歯科医・綾波レイ 3 



 

※ このお話は、へっぽこ作者の実体験をもとに、かなり脚色して書いてます。

ってゆーか、まだ続いてるのね、これ(^^;;







 人の噂はなんとやら。

 シンジの担当がリツコに替わったが、特に何事もなく2週間が経過した。


 『なんだ・・・みんなが言うほど怖くないじゃないか・・・』


 などとお気楽な事を思っているシンジではあるが、実は、今日こそ何かされるのではないかと、毎日びくびくしている。

 今朝も朝食を作りながら、大きなため息を吐くのであった。


 さらにこの憂鬱に追い打ちをかけるのが痛みの無くなった事。

 このころになると、痛みのある歯などない。

 なのに、なぜ通わなくちゃいけないんだろう、などと、自分の都合の良い方に考えがちになってくるのである。

 そう言えばケンスケも最近歯の痛みに耐えきれず通ったと言っていたが、1週間で行くのを止めたと聞いた。


 『僕も・・・行くのやだな・・』


 と思うのだが、無理矢理連行されるのは目に見えている。


 「おっはよー!・・・って、なんか一段と暗いしてるわね・・」

 「あ・・ミサトさん・・・おはようございます。」


 どう見ても、シンジのその顔は、明らかに『もう行きたくありません。』と物語っている。

 ミサトはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらシンジの脇を突いたりしている。


 「・・・はは〜ん、さては、もう通うのやめようかな、とか思ってたんじゃないのぉ?うりうり。」

 「うっ!・・ち、違います!」


 なんて分かりやすいリアクション。


 「あ、そぉ。・・ならいいけどねん。」

 「くだらない事を詮索してないで、早くご飯食べちゃってください!」

 「はいはい・・・あ、そろそろ時間ね。」

 「・・へ?」



 − ぴんぽ〜ん♪ −



 タイミング良く玄関のチャイムが軽やかな音を響かせる。


 「あ、来た来た。開いてるわよ〜、上がって!」


 早朝からやってきたのは、やはり、と言うべき人物。


 「・・・おはよう、碇くん。」

 「・・お、おはよ・・・って、どうしたの、こんな朝早くに?」

 「・・・命令だから。」

 「命令?」


 レイは食卓に座り、準備されていた朝食(アスカの分)に手を伸ばし、黙々と食べ始める。


 「そ。・・・もぐもぐ・・・・ふぇいへい(命令)・・・ぱくぱく・・・・ははら(だから)・・・ごくん。」

 「あ、あの・・・食べるか喋るか、どっちかにしたほうが・・・」

 「・・・はら(なら)・・・ずるずる・・・ははひはへはいへふへふ?(話しかけないでくれる?)・・・もぐもぐ・・」

 「・・・・・・・・。」



 10分後。



 「ごちそうさま・・・。さ、行きましょ。」

 「へ?・・・どこへ?」

 「歯の治療・・・。」


 ようやくシンジにも理解できたようで、命令した作戦部長をきぃっと睨み付ける。


 「・・・ミサトさん、どういう事なんですか?」

 「いや〜、シンちゃんそろそろ行きたくないと思い始める時期なんじゃないかと思ってね。

 う〜ん、我ながらあ〜たしって、なぁんて準備の良い女なのかしらん♪おほほほ。・・・じゃ、行ってらっさ〜い。」


 シンジはその手際の良さに感心しつつ、ミサトの抹殺を誓うのだった。








 たまたま今日は技術職員が一人、先に治療中だったようで、その間しばし待合室で待たされている。

 この待ち時間が、シンジは一番嫌だったりなんかする。


 ただ待つだけの時間は、なんと長いことだろう、と思う。

 時折、診察室の扉の奥から、絶叫や悲鳴が聞こえてくる。

 更には唸りを上げるドリルの音が、耳に、頭に、歯に、響く。

 扉の奥の様子が見えないせいで、余計にその恐怖は加速する。


