ネコ耳マヤさん



 時間軸を元に戻そう。
 時は5時過ぎ。コンテスト開始の直前。
 そしてここはマヤさんの控え室である。
 その扉には『ネコ耳コンテスト司会者様控え室』と仰々しい極太明朝体で書かれた紙がペタリと貼り付けられている。『司』の字からは縦書きになっていたが……
 まるでTV局におけるタレント並みの扱い……だがマヤさんはそんな浮かれた気分ではなかった。

 くるくるくるくるくるくるくるくるくる

 マヤさんは回っていた。
 とは言っても、TV編のエンディングのように逆さになって水の中で回っていたわけではない。
 落ち着かない様子を身体いっぱいに表現するようにして、部屋の中央のちゃぶ台の周りを歩き回っていたのだった。
 そこにはいつもの笑顔もなく、心なし苦しげな表情が垣間見られる。
 その切ない表情をマヤフリークが見たら思わず抱き締めたくなるに違いない。

「ううう、落ち着かないよぉ……どうやったら落ち着けるのかしら……」

 マヤさんは初めての大舞台を前に完全にアガっていた。
 いつも発令所で現状報告の声を張り上げてるとは言っても、あれは特に誰に向かって喋っているわけでもない。
 しかし、今回は状況が違う。
 第拾参大会議場といえばNERV随一の収容人数を誇る大きさ。そこに集まった人数は計り知れない。
 何しろ、本部中の人という人が集まっているのだから……

 そしてその大人数を前にしてしゃべらなければいけないのである。
 いかに司会者用の台本が用意されているとは言え、今日やれと言われてハイそうですかと心の準備が簡単にできるわけがない。
 しかもマヤさんは目立ちたがり屋ではないので、人目の多い場所は苦手なのである。
 何しろ、趣味は本を読むこと。悲恋小説に涙するほどの繊細な心の持ち主なのだ。
 アガるなというのは無理な注文であろう。
 それにしても哀れな表情である。そこがまた可愛かったりして、綾波派の作者も惹かれてしまいそうだ。

「えっと……どうすればいいんだっけ、手に……手に、『の』の字を……違う! そう、『人』の字よ。『人』の字を書いて、飲む……」

 ひょいぱくひょいぱく
 マヤさんは独り言を呟きながら何度も何度も人を飲んだ。もうお腹いっぱいである。
 それでもまだ心臓のドキドキは治まらない。
 時計を見る。もうそろそろ会場に行かなくちゃ……
 そう思うとまた鼓動が早まってくる。

「ああああ……どうするんだっけ……えっと、何だっけ……お客さんを人と思っちゃいけなくて……会場は、スイカ畑……じゃなくて、キャベツ畑だっけ……ジャガイモ畑だっけ……」

 そんなことどっちでもいいのだが、マヤさんの頭の中はもう混乱の極みである。
 あれこれと考えに考えているが、会場に出た瞬間、頭の中はピーマン畑になるだろう。
 またちらっと時計を見る。
 もう行かなきゃ。
 逃げちゃダメよ、逃げちゃダメよ、逃げちゃダメよ……

 マヤさんは頭の中で念じながら、控え室の扉を開けた。
 ガチャ
 と、そこには薄笑いを浮かべたリツコが立っていた。
 いつもの白衣に身を包んで。
 中を覗いていたのではないらしいが……

「あっ、せ、先輩!」

 マヤさんはそこに救いの神を見たような気がした。
 自分を勇気づけてくれる存在。まるで後光が射しているような……
 だが、彼女こそがマヤさんをこんな窮地に陥れた張本人で、背後から立ち昇るのが邪悪なオーラだと言うことにもマヤさんはぜーんぜん気付かなかった。

「ふふふ、だいぶ緊張してるみたいね、マヤ」
「先輩! ああ、先輩! もう心臓が破裂しそうですよ……」

 ここで、マヤさんはリツコの手を取り、ほら、こんなにドキドキしてるんです、と言いつつ手を胸に当てる、というようなことはしない。
 なぜなら、このSSはそういう話ではないからである。

