異世界転生イージーモード
 
(※未完/誤字脱字未チェック)
 

【プロローグ】
 
通い慣れたいつもの道を愛車で出勤中の出来事だった。
突然道路左側から飛び出してきた黒っぽい小動物のような物は、あろうことか車線のど真ん中で立ち止まった。
咄嗟にハンドルを右に切った愛車の目の前には対向車線を走ってきた路線バスの姿があった。
あっ…
俺の人生はそこで終わった。
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 ・
 ・
「うあぁーーーーあ!!!!……、あれ?」
気がついたら叫んでいた。
いつの間にか目を閉じ両手で頭を抱えながら体を丸めていたようだ。
そして少し落ち着いた俺の目に映ったのは…
 
へっ?
何?
ナニコレ?
えっ?
どうした?
何処?
ここは何処だ?
はっ?

周りは真っ白だった。
前も右も左も後ろも上も下も白一色で何もない。
訳も分からず周りを見回していて気がついた。
 
もしかして、俺は死んだのか?
 
ここに来る前の記憶は迫り来る路線バスの前面だった。
黒っぽい小動物のような物を避けた俺の愛車は対向車線を走ってきた路線バスと正面衝突。
そして死んだのだろう。
 
 
 
ゴトッ

突然後ろで物音がしてビックっとして振り向く。
振り向いたら人が立っていて更に驚き、後に退ろうとして足がもつれ尻もちをついてしまう。
ちょっと漏らしてしまった…
 
「あ、あっう、あっ…」
 
驚きのあまり上手く喋れない。
 
「驚かせたようだな。スマン」
 
白い人が近づいて来て右手を差し出して来たので掴んで立ち上がる。

うー、濡れたトランクスが気持ち悪い。
ちょっとモジモジしていたら白い人の右手が光ったと同時に濡れた感じがしなくなった。
思わず股間を見下ろしてしまった。
 
「驚かせたお詫びに乾かしたよ」
 
漏らしたのがバレてしまったようで顔が熱くなる。
恥ずかしい。
絶対耳まで真っ赤になっているだろう。
 
「お茶でも飲みながら話をしようか」
 
いつの間にかテーブルと椅子が出現していた。
 
白い人に促されて椅子に座るとテーブル上のマグカップに気がついた。
俺が自宅で愛用しているのと同じモノだ。
手に取り眺めていると

「とりあえず飲んだら」
 
言われるまま口をつける。
俺好みの温くなったブラックコーヒーだった。
喉が乾いていたらしく一気に飲み干した。
ふー。
 
「落ち着いたところで状況を説明しようか」
 
頷く俺。
 
「君は交通事故で亡くなった」
 
がーん!
やっぱりそうか。
 
「その事で君に謝らなければならない」
 
ん?
何を?
 
「事故の前に何かなかったかい?」
 
何か?
 
「事故の直前だ」
 
なんだ?
えーと…、あっ、黒っぽい小動物のような物っ!!
 
「そうそれ」
 
それは?
 
「それがコレ」
 
突然それがボンっとテーブル上に現れた。
 
うわっ
驚き後ろに下がろうとするが椅子に引っかかって椅子ごと後ろに倒れ後頭部を打ち付けてしまう。
 
痛たたっ…、って、あれ?、痛くない。
 
「君はよく驚くねぇ」
 
いやいや、突然物が現れたらビックリするって。
 
「まぁそうだけど、君はちょっと驚きすぎだよ」
 
ええ、そうですよ、ヒビリですよ
 
「それはいいとして、これなんだけど」
 
俺は立ち上がり椅子を起こして座りそれを見つめる。
猫みたいな犬みたいな違うような何だこれ?
 
「判りやすく簡単に言うと死神だよ」
 
死神!!
思わず後退る。
今度は椅子を倒さなかった。
 
「驚きすぎだって」
 
死神に驚かない人はいないって!!
 
