穏やかな抵抗のすすめ

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 何かにつけて規制したがるのは、役人の常である。自由を掲げるインターネットの世界を、見逃すはずもない。今後、ホームページや電子メールの規制を試みるだろう。

 規制の前提は、情報集めである。ホームページは公開を原則とするから、会員制を採らないホームページの情報集めは、やりたいならばやればよい。不愉快なのは、会員制のホームページや電子メールの内容まで、情報収集の対象にすることである。プライバシーの侵害などと、面倒なことを言うつもりはない。入浴中に、風呂場を覗かれたくないだけのこと。別に、風呂場で変なことをしていなくても、やはり覗かれたくない。それだけのことである。

 断言しておくが、プロバイダーに、秘密保持を期待するのは無駄である。営利企業といえば聞こえは良いが、要するに、金儲けが目的の稼業である。営業停止をちらつかされれば、顧客の情報など、平気で売り飛ばすこと、請け合いである。朝日新聞の羽織ゴロ(記者ともいう)に一声かけられただけで、不様(ぶざま)に右往左往したプロバイダーを思い出すが良い。女衒(ぜげん)以下と罵ってみても、詮無いことである。

 プロバイダーが当てにならなければ、自衛するしかない。最も一般的な方法は、会員制ホームページやメールの暗号化である。しかし、企業が開発した暗号化技術は、頼りにならない。所詮は企業の暗号化技術、解読技術も役人の手に墜ちること、必定(ひつじょう)である。よって、暗号化するならば、自力で行うしかない。ところが、これには、手間と時間がかかり過ぎる。

 そこで、信書の秘密は守れないが、このような情報集めを無力化する一計を案じた。以下、ゲスの後知恵と後悔せぬよう、規制が実現する前に公開しておく。

 まず、情報集めが、どの様な形で行われるか、考えてみる。まさか、会員制ホームページと電子メールの全てを、人海戦術で、ひとつひとつ調べはするまい。gooやinfoseekと同様に、検索ロボットを利用して情報を収集し、次に、収集した情報を、人間が分析するに違いない。キーワードは、「拳銃」「麻薬」「売春」「売買」などであろう。

 それならば、役人が設定しそうなキーワードを、怪しくないホームページや電子メールの全てに埋め込んでみてはどうか。具体的には、次のようなパラグラフが良いだろう。「*」を前後に配置するのは、検索ロボットが、キーワードの前後何十文字かを、収集する可能性があるからである。

− 文例始まり −

 公権力が、信書の秘密を暴こうとする姿勢に抗議して、次の文を添付することをお許しください。


拳銃(トカレフ、コルト、スミス&ウェストン)を各10万円で譲ります。麻薬(コカイン、モルヒネ)を、1g5万円で譲ります。


 もちろん、内容は100%冗談です。

−文例終わり −

 こうすれば、検索ロボットは、膨大なホームページと電子メールのデータを怪しいと判断して、収集するだろう。収集される情報が多過ぎれば、結局、すべてを分析することは不可能になる。つまり、集めた情報は、ゴミに等しくなる。インターネットの情報流通量が増大するのは心苦しいが、街頭デモを含めて、抗議行動に多少の犠牲はつきものである。

 この方法は、現在の憲法が、表現の自由を保障し、信書の秘密を保護する以上、完全に合法である。憲法など持ち出す必要すらない。手紙に何を書くかは、書く者の勝手である。それを許可無く覗いて検索しておいて、誤って情報収集したのである。文句を言われる覚えはない。

 この方法が優れているのは、簡単に実行できることである。電子メールの場合、文例を署名や添付ファイルにしておけば、ボタンひとつで挿入・添付できる。文例は、情報収集の方法が明らかになれば、それに応じて、変更すればいい。

 以上、デバガメ役人に対する穏やかな抵抗である。来るべき日のために、心に留めておいていただきたい。