新世紀 エヴァンゲリオン




第壱話「運命」




それは、特務機関ネルフの秘密作戦であり、
その資料 作戦内容は、現在も公表されていない。
公式発表において、特務機関ネルフは、
その2時間前、通称「最終決戦」にて壊滅している。






月の無い夜。
またたく星が世界を包む。
静かな夜を低いジェットエンジンの音が掻き乱す。
夜空を巨大な三角形がゆっくりと削り取ってゆく。
黒い翼は、次々と現れ空を覆う。
翼から何かが放たれる。
それは、重力に従い次々と大地に激突する。
黒い翼が夜空の彼方へと飛び去ると落下した塊がゆっくりと動き出した。
立ち上がったそれは、鋼鉄の装甲に覆われた巨人である。
いや、鬼と呼んでもいいかも知れない。
その頭部には、明らかに一本の角が生えているのだから。
鬼達は歩き出す。
前方には丘以外何も無い。
その時、鬼達の前方の丘に開口部が現れる。
開口からも次々と巨人が現れる。
その姿は角が無い事を除けば、鬼達とまったく同じである。
鬼と巨人、二つの群れが一瞬にらみ合い、止まる。
次の瞬間、巨人達は一斉に銃を構える。
発射炎が、夜の闇を切り裂き銃声と爆音が響く。
戦いが始まった。
巨人達の一方的な銃撃の中、一体の鬼が宙に舞う。
その驚く程の跳躍は、一気に巨人達の目前に迫る。
そして、その右手には輝くナイフが握られている。
鬼がナイフを振るう。
巨人は避けられず、右手と銃を失う。
逃れようとする巨人を鬼がつかみ、胸にナイフを突き立てる。
厚い装甲板がナイフを防ぎ、火花を散らす。
だが、次の瞬間に刃が貫く。
崩れ落ちる巨人を鬼はつかみ、他の巨人に向かい投げつける。
飛んでくる死体を避けるスキに近接する鬼。
ナイフを横に振り払う。
巨人の首から鮮血が飛び散る。
鬼が飛び、巨人が倒れる。
そして、また跳躍。
鬼が走り巨人が死ぬ。
鬼が止まった時、戦場に立っている巨人は無くなった。
ナイフを収納し、振り返る鬼。
そこには、仲間の鬼達が動かずにいた。
鬼達は、開口部より、内部へと進入した。



EPISODE.1 Destiny



「敵の秘密兵器か、EVAは味方のハズなのに、
なんなんだろうだろうこの作戦。ヘンだな、無線も通じないなんて。
みんなどこかな。ここもどこだろう。知らない施設だ」
丘の内部、鬼の中で少年がつぶやく。
格納ゲージと思われる広い空間に一人待機しているのだ。
だが、彼に長く考えている時間は無かった。
背後の壁が開き、敵が現れたからだ。
振り返った時、恐怖が彼を襲う。
敵の構えている武装は、X20陽子砲。
遠距離でもATフィールド貫通する兵器だ。
そして、近すぎる距離はATフィールドを中和している。
銃と陽子砲は、同時に発射された。
劣化ウラン弾は、敵を貫通した。
そして、陽子砲は間一髪でかすめ肩のパーツを溶解して壁に命中する。
室内に爆発と光熱が広がる。
それがおさまった時、彼の機体が動けたのは奇跡ですらあった。
陽子砲は、壁を何層も突き抜け、外部への大穴を開けたのだ。
彼は、大穴へと近づいた。
隣にも広い空間があるのだ。
そして、それは地下に向かう縦穴だった。
彼は、縦穴を降りた。
底に不思議な物体を見つけたのだ。
高さ2m程の白い円筒、それが広い部屋の中央にぽつんと置かれていた。
白い骨を思わせる色をした、その物体は、どこか不自然だった。
物体の端に操作盤があるのに気付く。
彼は、EVAから降りた。
その物体がカプセルなのかが分かる。
そして、その中身こそ、この作戦の目的『敵の秘密兵器』なのだ。
操作盤のスイッチを押す。
突然カプセルが2つに割れ、強い光があふれ出る。
光に目が慣れると、中身が見えた。
「 ・ ・ ・ 女 の 子 ・ ・ ・ 」
カプセルの中身は、輝く液体とその中に浮かぶ、生まれたままの少女の姿だった。
蝋人形の様な白い肌、事実、彼は最初人形だと思った。
しかし、液体の中で少女は、ゆっくりと呼吸していた。
眠っているのだ、液体の中で。





彼女と視線が合った、目を覚ましたのだ。

それが彼女との出会いだった。
一瞬だったのかそれとも長かったのか、
僕は、彼女から目がはなせなかった。
恐怖と混乱、そして痛み。
覚えているのは、血の様な赤。
そして、それは運命だった。
あの時は、知らなかったんだ。



第壱話「完」








「予告」

チルドレン−−−EVA操縦適格者、
それは、全て15才にも満たない幼い少年少女達だった。
戦争に駆り出された彼らは、
もう、普通の『子供』に戻る事は出来なかった。
廃虚の街に捨てられた子供達が集まる。



新世紀 エヴァンゲリオン第弐話、「平和」お楽しみに。



戻る