「話を続けるね」
 ・
 ・
 ・
 ・
簡単にいうと

いろいろなミスが重なって死神があの場に現れてしまい俺は死んでしまった。
前代未聞らしい。

そういう事らしい
 ・
 ・
 ・
 ・
まぁ、そういう事ならしょうが無い。
ん?
まてまてま、いやいや、しょうが無くない。
どうするの?
どうなるの?
ああっ、ミスだからなんとかなるよね。
なんとかするよね。
元に戻るよね。
生き返るよね!!
 
「それが出来ればこうやって話す必要はなかったんだけどね」
 
えっ!
 
「……………………………」
 
えっ!!
 
「……………………………」
 
えっ!!!
 
「……………………………」
 
元に戻れない!?
 
「うん」
 
生き返れない!?
 
「そうだね」
 
そんな、そんな馬鹿な!!
嘘だといってよ、バー…………………
ところでアンタ誰?
 
「今更ですか」
 
誰?
 
「神」
 
は?
 
「君らの言うところの神様ってヤツ。よろしく」
 
………………
嘘だと言ってよ、神様!!
 
「ちゃんと言い直すんだね」
 
元に戻れない。
生き返れない。
どうするの?
どうなるの?
ずっとこのまま?
天国に行くの?
それとも地獄か!?
地獄は嫌だ天国がいい!
天国でお願いします
前代未聞のミスだから天国ですよね神様!!!!!
 
「天国でいいのかい?」
 
天国がいいです
 
「他にも手はあるけど」
 
天国がい…
他にも手がある!?
 
「うん」
 
それは!?
 
「それはね」
 ・
 ・
 ・
 ・
 
他の手ってのは異世界転生。
いわゆる中世ヨーロッパ風異世界への転生。
剣と魔法とモンスターの世界です。
お約束のテンプレですよ。
 
剣と魔法とモンスターの世界へモヤシっ子の現代人がそのまま行ったら即死なので、もちろんチート能力も付いてます。
ミスで死ぬ羽目になったので神様と交渉してチート能力の他に装備等の必要な物もいろいろとゲット。
 
という訳で、異世界転生イージーモード始めます。
 
 


【1話】
 
 
やって来ました異世界。
 
転生した場所は薄暗い洞窟の中。
薄暗い洞窟の中がある程度見える。
これがチート能力か?
夜目?
 
洞窟の中には特に何もなく、ただ転生場所になっただけのようなので外に出てみた。
 
ここは山の麓っぽい。
周りは岩肌の崖、滝、川、森、山、そして人の気配なし、道もない…。
そういえば出現場所の指定を指定なかったよ。
失敗…。
 
どうしようか。
とりあえず人里を目指すか。
いやいや、その前にいろいろ確認しないといけない。
いきなりモンスターと実戦とかはハードすぎる。
 
まず体のチェック。
服装は神様に準備してもらった現地のシャツとズボン。
それはいいんだけど何か違和感が…。
ん?、いや、ちょっと待て、体がなんか変だ。
メタボの象徴だった醜い腹が引っ込んでる。
太かった手足も細いし短いような…。
って、体全体が小さくないか?
小さい、縮んでいる!
まさか若返ってるのか?
何歳の体なんだよコレ?
[12歳]
そう頭に浮かんだ。
何だ!?
何だ今のは?
12歳!?
この体は12歳なのか!?
チート能力か!?
チート能力には若返りの効果も含まれていたのか!?
そうなのか、まぁ中年メタボ体型よりはずっとマシだから良しとしよう。
 
気を取り直してと。
 
体が軽いと感じてたのは若返ったからか。
チート能力の身体は強化されてないのか?
試しにその場で軽くジャンプ。
おおっ、思ったより高く飛べた。
若返りだけじゃなく強化もされてるみたい。
 