 シンジは、そんな雑念を振り払おうと、待合室のそこら中に貼ってあるポスターに目をやった。


 そんな中、ふと目が止まった『2015/歯科医師国家資格について』というポスター。

 そこに写っているのは、ミニ姿で笑顔満開のマヤだったりなんかする。


 「・・ほんとだったんだ・・・。それにしても・・・。」


 シンジも彼女のことを童顔だとは思っていたが、この格好にして見るとよく分かる。

 どう見てもコスプレ好きの高校生にしか見えない。

 或いは、無理矢理この格好にさせられたアイドルといったところだろうか。

 自分も童顔である事を忘れ、シンジはそのポスターをまじまじと見つめていた。

 ・・が、おもむろにそれを引き剥がそうとする。

 幸いなことに、受付のアスカはまだ来ていない。



 『チャ〜ンス!』



 ニヤッと笑みを浮かべるシンジの笑みが不気味だ。

 父親譲りだから、こればかりはどうしようもないが、誰も見ていなかったのは幸運な事に違いない。


 「ごめん、マヤさん・・・だけど、トウジたちと約束したんだ。」


 何を約束していたのか知らないが、手早くそれを丸めると、デイバックの中にしまい込んだ。

 見つけたら是非欲しいと、彼らにせがまれていた逸品である。


 限定発行と言うこともあって、なんでも巷ではプレミアまでついて入手困難なのだそうだ。

 しかし、いざ手に入れたシンジは、それを手放すのが惜しくなっていたりなんかする。

 表向きは『マヤさんがこんな目にあってるのに、僕は友達にまでそれを好奇の目に晒そうとしてるのか・・』

 なんて事を考えているのだが、その実自分が欲しいだけだ。

 素直じゃないな、シンジ。 <しつこいようですが、僕は中吊りを抜くような非道ではありません。




 閑話休題


 数分後、今まで扉の向こうで絶叫していた主が、ふらふらと治療室から戻ってきた。

 そしてシンジの顔を見るなり、ぼそぼそと呟くように耳打ちしてきた。


 「今日は荒れてるぞ・・。」

 「・・・・・。」



 シンジは無言で帰り支度を始めた。



 が、無情にも診察室のドアが開き、レイが顔を出す。

 「・・碇君、何してるの?」

 「え、あ・・いや・・待ち時間が長いみたいだから、外出でもしようかな、なんて・・」

 「・・早く入って。」


 救いの手を求めようと先ほどの被害者に目を向けると、わざとらしく口笛を吹きながら、到着したばかりのアスカに代金を支払っている。


 「・・・・・はい。」


 こうなってしまったら、もはや逃げる訳にもいかない。

 観念して、シンジは診察室へと入っていった。








 なぜかリツコが復帰してから、診察室が機材で溢れている。

 レイが担当の時は殺風景だったのが嘘のようだ。

 診察台に乗ると、早速リツコがバインダーに挟んであるカルテを見ながらシンジに告げる。


 「今日は噛む力の測定と、磨き方が改善されているかテスタで調べます。いいわね?」

 「はい。」


 『いいわねって・・・拒否する事なんて許さないくせに。』


 シンジはその言葉を飲み込んで素直に従う。


 どうでもいいが、以前マヤに聞いたとおり、彼女までミニだ。

 だが、清楚なイメージとは遙かに遠く、どう見てもアダルトビデオで主演できそうなほどに、この格好には無理がある。

 シンジはなぜこの格好をしているのか聞いてみたかったが、答えが怖い気がしたのでやめた。

 だから、今は意識的に見ないようにしている。


 それはともかく、シンジはガムのような物をくわえさせられた。


 「じゃあこれを噛んで頂戴。マヤ、測定お願いね。」

 「はい、先輩。」

 「シンジ君、痛いと思ったところで噛むのをやめなさい。」

 「はい。」

 「じゃ、いくわよ。測定スタート!」


 シンジはとりあえず言われたとおりに噛んでみる。


