桐タンス

最低山極悪寺 珍宝院釈法伝

 「インドネシアのある地方では、子供が産まれると、庭にバナナの木を1本植える。」という話を読んだ。子供が大きくなるまでの間、そのバナナは、子供の大切な食料になるという。

 この国でも、農村では、かつて娘が産まれると、庭に桐の苗を植えた。娘が嫁ぐ日に、この桐でタンスをあつらえて、嫁入り道具にして持たせるためである。親は、丹精込めてその桐を育てたのだろう。

 貧しさゆえの習慣と言えばそれまでのことかも知れない。しかし、そこには、親の愛情が、分かり易く目に見える形で表現されていた。

 そういう意味では良い時代だった。今は、親の愛情もお金に換算されてしまう。子供が通う小学校の費用が引き落とされた預金通帳を前にして、ふと、そう思った。