今度は全力でジャンプ…。
おおっーーー!!
あまりに高く飛びすぎてビックリ。
降りる時死ぬかと思った。
着地で足も折れず一安心。
 
軽く走ったつもりでも早く走れる。
っていうか息も切れずに走れる。
足場の悪い岩だらけの河原もヒョイヒョイと跳ねるように動ける。
 
河原の小石を思いっきり投げたら森の木々を越えて見えなくなった。
どれだけ飛んだのかさっぱり分からない。
 
樹の幹めがけて全力で投げつけたら太さ40cmほどの幹を貫通した。
立派な武器です。
小石を持ち歩こう。
シャツとズボンの各ポケットに1個ずつ入れた。
 
全力ジャンプの着地時に足が折れなかったということは体自体も頑丈になっているはず。
拳で樹の幹をだんだん強く殴り続けたら最終的に折れた。
拳は武器です。
それなら足も…、キックも強力でした。
 
それと、洞窟の中で暗いところが見えたのは夜目で、遠くの山がよく見える気がするこれは鷹目かな?
若返りと身体強化バンザイ。
ありがとう神様。
 
次はいよいよ大本命の魔法だ。
どうやるんだ?
詠唱?
いやいやチートだから無詠唱でしょ。
とか考えてたらなにやら体を何かが駆け巡るような感じがしてきた。
ん?、これが魔力か?
これからどうすれば……。
とりあえずマンガやアニメのようにやってる事にした。
右手を突き出し「ファイアーボール」をイメージする。
すると右手の前にピンポン玉程の火球が現れた。
すごく…小さいです…
もっと大きくなるように再度イメージする。
今度は野球ボール程の火球が現れた。
もっともっと大きく。
今度はバレーボール程の火球。
もっともっと?、と調子に乗ってたら2階建ての家を丸呑みするくらい大きくなった。
すごく…大きいです…
そして凄く熱い。
はじめに出したピンポン玉程?この馬鹿デカイ火球の全てが周りじゅうに浮かんでいるので熱いはずだ。
どうしたものかと周りを見回し目に入った滝壺へ向かうようにイメージしたらすごい速さで一斉に火球が滝壺へ突っ込んで水蒸気を上げる。
うん、凄い。
チート魔法バンザイ。
ありがとう神様。
 
水の魔法でも似たようなことをして辺りを水浸しにした。
 
風の魔法は「かまいたち」をイメージしたら樹の幹がスパスパ切れたので河原の岩で試したらスパスパとはいかないものの切れた。
もっと強くイメージしたら岩もスパスパ切れた。
なんでも切れそうだなコレ。
 
土の魔法は空中に石を出して飛ばしたりは出来なかった。
石槍を飛ばしてみたかったのに残念。
土を石へ変化させたり地面に穴を開けたり盛り上げたりできる他、つららのような細く尖った石を地面から突き上げのは武器になりそうだ。
 
そんなこんなで魔法の練習していたらお腹が鳴って空腹に気がついた。
神様が保存食を準備していたはず。
探して出てきたのは乾パン…。
もっと他にあるでしょ神様ー!!
 
今更文句を言っても同しようもないので乾パンをバリボリと食べる。
喉が乾いたので飲み物を探したけど無かった。
神様は飲み物は準備してくれなかった…。
出てきたのはひょうたんの水筒と竹の水筒。
中はカラッポ。
水は魔法で出せるし又は川から汲めって事らしい。
とりあえず魔法で水を出して水筒へ入れる。
漏斗もなしにスルっと水筒へ水が入れられる魔法ってマジ便利。
 
河原で川を眺めながら乾パンを数個食べた後に思い出した。
そういえば森に果物らしいものが実っていた。
魔法に熱中していてすっかり忘れてた。
多分きっと食べられるよね。
 
河原の岩をヒョイヒョイ跳びながら果物らしいものが実っていた場所へ向かう。
バナナが実っている。
ただし大きい。
1本が30cm程で地球産の2倍くらいか?
大きすぎて気味が悪いけど食べられるのかコレ?
と思いながら暫く眺めていたら
[ダイバナナ]食用
そう頭に浮かんだ。
何だ!?
何だ今のは?
あっ、さっきの12歳と一緒だ。
これはもしかして鑑定魔法ってやつか。
なるほど、さっきは自分の体に対して鑑定魔法を使ったという訳か。
チート能力で魔法を授かってるけどマニュアルがないから使い勝手に困る。
贅沢な悩みだ。
 
食べられるようなので1房は多すぎるから1本だけ千切って皮を剥いて食べる。
うん、普通にバナナの味がする。
ダイバナナって大きいバナナっそのまんまの名称だな。
普通のバナナも存在するのか?
 
