チンピラ報道記者

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 日本のマスコミは、多く、犯罪の加害者の人権を重視して、被害者の人権を軽視する。ついでに、被害者の家族の人権まで脅かしながら、糊口をすすぐ。マスコミが、被害者とその家族を追い回すのは、そちらの方が簡単だからである。加害者が逃走していれば、追跡は困難を極めるし、追跡すれば、警察に嫌われれる。嫌われれば、自ら取材せず、警察発表に頼ってゴミ記事を書いている記者にとっては、致命的打撃となる。加害者の身柄を警察が確保すれば、今度は、警察の守秘義務の壁に遮られて、取材はかなわぬ。かくして、ニュースの時間を埋め、紙面の余白を埋めるために、被害者とその周辺を取材するという、安直な仕事をするのである。この手合いを、チンピラ報道記者と呼ぶ。

 それにしても、大学を出たてと思しきチンピラ中のチンピラ記者が、マスコミに入社できたことを奇貨として、したり顔で被害者宅前から報告する様など、テレビで観ると反吐が出る。この国では、一定の年齢になると、現場を離れて、管理職に廻るという不文律がある。逆に言えば、何時までも現場にいるのは、うだつの上がらぬ記者という評価を下される。しかし、論説委員解説委員などと、聞こえは良いが、現場を離れた記者など、大半は、寄せ集めの知識しか持たぬゴミである。
 消費税導入の際、小沢一郎現自由党党首(当時自民党)に恫喝されて、尻尾を巻いた姿を見て以来、私は、新聞の定期購読を止めた。以来、特別に入手したい情報がない限り、新聞は買わぬし、買っても社説など読まぬが、それほど馬鹿が進んだとも思えぬ。新聞の論説など、その程度のものである。

 現場の第一線に、若い者を配置する手法は、独創性と発想の柔軟さを求められる研究開発の分野では、それなりに意味がある。しかし、人間を相手にし、社会を相手にする記者にまで当てはめるのは、いかがなものか。青少年犯罪など、若年層を取材対象にする場合には、若い記者も良いが、娑婆の泥水を飲み続けて、初めて判ることもある。妻、母、夫、父、町内会、PTAの役員と、歳をとるに連れて、様々な役割をこなせば、自ずと見えてくるものもある。

 以前、某公務員の収賄事件に関連して、大手新聞社の記者が、取材に来たことがある。取材を拒否しても良かったのだが、暇だったので、応対した。会ってみれば、三十そこそこのチンピラである。試しに、屁理屈を並べてからかうと、案の定、立腹した。取材する側が怒ってしまえば、取材はそこまでである。彼は、私の退屈しのぎに付き合わされて時間を浪費した上、門前払い同様、何の成果もないまま去った。
 あの場合、たとえ立腹しても、にやりと笑いながら、「なかなか鋭い」などと適当に煽てれば、馬鹿坊主のこと、ひょっとすれば、取材のヒントなど、漏らしていたやもしれぬ。娑婆の泥水を飲まねば解らぬ事があるというのは、そういう意味である。
 大体、のこのこやってきて、話を聞きたいと言われてベラベラ話す人間など、ろくな事は知らぬ。事件の真相に限らず、金になる話は、他人には教えぬのが、娑婆の常識である。それを聞き出しに来て、自分が相手に乗せられて、怒って帰るようでは、お粗末な取材能力と言うしかない。チンピラと呼ぶ所以である。
 これは、余談だが、TBSの不祥事が相次いで報道されたとき、参考までに、TBSの社員が、マイクを向けられてどの様な対応をするか、TBS以外のニュースを、具に観た。彼等の多くは、無言でその場を立ち去り、質問には答えようとしなかった。以後は、「TBSの社員をお手本にして」と、断った上で、取材を無視するのが、良策である。文句は、TBSを相手に言ってもらおう。

 最近は、若作りにのみ腐心して、無駄に歳をとる者が増えたから、年の功も当てにならぬことは、認める。加えて、娑婆の泥水を飲み続けて、単純に、情熱も気概も失せただけの者が増えている。しかし、以前にも書いたが、マスコミの正義など、所詮は、売り物の正義である。どうせ、似非正義ならば、下手に情熱など傾けずに、淡々と、取材する方が害は少ない。グウタラは国を滅ぼさないが、正義は、往々、国を滅ぼす。実例が知りたければ、この国の数十年前の歴史を学ぶがいい。おっちょこちょいの青年将校達が、自分のものでもない兵と武器をもって、昭和維新などと叫び、その後、この国に何が起こったかを知ることができる。

 今日も今日とて、若い記者が、和歌山地裁前から、砒素混入事件の裁判につき、気負った調子で、報告していた。あれは、やはり、仕事に疲れた中年のオッサン記者が、もう少し、いい加減で投げやりな態度で報告すべきである。その方が、マスコミの正体を露呈して、楽しめる。
 もし、妙な誤解をする者が、「お叱りの電話」など寄越したら、「いやあ、地方都市の殺人事件など、本当はどうでも良いのですが、お金儲けのために報道しているだけのことで。へへへへへ。」と、応対するが良い。これこそ、正直を徳目とするマスコミの、正しき対応である。

 

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