 で、リツコはというと妖しげな笑みを浮かべたまま、マヤさんの目を見て言う。

「ごめんなさいね。そう思って緊張を抑える薬を持ってきてあげたから」

 謝るくらいなら司会の任務を解いてやれよ。

「あ、ありがとうございます……」

 しかしマヤさんは、全く疑う様子もなく、リツコが差し出した試験管を手に取った。
 試験管の底には怪しげな鈍い緑色の液体がたゆたっていた。
 ちょっちトロみがかっているようだ。何だこりゃ。
 こんな物を出されて緊張を解く薬だと思う方がおかしい。どうかしてる。
 ましてや、試験管のまんまである。どう考えても悪い薬だ。

 しかし、リツコに全幅の信頼を置くマヤさんは、その液体の匂いを嗅ぐこともなく、一つ大きく深呼吸してからぐいっと飲み干した。
 色からして、何となく苦そうに見えるが……
 いや、だって、何となく抹茶っぽいし……

 薬を飲み干したマヤさんは、ぷはっと息を吐いて、試験管をリツコに返しながら言った。

「ああっ! 何だか、緊張が少し和らいだような気がします! 先輩、ありがとうございました!」
「そう、頑張ってね、マヤ」
「はい! じゃ、いってきます(はぁと)」

 マヤさんはそう言ってにっこり微笑むと、会場の舞台の袖の方に歩いていった。
 心なしか、足取りが軽い。

「あ、マヤ、忘れ物よ」
「えっ!?」

 二、三歩行ったところでマヤさんはリツコに呼ばれて振り返った。
 首をちょっと傾げてるところが何となく可愛らしかったりする。
 リツコは白衣のポケットをまさぐり、なにがしかを取り出してマヤさんの方に差し出した。
 マヤさんは素直にそれを受け取った。
 それはネコ耳コンテストにとってもふさわしい物だった。

「カチューシャ……ですか?」
「そうよ」
「でも、これ……ネコ耳……」

 そう、そのカチューシャには黄色いネコ耳が付いていた。
 ちなみに、耳の内側の方は白かったりする。
 それを不思議そうに眺めているマヤさんにリツコは言った。

「司会者もそれをすることになってるのよ」
「え……ええっ!?」

 マヤさんは思わず大きな声を出してしまった。
 ちなみに、『聞いてないよー』というようなレトロなギャグは言わない。言うわけがない。
 だって、マヤさんだから。

「安心して。出場者もみんな付けてるから」

 ……そういう問題じゃないと思うが。
 どうにも論点がずれているような雰囲気は否めない。

「はあ……」

 マヤさんは納得したようなしないような、曖昧な返事を残して、再び舞台袖の方に向かった。
 もちろん、手には渡されたネコ耳と台本を持って。

 ところで、リツコが渡した薬は本当に精神安定剤か何かだったのだろうか。

 そんな訳ないじゃないか。
 世にこれを『プラシーボ効果』という。
 緊張を抑える薬だと言われれば、ビオフェルミンだって精神安定剤になるのである。
 信じる者は救われる……かなぁ?

 とにかく、この場合は信じちゃいけなかったんだと作者は思う。



 どきどきどきどきどきどきどきどきどき

 マヤさんは舞台袖に立っていた。
 あと5歩進めばMC席、つまり司会者用の演台があるところに。
 さっきは薬のおかげでちょっと落ち着いたが、やはりここに来てみるとドキドキする。
 何しろ、会場の熱気がむんむんと伝わってくるのだ。
 緞帳はまだ上がっていないと言うのに。

 いったい、何人の人が入っているのだろう。
 べ、別に、みんな、私を見に来た訳じゃないのよ。そうよ。落ち着きなさいよ。
 私は、単なる司会者。コンテストの、添え物のパセリなんだから。
 ああ、でも……やっぱり、人前に出るのは、緊張する……
 マヤさんは自分の胸を押さえていた。ん? 意外と着痩せするタイプか?