付近にはダイバナナの他にも果物が実っていて鑑定の結果、ビッグアップル・デカメロン・オオパッションと判った。
説明するまでもなくリンゴ・メロン・パッションフルーツの大きいヤツ。
っいうか、この4種の果物が一度に実るって植生はどうなってる?
異世界バンザイです。
 
とりあえず乾パンと異世界フルーツで食料は確保出来た。
 
 

【2話】 白と黒
 
 
目が覚めた。
体が重い。
動けない。
身体強化されてるのに重いって感じるんだなぁ。
そう思いながら視界に大部分を占める黒い毛並みへ呼びかける。
 
「重いよクロベェ」
 
黒い毛並みは動かない。
 
「重いってば」
 
更に大きい声で言うとやっと黒い毛並みは動き出し体が開放されたので起き上がる。
 
「おはようクロベェ」
 
「クワァーッ」
「欠伸で返事かよ」
 
欠伸をしながら伸びをした黒猫の頭を撫でて耳の後ろか掻いてやるとゴロゴロと盛大に喉を鳴らし始めた。
 
「体がデカイと音もデカイな」
 
そう言いながら黒猫の首周りも掻いていると背中をドンと突かれ黒猫へ倒れかかる。
振り向くと白猫が頭を俺に擦り付けてきた。
 
「何すんだよシロベェ」
 
そう言いながら今度は白猫の頬のラインを掻いてやる。
 
「おはようシロベェ」
 
白猫も盛大に喉を鳴らし始めた。
暫く2匹を撫でたり掻いたりしてあげた。
 
「はい、お終い」
 
俺がそう言うと2匹が体を離したのでアイテムボックスから皮の鎧と鉄剣を取り出し身に付ける。
 
2匹を引き連れ寝床の洞窟から外へ出る。
雲一つない青空には真っ赤な太陽と2つの月が浮かんでいる。
 
「今日もいい天気だ」
 
いい天気なんだけど洞窟の入口付近は血生臭く、複数の血で汚れた獣だったものが横たわっていた。
昨夜俺が寝ている間に襲撃されたようだ。
でも安心、シロベェとクロベェがちゃんと仕事をしてくれたようだ。
 
「これは何かなぁ?」
酸っぱいものが胃から上がってきそうなのを堪えて見つめると、
[モリオオカミ]食用/素材
と頭に浮かんだ。
鑑定魔法きました。
食べれるのかコレ。
肉が食用で毛皮や牙とかは素材という事だろう。
肉を食べたいな。
勝手にドロップアイテムで肉になってくれないよね。
解体しないと駄目だよね。
でも自分で解体するのはグロくて無理。
チート能力があっても生理的に受け付けない。
 
もしかしてと思いモリオオカミの死骸をそのままアイテムボックスへ収納してみた。
残念、自動的に解体されて肉・毛皮・牙とかに分類されない。
うん、肉は諦めよう。
残りのモリオオカミの死骸もアイテムボックスへ収納した。

 
アイテムボックスは神様にお願いして付けてもらった。
異世界転生のチート能力にアイテムボックスは必須でしょう。
いっぱい収納出来て時間経過が無くて腐らない。
でも生き物は入らないってお約束の設定。
生き物も入れれるようにお願いしたけど駄目だった。
そこは神様の力でチョチョイって出来ないのかと思ったけど、なんでもかんでもは駄目だって。
線引がわからなかったけど、そういう物かと妥協した。
 
