歎異抄 (唯円 作)

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝 謹写



一 念仏には無義をもつて義とす。不可称不可説不可思議のゆゑにと仰せ候ひき。

 そもそもかの御在生のむかし、おなじくこころざしをして、あゆみを遼遠の洛陽にはげまし、信をひとつにして心を当来の報土にかけしともがらは、同時に御意趣をうけたまはりしかども、そのひとびとにともなひて念仏申さるる老若、そのかずをしらずおはしますなかに、上人(親鸞)の仰せにあらざる異義どもを近来はおほく仰せられあうて候ふよし、伝へうけたまはる。いはれなき条条の子細のこと。

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