 参考までにマヤさんの服装はというと、無論いつもの制服ではない。
 上は真っ白なボタンダウンのブラウスに黄色いボレロ、下はオレンジ色のタイトのミニスカートという、ちょっと派手な出で立ちであった。
 ちょうど博覧会のコンパニオンを想像すればいいだろう。まあ、主催者の狙いでもある。
 あ、今回に限りタイツは厳禁だとかで、マヤさんはベージュのストッキングを履いていた。生足じゃなかった。残念。
 だが清純派のマヤさんは、久々にこんな短いスカートを履いたせいもあって落ち着かないのだった。

 やがて、開演を知らせるブザーが鳴った。
 会場のざわめきが、少し穏やかになる。
 それと共に、お気楽なファンファーレが鳴り響いた。
 CDには収録されてないから、新しく録ったものだろうか。
 しかし、前世紀にも聞いたような気がするから、『○ッセンブル・○ンサート』から流用したのかもしれない。

 そして舞台がライトアップされ、緞帳が上がっていく。
 マヤさんは台本を見直した。
 そう、ここが出ていくタイミングだわ。間違ってないわね……

 あ、そうだわ、ネコ耳付けなきゃ……
 マヤさんは手に持っていたネコ耳カチューシャを頭に装着した。
 途端に、耳の上の辺りにチクッという痛みが走った。
 慌てて外して、カチューシャを見直す。だが針も棘も付いてない。
 気のせいかしら、と思ってもう一度装着し直したら、やっぱり何にも感じなかった。
 何だ、気のせいだったのね。

 マヤさんは大きく深呼吸するとゆっくりと前に足を踏み出した。
 その姿が観客に見えた瞬間、大きな拍手が湧き起こる。
 それと共に低いどよめきの声。
 マヤさんの名を呼ぶ者などもいたりして、マヤさんは本格的にビビってしまった。
 それでも何とか逃げずにMC席まで辿り着く。
 と言っても、先程の説明どおり、MC席は舞台袖から1メートルと離れちゃいないのだが。

「あ……」

 マイクに向かって台本どおりの挨拶をしようとして、マヤさんはいきなりとちってしまった。
 『あ』ではなく、『お』だったのである。
 それを聞いて、品のない野郎どもが、うおおっと歓声を上げた。親衛隊の方々だろうか。
 幸い、マヤさんはそれを全く聞いていなかった。
 マイクを通して響く自分の声に違和感を感じていたからである。
 だが気を取り直して挨拶からやり直し。

「お、お待たせしました。こ、これより、第1回NERV猫耳コンテストを、開催いたします」

 多少つっかえながらも、マヤさんは台本の第壱行を読み終えた。
 既に頭は空っぽである。
 だから、大拍手や大歓声や『マヤさん愛してる!』などという不謹慎な発言も耳に届いてはいなかった。

「え、えっと……司会は私、総務課の長沢……じゃなくて……技術局第一課の、伊吹が務めさせていただきます。よろしくお願いします……」

 おかげでマヤさんは第弐行を書かれたとおりに読んでしまった。
 わざわざ課名と名前のところを二本線で消して書き直してあるというのに。
 あははっという笑い声。そして会場の雰囲気が和み、緊張した司会者に温かな拍手が送られる。
 マヤさんの方もやっと会場が見えるようになってきた。
 まあ、会場の方が舞台より暗くて見えにくいせいもあったのだが

(リラックス、リラックス……そうよ、薬飲んだんだから、大丈夫よ……)

 リツコが渡したおかしな薬とは言え、今のマヤさんにとっては効果はてきめんだった。
 次第に落ち着きを取り戻したマヤさんは、硬い表情をやわらげて自然な笑顔に変えていく。
 その笑顔に、会場のざわめきが多少大きくなった。さすがマヤさんの笑顔の威力は絶大である。
 機嫌を良くしたマヤさんは、台本どおりに事を進めていった。

「今回は総勢100名以上のエントリー者がありましたが、その中から書類審査の結果、拾八名の方でグランプリを争っていただくことになりました。審査で落とされた皆さま、大変申し訳ありませんでした」

