」
「おはようございます、先輩!」

 リツコの挨拶にも元気に答える。
 そしていつもどおり、今日の打ち合わせから。

「マヤ、ちょっと」

 リツコに呼ばれて、マヤさんはリツコの机の前に飛んでいった。

「はい、今日の仕事の件ですね。今日は確か……」
「その前に、これはどういうことか説明してちょうだい」

 マヤさんの目の前に、分厚い紙の束がばさりと置かれた。
 昨日提出したレポートの書き直しかと思ったマヤさんだったが、目を通してみてぎょっとした。

「せ、先輩、これをどこで!?」
「その前に、私の質問に答えてちょうだい。これはいったい何なの?」

 口調は厳しいが、リツコの顔は怒ってはいない。
 目を細め、口元にはうっすらと笑みを浮かべていた。
 しかしそれは、内に怒りを秘めていることを意味する。
 こういう時のリツコこそ本当に怖いのを、マヤさんは経験上知っていた。

「す、すいませんっ! これは、あの、その、つまり、MLの友達が書いたSSで……」

 そこまで言いかけて、マヤさんははっと口をつぐんだ。
 SSに読みふけってしまって、仕事もしてないのに残業を3時間も付けたのがばれたとでも思ったのだろうか。
 だが、リツコが言いたいのはそんなことではなかった。

「友達? それにしては随分とうちの部の内情に詳しいわね」
「ああっ! そ、それはその、つまり……」
「そもそも、どうしてこれが私の手に入ったかわかる?」
「ど、どうしてですか?」

 マヤさんは上目遣いになって、おそるおそるリツコに訊いてみた。
 リツコの顔はまだ怒っていない……が、心持ちこめかみがピクピクとなっているような気がする。

「昨日の仕事、覚えてる?」
「えっ? あ、はい、昨日は、零号機のシンクロデータ整理と、初号機への……」
「レポートを早く提出しなさいって言ったとき、あなた大慌てでサーバにファイルを置いたわね?」
「は、はい……ああっ! じゃあ、その時にファイルを間違って!?」
「しかも、レイのパーソナルデータのフォルダによ!」
「ええっ!? す、すいませんっ!」



 そのころ、シンジとレイは……

 つんつん

「碇君……」
「え、何?」
「混浴……いつ?」
「へ?」

 駅のホームで楽しげに語り合っていた。
 どうやら、レイの記憶のバックアップ時に、マヤさんの友達が書いたSS……『ネコ耳マヤさん』が紛れ込んだらしい(笑)。
 なるほど、だから「碇君と一緒になりたい」と思うようになったんだな(笑)。

「……こないだまで一ヶ月もエヴァの中に溶け込んでたくせに……何よ、元の鞘に収まっちゃって……」

 と、向かいのホームから二人を見ていたアスカがやっかんだのは、実はこのシーンだったのである(笑)。



「シンジ君のサルベージが無事終わったからって、気を抜くんじゃありませんっ! まじめに仕事しなさいっ!」
「えーん、ごめんなさいっ!(>_<)」

 リツコにお目玉をもらって、すっかりしょげてしまったマヤさんだった。(ちゃんちゃん!)


- das Ende -





改めて、最終回、お待たせしてすいませんでした(^_^;)
その割にはストーリーがちゃちで申し訳ありません。
危うく夢オチにしそうになるし……(^_^;;)
とにかく、最後までお読みいただいてありがとうございました!
次回作……あるかどうかわかりません(^_^;;;)


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。

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Written by A.S.A.I. in the site Artificial Soul: Ayanamic Illusions