アステル、逝ってよし

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 アステル(東京通信ネットワーク株式会社)は、自社サービスの利用者を対象に、eマガジンなるものを配信している。しかし、その作者募集は、およそ、物を書き情報を発信する者を遇するにふさわしからぬものに思える。
 以下、アステルが定める作者規約を、紹介する。なお、eマガジンの作者は、一般の応募者から選ばれる。作者規約というのは、応募に際して承諾を求められる規約である。

第1条(目的)
本規約は、第3条所定の作者が東京通信ネットワーク株式会社(以下「当社」といいます。)が提供するメールマガジンシステム(以下「本システム」といいます。)の利用に当たっての利用条件を定めるものとします。 なお、当社が別途お知らせする利用上の注意事項や追加規約も名目の如何にかかわらず、本規約の一部を構成するものとします。

 第1条で、既に、この規約は破綻している。利用条件を定めるとしながら、利用条件が、後から、勝手にいくらでも付け加えられる仕掛けになっている。つまり、この規約に示される利用条件は、最低限のものであって、後は、アステルの「お手盛り」だということである。 

第2条(規約の変更)
1. 当社は第3条所定の作者の了解を得ることなく、本規約を随時変更できるものとします。

 しかも、アステルの都合で、最低限の利用条件さえも、変更できる。これを、第1条と合わせれば、利用条件を定めると言いながら、実は、何も定めていないことになる。

2. 変更内容は、ホームページ上に表示する方法でお知らせすることとし、お知らせ後、1ヶ月経過した時点ですべての作者が承諾したものとみなします。

 加えて、作者は、必ず、この規約の変更を認めなければならぬ。何のことはない。ご大層に規約の体裁をとっているが、実際は、「アステルの指示に従え」と、一行書けば済む話である。

 これだけでも、相当に図々しいが、アステルの厚顔無恥は、これに留まらぬ。

第3条(作者)
1. (略)
2. 作者は、「MOZIO eマガジン」発行の申し込みを行なった時点で、本規約の
内容を承諾しているものとみなします。

 eマガジンの作者として申し込む者は、中身の定まらぬ、有って無きが如き利用条件を承諾したことにされる。つまり、言いなりになる事を承諾したことにされる。

3. (略)
4. 作者は、少なくとも2ヶ月に1回は「MOZIO eマガジン」を発行するものとし 、その内容を魅力あるものとして充実させ、多数の読者を確保するよう努力するものとします。

 上述した如く、利用条件はアステルの勝手と言いながら、作者には、内容を魅力あるものとして充実させ、多数の読者を確保する努力を求める。

第4条(略)
第5条(略)
第6条(「MOZIO eマガジン」の当社利用)
 当社は、作者への事前の通知、作者の承諾の取得及び対価の支払いなしに、作者が発行した「MOZIO eマガジン」の全部または一部について本システムの告知、宣伝および広報の目的をもって、「MOZIO eマガジン」内の他の掲載場所への掲載及び印刷物、インターネット、TV,ラジオ等の媒体への転載、引用などを自由に行えるものとします。

 ここまで、アステルの一方的な要求を飲んで、作者が原稿を書いても、アステルは容赦なく、次の要求を出す。作者の同意どころか通知もせずに、無償で、記事を、宣伝に利用させろと言うのである。

第7条(略)
第8条(費用)
1. 作者は、本システムの利用にあたり、利用料金を支払う必要はありません。

 さすがに、これで、システム利用料金を出せとは言わぬらしい。

2.メールマガジンの制作に要する費用及び本システムの利用に要する通信費用は作者の負担とします。

 しかし、通信費用(実費)さえ、払う気はない。

第9条(「MOZIO eマガジン」発行に対する対価)
当社は、作者へ「MOZIO eマガジン」 発行に対する対価を支払わないこととします。

 それどころか、作者に対して、原稿料を、ビタ一文、払うつもりがない。昔、コンピューター雑誌の読者欄に、私の走り書きが採用されたときでさえ、五百円の図書券が送られてきた。この会社、情報の何たるかを弁えているのだろうか。甚だ、疑問である。

