親鸞聖人 ご消息(手紙)

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝 謹写


二十九

 武蔵よりとて、しむの入道どのと申す人と、正念房と申す人の王番にのぼらせたまひて候ふとておはしまして候ふ。みまゐらせて候ふ。御念仏の御こころざしおはしますと候へば、ことにうれしうめでたうおぼえ候ふ。御すすめと候ふ。かへすがへすうれしうあはれに候ふ。

なほなほ、よくよくすすめまゐらせて、信心かはらぬやうに人人に申させたまふべし。如来の御ちかひのうへに、釈尊の御ことなり。また十方恒沙の諸仏の御証誠なり。信心はかはらじとおもひ候へども、やうやうにかはりあはせたまひて候ふこと、ことになげきおもひ候ふ。よくよくすすめまゐらせたまふべく候ふ。あなかしこ、あなかしこ。
  九月七日       親鸞
 性信御房

 念仏のあひだのことゆゑに、御沙汰どものやうやうにきこえ候ふに、こころやすくならせたまひて候ふと、この人人の御ものがたり候へば、ことにめでたううれしう候ふ。なにごともなにごとも申しつくしがたく候ふ。いのち候はば、またまた申し候ふべく候ふ。

ホームページへ戻る