 ちなみに、シンジに限らず、男でも応募していた者がいたらしいのだが、ほとんど無視されてしまったらしい。
 結果、各部署から約一名ずつを基準として選ばれることになった。
 ちなみに、チルドレンは3人ともエントリーされている。
 書類審査で落ちると思っていたシンジが泣き寝入りしたことは言うまでもないだろう。

「では早速、エントリーナンバー壱番の方に登場して頂きましょう。作戦局第一課の葛城ミサトさんです。張り切ってどうぞ!」

 何だか素人演芸大賞のようだが、ともあれコンテストは始まった。
 マヤさん、いつの間にかノリノリである。
 にしても、NERVというのは気楽な連中が集まっているものだ。
 もしここで使徒が攻めてきたら……まあ、これは別のSSでやったネタだから、これ以上は言わないことにしよう。



「葛城さあぁ〜んっ! 応援してますよおぉ〜っ、がむばってくださあぁ〜いっ!」

 観客席で手を振りながら一人声を張り上げている短髪で眼鏡の男がいた。
 その隣に座っていた長髪の男Aは言った。

「ありゃ、ネコって言うより、牛って感じっすよね……」

 更にその隣の長髪の男Kはそれに答えずにブツブツと呟いていた。

「葛城……こないだから禁酒してたのは、腹引っ込めるためだったんだな……苦労したな……」

 ちなみに、ピンクのネコ耳にピンクのレオタード、ご丁寧にピンクのしっぽ付きでミサトが登場したとき、おおっと歓声を上げたのは短髪眼鏡の彼を除いてほとんどが30代以上の男性だったことを申し添えておこう。



 所変わってこちらは出場者控え室。

「ねー、シンジ、あたしのしっぽ、曲がってない?」

 椅子に座ったシンジの前に赤いネコが立ってそう言った。
 もちろん、シンジの方に後ろを見せながら。
 だがシンジの方は伏し目がちになっていてちゃんと見ていない。
 何しろ、周りは女の人ばかりなのである。
 それも、結構刺激的な格好の。

「ちょっとぉっ、シンジ! ちゃんと見てって言ってるでしょ!」

 赤いネコ……アスカは振り返ってそう言うと、再びシンジの前にしっぽを突き出す。

「う、うん……別に、大丈夫みたいだよ」

 だがシンジはよく見もせずにそう言った。
 何しろ、顔を上げればそこには形のいいヒップが待っているのだから。
 14歳の内気な少年は、自分が置かれた状況を役得だなんて思っちゃいなかった。

「あんた、ちゃんと見て言ってるの!?」
「み、見てるよ、ちゃんと!」
「嘘つき! 曲がってるから訊いてんのよ! バランスが悪くなってるくらい、自分で解るんだから!」
「だ、だったら、自分で直せばいいだろ!」
「鏡で見ながらやっても、うまく直らないから言ってんのよ!」
「で、でも、何も、僕に言わなくても……」

 シンジはただただそこで固まっているのみだった。
 もしかしたら、立てなくなっているのかもしれないが。
 しかし、アスカの格好はそんなに言うほど刺激的でもない。
 単なる赤いレオタードだ。他に比べてかなり大人しい部類である。
 身体の線の出具合でいえばプラグスーツとほとんど変わりない。
 まあ、露出度には結構な差があるけれども。

「何よ、ファーストのは直してあげたんじゃないの?」
「そ、そんなことしないよ!」
「ふーんだ、まあいいわ。とにかく、曲がってんの、直しなさい」
「…………」

 シンジなんかの代わりに、自分に直させてくれ、という方もいらっしゃるかもしれないが、たぶんあなたは控え室に入れないので却下であろう。
 あ、何かこれに似たネタ、前も書いたような気がする。

「ほら、早く! もうすぐ私の出番なんだから!」
「わ、わかったよ……」

 シンジは前を見ないようにして手を伸ばし、しっぽの根元辺りを指でつまんだ。
 そしてアスカに訊く。

「どっちに曲がってるの?」
「左の方かな」
「こんな感じ?」
「ん、も少し……あんた、自分で見てやりなさいよ!」
「そ、そんなこと言ったって……」
「きゃああっ、ちょっとぉっ! お尻触らないでよっ!」
「ああっ、ご、ごめんっ!」