 「・・・25kgまでクリア。」

 「・・・35kgを突破しました!」

 「・・40kg・・まもなく安定領域に入ります。」

 「42、43・・・44kgで安定しました。」


 マヤの報告にリツコの顔が引きつる。


 「・・・なんて数字なの・・」

 「あの・・リツコさん?」


 リツコは『オー、ノー』とでも言いそうな感じで頭を抱えている。

 そしてたった一言呟いた。


 「あなた・・リンゴの丸かじりすら出来ないのね・・」


 その言葉が、シンジの頭の中でリフレインされるのだった。








 次に連れてこられたのが、以前に歯磨きを習った別室である。

 テスタを含まされ、今朝の磨き具合を調べるというもの。 <あの赤い錠剤です(^^

 当然担当はマヤなのだが・・・


 「嘘!?・・・こんな・・・」


 シンジは愕然とした。

 何事かと鏡越しに見るその歯は・・・ほとんどが真っ赤だった。


 「シ・・シンジ君・・・あのとき、全然聞いててくれなかったのね!?」

 「ち、違うんです、あの・・その・・」

 「もういい!知らない!」


 本当のことを言おうかどうしようかと思案しているうちに、マヤは部屋を飛び出して行ってしまった。

 その姿で走り去る後ろ姿が妙に艶めかしい。

 常日頃、彼女がよく口にする「不潔」とは、どこまでが彼女の定義なのか、シンジにも分からなくなっている。



 それはそうと、一人取り残され、シンジ呆然。

 と、入れ替わりにレイが入ってくる。


 「・・伊吹二尉の替わりに私が診るから・・口、開いてくれる?」

 「え、うん・・はい。」

 「・・あなた、伊吹二尉に何したの?」

 「ほえあ、はおみはほあんひ、はいふぇふぇふぇいっひゃっひゃんは。」 (それが、歯を診た途端に泣いて出てっちゃったんだ。)

 「喋らないで・・見えない。」


 だったら聞くなよ、と言いたいシンジであったが、見えないせいだろうか、レイは互いの鼻が触れそうな距離まで接近してくる。

 ドキドキしているシンジをよそに、レイは至って平然とその様子をカルテに書いている。


 「・・・以前より良化はみられるものの、全体的に不可。」

 「ふ、不可?」

 「ええ。・・・もういいわ。今日の治療受けて。」

 「・・う、うん。」


 シンジは大きくため息を吐く。

 リツコが来てからというもの、毎日のように罵詈雑言の嵐なのだ。

 また今日もお小言を言われるんだろうな、なんて思いながら治療室に行こうと立ち上がる。



 「碇君、明日の朝からブラッシングの指導するから。」

 「・・・はぁ?」

 「・・迎えに行くついでだから・・・私は構わないわ。」

 「・・・もしかして、家で指導するつもりなの!?」

 「そうよ・・・指導は弐号機パイロットでも良いわ。いずれにしても正しい磨き方をしないと・・」

 「・・・しないと?」

 「全部失うわ・・・あなたのお父さんみたいに。」 <これはフィクションです。



 レイがニヤッと笑う。



 「あ・・・それと、一つ言い忘れたの。」

 「何?」



 「・・・ポスター、没収したから。」





<つづ・・・かないでしょう、多分>






 あとがきという言い訳


 えっと、まずは遅くなってしまいまして、本当に申し訳ありませんでした。

 HDDクラッシュで遅れ、風邪で遅れ、これ以上言い訳ができない状況に追い込まれていたので、実は通し読みも

 程々にして公開する事になってしまいました。

 誤字脱字がきっとあると思いますので、もしも発見されました際は、こっそりメールなどでお教えください。

 また、遅れに遅れたにも関わらず、激励して下さった皆さまに感謝いたします。

 なお、今度こそ続きは無いと思います。たぶん(^^;





トップページに戻る


小説もどきトップに戻る


やはり、文句言わないと許せん