勝手に歯医者さん通院記念



 歯科医・綾波レイ 



 

※ このお話は、へっぽこ作者の実体験をもとに、かなり脚色して書いてます。


  従って、当然の如くLRSにはなっておりません(笑)







いつもと変わらない、静かな日曜の朝。

シンジの好きな、平凡な日常。

だが、今朝は違った。

前夜に気になった微かな歯の痛みが、大波になって襲いかかってくる。

少し頬が腫れてきているらしく、僅かに口元が歪んでいる。

おかげで、朝御飯の準備もおろそかになりがちだ。


「・・っつう・・・・くっ!・・・」

「ふぁぁぁっ・・・おふぁよ、シンジ君。」


のーてんきなミサトの声にも、シンジは手を頬に当てて苦悶の表情のまま返事もできない。


「・・・どったの?」

「歯が・・・痛くて、その・・」

「ふーん・・・つってもお休みだしねー。あ、そーだ、うちの付属施設に行ったらいいわ。連絡

しといてあげるわね。じゃ、送ってってあげるから、準備して。」

「すみません、ミサトさん、お休みなのに・・」

「なぁに?水くさいわねぇ。いいのよん、気にしなくって。」


ただし、ミサトの顔が怪しい笑みを浮かべていることにシンジは気づく余裕もなく、ネルフって

なんでもあるんだなあ、なんて事を考えていたりなんかする。


「おはよー、シンジ。・・・・ぷっ、くくっ・・・なあに、その顔!?」


さらに起きてきたアスカが、醜く腫れた顔を指さして笑い声を上げる。

気にはしているものの、面と向かって笑われちゃあ、シンジも何も言えるはずもなく、アスカから

顔を背けるのが精一杯だった。


「朝から笑わせないでよ、まったく。」

「そんな・・好きでこんな顔になったんじゃないよ。」

「いちいち言わなくても分かってるわよ、そんなの。・・ま、早いとこ、医者に行くことね。」

「うん、そうする。」


実は、アスカの顔もニヤッと怪しい笑みを浮かべていた。

当然、シンジに気づく余裕なんてない。







連れてこられた歯医者は、本部に付属の病院と真向かいにあった。

見た目は普通の歯医者と同じだが、受付には誰もいない。


「あれ、今日は休診なのかな・・困ったな・・・どうしよう?」

「おっかしーわねぇ。あの子が休むなんてことはない筈だけど・・」

「あの子?」


シンジの問いにミサトが何かを言おうとしたとき、見慣れた少女が受付に現れた。


「・・何か用?」

「レイ、シンジ君が歯痛らしいのよ。あとよろしく。」


それだけ言って、ミサトは右手をひらひら振って去っていった。


「碇君・・歯痛?」


歯痛以外に、こんな所に何しに来るんだよ?などとシンジは思ったが、敢えて頷いた。


「そう・・・じゃ、ここの歯の絵が書いてる。・・・痛いところに○をつけて。」

「うん・・・あ、あの・・・綾波は、ここで何やってるの?」


自己申告の用紙に記入しながら、シンジはレイに聞いてみる。


「今の時期だけ臨時代行。」

「・・・って、まさか、綾波がやるの?(資格持ってるのかなぁ?まさか、モグリなのかな・・)」

「・・そうよ。」

「じゃ、じゃあ、よろしく・・・(この際、痛みが消えればいいや)」

「さっそく始めましょ。そこの入り口から入って。」


シンジはなされるがままに頷くしかなかった。


「そこ、座ってくれる?」

「あの・・・」

「何?」

「どうして白衣着てるの?(しかも思いっきり短いし・・)」

「命令だから。」

「・・命令?」

「そう。」


『それで歯痛かって聞いたのかな?』

『じゃあ父さんは何しに来てるの?なんて聞けないよなぁ・・』

『それより、この格好って、まさか父さんの趣味とか・・・』

『って事は、僕は変態の息子になっちゃうのか・・嫌だなぁ。』


「何してるの?早く座って。」

「・・え、あ、ごめん。」


制服とプラグスーツ姿以外、初めて目にするその格好に、シンジはしばらく突拍子もないことを

考えていたが、ふと我に返ると、再び奥歯の痛みが蘇ってくる。

かたや、表情一つ変えずにマスクをつけ、サニメント手袋を装着しているレイ。


「じゃ、口開けてくれる?」

「うん・・・はい。」


なんか恥ずかしいなぁ、なんてシンジは思ってたりなんかする。

レイは別にそんなこともなく、淡々とシンジの記載した用紙を覗き込み、患部を鉗子で探る。


「!!・・あがっ!」

「・・・目標、確認。」

「ほ、ほっほ!ほふほーっへはひ!?」 (ちょ、ちょっと!目標って何!?)