第10条(作者の自己責任)
1. 作者が、本システムの利用に際して第三者又は当社に対して損害を与えたときは、作者は自己の責任と費用をもって当該損害を賠償するものとします。
2. 作者は、発信したメールマガジンに記載された情報(以下「情報」といいます。)に関し一切の責任を負うものとし、自己が発信したか否かを問わず、当該情報に関するクレーム・請求・紛争を、自己の責任と費用をもって解決するものとします。

第11条(当社の免責)
1. 当社は、本システムの利用により発生した作者の損害・不利益に対し、いかなる責任も負わないものとし、一切の損害賠償をする義務はないものとします。
2. 当社は、作者が発信した情報の完全性・正確性・適法性・有用性等いかなる保証も 行ないません。
3. 当社は、作者と第三者の間で生じた、著作権・商標権等の知的財産権、名誉・信用・プライバシー等の人格的権利又は契約上の権利の侵害等の紛争について一切関知しないものとします。
4. 当社は、第三者によりなされた改竄、消去その他理由の如何を問わず、情報の保全に関し、一切責任を負わないものとします。
5. 当社は、本システムの遅延・中断により発生した作者及び第三者の損害・不利益に対し、一切責任を負わないものとします。


 噴飯ものは、この2条である。作者には自己責任。アステルは免責だと言う。アステルは、慈善事業でeマガジンを発行するのではない。アステルの売上増を狙ったサービスである。一切の責任を回避しながら、金儲けをしようなど、言語道断である。
 利益を得るものは損失も負うのが、経済活動の原則である。無償で情報発信の場を提供してやっていると考えているなら、確かに、アステル内部では、辻褄が合っているのだろう。しかし、それは、時代錯誤の傲慢である。
 アステルに配信されずとも、他のメールマガジン、無償のホームページスペースはいくらでもある。経営不振の携帯電話会社に配信されて、それほど感謝するほど、今の若者は甘くない。

第12条(略)
第13条(略)
第14条(利用期間)
作者が本システムを利用できる期間は、本システムが利用可能となった時点から6ヶ月間とし、期間満了1週間前までに、当社及び作者のいずれからも利用を終了する旨の申し出のないときは、更に6ヶ月間継続するものとし、以後も同様とします。

 ここでは、一応、もっともらしく、利用期間を定めているが、上述した第1条第2条があるので、この期間すら、アステルの都合で、いくらでも変更できる。とにかく、第1条第2条がある限り、この規約には、ほとんど意味がないのである。 

第15条(略)
第16条(略)
第17条(管轄裁判所)
本規約に関連して生じる紛争については、東京簡易裁判所ないし東京地方裁判所を 第一審の専属管轄裁判所とします。
第18条(準拠法)
本規約の成立、効力、履行および解釈に関しては、日本法が適用されるものとします。


 アステル、イタチの最後っ屁が、この2条である。
 まず、第17条だが、裁判を提起する場合、管轄裁判所は、3通り有り得る。1は、訴える側(原告)の住所地を管轄する裁判所。2は、訴えられる側(被告)の住所地を管轄する裁判所。3は、原告、被告が合意した裁判所。具体的に言えば、原告が大阪在住、被告が東京在住の場合、1は大阪、2は東京、3は、どこでも構わぬので、例えば、名古屋でも良い。
 大抵は、原告に都合の良い原告の住所地を管轄する裁判所が選ばれる。上の例で言えば、大阪である。しかし、それでは、被告は、東京から大阪地方裁判所に通うことになるので、不都合である。アステルは、これを避けるために、アステルに都合の良い東京地方裁判所を指定しているのである。
 次に、第18条だが、作者が日本人でない場合、日本在住でない場合、いずれの法を適用するかが問題になるので、アステルに有利な日本法を指定している。 いずれも、弁護士あたりと相談したのだろう。アステルが損をしないための準備だけは怠りない。

 それにしても、このような一方の利益ばかりが盛り込まれた規約に、本当に拘束力があるのか。アステルが指定する東京地方裁判所は、この規約を、完全に有効な規約として認めるのか。もし、認められるなら、そういう傲慢な会社など、無用である。アステル、逝って良し。

 

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