 一応シンジの名誉のために断っておくが、彼は触りたくて触ったわけではない。
 アスカが『自分で見て云々』と言いながら振り返ろうとしたために、ヒップに手が当たってしまったのである。
 いわば、偶然の事故。
 ただ、これが赤いネコによる計略かどうかは作者には解らない。

「あ、後で、責任取ってもらうからねっ!」
「せ、責任って何だよ!」
「うっさいわね、バカシンジ! ああっ、もう出番じゃない! じゃ、一緒に帰るから待ってなさいよ!」

 アスカはそう言いながら、本当にネコのように軽やかに駆けていった。
 どっちみち結果発表まで全員残ってなければならないから、一緒に帰るのはデフォルトだろうが。

「何だよ、もう……」

 シンジは一人呟いた。
 つんつん
 横からシンジの腕をつつく手があった。

「え、何? 綾波」

 そう、彼の横にはレイが座っていたのだった。
 いるかいないか判らないくらい、慎ましやかに。
 そしてレイは白いネコになっていた。
 レイといえば『ウサギ』を思い浮かべる方が多いだろうが、その耳を短くして三角にして、丸いしっぽがながーくなったと思えば……まあ、だいたいそんなもんである。
 うむ、それにしてもやはりよく似合っている。筆者の想像通りである。皆さんもそう思いませんか?

 ちなみに、レイはレオタードではなくて、プラグスーツのお古を着ていた。
 ノースリーブになっているところを見ると、もしかしたら第壱話とかで着てたアレかもしれない。
 しっぽは……実をいうと、シンジが作ってやったものだったりする。
 まあ、アスカのを作ったのもシンジなのだが。

 で、レイに腕をつつかれてシンジは振り向いた。
 レイが紅い瞳でシンジを見つめながら言う。やっぱりウサギだ。

「碇くん……」
「な、何?」

 シンジ、何を赤くなっている?

「耳……」
「え?」
「曲がってるみたいだから、直して欲しい……」
「あ、うん」

 まあ、しっぽに比べれば耳くらい、と思ったかどうか知らないが、シンジはレイのネコ耳の歪みを直してやった。
 よく考えたら、これこそ鏡を見ながら自分で調節する方が簡単だと思うのだが。

「はい、直ったよ」
「あ……ありがと……」

 二人とも、何を赤くなっているんだ?

「碇くん……」
「え、何?」

 シンジはドキッとした。
 ま、まさか、次はしっぽを直してくれとかいうんじゃ……

「ネコの真似……」
「は?」
「どうすればいいの?」

 シンジは複雑な気分だった。
 ホッとしたような、惜しかったような……
 まあ、それはさておき、コンテストでは舞台に出てネコの真似をすること、というのがあった。
 形態模写でも鳴き真似でも何でもいいのだが……
 だが、レイがそれほど芸達者であるとは思えない。
 となると、鳴き真似くらいしか……

「……そうだね。じゃあ、右手を顔の横に挙げて……」
「こう?」
「手首を前に折り返して、軽く手を握って……」
「こう?」

 いわゆる、ネコ手である。

「で、ネコの鳴き真似すれば、それでいいんじゃないかな」

 まあ、この程度ならできるだろう、とシンジは思った。
 別に優勝する気じゃないみたいだし……
 だったら何が目的でレイがコンテストに出場したのかをシンジは考えなかった。

「そう……わかった。あ……ありがと……」

 だから、二人ともその程度で赤くなるんじゃないって。

「碇くん……」
「な、何?」

 まだ何かあるのだろうか……

「しっぽ……」
「…………」



 シンジ、頼むから代わってくれ!



続く?


新世紀エヴァンゲリオンは(c)GAINAXの作品です。

Back to Home



Written by A.S.A.I. in the site Artificial Soul: Ayanamic Illusions