「・・・喋らないで、よく見えない・・」

「・・・・」

「・・目標中央部に腫れを確認・・・これより迎撃。」

「は、ははら!へーへひっへはんはんはほ!?」 (だ、だから!迎撃って何なんだよ!?)

「・・お願いだから喋らないで!」


レイは珍しく怒りを露わにし、シンジを睨み付ける。

「・・・はひ・・・・・」


シンジは恐怖に怯え、素直に返事をする以外になかった。


「その他、周辺部歯茎、肥大を確認・・・攻撃の必要あり・・」

「!・・・・・(だから、攻撃って、何する気なんだよぉ・・)」

「・・一旦、うがいして。」

「うん。」

「それ、麻酔が入ってるから。・・・治療の痛みは感じないわ。」

「あの・・・さっきの・・」

「済んだら早く寝てくれる?」


レイ、既に仕事人の顔になってたりする。

「う、うん・・・」


攻撃とか物騒な事を言わないでよ、と言おうとしたが、あっさりと諭されるシンジ。


「今から目標を殲滅するわ・・・喋らないでね。」

「・・・うん。(だから殲滅って何なんだよぉ・・)」

「零号機、これより歯茎及び目標中央部分への攻撃、開始します。」


− キュイィィィィィィィィ −


零号機と名付けられた、備え付けのドリルが唸りを上げる。

あとは、シンジの絶叫が響くのみであった。







地獄の30分が経過。

既にシンジは地獄を見たらしく、真っ青になりながら診療台を降りる。

しかし、幸いなことに、あのおぞましい痛みは和らいでいた。


「明日、また来て。」

「・・・うん。」

「それと・・・歯の磨き方に問題があるわ。・・歯ブラシの持参、忘れないでね。」

「え?・・・うん。」

「明朝行われる作戦スケジュールを伝えます。」

「さ、作戦?」


それを無視して、白衣のポケットから手帳を取り出し、いつ書いたのかそれを読み上げる。


「まるきゅーさんまる、碇、歯磨き教室へ移動。

 まるきゅーさんご、同指導。担当は伊吹二尉が行います。

 まるきゅーごーごー、碇、治療本部へ移動。

 ひとまるまるまる、治療本部。以降、碇は綾波の命令あるまで待機。」


唖然とするシンジ。

手帳を閉じたレイの顔に、ゲンドウのような笑みが浮かんだ。







「本部、行くんでしょ?・・・行きましょ。」

「え、あ・・うん。」


レイはあっという間に着替えを済ませ、部屋を施錠するとシンジを促す。


「ちょぉーっと待ったぁぁ!」


受付から聞き慣れた声がする。


「シンジ、支払い済ませてくれなきゃ!まさか、タダなんて思っちゃあいないでしょーね!?」

「あ、アスカ?なんでここに?」

「臨時の受付。・・んなこたぁどーだっていいのよ。早く払いなさいよ!」

「い、いくらなの?」

「初診だからぁ、ちょっとばかり値が張るわね。3万5千円ってとこかしら?」


『とこかしら?』って何なんだよ?と言いたいが、相手はあのアスカだ。言えるはずもない。


「た、高すぎるよ、いくらなんでも、僕がそんなに持ってる訳ないじゃないか・・」

「・・・碇君、1350円よ。」

「ファースト!せっかくシンジからふんだくれるチャンスだったのにぃ!どーしてくれんのよ!」

「・・・誤魔化した残り、どうするつもりだったの?」

「そんなの、アタシの好きなように使うに決まってんじゃないの!」

「・・・あなた、受付失格ね。指令に言って、明日から担当変わってもらうわ。」

「じ、冗談よ。やぁね〜、優等生はこれだから・・・」


どうやら二人のやり取りを聞いている限り、ここはレイが仕切っているらしい。

というより、ゲンドウの後ろ盾があるようだが。

どっちにしろ、シンジは明日からの我が身の安否を案じるのであった。




<つづく?>







あとがき?


変な読みものにおつきあいくださった皆様、ありがとうございました。

現在、僕自身が通う歯医者さんの人たちが変わり者(と僕は思っている)なので、日記にもたびたび

登場していただいておりましたが、せっかくなので(?)、アレンジした物を作ってみました(笑)

なお、歯科医師は国家資格が必要で、かつレイちゃんは年齢すら資格対象になりません。(当たり前)

あくまで僕のおちゃらけですので、突っ込まないでくださいませ(笑)

続編を読みたい人などいないかも知れませんが、ご要望があれば作ってみたいと思ってます。

参考までに……歯科医の設定はこの作品以前に、まさひこ氏の「in the other world」内「歯科医

REI」があります。

それでは。





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