大阪日本橋近景

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

  通天閣の北、大阪の日本橋は、東の秋葉原と並ぶ一大電気屋街である。最近は、大型家電店に混じって、コンピュータのハードソフトを扱う店が幅を利かせている。最新の技術と製品を求めて、大勢の若者たちが集まってくる。このあたりの状況は、秋葉原に同じ。ちなみにお江戸は「にほんばし」、大阪は「にっぽんばし」と呼ぶ。地元では「ポンバシ」などと略称する。

 ついでに脱線すると、秋葉原は「あきはばら」と読むが、古くは、「アキワッパラ」と言われることが多かった。江戸の人は、「ひ」と「し」の区別が曖昧だと言われるが、それだけではなく、「はら」という発音も嫌がったようだ。刑場として有名な小塚原を「コヅカッパラ」と呼ぶのも、同様の例である。現在では、「アキバ」と略称されることもある。オレが学生時代、この秋葉原で、コンピュータをオモチャにしているガキどもがいた。これを、「アキバチャイルド」と呼ぶのだと教えられたのは、それからずいぶん経ってからのことである。

 さて、この日本橋、実は、最近、浮浪者の群れに悩まされている。日本橋の南、通天閣との間に、阪神高速道路が通っているのだが、この高架下に、浮浪者たちの作った段ボールの家が、ずらりと並んでいる。そして、電器店が閉店になる頃、段ボールの家さえない浮浪者たちが、毛布やござを片手に集まってくるのである。「この前で寝るな。」と、下ろしたシャッターに書くところもある。

 日本橋の南には、なにわ警察署があるが、もちろん、見て見ぬ振りを決め込んでいる。道路脇の段ボールの家も、明らかに道路交通法違反だが、彼らが血道を上げるのは、駐車違反の取り締まりだけである。そりゃそうだ。駐車違反を取り締まれば、反則金が手に入るが、浮浪者の段ボールの家を摘発すれば、彼らを保護するのに、出費を迫られるだけである。バブルがはじけて、税収が落ち込んでいるときに、そんな出費をする訳がない。

 更に、電気屋街だけでなく、それより北の千日前道具屋筋にまで、ねぐらを求める浮浪者が出没するようになった。ここには立派なアーケードがあるので、夜露をしのぐには最適である。

 以前は、これほど浮浪者が目に着くことはなかった。一説によると、阪神大震災のあと、避難所に潜り込んでいた浮浪者が、避難所の解消とともに、再び大阪に戻ってきたからだという。不景気で、高齢者に職がないからだともいう。いずれにせよ、浮浪者の数は、確実に増えてきている。

 通天閣の北、大阪の日本橋は、最新の技術と浮浪者の同居する街である。そして、それは、我々の未来の縮図でもある。