アイテムボックスにはいろいろ入っている。
乾パンも入っている。
沢山沢山入っている死ぬまで3食欠かさず食べても残るほど入っている。
入れ過ぎです神様。
生活必需品もいろいろ入っている。
武器と防具も一通り入っている。
お金も金貨、銀貨、銅貨、鉄貨と各種と入っている。
いきなり文無しじゃ大変だしね。
好き好んでこっちに来たわけじゃないから結構わがまま言わしてもらいましたよ。
流石に家は入っていない。
欲しかったけど駄目だった。
シロベェとクロベェもアイテムボックスから出てきた。
生き物は駄目じゃないのかって?
シロベェとクロベェは生き物じゃなくて召喚獣で魔法体なので大丈夫。
いちいちゼロから召喚するよりアイテムボックスから出す方が早くて簡単なのです。
ちなみにシロベェとクロベェは元々飼っていた飼猫。
俺が死んで面倒見る人がいなくなり、そのままだと部屋の中で餓死してしまうので召喚獣にしてもらった。
2匹とも雑種で体重が3kg程だったけど、そのままだと異世界では厳しいので大型化してもらった。
シッポ除き全長2m程で搭乗可能なデッカイ猫に華麗に進化。
それと異世界に転生してすぐに出さなかったのは、昨日は激動の一日だったのですっかり忘れていて寝る前に思い出し慌ててアイテムボックスから召喚した次第。ごめんねシロベェとクロベェ。
 
モリオオカミの死骸を片付けた後は地面に染み込んだ血を土魔法を使い綺麗にした川へ行き顔を洗う。
朝食はダイバナナ1本。
別にバナナダイエットをしている訳じゃなくて30cmのバナナを1本食べれば腹一杯です。
シロベェにダイバナナを差し出してみたけど匂いを嗅いでパクっと食べた。
ありゃ、皮ごと食べちゃったよ。
クロベェも欲しそうだったので皮を剥いたのとそのままのを差し出してみたら皮を剥いた方を食べた。
やっぱり皮は無いほうが良かったんだね。
ちなみに召喚獣は魔力もエネルギーに出来るから食事がなくても平気だってさ。
直接会話は出来ないけどなんとなく意思疎通ができます。
 
さて今日も魔法の練習だ。
 
 


【3話】
 
 
魔法の練習をしていたら何やら音が聞こえてきたのでシロベェとクロベェを従えて音のする方へ行ってみる。
ブンブンと羽音を立てながら大きな蜂1匹がビッグアップルの木の前を飛んでいる。
そしてビッグアップルの実に停った。
シャリシャリと音がしているので食べているようだ。
 
大きなスズメバチだなこいつは。
全長50cmくらいか。
針太いな、刺されたら即死かもな。
鑑定したら
[ビックビー]素材
これは食用じゃないのか。
 
さてどうする。
初戦でいきなりこれは厳しくないか?
厳しいよ。
大体まだ鉄剣を振ったこともない。
ただ腰に差しているだけだ。
練習しておけばよかった。
失敗だ。
よし、ここは撤退だ。
そうしよう。
 
ゆっくり静かに気づかれぬように下がって逃げようと振り返ったら別のビックビーがいた。
ビックビーが2匹がブンブン羽音を立てホバリングしている。
ビッグアップルを食べている個体に気を取られていて気が付かなかった。
なんでこの音に気が付かないんだよ俺。
やばい。
やばいよ、やばいよ。
とりあえず鉄剣を抜き構える。
カタカタと剣先が震える。
震えを止めようと竹刀のように両手で持とうとしたら持てなかった。
片手剣ってやつかコレ。
落ち着け俺。
そうだ魔法だ。
火魔法で燃やしてしまえ。
右手を付き出そうして鉄剣を持っていることに気が付き慌てて左手を突き出しファイアーボールを2つ放つ。
まじか、2匹とも避けやがった。
やばいこっちに向かってきた。
ファイアーボール、ファイアーボール、ファイアーボール……。
左手でファイアーボールを連発しまくる。
よし1匹命中。
もう1匹が襲いかかってきたので間一髪避ける。
振り向いて再びホバリングしているビックビーと向き合う。
カン
右手で正面に構えた鉄剣に何かが当たって足元に落ちた。
黒くて尖ったもの。
針だ。
って針を飛ばしやがったのか、危ねー。
超ヤバかったんじゃないの今。
たまたま鉄剣に当たってラッキーだよ。
おっと、また襲いかかってきたので左手でファイアーボールを連発。
羽に命中して地面に落ちたので慌てて駆け寄って右手の鉄剣でガンガン殴って止めを刺す。
殴りすぎて細切れになってしまった。
 
