EVA 〜これも一つの世界〜

第壱話 目覚め

Chuptre03 出会いは何を生み出すか





使徒ガブリエルと呼称される物体は、ゆっくりとだが確実に第三新東京市の中心に移動していた。

不意に背後のビルの側面が開き、内部の火器を容赦無く叩き付ける。

だが、それらは使徒ガブリエルの肌に触れること無く四散していく。

使徒ガブリエルは、ゆっくりと旋回した。

いや、振り向いたと言った方が、正しいのかも知れない。

そして、背中の光翼が一閃すると、兵装ビルは崩れてゆく。

崩れた兵装ビルの奥と側面の兵装ビルの側面が開く。

今度は、火器を発射する前に奥の兵装ビルは光翼に引き裂かれた。

側面の兵装ビルは火器を発射するもミサイルを光翼で打ち落とされた。

その一瞬後、兵装ビルも同じ運命をたどった。

辺り動く物が無くなると使徒ガブリエルは、ゆっくりと第三新東京市の中心に移動して行った。






「おまえ、何やっとるんや?」

トウジに話し掛けられた少年は、冷たい瞳を向けただけで、脇に落とした鞄を拾うと立ち去ろうとした。

「なんや、喧嘩うっとんのか!」

「まぁまぁまぁトウジ押さえて押せて」

ケンスケは、憤慨するトウジと少年の間に立ち少年に話し掛けた。

「俺は相田ケンスケ、こっちは鈴原トウジ、君は非難勧告が出ているのにこんな所で何してんだい?」

「待ち合わせ」

そっけない少年の言いように、トウジが割り込む。

「ワシが鈴原トウジやゴンベイ、名ぐらい名のらんか、礼儀知らずが」

少年は、トウジの方を向くと名乗った。

「僕の名前は碇シンジ」






次々と画面が切り替わる発令所のモニター。

「リツコ急いで、使徒はエヴァをあぶり出す気よ。日向君、けちけちしないでジャンジャカ撃ちゃって」

慌ただしく指示を飛ばすミサトにリツコは挑発するように言った。

「初号機発進準備は整ったわ。勝てる作戦は立ててあるんでしょうね?」

ミサトは振り向きもせず、リツコに言い放った。

「初号機が動けば勝てるわ」

そして、ミサトは指令塔を仰ぎ見た。

「碇司令、初号機発進準備整いました」

碇は両手を顔の前で組んだまま呟くように命令する。

「初号機、発進」



「碇、まだパイロットが来てないぞ」

冬月は少し驚いたように碇を見た。

「問題無い、これから迎えに行かせる」

掌に隠れている口には笑みが浮かんでいる。

「来ているのか?」

碇は冬月の問いには答えず、口の中で呟いた。

「ユイ、待たせたな」



ミサトは、モニターの中のレイに呼びかける。

「レイ、行くわよ」

レイは目を閉じたまま静かに答えた。

「はい」

発令所の全員がミサトの指示を待っていた。

ミサトは小さく息を吸うと発令所に指令を出した。

「初号機、発進!」






無人の街を2台の自転車が走りぬける。

「ケンスケ! あっちの方で爆発音が聞こえたぞ!」

トウジはスピードを上げ路地へと入って行く。

「トウジ待ってくれよ、こっちは2人乗り何だからさ」

ケンスケは息を切らせながらトウジに文句を言った。

「別に頼んで乗せてもらってるわけじゃない」

シンジは呟いた。

「なんかゆうたか?」

トウジは、ブレーキをかけケンスケの隣に並ぶとシンジを睨み付けた。

「何でもない、こっちの事」

ケンスケが言うと、トウジはシンジを睨み付けながら先に行った。

「なぁ、あんまりトウジを刺激するなよ。付いて来るって言ったのは碇だろ」

「僕には、選択権は無かった」

ケンスケは諦めると随分と前に行ったトウジを追いかける為、スピードを上げた。






夕暮れの第三新東京市、静かに使徒が佇んでいる。

周囲の兵装ビルは破壊され瓦礫の山となっている。

警告音が廃虚に響く。

使徒の正面の地面が開き、巨大な一角の鬼が姿を現す。

一角の鬼を拘束しているの最後の拘束具が外された。

一角の鬼、エヴァンゲリオン初号機は素早くパレットガンを構える。

使徒の翼が大きく広がって行く。

日が静かに沈んだ。







Chuptre04へ続く

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