『レジェンド オブ レリアル』外伝 パーティーの日常編

〜 其の1 ソニアの受難=リリィナの受難? 〜


 



「ゴホ、ゴホゴホ、ゴホホホ!」
雪が降り積もるコルン荒原に咳が轟きわたる。
ズッ、ズズズッ・・・。
褐色の肌、艶やかに光る黒髪の美女が盛大に鼻を啜る。
アーラエにしては珍しい黒い翼で体を包み暖を取っている。
目鼻立ちが通った顔立ちに鼻水が非常に似合わない。
「あの〜」
「アニ?!」
フェイの少女が恐る恐る言葉を続ける。
「ソニアさん、わざわざ、わたしに向かって咳をするのはやめてほしいのですけど〜・・・」
確かに、先ほどからの咳のせいで、唾で小さい体がビッショリ濡れていた。
しかも、位置を変えてもソニアは彼女に向かって咳をするため、避けようが無かった。
逃げ出せればいいのだが、ソニアの看病をしているためそれもできない。
「誰のせいでこうなったと思ってるの?、リリイナ?」
鼻水のせいで睨みつけの効果は今一つ、イヤ別な意味で迫力をもっている。
リリィナは、助けを求める様に仲間を見渡したが帰ってきたのは、無視、沈黙、哀れみだけだった。
「私のせいです」
諦めてうな垂れるリリイナの頭をグリグリと絞める。
「そうね〜、アンタのせいよねー!」

それは、昨日の事だった。
季節は夏だと言うのに、コルン荒原は雪で真っ白になっていた。
いつもなら、リリイナの奇跡によって寒さを防いでいたのだが、突然奇跡が全く使えなくなったのだ。
原因は多分、朝の祈りを省略したためだろう。
そう言う事で、ソニアは風邪を引いたのだった。
「ランチス!、アタシよりひ弱なくせに、何で風邪引かないのよ!」
グッタリとしたリリイナに興味を失ったのか、ポイッと捨てると、ハーフエルフの魔戦士に不満をぶつけた。
ランチスは小さくなった火を大きくしようと焚き火をいじっている。
はたから見ていると日頃の行いのせいで邪悪な実験をしているようだ。
「「・・・」」
ランチスの反応が無いのが面白く無いのか、もしくは見たくないものを見てしまったのか。
きっと鏡を見た気分になったのだろう、チョッカイをだすのをやめた。
その隙にリリイナは、フラフラしながら、安全圏を求め人間の重戦士のジオルのもとに逃げ出した。
「ジオル〜、助けて〜」
ジオルは、焚き火の近くの岩に腰をかけ巨大なバトルアックスの手入れをしている。
呼ばれたので顔を上げると、地面に倒れているリリィナとその横でニコニコ笑っているフェイの快盗もとい義賊のエルダが立っているのが見えた。
「なんや、気のせいか」
バトルアックスの手入れをふたたび始めた。
ソニアは、倒れたままのリリイナをたぐり寄せると、今度はジオルにチョッカイを出し始めた。
「だいたいジオル、その有り余ってる体力をアタシによこしなさい」
「スコシならエエで」
意味が判っているのか判断のつかない口調で答える。
ボン。
焚き火が盛大に燃え上がり一瞬で消し炭となった。
傍らには、呪文を唱えた格好のままのランチスがいる。
きっと、焚き火が大きくならないので発火の呪文を唱えたのだろう、必要以上に思いっきり。
「ゲフ、なんや敵か?」
風向きにのせいか盛大に灰を被ったジオルがうめく。
「すまんジオル、呪文に失敗した」
誠意が無い口調でジオルに謝ると、ランチスは掛かってもいない灰を払い、ソニアに言った。
「風邪を引くのは、気合が足りないからだ」
どうやら、さっきの話を聞いていた様である。
「アンタより体力も精神力も有るのにどうしてよ」
リリイナを振り回しながらソニアが不満げに喚く。
「気合を入る所が悪いと思う」
言わなくてもいい事をエルダが言う。
「ウルサイ!、エルダ!」
手に力がこもる。
リリイナは完全に沈黙した。
どうやら、しわ寄せは全てリリイナに行くようである。

おまけ
次の日
ソ「ゲフォ、ゲフォ」
ラ「まだ、リリイナに奇跡で直してもらってないのか?」
ソ「・・・、リ〜、リイ〜、ナ〜!」
リ「ソニアさんだって気づかなかったじゃない!」
ソ「アタシは風邪で熱が有ったから気づかなかったのよ!」
リ「キャー、ジオル〜、助けて〜」
エ「ヤッパリ、一日一回これを見ないとネ」
ジ「そやな〜」
おしまい