「ふー」

大きく息を吐いて右手の鉄剣を地面に落としその場に座り込む。
ピンチだった。
パニックだった。
右手でファイアーボールを放てばもっと楽だったんじゃないか。
右手の鉄剣を放すなんて思いもつかなかった。
左手でファイアーボールを放ったことないじゃん。
当たるわけがない。
もっと落ち着いて冷静にならなきゃ駄目だな。
ともかく初戦は勝てた。
課題はありまくりだけど、次頑張ろう。
 
立ち上がり地面に落とした鉄剣を拾おうとしゃがみ込んだ時に左肩に衝撃がありそのまま地面に転がる。
なんだ?
地面に転がったまま左肩を見るとなにかが突き出している。
黒くて尖ったもの。
さっき見た。
アレだ。
ビックビーの針だ。
蜂の針。
毒。
毒、毒だって!!。
ヤバイぞ
なんでそれがここに…………、って痛い。
急に痛みを感じ始めた。
痛い。
痛い痛い。
痛い痛い痛い。
死んじゃう。
死んじゃう死んじゃう。
死んじゃう死んじゃう死んじゃう。
助けて。
助けて助けて。
助けて助けて助けて。
痛い死んじゃう助けて。
 
地面をのた打ち回っていたら不意に背中を押された。
「ぐがぁっ、」
そして左肩の針が引き抜かれる。
「痛い痛い痛い!!!」
目を開けたらシロベェとクロベェがいた。
針を引き抜いてくれたようだ。
「助けて、シロベェ…」
シロベェは俺を見つめている。
「助けて、クロベェ…」
クロベェも俺を見つめている。
「たす…け、て、……」
見つめている。
「……、ん!?」
あっそうか、薬だ、アイテムボックスに薬が入っているはず。
薬、クスリ、くすり…、って入って無い…。
神様、薬くらい入れておいてよ…。
もう駄目だ…………。
……………。
……。
 
頬を生暖かいもので擦られた。
なんだ…。
目を開けるとシロベェとクロベェがいた。
舌で舐められたのか。
「ごめん、もう駄目みたいだ」
クロベェが首を上に向け口から火を吐く。
へぇ、クロベェは火魔法が使うるのか知らなかったよ。
シロベェの開けた口からビチビチと電撃が出ている。
そうか電魔法ってのもあるんだ。
まだ試してなかったよ…

……
………
…………
……………
って、魔法だ。魔法。
魔法で治療。
魔法で回復。
まだ試していない。
えと、どうするんだ。

呪文、呪文が判らない。

まてまて、落ち着け。
詠唱しなくても魔法使えるだろ俺。
……
………
そうか、そうだ、イメージだイメージしろ。

傷よ治れ、傷よ治れ、傷よ治れ。

毒よ消えろ、毒よ消えろ、毒よ消えろ。

血よ増えろ、血よ増えろ、血よ増えろ。

完治しろ回復しろ、完治しろ回復しろ、完治しろ回復しろ。
イメージだイメージしろ。
イメージだイメージしろ。
イメージだイメージしろ。
 ・
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生き返りました。
いや死んでないから違うか。
左肩の傷は完治しました。
服には穴が開いているけどこれは直せなかった。
毒も消えたようです。
チート魔法バンザイ。
ありがとう神様。
ホントありがとう。
 
俺の左肩に刺さった針は多分ビッグアップルを食べていた個体のものだろう。
俺のすぐ近くに3匹目のビッグビーの死骸が転がっていた。
死骸は焼け焦げていたのでクロベェの火魔法でやられたのだろう。
2匹のビッグビーを倒して油断した俺はビッグアップルを食べていた個体に奇襲されたようだ。
油断しすぎだろ俺。
 
 


未完